第六話【史上最大の輸入品】
― 6月27日 ―
蓮宮邸
【久住】今日はオリックス相手に完勝できたし気分もいいのでニュースを見たら早く寝よう。
【雅樹】なんでだよ。気分いいなら普通夜更かししねえか?
蓮宮 雅樹
久住の厄介になっている蓮宮家の一人息子。趣味はNFL・プロレスのテレビ観戦、野球。
高校3年生で野球部では主将。久住にはタメ口だが他の目上の人には普通に敬語だったりする。
【久住】ばかたれ!夜更かしなどしたらここの家主が困るだろうが!!
【雅樹】お前実はすっげえ良い子だろ。
【久住】Sure!
【雅樹】だから英語はやめい!
【久住】んなこと気にせずニュースだニュース。
【アナ】本日巨人がアナハイム・エンジェルスの捕手、ダン・バレンタイン氏の獲得を発表しました。
ダン・バレンタイン
元NFLプレイヤーとして強肩で鳴らした名クォーターバック。
27歳となった3年前に突如野球に転向。持ち前の地肩の良さと抜群のセンスで一躍トップ選手になった。
【久住&雅樹】ダン・バレンタインだと!!!!
【久住】なんでバレンタインが日本に?
【雅樹】NFLの時のチームとチーム名が同じだったからか?
【久住】それならメジャーにもあるじゃないか。
【雅樹】む、そうだな。
【久住】その真偽は本人に聞かないと分からないみたいだな。
― 7月8日 ―
【高尾監督】今日から助っ人外国人がうちにやってくるぞ。
高尾 宗平
元巨人の名キャッチャー。ゴールデングラブ賞を幾度となく受賞した。
通算成績 打率.254 87本 536打点
主なタイトル ベストナイン3回 ゴールデングラブ賞12回
【小柳】えらく上機嫌ですね。
【高尾】そりゃあかなり期待してるからな。
【大東】しかしうちが外国から直接取るのってはずれが多いよな。
【高尾】だからそれを払拭するいいチャンスだ。その実力が彼にはある。
【小柳】ん?ひょっとしてあれじゃないか?
尾崎が指差す先の関係者用入り口から一人の男が走ってきた。
【高尾】おお!ダン君だ。入団会見で会ったからわかるぞ。
【大東】へ〜、あれがダン・バレンタインか。
と話しているうちにその男が集団にたどり着いた。
【??】どうも。
【高尾】おはよう!ダンくん。
【??】いえ、私は通訳ですよ。
【高尾】へ!?
【通訳】ですから通訳です。
【小柳】ダンじゃねえじゃん。
【高尾】は、ははは。まっ、まあ気にすんな。
【通訳】ダン選手なら今来ましたよ。
すると今度は関係者用入り口から二人出てきた。
【高尾】おお、彼だ!彼こそダン君だ!
といって右側の選手を指す監督、すると
【通訳】いえ、彼は昨日一軍昇格したシェ−ン選手です。
【小柳】分かってねえじゃん!!
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一回表 |
【緒方監督】お〜い、牧野。
【牧野】はい、なんですか?
【緒方】出塁したら二球目に走れ。相手の肩を見たい。
【牧野】盗塁王を毒見に使う気ですか?
【緒方】肩を見るのに足は関係ない。それに上手くいけば盗塁数が一個増えるぞ。
【牧野】そして下手したらリーグ一の足の持ち主が塁から消えますね。
【緒方】マイナス思考はいかんぞ牧野。ほら、いってこい。
緒方 恭一
豪腕で鳴らした元ヤクルトのエース。しかし怪我のため8年で引退した。
通算成績 62勝23敗0S 防御率3.17
主なタイトル 最多勝2回 最優秀防御率1回 ベストナイン1回
【牧野】(しょうがない。とりあえず出塁することだけを心がけよう)
ズドーン!
【アナ】今日の第一球は143キロのストレート!インハイギリギリに決まりました。
【ダン】(この人の球見た目より重さがないね。これじゃあクリーンナップと当たるとき不安だ。)
【牧野】(今日は普段よりノビがない。これなら俺でも打てる。)
カキーン!
【アナ】打球はきれいにセンター前へ!広島、盗塁王を生かすことが出来るでしょうか?
【解説】真ん中高めのカーブですね。コースが甘かったようですね。
【大東】厄介なランナーだしてしまったな。配球は考えてもらわんとな。
ズバーン!
【アナ】二球目!一塁ランナー牧野、早々に走ってきた!
【ダン】初マスクだからってなめるなよ!!
ヒュ――ン!
【二塁塁審】アウトッ!
【牧野】まじで?大東さんのストレートとはいえこんな楽勝で刺されたの初めてだぞ・・・。
【アナ】アッ・・アウト!アウトです!私はあんなに簡単に牧野が刺されるのをはじめて見ましたよ。
【解説】私もはじめてです。やはりNFLの現役クォーターバックは地肩が違いますね。
【牧野】ただいま戦死して帰還してまいりました。
【緒方】おい、戦死して帰還っておかしいぞ。
【水原】監督、つっこみどころが違う。
【西村】牧野、本気で走ったよな?
【牧野】当然です。野球に手抜く気にはなりません。
【水原】その言葉去年パリーグ行ったどっかの馬鹿に聞かせてやりたいわ。
水原 一
広島の選手会長。打撃、守備全てにおいて水準以上の活躍が出来る上に。安定感もある。
昨年の成績 打率.302 27本 92打点
【椎名】ぶふぁっくし!!
【久住】そりゃまた変なくしゃみですね。
【椎名】きっと誰かが俺のパワーを羨んでんだろうな。
【芹名】もっと真面目に野球やれっていってんのかもな。
【椎名】何をいってますやら。誰が真面目にやっていないと?
【芹名】今さっきくしゃみした人以外に誰が?
【椎名】ではどこが不真面目か述べてみてください。
【芹名】時々送球が緩慢、簡単な内野ゴロは途中から歩く、守備時にあまり動かないetc,etc・・・。
【椎名】申し訳ない。
結局その後広島は波多野、森本と凡退してしまう。
一回裏 |
ガキ!
【菅間】ぐぅ!打ち損じた。
【村木】どうだ?今日の今浪さんは。
【菅間】球のキレは前回より良いと思う。それに今日はノビもある。調子はいいぞ。
ズバーン!
【村木】む、確かに今日はノビがある。
クククク!
【村木】く、今日はこんな近くから曲がってくるのか?
【伊集院】お前が簡単に見逃し三振になるほどいいのか?
【村木】ええ、特にカーブが厄介です。
伊集院 総太
史上最強打線の四番にして球界トップレベルの長距離砲。パワーは椎名に若干劣るが安定度は格段に上
昨年の成績 打率.312 51本 142打点
主なタイトル 首位打者1回 本塁打王6回 打点王4回
小柳はそのカーブでファーストゴロに倒れた
二回表 |
しかしその意気込みでスイングが大振りになりカーブでタイミングを外され凡退してしまい
他の二人も力の入りすぎで大振りになり水原の二の舞になってしまう
【緒方】いや、短くねえ!?
二回裏 |
カキーン!
その言葉通り伊集院は意地を見せつけタイミングを外されながらも強引にレフトへ流した
【高尾】ダン君チャンスだ!一発いいの頼むぞ!
【ダン】イエス!ちょっとあの辺狙ってくる!
【高尾】ん、あの辺?・・・・てあそこ看板やん。
クククク!
【アナ】一球目はボールからストライクになるスライダー。ダン、手が出ないか?
ヒュルルル!
【アナ】二球目はカーブ。これでツーストライク。ここまでダンは一度もバットを振っていません。
カキ――――ン!!
【アナ】打った〜〜〜〜〜〜〜!!三球目、公式戦初めて振ったバットに当たった打球は大きな弧を描き
スタンドへ〜〜!!っと、ライトスタンドの栄養剤の看板に直撃〜!!
【高尾】本当に指差した看板に当てやがった。なんだ、あいつは。
【村木】パワー、バットコントロール共に申し分ないのかそれとも偶然か。」
【高見】よし。俺も続くぞ!
ズバーン!
【高見】ただいま。
【高尾】ん、まだ試合は長いから気にすんなよ。
その後の二人は共に内野ゴロに倒れてしまう
そして両チームヒットは出るもののあと一本が出ずに3回以降0行進が続く。
七回表 |
カキーン!
【アナ】打った〜〜!!三番森本の会心の当たり!打球はライナーでレフトスタンドに突き刺さった!
広島、一点返し点差は一点となりました。
【緒方】でかした森本!このまま一気に逆転だ!行け、水原!!
【水原】(さっきまで意味不明な事言って西村と泣いて怒ってたのに………。)
カキ――ン!
【アナ】水原も打った!!打球は綺麗なループでバックスクリーンに叩き込みました!
【緒方】おしおし!このまま突き放してしまえ、西村!!
【西村】オッケ〜っす!!!
カキ――ン!
【アナ】またまた行った〜!!!今度はライトスタンドへの特大の一撃!!広島、クリーンアップの左中右の打ち分けで一気に逆転です。
【解説】大東に疲れが出ましたかね?もう歳ですし。それにバレンタイン選手のリードミスが重なったようですね。
【アナ】つまりバレンタイン選手はリードに穴があると?
【解説】いえ、恐らくまだ日本の野球に適応仕切れてないんでしょう。バッティング面では問題ないようですが。
【アナ】そうですか。……っとここで投手交代のようです。先発の大東に代わり堤が二番手のようです。
堤は滞りなく後続を抑えこの回は三連発の三失点で留めた。
そして試合は3−2で広島リードのまま九回へ突入する。
九回裏 |
ズドーン!
【有田】むうう。
【アナ】有田、手が出ない。152キロの直球に見逃しの三振です。
【解説】いくら巨人打線とはいえ8番に棟方の直球を打てというのは酷と言うものですかね。
【高尾】むう、三振か。
【有田】お役に立てずすみません。
【高尾】気にしてはいかん。よし、代打だ。
【アナ】ここで代打に塩坂ですね。
【解説】まあここで代打の切り札というのはセオリーですね。
カキーン!
【アナ】塩坂、1−1からの三球目は棟方の足の左を鋭く抜けるセンター前ヒットです。
【解説】次の菅間は足だけではなく一発もありますから危険ですね。
カキン!
【アナ】打球は三遊間へ!しかしここは名手波多野がしっかりキャッチし二塁へ、そしてセカンド牧野が一塁に送球して
ダブルプレイ!この瞬間ゲームセット!広島、七回の三連発での一点をしっかり守り勝利を奪い取りました。
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