第2章 希望を信じて

−1991年 5月−
開幕から先発ローテーション入りし御堂は既にプロの投手として活躍している。
御堂「ふう」

ルーキーながら1軍で活躍をしている御堂だったがチームの状態は変わらず調子は上がらなかった。
海藤「今年は絶好調だな。このまま1軍で頑張るぞ!」
御堂「絶好調と言うほどじゃないと思いますが」
海藤「確かに2割半ばでホームランも1本しか打ってませんけどね」
御堂「いえ。僕がですよ」
海藤「2勝2敗で防御率も3点台とルーキーとしては十分だと思うけど」
御堂「そうですね…………けどチームが」
海藤「やっぱりそこか…………もう考える方が面倒だ―――!」
御堂「ちょ、ちょっと待って下さい!?」

海藤もそう言う雰囲気が苦手なせいか今までの鬱憤を晴らす様に走り去って行く。
川崎「それで俺に相談かよ」
海藤「お願いします。もうあなたしか頼れる人はいないんです」
御堂「―――!?」
川崎「…………俺も優勝どころかAクラスの経験もないからな」
海藤「弱小ですからね」
川崎「だからこそ勝利への意欲がなくなるんだろうな」
御堂「―――ルーキーの僕が言うのは何ですが、今のままじゃやっぱりダメだと思います!」
川崎「そうだな…………御堂、お前はこれからのチームを支えて行く覚悟はあるか?」
海藤「いきなりルーキーには重い話じゃないですか」
川崎「そうだな。だけどチームのエースが勢い付くと他の選手も引っ張られて行くかも知れん。結果を出して行けば他の連中も当てられて頑張って行くと思う!」
御堂「―――分かりました! まずは自分なりに頑張って見ます!」

少なくともここにいる2人は自分と同じ気持ちがあると御堂は思いそれを抱えながら御堂は一気にその実力を開花させて行くのだった。
御堂「ふんっ!」

ズバ―――ン!
浪川「むっ!?」

西武ライオンズの黄金期が続く中だったが最下位ながら御堂は上位チームに強く新人王に向かって驀進(ばくしん)していた。
御堂「一気に6勝目だ!」

調子を上げて行き6月には月間MVPを獲得するなどとルーキー離れした実力を見せ付ける。
海藤「ルーキーとは思えないな」
川崎「ルーキーとは思えないほどメンタル面は強いな。それでも新人王獲れるかは分からないが?」
海藤「他のルーキーもチームの主力並みとおっかない世代ですからね」
川崎「あいつのおかげかみんな少しずつやる気が出ているしこのまま行ければ良いんだがな」
海藤「そうですね」

そしてオールスターゲームも始まり御堂はルーキーながら第2戦の先発に選ばれた。
御堂「僕が先発ですか!?」
中村監督「今年はルーキーの豊作と言われているしそう言う意味でルーキーエースとして頑張っているお前を推薦した。自信がないと言うのなら別の投手に交代させるが?」
御堂「いえ。やります!」
中村監督「こっちもあっちもルーキーで盛り上げようとスタメンの何人かはルーキーだ。お前もやりやすいだろう!」
御堂「まあ知ってる名前が多いのは嬉しいですけど、若手がこんなに出て良いんですかと言いたくなりますね」
中村監督「まあ未成熟な部分が多いが末恐ろしいとも言えるし何よりファンも期待しているし良いんじゃないか」
御堂(意外に適当な人だな)
中村監督「他のルーキーも委縮(いしゅく)してるしお前が緊張をほぐしてやれ」
御堂「はい」
浪川「まさかお前と同じチームとはな」
御堂「それを言うなら1年目のオールスターで一緒に試合するだけでも凄い事だけどね」
浪川「まあな。俺はドラフトの順位でもお前に負けてるし今日は負けないからな!」
御堂「ごめん。言ってる意味が良く分からないんだけど?」
日暮「確かにね」
浪川「とにかく今日は打って打って打ちまくるから覚悟しとけって事だよ!」
御堂(安心しろって言うなら分かるんだけど)

浪川は御堂へのライバル意識が強く味方と言う状況がどうにも理解できていないようだった。ちなみに日暮は現在3割を打っていて浪川は2ケタ本塁打とこちらも御堂に負けずと活躍している。
日暮「あっちは元チームメイトの高岡君が先発だし界外君もいるし土丸屋君もいる。それから控えだけど紅月君もいると凄いよね。しかし日本一になった冥空高校の選手が1人もいないってのは意外だったね」
浪川「ま、一番評価の高かった神代も出ていないしな」
御堂「一応推薦はあったけど辞退してジュニアオールスターゲームに出場したらしいね」
浪川「ああ。確かMVPは多分、遠山だったと思うが」
日暮「って事はウエスタンが勝ったんだ!」
御堂「それじゃこっちも僕達がMVPもらおうか!」
浪川「言われるまでもない!」
日暮「おう!」

−1991年オールスター戦 広島市民球場−
与那嶺 司
後攻 先攻
VS
及川 慧
寺井 安人 八雲 利
備前 吉安 常葉 新太郎
大友 勇輝 逆凪 鳴
浪川 哲哉 天道 出流
柳生 雷蔵 星野 哲也
時雨 隆宗 土丸屋 信吾
日暮 雅敏 界外 風
御堂 誠人 高岡 賢次

放送席
類「それではオールスターゲーム第2戦を放送させてもらいます。第2戦の先発はゴールデンルーキー同士となりました。残念ながらタイトルトップと言う訳ではありませんが横浜の高岡とダイエーの御堂と興味深い投げ合いとなりそうです。解説には広島のホームと言う事で福井真一さんに来てもらいました!」
福井「私が引退してから生きの良いルーキーが入ったのが残念でしたね」
類「ちなみに先発のこの2人と1年目でスタメン獲った選手についてどう思いますか?」
福井「御堂は既に隙のないエースと言った感じで精神的な強みを感じるとやはり末恐ろしいですね。高岡も一流なんですが四死球で自滅したところも一度見ましたし安定感のなさが気になりますね。でもボールは走ってるしこちらも末恐ろしいと言っておきましょう。それとルーキーと言うより今日に限らずスタメンの平均年齢が非常に若いのがやはり恐ろしいと野球界も革命って感じで怖いですよ」
類「確かに若いですね。逆にベンチ入りした選手は高齢と言うのも失礼かも知れませんがベテランが多いですね。しかし怖いと言うよりは嬉しそうに思えるんですが?」
福井「ファンとしてはこう言う新顔が多いのは嬉しいもんですよ」
類「なるほど、では戻ってスタメン獲ったルーキー選手はどうでしょう?」
福井「浪川は長打力は高く日暮は意外にも巧打が上手いしついでに柳生も初出場かあいつも長打力が結構あるよな。土丸屋は打点が凄いな。それで界外は意外にも3割打ってるし」
類「初めて見たみたいに言われても困るんですが?」
福井「(困ってる表情じゃないけどな)そうですね。何か能力の割に意外な活躍しているイメージが強くてどうも不思議な感じなんですよ。運が向いたと言うかもちろん選ばれただけあって実力もあるんですけど」
類「ふむ。確かに日暮選手辺りは不思議と言われてますね」
福井「けどあいつは実力ありますよ。何と言うか素直なバッティングですね。進塁打も上手いし理想的な2番バッターですよ。オリックスのスカウトの目は大したもんです」
類「オリックスの上位は高卒選手ばかりと将来性を期待しての指名と言われましたが日暮君は既に主力として活躍しております」
福井「浪川は特に言う事はないですね。元々能力も高いし体格にも恵まれてるしと土丸屋は技術が高く選球眼も良いと既にプロクラスの風格と神代と並ぶプロクラスのバッターですね。個人的にはこれに遠山も追加しても良いんですがあいつは粗さもありますからね」
類「神代選手や遠山選手も1軍で活躍しておりますがさすがにオールスターに出るほどではありませんからね。ちなみにジュニアオールスターゲームでは2人共4番打者とさすがでした」
福井「あそこでMVP獲って活躍する選手は多いので来年からは1軍のオールスターで頑張って欲しいですね」
類「そうですね。それで界外選手は?」
福井「あいつか、粗さが目立つし実力以上に活躍しているんですよね。あの手のタイプって警戒が薄いうちは良いんですが警戒されて不調が続くとスランプに陥りやすい気がするしこのままの調子を維持して欲しいとしか言えませんね」
類「あまり評価が高くありませんね。ちなみにドラフト外ですが、そう言えば柳生選手もドラフト外ですよね」
福井「まあ似ている2人ですからね。柳生の方は想像以上に技術が付いて来てると良い2軍生活だったんでしょうね。界外は比べると粗いですよね。3割打ててるのはやっぱり不思議としか言えませんね」
類「ちなみに他の選手は言うまでもなく一流選手ばかりでオールパシフィックはパリーグの4番と言われる槙原選手をベンチと切り札にしております」
福井「そう言う意味では槙原を抑えてスタメンの浪川の打席は特に注目ですね!」

1回表 パシフィック0−0セントラル 両チームの先発は高卒ルーキー同士と例年とは違った盛り上がりを見せる!
御堂「いきなりやっかいなバッターとさすがはオールスターですね」
備前「言わなくても分かるだろうが塁に出すと俺でも刺すのは難しいと四死球もダメだからな」
御堂「コントロールには自信がありますから自滅はしないと思います!」
備前「それとオールスターだからスタミナ配分の必要はない。思いっきりミットに向かって投げて来い!」
御堂「あのスタメン見る限りスタミナ配分なんてしたら1回も持ちそうにないですよ」
備前「確かにな。お祭りだし自分の力を試すって人もいるしリードが気に入らなかったら自分の好きなボールを投げて来い。とにかくガンガン行ってお前の若さをぶつけてやれ!」
御堂「はい!(確かにリーグの違う一流選手に投げられるチャンスなんて滅多にないし全力で試させてもらおう!)」
及川「まずはお手並み拝見と行きますか」
浪川「俺以外に打たれんじゃねえぞ!」日暮「ガンバ!」
御堂(シュッ!)

ククッ!
及川「おいおい! 今の入ってんのかよ!?」

類「最後はスライダーを見逃し三振とあっさりでしたね」
福井「左バッターには打ちにくいコースでしたね。コントロールはやっぱり良いですね」

及川「左打席だと少し見にくいですね」
八雲「まあ俺はスイッチで相手は左だから右に入ると関係ないけどな。次の新太郎にもアドバイスしといてくれ」
及川「うっす」

ガキッ!
浪川「御堂にパスと何か変な感じだな」

シュッ!
御堂「ふう」

パシッ!
類「巧打者八雲でしたがファーストゴロに終わりました」
福井「こうやって見ると御堂は守備も上手いですね」
類「確かに守備面で評価される事も多いですね」

常葉「やるな。ルーキー!」

カキ―――ン!
御堂「コース付いたのにあっさりと打ってくれるな!?」
備前(さすがはセリーグの首位打者だな。次はセリーグの本塁打王だし広島の打線は本当に恐ろしいな。歩かせても良いからストライクゾーンギリギリを狙わすか、いやせっかくの舞台だ。勝負させてやろう!)

類「ライト前ヒットで次は4番の逆凪選手です。現在のホームランキングと長打力はセリーグでもトップクラスか!」
福井「技術が付いて来たと界外や柳生の未来の姿かも知れませんね。成長速度はとんでもなく私もあいつの成長には驚かされましたよ!?」
類「さすがにオールスターで敬遠はないでしょう。それと常葉選手は走って来るでしょうか?」
福井「敬遠も結構と言って良いか分かりませんがある事はあるんですけど」

御堂(勝負か、どうせなら自信のあるボールで三振を狙おう!)

ズバ―――ン!
逆凪「初回で148キロかよ!?」

類「最後は148キロのストレートで空振り三振と見事なピッチングで決めました!」
福井「それにしても三球勝負とは良い度胸してますよ。これは将来が楽しみですね!」

御堂「ありがとうございました!」
備前「ま、自信のあるボールを投げれば4番相手でもそうそうは打たれないさ。良いピッチングだったし次の回も今の調子で頼むぞ!」
御堂「はい!」
浪川「俺も負けずと打ってやるぜ!」

1回裏 パシフィック0−0セントラル 御堂はヒットを打たれた物の後続を抑えて無失点と好投を見せる!
高岡「うぉ―――!」

カキ―――ン!
与那嶺「打ち頃だったから初球から振っちまったけど、ちょっと大人気なかったかな?」

類「初球145キロのストレートでしたが一振りでライト前ヒットと今年も与那嶺選手は好調ですね!」
福井「今年もではなく今年は好調ですね。昨年は不調でしたがそれでもフル出場したしまだまだ成長途中なのかも知れませんね」

与那嶺(星野相手じゃ厳しいかも知れないが行って見るかな!)
星野(1球外させるか…………ってちゃんとリードを見ろよ!?)
高岡(シュッ!)

ズバ―――ン!
寺井「やけに無警戒だったな?」

類「ボールはストライクですが盗塁成功でノーアウトランナー2塁となりました!」
福井「盗塁を警戒しても良い場面なんですがあっさりと許しましたね?」

与那嶺(三盗は止めとくか)
星野(リードくらい見てもらわないと困るんだがな)
高岡(打たれたのが悔しくて忘れてました)
星野(まあ良い。寺井さんは昨年の首位打者だ。警戒して行くぞ!)
高岡(うっす!)

ククッ!
寺井「凄いシュートだな!?」

類「今度はヘルシュートを使って空振り三振ですね!」
福井「左打者にはかなり打ちにくいって話だけあって凄くキレてますね。寺井はスイッチヒッターで右打席に入りましたがそれでも打てないとプロの一流打者にも通用するボールを持っていますね!」
類「そして次は備前とさすがはオールスターと言うべきか3割打者が続きます!」
福井「パシフィックは右打者が多いですね。クリーンナップは全員右打者と高岡対策なんでしょうかね?」

高岡(ぶっ潰す!)

ガキッ!
備前「手元でかなりキレるな」

類「残念ながら備前選手はピッチャーゴロに終わりました!」
福井「1打席であのヘルシュートを打つのは備前でも難しいようですね」

高岡(食らえ!)

ズバ―――ン!
大友「速っ!?」

類「最後は150キロのストレートを空振り三振と高岡選手はシーズンよりも調子の良さを見せるピッチングをしますね!」
福井「返答に困りますね。ヒットは打たれたし盗塁もされたしいつも通り立ち上がりが悪い気もしますが四死球は出さなかったしやっぱり調子は良いんでしょうね」

大友「どうした?」
浪川「意気込んだのは良いんですが打席が来る前に終わったのがショックで」
大友「……そいつは悪かった」

2回表 パシフィック0−0セントラル 高岡もホームは踏ませないピッチングで抑えると好調振りを見せる!
御堂(逆凪さんから強打者が続くな。どの選手も4番クラスだし慎重に行こう!)

ガキッ!
天道「あのセンター守備範囲が広いな」

類「センター深いところですが追い着いて1アウトです!」
福井「特別な変化球と言う訳ではありませんがカーブも結構曲がりますね。こうやって観るとコントロールと投球術で勝負するタイプに見えるな」

御堂(次は星野さんか、狙うならどのコースなんだろうか)

ガキッ!
星野「備前さんのリードはなかなかやっかいだな」

類「こちらも打たされた感じでレフトフライですね!」
福井「コントロールが良いのでキャッチャーもリードのしがいがありそうですね。良いところに投げて来ますよ!」

土丸屋(球種が豊富でどれも結構変化するし狙い球を何にするかだな)
御堂(甲子園で何度か会ったな。ミートは抜群に上手かったイメージがあるとストライクゾーンは広そうだな)

ガキッ!
土丸屋「正面過ぎたか」

類「確実にミートして来ましたがファーストライナーと言う結果に終わります!」
福井「まあ1打席で打つのは難しいでしょうね。この回は三者凡退とルーキーとしては上出来な内容ですね!」

浪川「ここは俺の守備に感謝だな」
御堂「平凡なライナーだったし捕れて当然って打球だったけど…………まあ感謝はしてるよ」
日暮「後1回もこの調子で行きたいね」
御堂「うん!」

2回裏 パシフィック0−0セントラル 御堂は2回も無失点と安定感を見せた!
浪川「ようやく俺の打席だ!」
高岡「オールスターだと代打も多いだろうし確かに打席が少なくなりそうだな。あいつも高校時代と同じ乗りしてるな」
星野(こいつは要注意だ。ルーキー時代の俺と違って技術も高いし力押しは危険かもなと言っても高岡はその力押しで行けるだけの力を持っているし正面から行って見るか!)
高岡(狙うは150キロのストレートか)

ククッ!
浪川「こいつを待ってたぜ!」

カキ―――ン!
高岡「なっ!?」
星野「狙ったとは言え良くもまあ打ったもんだ」

類「ルーキー対決でしたが勝ったのは浪川選手、ヘルシュートを一振りでレフトスタンドに持って行きました!」
福井「完全に狙い打ちと星野にしては珍しいリードミスですね。右打者とは言え久し振りに見たヘルシュートをたったの一振りで持って行ったのには末恐ろしさを感じますよ!」

浪川「オールスターの初ホームランと今日は記念日だな!」
高岡「こっちは被本塁打+初失点記録だよ。ちくしょう!」
星野「お久し振りです!」
柳生「少し遅れちまったけど、またお前とやれるようになったな」
星野「敵同士と言うのは初めてですがね。ちなみに竜崎さんには既にお返しさせてもらいましたよ!」
柳生「俺だってノーヒットノーランの借りは返してやるぜ…………リーグが違うからこう言う舞台じゃないと借りは返せないけど、あいつの登板ってあるかな?」
星野「前の試合で投げてたのでないかと」
柳生「くそっ! 代わりに高岡を打つ!」
高岡(こう言う乗りは嫌いじゃないな。返り討ちにしてやろう!)

ガキッ!
星野「せめて前に飛ばした方が良いかと」
柳生「うっさい!」

類「初めて見るヘルシュートに対応できずキャッチャーフライに倒れます!」
福井「少し力が入ってるな。初めてのオールスターで緊張するのは分かるがもっとリラックスして打てば結果も出るだろうに」

星野(勝負強い人だが逆にもろくなるところもあるからな。これで高岡も調子を取り戻すだろう)
高岡(次も潰す!)

ククッ!
時雨「右でも十分に打ちにくいぞ!?」

類「こっちは空振り三振ですね。まあ三振の多い人でヘルシュートじゃ仕方ないかも知れませんね」
福井「センスはあるんですけどまあ大振りが目立つのは確かですね」

日暮「ふっふっふ!」
高岡「お前と戦うのは初めてだな!」
日暮「フリーバッティング対決とかは結構やったけどね」
高岡「三振数の少ないお前から三振を奪ってやるぜ!」
星野(上位を任せて良いだけのセンスは持ってるしこいつを三振にするのは難しいが注文されたんじゃ仕方ない!)

ガキッ!
日暮「あれ?」

類「残念ながら外野までは行かずセカンドフライに倒れて3アウトチェンジです!」
福井「ストレートでの力押しと見事に力負けしましたね」

高岡「くう〜! 三振は奪えなかったが抑えれたし良しとするか」
星野(さすがにストレートだけなら合わせて来るかと言っても高岡の球威なら深手は負わないだろうしリードとしては悪くないんだが)
御堂「やっぱり球威のあるタイプには弱い見たいだね」
日暮「まあね」
浪川「一応3割打ってるけどホームランはゼロと非力だからな」

3回表 パシフィック1−0セントラル 浪川の一振りで御堂は待望と言うほどではないが貴重な1点を手に入れる!
御堂(次の打席で代打だろうしきっちりと抑えて終わろう!)
界外「同期には負けん!」

ズバ―――ン!
御堂(相変わらず選球眼が悪いよな。これで3割って事はセリーグにコントロールの良いピッチャーは少ないって事かな)
界外「軽くやられちまった」

類「最後は高めのボール球を振らされて三振と良いところはありませんね」
福井「成績は良いんですがまだまだ成長途中って感じですからね」
類「おっとここで代打のようです。高岡選手に代わってピンチヒッターは雨宮選手ですね」
福井「天道ほど長打力はないんですが打率は上と巧打力は高いんですよね」
類「ちなみに本塁打は天道選手の方が上ですが雨宮選手も既に20本塁打と負けていません」
福井「今年は何故か本数が増えているんですよね。天道は確かに強打者なんですが雨宮は強打者と言うよりは巧打者って感じですね」

雨宮(難しいコースでもストライクに入って来たら積極的に振って行こう!)
御堂(常葉さんの次にやっかいなバッターで足もあるし出塁は何としても防ごう!)

カキ―――ン!
時雨「とおっ!」

パシッ!
与那嶺「ナイス守備だな。シーズン中もそんなプレーを希望したいぜ!」
時雨「悪かったっすね!」

類「ここで良いプレーが出ました。3年連続でゴールデングラブ賞は伊達じゃないって事ですね!」
福井「まあ身体能力は高くエラーも少ない方ですからね。時雨より守備面で上の選手もいますが総合的な評価なら時雨はトップクラスだと思いますよ!」

雨宮「まったくオールスターだけあってバックも頼もしいな」
及川「燃えますね!」
御堂「ふう、抜けてたら面倒になってたろうし時雨さんに感謝だな。後1人!」

ズバ―――ン!
及川「ここで最速かよ!?」

類「最後は149キロのストレートを空振り三振と及川選手は今日良いところなしです!」
福井「三振の少ない及川にしては珍しいですね。自己最速も出したしそれだけ御堂のピッチングが素晴らしいんでしょうね!」
類「ルーキーの御堂選手は3イニングを無四球無失点1安打4奪三振と見事なピッチングでマウンドを降ります!」
福井「オールスターのバッター相手にこの成績は文句なしですね。ダイエーのエースと言われるのも分かりますよ!」

中村監督「高卒の割に完成度が高過ぎで面白味がないのが残念だが良い投球内容だったぞ!」
御堂「褒めてくれてるんですよね?」
中村監督「良い投球内容と言っただろう? まあ個人的には完成している奴は指導のかいがないから面白味がないんだが」
御堂「すみません」
中村監督「逆に言うなら既にプロ級だと褒めてるのに何故謝る?」
御堂「そうですか(ダメだ。全然褒められてる気がしない。しかも威圧感が凄いんで反論なんて怖くてできないよ!?)」
浪川「オールスターのバッターも寄せ付けないとはさすがは俺のライバルだ!」
日暮「僕も負けずと次は打つぞ!」

こうして御堂の初オールスターも終わり試合は12回引き分けで終わった。残念ながら御堂はMVPを獲得できなかったが初のオールスターでは文句なしのピッチングと評価を更に上げる。そしてシーズンも終わって行くがやはり長年の弱小チームがすぐに強くなる事はなくこの年は5位と言う結果に終わった。
海藤「Bクラスだったけど、まあ頑張った方だよな」
御堂「そうですね。残念ながらタイトルは獲れませんでしたけど」

海藤はフル出場とスタメンを獲得し1軍選手となり御堂もチーム最多の13勝で新人王を獲得とルーキーとは思えない活躍をした。
海藤「いや新人王獲っただろう!」
御堂「投手部門のタイトルがですよ」
川崎「投手部門は西武が独占だな。宮本の安定感は特に凄かったからな」
近衛「MVPも当然と言う訳だな。御影も昨年に負けず劣らずの気迫のピッチングだったしタイトル獲れたのも当然だな!」
御堂「戦力が違いますね」
近衛「こっちも素材じゃ負けてないはずなんだがな」
川崎「即戦力と言われて入って来たのはいっぱいいるのに全然活躍してくれませんからね」
近衛「俺達ロートルが現役でなくなれば良い選手も増えるかもな」
川崎「冗談でも引退発言は止めて下さいよ!」
近衛「だが来年引退してもおかしくないくらいの年数だからな」
鳥海「その時はミスターホークスの俺が優勝させてやりますよ!」
近衛「タイトル獲っただけあって大きく出たな!」
鳥海「2代目ミスターホークスの鳥海新之助が頑張ります!」
海藤「ミスターホークスは譲らないのね」
近衛「今年はチームでただ1人ベストナインとゴールデングラブ賞も獲ったからな。ただ打撃の三部門でのタイトルはまだないのとMVPが問題だな」
御堂「MVPと言うと……近衛さんは獲ってましたね」
近衛「優勝はしてないがな。この歳で二冠王と言うのが球史に残ると言う事でもらったな。それに引退を考えてたからタイトルを獲れたんだと思ってる」
御堂「引退ですか?」
近衛「南海が亡くなった年だったからな。今の監督はそれで引退を決意したらしいし俺もとな」
堀内監督「と言ってもタイトル獲ったバッターは新球団に必要って事で俺達が推薦したんだよ!」
近衛「お前はあっさりと引退したな」
堀内監督「飛距離が出なくなったら長距離打者としては失格だろう。球団もなくなるし引き際としてちょうど良いと思ったんだよ。まさか初代の監督になるとは思わなかったけどな」
近衛「まあ知った顔ばかりだし球団名が変わっただけでほとんど変わってないけどな」
堀内監督「移動の多い仕事だし地元が変わっただけだしな。ま、チーム状況も変わらないと情けない限りだが」
海藤「うっ!?」
川崎「堀内さんだって他人の事言えないでしょう?」
堀内監督「まあな。今年も投手中心に指名する事になるだろうな。本命は大学野球の怪物投手伴だが競合になるだろうしな」
近衛「今年は良い大卒選手が多いしクジを外しても良い選手が入るだろう」
川崎「昨年は御堂って大物を単独で指名できましたけどね」
堀内監督「神代を筆頭に良い野手が多かったせいか投手は単独指名が多かったな。正直御堂も即戦力と言われて獲ったが3年くらいしてから戦力になってくれれば良いなと思って獲ったからな」
御堂「まあ高卒選手は即戦力と言うより将来性を重視しての指名ですからね」
堀内監督「実際即戦力筆頭の神代は1軍で相当揉まれたからな」
近衛「それでも来年はタイトル獲るだろうと噂されているし評価は高いがな」
堀内監督「まあな。とにかく今年のシーズンはお疲れ様だ。来年のシーズンに向かって各自頑張ってくれ!」
御堂(来年こそ!)

こうして御堂は新人王を獲得し年俸もUPしたくさんの人に感謝されたがチームの雰囲気はいまだに変わってないと思い来年も頑張って変えて行こうと思いながら2年目を迎えるのだった。