第1章 前途多難な高校野球

−1988年 4月−
ここ冥空高校では数々のプロ選手を輩出しているだけあって全国でもかなりの強豪校に当たり毎年野球部入部の人数はかなりの物だった。
日下部「ここが冥空高校か、大きいな。それに新入生もいるけど、気のせいか大人ってくらい身長が高いなー」
遠山「新入部員の数も凄いしな」
日下部「そうだね。この中の9人しかレギュラー獲れないんだよね」
遠山「まあな。新入生でいきなりレギュラーは難しいだろうしまずはベンチ入りが目標だな」
日下部「そうだね。ところで違和感なく話していたけどあなたは誰ですか?」
遠山「…………まあ知らなくても当然か、俺は遠山章太(とおやましょうた)、お前と同じ1年だ」
日下部「身長高いね…………ってなんで僕の事知ってるの?」
遠山「俺も香川から来たんだ。ここの監督に誘われてな。お前は県内でも結構有名だったからな」
日下部「遠山君か、これから3年間よろしくね」
遠山「ああ」
日下部(良かった。いきなり地元出身の友達もできたし良い環境で頑張れそうだ!)

それから日下部は遠山と一緒に野球部に向かい簡単な自己紹介が始まる。

冥空高校 野球部
久住「久住鴉(くずみからす)っす! 中学ではピッチャーをやっていました! 地元で近いので入ったので知っている人はあまりいないと思いますがストレートの速さとコントロールにはちょっと自信があります!」

久住は昔からお調子者な性格で天才肌な人物だったが試合ではさほど活躍してなく知名度はなかった。
遠山「無茶苦茶テンションの高そうな奴だな」
日下部「そうだね」
轟「轟賢太郎(とどろきけんたろう)です。シニアではキャッチャーをやっていました!」

轟は努力家で性格は真面目と昔から変わってないらしいが実力、知名度も昔から高く特待生として冥空高校に誘われた。
日下部「彼も遠山君に負けないくらい背が高いね」
遠山「そりゃシニアでも全国区の選手だからな。轟も日下部と同じく特待生だろうしかなりやるんじゃないか」
日下部「へえ(僕ってそんなに凄いのかな?)」

日下部は見た目通り謙虚な性格で自分自身を過小評価と言う言い方も少しおかしいがとにかく自身の知名度は知らないらしい。
遠山「遠山章太(とおやましょうた)、中学ではファーストを守っていました。推薦ではなく一般入部なのですが実力には自信があります!」

遠山は努力家で性格的には真面目と日下部とは結構似ている部分はあるが高みを目標にしていると根性タイプの選手である。
日下部「日下部美能留(  くさかべみのる  )です。走塁守備は得意です。頑張ります!」
相馬主将「まあこんなもんか、それじゃ初日だがいつも通り厳しく行くぞ!」

日下部達が1年の頃は相馬幾杜がキャプテンだった。3年時にはコントロールの良さと球種の豊富さなどを評価されドラフト候補として期待されていた。
神坂監督「ふむ。今年もなかなかセンスある奴が多いな」

監督事神坂世羅( かみさかせら )神坂睦月の弟で高校時は内野手を守っていたがプロ入りはできずその人間性に惚れ込んだ当時の理事長の勧めで冥空高校の監督をやっている。20代後半と若いが早くも名将と褒め称えられている。
久住(シュッ!)

ズバ―――ン! ククッ!
神坂監督「無名の軟式出の割にはなかなかやるな。130近く出ているし将来的には140キロを越えるかも知れないな。変化球はまずまずだがコントロールも良いし将来性はありそうだな」

遠山&轟「うりゃっ!」

カキ―――ン! カキ―――ン!
神坂監督「打球の伸びが良いな。2人共ホームランバッタータイプか、いや轟は中距離打者かな。しかし遠山も負けていない。こいつらは夏から使えるかもな」

日下部「よろしくおねがいします!」

タッタッタ! パシッ! シュッ!
神坂監督「さすかだ。守備は既に高校レベルだ。日下部はバッティングも上手いらしいからこいつもレギュラー候補だな。うむうむ。今年は久々に生きの良い新人が来たもんだ!」

と日下部達は初日から大した評価をもらって行くが夏にベンチ入りを果たしのは遠山だけだった。
日下部&久住&轟「頑張って下さい!!!」
遠山「まあベンチだがせっかくの甲子園だ頑張って来るよ!」

冥空高校は当然の様に地方大会を勝ち抜き甲子園に行った。そして1回戦と2回戦を勝ち抜き3回戦の相手は広島の紅蓮高校だ。
遠山「キャプテン大丈夫ですかね?」
神坂監督「あいつもドラフト候補だ。そうそう打たれたりはしないだろう」

常葉「食らえ!」

カキ―――ン!
相馬主将「うわっ!?」
藤原「もう一発!」

カキ―――ン!
相馬主将「そんなバカな!?」

神坂監督は信頼していたが結局は打たれまくって7対3で敗北してしまう。
神坂監督「残念ながら負けてしまったな」
相馬主将「すまん」
神坂監督「確かにお前が粘っていたら良い勝負になっていただろう。だが過ぎた事を言っても始まらん。あいつらに借りを返したいならプロに行って返して来い!」
相馬「はい(あんな終わり方で指名されるかな?)」
久住「あんな凄い先輩達でも負けちまったな!?」
轟「ああ。さすがは甲子園だな。物凄くレベルが高い!?」
日下部「これが高校野球か」

こうして日下部達の夏は終わった。そして秋の大会では遠山と日下部が1年ながらレギュラーを獲得した。残念ながら久住や轟はベンチ入りもできなかったが冥空高校は秋の大会でも頑張って行く。
日下部「届かなかったね」
遠山「ああ。やっぱりキャプテンが抜けたせいか失点が増えちまったな」
久住「君達は良いね」
轟「くそっ、さすがに1年生キャッチャーでレギュラーは無理だったか」

と選手層の厚い冥空高校ではレギュラーを獲得できない選手もいると底力はあるらしい。そしてドラフトでは
神坂監督「ほう。瀬戸が1位か」
轟「確かここの出身で甲子園でも活躍したピッチャーでしたね」
神坂監督「ああ。当時から光る物を持っていたが残念ながら指名はならなかったな。まあ大学ナンバーワンピッチャーと言われるようにもなったし大した奴だったんだな」
遠山「そんな他人事見たいに言わなくても」
久住「しかし1位は大学ばっかりですね」
轟「ああ。カープも雨宮さんを指名してるしバファローズも坂本さんを指名してるな」
神坂監督「さすがに1位指名の高校選手は少ないな」
遠山「夏に優勝した紅蓮高校の選手もまだ呼ばれていませんね」
神坂監督「3位に高月が指名されたな。あいつも瀬戸と同期で同じ大学だがブレーブスが指名したか」
久住「誰?」
轟「さあ?」
神坂監督「コントロールと緩急で勝負する投手だ。瀬戸とはタイプが違うがあいつも大学で伸びたらしいな」
遠山「ああっ、相馬キャプテンが指名された!?」
全員「本当だ!?」
相馬「…………カープか、これで俺もプロなのか」
日下部「おめでとうございます」
久住「プロでも活躍を期待していますよ!」
轟「新人王獲って下さい!」
遠山「紅蓮高校で指名された常葉さんや藤原さんより評価が高いなんてかなり期待されていますね!」
相馬「ああ! 俺はプロで頑張るからな! お前らも続けよ!」
全員「はい!」

こうして日下部達の1年目は終わった。現時点ではまだまだ全国制覇には遠いが2年目に新戦力が入って来るとさらに強くなると期待が深まるが
日下部「だからなんでそう言う態度なの!」
久住「てめえこそそっちの考えを押し付けんじゃねえよ!」
全員(またかよ!?)
上条「どうにかならんのかね?」
燕「できる物ならしたいけど、ああなったら兄さん頑固だから」
遠山「なあ(俺達でなんとかしようぜ!)」
轟「ああ、分かってる!(それじゃ作戦でも立てますか!)」

冥空高校ではトラブルが多発すると日下部の高校野球はまだまだ前途多難らしい。