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中西監督「まあ、斎藤以外の投手は地方大会の1回戦でも通用しないだろうな」
中西監督「確かに昔からいまだに高校生は連投する投手が居て珍しくはないが」
斎藤「その時はその時です。打ち勝つしかありません!」
中西監督「結局はそうなるか、うちのレギュラーとベンチに投手の才能がある奴はいないしな」
相良主将「俺ではダメでしょうか?」
中西監督「確かにお前の肩は凄いが、外野とマウンドでは違うし…………まあ、やるだけやってみるか」
斎藤「コントロールは悪いですけど、140キロは確実に出てるんじゃないですか?」
中西監督「確かに速いが……」
斎藤「これから投げ込めばコントロールも付くんじゃないですか?」
中西監督「その通りだが……」
中西監督「無理だな。確かに相良はお前より速い球を投げるが―――やはり俺が打席に立つか!」
中西監督「相良、俺と勝負だ!」
中西監督「分かってる。危ないボールは避ける。相良はストライクを投げる事だけに集中しろ!」
中西監督「やはりな。相良、お前には投手は無理だ!」
中西監督「なんだ分かってたのか!」
中西監督「投手ってのは全ポジションの中でも特に才能が要求される。残念ながら相良にはその才能がなかったって事だ。逆に130キロでも三振を奪える斎藤にはその才能がある!」
相良主将「つまり速くてもノビもキレもないから俺の球は打ちやすいって事だ」
中西監督「アマでもプロより速い球を投げれるのにプロになれない奴がいるのはそういう事だ。速くてもノビ、キレ、球威、制球力が一定値を越えてなければプロにはなれないどころかアマでも通用しない!」
相良主将「俺の球はその辺のレベルの高校には通用しても名門レベルになると通用しないって事だ」
吉田「なるほど、なんで斎藤のストレートが通用するか疑問だったんだがそういう事か」
吉田「これからバッテリーを組むんだし気にするな」
斎藤「はあ、分かったよ(こいつで大丈夫かな?)」
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大島監督「今日は決勝だ。知っての通り昨年は青木がいて得点は良かったがエースが居なくて苦労したが結果は優勝だ!」
大島監督「そして一昨年はエースの浅野が居たおかげですんなりと勝てて優勝できたな。言いたい事が分かるか?」
大島監督「こほん! とまあ『2年連続優勝』なんて考えずに力を出し切った試合をしよう!」
佐伯「しかし凄いですね。今年の春の大会も準優勝と本当にうちって強いんですね」
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大岡監督「またしても決勝は憎き斉天大附属高校だ!」
大岡監督「甲子園はやはり夏だ! 昨年は定岡、河原、望月と居たのに負けてしまった!」
大岡監督「そうだ。特に天野兄は6回6失点で降板と言う情けなさを見せた!」
大岡監督「まあ、幸い青木が抜けて打線も少しは落ちたが」
大岡監督「将来的にはな。今の佐伯ではうちに通用せんよ!」
平井主将「ええ。そう言えばあの頃も歴代最強と言われてましたね」
大岡監督「ああ。外野にはプロに行った橘と草薙とお前が居たしエースと捕手もプロに行った定岡と河原と確かに凄かったな。春には勝てなかったが夏には見事に優勝した!」
平井主将「ええ。1年の夏にいきなり優勝でしたからね。今でも覚えてます!」
直人「ふむ。しかし今年はそれよりも強いんですよね」
大岡監督「ああ。俺の見たところはな」
風祭「プロで活躍している先輩達が高校生の頃より上って言われるのは妙な気分ですね?」
大岡監督「信じられないなら試合をする事だな。決着が着く事で分かるだろう!」
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霞「昨年と同じ組み合わせですが今年もいよいよ決勝戦です。昨年と同様どんな試合になるか楽しみですね!」
霞「そうでしたっけ?」
霞「はて? 昨年は誰が解説してたんでしょうか?」
霞「まっいっか! それでは試合の始まりです!」
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佐伯「最初の打者は噂の風祭大吾か」
風祭「あれが噂の佐伯真敏か、シュートはかなりキレるんだったな」
霞「佐伯君、10球目のシュートはストライクにならずフォアボールで風祭君が一塁へ!」
武藤「三振狙った佐伯君でしたが最後は歩かせましたね!」
八坂主将(本当に凄いな。バットコントロールはうちの嘉神をも上回るかも知れん!)
風祭(シュートのキレは抜群だったな。連打するのは難しいかな?)
直人「1年でこれか確かに良い投手だな。しかし見たところ打てない球でもないな!」
霞「最後はシュートで三球三振!」
武藤「初見であのシュートは打てませんよ!」
霞「おっとここで送りバント! 佐伯君は少し遅れたが捕球しファーストへ投げて天野君はアウト! 風祭君は二塁へ……好打者の天野君ですが手堅く送って来ました!」
武藤「まあ普通なら2番の天野君で送りバントか風祭君に盗塁させるんですけどね!」
大岡監督「言ってる事はもっともだし風祭と同等の足を持ったら許可してやろう!」
直人「ふふり―――次の打席はバントを成功させますよ!」
大岡監督「…………分かった」
霞「フェンスダイレクトで俊足の風祭君はホームに帰って1点先制するタイムリー2ベース!」
八坂主将「いや、むしろ凄く調子が良いぞ。ストレートも速いし変化球も抜群に良い!」
八坂主将「うむ。あれが名雲だ。安心しろ1点くらいなら嘉神と高須が取り返してくれる!」
八坂主将「まあな。2年に4番を取られてるしな一応身の程はわきまえているさ!」
佐伯「そうですね。無失点で抑えようなんて俺もちょっと自信過剰でした。何失点しても先輩達がきっと取り返してくれます。何点取られても完投します!」
佐伯「頼りにしてます!」
平井主将「するどい!?」
霞「やはり最後はシュートで三振!」
武藤「さすがの平井君も初見であのシュートは打てませんでしたか」
平井主将「ああ。さすがに1年ながら斉天のエースなだけはあるな!」
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宗介「こっちも負けられんな!」
霞「真貝君、セーフティバントを狙うが失敗し1アウト!」
武藤「狙いは悪くなかったと思いますよ…………名雲君に見破られていたみたいですが」
霞「平坂君はカーブを空振り三振!」
武藤「連投とは思えないくらい調子が良いですね」
宗介「凄え皮肉だなあ!」
風祭「問題ない。守備範囲だ!」
霞「アウト! 三遊間を抜ける当たりかと思いましたが風祭君のファインプレーで3アウトチェンジ!」
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佐伯「とにかく行けるところまで頑張ろう!」
霞「138キロのストレートで卯月君も三振!」
武藤「1年生としては上々のコントロールですね!」
佐伯「!?」
霞「137キロのストレートを右中間へ! 別府君、2ベースヒット!」
武藤「卯月君と同じく良いコースだったんですけどね。さすがは別府君ですね!」
八坂主将(さすがにストレートを続けすぎると打つか……悪い今のは俺のリードミスだ!)
霞「シュートを打ち上げキャッチャーフライ!」
武藤「近岡君の打席ではシュート以外の変化球も多く混ぜて来ましたね!」
霞「ランナーを背負うものも織部君を三振と無失点に抑えます!」
武藤「本当に良い投手ですね。来年、再来年と今から楽しみですよ!」
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宗介「夏には2本塁打! 春には1本塁打!! あの借りは返す!!!」
霞「自己最速を更新147キロのストレートで三振!」
武藤「やっぱり凄いですね。プロの投手と比べても見劣りしません!」
宗介「良し!」
霞「八坂君にはフォークで決めて2アウト!」
武藤「フォークの落差も凄いですね。紛れもなく今日は絶好調です!」
霞「146キロのストレートで三振とこの回は三者三振に抑えます!」
武藤「斉天のクリーンナップを三者三振ですが私の記憶が正しければ今年やったのは赤竜高校の斎藤君に続いて2人目だったと思います!」
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佐伯「同世代に何度も負けてられないな!」
八坂主将(問題はこいつだな。ランナーに出ても刺せば問題はないんだろうが……ストレートは狙い打ちされるし変化球だと刺すのは難しいだろうし……今から考えても仕方ないか)
風祭「佐伯も八坂さんも気合い入ってるな!」
霞「綺麗な流し打ちで風祭君は一塁へ……しかし風祭君は何故右打なんでしょう左ならもっと打率が上がりそうなのに?」
霞「それもそうですね」
佐伯「手堅く来ましたね?」
八坂主将「ああ。しかし天野弟が普通に打って来る方が怖かったし
風祭「監督がバントさせるなんて珍しいな?」
直人「ふっ、続けよ兄貴!」
霞「外れてフォアボール!」
武藤「際どいですね。ストライク、ボールとどっちにも取れる球でしたよ!」
佐伯(すみません)
八坂主将(気にするな。こいつを抑えれば問題ない!)
霞「やはり最後はシュートで名雲君を空振り三振!」
武藤「シュートのキレが上がってますね!」
八坂主将「うちのエースもずい分あまくみられたものだ!」
八坂主将(自信満々な顔で答えるな。やっぱこいつは要注意だ!)
霞「やはり嘉神君は凄い。ヒットの当たりをアウトにします!」
武藤「確かに打撃も守備もすぐにプロでも通用しそうですね!」
平井主将「ふう、やっぱりレフトに打ったらダメだな!」
平井主将「守備もだろう。俺が嘉神に1つも勝てるところなんてないさ」
けど個人じゃ負けてもチームとしては勝つぞ!」
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宗介(分かってる!)
霞「144キロのストレートで相木君を三振!」
武藤「天野君の球はノビもありますからね。1打席ではまず打てませんよ!」
霞「続く音田君も三振とこれで6奪三振!」
武藤「変化球もいつも以上にキレてますね。この調子なら完封もありえるかも?」
宗介(コクッ!)
霞「ショートゴロで3アウトチェンジ!」
武藤「しかしいきなり天野君のストレートに当てるとは大したもんですよ!」
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佐伯「卯月さんからか―――長打には注意しないとな!」
霞「フェンスダイレクト! 打った卯月君は二塁へ!」
武藤「初球から振って来ましたね!」
八坂主将(気にするな。打たれてもホームに返さなきゃ問題ない!)
佐伯「はい!」
霞「フォークを打ち上げピッチャーフライ!」
武藤「ちょっと下を叩きましたね」
霞「140キロのストレートで近岡君を三振!」
武藤「ストレートも140キロと今日も調子が良いですね!」
霞「一二塁間を抜ける当たりかと思われましたが音田君のファインプレーが出ました!」
武藤「音田君の守備は一流ですね!」
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宗介「1番からか嘉神の前にランナーは出したくないな!」
霞「145キロのストレートで三振!」
武藤「回を増すごとにスピードが上がって来てる気がしますね!」
宗介「次も!」
霞「最後はカーブで平坂君を三振にとります!」
武藤「斉天大附属としては次の嘉神君に期待したいでしょうね」
霞「入りました。嘉神君のホームランで斉天大附属が1点返します!」
霞「これはライトへ打ち上げたか…………いや、思っていたより飛距離は出てるぞ?」
霞「入った。ライトフライと思えた打球でしたが風に乗ったかスタンドへ入りました!」
宗介「―――そうだな。よっしまずは八坂さんを抑えるぞ!」
霞「なんと3連発!? これで一気に2点差になりました!!」
宗介「そうだ。俺はあの屈辱も晴らす為に頑張って来たんだ!」
霞「柚原君にはストレートで三振!」
武藤「昨年はあれで降板したらしいですが……今年は降板せずに見事に抑えましたね!」
宗介「名雲、さっきの俺の球、失投だったか?」
宗介「あいつらもあれを打てるかな?」
宗介「そうか(もっとコントロールを上げないとな!)」
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霞「試合も5回に入り現在3対1で斉天大附属がリードしています。先ほど逆転に成功した斉天大附属が強力な無明打線をどう封じ込めるかがポイントになりそうですね!」
武藤「そうですね。けどさっきの回をみたせいかまだまだ点は取って行きそうですね。2人共良い投手なんですけど打線が強力すぎるんですよ!」
佐伯「ここまで風祭には1安打1四球と完全にやられてるな。ここで抑えてやる!」
風祭(追い込まれたらシュートが来るな。シュートが来る前に打つか!)
佐伯(まずはシュート!)
風祭「初球からシュートかよ!?(まさか次も?)」
風祭「しまったボール球を振らされた!?(恐らく次は外して来るだろう!)」
佐伯(ここでストレート!)
風祭「げっ三球勝負!? なんとか当てないと!?」
佐伯「完全に裏をかいたのに!?」
風祭「危ねえ。なんとかヒットにはなった物の完全に裏をかかれた!」
霞「風祭君、体勢を崩すもなんとかヒットを打ちます!」
武藤「今のは完全に風祭君の思考の裏を読んでいたのにそれでも結果はヒットですか?」
霞「―――セーフ! 八坂君の肩より風祭君の足が速かった!」
大岡監督(結果的にはセーフか、ならここは打って行け失敗した手前逆らうのは許さん!)
霞「天野君はファーストゴロに倒れましたが風祭君は三塁に到達!」
武藤「なんとか進塁打にはなりましたね」
大岡監督「これで1アウトランナー3塁か――――――宗介、頼んだぞ!」
宗介「はい!」
佐伯(スクイズもありますかね?)
八坂主将(あの監督の性格上ないとも言いたいところだが……いつもの試合と比べて今日はバントが多いからな……どっちにしろ天野相手にバントさせやすい球なんて投げたら一発食らいかねないし内野は前進守備で外野は定位置、そして変化球主体で行くぞ!)
佐伯(はい!)
八坂主将(捕球には自信があるからな。次はボール球のシンカー!)
宗介(慎重だな。次も外か!)
佐伯(次もアウトコースでボール球のシュートか)
佐伯(―――最後は外の高目にストレートか!)
霞「空振り三振! 最後はボール球を振らされました!」
武藤「最後は141キロ出ましたね!」
佐伯(歩かせるんですか?)
八坂主将(ああ。とは言っても敬遠でなくボール球で勝負する。振るかどうかはあっちしだいだ!)
佐伯(しかし名雲さんの次は平井さんに卯月さんですよ!)
八坂主将(分かってる。これは危険な賭けだが恐らく名雲はボール球でも振って来る!)
佐伯(なんでそんな事が分かるんですか?)
八坂主将(あいつは自分で決めるタイプだからだ!)
佐伯(はあ? 分かりました。それじゃ八坂さんのリード通りで!)
霞「見逃しボール! これで1−3となりました!」
武藤「やはり名雲君には慎重ですね。今のところボールしか投げていません!」
八坂主将「そう。勝負するかどうかはお前しだいだ。ここはタダで歩いて後ろの平井に任せてもいい!」
八坂主将「そうだな。だが乗るんだろう!」
八坂主将(やはりプライドの高い名雲ならこう言うだろうな。しかし油断はできん。佐伯、最後は名雲のリーチがギリギリ届く範囲にストレートだ!)
佐伯(はい!)
霞「捕った! ライトの頭を越えると思いましたが相木君が懸命に走って捕りました!」
八坂主将「ああ。しかし次の名雲の打席は要注意だ!」
佐伯「はい!」
平井主将「最後はストレートだったな?」
平井主将「次で打てばいいよ!」
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宗介「まずは相木さんからか!」
霞「最後は外にズバリと来て見逃しの三振!」
武藤「3連発食らってからまた調子が良くなりましたね」
霞「続く音田君もカーブにタイミングが合わず空振り三振!」
武藤「見逃せばボールでしたね」
霞「佐伯君も三振とこの回は三者三振に抑えます!」
武藤「さすがに昨年よりも成長してますね!」
宗介「ふう。後4回かスタミナが持つといいんだが」
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佐伯「いきなり平井さんからか」
平井主将「まずは塁に出たいところだな!」
霞「最後はシュートを空振り三振!」
武藤「最後は外ではなくインコースギリギリに投げて来ましたね」
平井主将「まだキレてるな。大した物だ!」
平井主将「八坂のリードも厄介だ。相変わらず嫌なとこにバンバン投げて来る!」
霞「嘉神君の好守備でヒット性の当たりをアウト!」
武藤「外野には足の速い選手が多いからヒット性の当たりもアウトにされますね!」
霞「一二塁間を抜けると思われましたが音田君のファインプレーで3アウトチェンジ!」
武藤「素晴らしい守備ですね!」
八坂主将「佐伯、疲れたか?」
佐伯「いえ。大丈夫ですけど」
八坂主将「そうかならいい(キレが落ちたと思ったが気のせいか?)」
佐伯「?」
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宗介「うん?」
霞「まずはサードゴロに倒れ1アウト!」
武藤「さすがに天野君のボールに慣れたか当たるようになって来ましたね」
宗介「さすがに眼が慣れて来たか」
霞「続く平坂君もピッチャーゴロ!」
武藤「カーブの変化が思っていたより大きいと言った感じでしたね」
霞「ライトの頭を越えるかと思われましたが平井君のファインプレーで3アウトチェンジ!」
武藤「平井君の守備も凄いですね」
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霞「シュートを空振り三振!」
武藤「今までと違ってコースに入ってないのが少し気になりますね」
霞「織部君はショートフライ!」
武藤「うーむ。華はないですが堅実な良い守備ですね!」
風祭「いい加減点を取って欲しいな」
霞「風祭君にはコントロールが定まらず歩かせます!」
武藤「苦手意識が芽生えたのかも知れませんね」
直人「さすがに2アウトのこの場面でバントはできないか―――」
霞「入った。風に乗ってギリギリ入りました。天野君の同点2ラン!」
武藤「今のシュートはコースも変化も悪かったですけどこの場面で打ったのは凄いですよ!」
風祭「しかしこの一発は佐伯にはきついだろうな」
直人「失投でしたしね。もう限界なんじゃないですか?」
宗介「分かってる。ここを逃すなだろう!」
八坂主将「交代するか」
八坂主将「スタミナも限界だろう。ここまで3失点で抑えただけ大した物だぞ!」
佐伯「―――次に1失点でもしたら代わります。だからそれまで投げさせて下さい!」
宗介「もらった!」
霞「痛恨の失投! 物ともせずスタンドまで運ばれ逆転されます!」
武藤「あれは血ですか?」
八坂主将「ツメが割れたな」
佐伯「すみません。結果がこれじゃ」
八坂主将「それはいい。とりあえず医務室で治療してもらえ。後は早瀬に任せろ。いいな!」
佐伯「…………はい」
八坂主将「早瀬、頼むぞ!」
霞「ここでピッチャー佐伯君に代わって早瀬君がマウンドに向かいます!」
武藤「早瀬君は春の甲子園でも投げた投手でHスライダーはかなりキレる事で有名ですね!」
霞「Hスライダーを一瞬にしてスタンドに運びました。これで5対3!」
平井主将「そうか(俺もどっちかと言うと得意なタイプだし打つのは難しくなさそうだな)」
霞「右中間真っ二つ! ランナーの平井君はセカンドストップ!」
霞「最後はやはり外のHスライダーで三振!」
霞「一二塁間抜けると思いましたが音田君のファインプレーで2アウト!」
武藤「今のは音田君のファインプレーですね。右狙いを読んで右よりの守備をしていました!」
霞「最後はチェンジアップでしょうか……とにかく打ち上げて3アウトチェンジ!」
武藤「変化は大した事ないですが緩急がやっかいそうですね」
八坂主将「名雲の一発は仕方ないな。この調子で抑えて行こう。点は俺達が取ってやるさ!」
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霞「一瞬にして初球インハイのストレートをスタンドへ運びます!」
宗介「仕方ないさ。あいつが初球から全力で振って来るとはさすがに読めんだろう。それに1点は勝ってるしこのまま抑えれば問題ない!」
霞「速い! 146キロのストレートで八坂君を空振り三振!」
武藤「八坂君にボール球を振らせるとはなかなかやりますね!」
霞「ショートフライに倒れ2アウト!」
武藤「芯は外れましたがストレートに当てましたね」
霞「外角低めにズバリと決まり見逃し三振!」
武藤「さすがは天野君ですね。追い込んでからは良い球が行きます!」
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八坂主将(追い込んだら高めのボール球を振らせれば良い!)
霞「最後は外角高めのストレートを打ち上げアウト!」
武藤「早瀬君は春に比べてコントロールが良くなりましたね!」
風祭「球種はHスライダー、シュート、チェンジアップか、Hスライダー以外は問題なさそうだな!」
霞「ストレートを打ちそこなって1アウト!」
武藤「風祭君にしては珍しいですね。しかし私から観てもタイミングは合っていたように観えましたが?」
風祭「多分ツーシームだな」
直人「ツーシーム?」
風祭「メジャーリーガーが良く投げるんだが通常のストレートと同じ速度で若干変化する為に芯を外されやすい」
風祭「大丈夫だ。変化する事を頭にいれとけば問題はない」
風祭「ツーシームは投手によって変化が違うが早瀬さんの球は若干沈んだように感じる。眼の良いお前なら問題なく打てる!」
霞「最後はHスライダーで空振り三振!」
武藤「絶好調の風祭君と天野君を難なく抑えるとはやりますね!」
宗介「そうか、ツーシームを投げるのか?」
風祭「ええ。速度差がちょっとやっかいですね」
宗介「そうだな。世界大会の時もそんな投手が多かったな。あっちはフォークボールとかを投げる投手が少ないせいかフォークで良く三振が奪えたな」
風祭「まあ、こっちではツーシームとかフォーシームとかストレートの区別はされていませんからね。直人が知らないのも無理はありませんよ」
風祭「俺はメジャーにも興味があるからな。その位は知ってるさ!」
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宗介「3人で抑える!」
霞「最後はストレートで三振と天野君、いまだに調子が落ちません!」
武藤「4失点する投手とは思えないですね」
霞「最後はフォークで決めて2アウト!」
武藤「フォークのキレと変化は落ちてますね。それでも十分なレベルですが」
霞「続く真貝君はスライダーを引っ掛けてセカンドゴロ!」
武藤「さすがにこれで決まりましたかね」
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宗介「9回に嘉神に回るからな。ここでもう少し得点して欲しいところだな」
宗介「事実さ。実際今日はあいつらをうまく抑えられてないしな」
霞「右中間真っ二つ! 天野君は三塁へ!」
霞「無死満塁になります。ここで敬遠は危険ではないでしょうか?」
八坂主将「大丈夫な訳がないだろう」
八坂主将「俺なりに考えた上、あの2人は敬遠した方が失点は少なくてすむと判断しただけだ。無失点で抑えようなんて欲は絶対出すな!」
八坂主将「実にお前好みだろう!」
霞「なんとか当ててレフトフライ! しかしこれは犠牲フライになりそうだ!」
霞「間一髪セーフ! ここで貴重な追加点が入ります!」
武藤「際どかったですね。これで1アウトランナー1、2塁ですか」
八坂主将「これで良い。次は―――」
霞「あっ!? ここで別府君が併殺に倒れチェンジです!」
武藤「どうやら早瀬君はツーシームを投げるみたいですね」
霞「ツーシーム?」
武藤「貴方のお兄さんがたまに投げる特殊なストレートですよ」
霞「シルバーバレットですか?」
武藤「そっちじゃなくストレートで変化する変化球の方です。変化と言っても大した変化じゃないんですけど」
霞「確かに兄はストレートを使い分ける人ですがそんな球ありましたっけ?」
霞「なるほど」
宗介「2点あれば十分ですよ。守備に行きましょう!」
八坂主将「どうした?」
八坂主将「確かにな。まだ勝敗は分からんって事だろう。俺達に取って最後の試合だ。お前が胴上げ投手になれるかもな」
八坂主将「良いのかそれで?」
八坂主将「そうだな!」
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宗介「後3人で春夏連覇だ!」
風祭(宗介さん、スタミナが落ちて来てるな。無理もないか)
霞「三遊間を抜けると思いましたがまたしても風祭君に捕られアウト!」
武藤「芯でとらえてもなかなかヒットになりませんね」
霞「左中間を抜けた打った嘉神君は二塁ストップ!」
武藤「相変わらず見事に打ちますね」
大岡監督「―――好きにさせるか」
宗介(悪いみんな。勝負させてくれ!)
宗介(振って来ないな?)
宗介(今のあまい球をもう一度?)
宗介(なんで今のも見逃すんだ?)
宗介(なるほど、確かに追い込んだ後は力入るからな。しかし!)
宗介「なんてやっかいな奴だ。あのコースであの速さ間違いなく三振奪えるって思ってたのに―――クスッ!」
宗介「次は!」
霞「凄いです。いまだに決着は着きません!」
武藤「しかし天野君も凄いですね。さっきまで落ちていたキレやノビがまた戻りましたよ!」
宗介「さっきから全然空振りを奪えん。どうすれば三振を奪えるんだ!」
宗介「これで終わりだ!」
霞「最後はインハイのボール球を振らせました!」
武藤「最後のストレートはとんでもなくノビましたね!」
八坂主将「おう!」
直人「終わった!」
霞「最後はホームラン性の当たりを直人君が捕球しお兄さんを助けるファインプレーで試合終了!」
武藤「決勝戦だけあって最後まで盛り上がりましたね!」
霞「そうですね。とにかく今年の夏の日本一は無明実業高校に決まりました!」
風祭「なるほど、あれが兄弟ってもんですか?」
大岡監督「やはり今年は歴代最強だったな!」
八坂主「負けたか―――すまんな。佐伯、早瀬」
佐伯「4失点した俺が悪いんです。気にしないで下さい」
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霞「以上がドラスポのお送りした試合でした!」
霞「武藤さん、この放送局は竜崎グループ提供のドラゴンスポーツと言うんですよ!」
霞「ちなみに決勝の平井君と八坂君は今年のドラフトでは争奪戦を予想されています!」
武藤「どっちも攻守に長けてますからね。欲しい球団は山ほどいるでしょう!」
霞「ですね。それではまたお会いしましょう」
霞「おっとすっかり忘れていました。セリーグはダントツでジャイアンツが首位ですが8月になって連敗が続いております。パリーグはライオンズが首位と好調です。観たところ今年はドラゴンズの遠山選手が大ブレイクしそうですね!」
武藤「そうですね。現在、本塁打、打点のトップですから、それとセリーグの新人ではカープの中西選手が9勝と新人王にアピールしています。パリーグの新人はブルーウェーブの青木君が凄いですね。打率.304、25本塁打、87打点とここまで活躍するのは正直予想外でした!」
霞「他にも活躍している選手はいますがこの辺でさようなら!」
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月砂「変わった番組ね?」
真田「賭けは僕と斎藤が勝利したし吉田には何をやってもらおうかな?」
真田「遠まわしに僕を悪魔呼ばわりとは良い度胸してますね!」
真田「ふむ。その感じは嘘を吐いてないね。とりあえず月砂さんにお世話になってるし無料で喫茶店のお手伝いにでもしようか」
斎藤「いいのか、俺はともかくお前にはメリットがないと思うが」
真田「ふっ、メリットならあるよ。月砂さんに良いところをアピールできるからね!」
月砂「助かるけど本当に良いの?」
吉田「毎日が練習って訳でもないので空いてる日なら」
真田「召使いの様にこき使ってやって下さい!」
月砂「新人にいきなり無理な仕事はさせないわよ!」
斎藤「しかし次の休みか」
真田「しばらくは休日返上で練習が続くからね」
吉田「そうだな」
月砂「何時でもいいわよ!」
吉田「はい。その時はよろしくお願いします!」
真田(良いんだよ。この方がなんとなく面白そうになる予感がするから)