第5章 新たなる仲間と未来の仲間達

−1993年 12月−
3年目は無冠だったがチーム唯一の2ケタ勝利など御堂は今年も成長した姿を見せるのだった。
御堂「今年もなんとか終わったけど、あの悪夢は忘れられそうもないな」
海藤「まだ気にしてたのかよ! まあ年俸もUPしたし良かったじゃないか」

御堂の総合成績は投手陣の中でも抜けており特に防御率2.11、10勝5敗は崩壊した投手陣の中でもかなり高く評価された。
御堂「海藤さんも昨年ほど打てなかったけど、出番は昨年よりも多かったし年俸もUPしたし良かったじゃないですか」
海藤「まあな。鳥海さんも今年は悪かったとお前以外みんな良いところなかった気もするな」
近衛「まあそこは来年期待だな!」
御堂「近衛さん!?」海藤「近衛隊長つうか団長!?」
近衛「お前も稀に意味不明な事言うよなーとにかく俺も引退だ。来年から解説になるしバンバンお前らの話をしてやるからな!」
海藤「解説っすか、今年の成績なら来年も頑張れると思うんですが?」
御堂「今年1年、近衛さんと戦う事で結構刺激になったのに」
近衛「あれだけ抑えといて良く言うよ。ま、有終の美を飾れたし悪くない1年だったよ。シリーズで勝てなかったのが心残りと言えば心残りだけど、まあそこは来年のあいつらに託すさ!」
御堂「こっちも負けません!」海藤「負けん!」
近衛「それはあいつらに言ってくれ。即戦力の葛城にフリーエージェントの青葉に丸井と確かに来年は優勝候補になりそうだな」
海藤「他球団からの移籍が多いんですよね。しかも大物が2人とやっぱりうちって金持ちですよね」
近衛「個人的にはあいつらがタイトル獲って優勝するところを見たかったけどな。まあこれもプロ野球だな」
御堂「近衛さんに取ってはどっちも大事なチームなんですね」
近衛「当然だろう。1年とは言え俺に取っては大事なチームメイトだ。全員の活躍を楽しみにしてるぜ!」
海藤「近衛さんらしいっちゃらしいな」
近衛「おう! お前らはまだまだ若いしタイトル獲ったり優勝したりするのを気長に待っているぜ!」

こうして大先輩であり尊敬する先人も引退して行くのだった。そして去る者がいれば来る者もいると言う事で新たなるメンバーも入って来た。
葛城「さすがはプロですね。レベルが高いや」

カキ―――ン!
大友「いきなりプロレベルのバッティングしてる奴の言うセリフじゃないけどな!?」
葛城「大友さんに言われるとは光栄ですね」
大友(数年後にはこいつが4番に座りそうだな)

タッタッタッ!
笹川「こんなに足が速いのになんで一番評価が低かったんですか?」
秋月「バッティングがダメだからさ。まずは2軍からだろうしゆっくりやって行こう」
笹川「お供します!」

丸井「ルーキーは初々しいですね」
青葉「1年目と言うなら俺達も一緒だろう」
丸井「そうですね」
青葉「しかし弱小と聞いていたがなかなか面白そうな選手が多そうだ」

カキ―――ン!
アルベルト「良い感じだ!」

海藤「逆方向に強い打球を打つ外国人選手ってのも珍しいよな」
御堂「外国人選手のパワーヒッターではあまり見ませんね。それよりメジャーでタイトル獲ったバッターが来ると言う方が珍しいですよ」
海藤「…………衰えてると言ってもタイトル獲った選手があっさりとこっちに来るとはメジャーはよっぽど厳しいんだろうな」
御堂「そうでしょうね」
海藤「しかしスタメンも一気に変わりそうだな」
御堂「さすがに1年目から全員がレギュラーになるとは思えませんが数年後にはそうなるかも知れませんね」
海藤「強くなるのは歓迎だがポジションを奪われるのは嫌だな」
御堂「そうならない為にも練習です!」
海藤「負けないぞ!」

シーズンも始まり今年のダイエーは強くAクラス入りも強く望まれた。そして一気に7月に飛び今年のダイエーはAクラス争いに加わっている。

福岡ダイエーホークス
御堂「相手の先発は椎名さんですか?」
海藤「もったいないよなー」
笹川「苦手な御堂さん相手ですが王者だけあって敗北は認められないって奴ですか!」
鳥海「椎名さんか、今年も調子は良いし要注意だな」
大友「ああ。しかし今年の俺達ならやれる!」
葛城「はい!」
アルベルト「ふふん〜♪」
丸井「俺も今日はスタメンか」
青葉(今日は変わったオーダーだな?)

西武ライオンズ
浪川「今日こそ決着を」
御影「相手は相性の悪い御堂だがチームとしてはうちの方が格上だ」

対戦成績で言えば西武は何年もダイエーに勝ち越している。しかし御堂が登板している試合では勝率が悪いと優勝に向けてはやっかいな相手らしい。
浪川「最後まで言わせてくれないとは」
中村監督「ちなみに今日の先発は椎名だ」
御影「知ってますよ!」
浪川「それより4番だった俺が6番と言う屈辱は!?」
中村監督「いまさらだが、言うまでもなく実力主義だ! まあそれを言うなら草薙を4番にしても良いんだがな?」
柳生「全力で叩き潰します!」
草薙「しかし相手は勝率の悪い御堂さんですからね」
浪川「苦手意識なんぞ! ここで勝って塗り替えてやる!」
椎名「しかし新顔の大半が活躍してると相手も強豪になって来たな」
東雲「確かに今年は強いですね」

−1994年公式戦 福岡ドーム−
鳥海 新之助
後攻 先攻
VS
東雲 暴
笹川 真吾 双見 禅次
DH アルベルト 備前 吉安
大友 勇輝 柳生 雷蔵
青葉 棗 草薙 刃
葛城 紅葉 浪川 哲哉
高杉 充 ハイルマン
丸井 小鉄 高野 稔 DH
海藤 知也 垂山 合
御堂 誠人 椎名 隆晴

放送席
類「7月も半ばとなった試合ですが今日のオーダーは少し変わっていてダイエーのスタメンには丸井、海藤、西武のスタメンには高野となっております」
近衛「海藤も丸井も調子が上がったんでしょう。特に海藤は久し振りの1軍入りですから注目ですよ。それと高野は代打が多くスタメンは今年初めてでしたかね?」
類「と言うほど今年は珍しい事ですね。先発は今年好調のこの二人となっております。解説はご存知お馴染みのミスターホークス近衛正義さんです!」
近衛「御堂は例年と違って防御率が高いですがそれでも良い成績で若くもダイエーのエースと言われるだけはありますね。椎名は意外と投球回数が少ないですが防御率も勝数も良いとベテランならではの投球術を見せてますね!」
類「エース同士の対戦とは言えませんが椎名もエースの御影に負けないピッチャーですし面白い投げ合いになりそうですね!」
近衛「まあ御影が出て来る前はずっとエースと呼ばれてましたからね。近年は衰えていると言われてますがそれでも2ケタ勝てるんですから十分戦力ですよ!」

1回表 ダイエー0−0西武 先発は投球回数チームトップの御堂!
海藤「久々の1軍戦だ。今日は勝つぞ!」
御堂(調子悪くてもこの人はいつも通りだな)

ガキッ!
東雲「相変わらず速いっ!?」

類「チーム打率トップの東雲ですがストレートにタイミングが合わずショートゴロに終わります!」
近衛「1回から150キロとルーキーの頃に比べて球速も上がってますね」

御堂(次は双見さんとほんとーに西武は人材が豊富だよねー)
双見(御堂も4年目とプロ野球選手らしくなったな。ま、御堂神人さんの息子だし当然と言えば当然なのかね?)

ククッ!
類「巧打者の双見ですが最後はシュートを空振り三振に終わります!」
近衛「言うまでもないですが御堂は全ての面でバランスの取れている選手で欠点はありません」
類「しかし今年は防御率が悪いですよね?」
近衛「そこが不思議なんですよね?」

御堂(次は備前さんと本当に巧打者が多いなー)

ガキッ!
備前「面倒なコースに投げて来たな」

類「最後はストレートを打ち上げてキャッチャーフライに終わります。相変わらず立ち上がりは良いですね!」
近衛「151キロと今日も初回から調子は良いし攻略は難しそうですね」

海藤「さすがはナイスリードだよな!」
御堂「数ヶ月振りにバッテリー組みましたけど、本当に変わってませんね?」
海藤「これでも3割打者だからな!」
御堂「打数は少ないですけどね」
海藤「大丈夫、大丈夫、今日活躍すれば問題ないし!」

1回裏 ダイエー0−0西武 御堂は今日も好調であっさりと三者凡退に抑えた!
椎名「ふう」
鳥海「俺もベテランだけど、椎名さんは大ベテランなんだよなーまだまだ俺も頑張らないとな!」

ガキッ!
類「昔と比べて球速は落ちてますけどコントロールは昔以上ですね。おっと、鳥海は高速スライダーを打ち上げてあっさりと1アウトです!」
近衛「確かに昔ほど150キロは出なくなりましたね。まあそれでも十分な力を今でも持ってますけど」

椎名「次はルーキーの笹川か、正直苦手なタイプだが」

カキ―――ン! パシッ!
東雲「ふう」
笹川「あれを捕るとはさすがは東雲さん!?」

類「二遊間を抜けるかと思いましたが東雲が追い着いて2アウトです!」
近衛「相変わらず足の速さと肩の強さは日本人離れしてますね。これでエラーが少なくなればゴールデングラブ賞も獲れると思うんですがね」

アルベルト「打たせてもらいますよ!」
椎名「日本語喋る外国人選手ってのも珍しいよな」

カキ―――ン!
類「入った! これで11本塁打と強打者ではありませんがここ福岡ドームでホームラン打てるだけでも凄いですよね!」
近衛「球場の広さだけでなくフェンスも高いですからね。4番の責任は重大ですかね」

椎名「やってくれる」

スト―――ン!
大友「速く落として来たか」

類「4番の大友ですがSFFを空振り三振とやっぱり打ちにくそうですね」
近衛「まあ大友は三振が多いですからね。しかし9年連続30本打ってるだけあって長打力の高さは間違いなくリーグでも上位でしょう!」
類「しかしオーダー観てて思いましたが大友も丸井も元のチームにいたんですよね」
近衛「私もダイエーから西武に移籍しましたしチーム同士の縁はありますね」
類「ふむ。西武のオーダーは全員自チームで鍛え上げたと育成の差なんですかね?」
近衛「まあ育成と言うより精神面の差ですかね。少なくともダイエーのスタメンとベンチでは結構差がありますからね」
類「噂の大友のカリスマが今年は良いふうに出てるんでしょうか?」
近衛「そうだと思いますよ。私がチームにいた頃に比べて勝利への意識と言うのかなが強くなっている感じがしますからそう言う意味じゃ私の移籍はチームに取って良い物でしたね」
類「なるほど…………それで試合ですが1回が終わりましてアルベルトの一振りでダイエーが速くも1点先制します!」
近衛「西武打線は12球団一の力ですから1点だけではまだまだ分かりませんよ」

備前「思ったより伸びて入りましたがこれから調子を上げれば問題なく抑えられる相手ですよ!」
椎名「そうでもないな」
備前「そうですか?」
椎名「相手も俺と同じく大ベテランだが俺より若いし余力は俺以上に残してるだろうな。決して油断はできんよ!」
備前「分かりました。しかし次の青葉さんにも警戒は必要です!」
椎名「ああ。あいつとはロッテ時代に何度も戦った一番やっかいな相手だ!」
備前「三冠王3回の生きた伝説ですからね!」

2回表 ダイエー1−0西武 アルベルトの一振りで早くもダイエーが1点先制する!
御堂(ここからは昨年の3割30本トリオと…………いや浪川は違ったっけ?)

ズバ―――ン!
柳生「手が出ねえよ!?」

類「152キロのストレートを見逃し三振っとあっさり終わりましたね!」
近衛「あのコースをこの速度じゃ手が出なくても仕方ありませんよ。しかし父親に似てコントロールは抜群ですね!」
類「父親である御堂神人選手は投手四冠も獲得した球史に残る大投手ですが御堂も負けずに投手四冠を獲得できるでしょうか?」
近衛「それは分かりませんが可能性はあると思いますよ。それだけの才能はあると思ってます!」

草薙(追い込まれるとやっかいと言いたいけど、この人は追い込まれなくてもやっかいだからな!)
御堂(一番やっかいなのはこの草薙かな。振り遅れてもスタンドまで飛ばして来るし)

ガキッ!
類「これは逆方向で鳥海がキャッチして2アウトですね」
近衛「やっぱり伸びませんねまあ伸びてもこの球場じゃスタンドは難しいですけど」

浪川「行くぞ。御堂!」
御堂(言ったら悪いけど、浪川相手は楽だな!)

カキ―――ン!
御堂&浪川「へ?」

類「信じられませんがレフトスタンドに叩き込みましたね。あそこの看板に当たったと言う事は150mは飛んだんじゃないですか?」
近衛「御堂とは相性最悪でしたしひょっとして御堂から初めてホームラン打ったんですかね?」
類「えっと飛距離は恐らく155mと記録ではありませんが…………いえ福岡ドームでは最長飛距離となっています。そして浪川VS御堂ですが通算打率はいまだに1割台ですがホームランはこれで2本となっていますね。ちなみにアマチュア時代のデータはありません」
近衛「4年で2本か、あいつ100本以上ホームラン打ってるのに御堂からは2本か、やっぱり相性悪そうですね」
類「通算打率1割台と言ったら分かりそうなもんですが、しかし父親と比べると打率は低いですね」
近衛「まあ調子に波がある奴ですから天才肌なタイプなんでしょう」

浪川「はっはっは、俺に勝とうなんざ100年速いぜ!」
海藤「見事に調子に乗せたな」
御堂「すみません。正直、相性が良いんで油断してました」
海藤「そこは俺もだから気にすんな!」
御堂(ダメだ! あなたはもう少し気にして下さいって言いたいところだけど僕に言う資格はないよ!)

ククッ!
ハイルマン「ぬぉっ!?」

類「浪川の一発には驚きましたが続くハイルマンはカーブを見逃し三振とやはり御堂の調子は良さそうです!」
近衛「浪川に投げた球はあまかったですがハイルマンには良いコースに投げてますから浪川に対して油断してただけですね」
類「とにかく同点弾とホームランの出にくい球場ですが今日は早くも2本と面白い展開になって来ました!」
近衛「確かに意外な展開ですね。しかし今日の先発から連打は難しいでしょうから理想的な点の取り方かも知れませんね」

海藤「意外に落ち着いてるな?」
御堂「まだ始まったばかりですし同点ですからこれからですよ!」
海藤「まあ俺も3割打ってるからな。打順が来たら見事に打ってやるよ!」
御堂(今年はずっとこのネタが続くのかな?)

4回裏 ダイエー1−1西武 点差は変わらず椎名はトップの笹川をいきなり歩かせてしまう!
類「粘ってフォアボールとドラフト下位とは思えない技術を笹川が見せます!」
近衛「今年のルーキーは当たりが多いですね。ダイエーはもっと強くなれますよ!」

アルベルト「むん!」

カキ―――ン!
椎名「っ!?」

類「また逆方向、また行ったかと思いましたがレフトの垂山が追い着いてキャッチし1アウトです!」
近衛「やっぱり福岡ドームは広いですね。言っては悪いかも知れませんが1回のあれが不思議な出来事だったんですよ」

椎名「ふう、なんとか捕ってくれて助かったな」

ガキッ!
大友「本当に嫌なコースに投げて来るな」

類「大友は高めのストレートを打ち上げてキャッチャーフライに終わります!」
近衛「148キロと球速も結構出てるしボール球でもつい振ってしまいますね。まあ4番が振って良いボールではありませんが」

青葉(さてと最初はボールから慎重に入って来るだろうし狙うなら)

カキ―――ン!
椎名「簡単に合わせてくれるな!」

類「センター前に綺麗に打って2アウトランナー1、2塁となりました!」
近衛「カウントを稼ぎに来た高速スライダーを綺麗に打ちましたね。長打力を捨てれば4割も狙えるかも知れませんよ」
類「今年は4割打っている人もいましたけどね」
近衛「久住ですか…………確かにあれは異常な活躍ですね。もう4割ではありませんが」

椎名「ここで当たってるルーキーか」

ククッ!
葛城「スローカーブ!?」

類「最後は完全にタイミングを外されて空振り三振!」
近衛「タイミングもですが変化も大きいですからなかなか打てませんよ」
類「さすがは経験者ですね」
近衛「打てた時もありましたよ!」

備前「やっぱり青葉さんは要注意ですね」
椎名「2アウトでシングルなら上出来だな。しかし一発狙われると怖くはあるな」
備前「確実性は大友さん以上ですからね。長打力は……2人とも衰えているから判断は難しいですがそれでも年間30本は打てるバッターですから」
椎名「分かってる。慎重に行くさ!」
備前(しかし長打を狙わなかったのは意外だったな?)

5回表 ダイエー1−1西武 椎名はベテランの意地か失点の許さないピッチングを見せる!
御堂(椎名さんはさすがだな。これは本当に1点が試合を決めるかも知れない)

ククッ
草薙「くそっ!」

類「今シーズンも絶好調の草薙ですがスライダーを振らされて三振と言う結果に終わります!」
近衛「まだプロ2年目と若いですからね。実力は御堂の方がまだ上でしょうね」

御堂(次は浪川か、今日のあいつは調子が良さそうだし今度は慎重に行こう!)
浪川(今日こそ俺の勝ちだ!)

カキ―――ン!
御堂「嘘っ!?」

類「追い込んで決めに来た抜群のカーブでしたが完全にとらえられた! 打球はレフトスタンドに入る勝ち越し弾となりました!」
近衛「そう言えば浪川って低めに強いんですよね。しかしまあ、あの変化量のカーブを綺麗に打てるもんですね!?」
類「ちなみにここ福岡ドームでの1選手2本塁打は新記録です」
近衛「そうでしたっけ?」
類「はい!」

浪川「はっはっは、ついに来たぜ! 俺の時代が!」
御堂「ぼけ〜」
海藤「声に出すほどショックなのか!?(はっ!?ひょっとして俺の1軍復帰もこれで終わりなのか!?)」
御堂「っとパニックになってる場合じゃなかった!」

ズバ―――ン!
ハイルマン「全然調子落としてないな」

類「149キロのストレートに手が出ず見逃し三振!」
近衛「さすがはエースですね。ショックを受けるどころかますます調子を上げて来ましたよ!」

御堂「最後もこれで!」

ズバ―――ン!
高野「くそっ!」

類「高野も150キロのストレートを空振り三振とホームランを打たれてからは全て三振に抑えました!」
近衛「今年は例年に比べて奪三振が少ないですがここから観るとそうは思えないピッチングを見せますね!」
類「この回、意外か浪川の一発で西武が勝ち越しましたがこれで終わるのでしょうか?」
近衛「今日の椎名から取れるのは1点か2点ですかね。まあ今年の椎名は完投なかったと思うので7回くらいで交代かも知れませんが」

海藤「さすがは御堂だな。俺は信じてたぜ!」
御堂「そう言えば海藤さん、打たれたのにマウンドに来ませんでしたね?」
海藤「お前を信じてたのさ!(やば〜自分の心配してて行くの忘れたなんて監督にバレたらまた2軍に戻されるとこだったぜ!?)」
御堂「ま、別に良いですけどね」

7回裏 ダイエー1−2西武 御堂は浪川以外は完全に抑えていると言う見事なピッチングをしている!
備前「試合が拮抗している以上監督も代えにくいみたいですね」
椎名「それでもこの回で交代だな」
備前「?」
椎名「スタミナが持ちそうもないって事だ!」
備前「なるほど、ならここで今日一番のピッチングをお願いしますよ!」
椎名(まったく可愛げのない奴だ。まあだからこそライオンズ黄金期の司令塔と呼ばれる選手な訳だが!)

スト―――ン!
大友「今日良いところなしかよ!?」

類「SFFを空振り三振と完全にボール球なのにあっさりと振ってますね!」
近衛「まああいつは昔からそう言うところがありますから」

青葉(ここで大きいのはいらない!)

カキ―――ン!
椎名「またか!?」

類「ストレートをあっさりと打って1アウトランナー1塁です!」
近衛「やっぱり長打捨てたら4割打てそうな気がしますね」

葛城「俺が大友さんや青葉さんの後を継ぐんだ!」

カキ―――ン!
椎名「……やられたな」

類「145キロのストレートですが厳しいコースに合わせて打球はレフトスタンドに入った―――! ここでルーキーの葛城が意地を見せました!」
近衛「さすがは未来の4番と呼ばれるだけはありますね。椎名も疲労があるとは言え良く打ちましたよ!」
類「そして椎名はここで降板らしく代わって左の園川がマウンドに向かいます!」
近衛「接戦ですからね。当然ですが1点勝ち越しされたくらいじゃ諦めませんよ!」

園川「ふっ!」

ククッ!
高杉「むっ!?」

類「相変わらず厳しいコースに決めて見逃し三振と今年の園川は奪三振が多いですよね」
近衛「あいつの武器はコントロールですからね。長イニングになるとコントロールも乱れますが中継ぎや抑えなら十分に通用しますよ。しかし古巣の選手が移籍したチームで活躍するのを観るともったいないと思っちゃいますね!」

園川「こいつで終わらす!」

ガキッ!
丸井「右打者でもこのカーブはやっかいだな」

類「最後はカーブを引っかけてファーストゴロとあっさりと終わりました!」
近衛「最後は園川らしく打たせて捕るピッチングでしたね!」
類「幸運な要素はなかったですがラッキーセブンらしくあっさりと逆転しましたね」
近衛「確かにあれは実力でしょう。現在新人王に近いのは青木(オリックス)ですが長打力は負けていませんよ。それと今年のルーキーも活躍してる選手が多いですよね」
類「パリーグは特にですね。現在タイトルトップの青木(オリックス)が一番確立高そうですが3割打者も結構多いしピッチャーで活躍している選手も多いと今年は新人王争いにも注目です!」
近衛「西武で活躍してるのはドラ1くらいですがダイエーは多いですよね」

椎名「ナイスピッチング!」
園川「あ、ありがとうございます」
備前「後は逆転するだけですね」
椎名「次の浪川が打っても同点だからまずは同点だな。どっちにしろもう俺の出番はないし後は頼む!」
備前&園川「はい!!」

8回表 ダイエー3−2西武 ルーキー葛城の見事な一振りで一気に流れを変えたダイエーだがこのまま終わるのだろうか?
御堂「さすがにこれ以上の失点は許されないな!」
浪川「来い御堂!」

ズバ―――ン!
類「期待の浪川でしたがあっさりと空振り三振で終わりました!」
近衛「期待されてただけに観客もため息吐いてますね」

浪川「結局俺は御堂に勝てないのか!?」
御堂(ホームラン2本打って負けと言うのも変だと思うけど?)

ガキッ!
ハイルマン「この球場、広過ぎるよ!?」

類「レフト方向に伸びて行きましたがスタンドには届かず高杉が追い着いて2アウトです!」
近衛「この球場でホームランは難しそうですねまあ今日は1人で2本塁打の選手もいますけど」

御堂「ふっ!」

ズバ―――ン!
高野「またか!?」

類「最後は147キロ、低めボール球を振らされて今日は14奪三振ですね!」
近衛「やっぱり今日は奪三振が多いですね。しかし四死球ゼロでヒット2本と言うピッチングですから調子良くて当然なのかな?」

海藤「峠は越えた後は抑えるだけだな!」
御堂「今日2失点の僕が言うのもなんですが海藤さんもノーヒットと良くない結果だし打席に集中した方が良いんじゃないですか?」
海藤「ふっ、3割打者の俺に任せとけ!」
御堂「いえ。ノーヒットなんで2割に落ちてます」
海藤「げっ!?」

8回裏 ダイエー3−2西武 今日当たっていない海藤からの打席!
園川(シュッ!)

ガキッ!
海藤「終わった!?」

類「140キロのストレートでしたがピッチャーゴロに倒れ1アウトです!」
近衛「ボール球をあっさりと凡退と完全に打たされましたね」

園川(シュッ!)

ガキッ!
鳥海(1回で合わすのはやっぱり厳しいな)

類「鳥海は打ち上げてセンターフライです。やっぱり元チームメイトだけあって打ちづらいんでしょうか?」
近衛「まったくないって訳じゃないでしょうが、やっぱり園川が良い投手ってのが一番の理由でしょうね」

園川(次が一番やっかいだな!)

ガキッ!
笹川「打ちにくいな」

類「笹川も粘りましたが最後はサードゴロに終わります!」
近衛「あっさり三者凡退とやっぱり打ちにくそうですね」
類「8回も終わって試合は3対2でダイエーがリードしております。これで終わるのでしょうか?」
近衛「御堂が登板してる試合で負けるとこれからが痛いですし意地でも勝ちを狙うでしょうが西武打線も強力ですからね」

園川「俺の出番はこれで終わりだな。後は頼む!」
備前「同点の場合は続投もあるかと」
園川「その可能性もあったか、まあ同点より逆転を頼む!」
備前「まあ頑張って見ます」
園川(こりゃ長打を狙うつもりはないな)

9回表 ダイエー3−2西武 試合もついに9回、ここで終わるのだろうか?
御堂(勝利まで後3人!)

ククッ!
垂山「手が出ん!?」

類「最後は低めのカーブを見逃し三振!」
近衛「ああコーナー付かれたらなかなか打てませんよね。やっぱり御堂の一番の武器はコントロールかな?」

御堂(次は東雲か、調子に乗せると怖いし最後もきっちりと抑えるぞ!)

ズバ―――ン!
東雲「速っ!?」

類「最後は150キロのストレートを空振り三振と後1人まで追い込みました!」
近衛「9回で150キロですか、やっぱりスタミナはかなり上がってますね!」
類「まあ勝てるピッチャーも少ないですから完投も多くなってるんでしょうね」
近衛「今年は守護神の川崎も調子が悪いですからよけいに御堂に頼るようになったんですかね」

御堂(ラスト!)

ガキッ!
双見「終わってしまった」

類「最後はショートゴロですね。シュートも速い速度で変化するから凡退しやすいと、とにかく試合終了です!」
近衛「2失点とは言え無四球被安打2本と文句ない結果でしたね!」
類「しかし西武優勢と思えた試合でしたが結局は相性悪く御堂の勝利でしたね」
近衛「まあ完投した御堂もヒーローですが逆転2ラン打った葛城のバッティングが忘れられませんね」
類「今日のヒーローはやはりその二人のようですね」
近衛「未来のエースと言うか現在もエースですがそれと未来の4番ですね。頼もしい選手達ですし今年こそ優勝して欲しい物です!」

浪川「御堂! 今日の借りは返す!」
御堂(もう何度も聞いてるせいかすっかり定番なセリフになってるな。しかし今日は僕の負けな気もするんだけど、不思議と負けた気分にならないな)

個人での勝敗はともかく御堂が登板して西武に負ける事は少なく御堂は西武に苦手と言う意識はないせいか敗北感と言う物は感じないらしい。
海藤「聞いてくれ!」
御堂「どうしたんですか?」
海藤「明日からスタメンではないけど、1軍でもう少し頑張って欲しいとコーチに言われた!」
御堂(それ喜んで良い事なのかな?)

今年のシーズンではダイエーも頑張ったが結局は4位と言う結果に終わった。御堂はエースとして活躍し父親ほどではないが早くも通算50勝を達成した。

福岡ダイエーホークス選手寮
海藤「4割打者の海藤様だぜ!」
御堂「4割と言っても20試合くらいしか出場してませんけどね」
海藤「もっぱら代打生活なシーズンだったな。ほとんど2軍だったし」
御堂「まあ結構チャンス時には打ってましたね」
海藤「来年は思い切って30本狙って見るかね!」
御堂「そうですか(まあ計算上は40本は行けそうな感じだけど)」
海藤「しかし御堂も50勝か、親父さんに負けないピッチャーになって来たんじゃないか?」
御堂「そう言われるのは嬉しいですけど、まだまだあの背中に追い着いた気はしませんね」
海藤「ふーん、それはそうと今年は一気に顔触れが変わったし来年はどうなるかな?」
御堂「秋月さんはスタメン獲りそうだし平井君は即戦力と言われてるし後は帰って来た豪田さんですか」
海藤「それだ! 鳥海さん出して豪田さんってうちの首脳陣も何を考えてるんだか?」
御堂「川崎さんも引退しましたしそれだけ投手陣が不足してるんですよ」
海藤「そして鳥海さんの代わりが秋月と平井って事だろう。どっちにしろ元々こっちのチームメイトを取り戻すのに今のチームメイトを差し出すとはっ!?」
御堂「まあトレードですから」
海藤「しかし平井か、あいつ本当に入って来るのか?」
御堂「まあ本命の球団ではないらしいですけど…………入って来る可能性は高いって言ってたし入って来るんじゃないですか?」
海藤「ふーん、しかし今年の大物は平井と八坂くらいしかいないから来年の新人王争いは今年ほど盛り上がりそうもないな」
御堂「まあ俺の時や今年みたいな争いなんて滅多にないでしょう?」
海藤「いや再来年は歴史上最高の争いになるかもと言われてるぜ!」
御堂「俺達も先輩として負けてられませんね!」
海藤「おう!」

今年の御堂は通算50勝を早くも達成したが他の選手が凄まじく活躍した為かそれほど話題には残らなかった。御堂はまだ来ぬ新人に負けないよう来年は更に活躍する事を胸に誓うのだった。