第48章 最後の夏(6)〜終わらない戦い〜(後編)

−1996年 8月−
赤竜高校は準々決勝戦も勝ち上がり次は転生高校VS明鏡大附属、特に石崎と御堂の投げ合いはファンもスカウトも注目していると斎藤達に取っても楽しみな試合らしい。
斎藤主将「どっちもここまで無失点で来ているし楽しみな試合だな」
真田「僕としてはこんなのと戦いたくない嫌な観戦だけどね」
吉田「それじゃ宿舎に戻れば良いだろう!」
真田「1人は寂しいんです!」
斎藤主将「お前の弟子だか部下だかもいると思うが?」
真田「彼らは疲れているから休むんだそうです」
吉田「斎藤も休んで置けば良いのに」
斎藤主将「興味のある投げ合いだからな」
吉田「やれやれ俺はちょっと何か買って来るから何か欲しい物があれば言ってくれ!」
真田「それじゃ」
吉田「お前も買い出し係りだ!」
真田「やっぱりね」
斎藤主将「じゃあ、お言葉にあまえて何か冷たい飲み物でも勝って来てくれ!」
吉田「OK! ほら行くぞ!」
真田「は〜い」

転生高校
浅野監督「相手は2年世代最高投手と言われている御堂のいる明鏡大附属だ!」
八代「新しい変化球を習得したと言う話ですが」
浅野監督「確か『バニシングトマホーク』だったかな? 高速で落ちるフォークでいきなり消えるってのが打者の感想だな」
石崎主将「俺と同じでフォークも得意としているのか?」
浅野監督「いやフォークと言うよりSFFだな。落差に関しては石崎の方が上だな」
石崎主将「当然ですね!」
浅野監督「ちなみにキレやコントロールからして総合的には石崎のフォークより上と言えるな」
石崎主将「何っ!?」
広瀬「それ本当に2年ですか!?」
浅野監督「落ち着け、そこの石崎だって1年の頃から本当に1年かなどと言われていただろう」
広瀬「それはそうですが」
八代「コントロールや投球術に加えて新しい変化球を習得して優勝候補とまで言われるようになりましたし相当手こずりそうですね」
浅野監督「確かに投手戦になりそうだな。まあうちはいつもピッチャー頼りだが」
全員「ははっ」
石崎主将「それでその御堂から打つ方法とかは?」
浅野監督「ふむ…………分からん?」
全員「おい!」
浅野監督「あんなのから打てる方法知ってたらとっくにプロ入りしてるよ―――!」
全員「結局はそれかい!」
広瀬「結局はいつも通り行くだけか」

明鏡大附属高校
西藤「相手はあの石崎さんのいる転生高校か」
釘宮「150キロ以上で球威が武器だしスタンドは少しきついかもな」
福元主将「大丈夫! 今日も御堂が無失点に抑えてくれるさ!」
御堂「ははは」
湯口「今日も後輩頼みかよ」
福元主将「当然だ。あんな怪物から打てる自信はないからな!」
安西「誰だよ。こんなのキャプテンにしたのは?」
湯口「先代のキャプテンだな。良い人だったんだけど人を見る目はなかったのかな?」
福元主将「酷い言われようだ―――これでもリードは天才的とプロも注目しているんだからな!」
御堂「確かにキャプテンのリードのおかげでここまで来れてますからね」
福元主将「さすがは来年のドラ1だな。人を見る目がある!」
湯口「あんまり調子に乗せるなよ」
御堂「はあ」
西藤「それにしてもここまで来れるとは」
釘宮「野球は投手力と言うし御堂の力が大きい事は確かだろうな。そう言えば弟も残っているんだったな?」
御堂「ええ。僕の弟ですから当然です!」
釘宮「打ってはいるがキャッチャーとしてはどうなんだろうな?」
御堂「まあ神童君の活躍のせいか守備面はあまり評価されていないけどリードもキャッチングも上手いよ」
釘宮「ふーん」
西藤「今日勝てば次で戦うかも知れないんだね」
御堂「そう言う事!」

−甲子園大会準々決勝戦 阪神甲子園球場−
2年 中川 啓助
後攻 先攻
転生高校 明鏡大附属高校
投手力 機動力 投手力 機動力
打撃力 守備力 VS 打撃力 守備力
意外性 経験値 意外性 経験値
総合力 総合力
西藤 修司 2年
2年 川崎 徹 湯口 宝刀 3年
3年 八代 正秀 御堂 貴人 2年
3年 広瀬 幸一 釘宮 昇 2年
3年 石崎 和久 安西 木霊 3年
3年 山本 和也 鳴海 燦 3年
2年 川西 京介 諸井 勘太 3年
2年 山本 研一 住吉 桂 3年
2年 庄田 和也 福元 丸太 3年

放送席
霞「ここまで無失点イニングスで来ている2人の投げ合いとこちらも注目の試合です!」
武藤「石崎君は相変わらず凄い球威で投げてますからね」
草薙「152キロとMAXは超えていないがここまでのピッチングも凄まじいからな」
霞「と遅れながら私こと白銀霞と武藤さんと草薙さんでお送りします!」
武藤「もう何も言うまい」
草薙「3年と2年の投げ合いか、それでどんな投手なんだ?」
霞「知っての通り石崎君はサウスポーで甲子園最速153キロのボールを投げる怪物です。ちなみにフォークボールも恐ろしく落ちます!」
武藤「間違ってはいないんだけどな」
霞「御堂君は先ほど投げていた斎藤君見たいにバランスの整ったタイプですね。崩すのは相当苦労しそうです!」
草薙「決め球とかは?」
霞「フォークじゃなかった。SFFでしたね。何でも『バニシングトマホーク』とか言うボールで打者には消えたように見えるらしいです!」
草薙「手前で高速で落ちると言う事か変化球なら御堂君の方が上かな?」
霞「とにかく試合開始です。武藤さんも元気良く行きましょう!」
武藤「は、はい!」

1回表 転0−0明 いよいよ始まった注目の投げ合いだが本当に投手戦となるのか?
石崎主将「ぶっ潰す!」
西藤「凄いプレッシャーを感じるな!?」
石崎主将「ふん!」

ズバ―――ン!
西藤「これが150キロのボールか!?」

霞「最後は151キロを計測と今日も調子は良さそうです。西藤君は見逃し三振に終わりました!」
武藤「調子悪くても140キロ以上出ますからね。高校生の相手としてはちょっときついですね」
草薙「と言っても振らないと点は取れないだろう」
武藤「ま、そうですけど、コントロール乱す時もあるし見て行くのも手ですよね」
草薙「俺の趣味じゃないが最低3打席は回るし確かに見て行くのもありだな」

湯口「ここから見ていたけどミットに当たる音が凄かったな」
西藤「確かに重そうでしたけどそれより150キロってとんでもなく速いですね!? 全然バットに当たる気がしませんでしたよ」
湯口「そうだろうな」
石崎主将「もうすぐあいつらとの再戦なんだ。誰が相手でも打たさない!」

ズバ―――ン!
湯口「確かにレベルが違うな!?」

霞「最後は152キロを記録しました。湯口君も見逃し三振に終わります!」
武藤「やっぱり見て行くんですかね?」
草薙「打撃力が高いと言ってもこのボールから連打は難しい。球威はプロでも類を見ないと言う事だから本塁打も難しいと四死球で自滅を期待するしかないかな」

御堂(さすがに150キロのボールと対戦するのは初めてだな。みんなには利き腕を痛めるとあれだから無理して振る事はないって言われているけど)
広瀬(こいつは要注意だな)
石崎主将(ピッチャーとしてだろう。バッターとしてもなかなかやるだろうが俺の相手じゃない!)

ガキッ!
御堂「やっぱり重いな」

霞「ストレートを打ち上げてピッチャーフライで終わりと振って来ましたね」
武藤「うーん、ピッチャーが振るのは意外でしたね」
草薙「打たないなら打順が3番って事はないだろう」
武藤「そりゃそうですね」

広瀬「相手じゃないって言いながら1打席で当てられてるじゃないっすか!?」
石崎主将「動揺が言葉に出てるぞ。ま、ちょっとあまかったなこれからは全力で行くぞ!」
広瀬(格下相手でもいつも全力だけどな)
石崎主将「おっし! やる気が出て来たぞ!」
広瀬「次は御堂の番か」

1回裏 転0−0明 石崎は三者凡退と立ち上がりから好調振りを見せる!
御堂(今日は1点勝負か―――とにかくスタミナが続くまで投げるだけ!)

ズバ―――ン!
中川「キャプテンほどじゃないけど速いな。しかもコントロールが良いしこれは手こずるぞ」

霞「最後は144キロのストレートで決めるとこちらも負けていませんね!」
武藤「まあ石崎君はあれですが十分に速球ですね。2年て事を考えると末恐ろしいセンスを感じるな!?」
草薙「そして決め球は変化球か、ホークスの御堂よりも素質は上かも知れんな」
武藤「まあ高校の時と比べたらそうでしょうね」
霞「ちなみに今年は出遅れていて調子も悪いので弟君のピッチングを見て調子を上げて欲しいですね!」
草薙「うむ!」

御堂(シュッ!)

ククッ!
川崎「Hスライダーとはやっかいだな」

霞「川崎君はHスライダーを空振り三振!」
武藤「高速で変化するんで当てにくいんですよね」
草薙「速度はだが変化はそこまでではなかったし球種が頭にあれば当てられなくもないな」

御堂(シュッ!)

スト―――ン!
八代「…………落ちたのか!?」

霞「ここでバニシングトマホークだ。八代君はストレートと思って振ったようで空振り三振です!」
武藤「ここから見ていると速いフォークですがバッターには消えたように見えるんですよね」
草薙「手元で高速で落ちるから魔球か、しかし捕った捕手もさすがはキャプテンだな」
霞「捕球技術やミットの使い方などキャッチングに関しては高校TOPって話ですからね」
草薙「あれだけキャッチングが上手ければ指名の可能性もあるかもな」
武藤「そうですね。バッティングでは劣ると言っても上手いし可能性はありますかね?」
霞「とにかく1回はどちらも三者凡退と素晴らしいピッチングを見せました。このまま投手戦となるでしょうか?」
武藤「どっちも凄いピッチャーだしそう言う展開かな」
草薙「そうだな。少なくとも1順目で打つのは無理だろうな」

御堂「ふう、しかし2回は4番からだし一発は避けないと」
西藤「あのピッチングならそうそう打たれないと思うけど」
御堂「いや転生高校は打線も凄いから油断はできないよ」
釘宮「次は俺からだ!」

2回表 転0−0明 御堂は三者三振と石崎を上回る調子を見せる!

ズバ―――ン!
石崎主将「む〜〜〜!」
釘宮「ちっ!」

霞「注目の対決でしたがフォアボールで釘宮君がファーストへ行きます!」
武藤「結局初球だけストライクでしたね」
草薙「コントロールが悪いと言う訳ではないが突然荒れるところもあるのか?」
武藤「さあ?」

石崎主将「うらっ!」

ズバ―――ン!
安西「こりゃレベルが違うな!?」

霞「安西君も振りますが当たらずに空振り三振!」
武藤「152キロと出ているし調子は良いですよね。今回はストライクも入ったし」
草薙「ボールもあったがまあ調子は良いんじゃないか?」

石崎主将「ふん!」

ズバ―――ン!
鳴海「何っ!?」

霞「ここで最速153キロを記録し当然ながら鳴海君は三振に終わります!」
武藤「高校生で150キロ投げるピッチャーなんて石崎君以外いないだろうしやっぱり当たりませんね」
草薙「結局、ランナーはファーストのまま終わるのかね」

石崎主将「こいつで終わりだ!」

ズバ―――ン!
諸井「下位打線になんてボールを投げやがる!?」

霞「最後は自己最速更新の154キロを記録と今日の石崎君は絶好調です!」
武藤「奪三振が6個ですからね。それに当たったのは御堂君だけだし」
草薙「絶好調だな」

石崎主将「ま、こんな物だな!」
広瀬「フォアボール出した時はどうなるかと思ったけどな」
石崎主将「斎藤じゃあるまいし四死球ゼロなんて器用な真似は普通できねえよ!」
広瀬「確かに」

2回裏 転0−0明 石崎はフォアボールを出すが後続は三者三振とやはり絶好調らしい
御堂「まずは広瀬さんか」
広瀬「普通に振っても当たる気はしないがとにかく当てる事に集中するか」

ズバ―――ン!
石崎主将「ま、想像はしていたがあっさりと終わったな」
広瀬「追い込まれてボール球を振らされました!?」

霞「最後はアウトコースに大きく外したボールを空振り三振しました!」
武藤「1年の頃から選球眼の悪さは変わっていませんね。後ろには石崎君もいるし無理に決めようとしなくても良いと思うんだけどなー」
草薙「いや4番なら自分で決めようとするべきだ!」
武藤(自分に似たタイプだしひいきしているような?)
草薙「何か思っただろう!」
武藤「いえっ!?広瀬君の持ち味は長打だしこう言う試合だと油断はできませんね」
草薙「うむ!」

石崎主将「うらっ―――!」

ガキッ!
住吉「しかし石崎も凄いパワーだな」

霞「期待の石崎君でしたがライトフライに終わります!」
武藤「しかし三振奪えないバッターがピッチャーとは妙な感じですね」
草薙「そうでもないだろう。ここじゃ今でもエースで4番が多いんだ。投手で打撃センスある奴なんてアマじゃ山ほどいるだろう」
霞「山ほどかは分かりませんがピッチャーで指名されてバッター転向して大成する人もプロにはいますからおかしくはないんじゃないでしょうか」
武藤「そう言われるとそうかも知れませんね」
草薙「しかしこの回もあっさり終わりそうだな」

御堂(シュッ!)

ガキッ!
山本和「芯を外されるな」

霞「山本君はサードゴロに倒れて3アウトチェンジとやはり御堂君も好調です!」
武藤「草薙さんの言う通りあっさりと終わりましたね」
草薙「うむ。3回もこの調子で終わりそうだな」

御堂「これで6人か、やっぱりそうそうは抑えられないかな?」
西藤「ここまで完全に抑えてるのに?」
福元主将「謙虚過ぎるのもあれだよな」

3回表 転0−0明 御堂はここまでと言ってもまだ2回だがパーフェクト中!
石崎主将「ぶっ潰す!」

ズバ―――ン!
住吉「だあっ―――速すぎるっ!?」

霞「最後は148キロを記録と下位打線じゃ手が出ませんね」
武藤「遅くても140キロは出るしこれほどの速球派はプロでもそんなにいないだろうからな」
草薙「既に甲子園で伝説になっている投手だから当然と言えば当然だが三振ばっかりだな」

石崎主将「ふん!」

ガキッ!
福元主将「当てても前に飛ばねえじゃないか!?」

霞「福元君は何とか当てましたがキャッチャーフライに倒れ2アウトです!」
武藤「珍しく当てて来たな」
草薙「前に飛ばなきゃ意味がないけどな」

西藤(キャプテンも当てた!? そうだ! いくら速くても消えてる訳じゃない。振れば当たる!)

ガキッ!
石崎主将「ふっ、生意気な小僧だ!」
西藤「やっぱりジーンと来るな。芯に当てなきゃ球威に押されるしもっと思いっきり振らないとダメか」

霞「西藤君も当てましたがセカンドゴロに終わって3アウトチェンジ!」
武藤「奪三振が急に減りましたね」
草薙「この回は140後半くらいしか出ていないからな。それでも高校生じゃ打てないボール見たいだが」
武藤「まああの球速であの球威じゃな」

広瀬「この回は想像以上に力が出ていないな」
石崎主将「本気で投げても球速が出ない事もあるだろう。ま、次からはエンジンを更に上げて行くぜ!」
広瀬「ま、お前から打てるのは斎藤か風祭くらいだな。どっちもパワーヒッターって感じじゃないのが意外だが」
石崎主将「ホームランと三振だけが野球って訳じゃないだろう。まあ俺はホームランと三振の方が分かりやすくて好きだが」
広瀬「そんなお前がライバルとして決めたのがあいつらとはね」
石崎主将「不満か?」
広瀬「まさか、どちらかと言えば羨ましいな」
石崎主将「お前にはそう言う相手はいないのか?」
広瀬「まあいなくはないが(それがずっと味方にいるから面倒なんだよな)」
石崎主将「?」
広瀬「それよりもとっとと抑えて行くぞ!」
石崎主将「……ああ!」

3回でも試合は動かず両投手はノーヒットのまま抑えて行き評判通り試合は壮絶な投手戦となった。

7回裏 転0−0明 試合は投手戦となりノーヒットのまま7回に入っている!
霞「予想通りと言うか両校ノーヒットのまま7回裏に突入しました」
武藤「まさかヒットを1本も打たれずに来るとは思いませんでしたね」
草薙「記録が出るとしてもどちらか1人のみますます楽しくなって来たな」
霞「石崎君は7回もノーヒットのまま抑えるとここまで四死球3個、奪三振は15個と怪物振りを見せております。御堂君はどんなピッチングをするのでしょうか」
武藤「四死球出していない御堂君も凄いんですが奪三振じゃ敵いそうもありませんね」
草薙「そこまで差がある訳じゃないしそうでもないだろう。まあシーズンでも10個と20個じゃ差があると言われているが」
武藤「いえ。シーズンじゃ20個は延長じゃないとないですよ!」
草薙「そうだったか? 福井とかが達成していると思ったんだが?」
霞「福井さんは延長で24個の奪三振記録を持っていますね」
武藤「へえ。記録持っているのは福井さんだったんだ」
霞「14イニングですね。1試合だと19個で河島選手が既に記録作っています!」
草薙「河島ってルーキーのか?」
武藤「知らなかったんですか!? 開幕でノーヒットノーランして奪三振も19個と凄い盛り上がりだったじゃないですか!」
草薙「ノーヒットノーランは知っていたけどな。それで何処相手に」
霞「そんな事はどうでも良いんです。とにかく御堂君がマウンドから投げます!」
武藤「まあ開幕戦ですから後で調べるのも簡単でしょう」
草薙「そうだな」

御堂(シュッ!)

ズバ―――ン!
中川「全然スタミナが衰えてないしこいつ本当に同級生かよ!?」

霞「147キロのストレートを見逃し三振とこれで13奪三振となりました!」
武藤「確かに奪三振も差はないかな」
草薙「制球力は間違いなく石崎君より上だな。高校2年でここまでの完成度は佐伯君クラスだな」

御堂(後2人、スタミナの事考えるとこの辺で温存しときたいんだけど、この展開でそんな事するのは無理だな)

ガキッ!
川崎「無理だ!?」

霞「ストレートに当てましたが打ち上げて2アウトですね!」
武藤「ボール球を振らせると投球術も上手いですよね。佐伯君と言うよりプロで活躍している天野君見たいですね」
草薙「ふむ。制球力もあるし似ているな」

八代「追い込まれる前に打つ!」

カキ―――ン!
西藤「届け―――!」

パシッ!
御堂「心臓が止まるかと思った!?」

霞「ここで西藤君が素晴らしいプレーを見せて3アウトチェンジです!」
武藤「まず二遊間を抜ける当たりでしたしこれを捕ったのは大きいですよね!」
草薙「あのショート、野球経験が少ないと言う話だが守備に関しては言う事なしだな」
霞「確かに足が速く守備が上手いと評価は高いですね」
武藤「1年の頃に比べれば格段に上手くなっているし上位は難しくても下位で指名される可能性はあるかも?」
草薙「判断力が良いし守備はセンスを感じさせるな」

八代「抜けると思ったんだがさすがに守備力も高いか」
石崎主将「気にするな。塁に出ても次は扇風機だ。打てる訳がない!」
八代「泣いているぞ」
広瀬「否定できないのが悲しいぜ!」
石崎主将「だったら否定できるようになるんだな」
広瀬「できたらとっくにやっているっての!」
石崎主将「そりゃそうだ」
八代「でも1年の頃に比べたらミートも上手くなっているよな」
広瀬「そう努力はしている!」
石崎主将「って言ってもレベル1からレベル3くらいまでしか上がっていない感じだよな。ちなみに最高レベルは99だ!」
広瀬「まだスライム辺りと遊んでいるところか」
八代「まあそれも進歩じゃないか」
広瀬「ダメだ。フォローは有り難いが喜べない」
八代「やっぱそうだよな」
石崎主将「ま、お前にはお前の持ち味があるしこう言う展開だと期待しているぜ!」
広瀬「おう!」
八代(だったら落ち込ませるなよな)

御堂「さすがは西藤君、良くぞ捕ってくれた!」
西藤「完全試合を終わらせる訳にはいかないと思ったから無我夢中で良く覚えてないんだけどね」
御堂「相変わらずなんて良い子なんだ!」
西藤「同級生なんだけどね」
釘宮「やれやれ、ま、残り2回には1点くらい入るだろう」
御堂「もちろん。期待しているよ!」
西藤(まだみんなノーヒットなんだけどなー)

8回表 転0−0明 御堂はまだパーフェクトを継続中!
石崎主将「下位とは言え記録を消す訳にはいかないと本気で行かせてもらうぜ!」

ガキッ!
諸井「ここまで球数も多いのに全然衰えないじゃないか!?」

霞「さすがにバッティングの強いチームだけあって150キロのボールに当てて来ましたね」
武藤「3打席目ですしね。けど球威に押されてるし外野まで飛ばないしヒットを打つのは難しそうだな」
草薙「ノーヒットに抑えられてバッティングが強いもないと思うが」
霞「それもそうですね」

石崎主将「ふん!」

スト―――ン!
住吉「フォーク!?」

霞「また140キロで落ちた! またしても住吉君はフォークを空振り三振です!」
武藤「130キロのフォークで凄かった時代だったのに140キロのフォークとは次世代の怪物は凄いですね!?」
草薙「あの落差もだな―――次の世代を引っ張って行く投手になるかもな!」

石崎主将(こいつで終わりだ!)

スバ―――ン!
福元主将「終わったつうかこんなボール打てるか!?」

霞「最後は151キロのストレートを空振り三振!」
武藤「これで17奪三振か、斎藤君がいなければ奪三振もTOPだったろうに」
草薙「しかしスタミナもとんでもないせいか古き良き投手を思い出すな」

釘宮「別に期待はしていなかったが3人で終わったな」
福元主将「頼りにならない先輩ですみません」
西藤「ここまで無失点で来ているのはキャプテンのリードのおかげですし」
福元主将「だよな!」
湯口「調子に乗るな」
福元主将「はい」
西藤(相変わらず威厳がないな)
釘宮「とにかく1点勝負だ。失点は許されないぞ!」
御堂「分かってる!」

石崎主将「と言う訳だ。決めて来い!」
広瀬「さっき散々言った奴のセリフじゃないな!」
石崎主将「次は斎藤か風祭と戦う予定だからな。延長行くと響きそうで怖いんだよ」
広瀬「おいおい! 相手の方が良いピッチングをしてるんだぜ。次なんて気にしたら」
石崎主将「認めているから決めてくれって言ってるんだよ。さすがに今日の俺でもあれからホームランは難しいからな。こうなると意外性でマグレ要素の強い誰かさんに期待するしかない!」
広瀬「気を使って名前を伏せてくれてるんだろうが全然意味がないからな!」
石崎主将「とにかく1点だ!」
広瀬「………………」
八代(こんなので本当に大丈夫か?)

8回裏 転0−0明 石崎は8回もノーヒットといよいよ記録に王手と言いたいところだが相変わらず援護はなく展開はいまだに読めない?
御堂(この強打者は要注意だ。今日に限っては…………いやどんな時でも万が一は許されない!)
福元主将(今までと同じようにボール球を振らせて最後はあれで決めよう!)
広瀬(決めてやりたいところだが全然タイミングが合わないからな。適当に振ってマグレを期待したが全然ダメだったし)

広瀬は当然の様にボール球を振らされて2ストライクに追い込まれる。
御堂(これで終わらせる!)
広瀬(多分、斧だが消えるだがそんな用語の決め球だったな。消えるのは手元で変化すると言う事かな。斧と言うのは球威だろうか? 待てよ。手元で変化するなら)

ガキッ!
御堂「落ちる前に叩いた!?」

霞「前向きに構えてなんとか当てたが内野フライって意外と伸びてますね」
武藤「落ちる前になんとか当てましたけど、まああんな当てるだけの当たりで外野まで飛んだだけ凄いですけどね」
草薙「だがまだ伸びてるぞ」
霞&武藤「え?」

安西「ちょっと待て―――!?」
広瀬「うっそ―――!?」

霞「落ちた! センターの頭を越えて残念ながらスタンドにまでは到達しませんでしたが2ベースヒットで完全試合を粉砕しました!」
武藤「そう言えば記録がかかっている試合ってポテンヒットとかラッキーな展開で終わる事が多いんですよね」
草薙「しかしあんな当たりが長打になるとは(あいつ、昔の俺に似ているのか?)」

御堂(シュッ!)
福元主将「バカっ!?」
石崎主将「こう言うのを待っていたぜ!」

カキ―――ン!!!
御堂「………………」

霞「文句なし! レフトスタンドに叩き込んだ―――! ついに均衡が崩れました!」
武藤「今のは不用意ですね。簡単にストライクに入れすぎですよ」
草薙「ショックを受けるのも分からんではないがエースと言うからには立ち直って欲しい物だな」

石崎主将「この試合もらったぜ!」
御堂「ふう、まだ終わった訳じゃない!」

ガキッ!
山本和「ここでコントロールが戻ったか!?」

霞「打たれた物の続く山本君は抑えて1アウトです!」
武藤「タフだな!?」
草薙「できればもう少し早く戻るべきだったな」
武藤(それができればみんな苦労しないよな)

御堂(シュッ!)

スト―――ン!
川西「これだけはどうしても打てない!?」

霞「最後はバニシングトマホークを落として空振り三振!」
武藤「あれストレートと見分けがつかないから振ってしまうんですよね」
草薙「一応広瀬が打ったが打ったと言える内容じゃなかったしな」
武藤「あれはあれで凄かったですけどね」

御堂(シュッ!)

ズバ―――ン!
山本研「入ってるのか!?」

霞「続く山本君も144キロのストレートを見逃し三振と後続は3人で抑えました!」
武藤「ここまで四死球ゼロで打たれたヒットはたったの2本とこの回で2つも出たのが不運でしたね」
草薙「不運と言うより未熟さだな。ここまで決め球を打たれた事はなかったんで調子を崩したんだろう。あんな当たりでヒットになった事も堪えたんだろうが」
武藤(まあ無理もないな)

広瀬「これで試合はもらったな」
石崎主将「決めたのは俺なんだが」
広瀬「いや切欠作ったのは俺だからな」
石崎主将「確かに前までの御堂じゃ高めの棒球なんか投げなかったからな」
広瀬「ま、後1回で2点差なら決まったも当然だな!」
石崎主将「いや俺達が1回で2点取ったんだ。あいつらにもできないとは言えないさ」
広瀬「なんか前の回、前の回で違和感あるセリフばっかり言ってるような?」
石崎主将「そんな事はない。次で戦うかも知れない斎藤と風祭の為にもここで負ける訳には行かない。それだけだ!」
広瀬「単純明快で分かりやすいのは好きだが」
石崎主将「とにかく9回でノーヒットノーランを達成して次の試合まで力を温存だ!」
広瀬(それに違和感があるんだよな。まあヒット1本も打たれてないって事はエネルギー消費が少ないと言えるかも知れない。けど力を出し切って温存なんて言えない状態なんじゃと思うし?)

釘宮「2点差か」
御堂「ごめん」
釘宮「とにかく1人は塁に出ろ。そしたら俺が同点にしてやる!」
西藤「自信薄だけど何とか頑張って見るよ!」
御堂「そんなに緊張しなくても」
湯口「相手の方もノーヒットノーラン間近だからな。守備でミスするかも知れないし何とか当てて行けば何とかなるかもな」
釘宮「そうですね。頼むぞ!」
西藤「うん!」

9回表 転2−0明 ついに点が入った転生高校、そして勝利もだが石崎は記録を達成できるのか?
霞「試合はいよいよ9回です。勝敗も気になりますがみなさんの注目はノーヒットノーランの記録でしょうね。では石崎君のピッチングを見せてもらいましょう!」
武藤「考えて見れば今の3年がここでノーヒットノーランなんてした事もなかったんだよな」
霞「しそうな試合もありましたけど僅差で延長戦に入って記録が消えたなんて展開もありましたしね」
草薙「ふむ。それじゃ石崎君が記録作ったら一気に評価が上がるのか」
武藤「まあ記録作れば普通上がるでしょうね」

石崎主将「まずは生意気な小僧からか!」
西藤「相変わらずの迫力だなけどこっちも負ける訳には行かないんだ!」
石崎主将「食らえ!」

ガキッ!
西藤「間に合え!」

霞「必死に走りますが残念ながら間に合わず1アウトです!」
武藤「まあ完全に球威に押されたショートゴロですからね。よっぽど守備が悪くなければアウトでしょう!」
草薙「しかしああ言う熱血は良い物だな。俺の世代を思い出す!」
武藤「俺の世代もあんな感じでしたね」
霞「要するに昔から変わってないんですね!」
草薙「うむ。そう言う事だな!」

西藤「ごめんなさい!」
湯口「そんなにマジ泣きすんなっての!」
西藤「気力だけじゃくつがえせない物もあるんですね」
湯口「そりゃまあな」
御堂「でも気持ちで最初から負けてちゃ勝てる物も勝てなくなりますよ!」
西藤&湯口「っ!?」
御堂「そんなに驚かなくても?」
湯口「いきなり背後から声をかけられたら驚くっての!まあ御堂の言う通り最初から負けるつもりで言ってたら勝てる物も勝てなくなるわな!」
西藤「後を頼みます!」
湯口「おう!」御堂「うん!」
石崎主将「良い顔してるなこれでますます燃えて来たぜ!」
広瀬(ふっ、その気力は買うが石崎相手には逆効果だぞ!)

スト―――ン!
湯口「入ってんのかよ!?」

霞「ボールかと思いましたがコールはストライクで見逃し三振!」
武藤「ちょっと厳しいですけど、確かに入ってるとも言えなくはないですね」
草薙「これで記録に王手だな」
霞「そうですね。相手は打たれた御堂君となんか印象的ですがこれで決まるのか?」

釘宮「打たれた仮はバットで取り戻せ!」
御堂「うん!」
釘宮(頼む。俺まで回してくれ!)
広瀬(ラストバッターはここまで苦しまされた御堂か)
石崎主将(相手に取って不足なし決着をつけてやる!)

ズバ―――ン!
御堂「ここでこんなボールを投げれるのか、上には上がいるか分かっていた事だけど悔しいな!」

霞「最後は154キロを記録で三球三振と石崎君が締めて記録達成です!」
武藤「そう言えばノーヒットノーランだったんだ!? 石崎君の鬼気迫ったピッチングですっかり忘れてた!?」
草薙「あれは正に鬼だな。倒せるのは獅子か竜か楽しみだな!」
霞「とにかく試合終了! 石崎君は四死球3個19奪三振でノーヒットノーランを達成しバッターとしても3打数1安打1本塁打と大活躍しました!」
武藤「こうやって見ると石崎君だけが活躍した感じですね」
草薙「勝った方が注目されるのが勝負の常ってとこだろう。まあ負けて名を上げる選手もいるがな」
霞「とにかくこれでベスト4が選出されました!」
武藤「結局勝ち上がったのは本命ばかりか」
草薙「共通して好投手が多いのも特徴だな」
霞「勝ち上がったピッチャーについては翌日ってところでサヨナラです!」
武藤「軽いなー」
草薙「残念ながら俺はここでお別れだな。また呼んでくれ!」
霞「もちろんです!」

御堂「また負けた」
釘宮「春と同じく援護ができなかったな」
福元主将「結局石崎に負けただけか」
赤城監督「確かに打線は良いところなしだな。ノーヒットノーラン食らうなんざ恥さらし以外の何物でもない!」
全員「すみません!」
赤城監督「しかし良い試合だった!」
全員「…………監督!?」
赤城監督「監督としては残念だと思うが1人の野球ファンとしたらこんな投げ合いはまた見てみたい物だ。もちろん今度は勝利してな!」
全員「はい!」
西藤「結局何もできなかったな」
釘宮「まあな」
福元主将「お前らには来年がある。来年こそ優勝してくれ!」
御堂「来年か、もう石崎さん達と投げ合う事はできないのか」
釘宮「まあリーグが違ったら対戦する事も難しいかも知れないがプロに行けば投げ合えるんじゃないか」
御堂「プロか」
西藤「雲の上過ぎて僕にはピーンと来ないかな?」
釘宮「入る自信がない訳じゃないけど俺もプロと言われてもどれだけの物かは分からないがな」
御堂「釘宮はメジャー行くんじゃないの?」
釘宮「行ける物なら行きたいがな。まずは日本のプロで実力を磨いてからだな!」
西藤「雲の上の話過ぎてついて行けないよ」
御堂「大丈夫! それだけセンスあるなら西藤君もきっと指名されるよ!」
釘宮「確かに粗い部分があるがセンスはあるし下位なら高卒でも指名されるかもな」
西藤「褒めてくれるのは嬉しいけど、やっぱりもう少し実力付けてから入団が良いかな」
釘宮「そうだな。まだ1年あるし今から焦る事もないな」
御堂「僕としては3人揃って同じチームだったら良いなと思うけどね」
釘宮「1/12の確率だし可能性は薄いがな」
西藤「そうだね」

石崎主将「この俺の大活躍によって今日も勝ったな!」
広瀬「言うと思ったが本当に言ったな」
八代「実際そうなんだから仕方がないな」
石崎主将「わっははは! 明日は完全試合と行くか!」
広瀬「調子乗りまくりだな」
浅野監督「今日くらいは良いだろう。それにこれで明日は戦いやすくなるしな」
広瀬「?」
石崎主将「次は斎藤だ。叩きのめしてやる!」

観客席
真田「あれ僕達を見てるんだよね?」
吉田「いや斎藤だろう。しかしこの距離から良く見えるもんだな」
斎藤主将「次の相手はノーヒットノーランの怪物か」
吉田「怪物バッターの次は怪物ピッチャーか、個人的には石崎の方が嫌だな」
真田「僕達バッターだからね」
斎藤主将「あいつが無失点に抑えるならこっちも無失点に抑えれば良い!」
吉田「春の再来か」
真田「となると決勝じゃ投げられないんじゃ?」
斎藤主将「人のモチベーションなくすような発言はやめろ!」
真田「ははっ、まあ全国制覇する為には負ける訳に行かないし何とか援護してくれるよ。吉田が!」
吉田「人頼みかよ!」
斎藤主将「お前らは本当に1年の頃から変わらないよな」
吉田「それは真田だけだ!」
真田「近況は変わってるけどね」
吉田「それはそうだろう」
斎藤主将「やれやれ」

こうして石崎は記録も作って勝ち上がりますます評価を上げて行く。ついに斎藤と石崎が勝ち上がる。果たして最後に勝つのはどちらか?