第13章 突然な訪問者

−1994年 11月−
赤竜高校は関東大会でも頑張ったが準決勝で敗退し斉天大附属と戦う事はなかった。
中西監督「結局関東大会でも負けたが一応ベスト4には残ったし甲子園出場は多分大丈夫だろう」
相良主将「斉天は優勝したし間違いなさそうですね」
中西監督「うむ。斉天は文句なく甲子園行きは確実だな」
真田「甲子園でも準優勝したせいか当然の様に優勝しましたね」
中西監督「斉天は全国でもTOPクラスだから当然と言えば当然の結果だな」

ちなみに国体は雪影高校が優勝したらしい。神宮では無明実業が優勝した。
斎藤「村雨も頑張ったんだけどな」

神宮には関東から風雲高校が出場したが準決勝で敗北した。
吉田「他はほとんど優勝チームばっかりの中で1回戦を勝ち上がっただけ大した物だろう」
斎藤「確かにけど村雨は納得言ってないだろうな」
真田「やっぱり高校野球は1人じゃ勝てないよ」
斎藤&吉田「そうだな」
中西監督「お前ら人の話を聞いているのか!」

さっきから話をしていたが斎藤達が全然聞いていないのが気になってか声をかける。
斎藤&真田&吉田「すみません」
中西監督「はあ、もう一度言うぞ。ドラフトの日は校長から許可を取って野球部員は部室で観られる様にしてもらった!」
斎藤&真田&吉田「えっ? ひょっとして取材とか来るんですか!?」
中西監督「多分来ないよ。指名されるとしても恐らく下位だろうからな。斉天や無明にはたくさん来るだろうけど」
斎藤&真田&吉田「なーんだ」
中西監督「下位だろうが指名されればプロに変わりはない。もし指名されたとしたら来年からテレビであいつらを観る事になるんだぞ!」
真田「やっぱり指名されるとしたら大下さんですか?」
中西監督「ああ。あいつはカープ志望だけど地元のベイスターズが注目しているらしい」
吉田「へえ。間宮さんや七瀬さんは?」
中西監督「間宮もベイスターズが気にかけてるらしい。七瀬は肘を壊してからはスカウトが来なくなったから分からんな」
斎藤「プロか―――誰が指名されるのかな?」

そしてドラフトの日が訪れる。

ドラフト会議
霞「ただいまよりドラフト会議が始まります!」
武藤「今年はどんな選手が指名されるんですかね?」
霞「武藤さんとしてはどんな選手が指名されると思いますか?」
武藤「そうですね。高校では今年甲子園で優勝した平井君が中心に指名されるでしょうね」
霞「大学、社会人は置いといて行きましょう!」
武藤「逆指名の意味あんのかな?」

ドラフト会議
日本ハムファイターズ
岩崎 壮平 17歳 内野手
転生高校
横浜ベイスターズ
八坂 健太 18歳 捕手
斉天大附属高校
千葉ロッテマリーンズ
八坂 健太 18歳 捕手
斉天大附属高校
阪神タイガース
八坂 健太 18歳 捕手
斉天大附属高校
福岡ダイエーホークス
平井 豊 18歳 外野手
無明実業高校
ヤクルトスワローズ
平井 豊 18歳 外野手
無明実業高校
近鉄バファローズ
遠藤 泰徳 17歳 投手
風雲高校
広島東洋カープ
西條 右近 21歳 投手
佐藤コンツェルン
オリックスブルーウェーブ
奥森 孝司 18歳 投手
雪影高校
中日ドラゴンズ
平井 豊 18歳 外野手
無明実業高校
西武ライオンズ
奥森 孝司 18歳 投手
雪影高校
読売ジャイアンツ
芹沢 夏輝 22歳 投手
無明大学

霞「以上の選手は指名が重複しましたので抽選を行います!」
武藤「むむう。カープとジャイアンツは逆指名を使って来ましたが他の球団は高卒選手を指名していますね!」
霞「まずは3球団競合の八坂君ですが?」
武藤「八坂君は地元のベイスターズの入団を希望していると聞いています。マリーンズとタイガースは現在特定の捕手が居ないので特に入って欲しい球団でしょう!」

山崎監督「八坂は3球団競合になったか」
本田監督「よりによって山崎さんと水原さんが相手か年下の俺としてはちょっと怖いな」
水原監督「ふむ。うちは今、特定の捕手が居ないからな。ここで獲りたいところだ!」

霞「全員のクジの結果は?」

山崎監督「クッ! 外した!!」
本田監督「―――当たった!」
水原監督「―――無念だ!」

霞「八坂君の交渉権は千葉ロッテマリーンズが獲得しました!」
武藤「入って来れば来年の新人王候補の1人になるのは間違いないでしょうね」
霞「続いて平井君も抽選となります!」
武藤「平井君は八坂君を上回るバッティングをしていますからね。何処が獲得するか見物ですよ!」

堀内監督「欲しい投手を蹴ってまで指名したんだから当たれよ!」
松田監督「来年優勝する為にも姫川に続く打者が必要だ!」
大村監督「更なる打撃向上の為にも来い!」

堀内監督「来たぜ!」
松田監督「ダメだったか」
大村監督「仕方ない」

霞「平井君の交渉権は福岡ダイエーホークスが獲得しました!」
武藤「平井君が入ったら来年こそBクラスから脱出して欲しいですね!」
霞「将来性の高い奥森君は何処が獲得するでしょうか?」
武藤「ブルーウェーブは現在先発が不足しております。ライオンズは未来のエース候補の獲得と言ったところでしょうか?」

中尾監督「中村さんには負けられん!」
中村監督「さてと、どうなるか」

中尾監督「勝った!」
中村監督「ダメだったか―――」

霞「オリックスブルーウェーブが交渉権を獲得しました!」
武藤「相変わらず中尾さんは中村さんに対してライバル意識が強いですね。中村さんも相変わらず興味なさそうですし変わらないなあの人達は」

外れ1位は大学や社会人選手を中心に指名して行く。そして下位指名では
霞「阪神タイガース、山内努、18歳、捕手、旭光商業高校!」
武藤「八坂君の代わりに山内君を指名して来ましたね!」
霞「横浜ベイスターズ、大下真二、18歳、捕手、赤竜高校!」
武藤「ベイスターズは地元の大下君ですか―――確かに将来性の高そうな選手ですから指名するのも頷けますね!」
霞「それでは高校の一部は鈴姫さんにお任せしましょう!」
武藤「鈴姫さん?」
霞「ドラフトで指名された高校には私より年上何ですが先輩の倉田鈴姫( くらたすずき )さんに行ってもらっています!」
武藤「それはまた大変ですね(プロ野球選手の移動並だな)」

と今年のドラフトは終わった。

赤竜高校
大下「カープは俺を見捨てたか」
間宮「良かったじゃないか、一応指名されたし入るんだろう」
大下「うーむ。まあ指名されて断るほど自信家じゃないしな。一応前向きに考えるさ」
相良主将「とにかくおめでとうございます。これで赤竜から6人目のプロ野球選手の誕生ですよ!」
大下「おう。俺の同期生はほとんどパリーグだからな。1年目から新人王狙うぞ!」
七瀬「バカだな。その分、大学や社会人の即戦力選手が集中しているんだよ!」
大下「大丈夫、ここんとこ新人王は高卒選手が多いから」
間宮「そういやそうだな」
大下「そう言う事だ。今年は中西さんが新人王獲ったし来年は俺が続いてやるよ!」
七瀬「お前こそ忘れているぞ。新人王獲るのは高卒でもドラフト上位指名ばかりだ」
大下「なんと!?」
間宮「そういや最近は1位指名選手が多いな」
七瀬「5位指名のお前には少し厳しいんじゃないか?」
大下「むう!」
七瀬「まずは1軍定着から目指したらどうだ?」
大下「むう。そうだな。そうするか」

真田「下位とは言え契約金が入って来るんだよね?」
吉田「ああ。5位なら多分4000万くらいじゃないかな?」
真田「なんと、さすがはプロ野球選手!?」
斎藤「1つ言っておくけど年俸は別だからな」
真田「ふむ。そうなんだ。それで年俸は?」
吉田「これも多分だけど500万くらいかな?」
大下「お前ら人の夢を金とか現実的な物を出すなよ。何か悲しくなって来る!」
斎藤&真田&吉田「すみません」
真田「でも優しい元キャプテンとしたら契約金が入ったら後輩におごってくれたりもしますよね!」
大下「待て普通プロ入りする先輩を後輩が祝ってくれるんじゃないのか? 少なくとも昨年はそうだったぞ!」
真田「ちっちっち! 嫌だな。僕達よりお金持ちな先輩がおごってくれるからみんなでお祝いできるんじゃないですか?」
大下「そうなのか?」
斎藤&吉田(違うと思う)
真田「と言う訳でお願いします!」
大下「まあ、メシをおごるくらいなら!」
真田「良かった。僕、一度満漢全席を食べてみたかったんですよ!」
大下「お前って奴は良くもまあとんでもない値段の料理を頼めるな」
斎藤「確か100万円以上する料理だっけ?」
吉田「まあ、量も凄いからな。あながち無理な話でもないな」
大下「すまんが貧乏性の俺には無理だ。来年の相良かもしくは自費でやってくれ。精々俺に出来るのは結依さんか月砂さんのところの料理をおごるくらいだ!」
真田「そう正直に言われたらさすがに無理は言えませんね。分かりましたそっちで手を打ちましょう!」
斎藤「何か気の毒になって来た」
吉田「俺もだ」

そして他の高校では

転生高校
鈴姫「それでは岩崎君、ファイターズに指名されましたが入りますか?」
岩崎「(直球だな)正直1位指名は驚いていますが1位で指名された球団に応える為にもファイターズにお世話になります!」
鈴姫「おおう! それでは来年の活躍を楽しみにしていますね!」
岩崎「はい!」

と岩崎は入団を決めた。
石崎「やりましたね。来年からプロですよ!」
岩崎「(ふう、緊張した)ああ。1位とはさすがに驚いたな!?」
木下主将「1位で指名されるとは言われなかったんですか?」
岩崎「ああ。上位で指名されるとは聞かされていたがな」
広瀬「現在ファイターズは若手が活躍していますからね。先輩も続いて下さいよ!」
岩崎「ちょっと自信がないが、まあ期待に応える努力はするよ」
全員「ワッハハハ!」
浅野監督「これで岩崎もプロ入りと2年連続でプロ選手を出せたな!」

斉天大附属高校
鈴姫「八坂君、3球団競合でマリーンズに指名されましたが入団する意志はありますか?」
八坂「正直地元でないのが残念ですが家族と相談してマリーンズの入団を前向きに考えたいと思います!」
鈴姫「なるほど入団したら活躍を期待しますね!」
八坂「はい!」

こうして八坂も相談した後に千葉ロッテマリーンズに入団した。
高須「来年も先輩達の新人王対決を楽しみにさせてもらいます!」
八坂「ああ」
嘉神主将「どうかしたんスか」
八坂「真二と別リーグになったのと平井が入団するのか気になってな?」
佐伯「平井さんはジャイアンツ志望でしたっけ?」
八坂「ああ。あいつが大学入りしたら楽しみが消えるなと思ってな」
高須「だけどプロ入りする事に変わりはないんでしょう?」
八坂「ああ。浅野さんと同じ球団ってのは正直嬉しいからな。青木さんと対決できるのも嬉しいしな!」
佐伯「うちは代々キャプテンがプロ入りしますからね。浅野さんは新人王を逃したけど1年目でタイトル獲得していますし青木さんは新人王と本塁打王を獲得しましたしって考えるとうちって凄いですね!」
嘉神主将「そして来年、俺がプロ入りして新人王獲得で3年連続斉天出身が新人王独占と行きましょうよ!」
八坂「そうだな。俺も新人王を獲るから来年は頼んだぞ。高須!」
高須「え? あっはい!」
嘉神主将「酷い!」
八坂「冗談だよ。嘉神も頑張れよ!」
嘉神主将「『も』ですか?」
八坂「とにかく頑張ってくれ」
大島監督「一応、今年もプロ選手を出したしクビはないな!」

無明実業高校
鈴姫「残念ながら希望の球団ではなかった様ですが入団する意志はあるんでしょうか?」
平井「正直入団は少し考えたいですね。すみませんが今日のところは帰って下さい」
鈴姫「…………そ、そうですか」

とりあえず平井は考える時間が欲しいと球団に話した。
名雲主将「平井さんはどうするんだろうな?」
宗介「せっかくのチャンスなんだし入団すれば良いと思うけどな」
風祭「そうですね。ジャイアンツも上位で指名するとは言いましたけど1位は決まっているから2位以降で指名すると思うから期待はしないでくれとハッキリ言いましたし」
直人「それは平井さんも知ってるさ。それでも好きな球団に指名されたいって気持ちは俺には分かるよ!」
大岡監督「ここでお前らが考えても仕方ないさ。答えを出すのはあいつなんだから」
名雲主将「そうですね」

この後、平井は周囲の説得もあってか福岡ダイエーホークスに入団する事に決めた。

風雲高校
鈴姫「まずは遠藤君、風雲高校史上初の指名で1位とは凄いですね」
遠藤「俺としてもまさか1位指名は驚いています」
鈴姫「でしょうね。それで入団の意志はあるんでしょうか?」
遠藤「ええ、もちろん入団させていただきます!」
鈴姫「プロとしても頑張って下さいね!」
遠藤「頑張ります!」

こうして遠藤は風雲高校第1号プロ野球選手として入団を決めた。
氷室監督「ついにこの時が来たか俺が監督に就任して初のプロ選手が誕生した。遠藤、プロでも頑張れよ!」
遠藤「はい」
村雨「さすがはキャプテン、風雲高校、初めてのドラフト指名で1位なんて凄すぎですよ!」
遠藤「俺も驚いた。とりあえず1軍に上がれる様頑張るよ!」
山根「俺も来年は」

雪影高校
鈴姫「(ここでようやく終わりか)2球団競合でブルーウェーブに指名されましたが入団の意志はありますか?」
奥森「はい。ブルーウェーブに入団させていただきます」
鈴姫「ところで奥森君はプロに好きな選手はいないんでしょうか?」
奥森「えっ好きな選手ですか? そうですね。やっぱり雪影高校出身の白銀丸馬さんかな。直接会った事はないんですが監督から色々聞いているのでプロではぜひ白銀さんと投げ合いたいです!」
鈴姫「…………えっと奥森君は知らないみたいですね。白銀選手は今年で現役を引退し渡米する予定ですよ!」
奥森「渡米ってまさかメジャー挑戦って本気だったんですか!?」
鈴姫「はい。12月には国を出るらしいですよ。だから残念ながら白銀選手と投げ合うのは難しいでしょうね」
奥森「いえ。それなら僕も日本のプロで実績を作っていつか白銀さんと投げ合う為にメジャー挑戦しようと思います!」
鈴姫「そうですか、私もいつかその日が来るのを楽しみにしていますね!」
奥森「ありがとうございます!」

こうして奥森もプロ入りを決めた。
白銀監督「プロでも頑張れよ!」
奥森「はい。ブルーウェーブは先発が少ないと聞いていますから何とかローテーション入りを目指します!」
真島主将「北海道、東北にはプロ野球チームがないのが残念ですね。あれば地元での応援もあるかも知れないのに」
奥森「まあな。俺は来年から寮に住む事になるからこっちにもあまり帰って来られないだろうな(アメリカ行くと更に遠くなるんだよな)」
滝沢「いきなりホームシックにならないで下さいよ。さすがに神戸までは行けませんがみんな応援していますから」
奥森「ああ。ありがとう」

赤竜高校
大下「それで七瀬と間宮はどうするんだ?」
七瀬&間宮「受験勉強だよ」
大下「赤竜大学か」
七瀬&間宮「そんな大学ねえよ!」
大下「そうだっけ? じゃあ斉天大学か?」
七瀬&間宮「そんな名門に入れる訳ねえだろう。無茶苦茶倍率が厳しいんだぞ。と言う訳で入るのは大して有名でもない地元の大学だ!」
大下「そっか、じゃあプロ入りするとしたら4年後か」
七瀬「そう言う事だ。1998年のドラフトを楽しみにしてろ!」
大下「つうか1998年じゃ今の1年が先にプロ入りしてるかもな」
間宮「そうだな。それに受験に受かるかも分からないしな」
七瀬「大して難しくない大学だしこれから頑張れば問題ないさ」
間宮「そうだな。幸いまだ時間はあるし」

真田「話が変わるけど今年の文化祭で野球部の出し物は喫茶店に決まったらしいよ!」
斎藤「マジか?」
真田「うん」
斎藤「それって絶対最近うちに通う事になったのと関係あるな」
真田「バッティングセンターってのも考えたんだけど、万が一斎藤が故障したら最悪だって監督に言われてやめたらしいよ!」
吉田「それが採用されたら、案外、他所の野球部員が来るかもな?」
真田「可能性はあるかもね。けど反対されたしこれは却下で喫茶店らしいよ!」
吉田「しかし男だけで喫茶店ってのもゾッとする物があるよな?」
真田「うん。僕も同じ意見を言ったらみんなが青ざめてやめになったよ!」
斎藤「決まったんじゃなかったのかよ?」
真田「決まったけど僕の意見で中止になったんだよ!」
吉田「まぎわらしい言い方すんなよ。それで結局何するんだ?」
真田「現在、部室で考え中だよ」
斎藤&吉田「最初からそう言えよ!!」

喫茶店MOON
月砂「文化祭か―――懐かしいわね」
斎藤「姉貴は何やったの?」
月砂「お化け屋敷とか色々やったわね。最後は喫茶店をしたけど」
斎藤「へえ。しかし文化祭でも喫茶店か―――そう言えばあの頃は親父がこの店の店長だったっけ?」
月砂「今でも一応父さんが店長よ。私はあくまで代理よ。店長代理って呼ばれるのも面倒だから店長って事にしてるけどね」
斎藤「知らんかった。しかし春から一度も帰らんとはうちの親父とお袋も薄情だよな?」
月砂「本当にそう言うところはアンタも似ちゃったわね!」
斎藤「俺ってそんなに薄情かな?」
月砂「何となく1人暮らししたら全然帰って来ない気がするから」
斎藤「否定できんかも―――と姉貴はどうなんだよ?」
月砂「―――そうね。きっと私も同じね」
結依「ふむ。それで仲は良いのか?」
斎藤「そうですね。普通とは言えないと思う様な気もしますが凄く仲の良い家族なんでしょうね?」
月砂「そうね?」
結依「どうしてそこで疑問形になるのじゃ?」
斎藤「会えば結依さんにも分かります」
結依「?」

そして文化祭の日が来た。

赤竜高校
中西監督「それでは野球部の出し物だが」
全員「つうかその前にクラスの出し物もあるのに部員全員がここにいて良いんですかね?」
中西監督「甲子園に出たからな少しは客寄せになるって事でオッケーをもらった!」
吉田「やっぱり現実的ですね」
中西監督「まあな。さてと出し物だが」
真田「鬼ごっことか」
中西監督「お前はもう喋るな。話が進まなくなる―――で引っ張ったが出し物は野球教室となった!」
全員「近所の子供達を招いて教えるって言いましたけど俺達に出来ますかね?」
中西監督「一応俺も居るし問題ないだろう。学校側としてはこれで未来の学生を獲得したいらしいがな」
吉田「本当に現実的ですね」
中西監督「まあな。つう訳で始まりだ!」

ザワザワザワ!

それからして子供を中心に集まり数は数十人を越えていた。
全員「多いですね」
中西監督「俺もまさかここまで来るとは思わなかった?」

村田「………………」

1人だけ異色を放っている子も居るらしい。
真田「ずい分大きい子もいるね?」
吉田「つうかデカイな。俺達より年上なんじゃねえか?」
斎藤「―――村田!?」

村田「あっ? お久し振りっス! キャプテン!」

真田「なんだ斎藤の知り合い?」
吉田「ああ。そう言えば前にデカイ後輩がどうやら言ってたけど」
斎藤「ああ。こいつが前に話した村田だ」
村田「村田修一(むらたしゅういち)っス! 一応中学では4番を打っています!」
真田「まあ、その身長なら2年でも4番を任せられるよね」
吉田「俺よりも大きいな。180はあるんじゃないのか?」
村田「今は179っス、それと身長は関係ありませんよ。1年の頃はキャプテンが4番で俺が5番でしたから」
斎藤「今は違うんだからキャプテン言うなよ。それとチビで悪かったな」
村田「そう言う意味で言ったんじゃないですけど」
真田「まあまあ、とりあえず君も来年じゃなくて再来年に赤竜高校に入学するのか!」
村田「いえ。俺として斉天に入りたいんですが」
真田「つまりここで人生を終わらせたいと」
村田「えっと?」
斎藤「真田、やめといた方が良いぞ。村田は身長にあわせてケンカも強いらしいから」
真田「ごめんなさい」
村田「いえ…………」
斎藤「こう言う奴なんだ。気にしないでくれ」
村田「はあ?」
斎藤「それでわざわざなんで文化祭に来たんだ?」
村田「野球教室するって聞きましたから来たんですよ。キャプテンじゃなかった斎藤さんとも会いたかったし」
斎藤「そっか、それじゃ監督にも紹介してやるよ!」
村田「いえ?」
斎藤「斉天のテストに落ちてもしかしたらこっちに来る事になるかも知れんだろう」
村田「縁起でもない事を言わないで下さい」
斎藤「確率の問題だ。お前のあの守備はマイナス方向が強すぎる。守備を改善したと言うなら話は別だが」
村田「………………」
斎藤「なるほど、よーく分かった。それじゃ行こうか」
村田「はい」

こうして村田を引きずって行くのだった。
村田「ふっ!」

カキ―――ン!
中西監督「すげえな。中学2年で1年の頃の相良並みの飛距離じゃねえか!?」
相良主将「ですね。ミートも悪くないですしバッティングは今からでも高校で通用しそうですね!」
吉田「さすがにあのガタイなだけはあるな」
真田「だね」
斎藤「喜んでるところ悪いんですが問題は守備です!」

ポロッ! ポロッ! ポロッ! パシッ!
村田「………………」

続いてノックをするが簡単な打球も処理できずトンネルの連続!
斎藤「とまあこんなところです!」
中西監督「足と肩も良いと思ったが」
相良主将「圧倒的にエラーが多いですね。捕球技術が下手すぎます。ハッキリ言って小学生以下です!」
真田「これは凄い問題だね。決定的な短所を除いたら良い選手なのに」
吉田「ああ。DHでもあれば別なんだろうけど、代打タイプか?」
斎藤「特にタイムリーエラーが致命的に多かったですね」
中西監督「それはもう致命的だな」
斎藤「やっぱダメでしょうか?」
中西監督「いや、ダメって事はないぞ。バッティングは良かったし、ただピッチャー泣かせな選手だな」
斎藤「ですね。俺はエラーに慣れているから問題ないですが名門なんかはやっぱり難しいでしょうね」
中西監督「そうだな。ああ言うところは欠点のない選手が多いからな。村田だったな。一応、大島にはそれとなく話しといてやるよ。再来年のテストを頑張れよ!」
村田「はい。ありがとうございます!」
中西監督「ああ!」
孝介「ところで親父、俺の紹介は?」
全員「今、親父と言いましたね。まさかと思いますが!?」
中西監督「俺の息子だ!」
全員「やっぱりそうなんですか!?」
孝介「中西孝介(なかにしこうすけ)と言います。中学1年です!」
村田「って中西じゃないか?」
孝介「村田さん、何でここに?」
村田「前に話しただろう。ここには元主将の斎藤さんが居るって」

そう言って村田は斎藤を見る。
孝介「貴方があの斎藤さんですか?」
斎藤「『あの』ってところが引っかかるが斎藤だけど」
孝介「いえ、悪い意味ではなくエースの工藤さんが良く話してくれましたので」
斎藤「なるほどね。やっぱり今は工藤がエースか―――大方、村田とはケンカばかりしてんだろうな」
孝介「良くご存知で」
斎藤「1年の頃から何度も観て来たからな。特に工藤はエラーで村田とはケンカばかりしていたからな」
孝介「それは今もなんですが、工藤さんはあんな状況ばかりで一度もクサらなかった斎藤さんを尊敬しているって良く話してくれます!」
斎藤「そう言われると照れるな」
真田&吉田「あの話についていけないんですが?」
斎藤「ああ。工藤ってのは村田と同じ2年で俺の後輩だ。同じ投手って事もあるんだが三振奪る俺とは違ってあいつは打ち取るタイプだからな。エラーで村田と良くケンカしてたよ。村雨がいなくなって守備力はかなり落ちたしな。ところであいつはどうした?」
孝介「それが村田さんとケンカ中で顔合わせると嫌だからって」
斎藤「なるほどな。そのまとめ役をしているのがお前って事か」
孝介「はい。エースと4番がケンカするのを止められる人がいなくて何故か俺が仲裁役になってるんですよね?」
斎藤「それだけ信頼されているんだろう。何かお前を見てると他人とは思えんな。良いよ俺がいくつか仲裁の助言を教えてやるよ!」
孝介「本当ですか? ありがとうございます」

こうして斎藤と中西は仲良くなり2人で話を弾ませて行くのだった。
中西監督「………………」
全員「息子に忘れられてすっかり落ち込んでるな。肝心の野球教室を放ったらかしになっているのにも全然気付いてないし?」

その頃、野球教室では七瀬と間宮が子供達に教えていた。
七瀬「こう言う風に投げると楽で良いだろう。力を入れないで軽く投げるのがコツだな!」
知也「なるほど!」
間宮「ゴロの時は打球を良く見て膝を深く落としてグラブが地面につく様にすれば良いよ。そうすれば少なくともトンネルはしなくなるから」
知也「これが名選手になる道なんだね?」
間宮「俺はプロ入りはしていないから名選手とは言えないが名選手は多分、基礎もしっかりしているぞ!」
知也「ふむふむ、なるほど」
間宮「ところで君のポジションは?」
知也「キャッチャーだよ!」
間宮「って事は参考にならないかも知れないな。俺は内野の守備しか知らないし七瀬はピッチャーの助言に近いし」
知也「そんな事はないよ。キャッチャーは内野も外野も投手も知ってこそなんだから!」
間宮「君、本当に小学生?」
知也「うん。僕は中西知也(なかにしともや)、ここの監督の息子だよ!」
間宮「監督の息子!?」
七瀬「なるほど、中西さんの弟かどうりで筋が良いと思った!」
知也「コウ兄も来てるよ」
間宮「コウ兄?」
七瀬「確か弟が2人いると聞いていたから次男の方だろう」
間宮「へえ」
知也「ヒロ兄は来てないんじゃないかな。今は広島だしキャンプがあるとも聞いていたし」

再び噂をすれば影と言うか中西達が現れる。
宏「いや、ここに居るぞ!」
七瀬&間宮「中西さん!?」
宏「おいおい俺だけで驚くなよ。もっと凄い人達も居るんだぞ?」
七瀬&間宮「へ?」
福井「久し振りだね」
星野「昔と全然変わってないな。懐かしいや」
柳生「まったくだな。この空気は良いなと監督は元気かな?」
七瀬&間宮「福井さんに星野さんに柳生さん、凄いプロ選手がこんなに?」
知也「凄い凄い。サイン下さい!」

子供達がワラワラと集まり野球教室からサイン会になった。
星野「やれやれすっかりサイン会になったな」
柳生「まあ、これだけのメンツが揃えば当然と言えば当然だけどね」
福井「ごめんね。サインは良いけど練習は許可がないと教えられないんだよ」
宏「これで良いかな。うん。それじゃ!」
福井「お前なあ、堂々とナンパすんなよな。同じチームのOBとしてこっちが恥ずかしいぞ」
宏「いや、新人王獲ってから知名度が上がりましてこう言う時でもないと女性とデートもできないんですよ?」
福井「場所を考えろっての同じ高校、同じチームの先輩を少しは敬え!」
宏「ちゃんと尊敬はしていますよ。それにあっちも?」

そう言って星野を見ると女性から質問されまくっていた。
星野「すみません。さすがにプライベートを聞かれると困るので」

福井「あいつは良いんだよ。ナンパしてるんじゃなくてナンパされてるんだからな」
宏「そんな、俺には星野さんの様な大人な魅力がないのでせめてこっちからと考えるだけでもダメなんですか?」
福井「だからここでナンパするなと言ってるんだよ。場所をわきまえたら俺だって言わないよ!」
柳生「そうそう。来年も活躍すればきっとモテモテさ!」
宏「それで柳生さんはモテるんですか?」
柳生「ふっ、24年間生きると同時に彼女居ない歴同じな俺に聞くか!?」
宏「すみません」
柳生「良いよ良いよ。竜崎や白銀も居ないらしいし」
宏「意外ですね。2人共モテそうなのに?」
柳生「あいつらはモテるのに居ないだけだからね。ようするに今はつくる気がないのさ」
宏「なんか悲しくなって来た」

その後、何故か子供達に慰められてますます悲しくなって行くが文化祭の客入りは過去の例にないくらい多く大成功をおさめたのだった。

文化祭も終わって
中西監督「知っての通り野球教室から何故かサイン会になってと今年は大成功だ。校長からも部費をたくさん頂いた!」
吉田「やっぱり現実的だな」
真田「別に良いじゃん。このご馳走を見ろよ。僕は断然お寿司だね!」
中西監督「料理はまだ待て! 特に福井、柳生、星野、宏のおかげだ。そのお礼に一緒に食べて行ってくれ!」
柳生「ハハッ、監督は変わりませんね。それじゃ遠慮なくご馳走になります!」
福井「じゃあ続くか」
星野「はい。ご馳走になります」

宏「お前らもしっかり栄養補強しとけよ。スポーツ選手は食事も大事だ!」
孝介「それは栄養バランスによると思うけど?」
知也「そうだよ。バランスの良い栄養価で初めて言えるんだよ!」
宏「本当にしっかりとした弟が居てお兄さんは嬉しいよ。帰ってサインも欲しがって貰えないとは」
孝介「いや、兄貴ならいつでも貰える気がして、ついな」
知也「僕は3年目以降の選手しか貰わないから父さんの話だと3年目以降でチームの主軸となった選手が本当に凄い選手だって話だし」
孝介「確かに新人王獲ってから活躍できない選手ってのも結構居るよな」
宏「くそっ! 来年は2年目のジンクスを吹き飛ばす活躍をしてサインさせてやるからな!」

斎藤「サインして下さいって人は多いけど、サインさせてやるって人は初めて見たな?」
村田「確かに、家ではあんな感じと聞いてましたけどね」
真田「やっぱり兄弟がプロ野球の選手だから有名なの?」
村田「ええ。良く宏さんと比較されていますからね。幸いセンスが良いから陰口とかは言われていませんけど」
吉田「もう1人の弟君の方もか?」
村田「中西から聞いた話じゃそうですね。知也もセンスは良いから問題はないって言ってました!」
斎藤「身近にそう言う人が居たら悪気がないとは言え比較されるからな」
村田「俺としてはあくまで自分は自分だと思いますけどね!」
斎藤「正論だが、みんながみんな同じ考えって訳でもないからな」
真田「ここで僕達が考えても仕方ないよ。それに問題が起きてるなら助けて上げるべきだけど何も起きていないなら何もする必要はないよ!」
吉田「文句なしの正論だな。まあ俺としてはサインが増えて嬉しい限りだな!」
斎藤「そうだな。それじゃこの出会いを祝って乾杯!」
全員「乾杯!」

こうして文化祭も終わりめでたく大下がプロ入りしお祝い?もして12月へと向かう。