第6章 投手の最高峰四冠!

−1995年 2月−
御堂もプロ5年目のキャンプを迎えた。既に50勝を達成と弱小チームでは十分な活躍をしている。
堀内監督「いよいよ今年のキャンプも始まる訳だが生きの良いルーキーの紹介でもしようか」
平井「無明実業から来た平井豊(ひらいゆたか)です。開幕1軍を目指します!」
海藤「今年も生きの良いルーキーが入って来たよなってどうした?」
御堂「5年目になると選手の顔も変わって来るなと思いまして」
海藤「まあスタメンの顔も結構変わって来てるな。大友さんを慕って生きの良い人も多いしな」
豪田「ちなみに俺も帰って来たぜと言いたいところだが知らない顔が増えてるな?」
丸井「俺は知ってるだろう」
豪田「そりゃ1年は一緒でしたからね。しかし青葉さんもいるとは」
青葉「移籍する時に御堂の顔を思い出してな。弱小が常勝になるところを見れるかも知れないと思って移籍して来た。今年で2年目みたいな物だしお前の方が先輩だな」
豪田「いや2000本安打を達成していていまだに4番を打っている人に先輩と言われるのも」
青葉「そうか」
葛城「鳥海さんが出て行ってどうなるかと思いましたが代わりに平井も獲ったし今年は良いところまで行けそうですね」
大友「良いところまでじゃなく優勝目指すのみだ!」
アルベルト「どんどん仲間が増えて行きますね」
笹川「それがプロ野球って物です!」
秋月「今年はスタメンを奪う!」
海藤「確かに知らない人が多くなってるよな」
御堂「ですね」
堀内監督「ところで御堂?」
御堂「監督? どうしたんですか?」
堀内監督「昨年は惜しくもAクラスを逃した訳だがそれが悔しくて今年は思い切った手を打つ事にした!」
御堂「手ですか?」
堀内監督「勝てるピッチャーはお前しかいないからお前を多く登板させる。そして今年は投手四冠を獲得すると宣言させて客寄せも使う!」
御堂「まあプロ野球はファンあっての物だしパフォーマンスも分からなくはないんですが…………ちなみに中どれくらいで?」
堀内監督「基本的には中4日だ。さすがに連投はないが場合に寄っては中3日もある!」
御堂「その条件を呑めって言うんですか?」
堀内監督「無理強いはしない。実際コーチの反対は多いし場合に寄っては俺のクビも飛ぶだろうな。しかし優勝するにはこれくらい無茶しないと不可能だと思う!」
御堂「優勝ですか…………本当にその采配で優勝できるんですか?」
堀内監督「断言はできん! しかし可能性はある!」
御堂「分かりました!」
堀内監督「うむ!」

福岡ダイエーホークス選手寮
海藤「それでそんなアホな条件呑んだ訳だっ!?」
御堂「やっぱりアホですか?」
海藤「当然だろう! こんな事でエースが壊れたら球界から非難されまくりだろう!」
御堂「まあ身体の事は十分に気を付ける事になってますから」
海藤「まあ専属の医師も付くんだっけ?」
御堂「今年は投手四冠を目標と言われてますが20勝以上を目指すつもりです!」
海藤「お前1人で20勝なら優勝する可能性も高くなるけど」
御堂「まあ20勝するエースや最多勝のピッチャーがいてもチームが優勝していない事はざらにありますからね」
海藤「だよなー」
御堂「とにかく今シーズンはこれで行きます!」

実際この選択はアタリだかハズレだか分からないが御堂は5年目にして最高とも呼べるピッチングを見せて行った。

福岡ダイエーホークス
堀内「残念ながら既に優勝はなくなった。今日も消化試合だ。しかし誰もが御堂の記録を観たいが為か客は多い。来年の期待を裏切らないよう良いところを見せてやってくれ!」
海藤「無茶苦茶な登板と思ってたけど、案外良い方に向かったな」
御堂「結局、優勝は逃しましたけどね」
大友「しかし大記録は残っている。誰もがこの記録を観たいが為に集まっている。それだけでも頑張れるって物だ!」
海藤「しかも親子二代で達成となれば球史に残る記録になるよなー」
平井「もう四冠は決まったような物でしょう」
葛城「そうだな。それに今年は御堂のタイトルくらいしかファンに見せられないからな」
海藤「だとよ!」
御堂「そうでもないですよ。防御率や勝率は失点や敗戦で落ちますし勝数や奪三振もそれほど差はないですから」
青葉「確かにな。現在防御率は浅野(ロッテ)が1位だが1回を無失点にでも抑えれば同率になるし確定した物だろう!」
御堂「まあ9回を投げるとして1失点以内と厳しい条件でタイトル決まりますしやる気は出ますね!」
海藤「計算速いなーけど1回で同率なら2回投げて降板すれば良いんじゃありませんか!」
御堂「2回で無失点でも同率ですから最低でも2回と1/2ですね」
海藤「そうか」
青葉「それでお前は納得するのか?」
御堂「無理ですね。今日は9回を無失点……いえ完全試合のペースで行きますよ!」
海藤「ええっ―――!?」
大友「いまさら何を驚いてるんだ? 御堂がこう言うのはお前が誰よりも知ってるだろう!」
海藤「そりゃ知ってますけど、今年のような大記録は一生に一度あるかないかですしいくら御堂でも監督の指示通り降りるんじゃないかって思いますよ!」
青葉「まあ投手四冠を二度獲得した選手はいないからな」
大友「どっちにしろまだ定岡(日本ハム)の登板もあるし最多勝は確定と言ってもタイになる可能性もあるし監督なら単独で4つ獲って完勝しろと言うんじゃないか?」
海藤「うわっ、言いそう!?」
御堂(ま、言われたしね)
海藤「けど下手すれば今日の試合負けて最多勝はタイで防御率は浅野に負けて三冠で終わっちゃうんじゃ?」
御堂「不吉な事言わないで下さいよ! それにリードするのは海藤さんなんだからしっかりしてくれないと本当に困りますよ!」
海藤「お、おう…………なんなら今日だけお前がリードするか?」
青葉「そんな事言ってたら昨年みたいに2軍落ちだぞ!」
海藤「さあ御堂、この俺の指示に従えばお前の大記録も決まったもんだ! この俺について来い!」
御堂(凄く不安だ…………けど今年の成績は良いし信用はできるかな?)
秋月「今日で最後なのに重要な試合とは」
笹川「もう5位も確定なんですけどね」
アルベルト「今日も打ちますよ!」
秋月(アルベルトさんの成績は良くなかったからな)

西武ライオンズ
中村監督「今年も後少しで今日の相手は相性の悪い御堂だ!」
御影「このまま投手四冠なんざさせたくないし今日は打って打って勝とうぜ!」
浪川「おう!」
柳生「と言ってももう投手四冠は確実でしょう。せいぜい得点して防御率逃すのがやっとじゃないですか?」
東雲「まあ2点も取れば防御率のタイトル逃すのは確定した物ですからそれほど難しい条件じゃありませんよ!」
草薙「そうなの?」
双見「ああ。いくら相性が悪いと言ってもタイトル逃させるくらい訳ないだろう!」
備前「まあやったらやったで向こうのファンが無茶苦茶怒るでしょうね」
双見「こっちのファンは喜ぶから問題ない!」
備前(他球団のファンの大半は怒りそうな気もするけどな)
鳥海「しかし複雑な気持ちだぜ」
浪川「例えかつての仲間でも今日は親の仇のつもりでお願いします!」
鳥海「さすがにそこまで敵視は難しいがいつもの倍くらいの闘争心で頑張らせてもらうよ!」
御影「まあ勝敗も譲る気はないし打って守って完勝で行きましょう!」
全員「おう!!!」

−1995年公式戦 福岡ドーム−
秋月 百太郎
後攻 先攻
VS
東雲 暴
笹川 真吾 双見 禅次
平井 豊 備前 吉安
青葉 棗 柳生 雷蔵
葛城 紅葉 草薙 刃
大友 勇輝 浪川 哲哉
海藤 知也 ハイルマン DH
DH アルベルト 鳥海 新之助
加茂 史虎 垂山 合
御堂 誠人 御影 灯夜

放送席
類「福岡ダイエーホークス戦も今日で終わりとなります。今年は過去最高の成績をおさめた御堂が先発となります。西武ライオンズは今年は少し悪かったかエースの御影が先発ですが解説の川崎さんはどう思いますか?」
川崎「西武はまだ試合がありますが今年のダイエー戦はこれで終わりと残念ながらチーム順位は5位と残念な結果でしたね」
類「それより両先発についてお願いします!」
川崎「そうですね。御堂は過去最高の成績で今年は沢村賞も間違いない……いえ、ライアン(ヤクルト)も凄い成績だから分かりませんね。それと御影ですが今年は悪い癖が多く出ると残念な結果でしたね。まあそれでもエースクラスの実力とポテンシャルは凄かったですが」
類「ふむふむ。エース同士の投げ合いで面白くなる試合と言う事ですね」
川崎「まあそうですね(都合良く解釈されたかな?)」
類「ちなみに投手部門はほとんど御堂が独占しています」
川崎「防御率は浅野がトップですけどね。ただロッテは既に日程を終えてるので今日の御堂次第でタイトルが決まると浅野は今頃この試合を気にしてるでしょうね」
類「ちなみに打撃部門はほとんどオリックスなのでこの試合は関係ありません」
川崎「まあ打点とか結構差がありますからこの2球団じゃ手が届かないでしょうね。ホームランは柳生や草薙がひょっとしたら届くかもってところですかね」
類「ちなみにホームラン王は今年の新人王はまず間違いないと言われている八坂(ロッテ)がトップです! しかし昨年の新人王の青木も本塁打王を獲りましたし2年連続となると凄い記録ですね!」
川崎「しかも高卒ですからね。最近の高校レベルは本当に異常ですよ! しかも今年のドラフト候補は歴代最高の人材と言われてますし本当に凄いですね!」
類「それでは試合の始まりです! ちなみに御堂が投手四冠を獲る為には2回少しの登板になるので降板するとしても2回は投げる事になります」
川崎「まあ監督の事ですから行くだけ行かせて完投させる気がしますけどね。まあ完封なんか決めてタイトル獲ったら最高に格好良いですね!」
類「ちなみに川崎さんは100勝100セーブした偉大なピッチャーですがタイトル獲得はないです! では試合の始まりです!」
川崎「偉大と言われるのは光栄ですがタイトル獲得はないってのは余計ですよね!」

2回表 ダイエー0−0西武 この回を無失点に抑えれば御堂のタイトルは単独トップとなる!
御堂「ふう」

ガキッ!
柳生「今シーズン最高のピッチングかよ!?」

類「153キロのストレートと今日も速いですね! 結果はピッチャーゴロです!」
川崎「高校時代から10キロ近く速くなっていると遅めの成長期でしょうね。こう言うのもなんですが父親の若い頃に良く似ていますよ!」
類「父親である御堂神人選手も投手四冠を獲得しております。史上初の親子2代で投手四冠は達成するのでしょうか」
川崎「次を抑えれば投手四部門単独トップですね。次を抑えたら普通なら交代でしょうが……」

御堂「これで!」

ズバ―――ン!
草薙「くっ!?」

ワァ―――ン!
類「155キロのストレートを見逃し三振! そしてここでファンから凄まじい歓声と拍手です!」
川崎「大記録達成ですからね」

堀内監督(後も順調に抑えて行け!)

類「…………堀内監督は動きません。このまま続投のようです!」
川崎「やっぱりですか最低でも先発の責任回数の5回まで投げさせるのかと思いますがあの人の場合は9回まで投げさせるんでしょうね」

ファンA「おいおい、大丈夫なのかよ?」
ファンB「うーん」
ファンC「単独で全てのタイトル獲ってこその四冠だろう! ここで続投の采配は間違いなし!」
ファンD「そうかな?」

海藤(良くやった。このまま抑えて行くぞ!)
御堂(はい! ホームランだけはなんとしても打たれないようにしないと!)

カキ―――ン! パシッ!
浪川「くっ! 本当に広い球場だなっ!」

類「ライト方向に上がりましたが伸びずに平井がキャッチして3アウトチェンジです!」
川崎「やっぱり平井は良いですね。恐らく新人王は獲れないでしょうがルーキーとしては十分に活躍してますよ!」

平井「なんと言うか守りがいのある球場ですね」
御堂「来年もよろしく頼むよ!」
海藤「しかしうちの外野陣は俊足強肩と揃ってるよな!」
秋月「すまん」
海藤「いやいや守備範囲はお前が一番だろう。特にチームとしてお前や笹川みたいなタイプがいて本当に助かってるし!」
笹川「照れますな〜それはそうと先輩、記録達成おめでとうございます!」
御堂「おめでとうはまだ早いよ。次もバックを頼りにして投げるからよろしく頼むよ!」
笹川「AyeSir!」
御堂「アイサー?」

浪川「俺達、完全にヒールだよなー」
草薙「ヒール?」
浪川「まあ悪役って事だよ」
柳生「5連覇を達成した王者が悪役とはっ!?」
草薙「今年は負けましたけどね」
浪川「ええい! そんな事より投手四冠なんてさせてたまるか俺達のホームランで絶対阻止してやるぞ!」
草薙「それ失敗フラグじゃ?」
浪川「なんか言ったか!」
草薙「なんでもありません」

2回裏 ダイエー0−0西武 御堂は見事に記録を達成した。そして西武のエース御影はと言うと
御影「記録達成しても続投か……ふん! 良い度胸と誉めてやるさ。しかし勝敗は譲らん!」

スト―――ン!
青葉「ちっ!」

類「フォークを空振り三振と今日は珍しく立ち上がりが良いですね」
川崎「そうですね。コントロールも安定してるしこれは1点勝負になるかも……と言ったとたん崩れるのが御影と言うピッチャーですから断言はできませんね」

御影「ぬぉ―――!」

ズバ―――ン!
葛城「今シーズン最高のボールじゃないか!?」

類「154キロのストレートを空振り三振と今シーズン最速をこの試合で出しました!」
川崎「調子に乗らせれば乗らせるほど手が出なくなりますからこのままだと怖いですね!」

御影「秘技フォークボール!」

ガキッ!
大友「やっぱり重いな!?」

類「期待の大友でしたが153キロのストレートを打ち上げてライトフライに終わりました!」
川崎「大友も惑わされずにストレート狙ってたみたいですがこの広い球場だとスタンドまでは難しそうですね」

備前「まったく上手く行ったのは良いけど、今日の主審相手にああ言うのはやめとけよ。ただでさえコントロールが悪いのに」
御影「大丈夫ですよ! 今日の俺ならコントロールが乱れる事もありません!」
備前「そう言っていきなり崩れるのがお前だから信用はできんな」
御影「5年連続15勝を達成したエースなんですけどね」
備前「6年連続は無理だったし今年はプロ最低の数字だったしな」
御影「上げたテンション落とす事言わないで下さいよ!」
備前「事実だろう?」
御影「ええ! だからこそ最後くらいファンに良いピッチングを見せるつもりです!」
備前「それでこそエースだ! 今日の試合で失点はまずいし完封する気持ちで投げて行けよ!」
御影「完封? 狙うはノーヒットノーランですよ!」
備前「お前はそれで良い!」
御影「ちなみにそこで完全試合を何故狙わないのかとは聞いて来ないんですか?」
備前「聞いて欲しいのか?」
御影「聞かれたらテンション落ちそうなので聞きません!」
備前(だったら聞き返すなっての)

海藤「やっぱり重そうですね」
大友「重いだけでなく速いし今日はコントロールも良いからかなり手こずるぞ!」
秋月「御影さんは普段であれば結構好きなんですけどね今日の御影さんは嫌いです!」
海藤「正直な奴だな」
青葉「しかしあのタイプが一番嫌いなのが秋月みたいなタイプだからな」
海藤「確かに秋月が出たら足を警戒して崩れそうですね」
青葉「うちは足を使える選手が少ないし秋月や笹川みたいなタイプは貴重だな」
海藤「まあ監督の趣味ってくらい長距離砲が多いですからね」

試合はゼロ行進で進み両投手共に崩れる事はなく一気に9回へ進む。

9回表 ダイエー0−0西武 試合は荒れる事なく安定して進み試合も終わりに入ったが
類「9回に入りましたが試合は無失点で進んでおりますのでこの回も無得点なら延長と長くなる予定なんですが結構速い時間で進んでいますね?」
川崎「まあここまでヒットは少なく三振が多いと完封ペースで進んでいますからね。球数はそこそこ多いですけど2人共スタミナはあるし延長入っても続投でしょうね」
類「既に御堂は投手四冠は確定です。ここで2失点すれば防御率が2位になってしまいますが多分大丈夫でしょう!」
川崎「まあ打たれるとしても1失点ってとこですかね。ここまで来たら勝って欲しい気もしますが」
類「スタンドでは相変わらず御堂コールが続いてますが西武側では打て打てと言ってますね」
川崎「まあ記録はありませんがファンとしては来年を期待して今日の勝利を望むでしょうね」

海藤(残念ながら無得点じゃ試合は成立しない。しかし裏でサヨナラの可能性もあるし信じて投げて行こう!)
御堂(はい! 後はみんなを信じて全力で投げるだけだ!)

ズバ―――ン!
東雲「ダメだ!?」

類「最後は152キロのストレートで東雲は手が出ず見逃し三振に終わります! これで三振は13個目です!」
川崎「あれ? 思ってたより少ないですね?」

御堂(一気に終わらせるぞ!)

ズバ―――ン!
双見「9回でこの速さってのはきついな!?」

類「154キロのストレートを空振り三振! 衰える事のない球速でガンガン三振を奪って行きます!」
川崎「今年の御堂の投球回数は凄いですからね。2位ともかなり離れてるし今年は本当に凄い活躍でしたね!」

御堂(この人で終わりだ!)

ズバ―――ン!
備前(援護したくてもできないとはな)

類「最後は自己最速155キロのストレートで空振り三振とこの回の決め球は全てストレートでした!」
川崎「これで三振15個目と文句のないピッチングでしたね。後は裏でサヨナラで完璧な勝ち方なんですが」
類「はあ、不甲斐ない打線ですね」
川崎「そう言われると耳が痛いんですが、それだけ今日の御影が凄いって事もあるんですよね」

海藤「後は裏でサヨナラだぜ!」
御堂「期待しています!」
海藤「俺にまわるくらいならサヨナラだろうしあいつらに期待しようぜ!」
御堂「そうですね(当然な返答だけどなんか他人事みたいに聞こえるな?)」

東雲「やっぱり打てませんね」
双見「そうそう打てないよな」
備前「それはこっちも同じですから延長で勝ち越しましょう!」
双見「そうだな」

9回裏 ダイエー0−0西武 御堂は9回を無失点と見事なピッチングを続けるがいまだに試合は成立していない
御影「ふん!」

ズバ―――ン!
秋月「無理っ! 速過ぎて打てませんっ!?」

類「154キロのストレートを空振り三振と1アウトです! ちなみに三振は16個目です!」
川崎「本当に今日は良いピッチングをしますね。しかし16個ですか、やはり単純なボールの威力では御影の方が上と言う事ですかね?」

御影「ふん!」

スト―――ン!
笹川「またかっ!?」

類「三振の少ない笹川ですが今日は珍しく三振2個を奪われます!」
川崎「速度もですがあの落差じゃストレートかフォークのどちらかを狙わなければ三振になっても仕方ないですね!」
類「先発でここまで落ちるフォークを投げるタイプってのも珍しいんじゃないですか?」
川崎「フォークピッチャーってのは日本では結構多いですけど、落差では御影がトップでしょうね。速度だとロッテの望月ですが」
類「続くバッターは今日良いところのない平井です。新人王候補と呼ばれていますが御影にはまだ敵わないと言った感じですね。残念ながら打率も落ちて2割台となっています」
川崎「ここで打てば打率も3割に乗るんですがね」

御影(貴様で終わりだ! ここで終わらせて延長で勝ち越しを待つ!)
平井(御影さんか、球威は衰えてないし長打を狙うならフォークだな!)
御影(ぶっ飛べ!)

スト―――ン!
平井(落ちて来た! ここで真芯でとらえて見せる!)

カキ―――ン!
御影「おいっ!?」

類「これはライト方向…………大きいですが…………入った!? 劇的なサヨナラホームランで試合終了です!」
川崎「マジですか!? 最後の試合、最後の打席でサヨナラホームランって!?」
類「これで御堂の投手四冠も確定ですが平井もフル出場で3割19本70打点と文句のない成績で終わりました!」
川崎「今年は5位でしたが今日の試合は来年への期待大ってな試合でしたね。御堂もこれで23勝と5位のチームとは思えない大活躍でしたよ!」

平井「そうですね。自分としては不本意な成績だったんですけど、みなさんが喜んでくれるなら今年は頑張れたと思えます。しかし来年はもっと大活躍して見せますよ!」
御堂「僕のタイトルはほぼ確定であって他にも試合の残っているチームがあるんで不安もあるんですが今年は良くやれたと思っています!まあチーム順位だけが不本意な結末と何もかも上手くは行かないと勉強にもなりましたねしかし親子二代での獲得だと思うのでようやく父親の背中に追い着いたんだと嬉しくも思えるシーズンでした。来年も応援よろしくです!」

類「以上がヒーローインタビューと少し固い感じがしますね」
川崎「真面目なだけって気もしますが、来年も今年以上に頑張ると良いセリフでしたよ!」
類「まあダイエーファンには良い試合でしたね。私はどっちのファンでもないのでどうでも良いんですが」
川崎「そう言うコメントはやめましょうね」
類「ふっ、私はアマチュアのファンなのですよ!」
川崎「聞いてませんから!」

こうして御堂は完封勝利で投手四冠を獲得と大活躍をしたシーズンだったがチームは5位と残念な結果にも終わった。

福岡ダイエーホークス選手寮
御堂「はあ」
海藤「またため息かよ! 今年の最高のピッチャーとは思えないな。沢村賞も獲ったんだぞ!」
御堂「それは日本人ってだけじゃないんですか?」
海藤「いやいや、確かにライアンさんも凄かったけどよ。タイトル独占してお前の方が話題に残ってたしそりゃあの人は問題が多くてあまり良い印象を持たれなかったって理由もあるかも知れないけどよ。やっぱりお前が凄いから選ばれたんだよ。選ばれたと言えば平井は惜しかったな」
御堂「タイトル獲ったルーキーと比べられるとやっぱり落ちますからね」
海藤「そうだけどさ」

御堂はファンやチームメイトやライバルや家族からも称賛されまくったがやはりチームとして5位と言う結果には納得行かない為か気持ちは下向してしまったらしい。
平井「御堂さん?」
御堂「平井か、どうした?」
平井「そろそろ実家に戻るんでみなさんに挨拶しとこうと思いまして」
海藤「うんうん。今年は年俸も上がったし良い事ばっかりだったって感じだよな!」
平井「不満もありますが1年目としては頑張れたと思ってます。それもみなさんのおかげと」
海藤「そんなお世辞は良いさ。入団から苦労のあったお前だ。家族に会って安心させて来い!」
御堂「………………」
平井「はい! ところで御堂さんはどうしたんですか?」
御堂「いや、なんでもないよ!?」
海藤「なんか成績良くてもチームがBクラスってとこに責任感じてるんだってさ!」
平井「なるほど、まあエースとしての責任感から来てるんでしょうが今年はもう終わるんだし切り替えて家族報告した方が良いと思いますよ!」
御堂「そうだね」
平井「それに来年は手強い怪物が増えますから落ち込むより楽しみになりますよ!」
御堂「確かに!」
海藤(はあ、そう言うところは付いて行けないな)
平井「海藤さん、どうしたんですか?」
海藤「いや今年は大物外国人が多く入って来たとか色々あったと思ってな」
平井「ま、タイトル獲った人以外はあまり印象に残っていませんがね」
御堂「ライアンさんはやっぱり凄かったね」
平井「良くも悪くも話題性はありましたね」
海藤「まあな(トゲトゲしい口調は気のせいかな?)……そう言えば河島が外れて飯島が指名されたけど戦力になるかな?」
御堂「大卒の1位でピッチャーを良く指名してますけど、活躍してる選手ってのは少ないですからね」
平井「確かに御堂さんが23勝して5位で勝てないのは他の投手陣に問題がありますね」
海藤「ま、今年の御堂のローテで他のピッチャー達がペース崩したってのもありそうだけどな…………そう言えば来年も同じローテで行くのか?」
御堂「そう言えば聞いてませんね? まあ今年は良く休むように言われたし体調や調子次第ですかね?」
海藤「これで来年は大丈夫なのか?」
平井「今年は故障者が多かったし良く休めってのは来年の事を考えてじゃないですか?」
海藤「ま、そうかもな。しかし良い選手が入って来てもケガだったりスランプだったりろくな目に遭わないな」
平井「俺も高校でケガに泣いた選手を見て来ましたよ。大学や社会人で成長して欲しいとも思いましたけど、大半の人は進学や就職で野球を辞めて行きましたね」
海藤「世知辛い話だなま、俺達はこれで食ってんだ。なんとしても来年も良い成績で頑張らないとな!」
平井「そうですね!」
御堂(今年は沢村賞も獲得したし文句のない成績だったけど優勝はいまだに遠い。考えて見れば父さんも一度しか優勝してないんだよな。300勝投手でも一度だけしかも日本一の経験はないかプロって本当に厳しいよな)
海藤「どうした?」
御堂「いえ、来年こそ優勝しましょう!」
海藤「あ、ああ!」
平井(2年連続ベストナインを狙おうと思ってたけど、確かに狙うなら優勝しかないよな!)

御堂は投手四冠を獲得し歴史に名を残す記録を作る事となったがチームは5位と言う納得行かない結果に終わった。もはやタイトルよりも優勝のみを望み偉大な父親にも果たせなかった日本一を目指して行くのだった。