第34章 冬合宿(後編)

−1996年 1月−
合宿も終わりに近付いた頃、赤竜高校は前にも増してチームプレーを磨いて行った。
真田「新年明けましておめでとう!」

カキ―――ン! カキ―――ン! カキ―――ン!
吉田「あいつ前にも増してミートが上手くなったな。これなら本当にスカウトされるかもな」
斎藤主将「そう言う吉田だって前にも増してパワーが付いたじゃないか、これなら夏は4番を任せても良いな」
吉田「いやいやいや、4番はチャンスに強いお前が打てよ。それに夏には即戦力の新入生が入って来るだろうし」
斎藤主将「ま、それも春の活躍しだいか」
吉田「………………」
斎藤主将「どうした?」
吉田「いや、今なら本当に優勝できるんじゃないかと思ってな」
斎藤主将「真田だけでなく1年連中も目覚しい成長をしてるからな」
吉田「それに斎藤もな」
斎藤主将「打倒風祭に石崎だからな。立ち止まってなんていられない!」
吉田「石崎か……前の借りを返す為か」
斎藤主将「ああ!」
吉田(ふう、俺もとんでもない奴らと同期になっちまったな)
斎藤主将「どうした?」
吉田「いや、うちのキャプテンは頼もしいなと思ってな」
斎藤主将「お前らも後輩から見たら頼もしい先輩だよ」
吉田「そっか、斎藤、優勝しような!」
斎藤主将「もちろんだ!」

こうして赤竜高校は練習付けの毎日で春に向かって万全の状態になって行くのだった。
真田「何と言うかメタルを山ほど倒してレベルアップって感じだね♪」
吉田「ゲームネタは相変わらずか、しかし今回ばかりは同意してやろう!」
斎藤主将「それじゃこれで合宿は終わりだ。昼からは各自自由時間とする」
福西「ようやく終わりましたな」
木下「うむ。とりあえずは土産だな」
篠原「やれやれ」
真田「で僕らはどうする?」
吉田「どうせお前は椎名への土産でも買うんだろう」
真田「当然、ついでに弟にもね」
斎藤主将「俺も姉貴達に土産買っておかなきゃな」
真田「斎藤の家じゃ女性の方がランクが上って感じだからね。同世代の人間が知ったら嫉妬を買うんじゃないかな」
吉田「そう言う意味じゃ野郎のダチが多いのは凄い事かもな」
斎藤主将「何で土産買うだけでこんな話になってんだよ?」
真田「ただのやっかみだから気にしないで」
斎藤主将「彼女持ち(  おまえ  )に言われてもな?」
吉田「まあ、とっとと買いに行こうぜ」
斎藤主将「そうだな」

こうして赤竜高校の合宿は終わった。

バッティングセンター
斎藤主将「と言う訳でこれお土産です」
樹里「ありがとう」
佐藤「知り合い?」
樹里「友達の弟さんで近くの高校の野球部よ」
佐藤「へえ」
真田「そっちの人は?」
佐藤「と、弟の佐藤宗崇( さとうむねたか )と言います」
吉田「って言うとあのスピードガン2位の」
真田「……スピードガン1位155キロ!?」
斎藤主将「……信じられねえ!?」
吉田「本当だ。あれって」
佐藤「ええ、俺の記録です」
斎藤主将「向こうには君見たいのがゴロゴロいるのかな?」
佐藤「どうでしょう? 少なくとも俺はエースですが同年代で俺より速い球を投げる相手は少ないですがいる事はいます」
吉田「さすがは本場だな」
真田「うん。僕は東洋の島国の子で本当に良かったよ」
佐藤「えっと?」
斎藤主将「ああ、斎藤一って言います」
佐藤「赤竜高校のエースの」
斎藤主将「ええ」
樹里「って何で話してないのに知ってるのよ?」
佐藤「新聞に注目のピッチャーってのがあって名前が載ってたから」
真田「へえ、斎藤って有名なんだ?」
佐藤「夏の大会の準優勝投手で安定感ある投球と欠点の少ない好投手とか書かれてたけど」
斎藤主将「なんか照れるなと言うか同い年らしいしタメ口で良いよ」
佐藤「ああ、よろしく」
真田「早速だけど佐藤君と斎藤の対決をやってみない」
斎藤主将「いきなりだな」
佐藤「まあ、俺は構わないけど、対決ってどうやるんだ?」
真田「せっかくバッティングセンターにいるんだしここで対決ってしたいんだけど」
吉田「球速は10キロ以上差があるし勝負にはならないしな」
斎藤主将「確かに速度じゃ及ばないけどノビなら勝つ自信はあるわい!」
真田「うーむ、肝心の対戦方法が思いつかん」
佐藤「まあ、機会があればいつか対戦できるだろう」
斎藤主将「そうだな」

こうして斎藤達は佐藤宗崇と出会うのだった。

赤竜高校 野球部
真田「むふふっ」
吉田「気持ち悪い笑い方すんなよ」

扉の開く音と一緒に中西監督が部室に入って来た。
全員「監督っ!?」
中西監督「お前ら何か問題を起こしたか?」
全員「なっなっなっ―――!?」
全員「まさかっ!?」

そう言って全員の視線が真田に集中する。
真田「まさかあの時のあれが? それともあの時のこれか? それとも…………」
中西監督「お前、そんなに心当たりがあるのか?」
真田「みんなごめんって監督、これはやっぱり悪趣味ですよ」
全員「へ?」
中西監督「そうだな。確かに悪趣味だったな。つうかそれはお前のボケのせいだろう」
真田「いや〜だって監督が冗談言うから合わせなきゃなと思っても仕方ないじゃないですか」
全員「なんだ冗談か」
真田「しかし何故みんながいっせいに僕を見たのかが分からないな」
全員「……………………」
真田「うーん? どうしてかな!」
全員(これはかなり怒ってるな)
福西「…………それで監督、結果は?」
中西監督「関東大会で優勝したんだから選ばれたに決まってるだろう」
斎藤主将「良し! 甲子園で合宿の成果を見せてやろうぜ!」
全員「おう!!!」
真田「ちっ、上手くごまかされた」

とまあ当然ながら赤竜高校は今年も春の甲子園出場の権利を得た。

赤竜神社

今日は佐伯と村雨に呼び出され斎藤と真田と吉田は赤竜神社に集まっていた。
佐伯主将「春も万全か」
村雨主将「俺達の分も頑張って来てね」
斎藤主将「ああ」
真田「それで僕達に何の用なの?」
佐伯主将「それは」
村雨主将「俺達は春に出れないから悔いのない様にと練習に付き合おうと思ってな」
吉田「チームのキャプテンのお前らがか!?」
佐伯主将「毎日って訳にはいかないが今日見たいな休日が合う日ならな」
村雨主将「こっちは毎日でも良いよ」
斎藤主将「お前はキャプテンになっても変わらんな」
村雨主将「それが俺の良いところ!」真田「良いところ!」
吉田「お前も付き合うなよ」
佐伯主将「こほん、俺は真田と吉田と対決するから斎藤は村雨と対決する」
斎藤主将「全国レベルのバッターとピッチャーが相手か、願ってもない!」

こうして佐伯や村雨を交えた練習も始まった。
村雨主将「ほいさ〜♪」

カキ―――ン!
斎藤主将「くそっ、もう合わせて来たか、風祭のバッティングもこいつに似てるし風祭との相性も悪そうだな」
村雨主将「しかし甲子園となると俺クラスのバッターがゴロゴロいるんだろうな」
斎藤主将「安心しろってのも変だがお前のバッティングは全国でも上位だしそうゴロゴロはいないよ」
村雨主将「ぬはははっ照れますな〜♪」
斎藤主将「そう言えばお前は入りたい球団とかあるのか?」

カキ―――ン!

村雨主将「うーん、ベイスターズが1番好きだけど、好きな選手はもう引退してるし何処でも良いってのが本音かな」
斎藤主将「そうか」

ズバ―――ン!
村雨主将「気のせいか球速だけでなくノビも上がってる様なま、いいや、そう言う斎藤は希望の球団とかは?」
斎藤主将「特にないな」

ガキッ!
村雨主将「今度は速く振り過ぎかしかし今年のドラフトも凄くなりそうだね。石崎や風祭は1位確実でしょう」
斎藤主将「まあな」

カキ―――ン!
村雨主将「うっしし! そう言う斎藤も1位指名かな?」
斎藤主将「それはお前だろう」

ククッ!
村雨主将「むう! まさか甲子園も出ていないのに1位はないでしょう!」
斎藤主将「別に甲子園に出てなくても1位で指名されることもあるだろう」

ガキッ!
村雨主将「またファールかい! まあね。けど、そう言う意味じゃ斎藤の方が確率高いと思うよ」
斎藤主将「何でだ?」

カキ―――ン!
村雨主将「うっしし! 俺の世代の中心は風祭でもなく石崎でもなく斎藤と思ってるからかな」
斎藤主将「うーん、けど、そう言うのは甲子園で優勝の経験がある風祭や佐伯じゃないのか?」

スト―――ン!
村雨主将「今のはボールでした! 確かに2人共実力者ではあるけどね。斎藤は何かカリスマっぽいもの持ってるからな」
斎藤主将「確かに昔からキャプテンになってたけどな」

ズバ―――ン!
村雨主将「むう、ストライクだったのに見逃してしまった。昔から斎藤君はグイグイ引っ張るタイプでみんな付いて行ったからね」
斎藤主将「それは付き合いが長いからそう思えるって事だろう!」

ズバ―――ン!
村雨主将「ここまでノビて来られたら打てないわ! まあ、そうかも知れないね。そんじゃ夏の大会が終わったらドラフト対決でもしますか?」
斎藤主将「周囲の評価で勝てる自信はないんだけど?」

カキ―――ン!
村雨主将「やられっぱなしってのは嫌なので! まあ、斎藤らしいけどね。けど野球じゃみんなを信頼してるだろう」
斎藤主将「そりゃ知ってる人だからな」

カキ―――ン!
村雨主将「そりゃそうだ。それで逃げるの?」
斎藤主将「むっ、良いだろう。ドラフト対決してるやるぜ!」

ズバ―――ン!
村雨主将「さすがは斎藤、賭ける物は…………まあいいか、とにかく夏は終わっても俺達の戦いは終わらない。なーんてシリアスなのも良いよね♪」
斎藤主将「お前にシリアスは無理だと思う」

斎藤は昔馴染みの村雨と意気投合しながら練習を続けて行く。そして佐伯達は
佐伯主将「それじゃ行くぞ!」
真田「かかって来なさい!」

ククッ!
吉田「1球もかすらず空振りの三振と」
真田「そんなっあれだけっ練習したのにっ!?」
佐伯主将「まだ1打席目だろう。お前は1番だし後3打席はあるだろう」

ガキッ!
真田「当たった」
吉田「ファールだけどな」
佐伯主将「続けるぞ!」

カキ―――ン!
真田「はははっ見たかライト前ヒットだ!」
吉田「やるな。合宿の成果が出てるじゃないか」

カキ―――ン!
真田「わっははは!」
佐伯主将「そろそろ吉田に交代だな」

前半はさっぱりだったが後半には慣れて行き真田は140キロのストレートやクリティカルシュートを芯に当てて行った。
吉田「こりゃ3番の座も獲られかねないな。おっし俺も!」

ガキッ! カキ―――ン!
真田「むう! さすがは吉田、僕よりも早く合わせてる」
佐伯主将「こいつでラストだ!」
吉田「速いが―――打てる!」

カキ―――ン!

飛距離は文句なくボールは社に直撃する。
佐伯主将&真田&吉田「あっ!?」
真田「…………それじゃ吉田、後はよろしく」
吉田「結局こうなるのね」
佐伯主将「いまさらだがもっと広いところで練習するべきだったな」
真田「本当にいまさらだね。と言うか神社( ここ )、斎藤に付き合って何度か来てるけど、人の気配がしないね」
佐伯主将「ふむ。書置きでも残して帰るか」
真田「ええっ! どうせ誰もいないんだし放って置いて帰ればいいじゃん」
佐伯主将「赤竜高校野球部員神社を荒らして逃走し出場辞退へなんて新聞に載らなければ良いけどな」
真田「いくら何でも…………確かに悪い事したら謝罪しないとダメだよね」
吉田「とりあえず書く物貸してくれ」
佐伯主将「ほれ!(ポイッ!)」

と言うオチで始まった練習が続いて行き2月に突入する。

赤竜高校 2−A
吉田「いよいよ春の大会も始まるな」
真田「練習しまくったからね。今ならプロ相手でも打てそうだよ」
斎藤主将「まあ期待しておこう」
真田「僕って信用ないんだね」
吉田「あんまり打つイメージはしないからな」
真田「否定できない」
吉田「ところでオーダーとか決まってんのか?」
斎藤主将「ああ、みんな同じ様に成長してるから秋の大会と変わんないけどな」
吉田「さてと何処まで行けるかな?」
斎藤主将「目指すは優勝あるのみ!」
真田「おう!」
吉田「あれ賭けは良いのかよ?」
真田「大丈夫、優勝したら約束を忘れれば良し!」
吉田「お前が忘れても俺達は覚えてるんだが」
真田「大丈夫、優勝した嬉しさで忘れるから」
吉田「有り得そうではあるが、うーん、優勝するイメージは…………ダメだ。想像できん」
斎藤主将「まあ、とにかく優勝目指して突っ走るぞ!」
吉田「おう!」真田「おうって柚ちゃんも出れるんだよね。どう言うふうに使うの?」
吉田「そうか、女子が始めて甲子園のマウンドに立つんだよな」
真田「そんで持ってキャプテンの斎藤は忘れられ柚ちゃんの評価がうなぎのぼりですな〜♪」
斎藤主将「まあ、そうなるかもな。とりあえず柚は先発で使う予定だ」
吉田「それじゃ斎藤→柚のローテで回して行くのか、そりゃ斎藤の負担が減って良いな」
斎藤主将「まあな。出来ればもう1人先発が欲しいけど」
真田「柚ちゃんが先発の時は斎藤はベンチなの?」
斎藤主将「いや、ただでさえ打撃力が落ちてるのに俺が引っ込むとあれだから柚の時は4番レフトで出る予定だ」
吉田「そりゃそうだろうな。投げて打ってと頼りにしてるぜキャプテン!」
斎藤主将「こっちも頼りにしてる!」
吉田「おう!」
真田「やはり僕は頼りにされてないんだね?」
斎藤主将「いや、真田も頼りにしてる。お前の足を使えば大量得点も可能だろうしな」
真田「ふっ、任せたまえ!」
斎藤主将(付き合いが長いせいか扱い易い奴ってイメージになって来たな)

赤竜高校は優勝できるのか、そして斎藤と風祭の対決はあるのか、いよいよ春の甲子園が始まるのだった。