第1章 悩む投手

今日ここ河原で1人の少年が悩んでいた。彼はサイドから投げる投手で無名だが能力は中学レベルを十分越えていた。
宮本「どうしようかな」

言い忘れていたが少年の名は宮本極(みやもときょく)と言う。悩んでいる内容は野球をこのまま続けるか続けないかと言う事だった。
宮本「うーん」

宮本は野球をしている物の別に野球が好きと言う訳ではなかった。ライバルがいると言う訳でもない。とにかく父親に言われて無理矢理始められされたのが切欠になっている。
宮本「本当にどうしよう」

やめるにやめられない状況と言う訳でもない。ただ、野球をやめた後は何をすれば良いか分からない。未知を怖がる少年とまあ人間性で言えば別に珍しくもない少年であった。
宮本「分からないな」

結局、何も決められないまま宮本は創成高校に入学した。

創成高校 1−C
宮本「ふう、初日だし精神的に疲れたかな」
大柄な少年「何を言ってるんだよ。高校生に取ってはこの放課後が本番じゃないか」
宮本「確かにそう言う考え方もあるね。と君は?」
結城「良くぞ聞いてくれた。俺様の名は一発屋の結城徹(ゆうきとおる)と申す!」
宮本「何か言葉使いが変だけど?」
結城「気にすんな。ところで…………えっと?」
宮本「宮本、宮本極だよ」
結城「へえ。なんか強そうで良い名前だな!」
宮本「そうかな?」

宮本に取ってはからかわれたり苛められたりあんまり良い印象のない名前だが目の前の少年は素直にも誉めてくれた。
結城「と言う事で一緒に野球部に行こうぜ!」
宮本「どう言う訳でそうなるの!?」
結城「ひょっとして野球が嫌いなのか!?」

野球を続けるか止めるか宮本は悩んでいる。だがそれは嫌いだから止めたいのかそれとも好きだから続けたいのかいまだに答えは出ない。
宮本「分からないんだ?」
結城「変な奴だな。自分の事だろう」
宮本「…………そうだね」

結城の何気ない一言だが宮本は結構傷付いたらしい。
結城「けど、そう言う事もあるよな」
宮本「えっ!?」

しかし傷付いた心など次のセリフで吹っ飛ぶのだった。いまだかつて宮本のこう言う考えに同意してくれた友人はいなかった。宮本は初めて結城と言ったクラスメイトに興味を持った。
結城「じゃあ野球部へ行こうか」
宮本「ひょっとして強制ですか?」
結城「分からないんだろう。だったらやって確かめれば良いじゃん!」
宮本「そう言う考えもあるか」

ガキッ!
結城「痛っ!?誰だ! いきなり人様の命を狙うとは親の教育なってないぞ!」
クラスメイトの女子「言って聞かないおバカさんには当然の報いです」

いきなり結城に蹴りを入れたのはクラスメイトの女子だった。ちなみに2人は古くからの知り合いらしい。
結城「げっ、神音っ!?」
宮本「お知り合いですか?」
神音「失礼、私は麻生神音( あそうかのん )、君がそこの誘拐犯に連れて行かれそうになっているからお節介ながら手助けさせてもらいました!」
結城「身代金なんざ取らねえよ!」
宮本「そこなんだ?」
神音「別に誘拐=お金ではありませんよ。その人の身柄を拘束する理由やその人自身を手に入れるのが目的か、理由は色々です!」
宮本「君も律儀に答えるんだ?」
結城「そんな難しい事知るか! とにかく俺は宮本と一緒に野球部に行くんだ!」
神音「だから強制はいけませんと言ってるでしょう!」
結城「聞いてねえよ!」
神音「昔から何度も言ってるはずです。そもそも彼の許可なくして無理矢理連れて行くなんて言語道断です!」
宮本「あのー」
結城「なんだ!」神音「なんでしょう?」
宮本「怖っ!? 行くだけなら別に良いですよ!」
結城「………………さすがは宮本、やっぱり男の友情だよな!」
宮本「調子良いね(友達になったの早まったかな?)」
神音「本当に嫌なら遠慮なく言って下さい。本気で黙らせますから!」
宮本「(この娘の方が怖さ何倍だな!?)平気だよ。それに出るだけ出たいと思わなくもないから」
神音「なるほど、確か宮本極君でしたね」

何がなるほどなのか分からないが神音は宮本を見て理由が深そうだと判断したらしい。
宮本「うん」
神音「私も一緒に行きましょう!」
宮本「へ?」結城「なんで!?」
神音「元々、私も野球部に入るつもりでしたから野球部に一緒に行っても問題はありません」
結城「またお前と3年間一緒なのか」
宮本(麻生さんも野球しているのか)
神音「嫌なのはこちらも同じです。あなたは何度言っても人の話を聞きませんから」
結城「また俺の不幸な部活が始まるのか」
宮本「………………」
神音「放っておいて構いませんよ」

そう言って神音は宮本の手を取って野球部へ歩いて行く。
宮本「うっ!?」
神音「どうしました」
宮本「(言えない。手を繋がれて恥ずかしいなんて)なんでもないです」
神音「そうですか、何かあったらすぐに言って下さい」

誤解されそうなセリフや行動が多いがこれが麻生神音の短所でもあり長所でもあった。
結城「俺を置いて行くんじゃねえよ!?」

そして結城は強引であるが面倒見が良く仲間思いの良い奴だった。内面は似ている2人だが相性は悪いらしい?
宮本「僕の高校生活どうなるんだろう?」

宮本はいきなりの濃いキャラに囲まれるなどこれからの高校生活に不安を感じた。果たして宮本は野球を続けるのだろうか?