第17話【風の記憶、恨みの刃】
【ロスト】くっ・・・。
【セニアス】大丈夫か?・・・棄権するか?
【ロスト】いや、いい。何故か知らんが頭の中から逃げるなって響く。
【セニアス】まさか失った記憶に関係するのか?
【ロスト】知るか・・・とにかく俺は出るからな。
 
と言って剣を持って部屋を出るロスト。
【セニアス】おい!待てって!
 


【グランス】次のあのガキ・・・まさか・・・。
【ルーガ】ん?どうした?
【グランス】昔、俺が半殺しにしたガキに似ていやがる。
【ルーガ】お前の目が潰れた時か?
【グランス】それはそのガキの親父にやられた。セシリアの奴もな。
【ルーガ】ほぅ・・・。
 


 
【アナ】これより準決勝、セニアス・ロストペア対ルーガ・グランスペアを行います。
【審判】今回はノーマルステージで戦う。
【セニアス】・・・。
【ロスト】・・・。
【ルーガ】・・・。
【グランス】・・・。
 
4人は何も話さなかった。だが闘志は静かに燃えていた。
 
そして全員が位置についた。
 
【審判】始め!!
【セニアス】 (ジャキッ!)
 
掛け声と共にマシンガン×2を取り出すセニアスと
【ロスト】 (チャキッ!)
 
剣を構えるロストを前に二人は・・・。
【ルーガ】銃が相手だとやりにくいな・・・。
【グランス】ヒャーハハハ!
 
突然グランスはロストに向かって突っ込んでくる。
【ロスト】!?
 
ガキィィィン!
【グランス】てめぇ、やっぱりあの時のガキだな!!
【ロスト】・・・何の事だ?
【グランス】忘れたとは言わせねぇ・・・てめぇの親父にこの右目を奪われた怨み!未だに忘れられねぇ!!
 
クルッ ズガッ!!
 
グランスはロストの剣を押し返すと身体を回転させてロストの腹部を蹴った。
【ロスト】ぐっ・・・。
【グランス】我が闇よ、この呪剣・ガタノトーアに力を・・・。
 
するとグランスの剣の周りに黒いオーラが出てきた。
【グランス】我が憎悪と共に苦しめ!虚無への帰還!!
 
ブゥゥゥゥゥン!!
 
剣から黒い鎌鼬(かまいたち)を放ち、ロストに襲いかかる。
【ロスト】!!
 
タッ!
 
フュゥゥゥゥゥン・・・
 
ギリギリに避けると剣に風を集めだした。
【ロスト】切り裂け!風爪刃!!
 
剣から風の斬撃を放つが・・・
【グランス】こんな物か!?
 
ズバッ!!
 
襲いかかってくる風を両断した。
【ロスト】!?
【グランス】この呪剣・ガタノトーアはなぁ、物体はもちろん風、水、火といった物も斬れる最高の剣だ。
 
と剣の刃を舐めながらロストに話して来た。
【グランス】だがこの剣には呪いがある。時々俺の身体を奪って勝手に戦う時がある。
【ロスト】何・・・?
【グランス】さてと、またてめぇを半殺しにしてから目を潰してやらぁ!!
 
とオーラを剣に集めるとそのまま突っ込んできた。
 



【???】どうだいロスト、記憶の方は?
 
彼女の名はラフィア、当時記憶を無くしたロストを拾い、剣を教えていた。
【ロスト】・・・・・・。
 
黙って首を横に振るロストに彼女は「そう。」っと言って椅子に座った。
【ラフィア】まぁいずれ戻る時が来るだろう。しかしその風の能力・・・剣に活かせてみるか?
【ロスト】・・・できるのか?
【ラフィア】剣の道は無限にある。それに気付くか気付かないかの話だ。
 
さらにラフィアは話しを続けた。
【ラフィア】その風の能力は無敵と言う訳ではない。覚えておいて損は無いだろう。
【ロスト】・・・わかった。


【ロスト】(師匠、感謝する!)
 
ロストの身体中に風が包み込む。
【グランス】風は無駄だ!!
 
と叫びながら剣を振り下ろした瞬間、
 
ザシュッ! ザシュッ!
【グランス】あん?
 
何時の間にか斬られ、後ろにロストがいた。
【ロスト】風剣舞・二乃太刀!
【グランス】・・・その剣術、風、そしてその目!てめぇの親父そのものだな・・・殺す!!
 
突然、グランスがキレて特攻して来た。
【ロスト】三乃太刀!
 
するとロストの動きがより速くなり、キレが増してきた。
【グランス】てめぇの親父はな!俺の目を奪い、プライドを傷つけた!
 
徐々にグランスの黒いオーラも増してきた。
 
恨み・・・この気持ちが強いのだろう。
【グランス】だから俺は奴の女を殺し、てめぇを半殺しにした!
 
攻撃を防ぎながらロストは黙って聞いていた。
【グランス】なのにこの潰された目が疼くんだよ!!
 
ロストの目が段々光を取り戻していく。
【グランス】だからてめぇの目を潰して殺す!!
 
ガキーーーン!!
 
突然ロストの剣の威力が増した。
 
包んでいる風も数段強くなっている。
 
そして目に輝きが宿っていた。
【ロスト】お前のおかげで思い出した・・・全て。
【グランス】何?
【カイン】俺の名はカイン、父アルヴァンと母マリアの子にして風の担い手。
 
ロスト、いやカインは静かに言うと剣に風を集めた。
 
前より強大な力だ。
【グランス】上等じゃねぇか!我が闇よ、この呪剣・ガタノトーアに力を・・・。
 
黒い斬撃、虚無への帰還を放とうとした瞬間、カインの攻撃が来た。
 
ズバッ!!
【グランス】何!?
 
ザシュッ! ザシュッ! ザシュッ!
 
風剣舞も威力が増し、グランスも苦しい戦いになった。
【グランス】くっ!!
【カイン】・・・最終奥義・・・。
【ルーガ】そこまでだ。
 
カインが振り向くとボロボロになったセニアスがルーガに銃を突き付けられていた。
 
腕輪が壊れても攻撃されたのだろうか、ひどい傷だ。
【セニアス】・・・スマン、ロスト・・・。
【ルーガ】こいつの腕輪は壊れている。それでこれを撃てば・・・。
【カイン】・・・どうすればいい?
【ルーガ】負けろ。グランス、やれ。
【グランス】・・・ヒャーハハハハハッ! (チャキッ!)
 


【アクス】・・・結果は?
【チェーン】・・・人間ではないな、あいつら。
 
さすがのチェーンも二人の行為には怒りを覚えた。
【シャーン】ロストさんとセニアスさんは重傷負って今病院に・・・。
【アクス】ひどい・・・。
【チェーン】もう帰るぞ、決勝は明日だ。
 


【係員】・・・と言う訳です。なので棄権しても気を抜かないで逃げてください。
【リーフル】・・・。
【アスロス】あいつら・・・絶対許さん!
【係員】決勝は明日になりますので御自分の宿屋、または我々が用意した宿屋でお休み下さい。
 
バタンッ
【リーフル】アスロス、とりあえずアクスの宿屋に戻ろう。
【アスロス】・・・・・・あぁ。
 
残酷な手段を使うルーガとグランス、明日の決勝戦はどのような戦いが起きるのだろうか・・・・・・。