第15章 進むべき未来

−1995年 1月−
新年明けましておめでとうと誕生日は飛んで冬休みも終わり赤竜高校は練習を頑張っていた。
中西監督「喜べてめえら! 春の甲子園代表に選ばれたぞ!!」
全員「マジっスか?」
中西監督「マジだ!」
全員「おっしゃ!」

と言う訳で赤竜高校はこれで4連続甲子園出場とまたもや偉業記録を更新した。
吉田「それにしても凄えな。春も出れるとは!?」
真田「そりゃ僕がいるからね!」
斎藤「と言うよりうちの県は比較的あまめな裁定らしいからな。今までの先輩達の偉業が凄かったおかげだろう!」
吉田「まあ、その多くは斉天の選手だけどな」
真田「赤竜にも頼れる天才真田君が入ったから問題なしだよ!」
吉田「と言っても県じゃ打ってたけど関東大会じゃボコボコにされてただろう」
真田「だって佐伯と同等の投手なんてそうそう打てないよ!?」
吉田「確かに無名で凄い人がいっぱい居たからな。ああ言う人達もいずれプロ入りするのかな?」
斎藤「野球も天井知らずな世界だからな。いずれもっと凄い人達に出会うかもな」
吉田「どっちかと言うと白銀さんに当てはまりそうな言葉だよな」
斎藤「確かにね。白銀さんが活躍すればこっちでもメジャー戦とか当たり前の様に放送されるかな?」
吉田「活躍できればな。正直、渡米して活躍出来た人は皆無って話だから期待薄だけどな」
真田「いやいや、あの人は活躍するね!」
斎藤&吉田「いつの間にか立ち直ってるし?」
真田「だって勝数と奪三振のタイトルを獲得した投手だよ!」
吉田「確かにタイトル獲得する投手だけどイコールメジャーで通用するとも言えないしな」
真田「むむむ。しかし僕はきっと活躍すると思うよ!」
斎藤「まあ、今年が終わる頃にはハッキリするよ。確かに真田の言う通り日本の野球が世界でも通用するって証明して欲しい物だな」
吉田「確かに」
真田「と言う訳で今年の白銀さんは大活躍でした!」
斎藤&吉田「まだ始まってもねえよ!!」

自主トレ中
大下「…………」
柳生「そこのルーキー君は何で泣いてるんだ?」
宏「それは勿論、こんなメンバーで自主トレ出来るからですよ!」
大下「ええ。めっちゃ感動してますから!!」
星野「感動するのも仕方ない事かも知れませんね」
柳生「そいつはまたどうして?」
星野「俺達がルーキーの頃は誘って自主トレ何て考えもしなかったじゃないですか?」
柳生「確かにOBの中村さんや福井さんてのは既に伝説上の選手だったからな。声をかけるなんて事出来ねえし」
星野「それを言うなら柳生さんが俺を自主トレに誘ってくれなかったのも悲しかったです!」
柳生「すまん。あの時は俺、2軍だったしそんな余裕なかったんだよ。1位で指名されたお前と違ってテストを受けてギリギリ合格だったからな!」
宏「俺が入団した時にはもうチームの主軸を打ってる打者でしたけどね」
柳生「まあな。しかし結構無茶してドジ踏んで嫌な思い出もあるけど良い思い出もあった2軍生活だったなー」
星野「上がってからは一度も2軍に落ちてはいないんだから凄いですよ」
柳生「まあな。しかしドラフト1位で華々しく入団し1年目から結果を出し続けたお前に言われるとはな」
星野「いえ。俺も3年目は開幕から不調で2軍に落とされましたから」
柳生「そうなのか?」
星野「ええ。3年目のジンクスって言われましたかね。田村さんの励ましの言葉がなければまだ不調なままだったかも知れません」
柳生「なるほど、プロでも良い先輩に恵まれたな」
宏「自分で言うかこのオッサン!」
柳生「プロの先輩に向かってそう言う事を言うか!?」
宏「すみません。だけど柳生さんの事は全然知らなかったものですから?」
柳生「らしいな。俺の母校ってあんまり知られてないんだよな。星野は知られてるのに?」
大下「まあ、ドラフト外でしたからね。やっぱり地味何でしょうね。下位指名の俺にはその気持ちがよーく分かります!」
柳生「おう友よ!」
大下「ああ先輩!」
宏&星野「……………………」
大下「話がかわるんですけど、プロに入ってまず気を付けない事って何ですか?」
星野「本当にいきなりだな!?」
大下「それで?」
柳生「では最年長の俺から、首脳陣にアピールする事だな。センスが良くとも首脳陣が気付いてない場合もある!」
宏「確かに下位指名の選手は知名度が低いからな?」
柳生「そうなんだよ。おまけに年俸も安いから大変なんだ!?」
大下「なるほど、紅白戦がポイントになりそうですね」
星野「それとプロは基礎体力が重要だ。俺は1年目にフル出場したがプロとアマとの基礎体力の差を実感したよ!」
宏「確かに投手の俺でもきつかったからな。フル出場の野手は比じゃないだろうな」
大下「ふむふむ。それで中西さんは?」
宏「そうだな。食事とかの制限がうるさいとか門限とか厳しいとか?」
柳生「それは当たり前だ!」
星野「その前にそれは助言ではなくお前のただの不満だろう!」
宏「だってだって練習付けの毎日で外に遊びにも行けないんだよ!?」
星野「まあ、カープは12球団の中でも特に厳しい練習らしいからな。確かに他所と比べれば休日も少ないだろう?」
大下「そうだったのか?(ベイスターズで良かったー)」
柳生「それよりお前を慕ってる後輩にアドバイスしてやれよ?」
宏「そうですね。だけど俺は期待されてたせいかオープン戦でも完投させてくれたしな。これと言ってアドバイスはないな」
大下「そうですか(良くこれで新人王なんて獲れたよな。きっとカープはキャッチャーが良いんだな)」
星野「やれやれ、とまあこんなところだな。約1名は参考にならんとは思うが分からない事があったら先輩に聞くと良いだろう」
大下「そうですね。しかし赤竜はみんなバラバラですね?」
柳生「まあ、OBの中村さんや福井さんも引退したからな」
星野「そう言えば柳生さんには監督のOBがいるじゃないですか?」
柳生「ああそれね。監督は福井さんの後に俺がプロ入りした事なんて知らんかったけどね」
大下「そうなんですか?」
柳生「ああ。福井さんの後から全然甲子園に出ないから赤竜にどんな選手がいるか分からないんだと」
星野「俺達も頑張りましたけど、結局一度も出れませんでしたからね」
柳生「ああ。特に最後の夏には竜崎にノーヒットノーラン食らって終わっちまったからな。あいつは甲子園準優勝投手として華々しくドラフト1位で入団するわ」
大下「へえ。星野さんがいれば1回くらい甲子園に出れそうな気もしますけど」
柳生「星野は良くやったと思うよ。あの投手陣でベスト8まで行ったんだからな。俺の最後の夏は1回戦で終わったけどな」
星野「そう言う意味では甲子園に出てるしお前らは俺達の新人の頃より格上なのかも知れんな!」
宏「俺は最後の夏に甲子園に出れました。だけど俺の力と言うより相良の力でしょうね。あいつは特に打って欲しい場面で何度も打ちましたから」
柳生「確かに星野も1年ながら長打力は高かったがあいつは別格だな」
星野「そうですね。今からでもプロ即戦力と言う話は本当でしょうね。と言ってもあれで全国トップの打者じゃないってのは現在の高校のレベルの高さには驚きですよ!」
大下「相良が3年になる今年が赤竜のピークですね!」
宏「お前が引退しても甲子園出場だからな。それに七瀬を上回る投手も入って来たらしいし」
大下「斎藤は凄いけど変な奴ですね」
柳生「凄いけど変な奴って?」
大下「1年で130キロと速いんですけど奪三振率が異様に高いんですよ?」
柳生「別におかしくないだろう。130キロって言えば十分、速球投手だし」
大下「確かに、しかし斉天の打線でもですよ。健太、高須、嘉神相手でも十二分に通用します!」
星野「なるほど、よほどノビがあるんだろうな」
大下「はい。何かストレートの回転が違うんですよね?」
星野「フォームが変わってるのか?」
大下「いえ。フォームは普通のオーバースローなんですけど、ボールを回転させながら投げてる感じがするんですよね」
柳生「ストレートなんだから回転はするだろう?」
大下「いえ。その回転が少し違うんです」
星野「心当たりがあるな!」
大下「本当ですか!?」
星野「ああ。プロでも幻のストレートと言われる球だ。お前が言ってた様に通常のストレートとは回転が違うんだ!」
宏「それは投手の俺としてはぜひとも知りたいな」
星野「名前とかはないがな。ドリルの様な回転で来る為にノビが段違いなんだそうだ!」
大下「確かに斎藤の球もそんな感じでした」
星野「ふむ。プロでも幻の球と言われるストレートを投げる高校生とはなかなか面白そうな奴だな」
宏「面白いと言うか何でそんな投げ方なんだ?」
星野「恐らく生まれ持っての感覚だろう。投手と言うのは指先の感覚が生命だろうし」
宏「確かに、ただ速い球投げられるだけではプロでも通用はしませんけど」
大下「プロでも幻のストレートとは道理でなかなか打てないはずだ!?」
星野「ぜひともバッテリーを組んでみたいな」
大下「まだ1年なのに凄い入れ込みようだな」

赤竜高校
真田「クッシュン!?」
吉田「風邪か?」
真田「うーん、そうかも!」
吉田「何で嬉しそうに言うんだよ?」
真田「いやあ、風邪になるとテンションが高くなるから」
吉田「それ変だぞ。普通、風邪の時は食欲なくなってテンションが落ちると思うぞ!」
真田「いやあ、僕は普通じゃないから」
吉田「知ってるけど、笑って言うセリフじゃない様な」
斎藤(俺もクシャミが出そうだったんだけど、真田が先にしたせいか止まったな)
真田「ところで斎藤、その後の同棲生活はどう?」
斎藤「同棲じゃなく同居だし、そんな事より風邪なんだろう。今日は家に帰って休めよ!」
真田「そんな事言ってごまかしてもムダだよ。柚ちゃんと君の生活は」
斎藤「うん? 柚ならとっくに実家に帰ったぞ!」
真田「…………一体、何やったの?クシュン!?」
斎藤「何もしてねえよ。それより風邪ひどくなってるし帰って休んだほうが良いぞ!」
吉田「つうか何勘違いしてんだ? 柚はまだ中学生だぞ。実家で中学に通わなきゃ行けないだろうが!」
真田「そういやそうだね。来年から女の子が入るのかあ、張り切る理由が増えるな!」
吉田「つうか俺達、まだ監督に柚の事話してないんだよな」
斎藤「そうだった。今から話しに行くか!」
真田「それはダメ!」
吉田「何で?」
真田「………………それは僕が……限……界……だ……から」
斎藤「倒れるまで顔は笑ってると」
吉田「ある意味大したもんだな」
斎藤「ああ」

こうして真田は練習を休むのだった。

仲良し6人組集合
名雲主将「しかしこうして俺達6人が揃うと落ち着くなあ」
河島主将「落ち着くのは良いけど、沖縄から東京って無茶苦茶遠いんだぜ。お金の方もお年玉から引かれちまったし」
相良主将「俺達全員で沖縄行くのもあれだしな」
嘉神主将「何よりお前だけ呼ばなかったら絶対怒るだろう?」
河島主将「その時は全員ボコボコにしてやる!」
嘉神主将「そんな事したら出場停止処分を受けるぞ!」
河島主将「いいよ。どうせ俺は春の甲子園に出れないし」
嘉神主将「え? 負けたの?」
宗介「つうか何でそんな事も知らないんだよ」
高須「まあ、そう言う奴だからな」
嘉神主将「何で教えてくれなかったの?」
高須「全員知ってる事だし、改めて話すのもあれだしな」
河島主将「と言う訳で春はお前達だけで頑張ってくれ」
相良主将「それは残念だな。お前との対戦は楽しみの1つだったのに!」
河島主将「嬉しいぞ。さすがは相良、俺もお前と対戦したかった!」
嘉神主将「俺はお前とは対戦したくないな。生命に関わるから」
宗介「俺もだ。投手生命どころか生命を失いかねんからな」
河島主将「うえーん。何て友達がいのない奴らだ。夏に当たったらマジで殺してやろうか」
名雲主将「それはマジでやめてやれ!」
河島主将「冗談は置いといて俺は出れんしテレビで観るから頑張れよ!」
高須「言われるまでもない。夏の借りは春に返す!」
宗介「また返り討ちにしてやるさ!」
嘉神主将「くっくっくっ! 盛り上がってるねえ!」
名雲主将「お前は平常なままだな?」
嘉神主将「やる事はやってるからね。後は力を出すまでさ!」
名雲主将「なるほどな」
河島主将「ちくしょう! 全然羨ましくないからな!」
相良主将「表情に出てるぞ」
河島主将「ところでお前らはどのプロの球団に入る?」
全員「相変わらず立ち直り早っ!?」
河島主将「で、で!!」
嘉神主将「ってもな俺達は全員競合で1位指名が固いだろうし好きな球団に入れるか分からんしな?」
高須「確かに、俺達ポジションもバラけてるし天野と河島も利き腕が右、左と違うし希望球団に入れる可能性はないんじゃないか?」
宗介「それに名雲はプロ入りを迷ってるしな」
相良主将&嘉神主将&高須&河島主将「!?」
高須「それはどう言う意味だ?」
嘉神主将「ちょっと落ち着けよ!」
高須「……ああ。悪い」
名雲主将「いや、お前が怒るのも当然の事だ。多分、俺はあの約束を破る事になるからな」
高須「怒るかどうかは理由を聞いてから決める!」
名雲主将「俺は昔からと言ってもお前らに会ってから何だが爺さんを尊敬している!」
河島主将「ああ。名雲神威( なぐもかむい )さん、俺達はその名前の下に集った!」
名雲主将「キッカケは些細な事だった。だけどそのおかげで俺達はここまで来れた!」
嘉神主将「俺と高須はもう実家から勘当寸前だしな。兄貴が助けてくれるから俺はまだ良い方さ」
高須「俺だって問題ない。名雲に比べればな」
相良主将「とにかく、話を進めよう!」
名雲主将「ああ。俺は元々愛知にある実家の寺で育った。名雲家は代々仏の道を歩んでいるからな」
宗介「それは知ってる。寺の爺さんとは面識もあるし」
名雲主将「そして俺は育ての爺さんに世話になるのもあれだから特待生として神奈川に引っ越して来た。その時にお前らに出会ったな」
嘉神主将「俺は親父と顔を合わすのが嫌で他県に引っ越した。兄貴が東京にいるから近い神奈川にな」
宗介「俺は親父の紹介で神奈川のリトルリーグだったかな。どう言う経緯の紹介かは覚えてねえけど」
河島主将「俺は普通に親父の転勤だったな。今までマンションでこれから一戸建てに住めるってのが嬉しかったから良く覚えてる」
高須「俺は覚えてないな。ただ家を飛び出して持ってる金で電車に乗って知らない駅に降りて……後は」
相良主将「俺が拾ったあの時は驚いたな。俺の家の前で行き倒れてんだから」
嘉神主将「今じゃ考えられねえ無鉄砲さだよな」
河島主将「それに無茶苦茶荒れてたからな。嘉神もそうだけど高須はそれを上回ってたからな」
高須「まあな。お前らがいなきゃ今でも荒れてただろうな」
嘉神主将「うむ。感謝してるぞ」
宗介「ある意味、嘉神は昔の方が良かったかもな」
相良主将「それは俺も思った。荒れてたこいつは何だかんだ言って2枚目だったからな。今じゃ3枚目って感じだし」
嘉神主将「イケメンな俺に向かって酷い奴ら」
宗介「その言動がな。昔のお前は何だかんだ言って2枚目だったし、もちろん暴力振るわなくなっただけ今の方がマシだけど」
高須「本題に戻るぞ!」
名雲主将「って訳で出身地の違う俺達は出会った。顔を合わせた瞬間ケンカと最悪の出会いだったが俺の爺さんの名前と野球に出会って俺達は良い方に変わった!」
嘉神主将「天野と河島は最悪な俺達にも遠慮なく話しかけて来たっけな。話す度にむかついたから良く覚えてるよ!」
河島主将「やっぱりそうだったのか……天野が言うまで全然気付かなかったからな」
嘉神主将「まあ、その空気が読めないところが結果的に良い具合になったんだよな」
高須「感謝してる。あれがなきゃ絶対仲良くなんてならなかっただろうし」
嘉神主将「うむ。絶対殺すって毎日思ってたもんな!」
高須「俺もだ!」
名雲主将「俺はそこまでは思わなかったな」
河島主将「そして俺と天野で考えた野球対決!」
嘉神主将「あれか今考えれば何で素人の俺達が経験豊富なお前らに勝てたんだが」
高須「名雲は神威さんの血を引いてるからな分からんでもないけど」
名雲主将「子供の頃は何だかんだ言って体格の大きい方が有利って感じだったからな」
宗介「河島が野球で勝負してへこませれば少しは大人しくなるだろうって言うからやって見れば滅多打ちを食らい俺は自信喪失した!」
河島主将「俺もだけど、天野は自信取り戻すまで長かったよね」
名雲主将「何の因果か俺がその天野を慰めてキャッチャーになっちまったな」
宗介「その節はまことにお世話になりました!」
名雲主将「いえいえ、こちらこそ!」
高須「再戦したお前も打っちまったけどな」
宗介「今でも疑問なんだけど練習してないってマジなの? あれだけ練習して何もしていない人間に負けるなんて!?」
嘉神主将「運動にも勉強にも自信があったからな。特に身体能力はガキながら高かったからな。俺と名雲と高須は」
高須「名雲を筆頭に全員長身だったしな」
宗介「確かにガキの頃の俺はチビだったけど、それでも110キロは出てるストレートを何で容易く打てるんだよ?」
嘉神主将「金属バットに軟球だからだろう。当てるだけで十分に長打になるし」
高須「それに速く感じなかったしな」
宗介「ガキの頃は努力より才能ですか!?」
名雲主将「今では互角なんだから良いじゃないか」
宗介「そうなんだよな。今の嘉神と高須は俺に負けないくらい努力しているのに何で互角なのか不思議なんだよな?」
高須「成長速度の違いじゃないか、俺達と比べてお前の成長は後期だった」
宗介「そんなもんかね」
嘉神主将「これにてリトルとシニアは飛ばして本題だ!」
名雲主将「うむ。俺はメジャーに挑戦しようと思っている!」
高須「白銀さんの影響か?」
名雲主将「キッカケの1つはそうかもな。ただ、俺は良い意味でライバルに巡り合った記憶がない!」
相良「天野は同じチームだからあれだけど河島相手ならライバルだろう?」
名雲主将「高校でお前らと敵同士になればそうなると思っていたんだが、やはりお前達はライバルではなく仲間だ!」
嘉神主将「それは、まあ、そうかも知れんが、仲間でありライバルだろう?」
名雲主将「俺にはあくまで仲間でしかないんだ。ライバルにはなり得ない!」
高須「だから国を出て探すのか?」
名雲主将「ああ」
河島主将「プロの舞台で会えるかも知れないのに?」
名雲主将「プロには凄い選手がいっぱいいるが俺にはお前ら以上の選手がいるとは思えん!」
宗介「って事らしい!」
相良主将「なるほど、名雲らしい理由だな!」
嘉神主将「なるほど、俺もその気持ちは分からんでもないな!」
高須「やるなら絶対頂点に立てよ!」
河島主将「まあ、全員気持ちは同じみたいだね!」
名雲主将「お前ら!? 約束を破る俺を許すのか?」
河島主将「懐かしいね。ずっと一緒に野球をしよう。プロでもアマでも敵同士でも味方同士でもずっと一緒にかハハハ、思い出すと毎回クサイセリフだと自覚するだろう!」
名雲主将「仕方ねえだろう。本気でそう思ったんだから、あのセリフの後、お前ら大笑いするし」
宗介「別に悪い意味で笑った訳じゃないし良いじゃん!」
名雲主将「笑われたこっちの気持ちも考えろよ」
嘉神主将「いやいや、その図体でセンチメンタルな事言うもんだからな」
名雲主将「お前と河島が一番大笑いしてくれたから良く覚えてるよ! 高須と相良はこいつらほど大笑いしなかったけどな」
高須「俺も同じ気持ちだったからな!」
相良主将「正確には俺達だけどな。俺達、全員お前と同じ気持ちだった!」
河島主将「それじゃ名雲に一言!」
全員「絶対世界の頂点に立てよ!!!!!」
名雲主将「ああ!(絶対に獲る。そしてお前達に報告に行く!)」

こうして名雲世代の伝説の戦いが始まった。いや、もう始まっていたのかそれが明確な形となったのだ。

赤竜高校
中西監督「ふむ。風祭の妹ね」

斎藤達はずい分遅れたが柚の事を中西監督に話していた。
真田「いまさらなんだけど女の子って甲子園出れるの?」
吉田「本当に今更だな。女子は甲子園どころか公式戦にも出場出来ねえよ!」
真田「………………ひょっとして僕、余計な事したかな?」
中西監督「そんな事はないさ。お前が強引に誘ったんじゃなく本人の意思で来るんだろう」
真田「ええ」
中西監督「なら問題なしだ。それに練習試合には出れるしな。一応、俺もお偉いには顔が利くし」
真田「さすがは監督! 本当に凄いんですね?」
吉田「調子の良い奴」
中西監督「と言ってもその娘に力がなきゃ公式戦出場なんて夢のまた夢だけどな」
斎藤「女性ながら速いストレートを投げるんですが使える変化球がないしコントロールはまあ普通くらいかな」
中西監督「それですぐに通用するのか?」
斎藤「無理でしょうね。致命的に球質が軽いと言う欠点もありますし」
中西監督「使える変化球がないか―――俺も変化球指導は得意じゃないからな。その娘が大成するのは難しいかもな」
吉田「幸先不安ですね」
中西監督「まあ、この眼で見ないと何とも言えんし何より男だけの世界で戦おうってのは生半可な覚悟じゃないからな」
吉田「確かに凄いですよね。歴史的な偉業になるかも?」
中西監督「まあ、その娘の事は入ってから考えた方が良いだろう。と言う訳で練習開始!」
斎藤&真田&吉田「はい!」

相良主将「うぉ―――!!!」

カキ―――ン! カキ―――ン! カキ―――ン!
カキ―――ン! カキ―――ン! カキ―――ン!
カキ―――ン! カキ―――ン! カキ―――ン!

部室から出た直後に相良の凄まじい打撃音が聞こえて来た!
斎藤「凄え!?」
中西監督「ふむ。何があったのかは分からんが春では赤竜初の優勝も出来るかも知れんな!」
真田「相良さんも凄くなったな!」
吉田「凄いのは元々だからこの場合は付け入る隙がなくなると言うべきか少し違う気もするけど」
斎藤(俺も頑張らなきゃ、きっと風祭も甲子園で待っている!)
大下「その調子、その調子、春でもバーサーカーの力を見せてやれ!」
吉田「いきなり出てきてバーサーカーって何ですか?」
大下「何となくだ。気にするな!」
吉田「はあ?」
真田「ところで何でキャプテンがここにいるんですか?」
大下「いや、まだここの学生だし2月になるとキャンプに参加するけどな」
真田「満漢全席期待してます!」
大下「まだ諦めてなかったのかよ?」
真田「調べたところプロ野球選手にはタイトル料と言う物がありましたタイトルを獲ったらお金が入って来ると聞きました!」
大下「そのくらいは俺も聞いた事があるけど、1年目でタイトル獲れるとは思えないんだけど?」
真田「ええ。ですから獲れたら満漢全席お願いします!」
大下「はあ、負けたよ。タイトル獲ったらご馳走するよ」
真田「活躍期待しています!」
大下「何の見返りも要求しなかったら素直に喜べる言葉なんだけどな」

こうして赤竜高校のひと時も終わった。2月も過ぎ3月、いよいよ2回目の甲子園での戦いが始まる!