第43章 最後の夏(1)〜親友との約束〜(後編)

−1996年 7月−
赤竜高校は一足先に決勝に進出しもう1校の決勝進出の争いも始まった。
大島監督「今日勝てば決勝だ。しかし相手は甲子園レベルの高校となったわけだが」
佐伯主将「何がなんでも勝ちます!」
大島監督「うむ。春には出れなかったが夏には甲子園に出ないとな。でなきゃ俺のクビも飛びかねない」
井上「監督の為に頑張るのもな」
西田「確かに」
大島監督「お前らな」
中尾「それより相手の4番って監督の息子さんですよね。なんかないんですか?」
大島監督「ふっ、甲子園に行く為には偉大なる父を倒して行けとでも言っておこうか」
大西「立派なセリフなんだろうけど?」
井上「こんなおっさんに言われても感動は薄いと言うか」
大島監督「おのれらは」

大西「あれが大島監督か、想像とはずい分違いますね」
大島「そうか、家でもあんな感じだぞ」
浅木「これはあれだ。噂と現実は別物って奴かな」
新村「普通は夢と現実だけどな」
九重監督「そんな事はどうでも良い! この戦力で甲子園に行けなかったらお前らが悪い! と言うわけで絶対に勝て!」
中原「夏はテンションが高いですね」
森高「ううっ、責任重大だよ」
中原「友人に会う為にはまずは勝とう! と言うわけで今日も無失点に抑えて俺に繋げてね!」
森高「は、はい」
新村「いつも通りテンションが低いけど、ここまで自責点はゼロだからな」
浅木「ああ。案外こう言うタイプに名門が敗れるのかもな」
新村「ドラフト候補の佐伯さんかプロレベルのシュートを投げるって言うけど打てるかな?」
浅木「さあな」

−地方大会準決勝戦 横浜スタジアム−
3年 大西 洋一
後攻 先攻
斉天大附属高校 旭光商業高校
投手力 機動力 投手力 機動力
打撃力 守備力 VS 打撃力 守備力
意外性 経験値 意外性 経験値
総合力 総合力
新村 将悟 1年
2年 西田 博樹 波戸 宏 3年
3年 佐伯 真敏 大西 誠 1年
2年 中尾 忠光 大島 圭一 2年
3年 井上 和人 風見 鳥 3年
3年 橋本 謙太 椿本 春樹 3年
3年 堂島 和典 五十里 巡 3年
3年 館西 浩治 浅木 将 1年
3年 大塚 智則 森高 玲於奈 1年

放送席
霞「もう1つの準決勝戦も始まりました。1校は言わずと知れた名門の斉天大附属高校です。エースの佐伯君は現在無失点イニングスを継続中と斎藤君に並ぶエースとして我が県では噂されています」
武藤「確かに佐伯君は良いピッチャーですけど、キャッチャーの中尾君も忘れてはいけませんよ。彼のリードも素晴らしく無失点イニングスは彼のおかげとも言えます。と斉天大附属ですが打撃力は昨年に比べて下がってますが守備力は昨年に比べて上がっている印象ですね。そう言う意味では彼ら2人の調子次第で試合は決まりそうですね」
霞「そしてもう1校は旭光商業高校です。スタメン中4人が1年生でエースも1年と勢いのありそうな高校ですね」
武藤「1回戦から見てますが1年生の野手は打撃能力がエースの森高君は左のアンダースローと変則派でタイミングを合わせるのが難しそうって印象ですね」
霞「ちなみに森高君はここまで無四球とコントロールが良いらしいのが特徴です。それでは準決勝戦が始まります!」

1回表 斉0−0旭 エースの佐伯がマウンドへと向かう
佐伯主将「まずは1番からか」

カキ―――ン!
新村「おっし!」

霞「ボール球でしたがフォークをセンター前に打ち返しノーアウトでランナーが出ます!」
武藤「簡単に言いましたけどワンバウンドしたフォークをセンター前に打つなんてまるで玖珂君みたいですよ!?」
霞「ちなみに新村君はかなりの俊足です!」
武藤「今までと同じなら走るんでしょうが、今日は強肩の中尾君が相手ですからね」
霞「走らない可能性もあると?」
武藤「ええ」

佐伯主将(走って来ると思うか?)
中尾(恐らくは)
佐伯主将(刺せるか?)
中尾(なんとかして見ます!)
新村(このタイミングだ!)
佐伯主将(シュッ!)

ズバ―――ン!
中尾(パシッ! シュッ!)
新村(タッ!)

霞「初球から警戒していましたが見事に盗塁を成功させました!」
武藤「足も速いですが何よりもモーションを盗むのが上手かったですね。これは将来真田君に匹敵する足になるかも知れませんよ!」

新村(フルフル!)
九重監督「三盗は無理らしいな」
橋爪主将「まあ、あの肩じゃ無理でしょうね。ここは送りバントですか?」
九重監督「下手くそにやらせてもダブられる危険性があるしここは右狙いの進塁打だな」
橋爪主将「ですね」
大島(そっちの方が難しくないか?)

佐伯主将(シュッ!)

ククッ!
波戸「こんなの打てるか!?」

霞「最後は伝家の宝刀クリティカルシュートで決めて1アウトです!」
武藤「いきなりシュートで140キロを記録しましたね。これは分かってても打てませんよ!?」

佐伯主将(シュッ!)
新村「しまった!?」
大西「当たれっ!」

ガキッ!
中尾「(あの体勢で当てたか)サードは良いからファーストに投げて下さい!」
館西(シュッ!)堂島(パシッ!)

霞「三盗を狙うかと思ったらヒットエンドランでランナーの新村君はサードストップ! しかし打った大西君はアウトで2アウトランナー3塁となりました!」
武藤「正確には三盗を狙いましたが球種がストレートだった為に間に合わず慌てて大西君が当てて結果的に進塁打になったってとこですね」

中尾(すみません)
佐伯主将(お前のリードは間違っていない。気にするな)
中尾(はい!)

大西「すみません」
九重監督「結果的に進塁打なら上出来だ!」
橋爪主将「どう見ても間に合いそうもなかったしランナーも得点圏なら確かに上出来ですね!」

佐伯主将(シュッ!)

スト―――ン!
大島「くそっ!」

霞「最後のボールはクリティカルシュートではなくボール球のフォークを振らせて空振り三振!」
武藤「最後にフォークを要求とは、やっぱりこのバッテリー相手に得点は難しそうですね!?」

九重監督「やれやれ1年が頑張ってるのに」
橋爪主将「まあそうそうは打てなくても仕方ありませんよ」
新村「返れなかったか」
大西「まあまあ変化球ならサードも盗めるかも知れないって分かっただけ良かったじゃないか」
新村「まあな。けどなんで俺が三塁狙うって読まれたんだろう?」
椿本「恐らくお前のリードの仕方だろうな」
浅木「と言うと?」
椿本「盗塁を狙うと自然といつもよりリードの幅が広くなるからな。一瞬にしてそれに気付いたんだろう!」
新村「さすがは1年で正捕手の座を奪った中尾さんですね」
椿本「やっぱり血なんだろうな」

1回裏 斉0−0旭 ヒットを打たれるが後続を抑えて無失点と佐伯も難攻不落らしい
森高(さすがは名門のスタメン、気のせいか名門のオーラを感じる)
椿本(気のせいだ。球が軽いってわけじゃないけど、お前の遅いストレートだと、どうも真ん中付近は怖いしコースに投げて行ってくれ)
森高(相変わらず四隅狙いですか?)
椿本(ああ。ちなみに変化球の時はこっちからサイン出すから)
森高(相変わらずアバウトなリードだなしかしここまで勝ってるんだし信じて行こう!)

ガキッ!
霞「なんとか当てますが結果はセカンドゴロで大西君はアウトです!」
武藤「113キロと遅くてタイミングが合っていませんね。ところで大西君が2人いますが兄弟なんですか?」
霞「ああ。同じ苗字ってだけの他人らしいです。遠い親戚かどうかまでは分かりませんが?」
武藤「じゃあ赤竜高校の佐伯君と斉天大附属の佐伯君は?」
霞「ああ。そっちは一応従兄妹らしいですよ。詳しくは知りませんが」
武藤「こっちは意外にも血縁関係者だったか?」

西田「やっぱり打ちにくいですか?」
大西「速度もだが球の出どころが見にくいってのも最悪だな。タイミングを合わせるのはかなり難しいぞ」
西田「球威は?」
大西「…………そうだな。特に可もなく不可もなくかな?」
西田「要するに普通ってとこですね」

森高(シュッ!)

ガキッ!
西田「確かに打ちにくい」

霞「西田君はスローカーブを打ち上げて2アウトです!」
武藤「ただでさえ遅いのに更に遅い変化球とは!?」

カキ―――ン!
森高「えっ?」
佐伯主将「ふう」

霞「アウトコースの絶妙なスクリューでしたがライト前に運び佐伯君がランナーとして出ます!」
武藤「秋から鋭くなっていますしバッターとしても凄くなってるのかな?」
霞「2アウトランナー1塁で夏から4番を打っている中尾君です!」
武藤「特に勝負強いって印象じゃないんですが打率は高いし打点も良いですね」

中尾「ストレートか!」

ガキッ!
霞「アウトは全てセカンドとなって3アウトチェンジ!」
武藤「ここまで5割打っている中尾君でさえ1打席ではとらえられませんね」

森高「なんとか抑えられたか」
中原「とりあえず7回くらいは無失点で俺に繋げてね!」
森高「後6回もこんなに疲れるのか?」
中原「9回じゃないだけマシだし俺に繋げてね」
森高「努力はします!」

1回から先発共はヒットを打たれるが後続は抑えると順調なピッチングを見せる。試合はこのまま無失点で進み4回へと突入する。

4回表 斉0−0旭 試合は0対0のまま進んで行く
佐伯主将(シュッ!)

ズバ―――ン!
大西「コントロールも良いから手も出ない!?」

霞「最後は145キロのストレートを空振り三振!」
武藤「1年生にあの速度であのコースのボールを打てってのは厳しいですね」

佐伯主将(シュッ!)

ククッ!
大島「かすりもしないし!?」

霞「大島君も空振りの三振とクリティカルシュートには手が出ませんね」
武藤「速度、キレ、変化とプロレベルですからね」

佐伯主将(シュッ!)

ガキッ!
風見「シンカーだと!?」

霞「続く風見君もシンカーを引っ掛けてショートゴロと徹底的に抑えられていますね」
武藤「ここまでヒット打ってるのが1年の新村君と浅木君ってところが凄いですね」

中尾「ナイスピッチング!」
佐伯主将「ここまで2安打とまずまずの出来かな」
井上「まずまずと言うか順調だろうが?」
佐伯主将「と言っても2安打ともランナーが得点圏まで進んだしあまり余裕はないけどな」
中尾「そうですね。評判通り相手のピッチャーも良いですしそうそうは打てそうにありませんからね」
井上「まあ佐伯しかヒットを打ってないし俺達は偉そうにできんわな」
佐伯主将「変化球狙って打ったらヒットになっただけどな」
井上「だから凄いんだよな」

4回裏 斉0−0旭 佐伯にもタイミングが合わずに旭光打線も沈黙して行く

ガキッ!
西田「くそっ! とらえたと思ったんだけどな?」

パシッ!
森高「この調子で抑えて行くぞ!」

霞「118キロのストレートを打ち上げピッチャーフライに倒れます!」
武藤「ライズボールって下から浮き上がって来るので打ち上げてしまうんですよね。まあ野球じゃあんまり観ませんけど」

森高(シュッ!)

ククッ!
佐伯主将「入ってるのか!?」

霞「アウトコースギリギリ入ったか見逃し三振で2アウト!」
武藤「やっぱりあのコントロールが一番凄いですね。昨年セーブ記録を作った高月を思い出しますよ!」
霞「上と下でフォームは違いますが同じ左投手ですからね」
武藤「当然ですが球速や変化球は高月の方が上ですけど、コントロールは負けてないんじゃないかな?」
霞「高校時代は知らないんですがやっぱり凄かったんですか?」
武藤「いや、名門の冥空高校だったけど、高校時代はそんなに凄くなかったと思いますよ。同期の瀬戸でさえエースじゃなかったくらいですから」
霞「瀬戸と言うとドラゴンズのエースの?」
武藤「ええ。あの2人は大学で伸びたタイプで瀬戸は冥空大学のエースとして1位で指名されて高月は3位だったかな」

森高(シュッ!)

ズバ―――ン!
中尾(入ってるの?)

霞「話の途中でしたが最後は低めギリギリを見逃しの三振と今日の奪三振は全て見逃し三振ですね」
武藤「ライズボールは低いと見逃してストライクに入るボールですからね。まあ森高君のコントロールがあって成り立つ決め球ですね」
霞「意外と言うのもなんですがこの回も両校無得点と投手戦が続いています!」
武藤「タイプは違いますがどちらもコントロールが優れてるし1、2点の争いになりそうですね」

森高「この回も抑えられたか」
椿本「OK! この調子で行こう!」
森高「は、はい!」
椿本(今日もコントロールが良いし大丈夫だよな?)

4回も無失点と両投手は好投を見せる。試合は更に無失点で続いて行き試合は7回へ向かう。

7回表 斉0−0旭 両投手好調でいまだに無失点が続いている
霞「試合もいよいよ7回ですがいまだに無得点と試合は動きません!」
武藤「意外ですね。まさかここまで斉天が抑えられるとは思いませんでしたよ? 今年の旭光は本当に過去最高の強さかも知れませんね!」
霞「しかし勝つ為には1点が必要なのは両校同じです。佐伯君と森高君どちらが先に崩れるでしょうか?」
武藤「森高君はスタミナ的にそろそろ交代でしょうね。控えの投手じゃ旭光の方が上で控えの野手じゃ斉天の方が上ですかね」
霞「とにかく7回、試合は動くのでしょうか?」

大西「ここだ!」

ガキッ!
西田「むっ!?」

霞「お世辞にも良い当たりとは言えませんがセンター前に抜けてノーアウトでランナーが出ます!」
武藤「飛んだ場所が良かったですね。次は4番の大島君か」

佐伯主将(………………)
中尾(切り替えて行きましょう)
佐伯主将(ああ!)

ククッ!
大島「だあ―――!?」

霞「アウトコースのクリティカルシュートを空振り三振と4番の大島君は全然良いところなしです!」
武藤「4番が打ててないですからね。今日は無得点で当然か」

佐伯主将(シュッ!)

ズバ―――ン!
風見「何っ!?」

霞「147キロ、アウトコース高めのボール球を空振り三振しこれで2アウトです!」
武藤「7回で自己最速ですか、スタミナも申し分なしですね!?」

佐伯主将(シュッ!)

スト―――ン!
椿本「………………」

霞「ヒットを打たれましたが後続は三者三振といまだに得点はできませんね。ちなみに7回で14奪三振と奪三振率も素晴らしいですね!」
武藤「こんなピッチングされたらそうそう得点はできませんね」
霞「大西君も打ち取られた当たりでしたしやっぱり佐伯君は難攻不落ですね」
武藤「春の甲子園逃したのも得点力が落ちたせいと言われていますからね。むしろ失点は昨年より良くなっていますし」

九重監督「1点くらいとっとと取れえ!」
全員「7回で自己最速出すピッチャーですよ」
九重監督「…………延長を見すえて森高にはもう少し投げてもらうか」
椿本「スタミナ的には後1イニングってとこですかね」
九重監督「もう少し投げてもらいたいが今日の内容じゃ1点が致命傷になりそうだからな。おっし後1イニングで中原に交代だ!」
森高「が、頑張ります!」
中原「後ろには俺がいるしガンバだ!」
森高「は、はい!」
九重監督「失点は許されん場面だ。失点したら地獄が待っていると思え!」
森高&中原「……………………」
全員「なんとしても無失点で抑えてくれ。じゃないととばっちりがこっちにも来るから!?」
中原「頑張れ〜♪」
森高「………………」

様々なプレッシャーを受けながらエースの森高はマウンドに向かう。

7回裏 斉0−0旭 ヒットを打たれる物の佐伯は後続を三者三振と抑える
西田「まずは出ないとな」
森高(この回で終わりだ。中原先輩に繋ぐ為にも無失点で抑えないと!)

ガキッ!
西田「ここまでタイミングが合わないとは!?」

霞「インコース高めのボール球を打ち上げ1アウト!」
武藤「ボールが遅いせいかつい振ってしまうんですよね。今日打ち取られた当たりはどれもこんな感じですね」

佐伯主将「やっぱり自分で決めるしかないか!」

カキ―――ン!
森高「っ!?」

霞「フェンスダイレクト! 打った佐伯君はセカンドでストップです!」
武藤「今のもライズボールでしたが佐伯君はタイミングが合っていますね」
霞「高校通算打率は3割を記録していますからね。バッターとしても良い素材だとプロも思ってるんじゃないでしょうか?」
武藤「うーん、確かにセンスはありそうですけど、高校時代に似た様な評価でプロで打てなかった選手なんて山のようにいますからね」

椿本(ボールその物は悪くない。次のバッターを抑えるぞ!)
森高(はい!)
中尾(3打席目、ここで決める!)

カキ―――ン!
森高「っ!?」

霞「入った―――高めの棒球を見逃さず打ってレフトスタンドに叩き込んだ―――ついに試合が動きました!」
武藤「致命的な失投でしたね。何よりも高めに行ったのが最悪でしたね。これは決まりましたかね」
霞「ここで九重監督が動きました。ピッチャー交代のようです」
武藤「森高君は降板ですか、最後はこんな結果でしたが斉天相手に先発して2失点と見事なピッチングでしたね」
霞「はい。そしてマウンドへ向かうのは2年生の中原君です」

森高「すみません!」
橋爪主将「まだ試合は終わっていない。負けてないんだから泣くなよ!」
森高「でも甲子園に行けばキャプテンも投げれるのに」
橋爪主将「なんだそんな事を気にしてたのか、大丈夫だ。仮に負けたとしても悔いはないよ」
九重監督「(嘘をつけない奴だ)橋爪の言う通りまだ試合は終わっていない。泣くのはまだ早いぞ!」
橋爪主将「そうだ。頼もしいあいつらがきっと逆転してくれるはずだ。ねえ監督?」
九重監督「ああ。勝てなきゃ地獄に落ちるからな!」
橋爪主将&森高(頑張れー!!!)

ガキッ!
井上「重いっ!?」
中原「まずは1匹ですよ!」

霞「なんとか当てましたが結果はショートフライで2アウトです!」
武藤「まあいきなり140キロですからね。当てただけでも凄いですよ」

中原「ふふん!」

ズバ―――ン!
橋本「速度差が思っていた以上にやっかいだ!?」

霞「決め球は146キロを記録と先ほど投げてた森高君とは違って力押しのスタイルですね!」
武藤「MAX120キロからMAX140キロ以上ですからね。プロでも対応は難しいですよ」
霞「しかしこの回に2点を取り斉天大附属がこのまま勝つのでしょうか?」
武藤「うーん、このリレーが完成したら得点はできなかったでしょうし旭光は交代のタイミングを間違えましたね」

大島監督「もらったな!」
佐伯主将「まだ早いですよ」
大島監督「お前から3点は奪えんよ」
中尾「そうですね」

8回表 斉2−0旭 ついに均衡は崩れた。このまま斉天大附属が勝利するのか?
佐伯主将「とにかく残り2回を死ぬ気で抑えないとな!」

ズバ―――ン!
五十里「やっぱり打てないか」

霞「147キロのストレートを空振り三振と手が出ません!」
武藤「こんなボール投げられたらそうそうは打てませんよ!」

浅木「来たあまい球!」

カキ―――ン!
佐伯主将「また打たれたか!?」

霞「また打った。1アウトですがランナー1塁です!」
武藤「1打席目と同じくカットしてのあまい球狙いですね。タイプとしては1番や2番が向いてそうですね」
霞「ちなみに足も速いですがここは送って来ますかね?」
武藤「うーん、中尾君は強肩ですからね。けど勝負してチャンスを広げたい場面でもありますからね」

橋爪主将「走らすんですか?」
九重監督「ここで送ったら得点圏で新村だ。あいつに期待はできん」
橋爪主将「なんかオーダーに問題ありませんか?」
九重監督「1番が不発な分、2番はチャンスに滅法強い波戸だ」
橋爪主将「ちなみにその波戸の1打席目は進塁打狙いでしたが?」
九重監督「大西や大島の方が能力が高いからな。しかしここは中原、新村で打って打って打ちまくれだ!」
橋爪主将「中原はバッティングが最悪だし新村は得点圏で打つのは無理だろうしせめて五十里が打ってくれてたらな」
九重監督「とにかくまずは1点だ!」

佐伯主将(シュッ!)

ズバ―――ン!
中原「無念」

霞「144キロのストレートを見逃し三振し2アウトです。しかし浅木君は盗塁を成功させて2アウトランナー2塁です!」
武藤「次は新村君ですが、1打席目じゃいきなり打ってましたが2打席目は軽く捻られましたしどうも不安ですね?」

佐伯主将(シュッ!)

ズバ―――ン!
新村「………………」

霞「後続はあっさりと三振に抑えられてこの回も無失点に抑えます!」
武藤「本当に終わって見ればあっさりですね。やっぱり難攻不落ですよ」

新村「無理です。なんかピンチの方が良いボールが来てますよ!?」
浅木「単にお前がチャンスに弱いだけだろう」
新村(グサッ!)
橋爪主将「その辺で勘弁してやれ」
九重監督「くそっ! まだ1点が入らん!」
大西「次は波戸先輩からですしなんとかなりますよ!」
大島「本当に1点が遠いよな」

8回裏 斉2−0旭 佐伯は連打を許さず無失点に抑える
中原(シュッ!)

クルッ!
堂島「チェンジアップかよ!?」

霞「ここで今日初めての変化球を空振り三振し1アウト!」
武藤「140キロのボールから100キロのチェンジアップとこれは対応できませんね。しかも『ピラニアダイブ』と言って球威がある上にあの落差と言う破天荒な変化球ですから対応してもスタンドには届かないでしょうね」
霞「そこが不思議なんですけどチェンジアップって合わせたら軽く飛ぶってイメージがあるんで?」
武藤「球威があるのは中原君の特性でしょうね。多分彼の握りで別の投手が投げても球威は伝染されないと思いますよ」

中原(シュッ!)

ガキッ!
館西「重っ!?」

霞「館西君はストレートを打ち上げて2アウト!」
武藤「147キロ!? 佐伯君の自己最速に並びましたよ!?」

中原(シュッ!)

ガキッ!
大塚「………………ダメか」

霞「意外にも下位打線の方が当てて来ますが結果は三者凡退と打てません!」
武藤「確かに意外ですね。しかし結果は三者凡退ですか中原君の調子の良さもありますが森高君のリレーのせいか打ちづらさが増していますね」

大島監督「三者凡退か」
中尾「30キロ近く速度が違いますからね。タイミングを合わせるのは至難の業ですよ」
大島監督「昨年はそれでも合わせるクリーンナップだったんだがな」
井上「プロで頑張っている人達なんだから当然な気もしますけどね?」
大島監督「プロを目指しているならお前らだって打たないと話にならんぞ!」
井上「確かに」
中尾「とにかく次を抑えれば勝利です。このまま行きましょう!」
全員「おう!!!」

9回表 斉2−0旭 旭光商業はこのまま佐伯を打てず終わるのだろうか?
霞「いよいよ9回です。斉天大附属がこのまま勝つのでしょうか?」
武藤「1回で佐伯君から2点はきついですがクリーンナップにまわりますし最低でも同点にしたいとこですね」
霞「うーん、乗ってくれませんね」
武藤「シリアスな場面ですよ。ここで負けたら終わりなんですから」
霞「ですね。それでは旭光商業の反撃となるか期待しましょう!」

佐伯主将(シュッ!)

ククッ!
波戸「怪物だな!?」

霞「9回でもスタミナは落ちないのか142キロのクリティカルシュートを空振り三振!」
武藤「今日最高のクリティカルシュートですね。こりゃ本当に終わったかも」

波戸「後は頼む」
大西「まだ終わらせません。俺が出れば先輩達が必ず打ってくれる!」
波戸「そうだな。何もできなかった俺のセリフじゃないけど後を頼む!」
大西「はい!」

カキ―――ン!
佐伯主将(おいおい!?)

霞「2打席連続ヒットと1年生の大西君は佐伯君に合っていますね」
武藤「前の打席じゃ運もありましたが今の打席では綺麗にクリティカルシュートに合わせて打ちましたし1年生とは思えないバッティングセンスですね!」
霞「そしてここで迎えるのは4番の大島君です!」

大島「うっら―――!」

カキ―――ン!
武藤「………………なんで?」
霞「入りました。全然期待してませんでしたがここで大島君がストレートをライトスタンドに運んだ! 同点です。試合はまだまだ分かりません!?」
武藤「今日全然タイミングが合っていないのにいきなり合わせるなんてあの子は逆境に強いんですか!?」
霞「とにかく主砲の一振りで追い着いてこれで2対2の同点となりました!」

大島監督「ざけんな。なんでここであいつが打つんだよ!」
不破「監督、落ち着いて下さい。観客も見てるんですよ」
大島監督「………………そうだったな。しかしここで打つとは親不孝者め!」
不破「そりゃ打つでしょう」
大島監督「ふっ、あのガキが大きくなったもんだ!」
不破「監督の方が身長は高いですけどねっとそれよりマウンドに行かなくて良いんですか?」
大島監督「あのバッテリーなら声かけなくても問題ないさ!」

中尾「すみません。外すべきだったのに」
佐伯主将「仕方ない。いきなり合わせて来るとは俺も予想ができなかった。不幸中の幸いと言うべきかまだ同点だ。後続を抑えて裏でサヨナラにすれば良い!」
中尾「はい!(とにかく同点でとめる!)」

ズバ―――ン!
風見「大島に続きたいところだが!?」

霞「145キロのストレートを空振り三振!」
武藤「長打を防ぐ為に低めにストレートを集めるのは正しいと思いますよ大島君にはそのリードで打たれたわけですけど」
霞「続くのも長距離バッターの椿本君ですが」

佐伯主将(シュッ!)

スト―――ン!
椿本「打てん!?」

霞「最後はボール球のフォークを空振り三振し3アウトチェンジです! ちなみに佐伯君は9回を20奪三振と素晴らしいピッチングを見せております!」
武藤「斎藤君のせいで影が薄いですけど、佐伯君も奪三振が多いですよね」
霞「ええ。しかし試合は同点で裏へと進みます」
武藤「当たってる佐伯君にまわりますしサヨナラも有り得るかな?」

九重監督「さすがは我が校の4番、あの場面で良く打った!」
中原「まあ自分を捨てた高校に復讐したかったんだろうね」
大島「違う。大西の努力を無にしたくなかっただけだ!」
大西「俺は決めるのでなく繋げるのが仕事ですから大島さんには感謝しています!」
森高「プロみたいなセリフだね」
浅木「打撃のプロフェッショナルだからな」
新村「それ意味違わなくないか?」
浅木「ニュアンスが伝わればそれで良いんだよ」

9回裏 斉2−2旭 佐伯がまさかの1イニング2失点と試合は振り出しに戻った
霞「まさかの9回裏突入です。佐伯君から2得点と旭光商業の打撃力は昨年より上っぽいですね」
武藤「そうですね。ヒットも結構ありますし今日の佐伯君の調子からして無得点でも仕方ないと思ってましたよ」
霞「とにかく9回裏、斉天大附属が1点取ればその時点でサヨナラとなります」
武藤「当たってる佐伯君にもまわりますしここで抑えて流れを持って行きたいところですね」

中原「俺の責任は重大だな。とにかく3人で抑えるぞ!」

ズバ―――ン!
大西「速度差がきついな!?」

霞「147キロのストレートを空振り三振!」
武藤「森高君から繋がれるとやっぱり打てそうもないですね」
霞「少なくとも打てる雰囲気ではありませんね」
武藤「タイプが全然違いますからね。変化球狙った方がまだ打てる可能性があるかも知れませんが狙ってたらまずストレートに振り遅れてしまいますし失投でも来ない限りこの回でのサヨナラは難しそうですね」

西田「やっぱり1打席じゃ打てそうもないな。連打狙うよりも一発を狙って見るかな?」

カキ―――ン!
中原「?」

武藤「………………気のせいでしょうか、ポールに当たりませんでしたか?」
霞「当たりましたね」
武藤「なんでこんなに静かなんですか?」
霞「まさかノースリーから振ってライトポールに当たるとは思わなかったからじゃないでしょうか?」
武藤「なるほどってそんな事言ってる場合かサヨナラじゃないですか!?」
霞「と言うわけで2番の西田君がノースリーから強振しライトポールに当たるサヨナラホームランで決勝へ進出したのは斉天大附属高校と名門の壁は厚かった!」
武藤「まさか佐伯君の前に終わらせるとはさすがは名門のスタメンですね。あの中原君から打つとは西田君も良い素材ですよ!」
霞「と言うわけで今年も斉天大附属VS赤竜高校となりました。決勝でお会いしましょう!」

西田「痛いですってば!?」
井上「良くぞ決めた。それでこそ将来の4番だ!」
西田「俺は4番タイプじゃありませんってば!?」
佐伯主将「しかし球威のある中原からお前が打つとは思わなかったな?」
西田「高めに浮いた球でしたから、それに連打で得点は難しいと思ってマグレ当たりに期待しましたから」
大島監督「不運続きのお前だったがようやく幸運に恵まれたな」
西田「酷い。そこは嘘でも努力が実ったなとでも言ってくれると思ったのに!?」
全員「ハハハ」

中原「2年連続でサヨナラホームラン打たれるなんてひょっとして俺ってサヨナラ男?」
大島「言いえて妙だな。サヨナラ男ってよりサヨナラ負け男かな?」
中原「今日だけは言い返せない」
九重監督「何故だ? 今年こそはと思ったのにまた負けた!?」
橋爪主将「まあまあ」
森高「すみません。僕が1失点に抑えてれば勝てたのに」
九重監督「2得点3失点と接戦だったからな。むかつくが今年はお前らを責められん」
大島「昨年は1対2で負けてるし守備力が下がって攻撃力が上がったのかな?」
中原「昨年の相手は赤竜高校だろう」
大島「そうだったな」
新村「残念ながら決勝には行けなかったか」
浅木「俺達はまだ1年だ。次のチャンスに賭ければ良いさ」
大西「そうだね」
大島「監督は意外にも怒らなかったな」
中原「怒りより悲しみなのさ」
大島「うーむ、なんか知らんが凄い説得力だな」
大西「それだけじゃなく俺達、1、2年が活躍したから来年に可能性があると分かって嬉しかったんじゃないですかね?」
大島「うむ。俺がキャプテンとなって攻撃的チームとして甲子園に行かないとな!」
中原「ま、それで良いんじゃないか?」

喫茶店MOON
村雨主将「9回で追い着かれてどうなるかと思ったけどやっぱり斉天は強いね」
真田「ふっ、だから言っただろう。しかしあの佐伯から打つとは旭光も強くなったね。来年以降には旭光が最大の敵になるかも知れないね」
吉田「しかし2年や1年が活躍した試合だったな」
斎藤主将「ああ。後輩達も甲子園に行くのは大変だな」
真田「うむうむ。ところで次のキャプテンは誰に指名するの?」
斎藤主将「まだ決めてないし?」
真田「相川君はしっかりしてるし福西君もチームメイトの信頼が厚いし篠原君もリーダーシップがあるかなだし? 柚ちゃんも根性あるし候補者はいっぱいだね」
吉田「確かに誰にしても面白そうだな」
斎藤主将「とりあえず引退してから決めるよ」
村雨主将「そういや俺もキャプテンの引継ぎとかしなきゃな。まああいつらで決めてもらえばいっか」
斎藤主将「そう言う決め方もあるか」
真田「うちは代々キャプテンが次のキャプテンを決めてくしきたりが」
斎藤主将「ねえよ!とにかく決勝の相手は斉天大附属だ。今年こそ勝って甲子園に行くぞ!」
真田&吉田&村雨「おう!!!」
村雨主将「俺も今年は甲子園で応援してやるからな。ちなみに斉天が勝っても一緒に行こうな!」
斎藤主将「不吉な事言うなよ」
村雨主将「それが嫌ならずっと勝ち続けてこの俺が日本で二番目に強いキャプテンだと証明するが良い!」
斎藤主将「無茶苦茶言うよな」
村雨主将「それが俺の良いところ!」 真田「良いところ!」
斎藤主将「終わってもマイペースなところは変わらないな(でもこいつらの敗北を無駄にできないからな。必ず全国制覇して見せる!)」

旭光商業は1、2年が活躍し斉天大附属も2年の西田が試合を決めるなど斎藤達の後輩世代が活躍すると高校野球も代替わりが始まったようだ。そして決勝はお決まりのカードとなった。果たして赤竜高校は甲子園に出場する事ができるのだろうか?