第24章 赤竜VS斉天、終わりなき戦い(後編)

−1995年 7月 下旬−
斎藤のテンションも上がり決勝戦が始まった。
斎藤「行くぞ! 野郎ども!!」
中西監督「凄いテンションだな!? 何があったんだ?」
真田&吉田「感動する事です!!」
相良主将「余計分からなくなったな?」
中西監督「まあ、それは置いといていよいよここまで来たな!」
玖珂「俺達が1年の時から連続で決勝までは来てますが」
中西監督「そうだ。だから、いい加減に準優勝から脱出するんだ。今年のチームは間違いなく過去最高の強さを誇っている!」
福西「しかし斉天も歴代最高らしいですよ」
中西監督「うむ。だから最強を決める決定戦とも言える!」
安達「甲子園ならそう言うのも分かりますけど」
中西監督「何でお前らテンションがそんなに低いんだ―――!!!」
相良主将「いえ。やる事はやったのでそれに別にやる気がない訳じゃないですよ。なあお前ら!!!」
全員「おう!!!」
中西監督「おう、静かに燃えてるのか」
相良主将「そう言う事です!」
中西監督「なるほど、ある意味、過去最高に頼もしいとも言えるな!」

−地方大会決勝戦 横浜スタジアム−
3年 佐藤 浩太
後攻 先攻
斉天大附属高校 赤竜高校
投手力 機動力 投手力 機動力
打撃力 守備力 VS 打撃力 守備力
意外性 経験値 意外性 経験値
総合力 総合力
真田 和希 2年
3年 鈴木 孝也 相川 正人 1年
3年 嘉神 高政 斎藤 一 2年
3年 高須 光圀 相良 京一 3年
3年 佐々木 新 玖珂 良雄 3年
1年 中尾 忠光 嵯峨 蓬 3年
3年 渡辺 恵一 吉田 毅 2年
3年 名倉 眞 安達 正孝 3年
2年 佐伯 真敏 福西 克明 1年

大島監督「特に注意するのは相良と斎藤だな」
中尾「後は活躍している相川とクセモノの玖珂さんが注意ですね」
佐伯「ミートの上手いバッターが多いからな。球数には注意しないとな」
中尾「ですね」
嘉神主将「斎藤の攻略法は?」
高須「斎藤には球に慣れるくらいしか手はないな」
嘉神主将「やっぱりな」
高須「ストレートを捨てて変化球狙いの方がヒットになる確率が高いとも言えるが」
嘉神主将「あのストレートを観てると変化球にもタイミングが狂うんだよな」
高須「やっぱり慣れるしか手はないか」
嘉神主将「だな」

放送席
霞「それでは今年も斉天大附属と赤竜高校の決勝戦をお伝えします。ゲストには元中日ドラゴンズの田村宗二さんに来てもらいました」
田村「よろしくお願いします」
武藤「えっと私も一応居るんですが」
霞「と言う訳で解説は武藤さんと田村さん、アナウンサーは私事、白銀霞で送らせてもらいます!」
田村「両校共、強豪ですからね。どんな試合になるか楽しみですね」
武藤「ところで田村、お前って今年から解説になったのか?」
田村「ええ。プロの解説がほとんどですがアマチュアの解説もさせてもらってます」
武藤「ふーん。個人的な質問になるんだが良いか?」
田村「言ってもらわない事にはなんとも?」
武藤「まあな。こほん、余力を残して引退して良かったのか?」
田村「ええ。星野って言う天才を観た時にもうチームに必要はないって感じだったし」
武藤「いやいや、お前なら他球団(   よそ   )でも十分やって行けるだろう?」
田村「いえ。星野って後継者を残せた事で俺、いや私の役目は終わったんですよ!」
武藤「そんなもんかね」
田村「そんな物ですよ」
霞「と言う訳で試合の始まりです!」
武藤「おおう!?」

1回表 斉0−0赤 いよいよ決勝戦が始まった!
佐伯(俊足の真田か、どう料理してやるか?)
中尾(この手のタイプは高めでフライを上げさせましょう!)
佐伯(そう簡単に行くのか?)
真田「行くぞ〜!」

ズバ―――ン!
霞「最後は高めのストレートを空振り三振です!」
武藤「初回から142キロか!?」
田村「変化球投手と聞いてたんですがストレートもかなり速いですね。2年でこれとはさすがは斉天のエースですね!?」

佐伯(打ち上げさせる前に三振を奪っちまったな)
中尾(予想より佐伯さんの調子が良いな。これは投手戦になるかも)

真田「さすがに佐伯相手だと打てないですな〜!」
相川「1回戦の筒井さんクラスの投手と聞いてたんですけど本当ですね」
斎藤「現時点で筒井さんより上かもな。昨年より更に凄くなってるっぽいし」
真田「確かにマウンドで忌々しいほど自信に満ちた表情してるけど」
斎藤「酷い言われ様だな。まあ、ともかくストレートよりもあのシュートがやっかいだな」
相川「あのストレートだけでもやっかいそうなのに…………ちょっと自信ないかも」

ククッ!
霞「クリティカルシュートを空振り三振!」
武藤「あの相川君が三球三振ですか!?」
田村「ストレートに近い速度であの変化か、現在のプロでもあそこまでのシュートピッチャーは居ないんじゃないのかな?」

斎藤「さすがのお前も1打席であれは当てれなかったか?」
相川「ええ。あのキレであの変化じゃ当てるのも難しいですね」

ククッ!
霞「続く斎藤君も三振とこの回を三者三振で抑えました!」
武藤「三者連続三球三振!?」
田村「噂通り、いえ、噂以上に凄いですね!?」

中尾「今日のキレなら完全も狙えるんじゃないですか!」
佐伯「そう言うセリフは次の相良さんを抑えてからだな」
中尾「っとすみません」

1回裏 斉0−0赤 佐伯は三者三振と見事なスタートを切った!
斎藤「ぬぉ―――!」
佐藤「このチャンスメーカー佐藤浩太に任せなさい!」

ズバ―――ン!
霞「初回から140キロを計測し佐藤君を三球三振と斎藤君は今日も調子が良さそうですね!」
武藤「ですね」
田村「県内で140キロ投手の投げ合いですか本当に今年はレベルが高そうですね」

佐藤「しょせんザコキャラは3球で終わりかい!」
鈴木「いや、誰も言ってないし」

カキ―――ン!
霞「と続く鈴木君は追い込まれながらも打って三遊間を抜けた!」
武藤「1アウトランナー1塁ですか、次は嘉神君ですし送りバントはないかな」
田村「しかし今日の佐伯君の調子からしてここでの1点は貴重ですしどう出ますかね」

佐藤「つうかあれ何!?」
嘉神主将「いや、俺に言われても?」

吉田(ここは打って来るよな?)
斎藤(関係ない! それよりランナー走って来るかも知れないからいつでも投げれる様にしとけ!)
吉田(だな。やばっランナーあれで足があるんだよな。忘れてたぜ)

コツンッ!
斎藤(クッ!?)

パシッ! シュッ!
嘉神主将「こっちはダメか!」

霞「初球いきなりのセーフティバント! 嘉神君はアウトですがランナーの鈴木君は2塁と一応は送りバント成功!」
武藤「嘉神君の送りバントなんて初めて観ましたよ!?」
田村「両校共にそれだけ今日の試合の結果にこだわってるんでしょう!」

大島監督「ふっふっふ、良くやった!」
嘉神主将「いえいえ!」
中西監督「…………」
吉田「なっ!?」
斎藤(コクッ!)

霞「なっ!? ここで高須君を敬遠!?」
武藤「ま、1塁空いてますからね。けど斎藤君の敬遠って初めて観る様な?」
霞「多分、公式戦じゃ初めてですね」
田村「両校共、この試合の勝敗にこだわりを感じさせますね」

高須「それじゃ後は頼むな!」
佐々木「ああ!」

吉田「しかしお前も簡単に従うな?」
斎藤「意地だけじゃ勝てないのはお前も知ってるだろう!」
吉田「すまん」
斎藤「別に春の事を引きずってる訳じゃないからそんな顔はするなよ! ただ勝つ為には道具に徹さなきゃならん事もある。俺だってこれが初めての敬遠って訳じゃないし気にすんな!」

春以前の斎藤に戻ったと言うかそんな雰囲気に安心して吉田は安心して頷く!
吉田「ああ!」

ズバ―――ン!
佐々木(ノビが上がった!?)

霞「佐々木君も三振と最後は自己最速更新の142キロを計測しました!」
武藤「さすがはピンチに強い斎藤君ですね!」
田村「これは本当に投手戦になりそうですね!」

2回表 斉0−0赤 斎藤もランナーは出すが無失点、自己最速と好調を見せる!
相良主将(追い込んだらクリティカルシュートだろうし追い込まれてから狙うか!)
中尾(凄え威圧感、これが相良さんか!?)
佐伯「さてと、どう攻めるか!」

ズバ―――ン!
霞「最後は143キロのストレートで空振りの三振!」
武藤「見送れば低めのボールでしたね。しかし相良君を三球三振とは今から来年のドラフトが楽しみですよ!」
田村「あの速さでコントロールも良いのか、現役ならリードして見たいピッチャーですね」

玖珂「お前が三球三振か」
相良主将「うちの斎藤と同じく追い込んでから来る球は抜群のキレとノビだ!」
玖珂「追い込まれる前に打つ方がヒットになる確率は高いか」
相良主将「そう言う事だ!」

ククッ!
玖珂「ちっ、七瀬さんの全盛期よりキレてやがる!?」

と三振し七瀬が聞いたら怒りそうなセリフを放つ!
霞「続く玖珂君も三振とこれで5連続奪三振!」
武藤「うわあ」
田村「気持ちは分かりますが驚いてもちゃんと解説した方が良いですよ!」

ガキッ!
佐伯「…………嘘?嘉神さん!?」
嘉神主将「とお!」

パシッ!
嵯峨「宝クジが!?」
中尾「宝クジ?」
嵯峨「気にしないでくれ」

霞「ホームランかと思いきやスタンドに入る球をもぎとりました!」
武藤「守備は現在で久住と同等ですか?」
田村「確かに凄かった。フェンスで2段ジャンプし捕球と横浜ベイスターズ(     ここ     )の及川も出来んぞ!?」
霞「しかしこれで連続奪三振は止まりました!」
武藤「チーム1ミートの下手な嵯峨君が止めると言うのは予想外でしたね!?」
田村「ま、意外性の高い嵯峨君らしいとも言えますね!」

嵯峨「はれ?」
玖珂「マグレは忘れろ!」
嵯峨「マグレとは何だ!」
吉田「落ち着いてそれでどうかしたんですか?」
嵯峨「さあ? 何か誰かに噂されている様な?」
玖珂「ふむ。悪口だな!」
嵯峨「てめえはいちいち」
吉田「頼むから仲良くして下さいよ」
玖珂&嵯峨「仲良く? (ギロッ!) はん! ありえねえな!」
安達「うわあ、息ピッタシ!?」
玖珂&嵯峨(ギロッ!!)
安達「っと福西が言ってた!」
福西「って俺を巻き込まないで下さいよ!?」

嘉神主将「………………」
佐伯「どうしたんですか?」
嘉神主将「いや、スーパープレイを見せたのに何もないなーと」
高須「お前が当然なんだから騒ぐんじゃないって言ったんだろうが!」
嘉神主将「いや、やっぱり何もないとあれですなー」
全員(スタスタ)
嘉神主将「スルーかよ!?」
佐伯(しかし当たりそこねがスタンドに入りそうになるとは嵯峨さんも要注意だな!?)

2回裏 斉0−0赤 2回も三者凡退と佐伯は好調中!
斎藤(1年で正捕手の中尾か)
吉田(やっぱり父親に似て打率が良いのかな?)」
斎藤(ミートは相川と同等、パワーは上だな!)
中尾(とにかくノビがケタ違いのストレートらしいからまずは慣れないと!)

ズバ―――ン!
霞「バッティングに定評のある中尾君ですが三球三振に倒れます!」
武藤「初見で斎藤君のストレートは無理でしたね」
田村「まあ、スピードガンに140キロって出てますし当然と言えば当然の三振の様な?」
武藤「まあ、そう言えなくもないですけど」

ガキッ!
渡辺「スライダーか、球種が増えた分打ちにくさが上がったな!?」

霞「スライダーを打ち上げ2アウトです!」
武藤「初球狙いは悪くないですが」
田村「ああ言う中途半端な狙いはダメですね」

ククッ!
名倉「球速の差がやっかいだな!?」

霞「最後はカーブで決めてこの回は三者凡退に抑えました!」
武藤「カーブも春以上に変化が大きいですね!」
田村「佐伯君と比べると見劣りする感じがするんですが確かに斎藤君も全国クラスのピッチャーですね!」

吉田「打たれたヒットは1本のみ今日も調子が良さそうだな!」
斎藤「当然!」

3回表 斉0−0赤 2回は三者凡退と斎藤も好調中!
佐伯(吉田か、目立たないけど能力はかなり高いからな)
中尾(はい。しかし佐伯さんとは相性が悪そうです)
佐伯(秋にはホームランも打たれたからな)
中尾(いえ、佐伯さんの方が相性が良いんですよ)
佐伯(へ?)
中尾(まあ、勘なんですけどね)
佐伯(ふーん)
吉田「相談は終わりか?」
中尾「ええ。吉田さんを抑える秘策有りです!」
吉田「7番打者相手に秘策って?」
中尾「打順で判断はしませんから」
吉田「そう言われると嬉しいけど、は?この俺にささやき戦術は通用せんぞ!」
中尾「いえ、そう言うのは考えてなかったんですが」
佐伯(どうでも良いけど、サインを出してくれ!)
中尾(すみません!?)

カキ―――ン!
嘉神主将「ふっ!」

パシッ!
吉田「なんつうか俺ってレフトフライばっかりじゃねえ!?」
鈴木「いや、俺に言われても?」

霞「期待の吉田君でしたが平凡なレフトフライに倒れ1アウト!」
武藤「良い当たりだったんですけどね」
田村「良い当たりってのは野手の正面に行きやすいですからね。元々、そう言うふうに守備位置が決まった訳ですし」
武藤「確かに」

佐伯(シュッ!)

ククッ!
安達「ダメだ。変化が大きすぎて対応できない!?」

霞「ミートの上手い安達君でしたが三振!」
武藤「これで6奪三振ですか、佐伯君と良い斎藤君と良い奪三振率が高いですね!?」
田村「決め球は違いますが確かにバランスの良い当たりは似てますね!」

ズバ―――ン!
福西「こんな速い球打てるか!?」

霞「続く福西君には自己最速144キロのストレートで三振と―――凄いですね!?」
武藤「144キロって今年のドラフト指名確実と言われてる筒井君のMAXじゃ!?」
田村「このピッチャーと言うか佐伯君や斎藤君より上のピッチャーも同世代に居るんですよね?」
霞「ええ。知名度では石崎君が一番ですね!」
武藤「1年で150キロなんて前代未聞な数字をたたき出したからな!?」
田村「本当にレベルが高いんですね!?」

佐伯「この回も3人で抑えれたな」
中尾「ええ(今日は本当にストレートも変化球も凄いな。これならマジでノーランか完全やりかねないぞ!?)」

3回裏 斉0−0赤 3回も三者凡退と佐伯は完全に抑えている!
斎藤「佐伯か、9番とは言え3割打ってるし油断はできないな!」
佐伯(追い込まれると不利だし初球から狙って行くか!)

ズバ―――ン!

霞「追い込んでからは140キロのストレートで空振り三振!」
武藤「追い込んでからは140キロのストレートばっかりですね!」
田村「タイプは違いますけど、オールスターで組んだ竜崎を思い出しますね!」
武藤「竜崎の再来とは、また凄い評価ですね!?」
田村「再来とまでは言ってないです!」

スト―――ン!
佐藤「最後はフォークかよ!?」

霞「追い込んでからフォークで三振!」
武藤「球種が多い分、ますます打ちにくくなっている感じですね」
田村「リードは斎藤君がしている見たいですが、見た感じ結構良いリードしている感じですね」

ズバ―――ン!
鈴木「ぬぉっ!?」

霞「最後はアウトコース高めのボール球を振らせてこの回を三者三振に抑えます!」
武藤「斉天から7奪三振ですか」
田村「最後は142キロと確かに追い込んでからは凄いですね!」

斎藤「この調子で抑えるぞ!」
吉田「今日の斎藤は凄いし本当に1点勝負になるのかもな」

吉田の予想通り6回まで斎藤も佐伯も無失点で抑える。

7回表 斉0−0赤 現在無失点イニングが続いている!
霞「それでは試合を振り返って」
武藤「振り返らなくても同点のままでしょう」
田村「それに2人共、スタミナの配分も完璧見たいですし」
霞「むう! まあ、良いでしょう。ここまで2年生投手が見事なピッチングで無失点に抑えております!」

佐伯「相川からか」

霞「マウンド上の佐伯君はここまで1四球無安打とノーヒットノーランを継続中です!」
武藤「ノーヒットノーランですと!?」
田村「気付いてなかったんですか!?」
武藤「うむ」
霞「そして現在12奪三振と変化球のキレ味も凄まじいです!」
武藤「マジで凄っ!?」
田村「………………」

相川(ここまで2打席連続で抑えられている。しかしシュート、いやクリティカルシュートにも慣れて来た!)

ガキッ!
佐伯(パシッ!)
相川(―――ダメだったか)

霞「追い込んでからクリティカルシュートが来ましたが打ち上げピッチャーフライ!」
武藤「当てられるだけでも大した物だと思いますけどね」
田村「確かにあの変化にキレじゃね―――キレだけならプロ以上かも知れませんね!」

佐伯「斎藤か」
斎藤「佐伯の調子は回を重ねる事に上がって来ている」
中尾(2人共凄い迫力だ!?)

ズバ―――ン!
斎藤「想像以上に速いな!?」
佐伯「一発狙いか」

霞「初球ボール球でしたが空振り1ストライクです!」
武藤「一発狙いのスイングですね」
田村「まだヒットも出ていないしコンパクトに振った方が良い気もするんですけどね。しかし1点勝負っぽいし一発狙いも悪くないと言えば悪くない気もしますね!」

佐伯(次はと?)
中尾(これで!)
佐伯(ああ!)

スト―――ン!
斎藤「げっ!? 入ってんのかよ?」

審判(ギロッ!)
斎藤「えっと何でもないです(やばっ!? 声に出てたか!)」

霞「次はフォークを見送りこれで2ストライクと追い込まれました!」
武藤「ここまでは佐伯君のペースですね。今日はほとんどムダ球を投げませんし3球勝負でしょうかね!」
田村「慎重に行く可能性もありそうですけど、ちょっと読めませんね」

佐伯(クリティカルシュートだ!)
斎藤(クリティカルシュートだな!)

ククッ!
斎藤「くっ!?」

霞「最後はボール球のクリティカルシュートを空振り三振!」
武藤「うーん、ボール球で来ましたか」
田村「3球勝負と決めた斎藤君の負けですね。しかしあの思い切ったスイングはある意味凄かったですね!」

相良主将「初球もらった!」

カキ―――ン!!!
佐伯&中尾「なっ!?」

霞「―――入った! やはり決めたのは赤竜の不動の4番こと相良京一だ―――!!」
武藤「アウトコース高めのボール球を良くもまあスタンドまで!?」
田村「ボール球と言えど144キロを計測したストレートをよくもまあライトスタンドまで!?」

相良主将(タッ!)
全員「さすがはキャプテン!」
相良主将「まあな!」
中西監督「確かに見事な一発だったな」
相良主将「はい!」

玖珂「良いところはいつもあいつだな」
嵯峨「だな。ま、打つとしたらあいつか斎藤しか思い浮かばなかったが」
玖珂「はあ(こいつと同じ思考回路とはな。俺もバカが移ったかな)」
嵯峨「何だよ。そのタメ息は?」
玖珂「気にするな。大した事じゃない!」

斎藤「あっさり打ちますね」
相良主将「スピードが出ていた分、飛距離が伸びたおかげだな。しかしお前に打たせてもらった感じもするな」
斎藤「へ?」
相良主将(斎藤を抑えた後も佐伯の集中力は変わってなかった。打てたのはあの若いキャッチャーのおかげだな!)

中尾「すみません!」
佐伯「お前が謝る事はないだろう?」
中尾「いえ。完全にリードを読まれました!」
嘉神主将「確かに低めに投げればスタンドまでは届かなかったかもな」
中尾「すみません!」
嘉神主将「気にするな。勝負事には『たら』も『れば』もないんだ。結果が全てさ。リードしたお前と頷いた佐伯、両方に問題が有った」
高須「それに相良(あいつ)を知ってる俺達も何も言わなかったからな」
嘉神主将「そうそう1点くらい高須と佐々木が取ってくれるから安心しろって!」
佐伯「ここは格好良く自分がじゃないんですね」
嘉神主将「だって斎藤(あいつ)とは相性が悪いんだもん」
全員「………………」
嘉神主将「そのありえねえって目は止めて下さい!?」
佐伯「ぷっ、あっははは、何か色々飛んじゃいました。もう大丈夫です!」
高須「中尾は?」
中尾「大丈夫です!」
大島監督「良し良しそれでこそ斉天の部員だ!」
全員「……………………」
大島監督「その居たのか? って目は止めろ。一応監督だぞ!」
全員「ぷっ、あっははは!」
大島監督「ったく!」

カキ―――ン! パシッ!
渡辺「ほっ、何とか捕れたな」

霞「三遊間を抜けるかと思いましたが渡辺君がジャンピングキャッチ!」
武藤「1点先制された事で斉天の選手の集中力が増している感じがしますね!」
田村「逆境に強いのも名門の証ですかね」

7回裏 斉0−1赤 相良の一振りで赤竜が1点を先制!
霞「マウンド上の斎藤君はここまで2安打無失点と見事に抑えています!」
武藤「奪三振は?」
田村「ここまで15奪三振ですよ!」
武藤「斉天相手に―――とんでもないピッチャーだなー!?」

斎藤「佐々木さんか!」
佐々木「これで4打席目、いい加減打たないとな!」

ガキッ!
霞「カーブを打ち上げ1アウトです!」
武藤「これで佐々木君は今日4打数ノーヒットですか」
田村「斉天のクリーンナップをここまでノーヒットですか―――想像以上に斎藤君は良い投手見たいですね」

ズバ―――ン!
中尾「ううっ!?」

霞「今日ヒットを打っている中尾君でしたが三球三振に倒れます!」
武藤「まあ、ヒットと言ってもラッキーな奴でしたしね」
田村「しかしかすりもせずとは―――斎藤君の調子が上がって来ているんですかね?」

カキ―――ン! パシッ!
渡辺「正面かよ!?」

霞「良い当たりですがファースト正面のライナーでチェンジです!」
武藤「三者凡退ですか」
田村「この回は三振が1個ですか、調子が上がってるのか下がってるのか良く分かりませんね?」

斎藤「おっし!」
真田「このまま行けば勝てそうだね♪」
吉田「だな!」

8回表 斉0−1赤 7回も無失点と斎藤は絶好調!
嵯峨「ぬぉ―――!!!」

ブ―――ン!!!
霞「―――まずは嵯峨君を空振り三振に抑えます!」
武藤「しかし元ピッチャーとしたら背筋が寒くなるスイングですね!?」
田村「元キャッチャーとしても同感です!」

佐伯「次は吉田か、バッティングの良い選手が多いから気が抜けないな!」
吉田「もう2点は欲しいな。しかし佐伯からはきついか」

ククッ!
霞「やはり最後はクリティカルシュートだ!」
武藤「あのインコースのクリティカルシュートはなかなか打てませんね!」
田村「確かに、右打者であれを打つのは難しそうですね!」

ククッ!
安達「当てる事もできんとは!?」

霞「左打者でも変わらない様な?」
田村「まあ、右左に関わらず一朝一夕で打てる球じゃありませんね!」
武藤「しかし赤竜高校も佐伯君対策はしていると思いますが?」
田村「シュート打ちの訓練はしてても打てるとも限りませんからね!」
武藤「確かに」
霞「と言う訳でこの回も絶好調ですが現在赤竜高校が1点リードしております。このまま赤竜高校が勝つんでしょうか!」

8回裏 斉0−1赤 佐伯も三人で抑えたが試合は赤竜高校がリード!
大島監督「そろそろ1点取れなきゃやばいな!」
嘉神主将「確かに」
大島監督「下位打線か、代打も手だが名倉にそのまま打たせるか」
名倉「まあ、転がせばヒットになるかも」
大島監督「今日3三振でかすりもしてないしな」
名倉「すみません」
大島監督「しかし延長の可能性もあるし―――やっぱり打てつうか最低でも当てて来い!」
名倉「はい!」

ガキッ!
嵯峨(パシッ! シュッ!)
名倉「………………」

霞「初球打ちましたが平凡なサードゴロに倒れ1アウト!」
武藤「ストレートに当てただけでも大した物かな」
田村「いえ。ここまでノーヒットだからダメかと」

大島監督「当てれたがダメだったか」
中尾「まあ、当てるだけでヒットになるなら誰も苦労はしませんし」
大島監督「良し次は佐伯だったな。ホームラン打って来い!」
佐伯「ホームランですか、ちょっと無茶かと」
大島監督「秋には打てたじゃないか?」
佐伯「あれはフォークだけに的をしぼってたから」
大島監督「とにかく打て」
佐伯「分かりました!」

カキ―――ン!
霞「追い込まれてから4球目、スライダーを左中間に打ちます!」
武藤「狙っていたボールが来たとは言え良くこの場面で打てましたね!」
田村「バッターとしても一級品って事ですかね」

大島監督「おう。ホームランじゃなかったがマジで打ちやがった!?」
全員「期待してたんじゃなかったんかい!」
大島監督「佐藤、鈴木!」
佐藤&鈴木「はい!!」
大島監督「四死球でもエラーでも良いから1人出て嘉神か高須に繋げ!」
佐藤&鈴木「全然期待されていませんのね!?」
大島監督「打てる自信があるなら同点にしてくれても構わんぞ!」
佐藤&鈴木「全力で相手のエラーを誘って見せます!」
中尾「うちのチームって?」
高須「気にするな」
嘉神主将「こう言う雰囲気は好きだな!」

斎藤(2人で抑えるぞ!)
吉田(ああ!)

ガキッ!
佐藤「あれ?」
佐伯「やばっ!?」

パシッ!
安達「セカンド!」

シュッ! パシッ!

相川「―――ダメか、ファースト!」
佐伯「危なかった!?」

シュッ! パシッ!
玖珂「アウトだな!」
佐藤「一歩届かずか!?」

霞「飛び出していた佐伯君でしたが間一髪セーフ! 佐藤君は余裕でアウトです!」
武藤「これで2アウトですか」
田村「次の鈴木君は今日ヒットを打ってますし期待ができますかね?」
武藤「疑問形で言われても?」

ズバ―――ン!
斎藤「………………」
鈴木「よっしゃー!」

霞「2−3からストレートが外れてフォアボール!」
武藤「むむむ。ここで試合が決まりそうですね」
田村「今日5打席目の嘉神君ですね。4打数ノーヒットで期待のしようがない気もしますが」

大島監督「つう訳で頼むぞキャプテン!」
嘉神主将「うっす!」
高須「珍しくやる気だな!」
嘉神主将「場面が場面だからな。苦手だろうと打たなきゃならん!」

カキ―――ン!
霞「追い込まれてからストレートを右中間に運びます。2塁ランナーの佐伯君はホームイン! 1塁ランナーの鈴木君は3塁ストップ! 打った嘉神君は1塁ストップ!」
武藤「同点ですか―――追い込まれた後に意地で打った感じですね!」
田村「2アウトですし次の高須君は歩かせて佐々木君で勝負ですかね」

吉田「敬遠か―――今日はヒットを打たれてないし勝負しても良いと思うんだが」
斎藤「満塁の方が守りやすいからな」

嘉神主将「歩かせない様に1塁で止まったんだが意味はなかったか」
高須「むう。不完全燃焼だな」

ガキッ!
相良主将(パシッ!)

霞「満塁のチャンスでしたが佐々木君はライトフライに倒れ3アウトチェンジ!」
武藤「斉天の土壇場での反撃も凄かったですが赤竜の守りも凄かったですね!」
田村「実力伯仲ですね」

中西監督「何とか同点ですませたな」
斎藤「すみません」
中西監督「秋に比べたら同点ですませた分だけ成長してるさ!」
吉田「しかし斉天は追い込まれてからが凄いですね!」
中西監督「それだけ経験値が高いんだ。しかしうちも負けてないはずだ。表でもう1点とって逃げ切るぞ!」
全員「はい!」

大島監督「良し良しこれで裏でサヨナラのお膳立てはできたな!」
中尾「俺からですが自信はないですね」
名倉「同じく」
佐伯「延長になる可能性が高いか?」
大島監督「は、はあ、まあいいさ。それよりもう1点もやるなよ!」
佐伯&中尾「はい!!」

9回表 斉1−1赤 試合もいよいよ終わりかと思いきや同点となった!
霞「試合もいよいよ9回と行きたいですが土壇場で同点とまだまだ続きそうです!」
武藤「ふう。盛り上がりを見せますね!」
田村「確かにスタンドでの応援は凄まじい事になってる様ですが」

佐伯「まずは1人だ!」

ククッ!
福西「9回だってのに全然キレが落ちてないじゃないか!?」

霞「やはり最後はクリティカルシュートで決めます!」
武藤「さすがですね」
田村「延長になると層の厚い斉天大附属の方が有利ですかね」

真田「―――最低でも転がさないと!」

カキ―――ン!
佐伯「なっ!?」

霞「3球目フォークをファースト強襲の内野安打!」
武藤「斉天には嫌なランナーを出しましたね」
田村「確かに、足は速そうですが」

真田は初球から盗塁を決めて2塁へ!
中尾「話には聞いてたけど何て足だ!?」
佐伯(ランナーは無視しろ!)
中尾(けど、3塁に到達されたらやばいですよ!?)
佐伯(さすがに三盗はないとも言えないか―――良し、1球外すぞ!)

カキ―――ン!
相川「良し狙い通り!」
佐伯&中尾「んなっ!?」
名倉「行かせるか!」

パシッ!
真田「やばっ!?」

霞「懸命に戻りますが間に合わず真田君もアウトでチェンジです!」
武藤「ヒットエンドランか、狙いは悪くなかったんですが、相川君が右に引っ張ったのが痛かったですね」
田村「いえ。普通ならヒットの打球をアウトにした名倉君のファインプレイを誉めるべきでしょう!」

中西監督「佐伯のリズムを狂わす為にやったんだが失敗だったか」
相川「無理して打たずに見逃すべきでした」
真田「ま、あの当たりを捕られた時点で仕方ない気もするけどね」
中西監督(やっぱり俺の責任だな。相川に外し方があまければ打てとか言わずにそのまま真田に盗塁を狙わすべきだった!)

大島監督「見たか俺の名采配、あそこで代打を出さずに良かっただろう!」
佐伯「名倉さん助かりました!」
名倉「バッティングで助けてやれないからな。守備の時くらいは頑張るさ!」
大島監督「シカトかい」

9回裏 斉1−1赤 赤竜高校のチャンスだったが結局は無得点に終わった!
斎藤「中尾か!」

ガキッ!
中尾「全然球速が落ちないな!?」

霞「140キロのストレートを打ち上げキャッチャーフライに倒れます!」
武藤「準決勝と同じく長くなりそうですね」
霞「いえ。投手戦ですから延長でもそんなに時間はかかっていませんよ」
武藤「おう。本当だ」

ズバ―――ン!
渡辺「くそっ!?」

霞「えっと?」
田村「アウトコース高めのボール球を空振りして三振ですね。球速は141キロを計測しています!」
武藤「9回で141キロか、スタミナはまだまだあるって感じですね」

ガキッ!
名倉「ファースト真正面じゃ足も意味ないな」

霞「名倉君は平凡なファーストゴロに倒れ3アウトチェンジで延長戦に突入します!」
武藤「やっぱり延長行ったか」
田村「本当に盛り上がりを見せますね!」

10回表 斉1−1赤 実力伯仲で延長戦に突入!
佐伯「斎藤か―――どう抑えるか!」
斎藤「どう打つか!」

ズバ―――ン!
霞「初球インコースへのストレートを空振り1ストライク!」
武藤「いきなり145キロですか!?」
田村「瀬戸のルーキー時代を思い出しますね!?」

ガキッ!
佐伯「しつこいっ!?」
斎藤「ファールするのが精一杯だ!?」

霞「追い込んでからこれで6球連続でファール!」
武藤「失投を投げない佐伯君もさすがですが、三振しない斎藤君も凄いですね!?」
田村「意地のぶつかり合いですね」

斎藤「うっら―――!」

カキ―――ン!!!
佐伯「ギャ―――!?」

霞「―――バックスクリーン一直線で入った―――!!!」
武藤「もしかしたらと思いましたがこの場面で良く打てますよね!?」
田村「しかしあのシュートを良くあそこまで!?」
霞「10球目のクリティカルシュートをバックスクリーンへ運んだ斎藤君がホームイン!」

斎藤「やりましたー!」
相良主将「お見事!(本当に期待を裏切らない奴だな!)」

中尾「はっ!?落ち着いて下さい。まだ試合は終わっていませんよ!」
佐伯「分かったからお前が落ち着け!」
中尾「すみません」
佐伯「さてと、後続は3人で抑えるぞ!」
中尾「へ? あっ、はい!?」
佐伯(シュッ!)

ガキッ!
相良主将「良くこんなシュートをスタンドまで飛ばせたな!?」

霞「大きな当たりでしたがスタンドまでは届かずにセンターフライ!」
武藤「春の時と同じくモチベーションが落ちて打たれるかと思いましたが」
田村「むしろ。球の勢いは上がってる様ですね!?」

佐伯(シュッ!)

ガキッ! パシッ! シュッ!
玖珂「ちっ!」

霞「玖珂君はフォークを当てるもピッチャーゴロに倒れて2アウトです!」
武藤「しかし裏を掻かれながらも当てるところはさすがですね!」
田村「確かに敵に回すとやっかいそうなバッターって感じですね!」

佐伯(シュッ!)

ズバ―――ン!
嵯峨「くっ、速いっ!?」

霞「自己最速145キロのストレートで三球三振!」
武藤「10回で自己最速ってところが恐ろしいですね!?」
田村「まったくだ!?」
霞「赤竜高校はこの回に貴重な1点取りましたがこれで試合は決まるんでしょうか?」
武藤「普通なら決まりっぽいんですが、斉天や無明って追い込まれてからが凄いんですよね!?」
田村「確かにまだまだ試合の結果は分かりませんね?」

中西監督「当然だがお前ら裏は死ぬ気で守れ! 甲子園がどうかとかそう言う事は関係ない! 何10年か振りに斉天を王者の座から(くだ)せ!」
全員「はい!」

10回裏 斉1−2赤 いよいよ試合も終わりか!
大島監督「やれやれ、ここまで追い込まれたのは俺の監督生活では初めてだ!?」
全員「つうか監督が就任してから一度も優勝できなかった事はないんじゃ?」
大島監督「まあな。もう20年以上連続で優勝を続けているからなー」
佐藤「とんでもねえ高校だな!?」
鈴木「まったくだ!?」
大島監督「しかし歴代最強の今、負ける事は許されん。この状況を全力で引っ繰り返してやれ!」
全員「うっす!」

ククッ!
佐伯「ほっ!」
斎藤「外れたか!?」

霞「カーブが大きく外れてフォアボール!」
武藤「いきなりですね。ボールの勢いは良いんですけど?」
田村「ただ勢いが良すぎてストライクゾーンに入らないと」
武藤「まあ、私も調子が良すぎてコースに入らないって事はありましたね」
霞「つまり変化球は変化が大きくなりすぎて入らない。ストレートは想像以上にホップしてボールになってしまう訳ですね!」
武藤「ええ。とんでもないノビとキレです!?」

ズバ―――ン!
佐藤「3球で終わらせられるとは!?」

霞「続く佐藤君には140キロを3連続で三振と抑えます!」
武藤「完全にボールの下を空振ってますね!?」
田村「その前にミットにボールが入ってから振っていますよ! コントロールも良くなって来ていますしこれは打てないかも」

斎藤(シュッ!)

グイ―――ン! ズバ―――ン!
鈴木「なっ!?」

霞「142キロのストレートを見逃し三振で後1人に追い込みました!」
武藤「何かバッターの表情から察するに気が付くとボールがミットに入ってたって感じですね!?」
田村「信じられないがそれだけボールがノビてるんでしょうね。次はタイムリーを打っている嘉神君ですね!」

嘉神主将「このままじゃ最後のバッターか!?」
高須「前の打席の時とは全然違うな?」
嘉神主将「だってさ。前の打席でもヒットがやっとだったし」
高須「余裕があるのかないのか分からん口調だな?」
嘉神主将(さてと、どう繋ぐか?)
高須「決めて来い!」
嘉神主将「あん?」
高須「後ろの俺に回す必要もないだろう。スタンドに運んで終わらせろ!」
嘉神主将「簡単に言ってくれるな?」
高須「多分、これで赤竜とは最後の試合になるだろう。キャプテンらしいところを見せ付けてやれ!」
嘉神主将「はあ―――分かった。決めて来るわ!」
高須「おう!」

初球、2球とストライクを続け3球目で勝負は決した!

カキ―――ン!
斎藤「………………」
嘉神主将「………………ふむ!」

霞「入ったー! ど真ん中と言えど最速142キロのストレートをバックスクリーンへ叩き込むサヨナラ2ラン! しかしこの場面で良く打てますね!」
武藤「確かに斎藤君のボールはそれほど球威がないとは言えこの場面で良く!?」
田村「うーん、初球からフルスイングでしたしもしかしたらと思いましたが本当に打ちましたね!?」

斎藤「あの時と同じ最高のボールだったんだけどな」
真田&吉田「斎藤っ!?」
斎藤「大丈夫だ。あの時とは違う。あの時は俺の我がままで打たれてショックだった。今回はただ悔しいんだ。最高のボールが打たれてそりゃ少しはショックだけど、今度は勝ちたい。そんな気持ちにさせるんだ!」
中西監督「次か、なら甲子園だな!」
斎藤「はい!」
嵯峨「要するに負けても次があるから頑張れるって事かな?」
玖珂「そんな単純な物でもないと思うが?」
相良主将「しかし間違ってもいないな!」
嵯峨「ふっははは、ついに玖珂を打ち負かしたぞ!」
玖珂「別に勝負してない! つうかその顔はマジむかつく!」
真田「わっははは、試合には負けたけど勝負には勝ったって事かな♪」
吉田「いや、勝負にも負けてるし」
斎藤「あっははは」

大島監督「何で赤竜の連中(   あいつら   )はサヨナラ負けして笑ってるんだ?」
全員「そんなの分かりませんよ?」
嘉神主将「なあ俺達は勝ったんだよな?」
高須「ああ。勝ったさ」
佐伯「―――吹っ切れた。いや、開き直ったのか」
中尾「何か言いましたか?」
佐伯「いや(斎藤、いや赤竜高校はもっともっと強くなるな。俺達ももっともっと強くならなきゃな!)」

霞「と言う訳で決勝は斉天大附属が3対2で勝利しました!」
武藤「やはり斉天は強しですね!」
田村「しかし2年生投手は凄かったですね。来年のドラフトが今から楽しみですよ!」

喫茶店MOON
斎藤「と言う訳で負けました」
月砂&結依「……………………」
斎藤「その信じられない目はなんですか?」
月砂「だってね」
結依「うむ」
斎藤「訳分からん?」
月砂「だって負けたら悔しそうにしてるのがハジメなのに!?」
結依「まったくじゃ!」
斎藤「別に悔しくない訳じゃないけど、ただ、引きずるにしてもやり様はあるんじゃないかなって」
月砂「こうやって子供は大人になって行くのね」
結依「うむ。ちょっとつまらんのじゃ」
斎藤「あんたらなー、ま、良いけどさ」
吉田「そう言うさめたところがじゃないのか」
斎藤「そうかな。だけど練習量はもっと増やして行こうと思ってるんだけど」
真田「やっぱり斎藤は斎藤のままだね」
吉田「だな」
斎藤「何だよ?」
吉田「いや、それにしても今年も引っ繰り返されたな。最後は低めにするべきだったか?」
斎藤「多分、コースは関係ないな。何処に投げても打たれるそんな雰囲気だった。ま、俺としたら絶対抑えられる自信はあったんだけど」
吉田「確かにな。モチベーションが極限に達してたって感じはしなかったな」
真田「は?」
吉田「いや、何つうか普通な感じ凄え不自然なほどいつも通りだったんだよな。スイングは強振だったけど」
斎藤「だからこそ実力を完全に発揮できたのかもな」
吉田「うーん、完全に実力を発揮できる状態っての凄い静かなイメージがあるんだけどな。確かに、そう言う意味じゃ嘉神さんも静かだったけど、ただ何か違うんだよな?」
真田「?」
斎藤「まあ、ニュアンスは分かるよ」
真田「?」
吉田「要するに嘉神さんは凄い人って事かな」
真田「ふーん」
柚「………………」
斎藤「っと柚の参考になる様な事はあったかな?」
柚「あったと言えばあった。ないと言えばなかった!」
斎藤「?」
柚「変化球の参考にはならなかったけど、ピッチャーの参考にはなった!」
斎藤「なるほど!」
真田「しかしこれで3回目の甲子園か、どんな出会いが待ってるかな♪」
吉田「セリフと表情が合ってないな」
真田「ふっ、分かってるさ!」
斎藤「確かに、全国クラスのピッチャーが集まるから打率は低くなるかもな」
吉田「しかし良いピッチャーの居ない高校もあるだろうから組み合わせしだいじゃ」
真田「大丈夫だよね!」
斎藤&吉田「相変わらず立ち直り早っ!?」
月砂「………………」
結依「どうしたのじゃ?」
月砂「和君だけはずっと変わりそうもないなって」
柚(コクッ!)
結依「ははは、まったくなのじゃ!」

結局今年も決勝では負けたが斎藤は満足していた。負けて満足なのはいかがなものかと本人も思っているが石崎や風祭や滝沢との甲子園での決着の事を考えて気分は高揚して行くのだった。