第5章 ずっと友達だから

−1990年 11月−
今日はいよいよドラフト、今年のドラフトは竜崎の世代以上に逸材がゴロゴロいると言われており異例の盛り上がりを見せている。

ドラフト会議
阪神タイガース
神代 一歩 18歳 外野手
無明実業高校
福岡ダイエーホークス
御堂 誠人 18歳 投手
無明実業高校
ヤクルトスワローズ
土丸屋 信吾 17歳 内野手
雪嶺高校
ロッテオリオンズ
神代 一歩 18歳 外野手
無明実業高校
中日ドラゴンズ
紅月 悠 17歳 投手
雪影高校
日本ハムファイターズ
音無 斎 22歳 外野手
斉天大学
横浜大洋ホエールズ
高岡 賢次 18歳 投手
黒龍高校
近鉄バファローズ
相馬 敦史 22歳 投手
矜持大学
広島東洋カープ
神代 一歩 18歳 外野手
無明実業高校
オリックスブレーブス
久住 鴉 18歳 外野手
冥空高校
読売ジャイアンツ
神代 一歩 18歳 外野手
無明実業高校
西武ライオンズ
高野 稔 外野手 18歳
無明実業高校

さすがは1位と言うべきか即戦力がほとんどだった。中でも神代の評価は大学、社会人よりも上と評価はずば抜けているらしい。そして予想外だったのが久住の1位指名だった。
遠山「久住が1位で指名された!?」
轟「マジかよ!?」
日下部「さすがは久住君だね。こんなに凄い選手と3年もプレーしたのか、なんか感動物だね」
遠山「まあな」

今日はドラフトの日で野球部の面々は指名があるかも知れないので校長室に集まっている。しかしそこに久住の姿はなかった。ちなみに兄を心配してか燕も欠席だったりする。
轟「いない奴を気にしても仕方ないさ。しかし神代は4球団競合とさすがだな」
上条「俺も来年にジャイアンツに入団する予定ですからね。あの人が先輩になるってのもありですね」
轟「クジを引けたならな」
遠山「しかし甲子園で戦った奴らもほとんど1位で指名されているのに俺らの名前はないし」
轟「仕方ねえよ。評価じゃどう見えてもあいつらの方が格上だし」
日下部「まあまあ、ハズレ1位か、2位には指名されるよ。きっと!」
神坂監督「ジャイアンツがクジを引いたみたいだな。神代は特に希望球団も進学の予定もないらしいし入団はまず間違いなさそうだな」
上条「これで先輩、後輩のフラグが立った訳ですね」
轟「フラグってなんだよ?」

続いて2位も指名されて行く。さすがに上位指名か聞いた事のある名前ばかり続いて行き遠山も2位でドラゴンズに指名される。
遠山「2位で指名された!?」
日下部「やったじゃない。これで遠山君も来年からプロか!」
上条「さすがは冥空の4番だった男ですよね」
轟「どうせ俺は5番ですよ」
日下部「まあまあ、キャプテンなんだし指名されるよ」

続いてブレーブスに指名されたのはなんと日下部だった。
遠山「まさかと思ったけど指名する球団があったか」
日下部「なんか申し訳ないな」
神坂監督「与那嶺の後継として指名されたんだろうな。まあ入るも入らないもお前の自由だ」
轟「入団拒否の日下部に評価で負けるとは」
遠山「しかしプロへ進めば久住と同じ球団と縁があるよな」
日下部「あっははは、そうだね」

その後、指名は続いて行き轟も4位でスワローズに指名された。
轟「指名されたのは嬉しいけど4位か」
神坂監督「キャッチャーの評価は難しいからな。まあ何位で指名されようがプロはプロだ。プロで評価を上げて行け!」
轟「はい!」
上条「しかし4人も指名されるとはさすがは名門ですね」
遠山「4人指名は冥空高校でも最多だな。しかもそのうちの3人が入団すると甲子園でも優勝するはずだよな」
神坂監督「これからはプロでの評価だ。アマとプロでは全然レベルが違う。今まで以上に努力しないと活躍はできないぞ!」
遠山「分かってますよ。それに神代と同じリーグだしあいつには負けません!」
轟「俺だって開幕1軍を狙ってやるぜ!」
神坂監督「その調子だ。しかし相手だけでなくまずは味方のポジション争いだ。しっかり自分の足元にも注意しとけよ!」
轟&遠山「はい!!」
日下部(これでみんなプロか、ちょっと複雑だけど、頑張れみんな!)
遠山「しかし前は敵だった選手が味方とは面白いな」
日下部「紅月君か、遠山君は彼からホームラン打ってたね」
遠山「ああ。まさか甲子園に出ていない奴に評価で負けるとはな」
轟「まあ、ピッチャーは選手の中でも特別だからな。特に良いピッチャーがいるといないとでは全然違うしキャッチャーとしては少し羨ましいかな。ファーストも良いよな」
遠山「それじゃポジションで順位が決まるみたいじゃないか?」
轟「うちの1位は土丸屋だからな」
遠山「あいつは神代クラスのバッターと言われているからな。現に燕は打たれまくったし」
轟「燕か、出会うタイミングが悪かったな。燕はもっともっと伸びるしプロに入ってからの対決の方が良かったかもな」
遠山「それでも優勝投手だ。大した物だよ!」
轟「まあな。やれやれ久住は結局来なかったか」
遠山「本当にガキだよな」
轟「ガキをフォローするのは」
遠山「大人の務めだな。また仲直りイベントをやるか」
轟「当然!」
日下部「大丈夫だよ!」
轟&遠山「?」
日下部「前とは違うから僕はもう久住君の親友だから大丈夫!」
轟「そうだったな。こっちはもう大人だった」
遠山「残念ながら俺達の出番はないか、行って来いよ!」
日下部「うん!」

変わる事のない友人達、野球だけではなく色々な意味での仲間達だった。そして日下部は最後の仲間を迎えに行く!

久住家
燕「お待ちしていました。兄さんは家にいますので後は頑張って下さい(やれやれこう言うセリフは兄さんに恋人ができてから言いたかったな。まあ男同士の友情でも良いか、本当に世話を焼かせる兄さんだよ!)」

燕は家の前で待っていたらしく日下部にエールを送って退散する。
日下部「うん。ありがとう。燕君、今度妹を紹介するね」
燕「すみません。実は誰にも言ってないんですが僕、彼女いるんですよ」
日下部「そうなのか、残念だな。ま、今度その彼女に会わせてよ」
燕「兄さんに会わせた後でなら!」
日下部「オッケー! またね!」
燕「はい(これで友人同士は大丈夫だな。後は恋人だけか兄さん、早く彼女作ってね。じゃないと紹介できないよ!?)」

燕のいきなりの爆弾宣言だが日下部は気にする事もなくやり取りし家に入った。
日下部「ヤッホー!」
久住「何故ここにっ!?」
日下部「燕君がどうぞっと入れてくれたよ」
久住「そんなに兄が嫌いなのか!?」
日下部「逆でしょう。久住君が大事だから入れてくれたんだよ」
久住「…………負けたよ。つうかまだ許した訳じゃないからな」
日下部「うん」
久住「謝罪する気ゼロなくらい良い笑顔だな。おい!」
日下部「そんな事ないよ。これからもよろしくね!」
久住「ああ!(やれやれこいつには一生勝てそうもないな)」

口では許していないなどと言ってはいたが日下部と仲良くなった久住としたら日下部に嫌な感情などもう持てる訳もなかった。そして数年後と日数は経った。

日下部のうどん屋
日下部「いらっしゃい。適当に取って食べてお金出して帰ってね」
久住「いきなりこれかよ!?」
日下部「久住君か、懐かしいね。そうそう3年連続首位打者おめでとう!」
久住「まあな!」
遠山「どっちかと言えばMVPの方が凄いと思うけど、しかしここまで化けるとは当時のスカウトの目を尊敬するよ!?」
轟「まったくだ!?」
久住「お二人は今年タイトルを獲れましたっけ?」
轟&遠山「どうせ獲れなかったよ!!」
日下部「まあまあ、みんな良い成績だし良かったじゃない!」
遠山「俺なんかプロ入り最高の39本塁打でタイトル獲れなかったんだぞ!? しかもルーキーに1本差で敗北とは屈辱だ!!」
日下部「今年のルーキーは僕達の世代以上の怪物って言われているからね」
轟「俺も2年目の若僧に負けちまった。昨年と違って今年はめっぽうチャンスに強くなりやがって!?」
上条「本当ですよ。俺も新人王になってもおかしくないくらい試合に出てたのに!?」
燕「僕は2ケタ勝てて日本一と満足行くシーズンでした!」
日下部「久住君兄弟はさすがですね」
日暮「まったくですね。ちなみに僕は自己最高の盗塁数で盗塁王とタイトルを獲りましたよ。ちなみに安打では久住君に負けましたが出塁率も獲っています!」
芹沢「この1、2番コンビは12球団でも最高にやっかいだからな」
神代「シリーズでは1勝しかできなかったからな」
御堂「僕は今年ケガで出遅れたからね。おかげでチームは最下位と最悪だったね」
高野「DHの俺も活躍したからな」
神代「あれで活躍と言うのはどうかな。能力的に本塁打は30本行くだろう」
高野「なら来年は3割30ホーマーだ!」
高岡「ようやく高野も開花したか、リーグが一緒なら遊んでやれるのに」
界外「俺もようやく1軍に復帰できたしな。まあ、来年はタイトル獲るくらいには打って見せるけど!」
日下部「いやー今日はみんな集まってくれてありがとう。と言うかなんでこんなにいるのっ!?」
久住「いまさらかよ!?」
神代「シリーズの時に久住達から聞いてな。オフに来ようって事になった」
芹沢「同じく」
上条「俺は燕からの連絡係です!」
御堂「僕は久住君達から聞いてたからね。それで今日行く事にしたら偶然会っただけだよ」
高岡「日暮から連絡が入ってな。一緒に行くって事になっただけだ」
界外「同じく。来れなかった奴もいるが、いずれ顔を出すくらいはするだろう」
日暮「言わずと知れた僕達は同じ球団だから」
遠山「しかしブルーウェーブは同期が多いな。しかも俺と上条以外全員だろう!?」
轟「俺はトレードだけどな」
高野「それを言うなら俺もだけどな」
界外「結果的に成功のトレードだったんだから良いじゃないか」
轟「まあな」
日下部「こんなに集まったなら久し振りに野球しようか?」
久住「そう言うと思ったぜ!」
日暮「だね!」
神代「明るく楽しくか、高校時代に勝てなかった訳だ」
御堂「そうだね。せっかくだし日本一の冥空高校VS高校連合ってのはどうかな?」
日下部「良いね。早速行こう。足りない人は近くの草野球で借りて行けば良いさ!」
遠山「早速って店は良いのかよ!?」
日下部「大丈夫、セルフだしバイトもいるし、それに久し振りに野球したくなったんだよ!」
久住「やっぱり日下部はそうじゃなきゃな!」
日下部「久住君、僕達はずっと友達だよね?」
久住「当然だろう。いまさら何言ってんだ!」
日下部「うん!」

歩む道は違っても彼らの想いは一緒らしくまだまだ日下部の野球人生も終わらない。