「では、まず守備から見せてもらうよ。」と、浪館がバットを持って言った。

　一年生は、顔を見合わせ、誰が一番に行くか互いに見ている。そこを大橋が怒鳴った。「誰でもいいんだよ！！さっさと出ろ！」

　「じゃあ、僕が行きます！」と、いきり立って出てきたのは、橘。ダッシュして、適当な距離に離れて構えた。

「バッチこーい！」と、橘はグローブの平を叩いて言った。

「あれぐらいのやる気だよ。」と、大橋が腕を組んでうなずいた。

「じゃあ、行くよ〜！？」と、浪館はボールを片手に持って橘に向かって言った。

「うっす！」と、橘も手を上げて答える。

　浪館の片手が上に上げられ、ボールが手を離れ宙に浮く。ジャストのタイミングで打った球は、グンと伸びた。

「うっそ？！」と、橘はあまりの打球の伸びに慌てて下がる。何とか追いついて、キャッチした。一年の間で「オォ〜」という声が上がる。

「よし！次！」と、浪館が次の球を打つ。今度は、スピードのついたゴロだ。

（ちょろいちょろい♪）軽々と捕って、キャッチャーをしている大橋に投げた。

ノーバン、ライナーで大橋の構えいたミットへボールが収まった。

　また、一年の間で歓声が上がる。大橋と浪館も目を見合わせた。

「彼は、なかなかやるな・・・。ようし！もういいよ！」と、浪館が声を上げて橘に声をかけた。

「あ、は〜い！」と、橘は元気良く走って行き、一年の場所に戻った。

「じゃあ、次の人！」と、浪館が後ろでかたまっていた一年達の方へ振り返る。

「はい！」と、背の高い青年、佐々木が出てきた。彼も橘と同じように走って守備位置についた。

「じゃあ、行くぞ！」と、浪館がボールを打った。ゴロボールだ。

ファーストミットをつけた佐々木は、軽々とボールを捌き、大橋へ。

「うん。彼もなかなか・・・・。」と、言いながら浪館は、次のボールをを打つ。今度は、大きなフライだ。

すばやく落下地点へ移動し、キャッチして、大橋へ。彼もなかなかの手慣れのようだ。

「うん。うまいなぁ。今年の一年生は・・・・。」と、浪館も感心している。

「佐々木君！君もあがっていいよ！」と、浪館が声を上げた。

「はい！」と、言って彼も橘と同じように一年の居たところに戻った。

「次の人！！」と、浪館はまた振り返って言った。

　第三話：下に続く。