第54章 終わらない日々

−1996年 12月−
斎藤達も無事に指名されいよいよプロ生活が始まったと言いたいが現在も斎藤は自宅にいる。
斎藤「と言う訳で今月まで実家で来月から入寮らしい」
祐一「いよいよハジメ君もプロか、寂しくなるね」
斎藤「年に1、2回くらいしか帰って来ない人に言われてもな」
祐一「冷たいセリフだな。まあこれで夢を叶えたんだ。満足して引退して行ってくれ!」
斎藤「まだプロで投げてもいないのにいきなり引退させるな―――!」
朱里「そうそう。まだ1球も投げてないもんね」
斎藤「その1球でも投げたら引退みたいな言い方も勘弁して欲しいんですけど」
祐一「まあたまにで良いから月砂に顔を見せに帰ってあげなよ!」
斎藤「人の事は言えないと思うけど、まあ暇があれば帰って来るよ」
月砂「まあ柚も結依さんも寂しいから帰って来ても良いんじゃない」
結依「素直ではないの」
柚(コクッ!)
月砂「とにかく、ハジメもプロと社会人になるんだから社会人の責任を持って頑張りなさいよ!」
斎藤「うん(と言っても社会人って自覚は全然できないな)」
祐一「いやいやハジメ君はまだ未成年だし1年目はのんびり適当に頑張りなさい」
斎藤「適当じゃダメだと思うけどまあ今月はゆっくり休んで来月から頑張って行くよ!」
柚主将「休んでいると言うわりに走り込みとかは良くしている」
斎藤「まあ週間だしやらなきゃなんか落ち着かないんだよな」
柚主将「ハジメはプロでも変わらないと思う」
斎藤「人の事は言えないと思うがまあプロでもいつも通りやって行くのが一番なのかも知れないな!」
柚主将「私もそう思う。だから今年は合宿なしで春を目指す!」
斎藤「そう言えば春の甲子園で優勝した事はいまだにないんだよな」
柚主将「野球部ができてから何年か忘れたけど、いまだに春を制覇した事はない。今年は惜しかったけど」
斎藤「すみません」
柚主将主将「別に責めてない。むしろ誉めてるつもり」
斎藤「まあ春で決勝まで行ったのは赤竜高校でも初めてだったしな。誉められてるって言われたら褒められてるんだろうけど……ま、俺達にできなかった事はお前達に託すな!」

話しているうちに恒例のドラスポの時間も始まった。

ドラスポ
霞「お待たせしました。今年ももう終わりで良いニュースは少ないですがすがドラスポの時間です!」
武藤「いきなりテンションが下がる事言ってるなー」
霞「ご存知でしょうがわたくしこと白銀霞と武藤小太郎さんでお送りします。武藤さんはコーチ業に興味あるようですが残念ながらお誘いはありませんね」
武藤「誘いがあっても圧力で誘いを断られるってのは妄想なんですかね?」
霞「まあ全部が妄想って訳じゃないかも知れませんが武藤さんの代わりができれば解説の依頼もする事はなくなるかも知れませんね」
武藤「そう言われるとなんだか悲しくなりますね」
霞「それは良い事ですっとそろそろプロ野球ニュースの時間です。まずは移籍先の選手の情報などからですが今年のフリーエージェント選手は竜崎さんかと思いましたが竜崎選手は残留ですね」
武藤「後、大上選手や備前選手もFA権は使いませんでしたね」
霞「柳生選手は同期でも活躍が遅かったのでFA権は取得していませんね。籾山選手もFA権は取得していませんでしたが金銭トレードで巨人に放出されました」
武藤「確か年俸で揉めての事でしたねって大物の槙原がフリーエージェントで巨人に行ったじゃないですか!」
霞「そうです。今年の大物と言えば槙原選手が巨人に移籍しました。後はドラフトで指名されました完全試合男こと斎藤君とマイペース堺君くらいです!」
武藤「その呼び名はどうかと思いますが確かに全体的に良い補強をした感じですよね」
霞「はいと言っても良い補強と言われてもなかなか芽の出ない選手は多いですからね」
武藤「……そう言われたら何も言い返せなくなるんですけど」
霞「他にも凄い新人が多いですがタイトルの方に行きましょうか注目はまず2人です。今年のMVPの神代選手と久住選手ですね」
武藤「同期で同い歳の2人ですね。タイプは違いますが3年連続のMVPは球史初の快挙ですしやはり久住君の方が有名なのかも知れませんね」
霞「神代選手は4年連続3割30本以上と久住選手は3年連続3割5分以上と」
武藤「どっちも怪物ですね!?」
霞「ですね。どちらも同期で球界を代表する選手とMVPになったのは当然したね。そして今年の新人王も凄かった!」
武藤「新人王獲れなかった嘉神も新人最高打率を記録していましたからね。風祭君はそれを超えるかも知れないと来年の新人王争いも熾烈そうです!」
霞「新人王を獲った高須君は本塁打と打点の記録を更新すると凄かったですし天野君も最多勝と勝率のタイトルと獲ったし今年の新人王は凄かったですね」
武藤「まあ……ただ天野君は防御率と奪三振が思ってたよりではなかったですね。まあ近鉄は投手陣の調子も良くなかったしとタイトル獲った選手がいるわりに防御率はリーグ5位なんですよね?」
霞「失点はリーグ最下位と確かに調子は悪かったみたいですね。その割にセーブ王がいたりと良く分からない感じもしますが」
武藤「まあチームは4位でしたしセーブ王がいても不思議じゃないんだと思いますよ」
霞「他には遂に本塁打王を獲った柳生選手(西武)やチャンスに強く打点王を獲った八坂選手(ロッテ)、盗塁王の橘選手(巨人)と日暮選手(オリックス)など、防御率を獲った藤堂選手(ヤクルト)と望月選手(ロッテ)などと知っている有名な選手が多く活躍しました。そして注目の中継ぎでタイトルを獲ったのは新人の守屋選手(阪神)とトレードで才能が開花した桐生選手(西武)とこっちは新しいスターが出て来ました!」
武藤「今年はとんでもない新人が多かったですからね!?」
霞「残念ながら今一つ活躍できなかった新人選手もいましたがまだ1年目ですし来年から頑張って行きましょう。そして活躍した人達は来年も負けないよう頑張って下さい!」
武藤「もう終わりですか?」
霞「特に大物選手や大物外国人の移籍はなかったですからね。槙原選手も悪くはありませんが例年はタイトル獲っていませんしね」
武藤「まあフル出場で30本打ったし4番としては合格な気もするんですけどね。八坂君の活躍のせいか評価はそんなに高くなかったですからね」
霞「と言う訳で終わりです」

赤竜高校
真田「と言う訳で最近のドラスポはマンネリだとは思わないかね?」
吉田「いきなり何言ってんだ?」
真田「なんかつまんなかったんだよね」
斎藤「オフシーズンならそんな物だろう」
真田「達観してるね。しかしライアンさんみたいなのまた来ないかな」
吉田「それはないだろう。あの移籍は奇跡的な事だと今も思っているぞ」
真田「そう言えば昨年は圧倒的だったけど、今年のライアンさんってあんまり聞かないね」
斎藤「来年に1軍に上がれば嫌ってほど知る事になりそうだけどな」
真田「怖いな……ところでヤクルトに指名されたのは」吉田「滝沢と丸目か……あいつらも大変だよな」
真田「ってそれよりライアンさんだよ。なんで今年はタイトル獲ってないの!?」
斎藤「今年は危険球や乱闘騒ぎを起こして出場停止処分が多かったからな」
吉田「それでもあの活躍だからな」
真田「本当に問題児なんだね」
斎藤「野球選手としての実力は最高だけどチームプレーは良くないな」
吉田「まあ解説者は良い感じで観てないのが伝わって来るが」
真田「チーム的にはどうなの?」
斎藤「少なくとも好意的な感じはしないな」
吉田「あいつらは大変だな。まあ滝沢は開幕1軍だろうけど丸目は難しいかな」
斎藤「外野陣が揃ってるからな。土丸屋さんもいるし滝沢も難しいかも知れないが」
吉田「そうだったな。チャンスに強い巧打者の土丸屋さんもいるんだった」
斎藤「まあ厳しいのはみんな一緒だ」
真田「ま、そうだね。そう言えば今年の春って無明は出れないんだったね」
吉田「いまさらだな。いきなり高校野球に変わったし」
真田「いやみんな頑張ってるし今年はどれくらい勝てるかなって思ってね」
斎藤「今年の優勝候補は天狼学園って言われてるけどな」
吉田「平下の評価が凄いからな。来年は風祭以上に指名されるかもな」
真田「ま、抜けてるのは確かだね。8球団以上指名されたりしてね?」
吉田「ないとも言い切れないか、しかし御堂や坂本の評価も高いしな」
斎藤「春や夏でその評価も確定して行くだろうし俺達は楽しみにして待っていれば良いさ」
真田「ちなみに相川君も負けずと評価は高いです!」
吉田「知ってるよ!」
斎藤「まあまずは俺達だ。2月からキャンプに参加するし」真田「ちなみに僕達も1軍キャンプにご招待ってね」
吉田「期待に応えなきゃと思うよりプロ野球選手に会える楽しみの方が勝っている感じだよな!」
真田「その気持ちは良く分かるよ!」
斎藤「優勝チームか、堺とも会えるし確かに楽しみだな」

無明実業高校
直人「日本ハムの外野と言えば佐々木さんと音無さんと若手ばっかりだな」
風祭「あそこは若手ばかりが活躍してるからな」
大沼「レギュラーの平均年齢は何処も若いだろうけどね」
藤井「俺なんか八坂さんと言う打撃守備共に歯が立たない怪物とレギュラー争いするんだぞ!?」
直人「ファーストは外国人だろうし終わったな」
藤井「くうっ! 槙原さんがFAしたしもしかしたらと思ったのにな!」
風祭「まあ厳しいのはみんな一緒だろう!」
直人&大沼&藤井「それは気のせいだ!!!」
風祭「断言されると返す言葉がないな」
直人「しかし斎藤と風祭が優勝チームに指名されたのも運命的だったね」
風祭「まあな。久住さんを超えるバッターになりたいし指名されたのはラッキーだったな!」
直人「久住さんみたいなバッターじゃなくて久住さんを超えるバッターって時点で大物って感じだな」
風祭「お前だって父親を超えたいと思っているんだろう!」
直人「確かにな!」
大沼「ひそひそ(どっちも大物だよな)」藤井「ひそひそ(どっちも競合1位だしな)」

赤竜神社
二階堂「来年も優勝するように」
真衣「どっちって赤竜高校に決まってるか、そう言えばエースの格好良かった人って連君に似てなかった?」
二階堂「そうか? と言うか歳が離れてるし連が聞いたら泣くんじゃないか?」
真衣「別に泣かないと思うけど、そうね。エースの人が子供っぽいのかな?」
二階堂「しかし甲子園優勝投手か、このまま頑張れば連もそうなるのかな」
真衣「連君なら有り得そうね」
結依「小僧共に良い話を聞かせてやろう!」
二階堂「っていきなり誰だよ!?」
真衣「お姉さんは誰ですか?」
二階堂(何で冷静なんだよ?)
結依「うーむ、謎のお姉さんとでも名乗っておこうかのー」
二階堂(怪し過ぎる)
結依「大丈夫じゃ、別にお主達に危害を加えようとは思っておらん。まあ運命じゃな。お主らとはまた会う事になりそうじゃ!」
真衣「……あの神社の方ですか?」
結依「そうとも言えるしそうとも言えんな。すまんな。どうも曖昧な言い方になってしまって」
真衣「いえ。騙すつもりならもっと上手く騙せるでしょうし私達を騙しても何か得があるとも思えませんしと言う事でこの人は無害よ」
二階堂「らしいな」
結依「ふむ。大人びとるな。まったく将来が楽しみなのじゃ!」
二階堂(こいつはこいつで色々あるからな)
真衣「そんな事ないですよ」
結依「それで何を祈ってたのじゃ?」
二階堂「来年も赤竜高校が優勝しますようにって」
真衣「私は個人的な事なので秘密です」
結依「そこで嘘をつかないところに好感が持てるのーワシもお主達の願いが叶うように祈っとくか!」
真衣「やっぱり良い人だよ」
二階堂「だな」
結依「それではお主達にこの神社の話を教えてやろう!」

喫茶店MOON
吉田「それじゃ俺は帰るな」
真田「彼女ができた訳じゃないだろうに早く帰るんだね」
吉田「うっさい! 大樹と約束があるんだよ!」
斎藤「大樹君か、話には聞いたけどまだ会っていないな」
真田「そりゃあれだけ練習ばっかりしたらね」
吉田「引退した後なら大樹と遊べる時間も多くなると思ったんだが大樹は大樹で忙しいらしいからな。まあ来年のオフにはお前達も話せるかもなっと悪いが急いでるんでまたな」
斎藤「今年ももうすぐ終わりで来年からは東京か」
真田「僕なんて愛知だよ。吉田は広島だし」
斎藤「近いだけマシか」
真田「そう言う事、後輩達とすぐに会える斎藤君が羨ましい。僕はきしめんとかういろうとか名古屋城とか色々あって寂しいな」
斎藤「とっても楽しそうに見えるが(ところで最初に思い付くのがみんな食べ物が多いのはなんでだろう。まあ俺も観光名所とか行く時間があれば……だから名古屋城が最後なのか?)」
真田「上位指名は何故か同期が多いし自然体で臨めそうだね」
斎藤「お前はいつも自然体だと思うが?」
真田「まあね。しかし2人だとトークが続かないね」
斎藤「続いていると思うけど」
真田「しかし柚ちゃんを呼ぶのも悪い気がするしここはこれだ!」
斎藤「爆弾でどんどん敵を倒して行く奴か」
真田「と言う訳で今日はボンバーで行こう!」
斎藤「まあ良いけど」

当然のように日常は続くが1月は入寮日と斎藤達は離れ離れになり敵同士と複雑な関係になるのだが本人達は気にせず遊んで行くのだった。