瑞希「う〜ん…。」

田代「う〜ん…。」

羽柴「む〜〜…。」

榊原「ん〜…。」

黄瀬「………なんだ…?一体…。」

明日香「さぁ…?」

あっ…!また会いましたね!

栗原瑞希です!

今日はみんなで唸ってます。

なんでか?って言われても唸ってるものは唸ってるんです。

とりあえず私達、困ってます…。




番外編「困る日」




ここは野球部の部室。

今の状況は二名を除く全員が困っているという状況です。

瑞希「むぅ…やっぱり新品のバットとかですかね!」

田代「いや…バットは消耗品じゃないからね。ここはやっぱりボールってことでいいんじゃ。」

羽柴「いやちょっと待てよ!!ボールこそリサイクルすれば使えるだろ!!ここは奮発して打撃マシンを…!!」

榊原「おいおい…。流石にそれは贅沢しすぎじゃないか?」

ワイワイガヤガヤと色んな意見が飛び交う中、二人だけが会話に入りこめないでいた。

明日香「あ、あの〜…。」

黄瀬「何の話だよ…。」

その瞬間、部室は凍りついたようにシーンと静まり返った。

その沈黙を破るように私は咳払いして、みんなが議論していたお題を告げた。

瑞希「二人とも。今日は何日?」

私は部室にかけてあるカレンダーを指差してそう言った。

明日香「…今日は5月10日…?」

黄瀬「…さっぱりわからん…。」

二人がそう言うと、羽柴先輩が今度はかぁ〜〜〜!!と言って溜め息をついてから口を出してきた。

羽柴「お前ら!野球部なんだからそれぐらい頭に入れとけ!!」

羽柴先輩がそう言うと遼太郎と明日香ちゃんは何がですか?と言って羽柴先輩に今日が何の日かを聞いた。

羽柴「今日は5月10日!!!つまり………………部費が支給される日なのだーーー!!!!!」

明日香&黄瀬「はっ…?」

二人が疑問の声をあげているのをスルーして大盛りあがりしている私達を見て、遼太郎はアホらしい…と言って部室を出ていこうとしていた。

瑞希「ちょ、ちょっと…!どこ行くのよ!?」

黄瀬「別に俺、部費をどう使おうかなんてどうでもいいし…。ちょっとロードワークにでも行ってくるわ。」

遼太郎はそう言うと、部室から出ていってしまった。

瑞希「何よ!!遼太郎のバカちん!!!部費の使い方は大事だよ!!ねっ?明日香ちゃん!!」

明日香「えっ??あっ…う、うん…。」

本当に遼太郎は何の考えもないんだから!

遼太郎の使いそうなものは勝ってあげないんだから!!

〈明日香視点〉

どうしよう…。

瑞希ちゃんの勢いに押されて思わず返事しちゃったけど…。

明日香「(正直…私もどうでもいいんだけど…。)」

でも…この雰囲気でそんなこと言えない…よね。

明日香「はぁ…。」

私もロードワークについていけばよかった…。

私のそんな思いが聞こえるわけがなく部費をどう使うかの議論はますます白熱していった。

明日香「(あっ…今日の空雲一つないや…。)」

綺麗…。こんな青空見ながら草むらとかで寝転んでたいな〜…。

明日香「(あっそういえばこんなに天気いいなら洗濯しなきゃ…。)」

そんなことを考えていると瑞希ちゃんから話を私にふられた。

瑞希「ねぇ!明日香ちゃんはどんな風に使いたい?」

明日香「(まずは…家の服でしょ…?下着…それに…)」

瑞希「明日香ちゃん?」

私はその時、全く瑞希ちゃんの声が聞こえていなかった。

明日香「あっ!ユニフォームもだ!」

私はポンと手をたたいてそう言った。

その時に初めて自分に話をふられていたことに気がついた。

何故なら、自分の周りが今までうるさかったのにシーンと静まり返っていたからである。

しかも、全員の目線が自分へと向けられていた。

明日香「えっ…あ、あの〜…。」

何か言わなきゃ…。

明日香「(え〜と…え〜と…。)」

駄目だ…何にも出てこない…。

私が焦っているとき、何故かシーンとしていたみんなが歓声みたいな大きな声をあげた。

明日香「えっ…?」

榊原「成る程…。ユニフォームか。それもありだな。」

羽柴「流石明日香ちゃん!!ナイス!!!」

田代「僕もそれは思いつかなかったよ…!」

瑞希「さっすが明日香ちゃん!やっぱりあったまいい〜!!」

瑞希ちゃんがそう言って抱きついてきた。

…っていうか何が…?

榊原「そうと決まれば…今から発注しに行くか?」

キャプテンがそう言うとみんながオォーーー!!!!!と言って全員で出ていってしまった。

明日香「……………」

一人部室に取り残された明日香はポツンと立って呆然としていた。

明日香「だ、だから結局何を買うことになったのよ〜!!」

明日香がそう叫んだ時に部室のドアがゆっくりと開いた。

そこにはさっさと逃げた男の姿があった。

黄瀬「…全員いったか…?」

明日香「…あんた何してたのよ…。ロードワークに行ったんじゃないの?」

黄瀬「バカ…。この俺がランニングみたいなしんどい練習すると思ったか?」

胸をはってそう答えるバカ男にボールを投げつけて私はパイプ椅子に座った。

黄瀬「ってぇ…!てめぇ何しやがる!!」

明日香「うっさい!私を置いていった罰よ!!」

私がそう言ってそっぽを向くと遼もちぇっと舌打ちして私の隣に腰掛けた。

明日香「な、なんで私の隣に座んのよ!」

び、びっくりするじゃない!!

まだ胸の鼓動がおさまらないうちに遼は顔をしかめて座っちゃわるいのかよと言った。

明日香「いや…別に悪いわけじゃないけど…。」

明日香「(ドキドキすんのよ!!)」

こんなにドキドキするようになったのは最近になってからだ…。

もしかして人が隣に来たらドキドキする病気とか…かな?

私がそんなことを考えている時、遼はうーんと伸びて大きな欠伸をしていた。

明日香「ね、眠いの…?」

黄瀬「…あぁ…。やっぱ久しぶりに野球やりすぎて疲れてんのかも…。」

遼はまた大きな欠伸を一つして、目をこすっていた。

明日香「ふ〜ん…。あんまり練習してないくせに〜?」

ニヤニヤしながら遼の方を見ると、遼は規則正しい寝息をたてていた。

明日香「寝てる…。」

そういえば瑞希ちゃんが言ってたっけ…。

−−瑞希「遼太郎は寝てる時はスッゴく可愛いんだよ?」

明日香「ホントだ…。」

なんか遼の寝顔見てたらニヤケてきちゃった…。

ふぁぁ…。なんか私も眠くなってきちゃった…。

青い空を見ながら目をゆっくりと閉じた。

明日香「(まぁこんな風にまったり出来るなら困った困ったって大騒ぎするのも悪くないかな…。)」

部員が全員帰ってきた時に二人がパイプ椅子で鼾をかいていたのは言うまでもない。