静岡県私立夕陽ヶ丘高校。地元静岡では有名な進学校である。勉強に力を入れているだけあってスポーツなどにははっきり言って全く力が入っていない。
そんな高校に県外からきた少年がいる。
その名は黄瀬遼太郎。
中学の時は野球一筋の生活を送っていた彼。その彼が何故こんな学校に入学出来たかというと…
黄瀬「(まさかこんな学校に入れるとは…。ほんの2ヶ月勉強しただけなんだけどな…。まぁ県外に行きたくて必死になった結果ってやつだな)」
そう簡単に結論づけていつもの場所に向かう。
黄瀬「やっぱ昼寝するならここだよな〜」
屋上にやってきた彼は敷き詰めてある芝生の上に寝転ぶ。さすがに金持ち学校のやることは違うわ…と思いながら目をつぶって段々意識がなくなっていく。
私立なのに授業に出なくて大丈夫なのか?と思うだろうがこの学校進学校にしてはさほど厳しくない。むしろ自由すぎるんじゃないかと思う。現に屋上も常に開放状態でいつでもこうやって昼寝ができる(多分昼寝しにくる人は自分しかいないだろうが)ってわけだ。
黄瀬「(しかし県外はやっぱ不便だな。どこに何があるかとか全然わかんねぇし)」
そう心の中で悪態をつきながら寝返りをうつ。
ここで読者の方々はこう思うだろう。
何故県外の学校に進学したのか。
もっともな疑問である。だが理由なしというわけではない。理由はただ一つ。知り合いに逢いたくないからだ。実は俺は中学の部活以外にもシニアで野球をやっていた。そのチームは部活と違ってとても強かったしチームメートもいいやつばかりだった。ただ俺は野球を辞めた。チームメートに引き留められたが辞めた。
理由を問われたが言わなかった。
さすがにマイペースと言われている俺でも面倒くさくなったなんて格好悪くて言えない。
黄瀬「(まぁでもさすがにここまで県外にくれば誰とも知り合いに逢わねぇよな)」
頭に知り合いの顔を浮かべていると寝る気が失せだす。
嘘をついて逃げ出したのはさすがに不味かったよな…。
黄瀬がチームメートについた嘘とは…
???「あれっ?もしかして遼太郎じゃない?」
……心臓が一瞬止まった。
そして背中に一筋の嫌な汗が流れた。
黄瀬「(知り合い!?まさかこんな田舎に(静岡のかなり端にある)あってもの凄い進学校に俺の知り合いがいるはずが…。でも俺の名前を言ったし…)」
この学校に入学して一週間。クラス内での自己紹介でしか俺の名前を言っていない。
まさかクラスメートか?だが振り向く勇気がない…。もし知り合いだったらどう言い訳すればいい…。こんなにピンピンしてるのは明らかにおかしいではないか…
黄瀬がチームメートについた嘘それは…
黄瀬「俺…実はすげぇ病気にかかって田舎の澄んだ空気を吸わねぇと生きていけねぇんだよ…」
どうせすぐばれる。そう思った。どんな馬鹿だってこんなわかりやすい嘘信じるわけがない。だがチームメート達は俺の想像を遙かに超える馬鹿どもだった。
なんとこの嘘を信じて泣く奴はいるわなんで俺に言ってくれなかったんだと絶叫するやつはいるわと一人も怪しむやつはおらず俺は温かくそして悲しまれながら地元名古屋を後にした。
そんな俺がこんなに元気でしかもまだ寒い気温の中外で昼寝をしている。
これは完全に嘘だということがわかる。
するとどうなるか…。まだ怒られて罵られたりしたほうがまだマシだ。チームメート達はそんなことはしないだろう。恐らく…
「なんで俺に言ってくれなかったんだ!!俺は悲しい悲しいぞ!!」
「遼太郎君!!私ってそんなに信用ならないかなぁ(目にいっぱい涙を溜めながら)…。私にちょっとでも言ってくれたら何とかできたかもしれないのにう、うわぁぁぁん!!!!(号泣」
…うざい…うざすぎる…。
確かに俺なんかの為に色々心配してくれるのはありがたい。
だがこれは心配しすぎだろう。
何故俺がこんな反応になるかわかるか?
もちろん同じようなことがあったからだ。俺がシニアの野球練習日に大事な大事な用事があったとき(俺の好きなゲームの発売日と重なったため)に嘘をついた。しかし偶然見つかってしまい俺は怒られるのを覚悟した。
だがチームメートはさも当然のごとく上記のようなことを言ったのだ。
黄瀬「(確かあの後同じようなことを何回も言われたんだったよな…ある意味地獄だったな…)」
一人でぶつくさとつぶやいているのを見てしびれを切らしたのか声をかけた少女が俺の前まできた。
???「なんだ!やっぱり遼太郎じゃない!私人違いしちゃったのかと思ったわよ」
俺は恐る恐る顔を上げた。
するとそこには俺のよく知った顔があった。