第1章 野球は楽しく

−1996年 12月−
ドラフト1位で指名された守屋秀人は1年目のシーズンで中継ぎのタイトルを獲るなど崩壊した投手陣の中でも頑張り年俸UPは当然と言うべきか一発サインで来年に向かって備えるのだった。
守屋「年俸も3倍近くになったし来年も頑張るぞ!」
竜崎「ご機嫌だな」
守屋「いやー1年目でタイトル獲れたなんて夢見たいですよ!」
竜崎「まあ1年目でタイトル獲って落ちて行く奴もいるから来年も気を抜かないようにな」
守屋「もちろんです! 今年は最下位でしたが竜崎さんやゴールデンルーキー石崎が入ったし来年は優勝ですよ!」
竜崎「そうだな!(来年でチームメイトと一緒にやれるのは最後になるかも知れないし確かに次は優勝を目指さないとな!)そう言えば守屋は実家に帰るのか?」
守屋「はい。プロで頑張れたのも母のおかげですし母に無事シーズンを過ごせたと報告しに行かないと」
竜崎「そうか、お袋さんを大事にな!」
守屋「はい!」
竜崎(母親か……小次郎にこっそり会いに行くか)

守屋の実家
守屋「お金があるんだしもっとマシなところに引越せば良いのになと思うんだけど」
優子「それもそうなんだけどね。やっぱり長年住んでいると愛着もあるからね」
守屋「ま、確かにね」
優子「それはそうとタイトル獲得おめでとう。秀人もすっかりプロ野球選手ね!」
守屋「ははっ、1年目は出来すぎだったね。まあコーチにはもう少し安定感があると助かるって言われたけど」
優子「それはそうとお帰り!」
守屋「(独特のテンポだな)とにかくただいま母さん!」

それから先は実家でのんびりと過ごして行きある日と言うか翌日に守屋に取って良い事か悪い事か分からない話が来るのだった。
優子「と言う訳で母校から是非講演会をして欲しいって話が来てるんだけど?」
守屋「母校からって3年間補欠だった僕に何を話せと?」
優子「別に高校時代でなくて社会人とかプロとか幼少時とか何でも良いんじゃないの?」
守屋「いやいや、そんないい加減な」
優子「とにかく母校から話が来てるのは本当よ。どうするの?」
守屋「うーん?」
優子「そんなに悩むなら相談したらどう?」
守屋「母さんはどうせ出た方が良いって言うんだろう」
優子「本気で嫌なら無理強いはしないけどね。でも悩むくらいなら出た方が良いと思うし、そうだ。夏輝君に相談したらどう?」
守屋「芹沢先輩帰って来てんの?」
優子「オフなんだから当然でしょう」

芹沢夏樹は巨人の抑えとして活躍している。高校では離れる事となったが守屋の幼少時からの先輩にあたりプロでも何度か対戦した事もあり同郷出身として今でも仲は良かった。
芹沢「そこで俺の出番って事だな!」
守屋「相変わらずマウンドと私生活では別人のような顔ですね」
芹沢「マウンドでは二枚目の俺も普段では三枚目と言う話だ」
守屋「そこまでは言ってませんが」
芹沢「とにかく講演会だったな。出たら良いじゃないか!」
守屋「他人事だと思って簡単に言ってくれますね?」
芹沢「そもそも向こうもお前が補欠だった事を知ってて話が来たんだからその事は何の問題もないだろう。あるとしたらお前のプライドだけだ」
守屋「うっ!?」
芹沢「俺も大学で伸びた口だし高校時代は二番手投手だったしお前の気持ちも分からない訳じゃない。しかし無双高校と言えば強豪でプロ入り選手も何人か出ているが大して活躍できた選手は少ないお前が出たらきっとみんな力が湧いて来るだろうな〜♪」
守屋「やっぱり他人事だと思ってるでしょう?」
芹沢「そんな事はないぞ。当日は俺も先輩として観に行ってやろうと!」
守屋(やっぱり他人事だと思っているな。まったく途中まではシリアスで格好良かったのに)

その後、優子や芹沢だけでなく監督や友人などの後押しもあり守屋は渋々と講演会に出る事となった。

無双高校
守屋(うげっ!? こんなに大勢集まる物なのか?)

守屋は知らなかったが無双高校出身でタイトル獲ったのは守屋が初めてだったのだ。無論、地元のヒーローの存在を知らなかった者も多く集まっている。
生徒A「あれが伝説の守屋さんか!?」
守屋(伝説って卒業してから4、5年程度だぞ!?)
生徒B「既にオーラを感じるな!」
守屋(そんな物出せるなら出して見たいわい!?)

いわゆる芸能人感覚だろう。噂だけが先行されて守屋は既に幻想の人物とされているらしい。しかし守屋は気を取り直し落ち着こうとする。
守屋「(お袋や監督も当時のチームメイトも観てくれるんだ。見っともないところは見せられないぞ!)僕は守屋秀人と言います。知ってはいると思いますがここ無双高校で3年間勉学と野球を頑張りましたと言っても僕は3年間補欠で結局プロ入りどころか公式戦にも出場はできませんでした」

当然ながら知らなかった者は驚くが野球部関係の者はあらかじめ知っていたのだろう。落ち着いて守屋の言葉を待っている。
生徒C「あの、野球部ではそのどう言った……」

1人の生徒が質問をするがどうも聞いて良い事かどうか分からなく要領を得ないが生徒が全てを聞くまでもなく守屋から話す事にした。
守屋「そうですね。3年間補欠だった僕がどうしてプロ入りできたかそれを話すなら幼少時から話した方が良いかも知れませんね」

優子「はい。これ!」
守屋「これってバットとグラブ!?」
優子「夏輝君がリトルリーグに入ったって聞いてね。秀人もしたいんじゃないかと思ってね」
守屋「あ、ありがとう!」

と言った具合で野球を始める切欠になったのは母から買ってもらった野球道具でしたね。
芹沢「そっか、リトルに入らないのか」
守屋「すみません」
芹沢「家庭の事情じゃ仕方ないさ。ま、こうやってキャッチボールするのも良いし草野球の親父軍団に混じって試合に出りゃ良いさ。あっ、その時は俺も誘えよ!」

母の苦労を考えてリトルリーグには入りませんでしたが芹沢先輩、今は巨人の投手とこの人も出世していますね。とにかく芹沢先輩や友人など多く集まり結構楽しくやっていました。
守屋(シュッ!)

ズバ―――ン!
芹沢「球は遅いけど、制球力は大したもんだな」
守屋「先輩には敵いませんけどね」
芹沢「当たり前だ。既に変化球で俺の上を行ってんだ。これ以上、差が出たら泣いちまうぞ!」
守屋「いや、投げるのが楽しくて!」

芹沢先輩も投手と言う事で自分もやって見ようかなと思ったらどんどん上手くなりその頃から投手になっていたんてすよね。
芹沢「ただ、体格のできていない俺達じゃすぐに身体を壊しやすいし変化球はあまり投げ込むな」
守屋「はい。芹沢先輩の言うように球数は制限しています!」
芹沢「それで良い。まあ来年からお前も中学だし野球部があるから頑張れ!」
守屋「先輩もシニアで頑張っているし僕も成果出します!」

芹沢「とまああいつは才能あったんでしょうね。ガンガン成長して行きましたよ。その原点はやっぱり優子さんだったんじゃないかと俺は思っています!」
優子「夏輝君、ありがとう!」
芹沢「いえいえ。できれば秀作さんにもあいつがどう言う人生を送っているか聞いて欲しいですね」

芹沢と優子が話している間にも守屋の話は続いて行く。
守屋「とまあ良いところを見せているんですが本当の初め頃には送球をミスするわとやっぱり下手で草野球のおじさん達には結構怒られましたね」
生徒D「守屋さんにもそう言う初めがあったんですね」
守屋「ええ。だけど楽しかったから頑張れたんですよね。そう言う意味では自由に伸び伸びするのが僕の野球の原点なのかも知れませんね!」
生徒E「それで中学時代はどうだったんですか?」
守屋「中学時代はですね」

守屋「ふう」

ズバ―――ン!
芹沢「ふーん、ちょっと見ないうちに球速が上がったか」
守屋「えへへ、分かりました!」
芹沢「と言っても遅い事に変わりないが」
守屋「酷い!?」
芹沢「それでだが」
守屋「またシニアの話ですか?」
芹沢「ああ。球速は90キロそこそこだけど、制球力と変化球は大したもんだし話してテストくらいはしてもらっても良いんじゃないか」
守屋「うーん、やっぱり駄目ですよ」
芹沢「ふう、お前の家って片親だけだし生活も大変だしな。だけど野球で飯を食って行くつもりなら今から頑張って特待生狙いってのも手だと思うが」
守屋「…………そこまでの才能があればですけどね」
芹沢「まあリスクがあり過ぎるよな。俺自身も本気で野球で飯を食って行ける自信はないしな」
守屋「まあ普通に進学して高卒で就職が無難ですね」
芹沢「はあ……俺は来年から他県に行く事になったし今年でお前ともお別れだと思うとやっぱり寂しくなるな」
守屋「無双高校じゃないんですか?」
芹沢「惜しいが無明実業だ。野球部からぜひ来て欲しいと言われた」
守屋「無明実業って言えば何人もプロ入り選手を出している名門中の名門じゃないですか!?」
芹沢「ああ。俺も3年後じゃなく4年後かはプロかもな!」
守屋「プロか…………雲の上過ぎて想像もつかない!?」
芹沢「おいおい本気にするなよレギュラー獲るのも奇跡的な難しさだろうな」
守屋「そうですね。しかし無明実業か」

守屋「中学ではたった1年の先輩後輩の関係でしたが無明実業に行くと言う話が来てからは芹沢先輩が雲の上のような人に思えましたね結局3年間でエースは獲れませんでしたがドラフトで指名された時はまさかと正直思いましたね」
芹沢「野郎、遠慮なく喋ってやがる!」
優子「そうそう。私もあの子も疑問だったんだけど、どうして入らなかったの?」
芹沢「うーん、当時は御堂って絶対的なエースがいたせいか俺なんてプロで通用しないだろうって正直野球辞めようかと思ってたんですよね。そんな時に細かいところは飛ばしますけど監督が相談に乗ってくれたんですよそれで大学で頑張って大学ナンバーワン投手って言われるようになったんですよね。いや〜人生どうなるか分からんもんですよ!?」

やっぱりこちらは関係なく守屋は話を続けて行く。
守屋「芹沢先輩が引退してから頑張って行き中学で名もそこそこ知られて行った時にここの監督にスカウトされたんですよ」
生徒F「ここからが守屋さんの高校時代のお話なんですね」
守屋「そんなに楽しい話とは言えないかも知れませんがね」
生徒F「すみません」
守屋「いえ。聞いても面白くはないかも知れませんが僕に取っては楽しい高校生活でしたよ!」

守屋(シュッ!)

ククッ!
先輩「おいおい。全然キレてないぞ?」
守屋「すみません(あれ、おかしいな?)」
先輩「そう言えば軟式だったし硬球扱うのも初めてなんだっけ?」
守屋「あっ!?」
先輩「まあうちは強豪で1年でのレギュラーは難しいだろうしゆっくり実力を付けて行けば良いさ!」
守屋「はい!」

最初のうちは高校野球だし勝手が違うんだろうなと思いながらやってました。当然ながら1年でレギュラーは獲れませんでした。
一ノ瀬監督「駄目だな。球の遅さもだがリリースが分かりやすいしこれじゃ投げる前から球種を教えているような物だ!」
守屋「すみません」
一ノ瀬監督「(硬球に合わないのか、初めての人間は怖がる物だがそれはほとんど守備か打席だしどう言う事だ?)とにかく問題を改善しなければレギュラーは無理だ!」
守屋「……はい」
一ノ瀬監督(制球力も落ちてるし変化球もキレないとケガでもないし原因はいったいなんなんだ?)

2年からはとにかく球速を上げると同時にリリースを上手くすると頑張ったんですがリリースが上手くなったら制球力が落ちると問題は減らず僕も監督も半ば諦めるようになっていましたね。
一ノ瀬監督「以上がレギュラーだ!」

それからも問題は解決せず3年間ベンチ入りもできず僕の高校野球は終わりましたね。
守屋「………………」
一ノ瀬監督「それと守屋、ちょっと話がある」
守屋「は、はい」

正直、監督に話があるって言われた時はいったいどんな事を言われるかと凄く怖かったですね。
一ノ瀬監督「それでお前はこれからどうする?」
守屋「いや、どうするって言われても?」
一ノ瀬監督「野球の事だよ。このまま大学か社会人でも続けるのか、それとも普通に進学か就職をするのか」
守屋「…………就職ですかね」
一ノ瀬監督「やはり野球に未練があるんだな」
守屋「すみません!」
一ノ瀬監督「いきなりどうした?」
守屋「監督から誘ってもらったのに結局何もできませんでしたから!」
一ノ瀬監督「確かにお前は俺の想像通りの選手ではなかったな」
守屋「申し訳ありません」
一ノ瀬監督「きっとお前は俺の想像以上の選手だったんだろう」
守屋「えっ!?」
一ノ瀬監督「結局、お前の成長を妨げている原因がなんなのかは俺には分からなかった。野球部の監督としては何とも情けない事だ」
守屋「いえ。監督が情けない事なんて」
一ノ瀬監督「最初の質問に戻るがお前はこれからどうする? いや、どうしたい?」
守屋「野球辞めたくないです……このまま辞めたらきっと後悔します……だけど」
一ノ瀬監督「母親の事だな」
守屋「はい」
一ノ瀬監督「分かった。これからは毎日朝練だ。俺も付き合うつもりだが毎日は無理だな。それと野球部の休みの日は予定を空けとけよ!」
守屋「えっと」
一ノ瀬監督「こいつが毎日の練習メニューだ!」

と言う訳で部も引退するのに何故か監督の特訓メニューをする事になったんですよね。
一ノ瀬監督(俺の想像通りの選手ではなかった。ならば俺の想像以下の選手か、あれだけの投手だったんだそんな訳はない。ならば俺の想像以上の選手に決まっている!)
守屋「母さん、ごめんなさい!」

昔から母にわがままは言わないようにした僕がひょっとしたら初めてではなかったかも知れませんがその時は本気で母にぶつかろうと思いました。
優子「いきなりどうしたの?」
守屋「野球を続けたいんだ。これから迷惑もかけると思うけど許して下さい!」
優子「何かと思えばそんな事か」
守屋「そんな事ってこれでも決心して説得に来たのに」
優子「そうね。ごめんなさい。だけど子供が親にわがまま言うのは当然の事よ。それに何を心配してるのか知らないけど、こう見えても母さん若いんだから大丈夫よ!」
守屋「確かに外見は若いけど」
優子「ありがとう。それで大学野球にするのそれとも社会人野球のどっちにするの?」
守屋「もちろん社会人野球だよ!」
優子「そう……それで行くところは決まってるの?」
守屋「それはまだだけど……今は監督のメニューもあるし」
優子「そう。監督さんがあなたを諦めさせなかったのね」
守屋「べ、別に監督に言われただけでなく自分で考えた上の結果ですよ!」
優子「分かってるわよ」

芹沢「あいつも苦労したんですよね」
優子「そうね」
芹沢「それで原因はなんだったんですか?」
優子「さあね」
芹沢「ええ、俺にも内緒なんて寂しいな!?」

やっぱりこっちは関係なく進み守屋は独自に話を続けて行くのだった。
守屋「と言う訳で引退してからは特に忙しくがむしゃらにやってました」
生徒E「結局、原因はなんだったんですか?」
守屋「いえ。結局、原因は不明でしていくつか推測はできるんですが」
生徒C「いまだに不明とは!?」
守屋「とにかく話を続けますね」

守屋(シュッ!)

ククッ!
一ノ瀬監督「悪くないな」
守屋「本当ですか」
一ノ瀬監督「レギュラーは無理だがこれならベンチ入りは問題ないだろう。しかし特別な事をやっていないのに改善して行ってるのは何故だ?」
守屋「さあ?」
一ノ瀬監督「本当に何もないのか?」
守屋「そう言われてもあえて言うなら楽しいって事ですかね!」
一ノ瀬監督「楽しいだと?」
守屋「小さな頃から野球は楽しかったですし……もちろん高校でも楽しかったです!」
一ノ瀬監督「本当か?」
守屋「うっ、正直、期待には応えられないしつらいって思った事もありました」
一ノ瀬監督(つまりメンタル面に問題があったのか、慣れない環境で実力が出せなかったとそう言えば楽しそうに投げていたのは最初の頃だけだったな。そう言えばチームを強くする事だけを考えて楽しんだ事なんて……いや、こいつに教えている今は楽しいかな!)
守屋「監督?」
一ノ瀬監督「いや、楽しくか良い事だな!」
守屋「はい!」

この後も少しずつ問題点を解決して行きいまさらながらも監督の期待に応えて行きましたね。
優子「雲雀物産って知ってる?」
守屋「いや」
優子「ちょっと遠い場所にあるんだけど、そこの監督さんがあなたをスカウトしたいんだって」
守屋「へえ………………ええっ!?」
優子「凄いリアクションね」
守屋「本当に僕を!?」
優子「こっそり練習しているところを見てあれでレギュラーになれなかったのかと不思議がってたわよって嬉しくないの?」
守屋「いや、何か上手く行き過ぎて怖いような」
優子「ちなみにそこの監督さんは昔からの友人よ」
守屋「それじゃ?」
優子「でも話は向こうから来たのよ。自分の人生は自分で決めなさい!」
守屋「うん!」

芹沢「確かにできすぎてるな」
優子「私はあの子の努力が認められていると嬉しかったわ」
芹沢「(実力がなければ努力するのは当然なんだけど)でも良かったですね」
優子「ええ」

当然ながらこっちは関係なく守屋の話は続いて行く。
守屋「と言う訳で次がラストチャンスと言う訳で必死で頑張りましたね」
生徒E「すみません。雲雀物産って聞いた事がないんですが社会人では強いんですか?」
守屋「どちらかと言えば弱い方ですね。プロ入りしたのも僕が初めてでしたしただセンスある選手はいましたね」
生徒C「無知ですみませんが守屋さんは全国大会に出たんですか?」
守屋「一度だけですがね。そこから色々な球団が上位で指名するって言われましたね。まあ次は社会人野球の話をしましょうか」

結城「ふん!」

カキ―――ン!
守屋「飛ばすな!?」
宮本監督「まあ体格が体格だからなそろそろ個人授業に行こうか」
守屋「個人授業?」
宮本監督「間違えた。個人指導だった!と言う訳で君は今日からサイドスローだ!」
守屋「いきなりフォームチェンジですか?」
宮本監督「宮本家は代々サイドスローの家系だ。黙って従いたまえ!」
守屋「僕は守屋家なんですけど」
宮本監督「大丈夫! サイドスローの本家から言えば君は球持ちが悪い!」
守屋「球持ちは分かりませんがリリースは良くなっているって言われましたよ」
宮本監督「あれでリリースが上手いって本当に下手だったんだね」
守屋「正直なほどに胸が痛い!?」
宮本監督「ま、とにかく行って見よう!」

正直、半信半疑でしたが監督の言う通りやって行きました。
守屋(シュッ!)

ククッ!
結城「これは打ちにくい!?」
守屋「本当ですか!?」
結城「右打者には球が見え辛いとあのスライダーは脅威だな」
宮本監督「しかしスライダーとシュートだけじゃ心もとないしシンカーを教えてやろう!」
守屋「えっと?」
結城「現役の頃の監督の決め球だ。教えてもらえ!」
守屋「それじゃお願いします!」
宮本監督「この俺に任せなさい!」

この後に監督に教わったシンカーが決め球になると監督を尊敬する切欠になりましたね。
守屋(行くぞ!)

ククッ!
白鳥「くっ!?」

守屋(ふん!)

ククッ!
天王寺「何っ!?」

全国大会でも佐藤コンツェルンの選手達にも何とか通用するなど活躍しプロのスカウトも注目してくれるようになりました。
天王寺「もらった!」

カキ―――ン!
守屋「しまった!?」

プロでもあったんですがたまに浮く球があってその時も天王寺さんの一振りで逆転されて負けちゃったんですよね。

芹沢「あいつが有名になったのは全国大会に出場した年ですね。プロが注目している打者に通用するのを見てどんどん評価が上がって行きましたよ。俺は既にプロ入りしている年でしたがあいつの事を聞いて嬉しかったですね!」
優子「私もあの子も夏輝君が活躍しているのを観て嬉しかったわね」
芹沢「いやー照れますなー」

やはりこっちは関係なく守屋の話は続いて行く。
守屋「社会人では仕事と野球と3年間頑張った結果が出たか、本当にプロ入りできるとは思いませんでしたね」
生徒B「つまりサイドスローが成功の元だったと」
守屋「僕に合っていたのは確かですね。それから球団には2位で指名するって言われてたんですがクジを外したんで1位で指名されたんですよね?」
類「まあ逸材の多い年でしたからね。普通の年なら逆指名でも可笑しくはないとその実力は既にプロでも見せましたから誰も疑問を出さないでしょう」
守屋「そう言われると照れますね」
類「苦労人の守屋さんですが家族や友人や恩師などの助けを持ってプロ入りした訳ですね」
守屋「そうですね。色々な人の助けを借りたとこれは僕だけでなく誰でもそうなんでしょうね。やはり一番は母に感謝してますね」
類「ちなみにこれテレビ放送する予定なんで他の誰かにも言いたい事があれば言って見たらどうでしょうか?」
守屋「本当だ!? いつの間にかカメラが向けられてるし!?」
類「それで?」
守屋「(いきなり言われてもな…………そうだった、大切な人がいた!)父さん! 僕も母さんも頑張ってます。何処にいるか分かりませんが見守って下さい。それともし帰りたくなったらいつでも帰って来て下さい。いつまでも待っていますから!」
芹沢「秀作さんも観てくれていると良いんですが?」
優子「きっと観てくれてるわ。今じゃなくとも未来で観る事はできるしね!」
芹沢「(未来って録画とか再放送とか特集とかかな? どっちにしろ可能性は低そうだけど)ふう、確かに考えても分からないし観てくれていると信じるしかないか、うんうん。前向きで良いじゃないか!」
守屋「来年も頑張るので応援よろしくお願いします!」

守屋のプロ野球は始まったばかりと心配も多いが母親や友人と言った助けがあるので多分大丈夫だろう。どっちにしろ守屋は楽しんで野球をするだろうから余計な心配なのかも知れない。