第22章 命運尽きるか?

−1995年 7月 上旬−
いよいよ夏の大会が始まる。今日はレギュラー発表?
中西監督「いよいよ大会も始まるな」
福西「いやー良かったですね。テレビであんなセリフを言った物だから出場停止かとも思ったんですけど」
中西監督「テレビの前に連盟の知り合いにそれらしい話はもうしてたからな。こっちの状況が整ったらあっちが条件を出すそうだ」
真田「さすがは監督!」
相良主将「しかしどんな条件を出すんでしょうか?」
中西監督「さあな、けどあいつの事だ。無理難題を吹っ掛けて来るんだろうな」
斎藤「嬉しそうに言わないで下さいよ」
中西監督「すまんすまん。まあ、こっちは柚の仕上がりしだいだな」
柚「クセ球も失敗した」
吉田「変化はしたんですが、球質が軽いので結局はムダでした」
中西監督「うむ。球種も制限があるからな。最悪、フォームチェンジも頭に入れとくか」
斎藤「フォームチェンジか」
中西監督「同じピッチャーの斎藤から見て柚は今のフォームが合ってると思うか?」
斎藤「そうですね。小柄な柚がオーバースローってのは合っていない気もしますね。まあ、俺も人の事は言えませんが」
中西監督「まあな。だがお前は結果を出してるからな」
吉田「しかし柚は器用と言えないしかえって悪くなる可能性が高くありませんか?」
中西監督「だから最悪の場合だよ。ベンチから甲子園のピッチャーを観れば何か参考になるかも知れんしな」
真田「つまり僕達は柚ちゃんの為にも死に物狂いで甲子園に出ろと」
中西監督「うむ!」
斎藤「そんな力強く頷かなくても」
玖珂「ところでレギュラーは?」
中西監督「そうだったな。まずは1番、斎藤!」
斎藤「はい!」
中西監督「そんな力強く答えんでも」
斎藤「去年の夏は家で寝込んでたもんで」

背番号 Lv 名前 守備位置 学年 背番号 Lv 名前 守備位置 学年
斎藤 一 投手 2年 相良 京一 外野手 3年
吉田 毅 捕手(外) 2年 10 山中 宰 投手 3年
玖珂 良雄 一塁手 3年 11 津山 旬 一塁手 3年
相川 正人 二塁手 1年 12 松野 結 三塁手 3年
嵯峨 蓬 三塁手 3年 13 加納 利雄 遊撃手(一) 3年
安達 正孝 遊撃手 3年 14 野々宮 煉 外野手 3年
伊沢 樹 外野手 3年 15 福西 克明 外野手 1年
真田 和希 外野手 2年

中西監督「とまあ以上だ」
福西「スタメンは無理だったけど、何とかベンチ入りはしたぜ♪」
相川「スタメンか、期待に応えるぞ!」
真田「1年で選ばれたのは弟子の相川君と福西君か」
吉田「3年の先輩達が居るからな。他の1年は秋からは大忙しだろうが」
斎藤「なんせ今の2年は俺達だけだからな」
真田「次のキャプテンも僕達から選ばれるんだよね」
吉田「まあな」
真田「僕、キャプテンやって見たいな。やった事ないし」
吉田「お前がか、ちょっと不安だな」
斎藤「うんうん」
真田「失礼ですな。ま、普通に考えて斎藤だろうね」
斎藤「俺ね。まあ、中学の時もやってたしな」
吉田「斎藤か、別の意味で心配だな」
斎藤「何でだよ?」
吉田「練習の鬼だから」
真田「確かに」
斎藤「クッ否定できん!?」

喫茶店MOON
真田「と言う訳で今年もレギュラーに選ばれました」
月砂「うーん」
吉田「何を考え込んでるんですか?」
月砂「このままじゃ本当にあんた達がプロ入りする気がして」
吉田「そんなオーバーな。俺達、まだ2年ですよ」
月砂「ハジメがプロ入りすると嬉しい様な残念な様な」
斎藤「姉貴には悪いけどプロ入りしなくても家業を継ぐつもりはないから」
月砂「それは別に良いのよ。ただ、プロ野球選手って安定した職業とは言えないから」
斎藤「まあね。けど、好成績出せば年俸が多くなるのは俺向きだと思うけど」
月砂「確かにハジメは昔から大舞台に強かったけど」
斎藤「まあ、プロ入りなんてまだまだ先の話さ。決まったら姉貴達にちゃんと話すから」
月砂「そうね」
結依「うむ。麗しい姉弟愛なのじゃ!」
斎藤&月砂「違います!」
吉田「………………」

赤竜高校
中西監督「1回戦の相手だが」
相良主将「すまん優勝候補の旭光商業に決まった」
吉田「夏、秋、夏と縁がありますね」
中西監督「夏、秋とこっちが勝ってるからな。特に秋にはあの筒井から9得点したからな。打倒赤竜と意気込みは凄いらしい」
真田「僕がサヨナラ打ったんだけど、我ながらあのスライダーを良くスタンドまで運べたなと思いました」
中西監督「あれは変な試合だったからな。プロでも年に一度くらいああ言う試合があるんだがとそれはいい」
相良主将「とにかく注意するのはエースの筒井と4番の岡崎だ。2人共、俺達と比べて見劣りされているが秋には間違いなくドラフトにかかるだろう」
中西監督「2人共、隙のない選手だから攻略法はない。だがお前達はあいつらより上の選手共対戦した事があるし大丈夫だろう」
玖珂「俺が偵察に行ったんだが」
嵯峨「俺も一緒だったんだけど?」
玖珂「1年の大島は長打力と肩は良いが、総合的に観たらやはり1年と言った感じだった」
中西監督「そうか、斉天の大島の子供が旭光に行ったんだったな」
玖珂「後、名前は中原だったかな? 1年ながら筒井並のストレートを投げてました」
中西監督「変化球は?」
玖珂「凄い変化球があると聞きはしたんですが、この目では見れませんでした」
中西監督「そりゃ厄介だな」
玖珂「はい。けどスタミナ不足なせいか抑えとして出て来るっぽい事を話してました」
中西監督「なるほど、最初に点差を開いて逃げ切るしかないな」
玖珂「ええ。幸い守備の下手なのが多かったですからさほど難しくはないと思います」
安達「お前はミートが上手いから良いけど、全員が全員打てるほどあまくないだろう」
中西監督「確かに、だがさっきも言った通りお前達はあれ以上の選手と対決もした。だから打てるはずだ!」
全員「はい!」

旭光商業高校
九重監督「1回戦から優勝候補同士の対決となったが、これはチャンスでもある」
中原「チャンス?」
岡崎主将「ここで勝てば勢いに乗って優勝する可能性が高くなるって事だ」
九重監督「そうだ。一発勝負の高校野球では勢いに乗った高校が有利になる」
大島「確かに、プロでも勢いに乗って連勝を続けますね」
九重監督「うむ。赤竜はエースの斎藤で来るだろう。秋には6人連続三球三振で抑えられた!」
中原「このとんでもない打線をですか凄えですね!?」
九重監督「と言っても今度は1打席ではなく4打席はある」
岡崎主将「はい!」
九重監督「そして筒井」
筒井「言われてなくても分かってます。あの屈辱だけは忘れていませんから!」

−地方大会1回戦 地方球場−
2年 真田 和希
後攻 先攻
赤竜高校 旭光商業高校
投手力 機動力 投手力 機動力
打撃力 守備力 VS 打撃力 守備力
意外性 経験値 意外性 経験値
総合力 総合力
山之内 努 3年
1年 相川 正人 倉 利政 3年
2年 斎藤 一 蜂谷 留蔵 3年
3年 相良 京一 岡崎 芳樹 3年
3年 玖珂 良雄 瀬尾 文 3年
3年 嵯峨 蓬 大島 圭一 1年
2年 吉田 毅 梶木 祐樹 3年
3年 安達 正孝 沖原 和 3年
3年 伊沢 樹 筒井 博人 3年

放送席
霞「夏の大会も始まり1回戦は優勝候補の赤竜高校VS旭光商業となりました。両校共1年生が1人ずつスタメンを勝ち取っています!」
武藤「相川君は家庭の事情と言う奴で広島から転校したらしいですね。シニア時代は有名なセカンドで向こうでは名門の誘いもあったらしいです。対する大島君は斉天大附属の大島監督の息子さん、中学軟式の出ですが長打力はかなり高いと言う話です」
霞「遅れながら実況は私こと白銀霞、解説も元ブレーブスのお騒がせ男こと武藤小太郎さんです」
武藤「その異名は初めて聞いたんですが?」
霞「それでは赤竜高校VS旭光商業の試合をお送りします」
武藤「スルーかい」

1回表 赤0−0旭 エースの斎藤が2年目デビュー!
斎藤「まあ、上は置いといて1番は山之内さんか、相手チームの中じゃミートは良い方か」

ズバ―――ン!
山之内「ストレートって分かっても打てないな」

霞「まずは140キロのストレートで山之内君を空振り三振に抑えます!」
武藤「いきなり140キロとは春よりレベルアップしてますね」

斎藤(倉さんは非力だし追い込んでから高めの球を振らせよう!)

ズバ―――ン!
倉「くっ、かすりもしないか!?」

霞「ミートに定評のある倉君でしたが結果は三振!
武藤「コントロールも春より良いですね。ああコースを付かれたらなかなか打てませんよ」

斎藤「蜂谷さんか、岡崎さんに匹敵するバッターだからな。慎重に行くか!」

ズバ―――ン!
霞「蜂谷君も空振り三振! 斎藤君、1回を三者三振と絶好調です!」
武藤「相変わらず立ち上がりは良いですね。このペースで行くとやっぱり今日は投手戦ですかね」

蜂谷「やっぱり1打席じゃかすりもしない」
岡崎主将「だな。やっぱり最初はミートに徹しないとダメだな」
蜂谷「ああ。うちは振り回すのが多いからな。そう言う意味じゃ相性の悪いピッチャーだな」

1回裏 赤0−0旭 秋の屈辱か燃えている筒井がマウンドに向かう!
筒井「まずはサヨナラを打ったこいつから料理だ!」
真田「燃えてるなー」

ククッ!
霞「まずは真田君をスライダー3つで三球三振!」
武藤「凄いキレですね。今日の筒井君のスライダーはタイガースの竜崎に匹敵するんじゃ!?」

真田「内側に凄まじいキレのスライダーが来ました!?」
相川「ここから見ても凄い変化でしたよ!?」

筒井「1年坊が! 打てる物なら打って見やがれー!」

ククッ!
相川「くっ!?」

霞「三振を奪いにくい事で知られる相川君でしたがスライダーを空振り三振!」
武藤「1打席であれをとらえるのは無理でしょう」

斎藤「お前が三振とは珍しいな?」
相川「外へ逃げる球を流すのは得意なんですが、内側に入って来るあれはちょっと打つのが難しいですね」
斎藤「俺の場合は外に逃げる訳だしお前の言う通り右に流して見るか」
相川「想像以上に変化するので思ってたより」
斎藤「ああ。分かってる!」

筒井「斎藤か、ミートとパワーに長けたバッターである意味、相良より厄介だな」

ガキッ!
斎藤「確かに打つのは難しいな」

霞「ファーストゴロで3アウトチェンジ!」
武藤「しかし1打席であのスライダーを当てるとは!?」

相川「あのスライダーを1打席でバットに当てるとは、さすがは斎藤さん」
筒井「やっぱり奴は要注意だな」

今日の斎藤と筒井の出来からやはり投手戦になり2人は6回をパーフェクトに抑える。

7回表 赤0−0旭 両投手、無四球ノーヒット中!
霞「珍しく武藤さんの言う通り試合は投手戦となりました。2人共四死球0のノーヒットと抑えています!」
武藤「珍しくって、まあ、まだ6回ですけど、2人共凄いですね」

斎藤(パーフェクト中とは言えスタミナは十分だ)
吉田(一発は怖いが、基本的にクリーンナップ以外は安牌だし問題ないだろう)
斎藤(けど3打席目、そろそろ相手も慣れて来たかも知れない)
吉田(大丈夫だってこのままパーフェクトやっちまおうぜ!)
斎藤(そうだな!)

ズバ―――ン!
山之内「ただでさえ打ちにくいストレートが変化球を使う事で打ちにくさが倍増されやがる!?」

霞「この回も先頭打者を三振とこれで15奪三振!」
武藤「球史でもっとも打ちにくい球種は速いストレートと聞きますが、斎藤君のストレートはそれを証明するかの様ですね」

吉田「さすがは斎藤、この調子で行こうぜ!」
斎藤「ああ!」

ズバ―――ン!
倉「む、無念」

霞「続く倉君には変化球、変化球、ストレートで三振とボール球が少ないですね」
武藤「クリーンナップ以外はかすりもしませんからね。ムダに球数を増やす事はありませんよ」

蜂谷「くっ、こっちの焦りを倍増するかの様なピッチングだ!? 筒井の為にもそろそろ結果を出さないと!」

カキ―――ン!
真田「楽勝!」

パシッ!
蜂谷「分かってはいたけど、あのセンターとんでもねえ足だ!?」

霞「センター前に落ちるかと思いきや俊足の真田君があっさりと追いつきアウトにします!」
武藤「野村や小鳥遊さんを思い出すほどの足ですね!?」

真田「見た見た。僕のファインプレイ!」
吉田「はいはい。おかげで助かりました」
真田「ブー! 心がこもってないなあ!」
斎藤「感謝はしてるよ。それよりお前からだろう」
真田「おっとそうだったね。それじゃ行って来るよ!」

7回裏 赤0−0旭 負けずと筒井もパーフェクト中!
筒井「とりあえず、こいつは安牌だな」
真田(うーん、張り切ったのは良いけど、まともに打ったところで出塁は無理っぽいしここは狙ってみるか!)

ガキッ!
真田「うえーん。あのスライダーにはバントもダメか」

霞「3バント失敗で1アウト!」
武藤「やっぱり、変化が大きいとバントも難しいですね」

ガキッ!
筒井「またかよ!?」
相川「やっぱりコントロールも凄いな!?」

霞「これで6連続ファールです!」
武藤「話には聞いてましたけど粘っこいバッターですね。相川君だけに12球も投げてます!」

相川(いい加減失投が来ないと先にこっちが参っちゃうな)
筒井「意地でも斬って取る!」

ガキッ!
霞「7連続でファールです!」
武藤「しかしあのスライダーとフォークを良くカットできますね?」

この後もファールが続き

ズバ―――ン!
相川(まずっ手が出なかった!?)

きわどいコースで手が出なかったが判定はボール!
筒井「くそっ!? 高校野球じゃ審判の判定にはケチをつけられねえ!?」

霞「きわどいですが判定はボールでフォアボール!」
武藤「ストライクともボールともどっちとも取れるコースでしたね。相川君も手が出なかったんでしょうが結果的には良かったですね」
霞「これでパーフェクトはなくなりましたが、ノーヒットノーランは継続中です!」
武藤「こうなったら記録にはこだわらずに勝つ事だけを考えた方が良いと思うんですが」

相川(何とか出塁は出来たな。キャッチャーは強肩だけど)

ここで相川が足で筒井のペースを崩し斎藤もフォアボールで歩かせる。
筒井「………………」
沖原「落ち着け、まだヒットは打たれてないんだ。普通に投げていれば問題ない」
筒井「ああ(分かってるんだけど思ってたところにボールが行かないんだよな!?)」

しかし沖原の助言もむなしく相良も歩かせて満塁となる。
霞「相良君もフォアボール! 三者連続フォアボールで満塁となります!」
武藤「やっぱりメンタル面は高校生ですね。しかし1年ながらあの筒井君をこうも追い込むとは相川君は将来恐ろしいバッターになりそうですね」
霞「あれ? ここで九重監督が出ました。ノーヒットに抑えてる筒井君を代えるんでしょうか?」
武藤「この試合は1点勝負でしょうから交代でしょうね。旭光には1年生で凄いピッチャーが入って来たと言う話ですから多分その選手が出て来るんでしょうね」

筒井「後は頼む(ポイッ!)」
中原「(パシッ!)は、はい…………
九重監督「どうした? さっきとは打って変わってテンションが落ちてるぞ」
中原「これで負けたら筒井さんにすんごく悪い事をするんだなと思ったら」
沖原「なるほど、そう考えたら怖くなって来た訳か(そうだよな。実力はあってもまだ1年生だ。この場面じゃプレッシャーがかかるだろうな)」
九重監督「勝てば良い事だ。それに筒井は実力が足りなかったから降板したんだから自業自得だ。仮にお前が打たれてもお前を責める資格はないさ!」
沖原(相変わらずハッキリ言うよな)
中原「うーむ。分かりました。頑張って抑えて見ます!」
沖原(いつもとテンション違うけど大丈夫かな?)

中西監督「あのマウンドのがそうか?」
玖珂「ええ。ストレートは速くて重そうでしたが、打てない球と言う訳ではありませんでした」
中西監督「初球ストレートに山を張っとけ!」
玖珂(コクッ!)

中原(あの〜いきなり大きくておっかなさそうなお兄さんなんですが?)
沖原(190近い長身だがパワーは身長ほどでもない。それよりバットコントロールが厄介だ。何処に投げても当てて来やがるからな)
中原(なるほど、それじゃ初球からあれで行きましょう!)
沖原(初球からあれかよ!? 決め球って普通追い込んでからだろう!)
中原(だって話を聞いてたらクセモノって感じ出し初球にストレートの山を張ってるかも知れませんし)
沖原(有り得るな。何をして来るか分からんし初球から積極的に振って来る奴だから)
中原(そんじゃ行きますよ!)

クルッ!
玖珂「…………」

霞「初球から積極的に振りましたが何か変わった変化球でしたね?」
武藤「ええ。速度からチェンジアップと思うんですが、普通のチェンジアップとは何か違っていた様ですね?」

クルッ!
玖珂(なるほど、そう言う球か!)
中原(次でとどめだ!)
玖珂(来た。ストレートだ!)

カキ―――ン!
沖原「最後までストレート待ちだと!?」
中原「えっとセンター前に抜けたと言う事は間違いなくヒットですなー。そんでもってランナーは1人返って1人アウトと言う事は…………」

霞「玖珂君のタイムリー2ベースでようやく1点が入りました。ちなみに斎藤君もホームに突っ込みましたが梶木君の好返球でアウト!」
武藤「これで2アウト2、3塁ですか、2アウトとは言えランナーは得点圏、次は得点圏打率は1割にも満たない嵯峨君ですか」
霞「しかし夏には試合を決める2ランを打ちましたよ」
武藤「あの時は得点圏って訳じゃありませんでしたけど、確かに意外なところで打ちますからね」

中原(またおっきい人だな)
沖原(大丈夫だ。こいつなら楽に抑えられる!)

ブ―――ン!
嵯峨「ノー!?」

霞「やはり得点圏じゃダメでしたね」
武藤「ですね。しかし相変わらず豪快な空振りですね」

中原「1点取られた」
沖原「まさか最後までストレート待ちとはな」
中原「裏を掻いたつもりだったんだけどな。沖原さんのリード通り投げれば良かった」
沖原「いやいや、結果論だよ。それにまだ1点差だ。追いつけなくはないよ」
中原「ですな〜♪」
沖原(相変わらず軽い奴)

中西監督「球威の高いチェンジアップね」
玖珂「遅い割にはミットの音があれだったのでそれとストレートも凄く重いです。速度差もやっかいですが」
中西監督「速度差もやっかい、当ててもやっかいか、何ともやっかいな変化球だな。今度こっそり握りを盗め風祭の助けになるかも知れん」
玖珂「ま、視力には自信がありますから良いですけど」

8回表 赤1−0旭 ようやく赤竜が1点を取った
岡崎主将「3打席目だ。もう打てない言い訳は出来ないな!」
斎藤(岡崎さんか、2打席とも三振は奪えなかったな)
吉田(ああ。外見とは裏腹に粘り打つのが得意でもあるからな)
斎藤(外見は関係ないと思うが、パワーがあって粘るのが得意ってのはやっかいだな)

カキ―――ン!
吉田「ぬぉ―――!?」

霞「アウトコース高めの外れたストレートでしたが巻き込みスタンドまで運びました!」
武藤「あのコースをスタンドまで運ぶとは!?」

吉田「ぬぉ―――!?」
斎藤「いい加減落ち着け!(ボコッ!)」
吉田「蹴りは反則です」
斎藤「軽く踏んづけただけだろう。それより落ち着け!」
吉田「うむしかしあんたはホームラン打たれたのに冷静ですね?」
斎藤「あんなコースのボールをスタンドまで運ばれたらしょうがないだろう。それにパニクッても状況が変わる訳でもあるまいし」
吉田「初めて会った時から思っていたけど、本当にタフだね」
斎藤「うーん、良く言われるけど、俺には分からんな?」
吉田(まあ、強い人間は自分が強いなんて思わないものかもな?)

中原「さすがは旭光のキャプテンにして4番、今年のドラフト候補!」
岡崎主将「持ち上げるのは良いが斎藤からそうそう点は取れん。お前の責任は重大だぞ!」
中原「打たれたら沖原君のせいにすれば俺は大丈夫です!」
沖原「おい!?」
中原「いや〜後輩想いの先輩を持ってボクは幸せだな〜♪」
全員「……………………」
沖原「今は打って行こう!」
梶木「三者三振です!」
沖原「オッケー守って行こうか」
中原「うぃっス!」
全員「……………………はあ」

霞「この回岡崎君のホームランで再び同点になりましたが、斎藤君は19奪三振です!」
武藤「そう言えば奪三振ですが県の記録っていくつなんですか?」
霞「知りません!」
武藤「…………調べたりはしないんですか?」
霞「全国区の記録だけ取り上げ様かが我が局のモットーですから! 今、忙しいのにそんな事調べてられませんかとか全然考えてませんから!」
武藤(後半が本音っぽいな)

8回裏 赤1−1旭 主砲の一振りで再び振り出しに戻る
中原「とおっ!」

ズバ―――ン!
吉田「1年の割りにずい分と速い球を投げるな」

霞「ええ。先ほどは球速の事が話題にはなりませんでしたが、初球143キロを計測しました!」
武藤「筒井君のMAXが144キロでしたから、速さで言えば筒井君より上になりそうですね」
霞「斎藤君もMAXで140キロを投げますから140キロ同士の投げ合いになりますね」
武藤「斉天のピッチャーなら珍しくないんですが他の高校もレベルが上がってますね」
霞「県の最高球速は竜崎君の150キロが最速らしいです!」
武藤「さっき全国区の記録以外は取り上げないとか言ってませんでしたか?」
霞「忘れました!」
武藤「はあ」

吉田「玖珂さんの言う通りだな。速いだけでなくミットの音がハンパじゃねえやしかし1年には負けられん!」
中原「ふん!」

ガキッ!
吉田「想像以上に重い!?」

霞「これは平凡なピッチャーゴロ!」
武藤「吉田君がピッチャーゴロですか速いだけでなく球威もある見たいですね」

中原「ふん!」

クルッ!
安達「速度差か本当にやっかいだな!?」

霞「最後はチェンジアップで空振り三振!」
武藤「速度差がやっかいですね。強打者だけでなくミートの上手いバッターにも十分通用してます!」

ズバ―――ン!
伊沢「速い!?」

霞「続く伊沢君には全球ストレートで三球三振!」
武藤「下位打線じゃちょっと手が出ませんね」

中原「楽勝!」
沖原(さすがだな。しかし延長になるとスタミナが不足している中原が不利だな。次の回で勝ち越したいところだけど8、9、1番じゃダメだろうなって俺からか!?)

9回表 赤1−1旭 接戦中
霞「試合もいよいよ9回となりました。それにしてもずい分と早いペースですね」
武藤「まあ、両チーム共に6回まで無四球ノーヒットでしたからね」
霞「筒井君の乱調で時間を消費しましたが放送時間にはまだ余裕がありますので延長になってもご安心下さい」
武藤「まあ、斎藤君も中原君も調子は良さそうですし延長になる可能性は高そうですね」

斎藤(このまま行けば延長かな?)
吉田(ああ。正直あの控えがこんなにやっかいとは)
斎藤(そうでもないような。何か忘れてる気がするんだよな?)
沖原「ここは先輩の威厳と言う事で打たなければ」
吉田(言葉とは裏腹に表情に自信のなさが表れてるな)

カキ―――ン!
霞「右中間真っ二つ! 先頭の沖原君がヒットを打ちます!」
武藤「すみません。ハッキリ言って全然期待してなかった沖原君が打ちましたね。相良君の強肩で2塁には行けませんでしたけど」

沖原「打てた。バットを持てば強打者と言う格言は本当だったんだね!」

斎藤「うーん?」
吉田(落ち着けたまたま芯に当たっただけだ。まずい今のは堪えたか?)
中原「ここは伝説的な強打で逆転してやろう!」

ククッ!
霞「タイミングがまったく合わずにカーブで三球三振!」
武藤「ハッキリ言ってバッターとしては全然ですね」

吉田「警戒して損した」
中原「警戒ってお兄さん、三球勝負じゃないですか?」
吉田「いや、1球目の空振り見てこいつは楽だなと確信したから」
中原「くっ、ここは平然と2ストライクまで見送れば良かったのか」
吉田「うーん、たしかにそっちの方が不気味な感じがするな」
中原「そんじゃいっか、野球は楽しくがモットーだから♪」
吉田(変な奴、ま、このアウトで斎藤も少しは落ち着いたろうしいっか)
斎藤「次は山之内さんか」

九重監督「(ギロッ!)分かっていると思うが4打席目だ。いい加減打て!」
山之内「俺、今日全打席三振なんですが?」
九重監督「それがどうした!」
山之内(まずい打たんと殺される!?)

カキ―――ン!
吉田「嘘だろう!?」
相良主将(パシッ! ビュ―――ン!)
玖珂(パシッ!)
山之内「そんなのありかよ―――!?」

霞「ライト前に打ちますが相良君のレーザービームでライトゴロ!」
武藤「まさしく草薙の再来ですね。しかしアウトにはなりましたがランナーの沖原君は2塁と結果的に進塁打にはなりましたね」

山之内「あのーやっぱり帰ったら地獄が待ってるんでしょうか?」
九重監督「負けたらもうその必要はないし勝ってもこれじゃ疲労感は残るからな。ま、帰るまでには結論は出す!」
山之内(何か負けた方が楽になれると思ったらテンションが落ちるな)

吉田(しかし、どうなってんだ。こんな簡単に打たれるなんて?)
斎藤(3年の人に取っては最後の夏だからな。やっぱり秋や春と比べてモチベーションが高いんだろう)
吉田(なら去年は何で簡単に抑えられたんだよ?)
斎藤(別に簡単に抑えた訳じゃないが俺の情報がまったくなかったからだろうな)
吉田(なるほど、相良さんのあの返球もモチベーションが高いからかね?)
斎藤(ああ。それより次はミートの上手い倉さんだ)
吉田(得点圏にランナーが居るしな。ここは三振で終わらせたいな)
斎藤(ストレート3つで行くぞ!)
吉田(ストレートのみね? コースは?)
斎藤(真ん中付近、ただし球速で速さを錯覚させる!)

ズバ―――ン!
倉「へ?」

霞「見逃しの三振で3アウトチェンジ!」
武藤「130キロ、135キロ、140キロですか意図的に速度を出したなら恐ろしいですね」
霞「どう言う事ですか?」
武藤「速度を錯覚させるんですよ。1球目は打てそうだなと思っていたところに5キロずつ増して行ったらストレートに合わすタイミングが狂って見逃しの三振、まあ、そう言う訳です」
霞「ほうほう!」

九重監督「お前は帰ったら地獄の特訓が待ってるからな」
倉「山之内、一足先に地獄に行くぜ!?」

吉田「それにしても本当に5キロずつずれたな」
斎藤「我ながら恐ろしいほどに考えた数字が出たので驚いた!?」
吉田「やっぱりマグレかい」
斎藤「当たり前だ。あんな狙った数字を意識的に出せるか! 今日は天も味方らしいな」
真田「くっくっく、これで僕達の勝ちは決まったね!」
斎藤&吉田「おわっ!? いつの間に?」

9回裏 赤1−1旭 ピンチだったがさすがは斎藤、ピシャリと抑える!
中西監督「さすがにあそこで1点取られてたら流れ的に俺達が負けてただろうからさすがは斎藤だ!」
斎藤「はい!」
中西監督「このピンチ面での強さは風祭も見習っとけ!」
柚(コクッ!)
全員「今更なんですがベンチ入りしてない柚(風祭)がここに居て良いんでしょうか?」
中西監督「本当に今更だな。ちゃんと許可取ってあるから大丈夫だっての?」
真田「何だ許可取ってあるんですか」
中西監督「当たり前だ。まあ、取るのにちっと骨を折ったが」
真田「何と骨折してまで!?」
中西監督「えっと、こいつって成績良かったよな?」
吉田「信じられませんが学年5位の成績らしいです」
真田「ちょっと小粋なジョークじゃないですか?」
中西監督「すまん。お前のボケは冗談か本気か区別が難しい」
真田「もう1年以上の付き合いでしょう」
中西監督「矛盾してる気がするが付き合いが長いと逆に分かりづらいんだよお前の場合」
全員(コクッコクッ!)
斎藤「えっと一つ提案があるんですけど」
中西監督「なんだ?」
斎藤「試合前に玖珂さんが言ってたと思うんですけど、あのピッチャースタミナ不足って」
全員「あっ!?」
中西監督「う、うむ。真田からだったな。とりあえず粘って来い」
真田「僕がそれをやったら相川君の良いところを取っちゃう様な」
相川「僕は別に」
中西監督「そう言う事はやってから言え!」
真田「はーい」
中西監督「しかし緊迫したこの場面であいつのあれは何とか出来んのか?」
全員「無理っス」
中西監督「だよな」
吉田「まあ、あの性格が救ってくれる事も多分あるかも知れませんし」
全員「そうそう」

霞「長かったですが試合は9回裏、一発が出ればサヨナラですが」

中原「どんなバッターでもすぐに料理してやるぜ!」

霞「マウンド上の中原君はまったくと言って平常心です」
武藤「あれを平常心と言っても良いのでしょうか? 確かに1年生とは思えない図太そうな感じはしますね(もしくはただのバカとしか思えん)」

ズバ―――ン!
霞「最後は143キロのストレートを見逃し三振!」
武藤「速くて手が出ない見たいですね」

真田「粘って来ましたよ」
斎藤「4球でアウトか」
真田「三球三振のところを1球ファールしたんだし」
相良主将「球威がある分、ファールを連続するとこっちも参りますね」
中西監督「らしいな。だが相川なら期待に応えてくれるはずだ!」
相川「重い球をファールにするのは得意ですが」
真田「良いね。相川君は打って良し守って良しと」
相川「いえ。足は師匠に及ばないし僕は非力ですから」
中西監督「自分自身の欠点を分かっていてそれを補う事が出来ると言うのがお前の凄いところだな」
相川「僕はただ自分の出来る仕事をしているだけですけど」
吉田「ふむ。やはり弟子は最初から師匠より上だったらしいな」
真田「………………」
相川「そんな事はないですよ」

霞「続くバッターは先ほど粘って出塁した相川君です!」
武藤「さっきはランナーとしても良い仕事をしましたね。2番打者としてはかなり完成度が高いですね」

中原「同じ歳か、負けられないなとシリアスモード解除!」

ガキッ!
相川「なるほど、凄い球威だ。これほどの速球派とは対戦した事がないな」

霞「簡単に2ストライクまで追い込まれたと思ったら振ってファール!」
武藤「まあ、ここで振らなければ三振ですからね」

中原(むむむ。待球作戦か)
沖原(ま、ここまでムダ球放らずに三球三振ばっかり狙ってたからな。気付かれてもしょうがないだろう)

ガキッ!
霞「チェンジアップもファール!」
武藤「どうやら前の打席と同じ様に粘っての出塁を狙ってる見たいですね」

相川「何でチェンジアップがこんなに重いんだろう? とそれよりこの速度差はきついな」
沖原(見え透いてるがここで再びストレートだな!)
中原「うっス!」

ガキッ!
霞「またまたファールです!」
武藤「本当に嫌な打者ですね。しかしマウンド上の中原君は全然気にしてなさそうですね」

相川(芯を外すと痺れるな。芯に当ててカットしないとダメか)
沖原(チェンジアップの後のストレートもカットしたか、まずいな。歩かせるか)
中原(却下!)
沖原(そりゃピッチャーとしては敬遠は嫌だろうけど、このままじゃ筒井の二の舞だぞ)
中原(それでも嫌です。意地でも抑えます!)
沖原(相手の思惑にハマルのは嫌だが、こうなったら止められんし打ち取るしかないか)

ガキッ!
相川「しまった!?」

霞「凄まじく長い対決でしたか、25球目でファーストゴロと決着がつきました」
武藤「結果的には凡退ですが、マウンド上の中原君を見る限り見返りも大きそうですね」

中原「勝ったぞ!」
沖原(しかし代償は大きかったな。次は斎藤か、抑えられるかな?)

相川「すみません」
中西監督「いや、上出来だ。後は斎藤と相良が何とかしてくれるだろう」

斎藤(あのピッチャーには追い込まれると不利だな。初球も良い球が来るのが多いし狙うのは2球目だ!)

カキ―――ン!
中原「ぬぉ―――!?」

霞「入った。ギリギリですが入りました。斎藤君のサヨナラホームラン!」
武藤「本当に恐ろしい打者ですね。疲労で135キロと落ちてましたがこの場面で易々とサヨナラを打つとは」

相良主将「俺の前に決めるとはな」
斎藤「相良さんは敬遠でしょうから思いっきり強振したんですがしかし球威はまだあったのかライトにギリギリ入りましたよ!?」
相良主将「確かに甲子園ならライトフライだったな」
斎藤「ですね。あの疲労したピッチャーからギリギリとは俺もまだまだです」
相良主将「サヨナラ打った奴のセリフとは思えんが、ま、目標が高いのは良い事だな」
真田「何をボケッとしてるの? 今日のヒーローじゃないか」
斎藤「ああ」
全員「やばいところだったけどさすがは斎藤(先輩)!」
斎藤「ああ(昨年に増して性格に問題があるのが増えた様な。ま、良いけどね)」

柚「似ている」
福西「似ているって誰に?」
柚「バカ兄貴!」
福西「あの風祭さんにか、確かに斎藤さんも欠点のないバッターだけど、うーん、確かにバッター転向したらああ言うタイプになりそうだ」

九重監督「終わったか」
筒井「無茶苦茶悔いに残る最後の夏だ。くそったれえ―――!!!」
大島「筒井さん、落ち着いて」
中原「すみません」
筒井「いや、お前らに罪はねえよ。あるとしたら俺だ!」
岡崎主将「いい加減にしろ。全員が悔しい思いをしてるんだ!」
筒井「分かってはいるよ。けど、悔いが残るよな」
岡崎主将「俺もお前もプロにはまず指名されるだろう」
筒井「確かにスカウトも2位以下に指名する可能性が高いので指名されたら是非入団してくれと言われたけど」
岡崎主将「プロで鍛え直せば良いさ」
筒井「俺はあの相川ってチビにリベンジしたいんだよ」
岡崎主将「ならプロでリベンジすれば良いだろう」
筒井「プロって?」
岡崎主将「1年でここまでお前をへこませた奴だ。3年になればドラフトにかかる可能性もあるだろう」
筒井「ケガした場合とかは?」
岡崎主将「そこまでは知らん!」
筒井「だな。プロかそうだな。あいつにリベンジできる可能性はまだあるか」
九重監督「それはともかく引退する3年も含めて帰ったら地獄が待ってると思え」
全員「そんな―――!? 試合が終わったばかりで練習ですか?」
九重監督「当然だ。この戦力で甲子園に行けないとは貴様らの精神力が未熟だからだ!」
岡崎主将「練習は構わないんですが、せめて日数をずらしませんか?」
九重監督「ダメだ。3年前に甲子園で準優勝した時よりも上なのに何故優勝できなかったんだ!」
筒井「やっぱりうちと同じく他校のレベルが上がってるからじゃないでしょうか?」
九重監督「来年から夏も1校のみになるし岡崎と筒井が居る今年がラストチャンスだったのに」
中原「大丈夫ですよ。俺や大島も居ますし」
九重監督「お前はリリーフだろうが、先発に良いのが居ないんじゃ秋は絶望的だな」
大島「まあ、スタメンは俺以外、みんな引退だから監督の気持ちは分からないでもないけど」
岡崎主将「来年の夏にひょっとしたら良い選手が入って来るかも知れませんし希望を持って下さいよ」
九重監督「そう言う奴は大抵斉天に行くんだが」
岡崎主将「向こうの斎藤は赤竜に行ってるじゃないですか」
九重監督「中西さんの伝説に憧れて赤竜に行く奴も多いんだよ」
岡崎主将「えっと(ダメだ。フォローが思い付かん)」
筒井「こりゃダメだな(このままの状態が続いて練習の事も忘れてくれれば良いんだけどな)」

喫茶店MOON
真田「と言う訳でサヨナラ勝ちです」
月砂「良くそんな凄いピッチャーに勝てたわね」
斎藤「まあねって去年もこんなやり取りした様な?」
月砂「気のせいじゃないの?」
斎藤「そうかな?ってそれはいいや今日の試合はみんなが俺をヒーローって言うけど」
吉田「サヨナラ打ったんだから当然だろう」
斎藤「けどサヨナラ打てたのも好投してた筒井さんを降板させたのも相川の仕事だからな。やっぱり相川が今日のヒーローだよ!」
相川「そんな事ないですよ。玖珂さんや斎藤さんと後ろが打たなければ勝てませんしやっぱり打った人がヒーローですよ!」
真田「じゃあ4人がヒーローだね!」
吉田「斎藤と相川と玖珂さんとお前か!」
真田「その通り!」
相川「ハハハ、確かにみんな頑張りましたもんね」
吉田「こいつは1球ファールしたくらいしか貢献してないけどな」
真田「ほほう。そう言う君もノーヒットじゃなかったかな」
吉田「うっさい!」
相川「しかしやっぱり高校ってのは凄いですね。1回戦であんな凄いピッチャー達が居るとは」
斎藤「たまたまだよ。2回戦以降はそこそこのピッチャーばっかりと当たるはずさ」
結依「そうなのか?」
柚「今日対戦した投手は地区No.2と聞いていた」
斎藤「地区No.1は決勝まで行かなければ当たらないからな」
吉田「佐伯か、今年も順調に行けば決勝で当たるのか」
相川「佐伯さんって甲子園で優勝したチームのエースでしたね」
真田「うむ。彼はとんでもなく速い球と変化球を投げるからね。当てる事がとっても難しいよ」
福西「気のせいかトゲを感じますね」
真田「気のせいだよ!」
相川「お役に立てる様頑張ります!」
真田「うむ。それでこそ僕の弟子だ!」
斎藤&吉田(要するに最後のセリフが言いたかったんだな)
福西「そう言えば師匠達は佐伯さんと対戦した事があるんですよね」
真田「まあね。夏には苦戦したけど秋には打ったけどね♪」
斎藤(あの時のあんな敗北感は初めてだったな。石崎にサヨナラ打たれたショックで忘れかけてたけど)
吉田「と言っても最後には三振食らってたけどな」
真田「それは君もでしょう」
吉田「まあな」
斎藤「………………」
相川「何で斎藤さんまで?」
斎藤「いや、俺が三振して負けたから」
結依「まだ気にしとったのか?」
斎藤「ええ」
相川「聞いちゃいけなかったかな?」
月砂「気にする事はないわよ」
相川「………………」
真田「やはりこの暗い雰囲気を消し去るのはこれしかない。ポチッとな!」
吉田「速い!? もう復活したのか?」
福西(こうやって見ると吉田さんも面白いな♪)

ドラスポ
霞「と言う訳で高校野球も始まりました」
武藤「………………」
霞「どうしました?」
武藤「いえ。長かったなと思いまして」
霞「今日は高校特集が多かったですからね。そしていよいよプロ野球です」
武藤「そうですね。パリーグは久住が首位打者独走でチームは更に連勝を続けていますね。セリーグはスワローズが再び連勝と頑張っています」
霞「ですね。タイトルは置いといてオールスターファン投票ですが昨年と同様に久住選手がTOPとなりました」
武藤「歴史に残るスターの誕生ですね。まあ、昨年からですがこのまま行けば中村さんの通算安打も抜くかも知れないですね」
霞「兄の様にメジャー行くとどうなるんでしょうか?」
武藤「そうか、そう言う可能性もあるんですよね。その場合は日米通算になるからどうなるんだろう?」
霞「まあ、仮定の話をしても仕方ないですね」
武藤「ですね」
霞「とまあ、プロ野球も相変わらずな毎日です」
武藤「訳しますとセリーグはスワローズ、パリーグはブルーウェーブの勢いが凄いと言うところです」
霞「以上で放送を終了します。それではまた明日!」

喫茶店MOON
真田「今日は高校野球の特集でスペシャルだったんだね」
吉田「6月に放送されたのとあんまり変わらんと言う話だぞ」
相川「吉田さんって良くそう言う情報を持ってますね?」
吉田「知り合いに情報通がいてな」
斎藤「そうなのか!?」
吉田「何で真顔でそんなに驚くのか知らんけど」
斎藤「いや、毎回どこからか情報を持って来るから気になってて」
吉田「知り合いのおじさんがスコアラーをやってんだよ」
真田「へえ。ところでスコアラーって何?」
相川「スコアラーと言うのはプロ野球で敵チームの偵察や記録など情報を収集している人の事を言います」
吉田「正確には少し違う気もするけど、俺のおじさんは先乗りスコアラーと言ってな相川が言った様な事をしているんだ」
真田「へえ。プロの関係者かそう言うツテがあるんだ♪」
吉田「ツテと言ってもな。間宮さんだって親父さんがプロのスカウトやっているらしいけどプロ入りはできなかっただろう」
真田「ふむ。やっぱりそう上手い話はないか」
吉田「そう言う事、プロ入り目指すなら地道に頑張らないとな」
真田「努力するしかないのか」
斎藤「そのおじさんってどのチームのスコアラーやってるんだ?」
吉田「えっと、話して良いのかな? 口止めはされてなかったからな」
斎藤「無理に言わなくてもいいよ。ちょっと気になっただけだから」
吉田「すまん。まあ、機会があれば紹介するよ」
斎藤「ああ」

こうして何気なく吉田の事を知った斎藤達だが夏の大会の途中なのでこの事はすぐに忘れて行くのだった。赤竜高校は2回戦以降は順調にコールド勝ちを続けて行く。