第12章 4強激突

−1994年 10月−
そして秋の大会も始まり赤竜高校は準決勝まで進出していた。
中西監督「準決勝の相手は知っての通り旭光商業だ!」
相良主将「やっぱり要注意は筒井と岡崎ですね」
中西監督「そうだな。話を聞いたところ夏のリベンジとして嵯峨と玖珂を意識しているらしい」
玖珂「そう言えばお前のマグレで勝った試合だったな!」
嵯峨「マグレとはなんでい!」
玖珂「違うのか」
嵯峨「違わないけど―――ぶつぶつ(俺だってフォームチェンジしてからは打率も上がってるのに)」
全員「この2人は仲が良いのか悪いのか?」
中西監督「とにかく、嵯峨と玖珂は徹底して調べてるらしいから注意してくれ!」
嵯峨&玖珂「はい!」
真田「嵯峨さんと玖珂さんを調べてるんなら案外、他の人達に滅多打ち食らったりして」
全員「いくらなんでも」
中西監督「とにかく、旭光を倒せば決勝では斉天か風雲のどっちかと当たる。気を抜くなよ!」
全員「はい!」

真田「秋と言えばお腹を壊す!」
吉田「なんだそりゃ?」
真田「相手の妨害作戦です!」
斎藤「ゲームじゃないから現実にそんな事はありません!」
真田「全員絶不調で勝ち上がると言うのも相手をよりどん底に落とせるから良い物だと思うんだけど」
吉田「訳が分からん? つうか余裕あるな?」
真田「当然、秋は絶好調、高校通算打率3割打ってる僕ですよ!」
吉田「ふっ、俺も3割と負けていないぜ!」
斎藤「俺、4割は軽く打ってんだけど」
真田&吉田「裏切り者!!」

旭光商業高校
九重監督「準決勝の相手は知っての通り赤竜高校だ!」
岡崎主将「夏は嵯峨の一発で終わりましたね」
筒井「あれは痛恨の一撃だった!?」
全員「筒井が落ち込んでますが?」
九重監督「うむ。しかし相手の先発は―――?」
岡崎主将「恐らく山中でしょうね」
全員「さすがにうちには斎藤じゃないんですか?」
九重監督「分からんな。しかしあの監督の事だ。きっと何か深い理由があるのかも知れん?」
岡崎主将「まあ、どっちが来ても打ち込めば良いだけの事だ。俺達の力で叩き伏せる!」
全員「おう!」

−地方大会準決勝 横浜スタジアム−
1年 真田 和希
後攻 先攻
赤竜高校 旭光商業高校
投手力 機動力 投手力 機動力
打撃力 守備力 VS 打撃力 守備力
意外性 経験値 意外性 経験値
総合力 総合力
山之内 努 2年
2年 安達 正孝 倉 利政 2年
1年 斎藤 一 蜂谷 留蔵 2年
2年 相良 京一 岡崎 芳樹 2年
2年 玖珂 良雄 瀬尾 文 2年
2年 嵯峨 蓬 梶木 祐樹 2年
1年 吉田 毅 鹿取 秋 2年
2年 加納 利雄 沖原 和 2年
2年 山中 宰 筒井 博人 2年

放送席
霞「秋の大会準決勝戦をお伝えします。実況は私事、白銀霞、そして解説は武藤小太郎さんです!」
武藤「どうもです」
霞「さてと夏は赤竜が勝ちましたが秋はどうでしょうか?」
武藤「そうですね。赤竜のエースは何故か山中君と言うのが気になるところですが順当に行けば赤竜の勝ちでしょうね!」
霞「それはまたどうして?」
武藤「山中君にしろ斎藤君にしろちゃんと対戦した経験が限りなく少ないですから旭光が不利だと思いますよ!」
霞「そう言えば夏には七瀬君が先発して斎藤君は2人しか投げませんでしたね」
武藤「ええ」

そして試合開始、初めての山中が相手でも何とか旭光が打ち込むが赤竜も嵯峨と玖珂以外が活躍し乱打戦と荒れに荒れた展開となって行く。

8回表 赤5−7旭 現在旭光がリード中
霞「試合は7対5、武藤さんの予想を裏切って旭光がリードしています!」
武藤「乱打戦と言うのはさすがに予想外でしたね」

岡崎「ふん!」

カキ―――ン!
山中「ぬっ!?」

霞「この回の先頭の岡崎君のホームランで3点差となります!」
武藤「山中君はもう限界ですね。しかし後2回で筒井君から3点と言うのは絶望的―――でもないか今日の打線は恐ろしいですから」

中西監督「ここまで良く投げた!」
山中「いえ8回8失点ですから」
中西監督「この試合だけでなく前の試合もその前の試合もだよ。斎藤! 出番だ!」
斎藤「はい!」

霞「ここでピッチャー斎藤君に代わります。そしてレフトには伊沢君が入ります!」
武藤「ついに出て来ましたね!」

ここまで斎藤は一度もマウンドに立っていないせいか燃えに燃えていた!
斎藤「1人も出さん!」

ズバ―――ン!
瀬尾「速い!?」

霞「138キロのストレートで瀬尾君を三振!」
武藤「調子は良さそうですね!」

ズバ―――ン!
梶木「振ろうと思ったらミットに入ってた!?」

霞「続く梶木君もストレートで三球三振!」

ズバ―――ン!
鹿取「ダメだ!?」

霞「凄いです。この回三者連続三球三振に抑えました!」
武藤「ストレートによほど自信がないとできない投球ですね!」

斎藤「よし!」

8回裏 赤5−8旭 ここで1点でも取っておきたいところ
霞「この回の先頭打者は韋駄天の真田君!」
武藤「野村2世とか言われてる選手ですね!」
霞「野村監督いわくどうせなら無明の風祭君に付けて欲しいと言ってましたけどね」
武藤「あいつらしいですね」
霞「武藤さんは野村監督の事を知ってるんですか?」
武藤「現役に日本シリーズで戦いましたからあの時は完全に私が打線を抑えてシリーズMVPを獲得したから良く覚えてますよ!」
霞「珍しく活躍した時ですか?」
武藤「珍しくって? ―――その時に話して仲良くなってプライベートで付き合いも始めましたから、あいつの事は結構知っています。例えば息子が野球してるとかね」
霞「プロ野球選手の息子さんが野球をやっている。何かありきたりですね」
武藤「私の息子は野球に興味ないみたいですけどね」
霞「人それぞれでしょうか」
武藤「そう言う事でしょう。今日は盗塁で荒れ狂っている真田君の打席って?」
霞「真田君なら筒井君からフォアボールで三塁まで盗塁していますけど―――観てなかったんですか?」
武藤「全然気付かなかった。それじゃ安達君は?」
霞「スクイズを決めて1点返しました。と言う訳で1アウトランナーなしで好打者の斎藤君の打席です!」
武藤「―――えっと2点差に戻ったんですね」

筒井「しかし今日は良く打たれるな。調子は悪くないのに?」
斎藤「2点差か今日の打線の調子なら問題なく打てそうだな!」

筒井のコントロールが乱れ斎藤と相良はフォアボールで出塁するが

ククッ! ズバ―――ン!
玖珂&嵯峨「ダメか!?」

続く玖珂と嵯峨は今日は調子良くとも打てず3アウトチェンジ!

霞「今日の筒井君は玖珂君と嵯峨君は完全に抑えていますね!」
武藤「しかし他の選手に打たれすぎですよ!」

中西監督「玖珂と嵯峨は完全に研究されているな」
吉田「はい。嵯峨さんは欠点だらけなんですが玖珂さんは苦手な真ん中のコースで打ち取られてから調子が落ちたのか難しくとも得意なギリギリなコースまで三振してますね」
中西監督「確かにこのままじゃその後の試合でも絶不調が続くかも知れんな。まあ別の意味で規格外なあいつらの事だ問題ないだろう」
吉田「だと良いんですが」
中西監督「それより残り1回で2点だ。もう失点は許されんぞ!」
吉田「今日の斎藤なら失点どころかヒットも打たれませんよ!」
中西監督「裏はお前からだ!」
吉田「任せて下さい!」

9回表 赤6−8旭 フルパワー!
斎藤「フルパワー!」
吉田「テンションが高えや、やっぱり投げられないストレスはあったんだな」

ズバ―――ン!
沖原「精神力で完全に負けてるな」

霞「三振! これで4連続奪三振です!」
武藤「4連続で三球三振も続いてるってのも凄いですね」

ズバ―――ン!
筒井「ノビがケタ違いだ!?」

霞「筒井君も三球三振!」
武藤「旭光の打線でも斎藤君のストレートを1打席で打つのは難しいみたいですね」

ズバ―――ン!
山之内「無念!」

霞「現在、18球連続ストレートで抑えています!」
武藤「野球は三振しかないと言う投球ですね。昔こんな投手が居ましたね―――ああ。思い出しました監督の中西さんですね!」

吉田「本当にノーヒットで抑えたな」
斎藤「俺の事より次はお前の打席からだろ。このまま終わったら負けるんだぞ!」
吉田「分かってる。しかし今日は筒井さんの球を打てない感じが全然しないからな。何とかなるだろう」
斎藤「そうか」

普段ならお気楽な奴とでも思うのだろうが今日の赤竜打線は無茶苦茶筒井と相性が良いせいか斎藤もあっさりと同意した。

9回裏 赤6−8旭 2点差のビハインド、返せるか赤竜打線

カキ―――ン!
筒井「何なんだ今日のこいつらは!?」

霞「まずは先頭の吉田君のホームランで1点差に迫ります!」
武藤「良い球なんですが良く打てますね?」

吉田「後はお願いします!」
加納「おう!」

カキ―――ン!
霞「続く加納君もヒットを打って一塁にストップ!」
武藤「本当に良く打ちますね。玖珂君と嵯峨君以外に何があったんでしょうか?」

ククッ!
伊沢「ダメか」

霞「続く伊沢君はスライダーを空振り三振!」
武藤「ようやく筒井君らしい結果が出ましたね!」

筒井「とにかく抑えないと次の打者は幸いパワーが低い長打はないだろう!」
真田「決める!」

珍しく力む真田だがこれが好結果を生む!

カキ―――ン!!!
筒井「バカな―――!?」

霞「入ったサヨナラ2ランホームラン!」
武藤「とてつもなく変な試合はとてつもない結果で終わる試合でした!」

筒井「信じられん俺が9回9失点なんて!?」
岡崎主将「―――また負けたか」
真田「イエーイ!」

ホームを踏んでピースサインで決める真田!
吉田「高校初ホームランがサヨナラとは何となく真田らしいな!」
斎藤「努力が実ったって感じだな」
相良主将「とにかく決勝に進出だ。決勝の相手は斉天か風雲か」

そしてもう1つの準決勝も始まった。

−地方大会準決勝 横浜スタジアム−
2年 佐藤 浩太
後攻 先攻
斉天大附属高校 風雲高校
投手力 機動力 投手力 機動力
打撃力 守備力 VS 打撃力 守備力
意外性 経験値 意外性 経験値
総合力 総合力
戸倉 漣 2年
2年 鈴木 孝也 石田 勉 1年
2年 嘉神 高政 村雨 剣 1年
2年 高須 光圀 山根 信広 2年
2年 佐々木 新 小見山 敏 2年
2年 渡辺 恵一 吉岡 勇治 1年
2年 十川 竜太 中村 知典 1年
2年 名倉 眞 後藤 友一 1年
1年 佐伯 真敏 伊藤 義人 1年

斉天大附属高校
大島監督「相手は風雲高校だ。正直、弱小の風雲が良く準決勝まで来れたなと思っている」
嘉神主将「ハッキリ言いますね」
大島監督「とにかく俺達の力なら問題なく抑えられるだろう。なっ佐伯!」
佐伯「初対決なので断言はできません。それに相手のチームの戸倉さんと石田の急成長や村雨と山根さんと言うプロも注目している打者が居ますから油断は禁物かと」
大島監督「相変わらずクールだな」
佐伯「いえ」
大島監督「どっちにしろ向こうの1年投手じゃうちの打線は抑えられんさ!」
嘉神主将「そうですね。八坂さんが抜けたとは言え打線は落ちていませんから問題ないと思います!」
大島監督「つう訳だ。伊藤なんぞ恐れるに足らずだ!」
佐伯「は、はあ?」

高須「俺もお前に賛成だ。一発勝負の高校野球で油断は命取りだからな!」
佐伯「高須さんがそう言う人で助かります。監督やキャプテンは大胆と言うか慎重さがないのでどんなミスをするか心配で」
高須「あの2人は細かい作戦とか考えないタイプだからな。ただ2人共、大口叩くだけの実力はあるからな」
佐伯「だから困ってるんですけどね」
高須「そうだな」

風雲高校
氷室監督「信じられんがついに準決勝まで来てしまった!」
全員「アンタが驚くんかい?」
氷室監督「しかし思えばここまで短くも長かった物だ」
村雨「確かにここまで大半の試合を1点差で勝って来ましたからね」
戸倉主将「ああ。特にお前は得点圏で良く打ってくれた!」
村雨「頼れる1年生村雨君ですから」
戸倉主将(性格がこれじゃなければ完璧なのにな)
伊藤「しかし斉天に勝てますかね?」
氷室監督「無理だな」
全員「監督がいきなり諦めてどうするんですか?」
氷室監督「しかしな。佐伯を打つのは―――まあ、不可能じゃないとしてもだ。伊藤が斉天打線を抑えられるとは思えん!」
伊藤「実力不足ですみません」
全員「いきなりピッチャーを落ち込ませないで下さいよ!」
氷室監督「すまん。まあ、石田のリードがあれば少ない失点で抑えられる可能性もあるか」
石田「頑張ります」
山根「無茶苦茶緊張してるな」

放送席
霞「秋の大会準決勝戦をお伝えします。武藤さん、斉天VS風雲どっちが勝つでしょうか?」
武藤「やはり斉天が総合力で勝っていますから有利ですね。しかし風雲は勢いに乗ってるし熱戦を期待したいですね!」
霞「それでは試合の始まりです!」

斉天大附属が有利と言われていただけあってリードするが風雲高校も負けずに頑張っている試合展開が続く。

8回表 斉3−2風 1点差と懸命に食らいついている
佐伯(シュッ!)

ガキッ!
戸倉主将「シンカーか?」

霞「戸倉君はキャッチャーフライ! えっと8回に入って点差は3対2と接戦が続いております!」
武藤「正直ここまで粘るとは予想外でしたね。やはり勢いに乗ってるだけあって油断はなりません!」

ククッ!
石田「やっぱりとてつもない変化だ!?」

霞「石田君にはシュートで空振り三振!」
武藤「やっぱり一朝一夕で打てる様なボールではありませんね!」
霞「しかしここで滅多打ちにしてる村雨君の打席です!」

佐伯「こいつには今日3安打2打点食らってるからな。慎重に行かないと!」
村雨「シュートもそんなに打ちにくくないし佐伯とは何か相性が良いんだよな?」

カキ―――ン!

再び佐伯のシュートをスタンドへと運ぶ!
佐伯「待てボール球だぞ。何でスタンドまで届くんだ?」

霞「見事なシュート打ち! これで同点となりました!」
武藤「風祭君も凄かったですが相性では村雨君の方が上かも知れませんね!」
村雨「イエーイ!」

ズバ―――ン!
山根「4番なのに良いところなしですか!?」

霞「山根君は三振と村雨君以外は見事に抑えます!」
武藤「やっぱり相性ですね!」

8回裏 斉3−3風 同点に追いついた風雲高校
伊藤「この伊藤様にお任せあれ!」
石田(伊藤様って? とにかくHスライダーとスラーブ中心で行くぞ!)
伊藤(つうかそれしか球種はないし)
石田(―――そうだな)

佐伯「ここか!」

カキ―――ン!
霞「入った。Hスライダーを粉砕する一発!」
武藤「なんかホームランの多い試合ですね。しかし良く打ちました。佐伯君は夏と比べてパワーも付いて来たみたいですね!」

ククッ! ククッ!
佐藤&鈴木「三振です!」

霞「佐藤君と鈴木君はHスライダーとスラーブで三振!」
武藤「結構良い変化球を投げますね!」

嘉神主将「SS君は終わったか」
佐藤&鈴木「SS君って言うな」
嘉神主将「普通に佐藤君、鈴木君ではつまらないからSS君にしたのに」
佐藤&鈴木「これでもレギュラーだ!」
嘉神主将「確かに斉天のレギュラーは並ではなれないけど―――やっぱりSS君!」
佐藤&鈴木「しくしくしくしく!!」

ガキッ!
嘉神主将「げっ!?」

霞「嘉神君はスラーブを打ち上げ3アウトチェンジ!」
武藤「今日の嘉神君はいまいちですね!」

嘉神主将「今日良いところなしですか」

9回表 斉4−3風 ここで抑えれば斉天大附属高校の勝利!
佐伯「5番からか」

ズバ―――ン!
小見川「速いっ!?」

霞「142キロのストレートで空振り三振!」
武藤「スタミナの消費を抑えて投げていたせいかストレートも勢いがありますね!」

スト―――ン!
吉岡「フォークだと!?」

霞「吉岡君も三振とフォークもキレています!」
武藤「1点差ですから思いっきり強振してますね」

佐伯(これで決める!)

クククッ!
中村「何て変化だ!?」

霞「最後はシュートで決めました。4対3と接戦でしたがやはり最後は斉天大附属が勝利しました!」
武藤「今年も王者は止められないですか―――とまだ決勝がありましたね」

大島監督「ふっ、やはり最後に笑うのはうちだったな!」
嘉神主将「同点にされた時は驚いてくせに」
大島監督「―――それは置いといて良くやった。お前ら!」
全員「……………………」
大島監督「決勝はまたしても赤竜ともう因縁の対決だな。とにかく今までと同じく叩き潰して王者の力を教えてやれ!」
全員「うっす!」

氷室監督「やっぱり勝てなかったか」
戸倉主将「仕方ないですよ。実力で負けたんですから」
氷室監督「そうだな。今度こそ甲子園に出れると思ってたのに」
村雨「結局、斎藤とは戦えずか」
山根「仕方ないさ。戸倉が言った様に実力が足りなかったんだからな」
村雨「ですね」

喫茶店MOON
真田「決勝の相手は斉天か―――相良さんは特に燃えてたな」
吉田「相良さんが1年の頃から一度も勝った事がないからな」
斎藤「それなら決勝で勝って勢いを更に上げたいところだな!」
真田「だね!」吉田「だな!」
月砂「燃えてるわね」結依「じゃな」

こうして決勝はまたもや赤竜高校VS斉天大附属高校となった。

赤竜高校
中西監督「決勝の相手は知っての通り斉天だ。勝って関東大会に行くぞ!」
全員「負けても行けるんですけど?」
中西監督「勝って行った方が気持ちが良いだろう!」
全員「そ、それはまあ……」
中西監督「相手の先発は恐らく佐伯だ。こっちは斎藤で行く!」
全員「本当に勝つつもりなんですね」
中西監督「もちろんだ!」

真田「佐伯が相手か前は一応ヒットを打っているけど勝ったって感じはしなかったな」
吉田「実際負けたしな。しかし俺達は夏に比べて実力を付けてる。今なら打てるかも知れん?」
真田「うんって何で疑問形なの?」
吉田「佐伯も夏より上だからな。差が縮まったのか広がったのか分からん?」
真田「なるほど―――時間は平等だからね」

斉天大附属高校
大島監督「つう訳でまたしても赤竜が決勝の相手だ!」
嘉神主将「大下さんが引退したとは言え1年連中は夏からかなり成長してるから要注意ですね」
大島監督「ああ」
佐伯「赤竜は認めてるんですね?」
高須「今までも何回か負けた事があったらしいからな」
佐伯「なるほど」

−地方大会決勝戦 横浜スタジアム−
2年 佐藤 浩太
後攻 先攻
斉天大附属高校 赤竜高校
投手力 機動力 投手力 機動力
打撃力 守備力 VS 打撃力 守備力
意外性 経験値 意外性 経験値
総合力 総合力
真田 和希 1年
2年 鈴木 孝也 安達 正孝 2年
2年 嘉神 高政 斎藤 一 1年
2年 高須 光圀 相良 京一 2年
2年 佐々木 新 玖珂 良雄 2年
2年 渡辺 恵一 嵯峨 蓬 2年
2年 十川 竜太 吉田 毅 1年
2年 名倉 眞 加納 利雄 2年
1年 佐伯 真敏 伊沢 樹 2年

放送席
霞「やはり決勝は斉天大附属高校VS赤竜高校となりました!」
武藤「これで昨年の夏からずっと決勝であってる訳ですから凄いですね」
霞「今年の夏では斉天が勝ちましたが秋はどうなるんでしょうかね?」
武藤「そうですね。どっちも新メンバーに代わってからは日が浅いので何とも言えませんがやはり過去の実績から観ても斉天が有利かと」
霞「普通の解説ですね?」
武藤「普通じゃない解説してどうするんですか?」
霞「と言う訳で試合の開始です!」

1回表 斉0−0赤

ククッ!
真田「初球からシュートか」

霞「初球はシュートで入って来ました!」
武藤「意外ですね。真田君は速球に弱いのでストレートで押すかと思っていたんですけど」

カキ―――ン!
佐伯「なっ!?」

霞「3球目の外のストレートを右に流します!
武藤「流した訳じゃないですね。振り遅れたけど何とか芯に当てたと言ったところでしょう!」
霞「真田君のシングルヒットとどっちにしろ夏とは違う感じを見せます!」
武藤「確かに夏よりミートはうまくなっていますね!」

真田「ふふふ、これがバッティングセンターの特訓の成果だよ!」

吉田「やけに簡単に打ちましたね?」
中西監督「まだ立ち上がりだからストレートも130キロ前半くらいしか出ていないからな」
吉田「しかし今までのあいつなら当たる事もなかったでしょうね」
中西監督「そうだな。これもお前達の特訓の成果だろう!」

佐伯(そう言えば夏にも初回で打たれたな―――やはり走って来るだろうな。十川さんの肩じゃやっぱり刺せないよな)
十川「事実だけに否定できん」

真田は簡単とは言えない?が三盗まで成功させる。
真田「やっぱり八坂さんの存在は大きかったみたいだね。簡単にここまで来れたよ」

ガキッ!
安達「しまった!?」
真田「なっ!?」

2ストライクからスクイズをしかけるが見事に失敗し三振、飛び出していた真田も慌てて戻る!
霞「懸命に戻り何とかセーフです。これで1アウトランナー3塁!」
武藤「スクイズ狙いは悪くないんですがやっぱり失敗しましたね」

中西監督「やっぱり見え見えのバントはやめるべきだったな」
吉田「真田がアウトにならなかったのは不幸中の幸いでしたね」
中西監督「まったくだ」

佐伯「次はやっかいな斎藤か得点圏で勝負はしたくないのが本音だが相良さん、玖珂さんと続くからな歩かせる訳にはいかないな!」
斎藤「真田は何とかホームに返して1点取りたい場面だな!」

カキ―――ン!
霞「インコースのシュートだがセンター前に打ち返し斎藤君のタイムリーヒットで赤竜高校が1点先制します!」
武藤「本当に勝負どころに強いですね。追い込まれながらあの難しいコースを打ちましたよ!?」

真田「相変わらずあっさり打つなあ?」
中西監督「他校( よそ )なら1年ながら4番を任せられる打者だからな」
吉田「確かに普段バッティングをしていないのにあれだもんな。かなりの実力校でも4番を打っても不思議じゃないな」

佐伯「ふう、どうも斎藤は苦手だな。しかし次は相良さんだ。落ち込んでられない!」
相良「1点先制したのに落ち着いてるな。甲子園で投げたせいか、佐伯はますます手強くなった気がするな?」

ガキッ!
相良「しまった打ち上げちまった!?」

霞「続く相良君は少し力んだかピッチャーフライ!」
武藤「相良君にしては珍しい失敗ですね?」

中西監督「今日のあいつ大丈夫か?」

玖珂「今日も佐伯は調子が良さそうだし早い回で得点したいところだな!」
佐伯(シュッ!)

ククッ!
玖珂「初回でもうこの変化か!?」

霞「三振! 最後はクリティカルシュートで決めます!」
武藤「いきなり真田君に打たれて調子を崩すかと思いきや立ち直って1失点で抑えましたね!」

中西監督「初回で1点か―――納得いかんが初回じゃこんな物だろう」
真田「1点取れば十分でしょう?」
中西監督「夏は5失点して負けたからな。斎藤でも斉天相手に無失点はさすがに難しいだろう」
吉田「ですが斎藤は夏より調子が良いですし5失点もしないと思いますよ?」
中西監督「相手も夏よりも調子良いかも知れんだろう。下手すると5失点ですまんかも知れん!」
真田&吉田「なるほど」

1回裏 斉0−1赤 赤竜が1点先制中
斎藤「相手のスタメンが代わったせいかどんな選手か分からないな?」
吉田「気にするな。お前の力ならリードも大して必要ない!」
斎藤「お気楽だな。相手は斉天だぞ!」
吉田「大下さんと同じリードのレベルの俺が言うんだ。俺を信じろ!」
斎藤「悪いけど、ハッキリ言ってあの人のリードは可もなく不可もなくと言った感じで大した事はないぞ!」
吉田「普通以下ではないから問題はない!」
斎藤「普通以上なら失点も減って勝つ確率も上がるんだけど?」
吉田「それは無理だから斎藤がもっと成長してくれ!」
斎藤「そうか(つまりリードは基本的に俺が考えるんだな)」

ズバ―――ン!
霞「133キロのストレートで三振と今日も調子が良さそうです!」
武藤「初対決で斎藤君のストレートを打つのは難しいですよ!」

佐藤「おい凄えノビだぞ!?」
鈴木「何をいまさら、監督と嘉神に言われただろう?」
佐藤「頭で考えてたよりずっとノビがケタ違いだったんだよ!? マジで凄えから覚悟した方が良いぞ!」
鈴木「そんなになのか?」

ズバ―――ン!
鈴木「本当だ!?」

霞「鈴木君もストレートで三振とやっぱり1年生ながら凄いですね!」
武藤「ですね。スピードガンを見る限り1年生ながら速い球を投げるんですがそれだけではなく普通の投手と比べてノビがケタ違いで打ちにくいらしいですから」

嘉神主将「夏では良い様にやられたからな。ここでリベンジといきたいところだ!」
斎藤(嘉神さんか―――なんかこの人とは相性が良い気がするな)

スト―――ン!
嘉神主将「最後はフォークかよ? また負けた!?」

霞「最後はフォークと裏をかいて来ました!」
武藤「変化球も夏より精度が上ですね!」

大島監督「うちが三者三振か―――もう疑い様のない良い投手だな。斎藤は!」
佐伯「はい。俺も負けない様頑張ります!」
大島監督(斎藤の存在は良かったかも知れんな。佐伯を更に進化させそうだ!)
高須「この泣いてるのは放って置いて良いんですか?」
大島監督「放っとけ!」
嘉神主将「はあ、本当に俺ってキャプテンなのかな?」

2回表 斉0−1赤
佐伯「まずは嵯峨さんか―――ランナーの居ないこの状況なら大して怖くない人だな!」

ズバ―――ン!
嵯峨「三振か」

霞「三振と調子が良さそうです!」
武藤「嵯峨君は一発が怖いですが落ち着いていれば抑えられない打者でもないせいか安心して投げていますね」

中西監督「今日の注目はこいつとお前だな!」
真田「そうですね。吉田もバッティングが夏と比べて良くなっていますから佐伯も打てるかも知れませんね」

佐伯「夏は完全に抑えれるレベルだったけど―――真田のバッティングを見たせいか気になるな?」
吉田「やっぱり思っていたくらいのレベルだな」

カキ―――ン!
佐伯「そんな!?」

佐伯はいつも通りの投球で投げるが1−2からの4球目外角のストレートをスタンドへ運ばれる!
霞「入りました。佐伯君の138キロのストレートを粉砕!」
武藤「コースも良かったんですけどね。1年生ながら吉田君は良いバッティングセンスをしていますね!」

中西監督「お見事! ランナーがないとは言えよく打てたな」
吉田「最近速い球には慣らされましたからね。変化球を多投されたらホームランはなかったでしょうけど」
真田「しかしいきなりホームランとはさすがだね!」
斎藤「吉田も長打力が高いからな。しかし佐伯から打ったのは凄いと思うぞ!」
吉田「サンキュー!(確かにスタンドまで届いたのは出来すぎだったな)」

相良主将「ふっ、本当に今年の1年は頼もしいな!」

佐伯「俺が2回で2失点か―――油断したつもりはないが本気で行かないとな!」

ククッ! ククッ!
加納「凄い変化だ!?」伊沢「七瀬さんより上なんじゃ?」

霞「さすがにこのシュートは打てないか二者三振で3アウトチェンジ!」
武藤「しかしこの回もホームランと赤竜が1点追加しましたね!」

大島監督「ふふふ、面白くなって来たな!」
全員「リードされているのに笑わないで下さいよ!」
大島監督「うちが先制されるなんざ何年か振りだろう。笑うなって方が無理な話さ!」
佐伯「―――ライバル校?」
大島監督「それだ! うちの県にはライバル校ってのがなかったんだがこれからの時代は赤竜がライバル校になりそうだな!」
高須「まあ、俺達は相良が居る時点でライバル校って感じでしたけど?」
嘉神主将「そうだな。あいつが斉天に来れば春も夏も勝てたのにな」
佐伯「そう言えば仲の良い友人なのに何で別々の高校なんですか?」
高須「あいつは無名校が名門を倒す方が燃えるって言って特待生を蹴って赤竜に行った!」
佐伯「そんな理由なんですか?」
高須「確か河島も同じ理由だったぞ!」
佐伯「自由気ままですね」
嘉神主将「それが俺達の良いところ」
高須「そしてこいつは地元の無明の誘いを蹴ってここに来た。無明に俺達が3人も居たら毎年勝つのが当たり前って理由でだ!」
佐伯「本当に自由ですね。残った高須さん達は?」
高須「俺は大島監督が熱心に誘って来れてな。当時から色々と相談にも乗ってくれたからなそのツテでここに来た。天野は親父さんの母校だから選んだそうだ。名雲も俺と同様に大岡さんに相談事とかをしてな無明に行った!」
佐伯「なるほど、しかしうちの監督もいい加減に見えてちゃんとスカウトとかするんですね?」
高須「まあな」

試合は2対0のまま進んで行く。

7回裏 斉0−2赤 赤竜が2点リード中
霞「試合は2対0のまま赤竜がリードしながら7回に突入します!」
武藤「6回まで斎藤君から1点も取れないとは予想外でしたね」

斎藤「十川さんからか!」
十川「まずいな。そろそろ反撃しないと」

ガキッ!
十川「さすがに3打席目で当たる様にはなったけど結果はファーストフライかよ!」

霞「ストレートを打ち上げて2アウト!」
武藤「慣れて来たとは言えやはり振り遅れていますね」

ククッ!
名倉「カーブの変化もやっかいだな!?」

霞「名倉君にはカーブで三振!」
武藤「カーブも夏より上ですね」

佐伯(最後はストレートかカーブか裏をかいてフォークか―――決めた!)

カキ―――ン!
斎藤「球種を読まれた!?」

しかしここで佐伯が反撃する。追い込まれた後に斎藤のフォークをスタンドに運ぶ!

霞「7回でついに失点しました。佐伯君、斎藤君のフォークを真芯でとらえてスタンドに運びます!」
武藤「ここでフォークを読むとは佐伯君もやりますね!」

斎藤「くっ! 裏をかいたと思ったのに」
吉田「気にすんな。まだ1点勝ってる!」
斎藤「―――そうだな」

ガキッ!
佐藤「続けなかったか」

霞「佐藤君はピッチャーゴロに倒れ3アウトチェンジ!」
武藤「しかし佐伯君の一発で1点返しましたね!」

大島監督「ようやく1点が入ったな!」
嘉神主将「っても今日の斎藤は打てませんよ」
大島監督「今日、斎藤からヒットを打ったのは佐伯、高須、佐々木、だけか?」
高須「はい」
大島監督「そうか、お前は2安打打ってるし期待するぞ!」
嘉神主将「良いよな。お前は3打席2安打1四球と絶好調で俺なんか3三振と最悪だぞ!」
高須「お前もキャプテンなんだからしっかりしろよ!」
嘉神主将「そうは言ってもな。どうも斎藤とはタイミングが合わないんだよ。こうまで打ちにくい投手は俺としては初めてんだよ!?」
高須「そうか―――俺はむしろタイミングが取りやすいんだがな?」
大島監督「まあ、相性があるのは当然だがその負け犬根性じゃ一生打てんぞ!」
嘉神主将「そうですね。俺も少しはキャプテンらしいところを見せるか!」
佐伯「立ち直り早いですね?」
高須「それがあいつの良いところ……なのかな?」

8回表 斉1−2赤 佐伯の一発で1点を返す!
佐伯「吉田か―――今日は3打数2安打と打たれてるからな。慎重に行くか!」
吉田「今日の佐伯なら何とか打てそうだな。ここで打って斎藤を楽にさせるか!」

ズバ―――ン!
吉田「速い球には慣れたつもりだけど、さすがに生きた球で140キロは打てないか」

霞「最後は真ん中高めのボール球を振らせて三振!」
武藤「変化球でカウントを稼いで最後はストレートで決めましたね!」

ククッ!
加納「シンカーか」

霞「加納君も三振とこれで13奪三振!」
武藤「さすがにやりますね」

ガキッ!
伊沢「クッ!?」

霞「続く伊沢君もシュートを引っ掛けて3アウトチェンジ!」
武藤「スタミナもまだ十分と言った感じですね」

8回裏 斉1−2赤 斉天に勝つまで後2回
斎藤「今日の調子なら勝てる!」

斎藤は完全に流れは赤竜に来てると確信し打者を抑える事に専念するが

カキ―――ン!

鈴木にすっぽ抜けのボールをセンター前に打たれる。
鈴木「おっしゃ!」

霞「今日ノーヒットの鈴木君が斎藤君からヒットを打ちます!」
武藤「今のは失投でしたね。今日の失投は3球目ですかね?」

吉田の肩では鈴木の盗塁を止められず鈴木は盗塁を成功させる。
吉田「ドンマイ! 次の打者を抑えて行こう!」
斎藤「お前が言うなよしかし確かにランナーを気にしてる余裕はないな!」

佐伯「大丈夫ですかね。嘉神さん、斎藤と相性が悪そうですけど」
大島監督「多分大丈夫だろう。あれで得点圏には強いし後ろには高須が居るから安心して打てるだろうし」
佐伯「だと良いんですけど」

カキ―――ン!
嘉神「おっしゃ!」

佐伯の心配を他所に嘉神は斎藤からタイムリーを放ち一塁へ!
佐伯「さすがですね。この場面で打ちましたよ!」
大島監督「よしよし。2ベースだと高須を歩かせられる心配もあったがノーアウトランナー1塁じゃ歩かせないだろう!」

斎藤「次は高須さんか」

ガキッ!
高須「げっ!?」
嘉神主将「大馬鹿野郎!?」

霞「あっ!? 高須君にしたら珍しい併殺打で一気に2アウト!」
武藤「三振の方がマシな結果が出ましたね。なまじミートが良い分こうなりました!」

大島監督「ドジ!」
高須「すみません」
佐伯「カーブを引っ掛けましたね。確かに良い変化球でしたけど?」
高須「バットコントロールを少しミスった!」
嘉神主将「俺まで巻き込むなよ!」
高須「すまん」
大島監督「高須だから安心して嘉神に盗塁させなかったのは失敗だったな!」
佐伯「斎藤がランナーに集中する様にリードを大きくさせたのに全然気にしないってのもある意味凄いですね!」
大島監督「ああ。それで次は佐々木か、一応今日は調子が良いし期待するか―――へ?」

カキ―――ン!
斎藤「嘘!?」

霞「入りました。136キロのストレートを粉砕!」
武藤「4打席目とは言え斎藤君のストレートをスタンドに運ぶとは大した物です!」
霞「これで一気に斉天が逆転しました!」
武藤「むう。今年の秋の大会は色んな意味で意外性の一発が多いですね!」

大島監督「さすがは斉天の5番だ。どっかのドジな4番とは大違いだ!」
高須「もう勘弁して下さい」←どっかのドジな4番
佐々木「いえ。高須はミスする方が珍しいですしそのくらいにしたら」
高須「さすがは佐々木、前から良い奴だと思っていたが改めて本当に良い奴と思ったぞ!」
佐々木「ありがとう(で良いのかな?)」
大島監督「ふむ。高須がミスするなんて珍しいからついからかってしまったが、おかげで佐々木の良さが見えたから良しとしよう」
高須(次の打席が来たら絶対に打ってやる!)
佐伯(今日、3の2打っててこれかかわいそうに)

斎藤「今のボール悪かったか?」
吉田「いや、コースも速さも良かったぜ。打った佐々木さんが凄かったって事だ!」
斎藤「―――仕方がない。次に集中しよう!」
吉田「ああ!(この切り替えの早さもある意味斎藤の強さなのかも知れないな)」

ズバ―――ン!
渡辺「今日はダメだな。調子が悪い!」

霞「134キロのストレートで渡辺君は空振り三振!」
武藤「しかし斉天が逆転しましたね。あの失投から流れが斉天に変わりましたかね?」

9回表 斉3−2赤 土壇場での強さはさすがか斉天が一気に逆転に成功
中西監督「さすがに斉天の土壇場での強さは凄いな。今日の斎藤なら2得点で勝てると思ったのに」
斎藤「すみません」
中西監督「謝るな。試合はまだ終わっていない。1点差なら勝てる可能性もまだあるだろうが」
真田「そう言う事、僕が塁に出るから斎藤が返せばそれで良しだよ」
吉田「今日の真田は調子が良いからな。期待できると思うぞ!」
斎藤「ああ。頼む!」
真田「この音速の真田君に任せたまえ!」
斎藤「ああ頼むよ(さすがに音速と言うのはオーバーだな)」

佐伯(シュッ!)

ズバ―――ン!
霞「最後は141キロのストレートに空振り三振!」
武藤「逆転に成功してかもっと調子が良くなった様に感じますね!」

真田「ごめんなさいダメでした」
中西監督「三球三振か、これじゃ音速のバカだな!」
真田「(グサッ!)しくしく!」
吉田「幸い斎藤まで打席は回るし気にするなよ」
真田「ああ。後は頼むよ斎藤」
安達(俺は全然期待されていないんだな)

スト―――ン!
霞「安達君もフォークで三振とやはり調子は良いですね!」
武藤「ですね。これで後1人となりました!」

佐伯(最後が斎藤とはな。まだスタミナは十分あるし本気の本気で決める!)
斎藤(後ろには相良さんが居るが敬遠される恐れもあるし一発狙うか!)

ズバ―――ン!

1−0 141キロのストレートのボール球を空振り1ストライク!
斎藤「俺がボール球を振らされるとは!」
佐伯「まずは1つ。次は!」

ククッ!

2−0 次もボール球のシュートを振らされて2ストライクと追い込まれる!
斎藤「この場面なら慎重になると思いきやまた大胆なリードをするな」
十川(リードしてんのは俺じゃないけどね)
斎藤(しかしこのリードは読めんな。3球勝負の可能性もあるが―――大胆と見せて実は慎重か―――くそっ! アウトになったらお終いだしスタンド狙いはやめだ。コンパクトに狙って行くぞ!)
佐伯(追い込んだら多少ボール球でも振って来るはず3球勝負! 狙いはストライクゾーンギリギリ! クリティカルシュートで決める!)

ククッ!!!

ストライクゾーンギリギリ、審判によってはボールとも取れるコースにクリティカルシュートが通る!
斎藤「くっ! やっかいなコースに―――しかし打つ!」

ブ―――ン!!!

斎藤はコースギリギリを狙うがむなしく空振りの音だけがこだまし試合は終わった!
佐伯「やった。勝ったぞ!」
斎藤「負けたか―――最後はプライド捨てて当てにいったのに結局三振か―――ふう、完全に佐伯に負けたな」

霞「結局最後は空振り三振! 佐伯君、三球三振と最後まで力投を観せます!」
武藤「投手が1年生なら打者も1年生と本当に今年も1年が凄いですね!」

大島監督「さすがに手間取ったが最後は勝利とさすがは斉天のレギュラー達だ!」
全員「はい!」
大島監督「今日のヒーローは佐伯と佐々木だな。本当に良く投げて良く打ったぞ!」
佐伯&佐々木「はい!」
大島監督「それじゃ堂々と帰るか!」
全員「はーい!」

中西監督「結局負けたか」
全員「………………………………」
中西監督「負けたとはいえ関東大会には出られる。借りを返すチャンスはあるさ。帰って明日から猛特訓だな!」
全員「―――はい」
中西監督「こりゃダメだな。負けたのがそこまでショックだったか?」

こうして赤竜高校の秋の大会は準優勝と言う結果に終わった。

喫茶店MOON
斎藤「ただいま」
月砂「学校もあるんだから遅くなっちゃダメって言ってるでしょう!」
斎藤「ごめん。でもあの試合思い出すとどうしても」

斎藤は決勝で負けて以来いつにも増して練習時間が増えていった。
結依「急いては事を仕損じると言うぞ。それに前に行った様に子供の出歩く時間ではないぞ!」
斎藤「うっ! ごめんなさい―――だけど」
結依「はあ、やれやれそう言うところは男の子じゃな。なら今度からワシを連れて行け」
斎藤「それは出来ませんよ!」
結依「何故じゃ?」
斎藤「そんなの当然じゃないですか―――あっ!?」
結依「そうじゃな。そんな時間まで外に居たら心配するのが普通じゃ!」
斎藤「ごめんなさい」
月砂「とにかく今日は寝なさい」

我ながら少し無神経だったかなと思いながら斎藤は寝床につくのだった。
斎藤「そうだな。まだ決着は着いてないんだ!」

風祭達と戦う為斎藤は春の甲子園を目指して頑張って行く。その後も赤竜は猛練習をして行きチーム一丸となって頑張って行くのだった。