第3章 秋の序章

−1997年 9月−
赤竜高校は夏の大会で敗退し甲子園行きを逃した。そして新たなるキャプテンには1年からクリーンナップだった村田が選ばれた。
村田主将「セカンドに外野か……特に外野は一気に変わるとやっぱり戦力が落ちるな」
矢吹「当然だけどな…………しかし昨年は3人だけだったのに今年はこれだけって先輩達に思いっきり頼ってたんだよな」
小田切「ツケを払うのは当然だろうと言うよりは昨年の方が異常だったのかもな」
工藤「異常と言うのも変だが3年が3人しかいないのに全国制覇できたのは凄かったな」
矢吹「………………」
村田主将「えっと……なんの話してたんだっけ?」
孝介「秋のレギュラーですよ」
村田主将「そうだった。エースは当然小田切だな!」
小田切「………………」
矢吹「145キロ出せるんだし当然だよな」
村田主将「工藤も変化球は良いし当然ベンチ入りだな」
孝介「小田切さんに比べて落ちますけどそれでも130キロ以上出るんだし当然ですよ」
工藤「どちらにせよピッチャー1人だと負担は多いし異存はないが俺達より野手の方はどうなんだ?」
村田主将「キャッチャーは当然松本だな。夏はあれだったけど問題はないだろう」
工藤「実際試合に出たらミスをする可能性もあるが…………俺としては問題ないと思う」
矢吹「竜の意見は?」
小田切「むしろ夏から格段に成長している感じがするが…………実際どうだろうな?」
村田主将「そう言うなら1回戦から調子見て行った方がいいか」
孝介「そうですね。それでセカンドと外野は?」
村田主将「セカンドは金村かな。守備に関しては相川さんに負けてないだろう」
工藤「あの人ほどじゃないけど守備は安心して見られるしお前のフォロー役としては上等だな」
村田主将「へいへい。外野の1人は佐伯だな。あいつに関しては問題ないだろう」
孝介「福西さんと同じくらい上手いですし問題ないでしょうね」
矢吹「守備だけならあの人よか上だろう」
村田主将「後は雪村と佐々木だな。外野陣は試合経験が俺達より少ないのがちょっと不安だけどピッチャー2人や内野陣は問題ないし大丈夫だろう!」
工藤「ファースト以外はな!」
村田主将「打てばいいんだろうが!」
孝介「まあまあ落ち着いて下さい。キャプテンが言うように投手陣が揃っているし松本さんが上手くまとめてくれますよ!」
小田切「……秋の大会は松本がカギになりそうだな」
矢吹「まあチームの要だしな」

課題は多いがこうしてレギュラーも決まって行きそして孝介も夏から順調に成長して行く。

河原
孝介「やっぱり秋から戦力は落ちるなー」
知也「何処もそうだし問題ないんじゃない」
孝介「まあその通りなんだけど」
将「良いピッチャーもいるし問題はないんじゃないですか?」
孝介「でも守備がな」
知也「村田さんなら慣れてるでしょう」
孝介「ハッキリ言うなよ。けど外野陣も全員変わるからやっぱり気になるんだよな」
将「メンバーが一気に変わるとチームとして上手く機能できなくなる事もありますからね」
知也「それはキャッチャーが引っ張って行くんじゃない」
将「とすると不安も残るか」
孝介「やめだ。やめだ! これじゃ()りがない!」
将「確かにここで話しても問題の解決にはなりませんね」
知也「秋の大会も頑張ってね」
孝介「おう(つうかこいつらに取っては他人事(  ひとごと  )だよな。それでも応援はしてくれるし有り難いっちゃ有り難いんだが)」
中川「こんなところでのんきにお喋りか」
孝介「まあな。そっちは自主トレか?」
中川「家に帰ろうとした途中でお前らを見つけただけだ」
知也「今日って練習休みなの?」
中川「少し疲労があるんで休むように言われているだけだ」
孝介「って事は暇なのか?」
中川「まあな。帰ってFFの続きでもやっとくさ」
知也「あれ面白いもんね!」
孝介「確かになって秋のライバルが自宅でゲームってテンション下がるな」
中川「そう言われてもな」
将「中川さんのとこはどうなんです?」
中川「どうって…………チームなら順調だぞ。キャッチャーに不安もあるが名門だけあって戦力はあるしな」
知也「さすがは斉天大附属だね」将「だな」
孝介「相手に取って不足はないな!」
中川「それでそっちはどうなんだ?」
孝介「へ?いやまあ一応は良い感じかな?」
中川「ふーん」
孝介「むっ!」
知也「表情から完全に読まれてる感じだね」
将「中川さんだしな」
孝介「後輩に苛められる俺って」
知也「いやいや僕達は別に」
将「中川さんの洞察力が凄いってだけですよ」
中川「そんなので秋は大丈夫なのか?」
孝介「こっちよりそっちの心配をしろ!」
中川「まあ甲子園でも優勝はできなかったし敵の心配をしてる余裕はないな」
将「優勝できなかったと言ってもベスト4でしょう」
知也「1年生エースコンビは目立ってたよね」
中川「と言っても上には上がいるって分かっただけだったけどな」
孝介「くう〜! こっちはまだ甲子園に行った事がないってのに!」
知也「1年目から行ける方が珍しいだけでしょう。それに孝兄ならまだまだチャンスはあるよ!」
将「そう言う事です。しかし甲子園のエース達と言えばドラフトの目玉が多そうですね」
中川「ああ。今年のナンバーワンと言えばやっぱり御堂さんだろうな」
知也「兄はプロのエースで弟のセンスは兄以上とも言われているし1位指名は確実って噂されてるんだよね」
将「150キロのストレートも凄いがフォークのキレと落差はプロ即戦力って聞いたな」
中川「他にも凄いのがいるけど実力人気共に御堂さんが一番だな。まあそれでも平下さんの敵じゃなかったけどな」
孝介「大差で試合決めてたからな…………1位競合は間違いなくあの人だろうな」
中川「ああ(……あの人がドラフトに参加したらどうなるか分からなくなるが……まあ噂だけだしさすがにないよな)」
将「御堂さんか」
中川「お前とはタイプが違うが今年のドラフトの目玉の1人だな。まああまり参考にはならないかも知れないが」
知也「将ならもっと凄いピッチャーにだってなれるよ!」
将「サンキュー!」
孝介「……大物だな」
中川「上を目指さなきゃプロになんてなれないぞ!」
孝介「ふっ、そうだな。それじゃ秋にな!」
中川「ああ!」

赤竜神社

ブン! ブン! ブン!
孝介「夏は完全に抑えられて負けたな。こっちも抑えてたんだけど……松本さん、大丈夫かな?」

松本「もっと来い!」
小田切「言われなくても投げるがオーバーワークじゃないか?」
松本「先輩達の為にも不甲斐ないとこは見せられないしもっともっと頑張らないと!」

工藤「おい!」
村田主将「分かってるよ!」

ブン! ブン! ブン!
孝介「あの後、みんなで説得してチームワークは一段と良くなったよな。新しいエースも……」

小田切(シュッ!)

ズバ―――ン!
松本「今日も良いコースに来た!」

矢吹「球速は十分プロクラスと工藤とのコンビなら十分甲子園狙えるんだけどな」
佐伯「つうか実力じゃあの1年達より上だろう」
立石「けど負けたよ」
佐伯「キャッチャーのリードが良かっただけだろう」

ブン! ブン! ブン!
孝介「エースはともかく入れ替わった人達に不安があるけど…………多分と言うか……きっと大丈夫……だと思う」

赤竜高校
中西監督「…………以上が秋のレギュラーだ。全戦全勝を目指して甲子園だ!」
全員「おう!」
孝介「3番か、今度はもっと打って役立って見せる!」
村田主将「その調子と言いたいが別に俺に回す前に決めても良いんだぞ!」
孝介「えっ?」
村田主将「お前、長打力もあるんだしここぞと言う時は思いっ切り振っちまえ!」
孝介(自分で決めるって発想はなかったな。しかし1点が欲しい場面でランナーがいないならそれも手か)
村田主将「どうした?」
孝介「状況によってはキャプテンの言う通りやって見ます!」
村田主将「そう来なくちゃ!(これで次の4番も決まったな!)」

秋からメンバーも一新した赤竜高校だが孝介達甲子園に行けるのか秋の大会も始まるのだった。