第38章 春の終わり(4)〜相対する天才〜(後編)

斎藤はここまで完全試合に1試合22奪三振記録と活躍中だが肝心の1点は入らない。そして9回ここでサヨナラにしなければ記録は成立しない。しかし石崎も打たれたヒットは1本と斎藤に負けない活躍をしている。赤竜高校は石崎から1点を取れるのか?
霞「試合は9回裏に入りました。ここで1点を取れば完全試合に奪三振と斎藤君は記録づくしで決勝へと進みます!」
武藤「しかし石崎君も負けないピッチングをしてますからね」
草薙「今の延長は18回で引き分けだから翌日に再試合するんだったな」
武藤「まあ18回まで行くのも稀ですけどね」
霞「延長になると赤竜高校が有利ですかね?」
武藤「選手層じゃ赤竜高校の方が有利ですからね。でも石崎君も河島君に負けないスタミナをしてるからな」
草薙「とりあえず最後の攻撃になるか楽しませてもらおうか」

9回裏 赤0−0転 斎藤は9回も完全に抑えたがこの回でサヨナラにしなきゃ成立はしない。この回で終わりにできるか?
根本「ここまで好投したキャプテンを見殺しにできるか!」
石崎主将「こっちはこっちで負ける訳には行かないんだよ!」

ズバ―――ン!
霞「積極的にバットを振って行くも空振り三振と残念な結果に終わります!」
武藤「9回で153キロか、怪物だな!?」
草薙「気迫も大切な物だが気迫だけで打たせてはくれないな」

真田(さすがに150キロにあのフォークじゃセーフティも難しいな。とにかくボールの上をたたいて内野安打が理想かな)
石崎主将(こっちも勝敗は譲れないんだよ!)

ガキッ!
真田「下をたたいてしまった」

霞「真田君は打ち上げキャッチャーフライに倒れます!」
武藤「長打力がないわけでもありませんが石崎君の球威に勝てるような選手でもないですからね」
草薙「151キロ、たしかにスタミナはまだまだありますね」
武藤「と言うよりプロに行ったらみんなスタミナが減ってるような?」
草薙「高校生は今でも連投が多いし気のせいとも言い切れんな」

石崎主将(負けたくない!)

石崎の頭には記録などはない。ただ勝利が欲しいそれだけで投げて行く!

スト―――ン!
相川「9回なのにフォークの落差が増している。何て人だ!?」

霞「最後はフォークを空振り三振と延長戦に突入します!」
武藤「さすがの相川君でもあのフォークは打てませんか」
草薙「20個か、斎藤君には及びませんがこれも大した記録ですね」
武藤「まったく末恐ろしい子達ですね」

石崎主将「延長か」
広瀬「こっちは完全に抑えられてるけどな」
石崎主将「俺もこれから完全に抑えて行くさ。とにかく1点だ。先に取った方が勝者となる」
広瀬「ま、あっちは裏だから取った時点で勝つわけだが」
石崎主将「やかましい! 分かってんならとっとと4番の仕事をして来い!」
広瀬「そうだな!」

広瀬もここまでの石崎の好投を無駄にしたくはないのか力強く答える。

10回表 赤0−0転 両投手の怪物的ピッチングで試合は延長に続く!
斎藤主将「やっぱり延長か、このままじゃ18回まで持つかどうかは分からないけど、延長戦で手を抜くわけにも行かないし意地で投げ切るしかないか!」

ガキッ!
中川「当たりはした物の打てません!?」

霞「143キロのストレートに当てましたが結果はサードフライです!」
武藤「やっぱり打てませんね」
草薙「球速も落ちてないしな。疲れを待つと言うのも作戦だが延長だしな」
武藤「たしかに1点取れば十中八九決まりって感じですからね」

斎藤主将(シュッ!)

ガキッ!
根本(パシッ! シュッ!)
川崎「ファーストが遠いぜ!?」

霞「川崎君も当てますかショートゴロに抑えられます!」
武藤「球速が落ちてないわりには当てて来ますね?」
草薙「そりゃ4打席にもなれば慣れて来るんじゃないか」
武藤「うーん」

斎藤主将(シュッ!)

ズバ―――ン!
八代「10回だってのにコースも速度も落ちやしねえ!?」

霞「アウトコースギリギリ見逃し三振で3アウトチェンジです!」
武藤「10回も完全に抑えましたね」
草薙「うむ。さすがだな!」

吉田「向こうも当てて来たけど、スタミナとか大丈夫か?」
斎藤主将「まだ余力はある。ただテンポ良く来ているせいか18回までは持ちそうもないな」
吉田「バッターは速攻で片付けらてるからな。けど18回までには1点は入るだろう?」
斎藤主将「だと良いんだがな」

石崎も火が点いてからは失投と言う失投はなく仮にあったとしても球威があるせいか長打は難しく。一発を食らいやすいのは自分の方だろうなと斎藤は危機感を持っていた。
真田「けど条件的にこっちが有利だよね」
斎藤主将「?」
真田「あっちの方が球数が多いじゃん」
斎藤主将「そう言えばそうだったな」

何気ない真田の言葉だったが斎藤は少し気持ちが楽になった。心の中で少しだけ真田に感謝した。

10回裏 赤0−0転 斎藤はいまだにランナーを許さない!
石崎主将「サヨナラ打てないのは嫌だけど、一発食らえばサヨナラってのもスリリングで良いよな!」

石崎は逆境ほど燃えるタイプなので無失点の延長戦は正にその力を発揮するのに適していた!
吉田(後ろは斎藤だし無理に長打を狙う必要はない!)

吉田は吉田でまずは塁に出るとミートに集中する!
石崎主将(フォークで変化球の印象をあたえてやろう!)

スト―――ン!
吉田「狙い球を空振っちまった!?」

霞「初球フォークを空振り1ストライク!」
武藤「今日は良く初球にフォークを使いますね」
草薙「初球だと印象に残るからな。追い込まれたらフォークかストレート狙い球が難しい」
武藤「なるほど」

石崎主将(次はストレートだと芸はないのでシュートだ!)
広瀬(考えがあるのかないのか分からんリードだな?)

ガキッ!
吉田「あっ!?」

霞「ボテボテのファーストゴロ、ファーストの山本君が石崎君に投げて1アウトです!」
武藤「打てませんね」
草薙「ストレートほどじゃないが変化球も重い印象があるな」

斎藤主将(打つ!)
石崎主将(抑えるだけだ!)
広瀬(どっちも恐ろしいほど集中してるな)

カキ―――ン!
全員「何っ!?」全員「行っけえ!!」

霞「飛距離は出ているがやはり球威に押されたかスタンドまでは届きそうもないが左中間は抜けた! 斎藤君はサードには行かない。セカンドストップだ!」
武藤「打ちましたね。正真証明ヒットの当たりでした。しかし151キロのストレートを引っ張ってあそこまで」
草薙「うむ。バッティングセンスは素晴らしいな。バットコントロールは大した物だ!」

石崎主将「ちっ! やってくれるぜ!」
広瀬「石崎から打ちやがった!?」
斎藤主将(ようやく打てたな。篠原まで回るし石崎の性格上敬遠もないだろうしここがチャンスだ!)
木下「来い石崎さん!」
石崎主将「打てる物なら打って見ろ!」

ズバ―――ン!
木下「あっけなく撃沈!?」

霞「チャンスでしたが木下君は152キロのストレートを空振り三振!」
武藤「ま、当てるのも難しいですよ」
草薙「セットになったら球威が落ちるかと思ったが全然変わってない印象だな」

篠原(狙いはストレート1本のみ!)
広瀬(当然だが歩かせはしないな。ま、実質こいつにはノーヒットみたいな物だしな)
石崎主将(絶対にホームは踏まさん!)

ズバ―――ン!
篠原「10回でこの球威か!?」

霞「MAX153キロのストレートを空振り三振で3アウトチェンジ! サヨナラのチャンスでしたが後続は続けず11回に入ります!」
武藤「決め球の威力は凄いですね。それにマウンドから威圧感を感じます!」
草薙「たしかに絶対にホームベースは踏まさないって言う気迫を感じたな」

石崎主将「まあこんな物だな!」
広瀬「ヒットは打たれたけどな」
石崎主将「ふん! 次の打席でお返しするまでさ! お前も4番ならそろそろ打てよ!」
広瀬「おう!」

11回表 赤0−0転 ヒットを打たれてピンチにはなるが石崎も力投を見せて無失点に抑える!
斎藤主将「チャンスは終わったか、長打力の高いのが続くから気は抜けないし、本当に精神力が試されるな!」

ガキッ!
広瀬「俺はしょせんこんな物さ」
石崎主将「ファーストで止まってないでセカンドへ走れ!」
広瀬「へ?(タッタッタ!)」
真田「(タッタッタ!)マジですか!?」

霞「センターの頭を越えた! 打った広瀬君はセカンドでストップ!」
武藤「完全に打ち取った当たりなのにパワーでセンターの頭を抜けてしまった!」
草薙「初ヒットは4番か、こう言うのは何だが意外だったな」
霞「観客席からは残念なタメ息が聞こえそうですが、しかしヒットはヒットこれで完全試合の記録も消えてしまいました!」
武藤「気の毒にとは思いますが、気落ちせず投げてもらいたいですね」
草薙「ノーアウト2塁だからな」

斎藤主将「次は石崎か、意地でもホームには返さん!」

斎藤に打たれたショックはなかった。むしろ次の石崎を抑える事に頭がいっぱいでそんな事を考える余裕もないと言うべきかとにかく斎藤は石崎との対戦に集中する。
石崎主将「良い場面で回って来たな。そろそろ決着をつけようじゃないか!」
斎藤主将(シュッ!)

ガキッ!
石崎主将「………………」

霞「初球フォークを引っかけてピッチャーゴロでアウトです。セカンドの広瀬君は戻って1アウト2塁になりました!」
武藤「力みすぎですね。フルスイングでストレート狙いって感じで意表を付かれた感じです」
草薙「どうも記録がなくなったショックはなさそうだな」

石崎主将「つうか初球にフォークって何だよ!」
斎藤主将「お前の真似だ!」
石崎主将「…………完全に負けた!?」
斎藤主将(シュッ!)

ガキッ!
山本和「打ちにくい!?」

霞「続く山本君もカーブを打ち上げてファーストフライで2アウト!」
武藤「打たれたショックなんて全然ないですね」
草薙「むしろ記録がなくなって楽になったのかもな。競技では勝ち続けるほどプレッシャーになると言うあれに近いかも知れん」
武藤「そうかも知れませんね」

斎藤主将(シュッ!)

ズバ―――ン!
川西「俺には打てません!?」

霞「最後は142キロのストレートを空振り三振で3アウトチェンジです! 転生高校もチャンスでしたが後続は3人で終わりました!」
武藤「ま、打ったと言っても打ち取られた当たりでしたからね。まだタイミングは合ってないんでしょうね」
草薙「ホームランが欲しい試合って感じだな」
武藤「そうですね。その通りだと思います」

斎藤主将「とりあえず後続は抑えたな」
真田「ごめんっ斎藤!?」
斎藤主将「いきなり何だよ?」
真田「だって完全試合が!?」
斎藤主将「ああ、そんな記録もあったな。あれはどんな俊足でも追いつけなかったし気にしなくても良いぞ」
真田「何と言う寛大なお言葉! 僕なら一生それをネタにして食って行くのに!」
斎藤主将「怖いからやめれ!」
真田「ジョークですよ。お兄さん」
斎藤主将「ってもう立ち直ってるし」
真田「とにかくこの調子で抑えて行こう!」
斎藤主将「ああ」

11回裏 赤0−0転 完全試合の記録もついになくなってしまったが斎藤は落ち込む事もなく無失点に抑える!
石崎主将「打席では腹の立つ結果に終わったがそれで終わるほど俺は弱くないぜ!」
広瀬(自分自身に言い聞かせてるって事は結構ショックだったみたいだな。荒れなきゃ良いけど?)

ズバ―――ン!
福西「決め球は凄いな」
広瀬(大丈夫そうだな)

霞「1球2球と当てましたが最後のボールにはかすりもせず空振り三振に終わります!」
武藤「まあ150キロですからね」
草薙「三球三振とコントロールも悪くないですね」

石崎主将「次もこいつで終わらす!」

スト―――ン!
山口「なんつう落差だよ!?」

霞「下位打線にも容赦はなしでフォークで三振に抑えます!」
武藤「全然落差が変わりませんね!?」
草薙「基礎体力、精神面、共にプロレベルに達してる感じですね。将来が楽しみですよ」

石崎主将「とどめ!」

ズバ―――ン!
根本「球威が全然落ちない!?」

霞「最後はど真ん中に150キロのストレートが決まりこの回は三者三振に抑えます!」
武藤「ひょっとして斎藤君の奪三振を抜きましたか?」
霞「ちょっと待って下さい。ここまで斎藤君は24個、石崎君はこれで25個とたしかに抜いてますね!」
草薙「延長に入ってからは斎藤君の方が合わされてるんですかね。どちらかと言えば逆の印象でしたが?」
霞「うーむ。ちょっと分かりませんね? しかし試合は延長とまだまだ終わりそうもありません!」

石崎主将「投げれば投げるほど力が漲っ(  みなぎ  )て来るぜ!」
広瀬(相変わらずどう言う身体構造をしてるんだか?)

12回表 赤0−0転 石崎の剛腕は変わらず下位打線とは言え三者三振と見事に抑える!
斎藤主将「こっちも下位打線だしとっとと抑えよう!」

ズバ―――ン!
山本研「打てん!?」

霞「まずは山本君を空振り三振に抑えます!」
武藤「142キロとこっちもスタミナはまだありますね」
草薙「こっちも基礎体力、精神面、共に問題はないか」

斎藤主将「とにかくスタミナ配分なんてできる流れじゃない。全力投球だ!」

ズバ―――ン!
庄田「キャプテンもバケモンだと思ったけど、こっちも十分バケモンだ!?」

霞「続く庄田君も143キロのストレートを空振り三振!」
武藤「どっちも流れを渡しませんね」
草薙「さすがはエースでキャプテンってところか」

斎藤主将「こいつで終わりだな!」

スト―――ン!
中川「決め球が変化球かよ!?」

霞「中川君も空振り三振とこの回は三者三振に抑えます!」
武藤「120球を越えると12回にしちゃ球数が少ないですがそれでもこの好投は凄いと言う一言しかないですね」
草薙「ヒットを打ったバッターは3人だけだしな」

斎藤主将「これで12回も抑えた!」
吉田(援護したいがあっちも衰えないしきつい試合になったな)

12回裏 赤0−0転 斎藤も三者三振と衰える様子は見せない!
石崎主将「これで何回目の対決になるのやら? ま、斎藤があんなピッチングする以上こっちも負けられん!」
真田「今度はもっと上をたたく!」

ガキッ!
川西「…………おっと!?」

霞「サード前の内野安打で真田君が塁に出ます! いえ、記録はサードのエラーですね!」
武藤「普通ならサードゴロですからね。守備面じゃ圧倒的に劣りますね」
草薙「とにかく貴重なランナーが出ましたね。いよいよ試合も終わりが見えて来たかな」

石崎主将(面倒な奴が出たな。1球外して見るか?)
広瀬(構わんが初球に走るとは限らんぞ!)
石崎主将(それもそうだな。それに下手して暴投でもされたらますますピンチになるしな)
広瀬(言い返せなくて悔しいがその通りだよ!?)
石崎主将(とにかく真っ向勝負! ホームに返さなきゃ問題はない!)

この後、真田は盗塁を成功させ相川も進塁打を打つとサヨナラのチャンスとなる!
霞「経緯はともかく1回と同じく1アウトランナー3塁でサヨナラのチャンスとなりました! 吉田君はこのチャンスを生かせるでしょうか?」
武藤「1打サヨナラで3番からか正念場ですね」
草薙「エースとしては何が何でも抑えなきゃならん場面だな」

相川「それじゃ後はお願いします」
吉田「ああ(しかしスクイズかバントの練習もしてなくはないんだが上手く行くと良いんだけどな)」
石崎主将(さてとスクイズはないと思うがエラーされても終わりだからな。とにかく三振にするしかない!)
広瀬(さすがだな。この状況で動じる事もなくむしろワクワクしてる。俺達も必死でフォローするぞ!)
全員(はい!!!)

石崎主将(シュッ!)
吉田(サッ!)
全員「何っ!?」

ズバ―――ン!
霞「いきなりバントの構えでしたがボールなので構えを戻して判定はボールで1ボール! ちなみにランナーの真田君は既にサードに戻ってます!」
武藤「スクイズか内野陣の守備は良いとは言えないし良い判断と言えば良い判断なのかな」
草薙「しかしそうそう当てられるボールじゃないし振って見ても良いと思うがな」

吉田(やっぱりそうそうは成功しそうもないな)
石崎主将(いきなりスクイズか、ポーズだけとも考えられるが!)
広瀬(とにかく当てさせないボールを投げよう!)

スト―――ン!
吉田(ふう)

霞「次はフォークを見逃して2ボールとなりました!」
武藤「サヨナラのせいかこっちまで緊張しますね」
草薙「次を外したらもうボールは投げられないし石崎君の方が不利ですね」

石崎主将(シュッ!)

ズバ―――ン!
吉田(入ってるな。まだ有利だけど)

霞「次はストレートを見逃し1ストライク2ボールとなりました!」
武藤「152キロか、なかなか厳しいボールを投げるな」
草薙「うーむ。消耗戦だと言うのに石崎君の球威はまるで落ちてませんね」

石崎主将(とにかく内野と外野を前進にして低めに集まれば外野は越さないだろう!)

ズバ―――ン!
吉田「しまった!?」
真田「終わった!?」
川西「やった!」

霞「バントを空振りし真田君は挟まれてアウト!」
武藤「この場面で153キロですか!?」
草薙「これでサヨナラのチャンスは消えたな」

石崎主将(こいつでとどめだ!)

ズバ―――ン!
吉田「くそっ!?」

霞「最後も153キロを記録し空振り三振で12回も終わりました!」
武藤「凄い試合ですね。今回ばかりは決まったと思ったのに」
草薙「凄いのはマウンドのピッチャー達だ。この状況でも楽しみながら投げている」
武藤「どう言う精神構造をしてるんだか?」

川西「見ましたか!」
広瀬「うむ。見事なエラーだったな」
川西「すみませんでした!?」
広瀬「冗談だ。良く焦らずアウトにしたな」
川西「ええ。キャプテンを見殺しにしてますからね。こう言う時に働かないと!」
石崎主将「軽く殺意がわいたぞ」
全員「まあまあ悪気はないんですから」
石崎主将「分かっちゃいるがな」

13回表 赤0−0転 サヨナラのピンチを迎えるが石崎は気迫のピッチングで抑える!
斎藤主将「油断のできないバッターが続くが流れは渡さん!」

ガキッ!
山口(パシッ! シュッ!)
川崎「うちとは雲泥の差だな」

霞「バッティングでは活躍できませんが守備は華麗とは言えないまでも捌いて1アウトです!」
武藤「普通のサードゴロですよ」
草薙「だが転生高校と違って落ち着いた守備だったな」

斎藤主将(シュッ!)

ガキッ!
真田(タッタッタ!)

パシッ!
八代「あれを捕るのか!?」

霞「いまいちな当たりでセンター前に落ちる打球になりそうでしたが得意の足でアウトにします!」
武藤「あの足は守備としても魅力ですね」
草薙「外野の守備範囲じゃ高校随一かもな」

斎藤主将(シュッ!)

ズバ―――ン!
広瀬「当たらん!?」

霞「前の打席ではヒットを打った広瀬君でしたが空振り三振と終わります!」
武藤「まあ打ったと言ってもヒット性の当たりではなかったですからね」
草薙「しかし1点が果てしなく遠い試合になったもんだ」
武藤「まったく持ってその通り」

石崎主将(楽しいがそろそろ決着をつけたい。次の俺の打席で決める!)
斎藤主将(終わったと言っても次は俺の打席からだったな)

13回裏 赤0−0転 危なげない打球もあったが斎藤は守備にも助けられ無失点に抑える!
石崎主将「打席の前にまずは抑えないとな!」

ズバ―――ン!
斎藤主将「ここでこの球速か」

霞「最後は153キロのストレートを空振り三振!」
武藤「もう180球近く投げてるのに全然スタミナが落ちませんね!?」
草薙「スタミナだけでも大した物だな」

石崎主将(シュッ!)

ズバ―――ン!
木下「打てない物は打てん」

霞「また空振り三振と木下君は今日良いところなしです!」
武藤「まだ150キロ出てますかね。なかなか打てませんよ」
草薙「少なくとも当てて欲しいけどな」

石崎主将「次も抑える!」

ガキッ!
篠原「やはり球威に押されるか」

霞「篠原君は当てますがピッチャーフライに終わって3アウトチェンジです!」
武藤「この回も終わらなかったか」
草薙「2人共、失投らしい失投を投げないからな。もしかしたら1球に泣く結末になるかも知れんな」

石崎主将「生意気に当てやがった」
広瀬「なかなかやるな」
石崎主将「だが俺の敵にはならんな!」

14回表 赤0−0転 石崎は三者凡退と衰えないピッチングで抑える!
斎藤主将「石崎か、一発だけは注意しないと!」

ガキッ!
石崎主将「高めだと!?」

霞「低め低めと来て最後は高めを打ち上げてセンターフライに倒れます!」
武藤「しかし裏を掻かれたとは言え良くあそこまで飛ばせますね」
草薙「バッターとしても大した物だ」

斎藤主将(シュッ!)

ズバ―――ン!
山本和「変化球混ぜられると打てん!?」

霞「最後は144キロのストレートを空振り三振!」
武藤「まだ144キロも出るか!?」
草薙「こっちも凄いスタミナだな」

斎藤主将(シュッ!)

ズバ―――ン!
川西「………………」

霞「最後は143キロのストレートとこの回も三者凡退に抑えます!」
武藤「しかしテンポは良いですが長い試合になったな」
草薙「まだ終わってないけどな」

斎藤主将「とりあえずは抑えた!」
吉田(表情やボールには出ていないが少しは疲れてるだろうな何とか点を取ってやりたいんだけど、次は下位打線だからな)
斎藤主将「とにかく投げ続けるだけだ!」

14回裏 赤0−0転 斎藤は三者凡退と調子良く抑える!
石崎主将(シュッ!)

ズバ―――ン!
福西「うわっ!?」

霞「危険なボールもありましたが最後は見逃し三振に抑えます!」
武藤「さすがに疲れが出て来たかな。けど球速はいまだに衰えてないし」
草薙「しかし決め球は悪くなかったな」

広瀬(大丈夫か?)
石崎主将(ちょっと汗で滑っただけだ。落ち着けば問題はない!)
広瀬(そうか)
石崎主将(ポムポム! パッ!)

ズバ―――ン!
山口「手が出ん!?」

霞「152キロのストレートを空振り三振で2アウト!」
武藤「うーん、スタミナ切れなんて感じないピッチングですね」
草薙「怪物ですね」

石崎主将(シュッ!)

ガキッ!
根本「外野までは飛ばないか」

霞「フォークに当てますがサードゴロに倒れ3アウトチェンジです!」
武藤「サードゴロですが良くあのフォークに当てましたね」
草薙「これで14回も終わりですか」

広瀬「本当に大丈夫か?」
石崎主将「落ちてなかったか?」
広瀬「落差はあったがキレは落ちてた気がするかな」
石崎主将「疲れてないと言えば嘘になるが、打たせはしないさ!」
広瀬「……そうだな(後4回持つと良いんだが?)」

15回表 赤0−0転 下位打線は手が出ず三者凡退と石崎は好調!
斎藤主将「ここまで来たらとにかく投げるだけだ!」

ズバ―――ン!
山本研「まだ球速が落ちないのか!?」

霞「144キロのストレートを空振り三振!」
武藤「15回でこのピッチングじゃピッチャーを誉めるしかないですね」
草薙「疲れてるとしても意地で投げ続けるしかないからな」
武藤「交代でもしたら一気に流れが変わりそうですからね」

斎藤主将(シュッ!)

ククッ!
庄田「カーブ!?」

霞「最後はカーブを空振り三振で2アウト!」
武藤「奪三振ショーですね」
草薙「こうやって観ると小椋に似てるな」
武藤「小椋さんか、現役は凄いノビのあるボールを投げるんでしたっけ?」
草薙「ああ、オールスターでは9連続奪三振の記録も持ってたな。あいつはお祭り男として人気が高かったよ」
武藤「話には聞いてましたけど、対戦相手が言うと説得力がありますね」

斎藤主将(シュッ!)

ズバ―――ン!
中川「あまい球が全然来ないなー」

霞「話してる最中ですが中川君も144キロのストレートを空振り三振で3アウトチェンジです!」
武藤「そう言えば小椋さんもスタミナありましたね。やっぱり似てますね」
草薙「いや、あいつの場合は時々抜く癖があって格下にはスタミナを抑えて投げてたって聞いたな」
武藤「へえ」
霞「とにかく15回表も終わっていまだに1点は入りません。球史に残りそうな投手戦となりました!」
武藤「たしかに高校球児とは思えない投げ合いですね」
草薙「昔はこう言う投手戦も結構あったがな。怪物が生まれる時代には怪物が生まれやすいとか言われてたし」
武藤「今じゃ延長18回まで完投できるピッチャーなんて稀ですからね」
草薙「昔もそう多かったわけじゃないけどな。それに俺の時代には引き分けってのもなかったし」

15回裏 赤0−0転 斎藤は三者三振と衰えないスタミナで抑える!
石崎主将(まずは足の真田からか)

ガキッ!
真田「相変わらず重っ!?」

霞「150キロのストレートに当てますがピッチャーゴロで1アウト!」
武藤「球速も球威も健在だな」
草薙「そうだな(だがコースはあまめだった…………と言っても球威は健在そうだし外野までは飛ばないだろうが)」

石崎主将(今度はバントの小僧か)

ガキッ!
相川「外野までは届かないか」

霞「続く相川君も当てますがセカンドゴロに倒れます!」
武藤「151キロですか」
草薙「当てても外野まで届かないと球威もさすがですね」

石崎主将(ミート野郎も邪魔だ!)

ズバ―――ン!
吉田「嫌なコースばっかり投げやがって!?」

霞「最後はインコース低めのストレートを見逃し三振で15回も終わりました!」
武藤「上位打線も3人で終わりか、再試合になるかな」
草薙「152キロと追い込められてからのボールは凄いですね」

広瀬(失投がないのはさすがだな。しかしさすがの石崎でも18回まで持つだろうか?)
石崎主将(斎藤がゼロに抑えてる以上こっちも負けられん!)

16回表 赤0−0転 上位打線も三者凡退と石崎の力は衰えない!
斎藤主将(シュッ!)

ズバ―――ン!
川崎「ここでMAXって本当にキャプテン似のピッチャーだな!?」

霞「最後は145キロのストレートで見逃し三振に抑えます!」
武藤「本当に怪物だな。この試合で失投らしい失投も見せないし」
草薙「コントロールもあるし精神力もある。こう言うタイプとの我慢比べはきつい物がありますよ」
武藤「何か説得力があるな」

斎藤主将(シュッ!)

ズバ―――ン!
八代「しまった!?」

霞「今日始めての失投だったが効果的なチェンジアップになったか八代君も三振に抑えられます!」
武藤「今のは痛恨の失態ですね」
草薙「まあな」

八代「すまん」
広瀬「気にするな。失投を打てない事なんて良くある話さ」
石崎主将「お前の場合はもう少し気にしろ。八代は気にするな気にして守備で散漫になる方が困る」
八代「ああ」
斎藤主将(シュッ!)

ズバ―――ン!
広瀬「低め低めで最後は高めかよ!?」

霞「最後はアウトコース高めのボール球を振らされて三者三振と抑えます!」
武藤「相変わらず安定度の高そうなピッチングだな」
草薙「そうですね。マウンドでの失点は少なそうですし安定感もありますね」
霞「とにかく16回表も終わりました。16回裏に入ります!」

16回裏 赤0−0転 斎藤は再び三者三振と衰えないスタミナで抑える!
石崎主将(ここで斎藤を完全に抑える!)

さすがの石崎も200球近く投げている為か初球を高めに投げてしまう。

カキ―――ン!
斎藤主将「このまま振り切れ―――!」

球威その物は大して変わってないがそれでもバックスクリーンに叩き込んだ!
石崎主将「………………終わったかちくしょう!」

霞「入った。試合を決めたのは4番の一振りでした!」
武藤&草薙「……………………」
霞「ってどうしたんですか?」
武藤「いえ。ここまで長かったのに終わるのは一瞬だったなと」
霞「たしかに回が始まっての初球でしたからね」
草薙「それにしても高めに浮いたとは言え良く打ちましたよ!」
霞「そうですね。球速も152キロとホームランを打てるボールとは思えませんでしたからね」
武藤「バッターとしても凄いですね。ドラフトじゃバッターとして獲る球団もあるんじゃ」
霞「とにかく長い延長戦でしたが投手戦となりピッチャーが試合を決めると球史に残りそうな試合となりました。試合は壮絶な死闘でしたが1対0で赤竜高校が勝利しました!」
武藤「明日は決勝か」
霞「はい。明日は無明実業VS赤竜高校の試合となります。それでは明日もお会いしましょう!」
武藤「結局斎藤君は自らサヨナラを打つとバッターとしても春の借りを返したんだな。そして草薙さんの言う通り1球に泣く結果になったか」
草薙「と言っても失投と言えるボールでもなかったがな。普通ならバックスクリーンまでは届かんよ」
武藤「結局は斎藤君が凄かったって事か」

転生高校
広瀬「大丈夫かって大丈夫なわけはないか」
石崎主将「バカ言え! 斎藤はここから立ち直ったんだぜ。俺が負けてられるかよ!」
全員「全然平気そうですね」
八代「見た目はな」
山本和「そうそう。内心は結構ショックだろうな」
浅野監督「まあ今年もベスト4に残っただけ上出来と思うか」
石崎主将「夏は優勝ですけどね。ちょっと用事があるからお前らは先に帰ってろ!」
全員「?」
広瀬「おう!」
八代「お前もとっとと戻って来いよ」
石崎主将「ああ」

赤竜高校
真田「マジですか、マジでここまで来れましたよ!」
福西「後1つで全国制覇か、秋にキャプテンが言ってた事が本当に実現しそうになるとは!?」
山口「だな」
斎藤主将「とにかく後1つだ。後1つでお前らとの約束を果たせる!」
全員「全国制覇!!!」
真田「しかし相手が風祭君のいる無明実業とは運命的だね。これで柚ちゃんが先発だと兄妹対決と面白くなりそうだし」
柚「個人的には投げたいけど、私じゃ通用しないから」
真田「まあ夏にも会えるチャンスもあるし」
斎藤主将「そんな弱気じゃ困る!」
全員「?」
斎藤主将「さすがに明日の連投は難しそうだ」
篠原「やっぱり明日は無理なんですね」
全員「ええっ!?」
吉田「そうか、決勝進出で浮かれていたけど、斎藤は16回をゼロで抑え続けていたんだ。疲労があって連投なんて」
斎藤主将「そう言う事だ。個人的には残念だがバッターとしては問題ない。だがピッチャーは」
柚「分かった。私が投げる!」
斎藤主将「ああ、頼む!(悪いな。風祭、石崎相手じゃ無傷ってわけにはいかなかったよ)」
全員(ここでキャプテンの離脱は痛いな)
中西監督「まあ決勝は明日だ。ゆっくり休んで明日に備えろ!」
全員「はい!!!」
中西監督「それと斎藤にはお客さんらしい」

そう言って中西監督が親指で示す先には石崎が待っていた。
斎藤主将「…………石崎か、ちょっと行って来る」
真田「しかし斎藤が投げられないのは痛いね」
吉田「まあな。けどあいつに引っ張られてここまで来れたんだ。あいつが頑張れない時くらい俺達がフォローするしかないだろう」
真田「そうだね」

公園
石崎主将「ほれ(ポイッ!)」
斎藤主将「っと!」

石崎に連れられて来たのは公園だった。おごりと言う事で石崎からジュースをもらう。
石崎主将「公園でお茶と言うのもしけてて悪いがまあ2人で話したかったからな」
斎藤主将「それで何を話すんだ?」
石崎主将「そうだな…………まずは家族構成とかな」
斎藤主将「野球に全然関係ないのな?」
石崎主将「まあな。俺は石崎家の長男と言っても親は既に他界してるからいないけどな」
斎藤主将「…………そうなのか」
石崎主将「ああ。爺と婆と3人で何とか暮らしてるさ」
斎藤主将「そうか(家族はちゃんといたんですね)」
石崎主将「次はお前の番だぞ」
斎藤主将「両親は別の町で喫茶店を運営してる。家じゃ姉貴と居候が2人いるな」
石崎主将「お前も別の意味で両親とは離れてるのな」
斎藤主将「まあな。けど昔からこんな感じだしあまり気にした事はなかったな」
石崎主将「ふーん、それでどう言う切欠でお前は野球を始めたんだ」
斎藤主将「草野球らしい」
石崎主将「らしい?」
斎藤主将「ガキの頃で覚えててなくてな。親父が言うには草野球で速いボールを投げる人がいてそれを観て感動して始めたらしいんだ」
石崎主将「なるほどな。俺はダチに誘われて始めたのが切欠だった。それから広瀬と組んで投げるのが面白くてな」
斎藤主将「分かりやすいな」
石崎主将「お前もな。ま、流石、俺のダチは天海流石( あまみさすが )って言うんだがそいつのおかげで野球に出会えたんだ。中西監督の伝説とかもそいつから聞いてな。赤竜高校に入学しようかと本気で考えていたんだ。と言う訳で中西監督のサインを頼む!」
斎藤主将「何の為かと思ったらサイン頼む為にここまで来たのかよ!?」
石崎主将「半分はな。もう半分は決勝で相手する風祭には絶対打たすんじゃねえぞ!」
斎藤主将「ああ(既視感かな。前にもこんな事があったような?)と言っても決勝じゃ投げられそうもないんだが?」
石崎主将「ああ、今日あれだけ投げたからなそれじゃ打って打って打ちまくれ!」
斎藤主将「ああ(なんつうか裏表のない奴だな。分かりやすくて面白いや)」

こうして斎藤は石崎に春の借りを返した。そして決勝はついに風祭との対決となると言っても先発は柚だがどっちにしろ風祭に取っては楽しみな対決となったらしい。