第五話 【復活の大砲】
――5月12日――
芹名「今日は交流戦第二節中日戦の最終戦だ。1勝1敗できてるこの状況、絶対今日勝利し勝ち越すぞ。」
全員「はい!!」
芹名「それから、秋から故障していたやつ予定より遅れたが今日から戻ってきた。ほれ、挨拶!」
椎名「うぃ〜す。ども、新人どもは初めてか。椎名 克哉だ。よろしく。」
椎名 克哉
大卒3年目にして球界トップレベルの大砲。しかしいかんせん左に弱い。そのかわり右には極端に強い。
足は遅く守備範囲は狭いがエラーはほとんどしない。
昨年の成績 打率.254 47本 132打点(セ、パ通じて)
主なタイトル なし
椎名「先輩方は分かっているでしょうが俺は左投手のときはてんで役立たないんでフォローよろしく。」
全員「・・・・・・・・。」
アナ「さあ、本日はここ名古屋ドームから、西武対中日、交流戦第三回戦をお伝えいたします。
解説には元広島東洋カープ、黒坂 康太さんにお願いします。」
黒坂「どうも、よろしくお願いします。」
黒坂 康太
赤ヘル旋風を巻き起こした時代に三番を張り続けた安打製造機。
しかし小技、一発と何でも出来たので天才と呼ばれるほうが多い。
通算成績 打率.312 246本 936打点
主なタイトル 85,86,88年ベストナイン 86年ゴールデングラブ賞 84,85,86,88,89年首位打者
|
アナ「両チーム互いに若手を出してきましたね。」
黒坂「ええ、久住は一年目で今日は公式戦先発2度目ですね。対する富樫は2年目ですね。
お互いに速球を持ち味にする投手ですから正に力と力のぶつかり合いでしょうね。」
アナ「なるほど。今日から西武の椎名選手が一軍に復帰したようですね。」
黒坂「高田、香田、椎名のクリーンナップですか。恐らく球界トップクラスの重火器ですね。」
アナ「六番のアレックス選手も侮れませんね。」
黒坂「ええ、今年で日本二年目、今年こそ六番に甘んじていますが昨年までは四番でしたからね。
普段はDHですが交流戦でセリーグ本拠地のためDHがないからと内野の彼を
無理やり外野に入れたくらいですからね。期待してるんでしょう。」
アナ「対する中日打線はどうでしょうか?」
黒坂「昨年までは火力が心配されましたが今年はガーフィールドを取りましたからね。
もともとある守備力、機動力に火力が加われば恐ろしいチームになりますね。」
アナ「ありがとうございます。それでは早速試合のほうへ参りましょう。マウンドには後攻中日の富樫が上ります。」
久慈「おい、富樫。今日の相手は強力打線の西武だぞ。気締めていけよ。」
富樫「大丈夫ですって。相手は一年目でしょう?打線の方がメッタ打ちにするんでしょう?」
久慈「お前、うちの打線の貧弱ぶりを甘く見んじゃねえぞ?」
富樫「知ってますよ。そのせいで一体何度俺の白星が黒星に変わったことか。」
久慈「分かったからそのでかいのやめて。」
椎名「な〜っはっはっはっは!!右だ右だ〜〜!!」
久住「椎名さん、なんでそんな上機嫌なんすか?・・あ、一軍に復帰したから・・」
椎名「違うわ!先発が右だからだ!!復帰しても相手が左じゃやる気なんかでるかい!!」
久住「・・・・・・・・。」
猪口「な?面倒な男だろ?」
久住「まったくです。」
ズバーン!
アナ「最後はノビのあるストレート!!高田、見逃しの三球三振!」
黒坂「最初から飛ばしてるね。あれで後半もちますかね?」
久慈「どうしました?やはりさすがのルーラーもポーカーフェイスキャッチャーの私の
配球は読めませんか?」
高田「ふ、どうだろうね。」
久慈「・・・・・。(間違いなく球界一手強い打者だろうな。この人は。)」
芹名「お前が三球三振とは珍しいな。高田。」
高田「まあまだ合計5回しか対戦したことのない投手ですから様子見というとこです。
と、そうだ。久住君。」
久住「はい。なんですか?」
高田「今日は右投手だ。恐らく椎名が爆発してくれる。気楽に行こう。」
久住「そんなに対右投手においては信頼できるんですか?椎名さんって。」
高田「その辺は問題ない。彼にとって右投手はみんなカモだ。」
久住「まじっすか?」
高田「ただ痛いのは逆に左にはみんなにカモられる。」
久住「なんと不安定な人だ・・・。」
しかしやはり右に対しては椎名はやはり強かった。
カッキ―――――ン!!!!
アナ「いった〜〜〜〜!!これは文句なし!ライトは一歩も動かない!入った!ホームラ〜〜ン!!
ナゴヤドームの看板の上!超特大ホームランです。」
黒坂「あそこまでもって行きますか。右ならなんでもありですね。彼。」
椎名「な〜っはっはっは!!やはり右だと気合の入り方が違うわい!!」
芹名「まったくだ。その気合を左にも活かしてくれ。」
椎名「そりゃむりっす。」
ベンチ「即答かよ!!」
高田「さて、久住君。予想通り椎名が一発叩き込んだわけだが、どうだい?今日は。」
久住「上々ですかね。あれなら椎名さんも期待できますしいいところまでいけるかもしれません。」
高田「そうか。まあ僕もベストを尽くそう。今日は完投でも狙うか?」
久住「んな簡単に言わんでください。まだ2回なんですし。」
高田「大丈夫だ。君はキャンプから大分走りこんでいる。体力、下半身共に力がついてくるはずだ。」
久住「そりゃ監督に走りこみは大事だって言われましたしアメリカでも毎日7キロは走ってましたよ。」
高田「そこだよ。開幕のときに谷田さんに妙なこと吹き込まれたらしいが気にするな。
ああいうのは生半可な努力しかしなかった人の台詞だ。須磨さんだって恐ろしいほどの努力を
中学時代からしていたそうだからな。」
久住「はあ。(この人結構反骨精神旺盛か?)」
高田「それに今日は走りこみの成果かオープン戦の時よりノビ、速度、球の重さが格段に違う。」
久住「そうですか?速度しか分からないんですけど。」
高田「受けている僕が言っているんだ。自信を持っていい。」
久住「そうですか?」
高田「ただし、走りこみは欠かさずにやること。それと毎日これも追加。」
久住「なになに?思いっきり足を伸ばして・・てこれだけで大丈夫なんですか?」
高田「大丈夫だ。そのトレーニングで130から150まで速度が上がった選手を知っている。」
久住「へえ。(まあ、そこまでいうならやってみようかな?)」
中「よし。ここで打ってプロの洗礼というやつでも」
須藤監督「おお!中、頼もしいぞ。さすがは選手会長!」
ヒュルルルル
中「すんません。スローカーブに三振してきました。」
須藤「ん、まあ仕方ない。よし!弥生、かっ飛ばせ!!」
弥生「土井と共に終わってきました〜。」
須藤「・・・・・・・・。」
その後も中日は投打共に久住、椎名の二人にいいようにやられてしまう。その中でも圧巻は六、七回
ズド―――ン!!
アナ「最後は155キロストレート!!六者連続三振ですよ黒坂さん。」
黒坂「ええ、あれは下半身をしっかり鍛えてますね。基本を怠らないのはとても大事ですね。」
アナ「しかし初回から富樫、久住共に飛ばしていますが大丈夫でしょうか?」
黒坂「久住は大丈夫みたいですね。あれこそ下半身を鍛えてる証拠ですね。
逆に富樫はきつそうですね。顔で分かりますよ。」
アナ「確かに大粒の汗を流して肩で息をしてますね。」
黒坂「八回はクリーンナップからですから左投手でしょうね。」
アナ「ああ、椎名選手ですね。」
黒坂「そういうことです。」
アナ「ここで富樫選手は降板、左のセットアッパー、三浦選手が上がります。」
黒坂「中日には右左2人のセットアッパーがいますね。まさに投手王国ここにありですね。」
椎名「あ〜もう!左出てきた!!やってられるかい!!!」
芹名「おい、お前左が出るたびにその反応するのやめろ。」
椎名「だって打てねえんですもん。」
高田「そのわりサヨナラの場面では左でも打つよな。」
椎名「ああ、そりゃもうそんときゃやけくそですから。」
芹名「ん?ちょっとまて。やけくそなら左打てるのか?」
椎名「ええ、まあ並には。」
芹名「じゃあお前常にやけくそならホームランの日本記録も更新できるんじゃあ・・・。」
椎名「いやです。めんどくさいし疲れるから。」
芹名「・・・・・・・・・。とりあえずお前の打順だ。」
ズドーン!!
椎名「ただいまっす。」
芹名「なんで三球三振で笑顔よ。」
椎名「もう打てないんで開き直りました。」
芹名「それだけはやめやがれ。」
椎名「はい。すんません。」
須藤「よし。クリーンナップを三者凡退に抑えたのは大きいぞ。この勢いで新人ごとき粉砕して来い。」
全員「はい!」
須藤監督のもと意気込む選手たち。八回に三番上田のバットが火を噴きその牙がついに久住を捕らえる!!
かと思われたが・・・
ストーン!!
アナ「最後は134キロのフォークボール!八番久慈空振りの三振!久住、プロ初完投です。」
黒坂「142球の完投ですか。本当に走りこんできてますね。久住選手は。」
アナ「結局最後まで球の勢いは衰えず失点は八回の上田の一本だけに抑えました。」
久住「やた〜。プロ初完投だ!!」
芹名「よくやった。俺のお前への評価もグーンと上がったぞ。」
高田「ナイスピッチングだ久住君。」
久住「いえ、高田さんのリードのおかげです。」
椎名「なにをいう。ホームラン2本3打点の俺の活躍あってこそだ。」
芹名「ほう、九回ワンアウト満塁でゲッツーを食らった活躍か?」
椎名「すいません。」
|
こうしてプロ野球初の交流戦も佳境に向かっていく。
そして巨人が外国人の獲得が立て込む6月に、脅威の大型補強に手を出した。