第51章 プロの舞台へ行こう

−1996年 9月−
夏の甲子園も終わり今日は斎藤達の引退式となった。
斎藤「全国制覇と言う偉業を達成して引退できたので俺達に取っては最高の終わり方となった。お前達も俺達に続いて最高の終わり方をして欲しい!」
吉田「俺達3人が抜けたところで一気に総合力が落ちるとは思えないし春も甲子園は間違いないだろうな」
福西「春も赤竜高校の名を全国に広めますよ!」
真田「それなら来年も良い新人がドンドン来るだろうね!」
相川「まあ夏の優勝校だけでも良い選手は十分入って来るでしょうね」
真田「ついにうちも名門らしくなった訳だ!」
相川「強さだけで言えば僕達が入る前から名門レベルですけどね」
斎藤「それで次のキャプテンだが」
全員(ドキドキ)
斎藤「お前達で決めてくれ!」
全員「………………」
吉田「おいっ! 全員引っくり返ったぞ!?」
斎藤「………………」
木下「そうですよ! 誰がキャプテンになるか賭けてたのにこれじゃ賭けが成立しないじゃないですか!」
全員「バカ!?」
吉田「賭けてたのかよ!?」
斎藤「それは聞かなかった事にしてやるよ。まあ賭けてたんなら一番倍率の低い奴で良いんじゃないか?」
相川「えっ?」
篠原「お前が一番の候補って思ってたしお前で良いんじゃないか?」
木下「まあ1年の夏からレギュラーと実力は申し分ないしな」
福西「練習熱心で人柄も良いしね…………ま、その分威厳はないけど問題ないかな」
相川「あのーこれって強制ですか?」
斎藤「なんだ嫌なのか?」
相川「いえ。そう言う訳でもないんですが」
吉田「ハッキリしないな」
真田「こう言う時は開き直って言えば良いんだよ!」
相川「分かりました…………僕は次のキャプテンに柚さんを推薦します!」
柚「…………?」
福西「おおう! これは愛の告白では!?」
全員「ええっ!?」
相川「違う!?」
真田&福西「ええ〜違うの?」
相川「なんでそんなに残念そうなんですか?」
真田「いやー部下が結婚する上司の気分だったし〜♪」
福西「それじゃ俺は同僚かな」
柚「………………」
斎藤「まあこいつらは置いといてなんで柚なんだ?」
相川「実力に申し分がなく斎藤さんと同じく精神力が強いと僕はこう言う人こそが赤竜高校を引っ張って行くべきだと思います!」
吉田「まあプロ相手にも投げてるし精神力は斎藤以上かも知れんが」
柚「女子がキャプテンなんて前代未聞?」
吉田「いや、それを言うなら高校野球で投げてるだけでも前代未聞なんだが」
真田「吉田は柚ちゃんにこれ以上プレッシャーをかけて潰れないか心配なんだよ!」
吉田「ハッキリ言うなよ!」
柚「―――ふう、反対の人がいないのなら私がやっても良い!」
全員「………………」
斎藤「どうやらいないようだな。それじゃ後は頑張ってくれ!」
全員「なんか投げ遣りですね」
斎藤「そんなつもりはないがただもう引退する俺達が口を出す必要はないとは思っている。これからはお前達が自分で考えて決めて行くんだからな!」
柚「これからは私達が決めて行くか―――ありがとうございました!」
全員「あ、ありがとうございました!」
斎藤「ああ。頑張れよ!」
真田「ついに終わっちゃったんだね」
吉田「まあな。お前って意外と言ったら悪いかも知れんが涙もろいところがあるよな」
斎藤「しかし柚がキャプテンとはな」
真田「まさかと思うけど斎藤は反対なの?」
斎藤「いや色んな意味で意外だっただけだ」
吉田「色んな意味で?」
斎藤「相川が柚を推薦したのも意外だし柚があっさり引き受けたのも意外だったな」
吉田「ふーん、で師匠としてはどう思うんだ?」
真田「そうだね。相川君は口ではあんな事言ってたけど柚ちゃんの将来を考えた上での優しさだと思うよ」
吉田「優しさね。確かに話題性はありそうだけど、活躍できなかったら一気に評価が変わりそうだな」
真田「相川君は柚ちゃんなら活躍できると信じてるんだよ!」
吉田「なるほど、それだけ信頼してるなら俺達が抜けても問題なさそうだな」
真田「あのきつい練習に付いて来たんだしその点は心配する必要はないと思うけどね」
吉田「あいつら本当に良く付いて来れたよな」
真田「まったくだよ」

斎藤達が引退してからも野球部は練習を続けて行き数日経った。そこで意外と言えば意外だがそうでもないような訪問客が斎藤の元に訪ねて来る。

喫茶店MOON
斎藤「なんでここにいるんですか?」
垣内監督「想像は付くと思うがスカウトだよ」
斎藤「えっと、スカウトって監督自ら来るもんなんですか?」
垣内監督「皆無とは言わないがどちらかと言えば少ない方だな」
真田「それだけ期待されているって事ですね!」
垣内監督「そう言う事だな」
斎藤「ってなんで―――お前らもいるんだよ!?」
吉田「遊びに来てお前を探してたらこの場面に出くわした!?」
斎藤「また絶妙のタイミングで…………まあ、それはいいや」
吉田「良いのかよ?っと俺達がいて困るようなら席を外すと言うか中に入ってもらうのが先だな」
斎藤「そうだな。店の前だとお客さんの邪魔になるんでうちに入って下さい!」
垣内監督「いや、今回は軽い挨拶だけですませるつもりだったしちゃんとした話は後日で連絡先はこちらに頼むよ」
斎藤「分かりました」
月砂「ハジメの就職先の話なら後にせず今にした方が良いんじゃない!」
斎藤「いや垣内さんも忙しいだろうしまだ時間はあるしって姉貴っ―――!?」
吉田「驚き過ぎだろう」
真田「それで監督さんはお暇なんですか?」
垣内監督「(こう言う交友関係なのか結構苦労してるのが精神力の強さの秘密なのかもな)時間はありますと言うか話をさせてくれるんなら助かりますが本当に良いんですか?」
月砂「ええ。弟が夢を叶えるなら少しくらいの時間は取れますよ!」
斎藤(…………姉貴)
垣内監督「そうですか、できればご両親ともお話させて欲しいんですか」
斎藤「両親ね」
月砂「残念ながら多忙な身なのでいつ帰って来るかは分かりませんが連絡先くらいなら」
垣内監督「助かります」
月砂「それでは中へどうぞ。貴方達もね!」
吉田「良いんですか?」
月砂「その方がハジメも安心できるからね!」
垣内監督「良い姉さんだな」
斎藤「ええ。まあ」

とにかく家へ入り早速具体的な話に入った。
垣内監督「それでは斎藤君、ジャイアンツ(    うち   )へ来てくれ!」
真田「直球で来たね!?」吉田「さすがは日本最速男だな!?」
斎藤「はい。お世話になります!」
垣内監督「ありがとうと言いたいところだが競合になる可能性もあるからな。だが指名できたらぜひうちへ来てくれ!」
斎藤「はい!」
真田「これって1位で指名するって宣言だよね?」吉田「だろうな。さすがは甲子園優勝投手ってところか!」
垣内監督「そちらの2人も残っていたらの話になるがまず上位で指名すると思うのでよろしく頼むよ!」
真田&吉田「ええっ―――!?」
斎藤「何を驚いてるんだよ。俺達は全国制覇したメンバーなんだ。注目されるのは当然だろう!」
真田「いや、でも上位で指名するって」
斎藤「1位でベイスターズに指名されるんじゃなかったのか?」
真田「それはノリと言うか何と言うか…………」
吉田「つうか候補って俺もですか?」
垣内監督「真田君は足と守備と評価が高く吉田君もバッティングはプロクラスと評価されているからな。将来性を考えたら上位で指名するべきだとスカウトも言ってたよ!」
斎藤「もしかしたら3人同じチームって事も考えられるんですね」
垣内監督「可能性としてはゼロじゃないだろうが、うちの1位と2位は既に確定しているから3位以下の指名になるし運良く獲れてもどっちか1人かも知れないね」
真田「それで僕と吉田だったらどっちを獲るんですか?」
吉田「なんか怖い質問だな」
垣内監督「ハッキリ言うのもどうかと思うがチーム事情から言えば吉田君だね」
真田「吉田に負けた―――!?」
吉田「気にするな。外野陣の揃っているジャイアンツじゃお前よりも俺を指名するのも仕方ないさ!」
真田「その余裕発言も腹が立つが仕方ないか」
斎藤「正捕手が不在だしジャイアンツも大変ですね」
垣内監督「まったくだよ……と言っても投手陣は順調だしリードが悪い訳でもないんだがね」
吉田「マヌエルさんもあんまり活躍してないからな」
垣内監督「それでも首位と活躍できてるから文句は言えないんだけどね」
真田「今年は打撃陣が凄いからね」
吉田「橘さんや神代さんも凄いけどやっぱり嘉神さんだよな」
垣内監督「あいつは別格だからな。それでも新人王は誰か分からないと最近の若者は末恐ろしいよな」
真田「豪華な新人対決だよね」吉田「だな」
垣内監督「まあ来年も似たような怪物が多いからね。風祭君に関しては嘉神以上の打率を期待されていると言う話だから本当に末恐ろしいよ」
斎藤「しかしプロ入りできても肝心の正捕手が不在ってのは怖い感じがしますね」
垣内監督「確かに正捕手は不在だが捕手はいるし高校生のボールくらいなら問題なく捕れるし不安になる事はないさ」
斎藤「それもそうですね」
垣内監督「こう言うのはなんだがうちは金持ちだし契約金や年俸も不満にさせる事はまずないと思うから指名できたらよろしく頼むよ!」
斎藤「はい!」真田「は〜い!」吉田「うっす!」

赤竜神社
真田「ってな事があったんだよ」
村雨「ほほう〜それなら俺もベイスターズのスカウトが来てぜひ1位で指名するのでよろしくって言われたぞ!」
真田「なんですと―――!?」
吉田「予想できたけど凄いリアクションだな」
佐伯「まったくだ」
斎藤「ところで佐伯は来なかったのか?」
佐伯「一応ホークスから1位で指名するって聞いたな。ちなみに滝沢もスワローズから話が来てるらしい。競合にならなければ俺達はそこへ入るだろうな」
斎藤「他にも1位で指名される選手はいるし誰がどの球団になるかはちょっと予想がつかないな」
佐伯「まあな」
村雨「まあ今日くらいは野球を抜きにして遊ぼうではないか!」
斎藤「って言ってもずっと野球漬けだったし俺には野球以外の趣味なんてないからな」
村雨「そこで俺達が斎藤の趣味を発掘してやろうの集まりで今日来た訳だ!」真田「来た訳だ!」
佐伯「いや、俺達はまずドラフトにかかるしプロへの備えって聞いたんだが?」
村雨「そんな事は忘れたぜ!」真田「忘れたぜ!」
吉田「いまさらだけどなんでここなんだ?」
村雨「企み事と言ったら神社ですよ。ダンナ?」真田「ダンナ!」
吉田「誰がダンナだよ。つうか意味分かんねえしつうかさっきから無意味にエコーかけてんじゃねえ!」
真田「うんうん。これだよ吉田はやっぱりこうじゃないとね!」
村雨「うむうむ。と言うかこれからどうしようか?」
吉田「って本当に何も考えてないのか?」
村雨&真田「うむ!!」
吉田「今度は同時に頷きやがった」
佐伯「しかし野球以外でか」
斎藤「俺の趣味ね」
真田「野球以外となると難しいもんだね」
吉田「だったらもう野球で良いんじゃないか?」
村雨「うーむ。しかしそうなるといつもと変わんないし」
斎藤「俺は別にいつも通りで良いんだけど」
佐伯「同じく」
村雨「せっかく神社に来たんだしなんかイベントが起きれば良いのにね!」
斎藤「夏祭りならもう終わっただろう」
真田「そう言う意味じゃないんだけどね」
斎藤「?」
村雨「まあそれは置きまして普通にゲーセン行って遊びましょうか」
吉田「時間が掛かったわりにはすげえ普通だな」
村雨「それは言わない約束」
吉田「それ使うネタ間違ってないか?」
村雨「最後まで聞くのがツッコミ役でしょうが!」
吉田「いや知らんし」
佐伯「時間がもったいないしとっとと行こうぜ!」
斎藤「そうだな」

近所のゲームセンター
村雨「行け―――! そこだ―――!」
真田「あまい!」

カキ―――ン!
村雨「高岡さんでは神代さんに届かなかったか」
真田「さすがは日本の4番だよね」
吉田「ちなみに昨年のホームランキングのブライアンさんと奪三振王の竜崎さんと最下位ながらタイガースが結構強いと評判だ」
斎藤「しかし実況付きとゲームも進化してるな」
佐伯「このシリーズは今現在でも人気だからな。数年も経てばもっともっと人気が出るんじゃないかな」
真田「今年からは待望のサクセスもできたからね」
斎藤「成功?」
吉田「今作じゃプロ野球の2軍選手になって試合に出て1軍に上がれば終わるって話だ」
斎藤「サクセスストーリーって事ね」
村雨「ま、良くは知んないけどそんなとこじゃないかな」
真田「今作じゃ野手しか作れないと斎藤向きじゃないかも知れないから来年を期待だね」
佐伯「来年になれば俺達のデータも追加されてるかも知れないと言うのは余計な事かな」
真田「いやいや、自分の能力を一気に書き換えてアレンジで登録するから良いんじゃないか」
斎藤「それってむなしくないか?」
真田「何を言いますかな…………むなしくなんかないやい!」
吉田「その前に2軍選手じゃ残念ながらデータを登録してくれそうもないし再来年を期待しといた方が良いかもな」
真田「そうだね」
村雨「と言う訳で現実だけでなくゲームの方も野球は進化しています! …………待てよ。人が進化しているってのが正解かな?」
佐伯「どっちでも構わんが」
斎藤「どうした?」
佐伯「いや、後輩達が練習を頑張ってるのに遊んでるってのがどうもな」
真田「疲れているお父さんがたまに温泉行っても罰は当たらないよ!」
吉田「言いたい事は分かるがまあ金銭面の問題もあるしゆっくりとはできないか」
真田「良いの良いの今日くらいはたっぷり遊んじゃおう!」
吉田「何を言っても無駄か、しかし本当に今日だけなら良いんだが」
斎藤「まあずっと野球に時間を取られてた訳だしたまには良いだろう」
吉田「まあたまにならな」
真田「大丈夫! デートがメインの遊びとは別に練習してるし僕も来年からプロで頑張る訳だからね!」
吉田「それなら良いんだが」
村雨「ちなみに上位は僕らがメインで指名される予定だけど、大学とか社会人ではどんな人が指名されるかな?」
佐伯「しかし器用に取って行くな」
斎藤「こいつは何でも器用にこなすからな。よそ見しながらでもクレーンゲームは余裕だろう」
村雨「さすがに見ずにするのは無理だと思うよ」
佐伯「だよな」
真田「できるかどうかは試せば分かる!」
村雨「失敗して金をドブに捨てるのもあれだし勘弁して下さい」
吉田「遊んでばっかで金欠状態って感じだな」
村雨「その通りだよ! こんちくしょう―――!?」
真田「走って行っちゃったちょっとやり過ぎたかな?」
吉田「うーん」佐伯「………………」
斎藤「心配するだけ無駄だ!」
真田「そうなの?」
村雨「ジュース飲んでエネルギー補給したし再び対戦だ―――!」
斎藤「なっ!」
吉田「ああ」佐伯「やれやれ」
真田「対戦だ―――!」
斎藤(やれやれ金欠状態でもジュースは別らしいな)

と斎藤達は野球だけでなくのんびりと高校生活を送っていた。

ドラスポ
霞「熱い高校野球は終わりましたがプロはまだ熱くジャイアンツが奇跡の優勝を見せそうです!」
武藤「7月に入って連勝を続けて行き9月に入って首位と本当に凄い逆転劇でしたからね!?」
霞「残念ながらカープは9月に入って連敗を続けて現在は2位ですね。しかし3位のドラゴンズとほとんど差はないしどうなるか?」
武藤「ちなみに打撃の三部門ではルーキーがトップととんでもないですよね!?」
霞「はい! ちなみにパリーグは9月に入ってブルーウェーブが一気に勝ち上がり既に優勝しております!」
武藤「打率は圧倒的に久住がトップですから3年連続の首位打者も確定でしょうね!」
霞「そして社会人選手や大学選手も熱い野球を期待されています!」
武藤「私達の担当は高校野球ですからね。名前でも有名なのは創運大学の麻生君や北条製紙の永久君ですね」
霞「知らないですね」
武藤「麻生君は150キロのボールを投げる剛腕タイプって言われてます。それで永久君は高速で変化する変化球を操る変化球投手でどちらも即戦力と言われてますね!」
霞「良くは知りませんが凄そうですね」
武藤「2人共逆指名されてもおかしくはないんですけどね」
霞「と言う訳で今年も高卒選手が注目されているのでした!」
武藤「もう終わりですか?」
霞「ええ」

喫茶店MOON
月砂「それで一番注目されているのが私の弟って訳か」
結依「うむ!」
斎藤「いやいや、俺より評価の高い選手もいるから」
柚「ハジメが高校ナンバーワンピッチャー」
斎藤「そう言ってくれるのは嬉しいけど俺は日本一の高校のピッチャーだっただけで俺だけで頂点に立った訳じゃないんだよ!」
柚「それは知っているけど」
結依「決勝でパーフェクトした男の言葉として謙遜は嫌味になるのじゃ!」
斎藤「そんなつもりはないんだけど」
柚「どっちにしろハジメの人気は凄まじい!」
月砂「お客さんが増えるのは嬉しい事なんだけど、アルバイトの人員だけじゃさばききれないとちょっと困っているけどね」
斎藤「それって贅沢な悩みって奴じゃ」
月砂「まあね」
柚「残念ながら私はあまり手伝えないと居候の身で面目ない」
月砂「大丈夫! ハジメが柚の分まで頑張ってくれるから!」
斎藤「まあ良いんだけどね」

引退した斎藤達は普通に高校生活を送っていた。しかし垣内監督が直々に来るなど斎藤達の舞台は既にプロへと移動して行くようだった。