第44章 最後の夏(2)〜2つの決勝戦〜(前編)

−1996年 7月−
今日の相手は斉天大附属高校、夏では3度目の対戦となるが今度は正真正銘最後の試合となる。斎藤は全国制覇目指す為にも連投での登板となるが勝利する事ができるのだろうか?
斎藤主将「いよいよ決勝戦だ。相手は斉天大附属と強豪だが全国制覇する為には何処にも負けられない。今日も勝つぞ!」
全員「おう!」
真田「やはり決勝は斉天と恒例だね」
吉田「まあな? 昔もこんな話したっけ?」
真田「僕は知らないよ。けど何度も決勝で当たってるししたんじゃないの?」
吉田「まあ昨年の夏じゃ甲子園でも決勝で当たったからな」
真田「夏で同県の決勝戦は史上初だったからね。1校に戻った現在は一生ないかも知れない記録に立ち会ったわけだ」
吉田「再来年には80回記念だしまた同県同士での甲子園での戦いとかもあるかも知れないけどな」
真田「僕達はプロ2年目だし2年目のジンクスにかからないように気を付けないとね」
吉田「だからプロ入りできるかまだ分からないってのに」
矢吹「連投は避けて来たから今日は竜かと思ったんだけどな?」
小田切「決勝だしキャプテンが連投でも仕方ないさ。まあ同じ投手としては悔しくもあるが」
村田「お前も同じ気持ちか」
工藤「ああ。実力不足は実感してるがまあ登板すれば意地でも抑えるつもりだ!」
相川「団長達が引退したら戦力が落ちるだろうし後輩の存在は頼もしいね」
福西「次期キャプテンとしてもう頑張ってるんですか?」
相川「そんなつもりは」
篠原「案外福西が次期キャプテンかもな」
福西「まさか!?」
相川「僕も良いと思うよ。次のキャプテンは福西君か柚さんのどちらかが良いと思うし」
木下「平凡だが人望はあるからな」
篠原「平凡だからこその人望じゃないか」
福西「俺がキャプテン!? マジで?」
篠原「決めるのは監督かキャプテンだけどな」
福西「俺がキャプテンになればもうコンバートもなくなるかも」
全員「そこなのかよ」
福西「頼れるセカンド福西君として活躍するぞ!」

−地方大会決勝戦 横浜スタジアム−
3年 大西 洋一
後攻 先攻
斉天大附属高校 赤竜高校
投手力 機動力 投手力 機動力
打撃力 守備力 VS 打撃力 守備力
意外性 経験値 意外性 経験値
総合力 総合力
真田 和希 3年
2年 西田 博樹 相川 正人 2年
3年 佐伯 真敏 吉田 毅 3年
2年 中尾 忠光 斎藤 一 3年
3年 井上 和人 村田 修一 1年
3年 橋本 謙太 篠原 直道 2年
3年 堂島 和典 木下 義雄 2年
3年 館西 浩治 矢吹 隼人 1年
3年 大塚 智則 福西 克明 2年

放送席
霞「今年の夏もいよいよ決勝戦を迎えました。このカードは何年連続か忘れたけどとにかく斉天大附属VS赤竜高校の試合となりました」
武藤「夏では何年連続か忘れましたが斉天がずっと優勝していますね」
霞「しかし秋の大会では決勝で赤竜高校に負けています」
武藤「関東大会でもベスト4に残れませんでしたからね」
霞「しかし佐伯君はプロも注目しているだけあって失点の少ないピッチャーです。春の甲子園には出れなかったとは言え決してその評価が落ちたわけじゃありません」
武藤「ですね。シュートピッチャーで奪三振も多いし福井さん2世とか言われて活躍して欲しいですね」
霞「この佐伯君も1位指名と噂されています。ちなみに斎藤君は上位指名と評価はやはり難しいようです」
武藤「うーん、能力的には佐伯君と同格って感じなんですけどね。まあここで活躍できれば佐伯君の評価を抜くかも知れませんね」
霞「ちなみに2人共軽く140キロは出ますが投手としての評価では転生高校の石崎君が一番評価が高いですね」
武藤「まあ左で153キロを記録しましたからね。変化球も凄いし…………でも斎藤君は春では投げ合いに勝ってるんですよね」
霞「ですよね」
武藤「多分斎藤君も1位で指名されると思いますよ」
霞「それでは右での最高投手はどちらか見せてもらいましょう!」
武藤「他に谷口君とかもいるんだけどな。それで今年のサプライズゲストはなしですか?」
霞「ええ。オファー出してた人が病気で休んだので」
武藤「誰ですか?」
霞「ヤクルトスワローズで活躍してた木村佐助さんです」
武藤「確か大島監督の同期でしたね」
霞「ええ。同じ斉天大附属高校出身で木村さんは斉天大学からドラフト2位でスワローズに指名されて活躍しました」
武藤「1年目から3割打って活躍してたな。けど高校やプロでもケガに泣く事も多かったな」
霞「ええ。成績は良かったですがケガに泣いたせいか選手寿命は短かったですね。で今日も運悪く来れませんでした」
武藤「うーん、水鳥さんを思い出すな」

7回表 斉0−0赤 右投手としての意地のぶつかり合いらしく2人共完全に抑えている
佐伯主将「意地のぶつかり合いか否定はできないな」
中尾「は?」
佐伯主将「いやスタンドから意地でも抑え続けろって言われてな。斎藤も同じ事言われてるみたいだし本当に意地のぶつかり合いだと思ってな」
中尾「甲子園の切符と最高投手の座を決める戦いですからね」
佐伯主将「最高投手ってのはどうかな? 俺はまだ石崎と対戦した事はないからな」
中尾「斎藤さんはあの石崎さんに投げ勝ってますからね。ここで斎藤さんに投げ勝てばキャプテンが高校ナンバーワンピッチャーですよ!」
佐伯主将「実際投げ合って見ないとな。とにかく今日も死ぬ気で投げるからなんとか1点を頼む!」
中尾「はい。ですが今はバッターを抑える事だけを考えます!」
佐伯主将「そうだな!」
真田「僕を敵にまわした恐ろしさを実感してるみたいだね」
中尾「どうでしょうね(個人的にこの人はバッターとしてよりランナーとしての方が恐ろしいな。とにかく打ち上げさせるか三振を奪うリードだ!)」
真田(ここまで三振2つだからな。まずは当てる事に集中しないと!)
佐伯主将「今日はパーフェクトに抑える!」

ククッ!
真田「ああ〜終わってしまった」

霞「最後は外へ逃げるクリティカルシュートを空振り三振だ!」
武藤「今日の真田君は外のボール球を振らされて三振ばっかりですね」
霞「ちなみに13個目の三振です」
武藤「大舞台じゃ結構観ている気もしますが真田君はどっちかと言うと三振の少ない選手なんですけどね」
霞「ちなみに佐伯君は奪三振の多い投手なのでプロでもタイトルを獲得するかも知れません」
武藤「タイトル獲得するほどになるかは分かりませんが進学希望とかない限りプロ入りは間違いないでしょうね」

佐伯主将(シュッ!)

ガキッ!
相川「粘るのも難しい!?」

霞「クリティカルシュートを打ち上げて2アウトです!」
武藤「2−3まで粘ったのはさすがですが最後はインコースのクリティカルシュートにやられましたね。決め球はクリティカルシュートがほとんどですからカウントを稼ぐストレートが狙い目ですかね?」

佐伯主将(シュッ!)

ガキッ!
吉田「狙い球が来たのに!?」

霞「初球147キロのストレートを打ち上げてサードフライに倒れます!」
武藤「コントロールも良いし球速も出てるか、今日の佐伯君はプロ相手でも完投勝利をあげそうですね」
霞「佐伯君はこの回もパーフェクトを続けております。試合の均衡はいつ破れるのでしょうか?」
武藤「斎藤君もパーフェクトですから誰が打つかがポイントになりそうですね」

大島監督「ナイスピッチング! これなら完封勝利だな!」
佐伯主将「そのつもりです!」
中尾「1点をなんとか1点を取らないと!」
西田「その1点が難しいんだけどな」
中尾「こう言う時はミスターマグレ当たりのお前の出番だろう」
西田「そんな称号は知らん!」
中尾「今日も一発打てば秋からはきっと4番だぞ」
西田「だから4番タイプじゃないっての! つうか斎藤さんのボールは当てる事ができないからマグレも可能性は低いと思うぞ!」
中尾「それもそうだな。エラーするなよ!」
西田「切り替え早いなー」

7回裏 斉0−0赤 佐伯は7回も3人で抑えるとやはり難攻不落だ
斎藤主将「石崎との投げ合いを思い出すな。だが打倒風祭の為にはここで負けるわけには行かない!」

ズバ―――ン!
大西「くそっ!」

霞「大西君は空振り三振で14個目の三振です!」
武藤「うーん、かすりもしませんね」

斎藤主将(シュッ!)

ガキッ!
西田「ダメか」

霞「ライト前に落ちるかと思いましたが篠原君が追い着いて2アウトです!」
武藤「西田君って案外良い素材かも知れませんね」
霞「2年生でスタメン勝ち取ってるんですから良い素材なんじゃないんですか?」
武藤「まあそうなんですけど、案外高卒でドラフトに指名されるかもと思いまして?」
霞「なるほど、プロ入りできるほど良い選手ってわけですね」
武藤「将来性はあると思いますよ」

斎藤主将(シュッ!)

ガキッ!
佐伯主将「当ててもヒットにはならないか」

霞「佐伯君も打ち上げライト定位置のフライで3アウトチェンジです!」
武藤「当てては来ましたけど、ヒットにはなりませんでしたね」
霞「斎藤君もパーフェクト継続中と投手戦が続いております!」
武藤「こう言う試合展開だと1球に泣く事が多いんですよね」
霞「武藤さんは何回泣いたんでしょうか?」
武藤「どうせ何回も泣かされてますよ」

斎藤主将「このまま抑えて行くぞ!」
吉田「その前にお前からの打席だけどな」
斎藤主将「そうだったな」
村田「ちなみに俺にもまわりますよ!」
吉田「そうだったな(こいつも2打席連続三振だし期待するのはやめとこ)」
篠原(俺にもまわるな)

8回表 斉0−0赤 斎藤も負けずと抑え投手戦が続く
佐伯主将(シュッ!)

ククッ!
斎藤主将「なっ!? 全球クリティカルシュートだとっ!?」

霞「斎藤君には全てクリティカルシュートで三球三振に抑えます!」
武藤「速度や変化も凄いですが何よりもインコースギリギリ3つで三振とコントロールが凄かったですね!?」

佐伯主将(シュッ!)

ズバ―――ン!
村田「ストレート!?」

霞「最後はアウトコースのボール球を振らされて空振り三振!」
武藤「クリティカルシュート狙ってたので届かずに空振り三振ですね。これは配球が上手いですし中尾君のリードが良いですね!」

篠原(左を狙う!)

カキ―――ン! パシッ!
大塚「ふう」

霞「三塁線を越えるかと思ったが大塚君がキャッチし3アウトチェンジです!」
武藤「やっぱり大塚君の守備は上手いですね。あれだけ身体能力が高いんなら外野にしても良さそうですが?」

佐伯主将「ナイスプレイ!」
大塚「守備は得意だからな。誰にも俺の頭は抜けさせんぞ!」
井上「ホームラン打たれない限りはだろう」
大塚「さすがにスタンドへのボールは捕れないし」
井上「そりゃそうだ」
佐伯主将「次はお前にもまわるんだしいい加減打ってくれよ!」
井上「中尾がなんとかしてくれるさ」
大塚「後輩頼みかよ!」
井上「4番に期待して何が悪い!」
佐伯主将「5番にも期待しているぞ!」
大塚「4番と言ってもホームランバッターじゃないからな」
井上「得点圏に出たらなんとか打って見ます!」
大塚(自信薄だな。だから4番を奪われたのかねー?)

8回裏 斉0−0赤 佐伯は8回もパーフェクトを継続する
斎藤主将(シュッ!)

カキ―――ン!
霞「センター前ヒット! 2ストライクからストレートを打った! 斎藤君の記録はこれで終わりました!」
武藤「さすがに4番ですね。勝敗が決まったわけじゃありませんがノーアウトでランナーが出たわけだし大事に行きたいですね!」

中尾(井上さん、後を頼みます!)
井上「得点圏じゃないとは言え本当に打ちやがったか、とにかく振って当てて打つ!」
吉田(力んでるしボール球でもガンガン振って来そうだな)
斎藤主将(5番だし慎重に行くか)

ズバ―――ン!
井上「………………」

霞「期待の井上君でしたが最後は空振り三振で1アウトです!」
武藤「力み過ぎですね。ボール球から入って来たし見て行っても良かったと思いますよ。しかし強打者が続くし赤竜高校としたら気が抜けないんじゃないですかね?」

斎藤主将(シュッ!)

ガキッ!
橋本「しまった!?」

霞「スライダーを引っ掛けて5−4−3のダブルプレイで一気にチェンジです!」
武藤「三振を奪うんじゃなく併殺に抑えるリードでしたね。橋本君も初球から変化球ばかり投げられるからつい振ってしまったんですね」

斎藤主将「出来過ぎだな」
吉田「今まで決め球のほとんどはストレートだから意表を付かれたんだろう」
真田「完全試合がなくなって落ち込むと思ったけど案外余裕があるね?」
斎藤主将「元々無失点に抑えるのが目標だったからな。特に記録とかにはこだわってないし」
真田「ほんとーに?」
斎藤主将「まあ6回を完全に抑えてからは完全試合を狙ってたのも確かだけど」
吉田「打たれたら打たれたでとっとと切り替えるところはさすがだなっていつも思うよ」
斎藤主将「まだ試合が決まったわけじゃないし当然だと思うけどな」
吉田「分かってても切り替えが上手く行かない奴ってのも多いんだよ」
真田「そうそう僕が良い例だよね」
吉田「いやいやお前も結構切り替えが良いと思うぞ」
真田「そうかな?」
吉田「ああ(実際もう切り替わってるしな)」
斎藤主将「とにかく今日は甲子園の切符を賭けた試合なんだ。何がなんでも負けられない!」
真田「そうだね!」吉田「そうだな!」

9回表 斉0−0赤 記録はなくなったがそれでも斎藤は無失点と好投を見せる
佐伯主将(ここをゼロで抑える!)

ガキッ!
木下「シンカーかよ!?」

霞「木下君はファーストゴロに倒れて1アウトです!」
武藤「嫌なとこばっかり投げて来るしヒット打つのも難しいですね」

佐伯主将(打たせる物か!)

ガキッ!
矢吹「くそっ!」

霞「なんとかクリティカルシュートに当てたが木下君と同じくファーストゴロに倒れて2アウトです!」
武藤「あのボールに当てただけでも凄いですけどね」

佐伯主将(こいつで終わりだ!)

ククッ!
福西「こんなボール打てません!?」

霞「アウトコースボール球のクリティカルシュートを振らされてなんと9回もパーフェクトです!? 裏でサヨナラになれば完全試合のおまけも付いた甲子園行きが確定となります!!」
武藤「と言っても下位打線だから延長戦の気配が濃厚かな? けど西田君の例もあるし?」

真田「さすがに最後だけあって譲ってくれないね」
斎藤主将「それはこっちもだ!」
中西監督「一応聞いておくがスタミナは?」
斎藤主将「十分ありますよ。あいつが続投するなら俺から折れる気はありません!」
中西監督「限界と見たら交代させるからな」
斎藤主将「分かっています!(こんな楽しい投げ合いは誰にも譲れないけどな!)」
小田切「さすがだな!」
工藤「何がだ?」
小田切「一発打たれたらサヨナラの場面なのに楽しんでるところがだよ」
工藤「ああ。追い込まれれば追い込まれるほど自分の力が引き出せられるのが楽しいって言ってたな。俺には理解できなかったけど?」
小田切「それがキャプテンの強さの秘密か、偉大な選手ってのはたくさんの好敵手に恵まれてるのが常って言われてるしキャプテンもいずれはそう言うピッチャーになるかもな」
工藤「………………」
小田切「まあ甲子園に行けば俺達も同じような凄い奴と戦えるかも知れないし楽しみだな!」
工藤「そうだな」

9回裏 斉0−0赤 佐伯はパーフェクト継続中と正に難攻不落!
斎藤主将(とにかく失投だけは避ける!)

ズバ―――ン!
堂島「やっぱりかすりもしないか!?」

霞「長打力には定評のある堂島君でしたが空振り三振と抑えられます!」
武藤「一発が出れば終わりの場面なのにノビノビと投げてますね!?」
霞「接戦の試合での斎藤君はいつもこんな感じですね」
武藤「そう言えばそうか」

斎藤主将(シュッ!)

ズバ―――ン!
館西「なんとか塁に出たかったんだけどな」

霞「決め球は144キロを記録とスタミナは衰えません!」
武藤「変わらずどころか今日一番のボールを投げてるような?」

斎藤主将(シュッ!)

ズバ―――ン!
大塚「………………」

霞「大塚君も手が出ず見逃し三振! 一発打たれたらサヨナラの場面でしたが三者三振と恐ろしい底力を見せます!」
武藤「自己最速145キロですか!? 下位打線とは言えこのピッチングは凄いですね!?」
霞「佐伯君はここまで完全試合で斎藤君は1安打ピッチングと決勝戦らしい素晴らしい投げ合いとなったまま延長戦に突入します!」
武藤「どっちも怪物ですからね」

大島監督「結局延長かよ!」
佐伯主将「斎藤がゼロで抑えるなら俺もゼロで抑えます!」
大島監督「延長戦の経験はあまりないからちと不安だがここまで来たんだ。悔いのないよう投げて行け!」
佐伯主将「はい!」
西田「ふう、今日もきつい試合になりそうだな」
中尾「一番きついのはキャプテンなんだけどな」
西田「そうだったな。なんとか当てる事はできたから今度こそ打つぞ!」
中尾「ああ!」

10回表 斉0−0赤 先発の力は衰える事もなく延長戦に入った
佐伯主将(シュッ!)

ククッ!
真田「今日は全然ダメだね」

霞「やはり最後は外角のクリティカルシュートを空振り三振し1アウト!」
武藤「4打数4三振とスカウトの評価が一気に落ちそうな結果ですね」
霞「ちなみに佐伯君はこれで今日17個目の奪三振です!」
武藤「さすがですね。しかし真田君は佐伯君と相性が悪いんですかね?」

佐伯主将(シュッ!)

ズバ―――ン!
相川「良いところに投げて来るな」

霞「インローのストレートを見逃し三振で2アウトとなりました!」
武藤「147キロってスタミナも昔に比べると凄いですね!?」

吉田「当たれ―――!」

カキ―――ン!
佐伯主将「まさか!?」

霞「―――入りました! 渾身のクリティカルシュートでしたが吉田君が打ち返していよいよ試合も決まるか!」
武藤「春なら斎藤君が決めそうだったんですが夏は斎藤君に回る前に決まりましたね!」
霞「吉田君もドラフト候補ですからね。当然と言えば当然なのかも知れませんね」
武藤「しかしコースも速度も変化も抜群だったのにスタンドへ持って行くとは!?」

佐伯主将「くそっ!」

ズバ―――ン!
斎藤主将「何っ!?」

霞「最後は自己最速147キロのストレートを空振り三振し3アウトチェンジです!」
武藤「ここで自己最速か、1点差だし決まったとは言えませんねしかしあの一振りで記録も飛んだしこのままじゃ負け投手か、なんか気の毒ですね」
霞「とにかく赤竜高校が貴重な1点を手に入れました。試合はこのまま終わるのでしょうか?」
武藤「うーん、1人出れば中尾君に回るしチャンスはあると思いますよ!」

真田「さすがは赤竜の3番、良くぞ決めてくれた!」
斎藤主将「まったくだ!」
吉田「ああ(斎藤に誉められるのも久し振りだっけ?)」
相川「とにかく貴重な1点が入ったわけだし死ぬ気で守りましょう!」
真田「そうそう。勝って甲子園に行こう!」
全員「おう!」

10回裏 斉0−1赤 吉田のホームランでついに均衡は崩れた!
斎藤主将(残り3人!)

ガキッ!
大西「終わった」

霞「懸命に当てましたが結果はセカンドゴロで1アウトです!」
武藤「当てたのはさすがですけど、ボール球を振るのは良くないですね」

斎藤主将(シュッ!)

ガキッ!
西田「抜けろ―――!」矢吹「届け―――!」

パシッ!
西田「そんな―――!?」矢吹「よっしゃ!」

霞「ショート後方の当たりでしたが矢吹君が追い着いて2アウトです!」
武藤「さすがに決まりましたかね?」
霞「後1人を抑えれば赤竜高校が甲子園の切符を手に入れますが続くバッターはキャプテンにしてエースの佐伯君です!」
武藤「良いバッターですけど今日は当たってませんからね」

佐伯主将(2アウトだが1点差だ。塁に出れば希望はある!)
斎藤主将(長打力はそれほどでもないだろうけど、ここぞって時に一発を打つし長打力も警戒しよう!)

ククッ!

1−0 初球はカーブから入り佐伯は見送って1ストライク!
佐伯主将(いきなりカーブか、強振すればスタンドに行ったかもな)
斎藤主将(やはり初球は振って来なかったな。次は低めに投げよう!)

カキ―――ン!

2−0 ストレートを芯でとらえるがわずかに切れてファール!
斎藤主将(危なかった。もう少しでライト前に行くところだった!?)
佐伯主将(切れたか…………まだアウトを取られたわけじゃないんだ! 次で打つ!)

斎藤主将(1球外そう!)

ククッ!

2−1 佐伯は当然のようにカーブを見逃しボール!
佐伯主将(ふう、恐らく次も外して来るな)

後1人で終わるところだが佐伯も粘り2−3まで行きファールも続く。そして斎藤と佐伯の最後の試合はこの1球で決まった!
斎藤主将(楽しい勝負だが、いい加減終わらせる!)

ズバ―――ン!
佐伯主将(終わったな)

霞「見逃し―――コールはストライクだ! 最後は144キロのストレートを見逃し三振で赤竜高校が甲子園の切符を手に入れました!」
武藤「ようやく終わりましたね。最後は低めギリギリで確かにストライクに入ってますね」
霞「評判通り両校のエースが活躍した試合でしたね!」
武藤「2人共10イニングを無失点と1失点と打撃力も全国クラスの両校相手にこの失点は凄かったですね!」
霞「ちなみに無四球1安打とコントロールも良かったですし打たれたヒットがスタンドかそうでないかと斎藤君と佐伯君の実力にも差がないと思われましたが」
武藤「そうですね。実力はそんなに変わらないと思いますよ。2人共ドラフト上位で指名されるのは確実でしょうね」
霞「と言うわけで赤竜高校が1対0で勝利しました! これにて地方大会の結果は終わりです!」

大島監督「届かなかったか」
佐伯主将「力及ばずすみません」
大島監督「お前は悪くない。不甲斐ないのは打線だ!」
全員「申しわけない」
中尾「キャプテン」
佐伯主将「キャプテンか、結局俺は春夏と甲子園に行けなかったな」
井上「仕方ねえよ。赤竜高校があんなに強くなってるとは思わなかったんだから」
佐伯主将「いや、秋に戦った時に斎藤達の強さは実感していた。俺の努力が足りなかったから」
大島監督「過ぎた事を言っても仕方ない。お前達は負けたこれが事実だ!」
全員「………………………………」
大島監督「このまま終わりたくなければ舞台を変えて頑張れ! 後輩共は打倒赤竜高校目指してこれから頑張れば良い!」
全員「はい!!!」
大島監督「そこのキャプテンもグスグスしてないでプロに行ってリベンジしてやるってくらいの気合いを見せろ!」
佐伯主将「べ、別に泣いてませんよ!」
大島監督「そんな事は分かってる。終わった事を気にするより次のステージの事を考えるんだな。その方が建設的だ!」
佐伯主将「―――次と言うとプロか、斎藤、甲子園で優勝しろよ!」
斎藤主将「ああ!」
佐伯主将「い、いたのか!?」
斎藤主将「お前とも最後の試合だったからな。最後くらいなんか話そうと思ってな」
佐伯主将「勝者が敗者に話しかけるのはルール違反だろう」
斎藤主将「まあな。ただ一言絶対甲子園で優勝するって言いたかったんだ!」
佐伯主将「そうだな俺達に勝ったんだ。そうなってくれなきゃ負けた俺達が情けない」
斎藤主将「またな」
佐伯主将「ああ」

喫茶店MOON
真田「と言うわけで今日も勝って甲子園優勝だ!」
中西監督「しかしお前らも強くなったもんだ。まさか秋夏と斉天に勝つとは」
斎藤主将「って俺達が勝つって信じてなかったんですか!?」
中西監督「信じてはいたさ。ただ結果が出ると改めて驚いただけだ」
斎藤主将「分からなくもないですが」
中西監督「ま、今日は俺のおごりだ。食べろ食べろ!」
真田「食べるぞ!」
福西「団長に続きます!」
真田「それでは今日のヒーローで我らが赤竜の救世主斎藤君と吉田君の2人にインタビューをしたいと思います!」
斎藤主将&吉田「インタビュー!?」
真田「まずは2人共女っ気なしの野球バカですが、何か面白い事を言って下さい!」
斎藤主将「面白い事って言われてもな」吉田「女っ気ないのは認めるが誰が野球バカだ!」
全員(そっちは認めるのか)
真田「ほほう。それでは野球以外の趣味を言って見て下さい」
吉田「えっと将棋とか日本酒じゃなかった。美味しいジュースとかだよ」
全員(聞かなかった事にしよう)
真田「ほほう。結構和風趣味ですかな」
吉田「そんな事もないぞ。ファーストフードも好きだしカードゲームも好きだ!」
真田「カードゲームと言うと花札とか百人一首とか」
吉田「別にこの国に限ったわけじゃないぞ。トランプとか麻雀もできるし」
真田「麻雀?」
吉田「カード麻雀もあるだろう」
真田「結構知的ゲーム好きですか?」
吉田「まあ頭使うゲームは好きだな。サウンドノベルゲームとかも興味あるし」
真田「ま、そんな事はどうでもいいや、とっとと飲んで食べて盛り上がろう!」
吉田「人に話しかけといてそれかよ!」
真田「まあまあ、それに他の高校も何処が勝ってるか気になるしテレビでも見よう!」
斎藤主将「確かにな」

こうして赤竜高校は今年も甲子園出場を決めた。そしてもう1つの戦いも始まった。