プロローグ

2008年8月10日
この日ある地区の野球大会の一回戦が行われていた。
カキーン!
打球が三遊間を真っ二つに破る。
その球足は速くあっという間にレフトのグラブに吸い込まれた。
しかしそれにもかかわらず二塁ランナーはホームに突っ込んでくる。
黄瀬「(馬鹿!!なんで突っ込むんだ!!)」
この少年黄瀬遼太郎が放ったレフト前ヒットではとてもじゃないが二塁ランナーが帰ってくることはほぼ不可能だ。
黄瀬の思いは届かず二塁ランナーは三本間まで歩を進めていた。
味方ベンチから悲鳴のような声がランナーに向かって放たれている。
しかし無情にも白い塊が猛スピードでランナーの横を通過した。
黄瀬はその瞬間目を静かに閉じ心の中で悪態をついた。


みんな泣いている…。
そりゃそうだなんせこの試合が終わった今もうこのメンバーで野球をすることはない。
だが何故だろうか?
俺にはそんな感情が湧いてこなかった。
何故なら最初から勝てないと思っていたからだ。
俺はそんな自分が嫌だった。
いや正確にはあの時からの自分が嫌だった…。

もうこんな思いをするなら野球なんてごめんだ。
野球部の強くない高校に行こう。
そしたらこんな思いしなくて済む…。

俺は知らなかった。
この高校で会う面々が俺の人生を変えることになることを…。