−1994年 12月−
ドラフトや文化祭のイベントも終わり12月になった。1994年はプロ野球では色々な事があったが関係なく赤竜高校はいつも通り練習を頑張っていた。
斎藤「………………」
吉田「どうした?」
斎藤「いや、今年ももう終わりなんだなって」
真田「いやあ今年は凄かったな。結局MVPは鴉さんか」
吉田「全部見習ったら困るけど少しは真田を見習ったら」
斎藤「そうだな」
と言う訳で師走になっても赤竜高校と言うか斎藤達はいつも通りだった。そして場所を移して無明実業高校では
風祭「無明に来ないってマジか!?」
平下「はい」
風祭「それじゃ別の県にでも行くのか?」
平下「いえ、入るのはこの地区です。天狼学園高校と言うんですがそこへ」
風祭「―――確か来年出来る新設校だったか?」
平下「はい。スポーツには特に力を入れるとの事で俺も特待生として招かれていますから」
風祭「そうか、高校では敵同士になるのか?」
平下「なんか恩を仇で返す様になって申し訳ありません」
風祭「気にするな。むしろ都大会で強敵が増えて俺としては嬉しい限りさ!」
平下「そうですか―――変わってない様で安心しました」
風祭「人を成長していないみたいに言わないでくれ」
平下「いえ、そう言う意味じゃありません。風祭さんはどんな時でも風祭さんなんだなと思って」
風祭「なんだそりゃ?」
平下「ハハッ、分からないところが風祭さんなんですよ」
風祭「それ誉めてんのか?」
平下「もちろんです!」
風祭「それじゃいっか、とにかく来年からは敵同士か手加減はしないからな!」
平下「望むところです!」
こうしてシニアでの先輩と後輩は敵同士となった。
大岡監督「やれやれ、平井の後釜と思った男は別の高校に行くことになったか」
風祭「聞いてたんですか?」
大岡監督「まあな。しかし天狼学園高校か」
風祭「新設校でスポーツに力を入れてるとか?」
大岡監督「ああ。特に野球に力を入れてるらしい。無明は佐藤コンツェルンがバックにいるが天狼は神代グループがバックにいる」
風祭「神代グループと言うと海外で有名な?」
大岡監督「そうだ。天狼の理事長は神代の総帥って話だ!」
風祭「意外ですね。たかだか学校経営に総帥が関わっているなんて」
大岡監督「その辺はどうも裏があるって話だ。正直黒い噂の多いグループだしな。関わり合いにならない方が無難だな」
風祭「………………」
大岡監督「大丈夫だ。たかだかアマチュア選手、野球に何かあるとは思えん。お前の後輩に害はないさ」
風祭「そうですね」
大岡監督「来年の夏には手強いチームが出来るが俺達には関係ない。練習するぞ!」
風祭「はい」
風祭は新たなる強敵の出現に不安と嬉しさを交えた妙な感情を持った。
斎藤「はい!」
いきなりインターホンがなったので出て行く。
祐一「どうも」
斎藤「げっ!?」
バタンッ!
顔を見た瞬間扉を閉める!
祐一「おい。居るのは分かってるぜ。今日こそ借金の―――ねえねえいくらが良いかな?」
バタンッ!
斎藤「そんくらいてめえで考えろってしまった!?」
祐一「ちっちっち! 閉まったんじゃなくて開けたんだよ。ハジメ君!」
斎藤「そんくらい分かってるよ。このバカ親父! つうかそう言う意味で言ったんじゃねえし!」
祐一「愛するパパに向かってバカ親父はないだろう。これでも甲子園でケガした時は心配したんだから」
朱里「そうそう。私は観ていないけど心配してたのよ」
斎藤「おふくろまで…………観ていないのにどうやって心配するんだよ?」
朱里「聞いて心配したのよ」
斎藤「なるほど」
朱里「と言っても今聞いて心配して元気なの見て安心したんだけどね」
斎藤「なんだそりゃ!はあはあ!?」
朱里「どうしたの?」
斎藤「怒鳴りすぎて疲れた!?」
祐一「やれやれハジメは相変わらず面白い子だね!」
斎藤「アンタらだけには言われたくねえな!」
朱里「ねえねえ。愛する月砂は何処に居るの?」
斎藤「姉貴なら2階の自分の部屋に居るけど」
祐一「では久々に愛の語り合いに行くか」
朱里「はーい。今行きます」
スタスタ!
斎藤「結依さんと一緒に話してるってもう居ねえし有名って聞いてたし親父達も結依さんの事は知ってるのかな―――うーん。なんか不安になって来た。様子を観に行くか?」
コンコン!
祐一「月砂、パパだよ!」
朱里「ママよ!」
ガチャ!
月砂「…………げっ!?」
結依「なんじゃ?」
祐一「ふむ。月砂は昔から男の子に興味ないと思っていたが―――やはりそうだったか」
朱里「みたいね。正直、世間体とか考えると良くないんだけどママは応援するからね!」
結依「ほほう! ワシは来る者は拒まぬぞ!」
月砂「違います! こちらは居候の結依さんです! 結依さんも乗らないで下さい!!」
祐一「なんだつまらん」
朱里「残念ね」
月砂「何で残念なのよ。はあ」
結依「先ほどパパとママと言ったがお主らがそうか」
祐一「ええ。どうやら愛娘とバカ息子が迷惑かけたようで」
斎藤「誰がバカ息子だ!」
ちょうど様子を観に来ていた斎藤がツッコミを入れる!
祐一「こほん! 愛娘と愛する息子が迷惑かけたようで結依さんでしたっけすみませんね」
結依「いや、世話になってるのはワシの方なのじゃ!」
斎藤「俺が居ない時や姉貴が居ない時はそんな風に言ってたんだな!」
祐一「居ないからこそ気を使う必要はないからね。それに正確には愛するバカ息子と愛娘だよ!」
斎藤「この野郎居直りやがった! つうか俺だけかよ!」
祐一「ごめんね。私は嘘を吐けなくてね。それに昔から良くお手伝いしてくれた月砂の悪口は言えないんだよ!」
斎藤「ぐっ!?」
このネタには斎藤は逆らえず怒りを無理矢理おさめるしかなかった。
月砂「それで父さん、母さん、今年はずい分早く帰ってきたけど?」
祐一「ああ、それは偶然だよ。たまたま今年はいつもより早くなっただけだよ」
朱里「そうそう。先に祐のところに行って一緒に帰っただけよ」
斎藤「まあ、いつもより早く帰っても別に感動はないけどな」
祐一「悲しい事を言うね。もうすぐクリスマスだしみんなでパッとやろうよ!」
斎藤「年末は何処も忙しいだろう。うちみたいな喫茶店ならなおさら」
朱里「大丈夫よ。私達も手伝うから、だからハジメも手伝ってね」
斎藤「うーん」
祐一「やれやれ相変わらず野球一筋かいこれじゃ彼女も当分先だね!」
斎藤「やかましい!」
朱里「ハジメにお手伝いは無理か」
斎藤「ぐっ!? 分かった。手伝うよ。だからそんな眼で見るな!?」
祐一「私が斎藤祐一です。あっちが妻の」
朱里「斎藤朱里です。よろしく結依さん!」
結依「うむ。ワシは天神結依、よろしくなのじゃ!」
斎藤「人を放って置いて自己紹介かよ!?」
月砂「…………はあ、いつもの事よ」
こうして斎藤は家で何かと忙しい事になって行くのだった。
霞「今週もドラスポをお送りします。と言ってもシーズンオフですし移籍ニュースばっかりなんですけどね」
武藤「いきなりテンションを落とさないで下さいよ」
霞「大丈夫です。ここからテンションは上がりますから振り返って見ると今年のプロ野球は凄かったですね!」
武藤「そうですね。まずはブルーウェーブの久住ですね。最初の頃は契約金ドロボーとか言われていたんですが今年はブーイングの中、開幕スタメンを勝ち取り終わってみればシーズン210安打の新記録を作るなど、そしてMVPまでも受賞しました!」
霞「だそうですがゲストの久住さん!」
武藤「えっ!?」
久住「どうも久住鴉っス!」
武藤「ゲストって私、聞いてないんですけど!?」
霞「サプライズも良いかなと思って内緒にしてたんですよ!」
久住「いやあOBの武藤さんに誉められるなんて最高っスね!」
武藤「そうか」
久住「今年はテリーさんと出会って打撃開眼しましたから来年も首位打者っス!」
霞「テリーさんとはMVPを獲得した。ブレーブスのテリー=アンダーソン選手です!」
久住「ちなみにテリーさんは首位打者、安打、出塁率、シルバースラッガー賞、ゴールドグラブ賞なども受賞したメジャー最高のいや歴史上最高の選手っス!」
武藤(さすがにそれは大げさだろう)
久住「獲得した賞も俺と似てるからもう心の兄弟っスね!」
武藤(確かに似てるな。けど本人が聞いたら引きそうだな)
霞「ちなみに今年はストライキなどの問題があり嫌気がさしたのかヤクルトスワローズにエドワード=ライアン投手が阪神タイガースにエディ=ブライアン外野手が移籍して来ました!」
久住「2人共セリーグだから俺は対戦できそうもないけどね」
武藤「そうだな。オールスターかオープン戦、もしくはシリーズくらいしか対戦できる可能性がないからな」
久住「どっちにしても対戦数が少ないな」
霞「ライアン選手はあの魔王プルートを抑えてサイヤング賞を獲得など今年は素晴らしい活躍をしました!」
武藤「はい。100マイルの球を投げるらしい怪物ですからね。20勝は期待されていると言う評価ですからね。やはり凄いんでしょうね」
霞「何か人伝に聞いた様な喋り方ですね?」
武藤「すみません。生で観た事はないので」
霞「なるほど、ちなみにライアン選手はメジャーでもトップクラスの速く重い球を投げるらしいです。球速はあの魔王プルートには及ばないまでも160キロは出るらしいですからね。やはり日本でも通用するんでしょうね」
武藤「とお兄さんが言ってたんですね」
霞「はい」
久住「お兄さん?」
武藤「ああ。この娘は今年渡米した白銀の妹なんだよ」
霞「実はそうなんです!」
久住「へえ」
霞「ちなみに今年の兄は久住さんに無茶苦茶打たれまくりでしたね」
久住「確かにタイミングが良く合いましたね(しかし自分のお兄さんがカモにされたのに嬉しく言うなー?)」
霞「それでブライアン選手は本塁打王は獲得できませんでしたけどリーグ2位の44本を記録とメジャーでも長打力の高い打者として有名ですね。ところで今年の本塁打王は誰でしたっけ?」
武藤「…………えっとすまん。パスだ。久住!」
久住「えっと確かタイガースのオーティスさんが50本塁打でしたね。115試合であの本数ですから何となく覚えてました。ナリーグは…………えっとブラッドさんが45本だったと思います。本数は正確か自信はありませんけど」
霞「そうです。ブラッド=フォードさんです」
武藤&久住「?」
霞「兄が言ってました。ドジャースに行くんだとそこで話したのが今年の二冠王のブラッドさんの話でした!」
武藤&久住「はあ?」
霞「とそれと今年も新人選手がいっぱい活躍した年になりました。来年の新人も期待されています。以上です」
久住「嘘!? これで終わり」
霞「すみませんがその通りです。話が脱線し過ぎた為に放送時間ギリギリになっていました。ではまた!」
武藤(この娘は最後までボケボケだな)
久住「ちくしょう! こんなオチかよ!?」
テレビを観終わって
斎藤「相変わらずだな」
祐一「いやあ、面白い番組だったね!」
朱里「そうね!」
結依「うむ!」
月砂「…………はあ」
斎藤「はあ、やっぱりこのメンツだと疲れるな」
真田「突然ですが暇です!」
今日は休養日と言う事で練習は休みとなっている。
吉田「まあな」
真田「ハハハ、たまの休日は嬉しいですがやる事がありません!」
斎藤「だから何しようか考えてるんだろう。うちも今日から休みが続くしな」
真田「いっそ流球高校か雪影高校まで行こうか?」
吉田「今から北海道と沖縄って!?」
真田「さすがにそれは冗談だけど第一金ないし」
斎藤「そうだな」
真田「シーズンオフだからプロ野球もやってないし野郎だけで映画館とか絶対行きたくないしとハハハ、やる事がありません」
吉田「はあ、こんな事なら真田の呼び出しに応じずに家でゲームでもすれば良かった」
真田「それだ!」
斎藤「吉田の家行ってゲームすんのか?」
真田「半分正解で半分外れだよ。普通のゲームじゃつまらないから僕達で作ろう!」
吉田「どうやって?」
真田「…………さあ?」
斎藤「おい!」
真田「うーむ。良いアイデアと思ったんだけどな。いっそ電車に乗って東京まで行ってみる。泊まるなら風祭君にでもお願いすれば良いし」
吉田「会った事もない奴にそれかよ」
真田「大丈夫だよ。斎藤は何だか仲が良いらしいから」
斎藤「悪くはないと思うけど時季が時季だから実家に帰ってるかも知れないし」
真田「そっか、って風祭君って他県出身なの?」
斎藤「知らんけど、実家が東京だとしても無明の近くに家があるとも限らないだろうし」
吉田「こりゃダメだな」
真田「おのれ! 暇だ暇だ!!」
斎藤「行くだけ行ってみるかもしかしたら偶然会う事になるかも知れないし(東京って言っても広いからまずないだろうけど)」
吉田「そうだな。行くか(このままだと真田が何か問題起こすかも知れないし?)」
真田「じゃあ行こう」
と言う訳で東京に向かう斎藤一行!
吉田「結局ここに来るのかよ?」
真田「あんまり散財したくないからね」
斎藤「それでどうするんだ?」
真田「大丈夫、たいていこう言うパターンでRPGならイベントが起こるから」
吉田「RPGじゃねえし」
真田「良いから待って待って」
斎藤「…………(寒いな〜)」
約30分後
真田「だあ―――! 何も起こらない!! 学生も居ないし!!!」
吉田「今は冬休みなんだから当然だろう」
斎藤「そうそう」
真田「帰ろうか」
斎藤&吉田「待て待て! これじゃ電車賃まるまる損じゃないか!!」
大岡監督「お前ら何やってんだ?」
真田「おっさん誰?」
大岡監督「高校で野球やってんなら無明の監督の顔くらい知っておけよ!」
斎藤&吉田「あっ!?」
言われて斎藤と吉田も気がついた。
大岡監督「はあ、俺って案外知られてないんだな?」
斎藤&真田&吉田「すみません」
大岡監督「それでだ。お前ら何やってるんだ?」
斎藤&真田&吉田「何やってるんでしょうかね?」
自分達でも何故ここに居るのかうまく説明できなかった。
大岡監督「はあ? どっちにしろスパイでもすんのなら野球部は休みだから無駄だぞ!」
斎藤&真田&吉田「本当に何やってんのかな。俺達?」
大岡監督「まったく、怪しい人間が校門前に居るから注意して欲しいと言われた俺の身にもなれよ!」
斎藤&真田&吉田(うわっ!? 居るだけで迷惑かけてたんだな!?)
大岡監督「まあ良いや。暇なら俺の家でも来るか?」
真田「暇なのでぜひお願いします!」
大岡監督「そうか(つうかこのテンションからしてよっぽど暇なんだな)」
こうして一同は大岡監督に着いて行く事となった。
斎藤&真田&吉田(うわっ!? きたねえ!?)
第一声は全員同じだった。それくらいきたない部屋だった。
大岡監督「遠慮なく座れ」
斎藤「と言うか足の踏み場もないんですけど(家が喫茶店なせいかこう言う部屋はちょっとな)」
大岡監督「スペースってのは他人に与えられるもんじゃねえ。自分で作るもんなんだよ!」
真田「格好良い言葉言ってごまかしたつもりでしょうけど、この部屋見る限りだらしなさは変わりませんから」
大岡監督「ハッキリ言う奴だ!?」
真田「と言う訳で僕らは場所を移動するのを希望しますので移動場所を提供して下さい!」
大岡監督「場所を移動ってのは座る場所ではなく家じたいを移りたいって事か?」
真田「正解! 正解者には移動する場所を提供する権利を与えます!」
大岡監督「色々と変だから―――しかし場所って行ってもなー。名雲は寮だし天野達は実家に帰ったし風祭の家が近かったかな?」
真田「来た来た! やっぱり僕達と風祭君は赤い糸で結ばれていたんだね!」
大岡監督「げっ!? お前らそう言う趣味だったのか?」
斎藤&吉田「違います!!」
大岡監督「そうか違うか良かった。この家にお前らが居着いたら俺、明日から野宿するはめになるかと本気で考えちまった!」
真田「そんな事より風祭君家にGO!」
大岡監督「俺も行った事は一度もないんだが、わざわざここまで来たお前らを帰せんしな」
吉田「あのー、いまさらですけどよく俺達の事が分かりましたね?」
大岡監督「ああ。赤竜高校は昔から中西さんで有名だからな。甲子園出ると自然と選手の顔なんか覚えちまうんだよ」
吉田(監督ってやっぱり凄い人なんだな!?)
こうして風祭の家に旅立った。
斎藤(旅立ったって?)
風祭「あれ? 監督……って斎藤!?」
玄関前に行くと何処かに出かけようとしてた風祭と出会う。
真田「クールかと思っていたんだけど実物は違うんだね」
吉田「俺も天才ってのはもっと近づきづらいと思っていたが案外、親近感がわくなあ」
斎藤「それに普通の一軒家なんだな(大きくもないし小さくもない)」
風祭「いったい俺はどう言う風に見られているんだ?」
真田「やっぱりエリートと言えば金持ちいけ好かないもしくは近寄りがたい。勉強は学年TOPで女の子にモテモテと言った感じ?」
風祭「いや、聞き返されても?」
大岡監督「勉強は良い方だけど特別エリートってほどでもないな。野球に関しては才能があるけどな!」
斎藤「やっぱり野球に関しては天才なんだな」
大岡監督「才能だけなら名雲を上回るな!」
風祭「いえ、滅相もない」
柚「とっとと行くぞ。バカ兄貴!」
風祭「悪い。ちょっと知り合いが来ちまったから」
斎藤「妹さん?」
風祭「ああ。買い物する約束しててな」
真田「これはつまり僕達も買い物に付き合ってくれと言う訳だね」
大岡監督「何故そうなる?」
柚「何人増えようが別に構わない!」
真田「話せるね。と言う訳で行こうか!」
風祭「やれやれ」
斎藤(あれ? この感じは前にどこかで?)
真田「斎藤、何呆っとしてんの? 行くよ!」
斎藤「あっ!? ああ。今行く!」
真田「ところで何買いに来たの?」
風祭「ああ。新しいピッチャーグラブをな」
真田「色気のない買い物だね」
風祭「まあな」
斎藤「つうか妹さん、ソフトボールやってるんだ?」
風祭「違う。野球だよ!」
斎藤「え?」
風祭「まあ、軟式の普通のところだけどな。本人は高校でも野球したいらしいけど」
斎藤「へえ。じゃあ大岡さんが居るのはちょうど良いんじゃ」
大岡監督「実力があれば女性でも歓迎するぞ!」
風祭「130キロとストレートは速いんですが変化球は投げられないしコントロールも悪いと―――正直、無明には入れませんね」
吉田「……そんなにハッキリと」
柚「事実だから仕方ない!」
吉田「……そうですか」
風祭「使える変化球でもあれば別なんですけどね」
柚「変化球は全部ダメだった!」
大岡監督「フォームは?」
風祭「オーバースローです」
大岡監督「一般的な変化球は全部試したのか?」
風祭「ええ」
大岡監督「ふむ。一度この眼で見ないと何とも言えんな。グラブ買ったら見てやろう」
と言う訳でピッチャーグラブを買って無明実業高校に向かう。
真田「ほえー、広いね」
吉田「話には聞いてたけど実際観ると凄えな!?」
大岡監督「日本一の高校の練習場だからな。つうか斉天もここと同等の設備と聞いてるが」
斎藤「ええ。と言っても全部を観た訳じゃないですけどね」
大岡監督「そうか」
風祭「えっと、それより柚がさっきから待っているんですけど」
柚「………………」
大岡監督「すまん。ちょっと待っててくれ」
そう言って大岡監督はキャッチャーミットを持って行く。
柚「…………」
ズバ―――ン!
大岡監督「(球速は120キロ後半くらいか、ノビのある良い速球だな)悪いんだが風祭、バッターボックスに立ってくれ」
柚(コクッ!)
大岡監督「すまん。妹じゃなく兄の方で」
風祭「はい。打席に立って俺が打つんですか?」
大岡監督「身内でやりにくいかも知れんがお前が一番適格と思えてな。1打席で良いから勝負してみてくれ!」
風祭「俺は構いませんが」
柚「私も構わないぞ!」
と言う訳で兄妹対決が始まった。
真田「何だか面白くなって来たね」
吉田「よせよ。茶化す雰囲気じゃないぞ!」
カキ―――ン!
兄妹対決は1球で終わった。初球を真芯でとらえられスタンドへ叩き込まれる。
大岡監督「やっぱり決定的に球威がないな。ストレートは悪くないんだがこれで変化球がないんじゃ悪いがうちは獲得出来ないな」
柚「変化球が出来れば良いのか?」
大岡監督「厳密に言えばキレる変化球だな。使えん変化球じゃダメだな!」
柚「そうか」
と言葉を残し風祭妹は帰って行った。
大岡監督「ハッキリ言い過ぎたかな」
風祭「問題ないですよ。事実ですから」
吉田「つうか妹に対して冷たくないか?」
風祭「うーん、そうかな。だけど言わなきゃ分からないし」
真田「今、分かった!」
吉田「少しは空気を読んで欲しいんだが」
真田「そんな事より」
吉田(そんな事って?)
真田「斎藤と風祭が仲の良い理由が分かったよ!」
斎藤&風祭「?」
真田「2人共ソックリなんだよ。野球に対する考え方とか性格が」
斎藤&風祭「そうか? あっ?」
真田「この見事なまでの息ピッタリなところも」
吉田「言われて見るとそうかもな。斎藤に妹が居たら確かに風祭と同じ事を言いそうだしな」
斎藤「―――そうだな。ところで風祭、あれで本当に良かったのか?」
風祭「―――ああ。あいつ自身の問題はやっぱりあいつ自身が頑張らないとダメだからな!」
真田「いっその事、赤竜に入れたら?」
斎藤&吉田「え?」
真田「今、うちの投手は斎藤と山中さんくらいしかいないしさ。新しい投手が欲しいし―――ところでいまさらなんだけど妹さんの名前と歳は?」
風祭「………………」
吉田「っていきなりそれかよ!」
真田「いや、そう言う意味じゃなくてあの娘の歳が分からないと来年から仲間になるか再来年かそれともまだ先か分からないから」
風祭「そうだな。あいつは風祭柚、俺の1つ下だから来年から高校生だ!」
真田「柚ちゃんね。うちは投手がいないから欲しいけど、お兄さんとしては妹さんがいなくなると困るかな?」
風祭「その前にあいつは実家に住んでいる。赤竜は確か寮がなかっただろう?」
吉田「確かにそうだな。斉天はあるけど」
真田「そこは問題ないよ。斎藤の家に下宿すれば良いだけだから」
斎藤&吉田「なっ!?」
風祭「一応可愛い妹だから他人のしかも男の家に住まわすのはちょっとな!」
真田「大丈夫、斎藤の家には月砂さんと結依さんが居るし」
風祭「知らない人が居て大丈夫と言われても困るんだが?」
斎藤「その前に何で俺の家なんだよ?」
真田「僕の家は男ばっかりだし吉田の家も普通だし」
斎藤「自分で言って悲しくなるけど確かに俺の家は世間一般からズレてるけど、だからオッケーってのは変だろう?」
風祭「兄としては変わった家に妹を置くのも嫌なんだが」
斎藤「ほら風祭もああ言ってるし」
真田「やれやれ、いいかい風祭君、斎藤の家なら男は斎藤1人だけなんだよ。この斎藤に君の妹を口説けると思うかい!」
斎藤(事実だけに否定できん!?)
風祭「それはそうかも知れないが、うーん?」
真田「(もう一押しか!)彼女も立派な大人なんだからもう1人立ちさせても良いんじゃないかな!」
吉田「いや、来年高校生じゃまだ大人とは言えないと思うが?」
真田「(余計なツッコミを!?)とにかく15と言えば元服で成人なんだよ!」
吉田「何百年前の話だよ」
風祭「それに元服ってのは成人男子であって女のあいつには関係ないと思うが?」
真田「みんなして苛めなくても良いじゃないか、とにかく妹さん下さい。プリーズ!」
風祭「うーむ」
斎藤「何だよ人の顔ジロジロ見て?」
風祭「分かった。真田はいまいち信用できないが斎藤なら信用できそうだ。妹を預ける!」
斎藤&吉田「うっそ―――!?」
真田「良く決断してくれましたよ。お兄さん…………ってその前に何故に僕を信用できんのだい? あれ? 今何か言った?」←そう言う言動がだよ!
吉田「ついにボケたか?」
真田「酷い言われようだ!?」
大岡監督「こいつらはすっかり俺の存在を忘れてるし」
と言う訳で柚が斎藤の家に住む事となった。
真田&祐一「めでたい。ついに斎藤(ハジメ)も家に女の子を連れて来たか」
柚「…………」
吉田「お前の親父さんってああ言う人なんだな?」
斎藤「うちの両親は変わり者でな」
吉田(斎藤が精神的に強い理由が分かった。こう言う環境で育てられたから強くなったんだろうな)
月砂「柚ちゃんだっけ、何か必要な物があったら言ってね」
柚(コクッ!)
結依「無口じゃな。ワシは同居人の天神結依じゃ、よろしくな!」
柚「風祭柚、よろしくお願いします!」
斎藤「ところで柚ちゃんだっけ、本当に良かったのかこっちに来て?」
柚「ハジメはバカ兄貴も認める投手だと聞いた。参考になる可能性が高い!」
斎藤「呼び捨てっ!? まあ、その前に俺、風祭と対戦した事ないんだけど?」
柚「変?」
斎藤「そうだな。変だな(ダメだ。この娘のテンポについていけん!?)」
柚「でもハジメのフォームは綺麗だった!」
斎藤「フォームが綺麗って普通のオーバースローだけどな?」
柚「私はプロの投手も観たけどハジメほど綺麗なフォームは観た事ない!」
斎藤「ありがとう(赤面)」
真田「良い雰囲気ですね。お義父さん!」
祐一「まったくだね。若い者は良いね。ちなみにお義父さんじゃないけどね!」
朱里「茶化したらダメよ。ああやってみんな大人になって行くんだから」
結依「うむ!」
月砂「…………はあ」
吉田「賑やかですね」
月砂「まあね。父さんと母さんが居るといつもこんな感じよ。結依さんもすぐに順応しちゃったし」
吉田「大変だなー」
こうして新しい居候、正確にはまだだがが加わり斎藤の1年目は終わりを告げた。