−1994年 4月−
物語はこの時から始まる。今日ここ赤竜高校に入学した少年こと斎藤一こそがすぺての始まりである。
斎藤「ここが赤竜高校か強そうな名前だな」
真田「ドラゴンはゲームでも強敵って決まってるからね!」
斎藤「つかぬ事をお聞きしますが俺、口に出してましたか?」
真田「ハッハッハ! おかしな事を聞く人だね。口に出さなきゃ分かるわけないじゃないか?」
斎藤「えっと、恐ろしくするどい人なら分かるんじゃないかなと」
真田「なるほど、そういう人に心当たりがあると……」
斎藤「いや、ないけど」
真田「……そうですかちなみに僕は部活で野球部に入るつもりなんだけど君は?」
斎藤「奇遇だな。俺も野球部に入るつもりなんだ!」
真田「おおう! これぞ運命の出会いっ! では一緒に野球部に行きましょう!」
斎藤(そうか、こいつ誰かに似てると思ったら村雨にそっくりなんだ)
それを遠くから観ていた未来の野球部員も1人いた。
吉田(あいつらも野球部なのか、あいつらと3年間チームメイト?)
斎藤「何故か同じクラスか」
真田「ふむ運命だね」
斎藤「そういう会話は止めろ。何故か俺は昔からそういうネタにされやすいんだ!」
真田「(ササッ!)大丈夫だよ。僕はそういう差別はしないから」
そう言いながら知り合った少年は斎藤から距離を取った。
吉田「距離を取って言っても説得力がないぞ」
斎藤「助かった。ところで君は?」
吉田「吉田毅、同じく野球部に入るつもりだ。よろしくな!」
斎藤「なんで俺達が野球部に入るって知ってるんだ?」
吉田「朝に話してたろうが、全校生徒が注目して観ていたぞ!」
斎藤「嘘っ!?」
吉田「あれだけ視線あびてて気付いてなかったのか!?」
斎藤「全然気付かなかった」
真田「いきなり僕も時の人か〜♪」
吉田「あれは行き過ぎだと思うけど、お前もあんまり気にするなよ」
斎藤「いや、実はそこまで気にしてはないんだけど」
吉田「(なんつうか2人共精神的に強そうだな)とりあえずよろしく!」
真田「僕は真田和希、よろしく!」
斎藤「俺は斎藤一、これから3年間よろしく頼む!」
こうして仲良し3人組が結成された! 簡単な挨拶も終わり始業式も終わった斎藤達は赤竜高校のグラウンドに向かう!
中西監督「監督の中西啓示だ。うちでは実力があれば1年でもスタメンで使うので頑張ってくれ!」
斎藤(話の分かる監督だな。1年でエースを奪って見せるぞ!)
真田&吉田(さすがに高校はレベルが違うだろうし狙うなら秋だな!!)
大下主将「俺がキャプテンの大下真二だ。悩みがあれば気軽に言ってくれ!」
斎藤(やっぱり中学生と比べると大きいな)
大下主将「では…………えっと…………とりあえず1年には見学でもしてもらいましょうか?」
新入部員(さっきのキャプテンらしい威厳が)
相良「とりあえず普通にランニングや素振りなんかで良いんじゃないですか?」
大下主将「そうだな。今日はそれで良いか」
真田「ういっす!」
タッ! タッ!! タッ!!!
全員「なっ!?」
大下主将「なんだあいつ、凄い足だな!」
相良「ええ。これで盗塁技術があれば夏には使えますね」
斎藤「とおっ!」
タッ! タッ! タッ!
真田「むっ! なかなか速いな!」
斎藤「くっ! 俺が追いつけないとは!?」
大下主将「後ろのも1年か速いな」
相良「ええ。瞬発力もそうですが持久力もかなりの物ですよ」
ブン! ブン! ブン!
吉田「ふう」
大下主将「あれも1年か、とても1年とは思えないスイングだな」
相良「ふっ、今年の1年は頼もしいな」
斎藤「えっと、なんとか監督さん?」
中西監督「中西だ。監督の名前くらい覚えろ。それで?」
斎藤「俺、ピッチャーなんでピッチングを見てもらいたいんですけど」
中西監督「ほう。1年で夏のエースを狙ってるのか、分かった。大下!」
中西監督が大下主将に球を受けるよう指示をする。
大下主将「あのー、俺、外野手なんですけど」
中西監督「キャッチャーもできるだろう」
大下主将「……まあ、できますけど(キャッチャーって地味だからな。それに俺の肩はそれほどでもないし)」
斎藤「それじゃあ大なんとかキャプテンさん、お願いします」
大下主将「下だ。大下な。言いにくいならキャプテンと呼べば良いから」
斎藤「てやっ!」
ズバ―――ン!
大下主将「速いな。130キロは出てる。それにかなりノビてるな。次は変化球だ!」
斎藤「変化球!」
ククッ! スト―――ン!
大下主将「カーブも良いな。フォークも使えそうだし1年でこれなら即戦力だな」
中西監督「今年の1年は面白そうな奴が多いな」
相良「そうですね」
そんでもって高校初日の練習を頑張り日も暮れて行った。
中西監督「とりあえず1週間はこのメニューで行く! 物足りない奴は自主練でもしてくれ!」
新入部員「はあはあ」
斎藤(この程度の練習で参ってるのが何人かいるな。こんなので大丈夫か?)
吉田(甲子園で活躍した高校にしてはそれほどでもないな)
真田(さすがは高校、中学に比べるときついな)
中西監督「おっと言い忘れていたが1週、2週と段々練習をきつくして行くからな! それじゃあ解散!」
大下主将「お疲れの新入生諸君には良い話があるぞ。この俺が1年全員に夕食をおごってやる!」
新入部員「本当ですか?」
大下主将「おう! みんなついて来い!」
新入部員「はい!」
と言う訳で大下主将におごってもらいに来た。
斎藤「1番高い焼肉定食が850円か」
大下主将「言い忘れていたけど500円以下のメニューのみおごりな」
新入部員「…………」
吉田「じゃあ俺はかつ丼で」
真田「僕は天丼にするよ」
斎藤「じゃあ俺は牛丼にするか」
大下主将「全員丼物ばかり食べてるな。俺はきつねうどんにするか」
斎藤「味も良いな」
吉田「たしかに美味い」
真田「この値段でこれなのに僕達以外にお客いませんね?」
大下主将「大体昼に人が多いらしい。夕食時には何故か少ないらしい」
斎藤「ふむ。よく来る事になりそうだな」
そんでもって解散し自宅へ帰る。
斎藤「ただいま」
月砂「お帰り!」
斎藤「………………」
月砂「どうしたの?」
斎藤「いや、朝に散々嫌みを言われたのに」
月砂「何? あんな事を気にしてたの?」
斎藤「すっげー、ブラックな事言われたのに(思い出すとマジで泣きそう)」
月砂「はあ、あんたいったい何年私の弟やってんのよ」
斎藤「そりゃ、ずっとですけど」
月砂「まあそれはいいけど、ところで食事は?」
斎藤「(まずい連絡するの忘れてた)………………えっとすみません。キャプテンがおごってくれると言ったから食べて来ました」
月砂「なるほど、それじゃ仕方ないか」
斎藤「ですからまことに申し訳ありませんが食事は…………へ?」
月砂「どうしたの?」
斎藤「お姉さま、何か悪いものでも食べ―――うっぎゃー!?」
今日の教訓、言葉には気を付けましょう。
斎藤「まだ痛いな。しかし今回は自業自得だな。しかし姉貴は格闘技の達人ってくらい強いからな。我流であのレベルだもんな」
こうして斎藤の高校野球が始まった。そしてここから斎藤の長い旅路が始まるのだった。