第1章 会合する野球バカ達

この少年は武藤流動(むとうりゅうどう)と言う。高校で有名になりプロ野球に入ると言うサクセスライフを歩もうとしたが、見事に名門の入部テストに落ちて失敗した。
武藤「まずこれからどうしよう?」

一度落ちただけですっかり自信喪失ともはや他の学校のテストに行く意気込みもないらしい。
少年「…………お前、テストに落ちたのか」

落ち込んでいる武藤を心配している様には見えないが1人の少年が武藤に話しかける。
武藤「うん、君は?」
少年「俺は受かったよ」

武藤は名前を聞いたつもりだが向こうは勘違いしたのか受かったと言われ武藤はますます落ち込むのだった。
武藤「そう良かったね」
少年「一緒に行くか?」

しかし少年は当然の様に武藤に手を差し伸べた。
武藤「え?」
少年「俺と一緒に別の高校に行くかって聞いてるんだよ」
武藤「えっと君、受かったんじゃ?」
古賀「俺の名前は古賀大地(こがだいち)、人を捜している。あいつならきっと名門の野球部にいると思ってたんだがいなかったようだ。名門校を回って行くつもりだ。事情を話せばお前も受からせてもらえるかもしれん一緒に来るか?」
武藤「えっと、うん」

訳が分からなかったが武藤はこのまま落ち込んでもしょうがないので気を取り直して付いて行く事にした。
武藤「ちょっとは自信があったのに全部落ちたよ!?」

結果、武藤は最悪なまでにテンションを落とすのだった。一方、古賀は全てのテストに受かるがすぐに去ると訳が分からないらしい。
古賀「ここにもいないか、もう残ってる高校はこの近くじゃ流水高校くらいか、しかし、この高校には野球部がないんだが行くだけ行ってみるか、おい次の高校、野球部がないがそれでもついて来るか?」
武藤「もうこうなったらどこまでもついて行くよ」
古賀「それじゃ行くか」

完全に落ち込んでいる武藤だが古賀は特に気にせず流水高校へと向かう。
武藤「古い校舎だな。木造だし、地震が来たらあっというまに」
少年「そんな訳ないだろう」
武藤「うわっ!?すみません。別に学校の悪口言った訳じゃってなんだ生徒か(ここの先生かと思った)」
少年「別に生徒って訳じゃないけど、ん? お前、ここで野球すんのか?」

少年は武藤のバックをいちべつしてここで野球を始めるのか疑問を持った様だ。
武藤「今、色々な高校回ってるんだよ」
少年「ふーん、知らないなら忠告してやるがここに野球部はないぞ」
武藤「一応知ってます」
少年「ふーん、近くには名門も結構あるのにここに来るなんて変な奴だな」
武藤「その……落ちちゃったんだ」
少年「なるほどな…………野球か」

そう言った少年の顔と声には寂しさが漂っていた。
武藤「…………あの」
古賀「天童!」

武藤が少年に話しかけ様としたがそれを邪魔する様に古賀の大声が響く。幸い周囲に人はおらず注目を浴びる事はなかった。
武藤「古賀?」
天童「古賀か、こんなところで何をやっているんだ?」
武藤「…………知り合いなの?」

武藤は状況が分からず困惑していた。
古賀「バカ野郎! お前を捜していたんだろうが!」
武藤「えっと?」

武藤は話についていけずおろおろしている。
天童「落ち着け、ツレが混乱しているぞ」
古賀「落ち着ける訳ないだろうが! 一体、人がどれだけ心配していると」
天童「分かった分かった。話を聞いてやるからちょっとは落ち着け!」

とりあえず天童と呼ばれていた少年が古賀を落ち着かせる。
菱山「まず、俺の名は菱山天童(ひしやまてんどう)と言う」
武藤「菱山天童君か………………ってあの菱山天童君!?」
菱山「ふう、少しは落ち着け」

こう言った状況には慣れているのか菱山はあっさりと同じ言葉を続ける。
武藤「うん。えっと中学時代、球速145キロを記録して県大会を優勝した。あの数々の噂を持つ菱山天童君ですか?」
菱山「まあな」
武藤「でも何で天童君が野球部のない高校に?」
菱山「俺は昨年肩を故障して投手生命を終えたのさ」
武藤「そうだったんだ」

雲の上の存在が今は一般人と武藤は聞いた事を少し後悔した。
古賀「だから野球をやめるって言うんじゃないだろうな!」
菱山「俺はもう野球をするつもりはないと言っただろう」
古賀「俺が野球を始めたのは菱山天童と言う天才投手がいたからだ。その投手に憧れ野球を始めた。そいつが肩を壊したから野球をやめるって言う情けない野郎だとはな」
武藤「古賀、言い過ぎだよ」
菱山「古賀、お前の言う通りだ。まだ打者としての可能性がありながら俺はそれを拒否した。だからお前にそう言われても仕方がない。だが俺は未練をなくすために野球部のない高校に来た。これが答えだ!」
古賀「………………武藤、行くぞ」
武藤「…………うん」

迷ったが武藤は申し訳なさそうに菱山を見た後、慌てて古賀に付いて行った。
菱山「………………野球か」

未練をなくす為に来たと言った菱山だがその姿にはまだ未練がある様にしか見えなかった。
古賀「決めた!」

沈黙したまま並んで歩いていた2人だが古賀は何かを決意したらしい。
武藤「どうしたの?」
古賀「俺はこの高校で野球部を作る!」
武藤「…………うん!」

察しの悪い武藤だが古賀が何故野球部を作るのかを決意した理由ははすぐに理解した。
古賀「出来ればお前にも手伝ってもらいたい!」
武藤「良いよ!」
古賀「すまない」
武藤「俺も菱山君にもう一度、野球やって欲しいからね!」

最初に決めた目標からかけ離れた目標になったが武藤は本当に楽しそうな表情をしていた。
武藤、古賀、菱山と後のプロ野球でも活躍する3人はこうして出会ったのだった。

選手名鑑No.1
名前 守備位置 学年 投打
武藤 流動 捕手 1年生 右投右打
弾道 ミート パワー 走力 肩力 守力 エラー回避
90
足の遅さが致命的だが基本的な技術は高い。
長打力もあると精神的な弱さと鈍足がなければ入部テストにも受かっていただろう。
性格はお調子者だが深みに沈むとなかなか抜け出せないと精神面にもかなり問題があるらしい。
基本能力は1年と言う事を考えたらやはり高い方だろう。それでは本人から一言!
武藤「絶対、菱山君にもう一度野球を始めてもらう!」