第6章 名門の始まり天狼と無明(前編)

−2000年 8月−
天狼学園野球部は熾烈な争いとなり連合チームと現野球部の試合で決着を付ける事となった。
秋山主将「メンバーはこれで全員か?」
寺沢「はっ! 御大将!」
醍醐「だから関ヶ原の戦じゃないっての?」
東山「俺達は勝利する為に結成されたから東軍になるのか、だとしたら俺のポジションは一体誰に?」
篠原「さあな。それより俺達全員で8人だから1人足りませんよ!」
秋山主将「ふむ。試合は成立するな」
寺沢「いやいや試合成立しないからあの打線相手に守備が足りないって」
秋山主将「ま、その前に克弥の奴が認めんだろう」
醍醐「何か策でもあるんですか?」
秋山主将「いや、奇特な奴が1人いてな。向こうからこっちのチームに1人入りたいって奴がいたんだ!」
不動「ふっ、超天才たる不動豹(ふどうひょう)、みんなの期待に応えて登場!」
全員「誰っすか?」
不動「えっ!? 俺ってそんなに知られてないの!?」
秋山主将「自信家なのは結構だが夏までアメリカにいたのを知ってる奴はいないよ」
醍醐「どう言う事ですか?」
秋山主将「監督が個人的に目をかけてアメリカに選手をやってた奴の1人だ。理由は色々あるが不動の奴は膝を故障して向こうで治療したらしい」
東山「けどそれって敵側なんじゃ?」
不動「ま、そう言われるのはもっともな話だが今回の勝負はそう単純な物じゃないんですよ!」
全員「?」
秋山主将「そう言う事だ。今回監督を裏切ったのは俺達だけじゃなく克弥達もとクソ面倒な事になってるんだっ!」
全員「ええっ!?じゃあ勝ったらどうなるんですか?」
秋山主将「勝者のみがすべてを手に入れ敗者のみがすべてを失う。克弥達の勝利に終わったら良くて俺達は部で飼い殺し悪ければ全員退部、あるいは退学まで行くかもな」
全員「………………………………」
不動「ふーん、全員覚悟ありか、良い目をしてるな。こっちに来たのは大正解だったわけだ!」
篠原「ちょっと待って下さいよ。不動さんがこちらに来たって事は他の選手達はどうなったんですか?」
秋山主将「最悪な事に全員監督を裏切って克弥に付いた」
醍醐「なんかかなり計画が変わってしまってる気がするんですか?」
秋山主将「そうでもないさ。元々俺達が勝っても監督や克弥達を退部だの退学だのするつもりはなかったからな」
不動「お優しいですね。ま、俺はそう言う方が好きだから来たんですが、あっ、それと俺は1年だからタメ口で構わんぞ!」
東山「それで不動さんじゃなかった。不動以外のアメリカにいた選手ってのは?」
秋山主将「まあ気になるだろうな。後2人は荒井と清水だ!」
全員「ふーん……ええっ!?」
篠原「2人共、天狼に来てたんですか?」
秋山主将「そこからかよ!」
醍醐「まあ無理もないですよ。公式戦に出る事なく2人共どっか連れて行かれてましたからね」
東山「誘拐みたいな言い方ですね」
寺沢「実際俺達なんも知らされてなかったしなしかし四天王復活かー」
秋山主将「今は敵だっての!」
醍醐「ま、さすがに家族には知らされてるでしょうね。でなければさすがに警察沙汰になるでしょうし、ちなみに四天王と言ってるのは寺沢だけだからな」
秋山主将「ま、言うまでもないかも知れんが荒井は150キロ近いボールを投げる剛腕投手で清水は俺がいなければ4番を打つほどの強打者だな」
不動「残念ながら清水さんが4番を打つ事はありませんよ。ここに彼を越える超打者がいますから!」
全員「超打者って?」
秋山主将「まあ実力は確かだ。エラー多そうで怖いがバッティングはクリーンナップレベルだ。それと先発は克弥だろう。自信家なあいつの事だ。完封して監督と俺の評価が間違っている事を証明したいと思うはずだ!」
寺沢「ははは、確かに静木さんもなかなか良いピッチャーですがキャプテンと勝負したら打たれるに決まってるのにバカな考えを持ったもんですよ」
醍醐「そうかな? むしろあの人ほどキャプテンを認めている人はいないんじゃないかな。多分、キャプテンは全打席敬遠されるかも?」
秋山主将「実際あいつとはずっと同じチームだったから勝負した事はないんだよな。まあ半分遊びのような勝負ならなくはないんだが今日のような真剣勝負はさすがにな」
寺沢「まあ無理もないですよ。小さい頃からの幼馴染なんですからねそれにしても荒井だ。清水の奴は現実主義なせいか俺達を裏切っても大して気にもしなかったが荒井の奴め! あんな野球ロボチームに入りやがって見損なったぜ!」
醍醐「まあそう言うな。あいつにも事情があるんだろう」
篠原「清水さんはなんとなく説明が付きましたけど、荒井さんってどんな人なんですか?」
秋山主将「一直線なタイプだよ。後先考えず投げて肩を壊しちまうような。俺もああ言う熱血タイプは嫌いじゃないんだが克弥とは合わないだろうな」
東山「いやいやだったらなんで向こうに付いてるんですか?」
秋山主将「耕助の言う通りなんかあるんだろう。まあどっちにしろ負けられない試合だ。相手を気遣う余裕なんて俺達にはないさ!」
東山「それはそうですけど」
秋山主将「3年は俺だけでお前達にはまだ次がある。本来なら俺がすべてを被ってでもお前達だけは助けてやりたいところだがすまん」
寺沢「そんな負け戦なセリフはいらないっすよ」
醍醐「万が一負けたとしてもキャプテンを恨む部員はいないですよ。元々、そう言う覚悟で試合に望みますから!」
篠原「一蓮托生ですよ!」
不動「そう言う事だ。俺達が勝って新たな野球部の始まりだ。行くぞ!」
全員「おう!」
東山「つうか不動が言うの!?」

天狼学園 天狼スタジアム
不動「話には聞いていたけど、デッカイドームですね」
東山「そう言えば1年なんだっけ? と言うかここに来たの初めてなんだ」
不動「ああ。向こうで勉強ばっかりしてただけって感じかな。正直、リハビリより勉強の方がずっと大変だった」
東山「そこまでなのかよ!」
秋山主将「それで勝利後の要求は?」
静木「俺達が勝った場合はお前達は全員退部、監督も辞めてもらう!」
秋山主将「まあ俺達の退部までは認めてやっても良いが、監督に辞めてもらって次はどうするんだ?」
静木「俺にもお前にも次はない。今日で最後だからな。後は後輩に託すだけだ。ちなみに監督の後任は理事長が用意している事で話がついている」
秋山主将「そうなんですか?」
瀬戸監督(こくっ!)
静木「理解できたか?」
秋山主将「ああ。けど1つだけ言わせてもらうぜ!」
静木「なんだ?」
秋山主将「克弥、既に俺達の高校野球は終わった」
静木「終わったんじゃない終わらせられたんだ! 俺だって全国で投げていればこんな気を起こすつもりはなかった!」
篠原「………………」
秋山主将「確かに負けたのは俺達のせいと言われても仕方ないか、ただ、お前が投げても結果は一緒だったろうぜ!」
静木「そうかもな。だがあくまでも仮定での話でしかない。やはり納得はできないんだ!」
秋山主将「ようするに意地の問題か、ふむ。そう言うところまだ残ってたんだな?」
静木「何っ!」
秋山主将「いや、ただそう言う事なら試合に納得してやっても良い。ただ、あの条件はなんだ?」
静木「俺達は春に優勝した。かつてのメンバーが入れば夏も十分だったはずだ!」
秋山主将「ちっ、未来を見ず過去の栄光にすがっているのか、そんな立ち止まったままだからエースの座を奪われたんだよ!」
静木「黙れっ! いいや、言うだけ言え。結果は試合で分かる!」
秋山主将「ま、そう言う事だな! ん?」
静木「条件だ。お前達の勝った後の要求はなんだ?」
秋山主将「どうもしねえよ!」
静木「何っ!」
秋山主将「決めるのは俺じゃない。後輩達だ。言っただろう。もう俺達の出る幕はないんだよ!」
静木「ふんっ! それなら俺も後輩達に要求を頼んでやる!」
全員「っ!?」
秋山主将「ああ。それで良いんだよ。これは意地と意地の勝負とガキのケンカと同じだ!」
静木「勘違いするなよ。俺の後輩達がお前の後輩達と同じ選択をするとは限らないんだぞ!」
全員「っ!?」
秋山主将「それはどうかな?」
静木(バカめっ! 何故仲間だからってそれほど信用できるんだ? しょせん俺達は監督から見ればただの駒なんだよ。だから俺は……くそっ!)

天狼学園 連合チーム
秋山主将「やっぱり相手の先発は克弥だったようだ」
全員「………………………………」
秋山主将「どうした?」
醍醐「キャプテンがケンカ腰でみんな驚いてるんですよ?」
秋山主将「いやケンカだってさっき言っただろう」
東山「けど、退部のかかった試合をケンカって表現だとちょっと」
秋山主将「実際部同士のケンカじゃん!」
篠原「ははっ、否定できないですね」
不動「つうかキャプテン嬉しそうですね?」
秋山主将「ん? まあな。克弥の奴腐りきってるかと思ったけど、そうじゃなかったしな」
寺沢「そう言えば一番監督に従順で監督を裏切る事なんてないって人だったですからね」
秋山主将「まあな。あいつも昔は反骨精神旺盛ってタイプだったんだがな。そう言う意味じゃ今日のあいつは昔の良いところも出てるよな」
醍醐「とりあえず状況判断して下さい。俺達が負けた場合後輩達も俺達全員退部を選択する可能性はあるんですからね?」
秋山主将「そうか? むしろお前ら仲間に入れて上手くやって行く気もするがな」
東山「それはいくらなんでも都合良く考え過ぎじゃないですか?」
秋山主将「そんな事もないだろう。なんだかんだ言って俺達は本気で部を潰したいわけじゃないからな」
醍醐「まあ俺達退部したら戦力一気に落ちるのは間違いないですからね。悪くても飼い殺しってところでしょうか」
不動「まったく同じ部でこんな騒動起こしてたら甲子園行けなくても仕方ありませんよ!」
秋山主将「ははっ、そうだな」
東山「笑い事じゃないですよ」
秋山主将「そうだな。選択するのはお前達だ。耕助、キャプテンはお前がやれ!」
醍醐「どうせそう言うだろうと思ってましたよ。もう全員と話して勝利後の要求は決めときました!」
秋山主将「ははっ、さすがはキャプテンだな」

天狼学園 現野球部
静木「俺は今日の試合に自身のすべてを賭ける。荒井は悪いがライトを守ってくれ。お前の長打は役に立つ!」
荒井「まだ肩は万全ではないので助かりますが」
清水「と言う事は俺はセンターですか、守り慣れてないんでエラーするかも知れませんよ」
静木「ふんっ! 元々、無失点で抑えようとは思わん。言っただろう。すべてを賭けるとケチなプライドは捨てるつもりだ!」
清水「ま、そこまで覚悟を決めてるなら何も言いませんが不動の裏切りだけは痛かったですね」
荒井「………………」
静木「構わん。例え1人になろうとも俺は投げ続ける!」
荒井(悪いな。寺沢、やっぱり俺はこっちに付くぜ!)

−天狼学園野球部対決 天狼スタジアム−
1年 東山 章助
後攻 先攻
天狼学園連合チーム 天狼学園野球部チーム
投手力 機動力 投手力 機動力
打撃力 守備力 VS 打撃力 守備力
意外性 経験値 意外性 経験値
総合力 総合力
山内 和馬 3年
2年 寺沢 啓一 一枝 良樹 3年
1年 篠原 壮也 藤堂 和哉 2年
3年 秋山 孝史 清水 道広 2年
2年 醍醐 耕助 静木 克弥 3年
1年 不動 豹 荒井 辰平 2年
2年 戸田 平太 真田 敏樹 3年
2年 太田 勘助 前田 亮太 3年
2年 井上 啓 川瀬 啓太 3年

7回表 連合チーム3−4野球部チーム 試合は野球部チームが1点勝ち越し中となっている!
篠原「少しきつくなって来たな」
醍醐「今のところ負け越してるが、ボールの威力は落ちてないしまだまだ行けるな!」
篠原「はい。今日は絶対負けられませんから!」

ズバ―――ン!
山内(まだスタミナが尽きてないのか)

篠原は衰えないストレートで山内を見逃し三振に抑える。
醍醐(速度もだがコントロールも良いしこの調子で行けばそうそうは打たれないぞ!)
篠原(いえ。既に4失点してるんですけど?)
醍醐(そうだったな。まあこの調子で行こう!)
篠原(次は一枝さんか、ミートじゃ山内さん以上だけど)

ガキッ!
不動「来た!」

シュッ! パシッ!
一枝(こうコース付かれたらヒットは難しいな)

一枝はストレートに当てるのがやっとでサードゴロに終わる。
篠原(ふう、不動の守備は見ていて怖いですね)
醍醐(守備が下手なわけでもないんだがエラーの多い奴でもあるからな。ただ、ファインプレーも多かったりすると役に立つ奴でもある。とにかく気にせず投げろ!)
篠原(はい。しかしランナー出すと怖くなるな)

ガキッ! パシッ!
秋山主将「余裕!」
藤堂(……あっさりと抑えられたか)

得意のスライダーで巧打者藤堂を抑えると篠原は7回もきっちりと抑えた。
篠原「この回も抑えましたけど、負けてるんですよね」
醍醐「まあな。しかしお前から4点か、やっぱりうちは強いな」
秋山主将「そうそう。これで1つにまとまれば全国制覇も確実だろうな!」
醍醐「確実は言い過ぎです!」
秋山主将「そうか? それで次の打席は誰からだったか?」
東山「俺です!」
篠原「なんとか塁に出てくれ!」
東山「やって見るさ!」

7回裏 連合チーム3−4野球部チーム 篠原は衰えないスタミナで7回を抑えるが現在チームは負け越している!
静木(このまま逃げ切ってやる!)

ズバ―――ン!
東山「くっ!?」

東山は145キロのストレートに手が出ず空振り三振に終わる。
寺沢「そろそろ調子を落とすかと思ったがどんどん調子良くなっている気がするな?」
東山「今日の静木さんは隙なんてないって感じですよ!?」
寺沢「ふふん♪ しかしこの俺はあの手のタイプとは何度も甲子園で戦ったし打って来るぜ!」

静木(次は寺沢か、1年からレギュラ―奪っただけあって要注意の1人だな!)

ガキッ!
寺沢「ショートフライかよ。しかしチェンジアップにやられるとはっ!?」

寺沢はチェンジアップを打ち損じてショートフライに終わる。
静木(1年なんぞに負けるか!)
篠原「速いがあまい!」

カキ―――ン!
静木「っ!?」
清水(問題ない!)

パシッ!
篠原「抜けないかー」

良い当たりだったがセンターの清水が追い着き3アウトチェンジとなる。
静木(ふん!)
秋山主将「三者凡退か」
醍醐「今日の静木さんはコントロールも良いし大量得点はやっぱり難しいですね」
秋山主将「ま、ここまで3点取ってるしな。まだ2回あるしあせる必要はないさ!」
醍醐「………………」
秋山主将「俺達は俺達のやり方でな!」
醍醐「そうでしたね!」

8回表 連合チーム3−4野球部チーム 静木も負けずと抑え現在は野球部チームが1点リードしている!
篠原「もう1点もやるわけには行かない!」
清水「………………」

カキ―――ン!
篠原「嘘っ!?」
東山「行かせるか!」

タッ! パシッ!
清水(センターフライか)

センターオーバーかと思われたが東山がファインプレーを見せて1アウトとなる。
篠原「最後はこいつで行くぞ!」

ククッ!
静木(シュートではなくスライダーだとっ!?)

強打者の静木だったが最後はスライダーを空振り三振に終わる。
篠原「さすがに醍醐さんのリードは抜群だな!」

ズバ―――ン!
荒井(この速さでコース決められたら正直手が出ないぞ!?)

荒井はボール球の142キロのストレートを空振り三振と完全に抑えられる。
篠原「シュートなしでもなんとか抑えられる物ですね?」
醍醐「隠しているからこそ有効な切り札となる事もあるのさ」
篠原「なるほど、しかし後半になると打たれるかと思いましたが意外と通用しますね」
醍醐「自分で言うなよ。一応エースだろうが!」
篠原「一応って言うのも余計ですけど…………確かに荒井さんとか加わるとエースの座から落ちるんでしょうかね?」
醍醐「そりゃお前次第だろう!」

8回裏 連合チーム3−4野球部チーム 篠原は8回も三者凡退に抑えると文句ないピッチングを見せる!
静木(今日の試合は絶対に負けられない。ここも敬遠で良いはずなのにっ!)
秋山主将(ここでも俺は敬遠か)

今日の試合、秋山は全打席ファーストに歩かせられている。この回も下手に打たれて同点にされるよりはと静木は敬遠するが
静木(くそっ! 勝つ為と分かってるのにどうもすっきりしない!)

ガキッ!
醍醐「ボールの勢いは全然落ちてないな」

醍醐は打ち上げてピッチャーフライに倒れ1アウトランナー1塁となる。
静木(まずは1人か、次もやっかいなバッターだが)
不動「もらった!」

カキ―――ン!
荒井「うぉ―――!」

パシッ! ビュ―――ン!
秋山主将「嘘だろう!?」

不動の打球はライトの頭を越えたが荒井の凄まじい返球で秋山はサードに届かず2アウトランナー2塁となる。
静木(危なかった……しかし荒井があんなファインプレーを見せるとは……仲間なんて信用できるか、か)

ズバ―――ン!
戸田「なっ!?」

ここで今日一番と言う物凄いストレートを投げて戸田は空振り三振とこの回も無失点に終わった。
戸田「すみませんでした!」
不動「あのボールじゃ仕方ないですよ。しかし凄いストレートでしたね!」
秋山主将「ああ。多分高校入って一番のボールだったな」
醍醐「しかしこの試合で最高のボールを出すとは思いませんでしたよっ!?」
秋山主将「それだけあいつが本気って事なんだろう。燃えて来たと言いたいところだが後1回じゃ勝つにしても負けるにしても俺にはまわって来ないかもな。後は頼むぜ!」
全員「はい!」
不動「まあまあ、まずは表を抑えてサヨナラと劇的で良いじゃないですか!」
秋山主将「そうだな。まずは守備で頑張らないとな!」

天狼スタジアム 観客席
?「なかなか面白くなって来たね」
瀬戸監督「……神代理事?」
零「僕の事は零と呼んで欲しいんだけど、まあ瀬戸君には難しい注文かな」
瀬戸監督「それで?」
零「野球部廃部と分かったら来ないわけにも行かないからね。しかも静木君から監督の交代も頼まれたらさすがにね」
瀬戸監督「元々契約は来年の春までだから俺に異存はないが」
零「まあこの野球部の監督にと無理に来てもらった借りもあるしね。君が辞めたいと言えば頷かないわけにも行かないんだけど」
瀬戸監督「静木をそちらに誘ったのか?」
零「まあそう言う話をしようかとも思ったんだけど周囲から反対されて彼は何も知らないんだよ」
瀬戸監督「そうか」
零「安心して何よりだけど、このまま静木君達に勝たれたら個人的に困る事になるんだよね」
瀬戸監督「このまま終わると思うのか?」
零「さあ? ま、答えは彼らが出してくれるよね」
瀬戸監督(結局、俺は何もかも二流だったのかも知れんな)

9回表 連合チーム3−4野球部チーム 静木も荒井のプレーに触発されたかここ一番に力を出し切り相手の流れをとめるピッチングを見せる!
篠原(ここを無失点で抑えて裏でサヨナラなら最高なんだけどな)

ガキッ!
真田(せめて塁に出たかったんだがな)

真田はカーブを打ち損じてショートゴロに終わる。
篠原(前の打席と違って妙に粘って来ましたね?)
醍醐(ああ。なんでも良いからとにかく塁に出ようって感じだったな。集中力も半端なかったし次のバッターにも注意して行くぞ!)
篠原(分かりました!)

ガキッ!
前田(ストレートの勢いが落ちないな)

前田はスライダーを打ち上げてキャッチャーフライに終わり2アウトとなる。
篠原(ラスト!)

ズバ―――ン!
川瀬(手が出ないか)

篠原も衰えない球速で川瀬を見逃し三振に抑えて3アウトチェンジとなる。
醍醐「文句のないピッチングだったな!」
篠原「こう言うのもなんですが相手は下位打線でしたから」
醍醐「どっちにしろこれで裏の攻撃に専念できる!」
篠原「負けたら俺達の高校野球は終わりですか?」
醍醐「楽観はできんが勝てば良い話だ。それに今日の試合は先輩達の引退試合にも当たるからな」
篠原「どうせならもっとマシな引退試合にしたかったですよ」
醍醐「そうだな」

9回裏 連合チーム3−4野球部チーム 篠原は9回も抑えると後半は安定したピッチングを見せる!
静木(この回を無失点で抑えれば終わりだ!)

スト―――ン!
太田「チェンジアップっ!?」

最後はチェンジアップを空振り三振し1アウトとなる。
静木(こう追い込んで三振奪うのに適したボールが俺のチェンジアップだ!)

ズバ―――ン!
井上「この速度差は反則だろう!?」

チェンジアップを警戒してた井上は速度差に対応できずストレートを見逃し三振に終わりこれで2アウトとなった。
東山「一気に2アウトか、とてもじゃないが打てそうもないな」
寺沢「ま、気にせず気楽に打って来い!」
東山「気楽に打てる状況じゃありませんよ!」
静木(追い込んだ。後1人で俺達の勝ちだ!)

コツンッ!
真田(パシッ! シュッ!)
東山(タッタッタッ!)

東山が意外性を狙ったセーフティバントと大胆な方法でなんとか出塁し2アウトながらランナー1塁となった。
静木(ちっ! せこい真似をっ!)
寺沢(良くやった。盗塁はいらんぞ!)
東山(ここで盗塁失敗したら終わりだからな。さすがに無理はできないか)
静木(同点のランナーが出ようとも後1人なのは変わらん。ここで終わらせる!)
寺沢「来るのが分かれば打てる!」

カキ―――ン!
静木「セカンドっ!」
藤堂(ダメだ。届かないっ!)

寺沢はシンカーを流し打ちし打球は一二塁間を抜けてライト前ヒットとなる。
荒井「………………」
東山(ここは無理できない)

タイミング的に東山はセカンドも蹴れると思っていたが荒井の肩を警戒し東山はセカンドストップし2アウトランナー1、2塁となった。
静木(ちっ! サヨナラのランナーが出塁だとっ! 次の篠原を抑えられなかったら孝史にまわるじゃないかっ!)
秋山主将「壮也、悪いが粘って出塁してくれないか」
篠原「満塁でまわせって事ですか?できればそうしたいですけど、今日の静木さん相手には打つのも歩くのも難しいですよ!?」
秋山主将「確かに今日のあいつは凄いがランナーが出てセットポジションになって球威とコントロールが少し落ちてるぞ。啓一が軽く合わせて打てたのはそのおかげだな!」
篠原「……分かりました。なんとかやって見ます!」

ズバ―――ン!
静木(くそっ!)

ここで次の秋山からプレッシャーを感じた静木がコントロールを乱して篠原を歩かせるとこの試合では初めての動揺を見せる。
東山(舞台はこれで整ったってところか)
寺沢(ここでサヨナラと言う場面か、さすがはキャプテンだな。天に選ばれてるぜ!)
篠原(後は頼みます!)
秋山主将(ここで敬遠か……いや、お前にも意地はあるんだろう。だったらここで最後の勝負を選択するはずだ!)
静木(敬遠すれば同点で醍醐を抑えれば延長の可能性もある。ここで打たれたらまず長打は確実でサヨナラの可能性も高い。抑えれば問題なく俺達の勝利なんだが……)
前田(………………)
全員(こくっ!)
前田(勝負だ。ミット目がけて投げて来い!)
静木(……分かった。ここで決着を付ける。勝てば良い事だ!)

カキ―――ン!
秋山主将「終わったな。これで俺の高校野球も終わりか」

145キロのストレートだったが完全にとらえて打球はバックスクリーンに叩き込まれる。
静木(全力だった。コースも球威も会心で運が悪くてもヒットだろうと思ったのにホームランとはな。結局これが持って生まれた物の差か)

結局試合は9回裏サヨナラと連合チームの劇的な勝利で終わった。

天狼スタジアム
瀬戸監督「さてと試合は秋山達が勝ったわけだがこれからどうするつもりなんだ?」
静木「………………」
秋山主将「最初に言った通り俺は後輩達に任せますよ。なあ!」
全員「……………………」
醍醐新主将「まずキャプテンは俺が引き継ぎます。それから負けた部員達は元通り野球部に入ってもらいます。ペナルティーも別にありません!」
全員(ふう)
醍醐主将「監督にも当分監督を続けてもらいます!」
瀬戸監督「いや、俺は……」
零「……実は瀬戸君には春までと言う話で次の監督を決める予定だったんだが部員達の頼みじゃ断れないよね」
醍醐主将「そうだったんですか?」
瀬戸監督「ああ。次の監督は誰か知らんが俺よりはマシな奴だ。お前達もそいつの方が良いだろう!」
全員「そんな事ありません!」
瀬戸監督「っ!?」
秋山「そうですよ。創部からずっといるのが監督じゃないですか、野球部を一番知っている監督が辞めたら俺達は誰に付いて行けば良いんですか?」
静木「……監督、いまさらですがやはり監督は残った方が良いと思います!」
瀬戸監督「……お前達」
零「ま、それが無難なところだろうね。瀬戸君には引き続き天狼野球部を率いてもらおうか!」
静木「理事長、色々とすみませんでした」
零「構わないよ。何かを悟りたいならやらなきゃ分からないからね。他人はこんなバカな事をとでも言うんだろうがやって分かったならこれは有意義な事だったんだよ。少なくとも私は君達を責める事はしないよ!」
全員「ありがとうございます!」
零「そうそう。試合でもそう言うふうに笑った方が私も良いと思うんだけどね。ねえ瀬戸君!」
瀬戸監督(弱さを見せたら付け込まれる。そう思ったんだがな)
零「ま、敗北も有意義だったと言う事さ。勝利し続けるのは大事な事だがその為に何かを失っても良いとは思えないよね?」
瀬戸監督「それは本音か?」
秋山&静木「?」
零「もちろん!」
瀬戸監督「分かりました。そう言う事なら理事長の好意に従います。しかしいきなりやり方を変えろと言われて困るので文句があるなら俺にハッキリ言ってくれ!」
全員「は、はい!」
零「ははっ、まあいきなり変わるのも難しいだろうからゆっくり変わって行けば良いさ。秋の大会期待しているからね!」
全員「はい!」
秋山「さてと俺達はこれで終わりだけど、いきなり消えるなんて真似するなよ!」
静木「気付いてたか?」
秋山「どうせ負けたら退学届けでも出そうとしてたんだろうが、辞めて責任取るなんて俺は認めないからな!」
静木「ああ。お前がそう言うと思って俺も言うのをやめたんだよ!」
秋山「なら良い。それじゃ次はプロの舞台で勝負だな!」
静木「一応懇意にしてくれる球団はあるけど、本当に指名してくれるかな?」
秋山「待ってやるよ。何年でもな!」
静木「上から目線が気に入らんが今日の俺は敗者だ。あまんじて受け止めてやるよ!」
秋山「どっちが上から目線だよ。ったく!」
静木「ははっ、こう言うやり取りも久し振りだな!」
秋山「そうだな。まあ同じ舞台で戦って行くならこれから何年でもやって行けるだろうよ!」
静木「借りは返す。プロの舞台で必ず!」
寺沢「来たな。裏切り者共め!」
清水「別に裏切ったつもりはないが?」
寺沢「どうせ貴様はそう言うだろうと思ったぜ。それより荒井、何か申し開きがあるか!」
荒井「お奉行みたいな責め方をしないでくれよ」
醍醐主将「それでどうして静木さんに付いたんだ?」
荒井「まあなんと言うか男の意地みたいな物を感じてな。あの人を放っとけなかったんだよ!」
寺沢「良し! それなら許そう!」
荒井「軽っ!? つうかそんな簡単に許すのかよ?」
醍醐主将「まあ許したくないなら勝利した時にペナルティー言ってたからな」
清水「ま、結局元の鞘に収まったんだ。良かったじゃないか」
寺沢「お前も軽いな。勝った時はお前がキャプテンになったんだろうし悔しくないのかよ?」
清水「勝とうが負けようが部は続いてたろうし悔しさなんてないさ」
荒井「ま、そう言う事なら負けて良かったのかも知れないな。勝ってたら秋山さんと静木さんが仲直りする事もなかっただろうしな」
醍醐主将「さあそれはどうかな」
荒井「ん?」
寺沢「とにかくこれで四天王復活だな!」
清水「四天王? ふむ。天狼四天王か、結構良いかもな」
醍醐主将&寺沢&荒井「えっ!?」
篠原「入って1年目でいきなりなんの試練だと思ったけど、無事終わって良かったな」
東山「まったくだよ。しかし雨降って地固まると言ったところで本当に良かったよ」
不動「この俺に相応しい高校デビュー戦だったな!」
東山「不動は大物だね」
篠原「まったくだな」

こうして天狼学園野球部の争いは終わった。そしてもう1つの名門無明実業は甲子園に向かう準備をしていた。

野球部チーム 11
連合チーム 4× 10
勝利
篠原壮也
セーブ
敗戦
静木克弥
本塁打 野球部チーム
連合チーム 秋山孝史

無明実業高校
大岡監督「それじゃ甲子園に出発だ!」
全員「おう!」
野村主将「俺達に取って初めての甲子園出場か、できる限り長くいたい物だな」
山口「1年達は最後まで勝ち上がるつもりですけどね」
酒井「うちは選手層薄いしケガ人を出さなければもしかしたらってのは楽観し過ぎですかね」
野村主将「いや、天狼に勝ったから俺達はかなり注目されてるはずだ!」
山口「話題性=実力と行けば良いんですがね」
酒井「可能性はゼロじゃないし行けるかも」
柴田「先輩達も盛り上がってるな」
山本「無理もないよ。みんな初めての甲子園だからな」
高橋「まあ僕らはベンチだけどね」
岩田「まあ仕方ないさ。出番が来るまでおとなしく待とう」
天野「とにかく目指すは全国制覇だ!」
柴田&山本&高橋&岩田「おう!」

天狼学園は新星天狼学園となり弱小無明実業も甲子園に向かう。全国制覇すれば全国でも知名度が上がり誰もが名門と呼ぶようになるだろう。果たして無明実業は甲子園でも勝ち上がる事ができるのだろうか?