第16章 スピードボール決定戦!速球VS剛球!!

−1995年 3月−
いよいよ春の甲子園スタート! 赤竜高校は無事宿舎に到着した。
中西監督「無事に到着したな!」
全員「そうっすね。けど長距離移動はやっぱり疲れますね」
中西監督「1人を除いてな」
全員「は?」
真田「僕は元気だよ。プロ候補生たる者、移動には慣れないとね♪」
全員「なるほど」
吉田「いや、良い空気だな♪」
中西監督(もう1人いたか)
斎藤「珍しく吉田もご機嫌だな?」
吉田「夏にはここで2本塁打と打ったからな♪」
真田「最終的には最後の打者になって負けたけどね」
吉田「………………思い出させるなよ!」
斎藤「まあまあ、良い当たりをアウトにされたんだから仕方ないじゃないか?」
吉田「だからこそ余計悲しいんじゃないか!」
真田「フォロー失敗!」
斎藤「すまん」
相良主将「バカな事やっていないでとっとと入るぞ」
斎藤&真田&吉田「はーい」

嘉神主将「ほう。よく来れたな」

宿舎の入り口の前で早速斉天の選手と出会う。
相良主将「つうか何で俺達が選ばれたのを知らないんだよ。よくそれで主将やってられるな」
高須「まあ、俺や他の2年がフォローしてるからな」
相良主将「ダメな主将の見本だな」
嘉神主将「君ら親友に向かって酷くない。これでもキャプテンらしい事はちゃんとしてるのに!」
高須「まあな。頭の回転が速いだけあって物覚えは良いからな」
嘉神主将「平均90点はダテではありませんよ!」
高須「しかし自分からしようと思わないところが最大の欠点だな」
相良主将「せっかくの能力も使わなければ無意味か」
嘉神主将「持ち上げて落とされるとショックも大きいな!?」
高須「難しい事じゃないだろう。野球の様に何事も取り組めば良いだけだ!」
嘉神主将「逆に聞くけどお前は?」
高須「…………」

何も答えずに宿舎に入る。
嘉神主将「スルーかよ!?」
相良主将「まあ、お前らは似たところがあるけど、少なくとももう少し野球の情報は調べといた方が良いぞ!」
嘉神主将「と言っても自分で調べるなんてうちじゃ高須と佐伯くらいだぞ?」
相良主将「さすがは名門、余裕だな(名門ほどデータ重視だから部員もそうだと思ったんだけど、そんな事もないんだな)」
嘉神主将「まあ、俺もキャプテンらしいところを見せねえとな!」
相良主将「河島がいないのは残念だがあいつの分まで頑張らないとな!」
嘉神主将「おう!」
全員(ようやく入れる。入り口をずっとふさがれていたからな)

と言う訳で赤竜高校は夏の様にはならず無事勝ち上がり3回戦まで来た。

赤竜高校
中西監督「いよいよ3回戦だ!」
真田「1回戦で優勝候補の冥空に当たった時はどうなるかと思いましたけどね」
吉田「失礼ながら山中さんでよく7回を3失点に抑えられたなと思いましたよ」
山中「甲子園で勝利投手になれるなんて感動もんです!」
嵯峨「まだ終わっていないのに泣くなよ」
山中「思い出す度に嬉しくてな」
玖珂「しかし今日の相手は名門じゃないがあの150キロ投手の石崎がいる転生高校ですよ!」
中西監督「うむ。1年の夏にはプロのスカウトも物凄く注目していたからな」
相良主将「無理もありませんよ。1年で150キロなんてこの先もないかも知れない記録ですから」
中西監督「うむ。とにかく相手は弱小と言われていたが石崎と言うエースがいる限り名門以上と考えた方が良い強いチームだ!」
相良主将「はい。それに1年ながら4番を打っている広瀬とドラフト候補の木下といます!」
中西監督「うむ。休みがあったが2回戦から連投になるが斎藤に先発してもらう!」
斎藤「はい!(相手はあの石崎かワクワクするなー)」
真田「しかし150キロか」
吉田「やけに自信があるな。速球は苦手じゃなかったのか?」
真田「ふっ空元気に決まってるじゃないか」
吉田「すみませんでした」

転生高校
浅野監督「3回戦の相手はなんとあの中西監督が率いる赤竜高校だー!」
全員「ご機嫌ですね」
浅野監督「お前らも中西さんの伝説は知ってるだろう!」
石崎「ええ、まあ、中西さんは伝説の投手として有名ですから(俺と流石は彼方さんを尊敬してるけど)」
浅野監督「いやいや、弟の学とよく話したもんだよ」
木下主将(それは気の毒にこの人の話は長いからな)
浅野監督「はあ」
全員「急に落ち込んでどうしたんですか?」
浅野監督「いや、弟とこの話してよく盛り上がってプロでも一緒に本田さん兄弟の様なバッテリーになろうと話してたんだけどな」
全員(またかよ?)
浅野監督「学は堂々と1位で入団しもうマリーンズのエースだ。俺は…………はあ、こんな田舎の弱小校で野球部の監督だし」
木下主将「確かにうちは田舎ですけど、監督が入ってから甲子園にも初出場して何十年か振りにプロ選手も出せたじゃないですか?」
浅野監督「確かに俺には高校の監督の才能があるかも知れんが今からでもプロ入り出来んかな?」
全員「まあ、監督はまだ若いですし可能性は0じゃないですけど」
浅野監督「うーむ。小島達にどうすればプロ入り出来るか聞けば良かったかな?」
広瀬「それなら聞きましたよ」
浅野監督「おおー! で何て言ってたんだ?」
広瀬「あの監督のおかげだってアホなところもあるけど理解力があるから助かるってノビノビ出来たからプロになれたって言ってました!」
浅野監督「うーむ。確かに高校時代は俺は斉天の5番を打っていたが、とてもノビノビしてられる様な環境じゃなかったな」
全員「つうか監督って斉天の出身なんですか?」
浅野監督「ああ、そう言えば言ってなかったな。俺は一応5番として活躍しあのタイガースの竜崎とコンビを組んで全国制覇もした事がある」
全員「へーえ。そんな凄い監督が何でドラフトに引っかからないんですか?」
浅野監督「あの頃は竜崎のワンマンチームって感じだったしな。俺も長打力は認められてたけど技術の方が不足してるって事でプロも指名をやめたらしいからな」
全員「へーえ。竜崎さんって高校時代から凄かったんですよね」
浅野監督「ああ。斉天で1年生レギュラーってのは歴代でも竜崎をふくめて僅かしかいなかったからな。昨年、いや一昨年は2人と異例だったけどな」
全員「へーえ。そういや弟さんとは歳が離れてるんでしたね」
浅野監督「ああ。あいつとコンビ組んでたら俺も指名されたかも知れんかったのにな。とにかく俺は大学でも斉天のレギュラーとして頑張ったがプロ入りは出来んかった。それでここの校長に野球部の監督兼教員として働いて欲しいと頼まれてな」
全員「確か、その時に小島さんに出会ったんですよね」
浅野監督「ああ。当時ここにはあいつの球を捕れる捕手がいなくてな。俺があいつの捕手代わりになったんだ。まあ、3年の夏にはキャッチャーも捕れるようになったけどな」
全員「へーえって前にも聞いたな」
広瀬「ふっ、少しは俺のありがたみも分かっただろう!」
石崎「と言っても昔からバッテリー組んでるしな。それにリードはからっきしだから俺が考えてるし」
広瀬「考えてるって速い球さえ出せば良いって大雑把な考えじゃないか」
石崎「ふん。俺の球をスタンドに運べる奴なんて…………」
広瀬「ちなみに河島さんは今大会には出ないぞ」
石崎「知ってる。ああ! 思い出したら腹が立ってきた! リベンジしようにも相手がいないし」
広瀬「大丈夫だ。相良さんは河島さん以上のバッターだから」
石崎「関係ないし?」
広瀬「だから相良さんを河島さんだと思って投げれば良いだろう」
石崎「共通点が分からん?」
広瀬「強打者、右打ち、フォームが一緒、学年も同じでおまけにキャプテン同士かな」
石崎「と言ってもな。やっぱり相良さんは相良さん、河島さんは河島さんだよ」
広瀬「想像力のない奴だ」
石崎(そう言われてもな。やっぱり本人以外だと無理だよ)
木下主将「ところで監督、相手チームの情報は?」
浅野監督「石崎が完封して広瀬がホームラン打てば勝ちだから必要なし」
木下主将(おいおい。何の為に夕べにミーティングしたんだよ)

−甲子園大会準々決勝戦 阪神甲子園球場−
2年 三崎 克樹
後攻 先攻
転生高校 赤竜高校
投手力 機動力 投手力 機動力
打撃力 守備力 VS 打撃力 守備力
意外性 経験値 意外性 経験値
総合力 総合力
真田 和希 1年
1年 八代 正秀 安達 正孝 2年
2年 木下 神楽 斎藤 一 1年
1年 広瀬 幸一 相良 京一 2年
1年 石崎 和久 玖珂 良雄 2年
2年 木崎 和宗 嵯峨 蓬 2年
2年 本永 信貴 吉田 毅 1年
2年 天谷 宗一郎 加納 利雄 2年
2年 兼村 彰人 伊沢 樹 2年

放送席
霞「早い物で春の甲子園もベスト8の戦いとなりました。両校共に春ではベスト8進出は初めてとなります!」
武藤「まあ、転生高校は春の出場は初めてですから何でも初ですけどね」
霞「武藤さんのツッコミは放って置いて両校共に1年生投手の投げ合いと言うのも注目です!」
武藤「解説を放って置かれたら困るんですが、確かにそれが注目な試合ですね!」
霞「と言う訳でベスト8に残った高校の実力をこの眼で観ましょう!」
武藤(生とテレビじゃやっぱり違うと思うけどな)

1回表 転0−0赤 150キロ投手をどうやって打つか?
石崎(真田か―――どんな選手だっけ?)
広瀬(知らん!)
石崎(よくそれでありがたみとか言えるな!)
広瀬(リードは面倒だ!)
石崎(まあ、1番だしセオリー通りなら足が速くて選球眼の良い打者だろう。ストレートでとっとと片付けるぞ!)
広瀬(うむ。と言うかいつも通りだな!)
石崎(やかましい!)

ズバ―――ン!
霞「146キロのストレートで三振!」
武藤「まだ1打席目なので判断は難しいですが昨年の夏よりコントロールが良くなった感じがしますね」
霞「そう言えば広瀬君があまりミットを動かしませんでしたね?」
武藤「まだ1人なので何とも言えませんけどね」

真田「討ち死にしました!?」
中西監督「最低でも後2打席あるから死んではないだろう」
真田「つうかあんな速い球どうやって打てば良いんですか?」
中西監督「石崎は四死球が多いからな。やっぱり球を良く見て行けだと思うが?」
真田「僕は三球三振何ですけど!?」
中西監督「夏に比べてコントロールは良くなったのかも知れんな。まあ、まだ1人だし、たまたまなのかも知れんが?」
真田「そうですか今日の僕は運気がないんですね!?」
安達「何があったんだ?」
中西監督「安達、お前打席はってここにいる時点で聞くまでもないか?」
安達「三球三振!?」
中西監督「お前もか!?」
吉田「こりゃ本当にコントロールが良くなったかも知れませんね。次は斎藤だし注目しましょう!」
中西監督「だな」

霞「ここまで二者連続三振! 次のバッターは強打者の斎藤君!」
武藤「注目の対決ですね!」

斎藤(石崎はスロースターターだ。早い回で得点しないと尻上がりに調子を上げる。初回で打ち込む!)

石崎(斎藤!)
広瀬(知り合いか? 3番て事は良い打者なんだろうが)

ズバ―――ン!
斎藤(今の球、初回とは思えないほど速かったけど!?)

霞「出た150キロのストレートで1ストライク!」
武藤「初回で出たのは意外ですね。石崎君は夏の甲子園以来、秋の大会も1回戦と2回戦も150キロは出ませんでしたがここで出しましたか!?」

広瀬(良い球だ。大口を叩くだけあってこの球なら多少コントロールをミスっても打てん!)
石崎「………………」

スト―――ン!
斎藤「なっ!?」

霞「2球目はフォークを空振り2ストライク!」
武藤「斎藤君相手には出し惜しみしないですね。斎藤君は全国ではまだまだ無名と思いましたが意外に知られてる見たいですね」

斎藤(恐らく3球で来るな。ストレートかフォークのどっちかだな!)

ズバ―――ン!
霞「最後は148キロのストレートで三振と1回を三者三振に抑えます!」
武藤「春は河島君がいなくて盛り上がりに欠けるかなと思いましたがこの石崎君がいればその心配は必要なさそうですね」

中西監督「課題のコントロールが付いた今、付け入る隙はなくなったな」
斎藤「ですね。スタミナも良いし球数を投げさせてもこっちが先に疲れそうですし」
中西監督「しかし最低でも後2打席ある。バッティングセンスの良いお前なら打てなくもないだろう」
斎藤「はい。相良さん達もいますしね。ピッチングに集中します!」

広瀬「最後の球にかすったな」
石崎「ああ。油断のならねえ奴だ。風祭の気持ちも少しは分かる気がするな」
広瀬「?」

1回裏 転0−0赤 斎藤がどう抑えるか
吉田(うーむ。相手打者がよう分からん?)
斎藤(お前、ミーティングの時に聞いてなかったのか?)
吉田(聞いた様な気がするけど思い出せん)
斎藤(はあ、足とミートに定評のあるバッターだよ。盗塁技術はそれほどでもないからランナーとしては怖くないがバッティングはちょっとやっかいだな)
吉田(ふーん)

ズバ―――ン!
三崎「あれ?」

霞「斎藤君も負けずと三球三振!」
武藤「斎藤君のストレートはノビがハンパじゃないですからね。なかなか打てませんよ!」
霞「そうですね。武藤さんが初めて斎藤君を観た時はストレートだけでは抑えられませんと言ってましたが懐かしい言葉になりましたね」
武藤「ですね。と言っても斎藤君も良い変化球を持っていますからその変化球でストレートの威力が倍増されてるんですよ!」
霞「ですね。そして続く打者は秋の大会でも活躍した八代君です!」
武藤「守備に定評がありますがバッティングの上手さも木下君に続きます!」

吉田「やっかいと言ったわりにはストレート3球で終わらせたな!」
斎藤「まあ、初回だからな。次の八代は三崎さんの上手さと三崎さん以上のパワーがあるから要注意だ!」
吉田「しかし最近長打力の高い2番が多いな」
斎藤「他校ではな。うちではセオリー通り出し」
吉田「意外性の2番か嵯峨さんを2番にして見ると面白いかもな」
斎藤「曲者振りでは玖珂さんが良いと思うぞ」
吉田「なるほど、あの人達も良いコンビだよな!」
斎藤「ああ」

八代「かすりもせず三振ですか、ミートの良い三崎さんが珍しいですね?」
三崎「ああ。だけど変なんだよな。とても打てない球とは思えなかったんだけど?」
八代「ノビがかなりあるんでしょうね」
三崎「そうなんだけどな(何か変なんだよな。ノビのある投手と今までも対戦したんだがこいつの球は? ダメだ分かんねえ)」

ズバ―――ン!
霞「八代君も137キロのストレートで三振と今日も調子が良いです!」
武藤「やはり初見であのストレートは打ちづらそうですね」

木下主将「どうだった?」
八代「ノビがハンパじゃないですね」
木下主将「やはりそうか、となるとかなりやっかいだな」
八代「ええ。ストレートは捨てて変化球を狙うか?」
木下主将「球数を消費させて打ち込むか、どっちもうちの連中はしてくれんだろうな」
八代「何せ監督があれですからね?」
木下主将「まあな」

吉田(木下さんはさすがに知ってるな。外野を定位置より前にしとけば問題ないだろう!)
斎藤(アホ! いつもその陣形で5割打ってる打者だぞ。少しは配球も気にしろ!)
吉田(大丈夫だ。いまだかつて1打席でお前を打てた打者はいない!)
斎藤(いるけどな)
吉田(そうだっけ?)
斎藤(ああ)
吉田(………………大丈夫だ。俺を信じろ!)
斎藤(信じられねえよ!?)

ズバ―――ン!
木下主将「なっ!?」

霞「斎藤君も1回を三者三振と負けません!」
武藤「斎藤君も130キロ後半と調子が良いですね。今日は投手戦になりそうです!」

吉田「さすがは斎藤、ピッチングはパーフェクト!」
斎藤「今のところはな」
吉田「いや、リードいらずで俺は助かるぜ。何と言ってもストレートだけで抑えられるんだから!」
斎藤「今のところはだ! つうか頼むからリード覚えてくれ俺、今までリードされた事はないんだよ?」
真田「まあ、ストレートだけで抑えられるからね。キャッチャーも配球とかあんま考えなかったのかもね」
斎藤「いや、今思い出したんだけどリトルの頃はそう言うキャッチャーとコンビ組んでたな」
真田「ほほう。その子は一体?」
斎藤「えっと忘れた」
真田「何それ?やれやれ斎藤も意外と薄情だね!」
斎藤「仕方ねえだろう。昔から忙しい日々と言うか濃いメンツに囲まれていたんだから!?」
真田「ほほう。斎藤は昔から『類は友を呼ぶ』って奴だったんだね!」
斎藤「違う!? 俺は普通だ!?」
真田「あまいね。斎藤、『普通』だと言ってる時点で君はもう普通じゃないんだよ!」
斎藤「!?」
真田「ふっ、あっ、ちなみに僕は普通ね!」
斎藤「てめえは!」

2回表 転0−1赤 現在1点追加中
中西監督「斎藤達がアホな会話してる中、相良の一発で見事に先制した!」
斎藤&真田「いつの間に!?」
吉田「いやあ、超格好良かったですよ。相良さん!」
相良主将「その超ってのは良く分からんがありがとう」
中西監督「コントロールがあまいとは言え球威のある速い球を良くスタンドに運んだ。さすがはドラフト候補だ!」
相良主将「河島相手のつもりで打席に立ちましたから!」
斎藤&真田「何で見逃したんだ!?」

広瀬「気にするな」
石崎「あの人は変化球も使わなきゃ抑えられないな(しかし俺の球をスタンドまで運ぶとはさすがは相良さん!)」

霞「現在、点差は1対0、外角の球を見事にライトスタンドに運びました!」
武藤「相良君の力の前には風も関係なしですか、凄いバッターですね!」

スト―――ン!
玖珂「ちっ!」

霞「玖珂君はワンバウンドのフォークボールを空振り三振!」
武藤「振り逃げでも狙ったんですかね?」

広瀬「危ねえ。何とか後逸しなくてすんだ」
石崎「ふう、次は嵯峨さんか、体格からパワーヒッターかな?」

ズバ―――ン!
嵯峨「ダメだ。当たらん!?」

霞「嵯峨君も三振とこれで5奪三振!」
武藤「今のところ全ての打者を三振ですね。まあ速いストレートと落差のあるフォークと三振が奪りやすい球がウイニングショットですから当然と言えば当然なのかな?」

吉田「甲子園男の実力を見せてやるぜ!」
石崎「7番か!」

スト―――ン!
霞「落差の大きいフォークで三振と変化球も鋭さを見せます!」
武藤「これで6連続奪三振ですか、確か福井さんが記録した9連続奪三振が記録ですね。あれは夏でしたから春は誰の記録でしたかね?」
霞「とにかく夏春合わせて9連続が最高と!」
武藤「ええ。ちなみに福井さんはプロでも数々の奪三振記録を持ってます。と思い出しました。春は斉天の浅野が9連続奪三振でした!」
霞「結局どちらも9連続が最高と」
武藤「はい」
霞「ちなみに石崎君は相良君にホームラン打たれていますから本当は3連続奪三振です!」
武藤「そうでした(赤面)」

吉田「左には強いんだけどな。石崎は打てないや!?」
斎藤「ドンマイ!」

2回裏 転0−1赤 相良の一発で赤竜高校がリード中
斎藤(この広瀬は長打力が高いからな。当たったら怖いな)
広瀬「石崎を楽にさせてやるか!」

ズバ―――ン!
霞「斎藤君も4奪三振、しかし凄い大振りですね?」
武藤「しかし豪快なスイングでピッチャーとしては怖いですよ!」

広瀬「………………」
石崎「で何で落ち込んでるんだ?」
広瀬「大口を叩いたのに情けないなと思って」
石崎(いつもの事じゃねえか)

吉田「しかしおっかねえスイングだったな!?」
斎藤「ああ。しかし次の石崎もやっかいだぞ」
吉田(大丈夫だ!)
斎藤(何が大丈夫なのか分からんがテンポ良く行って抑えるぞ!)
吉田(おう!)

ズバ―――ン!
霞「こちらは5連続奪三振と付け入る隙を見せません!」
武藤「凄いですね。しかしこう三振ばかりだと後ろを守っている野手のリズムが崩れそうですね」

石崎「なるほど、これがあいつのストレートかタイミングが合うまでてこずりそうだな」

ガキッ!
嵯峨(ポロッ!)

霞「ああっ!? 嵯峨君がトンネル!? 武藤さんが余計な事を言ったせいでしょうか2アウトでランナーが出ます!」
武藤「すみませんって何で謝ってんだろう? 元々、嵯峨君はエラーが多いですしこう言う事もありますよ」

嵯峨「すまん」
吉田「ドンマイっすよ!」
斎藤「気にしないで下さい。後続は抑えますから!」
嵯峨「良い奴だな。どっかのファーストとは偉い違いだ!」
斎藤「はあ」

ズバ―――ン!
本永「あれ?」

霞「しかし134キロのストレートで三振としかし今日はストレートが多いですね?」
武藤「ですね。吉田君のリードでしょうが何か考えでもあるんでしょうか?」
霞「それを説明するのが解説者だと思うんですが?」
武藤「すみません。普通ならストレートに慣れさせてから変化球でタイミングを崩すとかでしょうか?」
霞「普通ですね」
武藤「すみません」

本永「どうやって打ったんだよ?」
木崎「ん? ああ。失投だよ。いわゆる棒球って奴、いやあラッキーだったよ!」
八代「なるほど6人に1回くらいは失投があるかも知れませんね?」
木下主将「ああ。けどうちの奴らは」
八代「ミートがうまいのは俺とキャプテン、三崎さんと木崎さんくらいですからね」
木下主将「俺はこの球場じゃホームランは無理だな。長打力の高い木崎が適任だろう!」
八代「さっきも打ちましたし確かに今日は木崎さんがポイントになるかも知れませんね!」
木下主将「と言っても失投をサードゴロだからな。当てには出来んな!」
八代「………………」

斎藤「一応聞いておくけど吉田君、僕は変化球も投げられるんだよ?」
吉田「嫌だな。それくらい知ってるよ。斎藤君!」
斎藤「うわっ!? 鳥肌立ってきた!?」
吉田「お前がやり始めたんだろうが!」
斎藤「そうなんだけど、それで?」
吉田「ああ。面白い様にストレートだけで三振奪れるんでつい!」
斎藤「次の回から変化球も混ぜるからな」
吉田「はーい」

4回表 転0−1赤 斎藤からと言う好打順
霞「試合は1対0のまま3番の斎藤君からの打席です!」
武藤「さっきの回は先頭の打者を歩かせた者の後続は凡退に抑えると言うナイスなピッチングでした!」
霞「私のセリフ取らないで下さいよ!」
武藤「すみません。何となく言って見たかったので」

石崎「うぉ―――!」

ズバ―――ン!
斎藤「初回から調子が良いと思ってたけどやっぱり肩が出来ていなかったのか!?」
広瀬(エンジンかかって来たな!)

石崎「うぉ―――!」

ズバ―――ン!
相良「むっ初回と違って球威とノビが段違いに上がって来てる!?」

石崎「ぬぉ―――!」

ズバ―――ン!
玖珂「信じられん。俺がかすりもしないとは!?」

霞「凄まじいまでのストレートで赤竜のクリーンナップを三者三振に抑えます!」
武藤「前の回からですから4連続奪三振ですね。しかしこれが石崎君の絶好調モードですね!」
霞「覚醒とも言われてますね。この状態になると手が付けられなくなると聞いてます!」
武藤「ちなみに地方大会ではこの状態でノーヒットノーランを2度達成しています!」
霞「だから私のセリフを取らないで下さい!」
武藤「すみません」

斎藤「とんでもなかった!?」
相良主将「速さもだがミットに決まる音も凄まじかったな!」
斎藤「ええ。とんでもない球威してるんだなと音から感じました!?」
玖珂「広瀬と言う相棒がいなければ並の投手で終わってたかも知れんな」
相良主将「ああ。出会うべき時に出会ったって事だろう」
玖珂「そうだな」

石崎「次はどいつだ!」
広瀬「チェンジです!」

4回裏 転0−1赤 斎藤がノーヒットノーランをしている
霞「現在、斎藤君がノーヒットノーラン中です!」
武藤「と言ってもまだ4回ですからね」

八代(失投を待つか、それともさっきの回から変化球を投げ始めたからそっちを狙うか?)

斎藤(さっきの打席では何もせず三振だったからな)
吉田(手が出なかっただけだろう)
斎藤(だとしてもだ。2打席目じゃ球に慣れてるかも知れん!)
吉田(慎重に変化球から入るか?)
斎藤(……そうだな。そうするか)

八代「初球もらった!」

カキ―――ン!
斎藤&吉田「初球変化球狙いだと!?」

霞「右中間真っ二つ! 打った八代君は二塁ストップ!」
武藤「ライトが相良君じゃなければ三塁打でしたね。しかし初球は慎重にボールから入るべきでしたね」

斎藤「ボールから入るべきだったな」
吉田「済んだ事を気にしても仕方ない。次の打者に集中しよう!」
斎藤「ああ(木下さんか長打がないからヒットを打たれたとしてもタイムリーにはならないだろう。どう攻めるか)」

木下主将(後ろは長打力が高いだけで頼りになるとも言えないからな。送りバントはやめて普通に打つか、狙うなら変化球だな!)

ズバ―――ン!
木下主将「3球全てストレートだと!?」

霞「最後は138キロのストレートで三球三振に抑えます!」
武藤「ヒット打たれて慎重になると思いきやまた大胆な攻めの姿勢ですね!?」

吉田(さすがは斎藤、得点圏にランナーがいるってのに凄え度胸だ!?)
斎藤(やはり木下さんは慎重に変化球狙いだったな。ランナーがいる状態で長打力の高い打者ってのは嫌なんだが歩かせるのも嫌だしテンポ良く行くか慎重に行くか)

スト―――ン!
広瀬「なっ!?」

霞「最後はフォークで決めます!」
武藤「勝負球が変化球ってのは予想外でしたね。しかし夏に比べてフォークのレベルも上がってますね!」

石崎「叩き潰す!」
広瀬(絶好調モードの石崎はバッティングも凄くなるからな。期待大だ!)

斎藤(力んでるな。変化球でタイミングを崩すのが良いんだろうが、ここは!)

ガキッ!
霞「石崎君はストレートを打ち上げライトフライに倒れます!」
武藤「しかし鋭いスイングでしたね。次の打席も石崎君は要注意って感じですよ!」

石崎「ちっ! 思ってたよりノビてるな。次はもっと速く振らないとな!」

斎藤「ふう、何とか無失点で抑えたな」
吉田「しかしボール球をあそこまでもって行くとは凄えパワーだな!?」
斎藤「ああ。石崎は打者としても要注意だ!」

7回表 転0−1赤 現在両投手好投を続けている
霞「では試合を振り返りましょう。まず赤竜高校は相良君のホームランで1点先制して以来、得点はなく1対0のままです。転生高校は八代君や木下君がヒットを打ちましたがホームには返さないと言うピンチ面での強さを斎藤君が見せます!」
武藤「ですね。こうなると相良君のホームランが試合を決めるかも知れませんね」
霞「そしてこの回はその相良君からの打席となります!」

相良主将「これで3打席目か、さっきは三振食らったからなお返ししたいところだが」
石崎「くらえ!」

ガキッ!
霞「さすがの相良君もライトフライに倒れます!」
武藤「150キロですからね。当てるだけでも凄いですよ」

相良主将「ちっ、想像以上に重い。芯でとらえないととてもじゃないがスタンドまで届かないな」

石崎「これで終わりだ!」

スト―――ン!
玖珂「ダメだ。ストレートとフォークどっちかにヤマを張らなきゃ手が出ん!?」

霞「最後はフォークで決めた!」
武藤「フォークのキレも凄まじいですね!」

スト―――ン!
嵯峨「何て絶望的な球を投げるんだ!?」

霞「嵯峨君にもフォークで決めて3アウトチェンジ!」
武藤「134キロで落ちるフォークですからね落差だけでなく速さもやっかいですよ!」

石崎「地獄に落ちろ!」
広瀬「投げるのが嬉しいのは分かるけどチェンジだっての!」

吉田「こりゃ相良さん以外は打てそうもないな」
玖珂「その様だな。だが次に相良の打順が来ればあいつは打つぞ!」
吉田「何で断言出来るんですか?」
玖珂「それが相良京一だからだ!」
吉田「?」

7回裏 転0−1赤 4番からの好打順も三者凡退に終わった
斎藤「木下さんからか」
吉田(さっきはセーフティバントって完全に裏をかかれたからな)
斎藤(ああ。後続を抑えたから良かったがこの人が出たら足でリズムを狂わされそうだ)
吉田(俺じゃ刺せるかどうか微妙だからな。まあ、出たら考えよう)
斎藤(ああ。出さなきゃ良いだけだ。内野は定位置より前にしといた方が良いな。特に玖珂さんと嵯峨さんには注意しないと)
吉田(そっちは安達さんと加納さんにフォローしてもらおう)
斎藤(そうだな)

木下主将(内野も前に来たか、安達は玖珂のカバーで加納は嵯峨のカバーか良く考えてるな。だが穴はある!)

ズバ―――ン!
木下主将「むっ!?」

霞「最後は外角高めのストレートを振らせました!」
武藤「木下君にボール球を振らせるとは上手いですね」

木下主将「配球も考えてるな。見事だ!」
吉田「すみません。リードは斎藤が出してるので」
木下主将「そうなのか? そうか、どうりで良い投手だと思った!」
吉田「どう言う意味ですか?」
木下主将「自分で考えられる投手ってのは優秀なものと決まってるんだよ。うちの石崎は除くけどな」
吉田「自分で考えるからですか?」
木下主将「そうだ。失敗した時とか改善点を自分で考えて行く訳だから良い投手に成れるんだよ!」
吉田「つまり俺がリードしない事で斎藤が成長してるんですね!」
木下主将「ああってそれは関係ないと思うぞ!」

斎藤(木下さんは思った通りインコースにいれれば問題なかった。次の広瀬も今日はタイミングが合っていないから問題ない!)

ガキッ!
相良(パシッ!)

霞「アウトですが」
武藤「とんでもない怪力ですね。バットの先に当たった打球で逆風なのにギリギリスタンドの前の相良君のところに落ちるなんて!?」

吉田「何だあの打球は!?」

広瀬「またしてもすまん!」
石崎「気にするな。元々打てると思ってなかったから!」
広瀬「幼馴染に向かってあんまりかと!?」
石崎「そうじゃなくて今日の斎藤は凄えから俺以外に打てないだろうなと思ってただけだよ!」
広瀬「どっちにしろ期待されてないのが悲しいんだよ!?」
石崎「なるほど!」

そう言って打席に立つ!
広瀬「フォローはもう終わりかい?」

カキ―――ン!
石崎「フハッハッハ! あまいぞ。ストレート3球では俺は抑えられんぞ!」

霞「入りました。3球目のアウトコースのストレートを巻き込んでレフトスタンドに叩き込みました!」
武藤「技術など無用、力があればそれで良いと言うバッティングは現役時代の堀内さんを思い出させますね!」

斎藤「アウトコースいっぱいの球を巻き込んでスタンドに叩き込みやがった!?」
吉田「コースを読まれたのか!?」

広瀬「さすがは石崎、俺じゃ敵わんな!?」
石崎「まだ落ち込んでいたのか?(しかし我ながらあの球を良くスタンドまで運べたもんだやはり今日の俺は誰にも止められないな!)」

吉田「…………斎藤?」
斎藤「切り替えるぞ。次もバッティングの良い木崎さんだ!」
吉田「おう!(さすがは斎藤だ。打たれ強いぜ!)」

ズバ―――ン!
木崎「石崎の一発で流れがこっちに来ると思ってたのにこいつは!?」

霞「最後は低めギリギリを見逃しの三振!」
武藤「斎藤君はコントロールも上がりましたね」

中西監督「この1点は仕方ないな。その調子を維持しろよ!」
斎藤「分かってます。もう1点もやりません!」

8回表 転1−1赤 石崎の活躍で試合は振り出しに戻る
石崎「何とか同点にはしたしもう1点もやらん!」
吉田「速いが俺も3打席目だ!」

ガキッ!
石崎「おっ、当てやがった!」
本永(パシッ! シュッ!)
兼村「バカ!?」

バンッ!
石崎&吉田「……………………」

霞「凄い肩ですね!」
武藤「確かに強肩ですけどファーストの頭を越えてフェンスにぶち当たりましたよ!?」
霞「と言う訳で本永君の暴投で吉田君がランナーに出ます!」
武藤「兼村君のバックアップが良かったので一塁止まりですけどね」

石崎「夏に比べて捕球はうまくなったと思ったらこれかい!?」
広瀬「まあまあ、肩が良いとこう言う事もあるよ!」
石崎「まあな」

石崎も広瀬も強肩で暴投する事が多々ある為、人事でなかった。
吉田「何とか塁には出れたな。次の加納さんも長打力はあるけど石崎から打つのは難しいだろうな」

中西監督「加納!」
加納「送りバントですか?(バントは苦手なんだが)」
中西監督「いや、強振だ! ここで欲しいのは長打だけだからな!」
加納「当たる自信がないんですけど?」
中西監督「三振しても構わん。とにかく長打だ!」
加納「分かりました!(期待されてるな!)」

そう言って加納は打席に向かう。
相良主将「ここは確実に連打した方が良いと思いますが?」
斎藤「俺もそう思います。転生は守備面に課題がありますから」
中西監督「確かにな。だけど転生の守備は夏に比べてエラーが減っている。さっきの暴投もたまたまだろう」
相良主将「しかし今の石崎からヒットを打つのは難しいですよ?」
中西監督「まあな。だが加納はバントが下手だしミートしてもダブられる可能性が高いからな」

ブ―――ン!
加納「くっ!? 期待に応えられなかったか!?」

霞「豪快なスイングで空振り三振!」
武藤「明らかに一発狙いでしたが150キロじゃかすりもしませんでしたね」

斎藤「もしかして三振させる為にああ言ったのでは?」
中西監督「実はそうなんだ。しかしもう一つ考えてる事がある!」

伊沢(140キロ以上のストレートでも当てるくらいなら)

コツンッ!
石崎&広瀬「バント!?」
伊沢「ふう、何とか成功したか」

霞「と次の伊沢君は送りバント成功で吉田君は二塁へ!」
武藤「なるほど、バントの下手な加納君はアウトにさせ続く伊沢君に送りバントですか」

斎藤「なるほど、併殺に倒れば無意味ですし、さっきの大振りの後で普通に送りバントとはあいつらも思わなかったんでしょうね」
中西監督「と言う訳だ!」
相良主将「しかし、次の打者は真田と、石崎との相性は最悪な感じなんですけど」
中西監督「バットを持ってればみんな強打者だ!」

コツンッ!
石崎&広瀬「バントって2アウトだぞ!?」

パシッ!
真田「もうムダだよ!」
石崎「げっ!? もうファーストにいやがる!?」

霞「見事なセーフティバントでランナーは1、2塁です!」
武藤「このセーフティは真田君の独断ですね。その証拠に二塁ランナーの吉田君は三塁には行けませんでした!」

中西監督「あいつバントもうまくなったな!?」
斎藤「はい。前は140キロのストレートにバントなんて出来ませんでしたよ!?」
中西監督「何はともあれ期待してなかったあいつが出てくれたな」
斎藤「やっぱり期待してなかったんですね。次は安達さんですか思い切ってまたバントでもさせますか?」
中西監督「さすがに連続は無理だろう。それに安達はミートがうまい。当たりによっては1点追加出来る!」
相良主将「確かに当てるのだけなら玖珂の次にうまいですからね」

石崎「信じられん。この状態の俺からランナーが出るとは!?」
広瀬(落ち着け相手はエラーとバントで出塁しただけだ。まっとうな方法で打たれた訳じゃない。斎藤は投手ながら鋭いスイングだから要注意だ!)
石崎(ああ。ここで止める!)

ズバ―――ン!
霞「チャンスの場面でしたが149キロのストレートを空振りの三振!」
武藤「石崎君はピンチ面での強さにも定評がありましたがその通りでしたね!」

石崎「見たか! 小賢しい技など力の前では無意味だ!!」
広瀬「まあな(―――しかしその凄え力で自滅したところも俺は何度か見てるんだけどな)」

中西監督「結局無得点か」
安達「すみません。さすがにあの球速じゃ当てる事も出来ませんでした!?」
中西監督「仕方ない。今のを守備に引きずるなよ!」
安達「はい!」
中西監督(返事は良いんだが、大丈夫かな?)

8回裏 転1−1赤 小技も石崎の前に通用せず
斎藤「1点勝負だな。これ以上は失点できん!」

ズバ―――ン!
本永「8回で最速か、こいつもスタミナはかなりあるな!?」

霞「138キロのストレートで本永君を三振!」
武藤「転生は積極的に振って来るので球数が少ないですが8回で最速とは斎藤君もスタミナがありますね!」

ズバ―――ン!
天谷「タイミングが合わねえよ!?」

霞「天谷君も三振と調子が良いです!」
武藤「確かに今日の斎藤君もノビがありキレがありと調子が良いですね!」

ズバ―――ン!
兼村「やはり最後はストレートだったか!?」

霞「続く兼村君も変化球、変化球、最後は三振と抑えます!」
武藤「中にはボール球もあったしもっと観て行っても良いと思うんでけどね」

吉田「下位打線とは言え凄まじいピッチングだな?」
斎藤「1点勝負だからな。後ろには山中さんもいるしここからは全力投球だ!」
吉田「ちなみに春の1試合奪三振記録は浅野さんと竜崎さんの19個だ! ちなみに夏は竜崎さんの20個だ!」

ちなみに延長での奪三振記録は別にあります。吉田が話したのはあくまで9回で終了した上での記録です。
斎藤「いきなり何だよ!?」
吉田「ちなみに今、お前は18個だから!」
斎藤「…………って事は後2個で!?」
吉田「そう。春の新記録、3個奪えば甲子園記録更新な!」
斎藤「気付かなかった。だけどこう言う時はプレッシャーかけなくするのが普通じゃねえ?」
吉田「実は俺も言ってから気付いた!?」
斎藤「なるほど―――まあ、気付いたしここまで来たらやっぱ狙うよな!」
吉田「さすがは斎藤! そう言うと思ったぜ!」
斎藤「その言葉はどうも信用できんが…………つうか石崎は? 奪三振?」
吉田「どうだっけな?」
斎藤「おい!」

9回表 転1−1赤 8回も三者三振と抑えた斎藤
霞「試合はいよいよ9回、両投手1失点してますが絶好調で奪三振を量産して行きます!」
武藤「そう言えば初回から三振ばかり観てる気がしますけど、今何個奪ってるんでしょうか?」
霞「そう言えばそうですね。ちょっと待って下さい!」

石崎「斎藤か、ここは抑えさせてもらうぜ!」
斎藤「今は奪三振より石崎から打たなきゃランナーとして出たら後ろの相良さんがきっと打ってくれる!」

スト―――ン!

1−0 初球フォークを空振りし1ストライク!
斎藤「いきなりフォークかよ!?」
石崎「まずはボール球のフォークを振らせたぞ!」

ズバ―――ン!

1−1 148キロのストレートがアウトコースからギリギリ外れて1ボール!
斎藤「ラッキー、手が出なかった!?」
石崎「今日の主審は判定が辛いな。あのコース何だからストライクって言って欲しいよ!」
斎藤(石崎相手じゃ追い込まれると不利だ! 次で打つ!)

カキ―――ン!
石崎「なっ!?」

霞「3球目フォークをセンター前に打ちます!」
武藤「さすがですね。バッター転向すればプロでも3割打てる打者に成長しそうですね!」

相良主将「さすがは斎藤、この場面で良く打った!」
石崎「ここで相良さんか」
広瀬(石崎の目付きが変わった。スイッチが入ったか)
石崎「うぉ―――!!!」

ガキッ!!!
霞「150キロのストレートでしたが真後ろへのファール!」
武藤「真後ろって事は150キロのストレートにタイミングが合ってますね!?」

広瀬「凄えこの状態の石崎にタイミングが合ってる!? だけどいまだかつてこの状態の石崎から打てた奴はいない。いくら相良さんでも?」

石崎「ぬぉ―――!!!」
相良主将「………………」

カキ―――ン!!!
石崎「………………!?」

霞「惜しい! 風に流されてかファールになります!」
武藤「フォークにも完全に合ってますね!?」

斎藤「惜しかったな!? 三振前のバカ当たりにならなきゃ良いんだけど」
広瀬「まずい。ストレートもフォークも通用しないかも?」

石崎「うらっ!!!」
相良主将「速い。球種はストレートか!」

カキ―――ン!!!
霞&武藤「……………………」

ワァ―――!!!

一瞬沈黙し凄まじい歓声が聞こえて来る!
真田「さすがはキャプテン、ナイスな逆転2ラン!」
相良主将「好投してる斎藤が出たからな。俺も続かなきゃいかんだろう!」
斎藤「さすがはキャプテン、期待に応えるぞ!」

吉田「玖珂さんの言う通りこの場面で打ちましたね!」
玖珂「ああ。これが相良京一だ。あいつが1年から4番を打ってるのはこう言う場面で打つ事が出来るからだ!」
吉田(さすがは俺の目標の人、いつかこの人見たいな打者になるぞ!)

石崎「やれやれ」
広瀬「意外に落ち込んでねえんだな?」
石崎「あんなに見事に打たれたら落ち込むどころかむしろスッキリした!」
広瀬「確かにランナーはいなくなったけど」
石崎「フッフッフ!」
広瀬「大丈夫か?」
石崎「大丈夫だ。むしろ力がわき上がって来る!」

ガキッ!
玖珂「ちっ!?」

霞「玖珂君が何とか当てますがキャッチャーフライ!」
武藤「150キロのストレートにバットが当たるだけでも凄いですけどね!?」

スト―――ン!
嵯峨「今日、まったく良いところなし」

霞「嵯峨君はフォークを空振り三振し2アウト! ちなみにこれで18個目の奪三振です!」
武藤「って事は次でタイ記録ですか?」

ガキッ!
吉田「9回でこの球威は凄すぎだろう!?」

霞「吉田君もキャッチャーフライで3アウトチェンジ!」
武藤「18個ですか、記録にはならなかったですが凄い数字ですね」

石崎「2人出れば俺がサヨナラを打つんだが」
広瀬「大丈夫だ。俺を除外したらミートの良い打者ばかりだ」
石崎「お前なあ、仮にも4番打ってるんだから俺が決めるとか言えよ!」
広瀬「1人出たらまぐれ当たりで同点にします!」
石崎「まぐれって付くところが正直だな」

9回裏 転1−3赤 さっきの相良の一発で勢いに乗る赤竜高校
斎藤「後3人!」

ズバ―――ン!
三崎「ダメか!?」
吉田(来てるな。これなら後2人で終わらせそうだ!)

霞「138キロのストレートで三振と9回になっても球速が落ちません!」
武藤「しかし次は巧打者が続きますからね」

八代「まずは塁に出ないとな!」
斎藤「後2人!」

カキ―――ン!
霞「ここで八代君が136キロのストレートをセンター前に打ちます!」
武藤「さすがに4打席目だけあって斎藤君にタイミングが合ってきましたね!」

吉田(走ったら俺が刺すからバッターに集中しようぜ!)
斎藤(ああ!)
木下主将「俺も続かんとな!」

コツンッ!
斎藤「セーフティバントか!?」

パシッ! シュッ!
霞「フィールディングの上手い斎藤君でしたが間一髪木下君の足が速くてセーフ!」
武藤「何か嫌な流れになって来ましたね。次の広瀬君がホームラン打てばサヨナラですよ!」

木下主将(後はあの2人に任せるだけだな!)

吉田(嫌な感じだな。相良さんの一発で勢いは俺達にあると思ったのに?)
斎藤(落ち着け! まだ失点した訳じゃない。ここからはランナーよりバッターに集中するぞ!)
吉田(お、おう!)

ポロッ!
吉田「!?」
霞「斎藤君が初球を投げますがここで吉田君が後逸しました。ランナーはそれぞれ2、3塁に進みます!」
武藤「マウンド上の斎藤君より吉田君がピンチに動揺してますね?」

吉田「すまん!」
斎藤(気にするな。まだ失点した訳じゃない!)

ズバ―――ン!
霞「1アウトランナー2、3塁の場面ですが広瀬君を空振り三振と見事に抑えます!」
武藤「斎藤君はピンチの場面で良く抑えますね! しかし次の石崎君は敬遠でしょうね!」

広瀬「すまん!」
石崎「気にすんな! ここで俺が決める!」
広瀬「だけど?」
石崎「敬遠はねえよ!」
広瀬「?」

吉田「セオリーならここは敬遠なんだが監督からの指示はなしと」
斎藤「ここで逃げたら石崎に負けっ放しになっちまう! 勝負だ!」
吉田「みんな、お前の選択に従うさ。ここまで好投してるからな!」

霞「どうやら敬遠じゃなさそうですね!」
武藤「見たいですね。セオリーなら間違いなく歩かせるんですが?」

斎藤「絶対打たさん!!!」
石崎「うぉ―――!!!」

カキ―――ン!!!
霞「なっ!? 入った!? いきなりの初球をフルスイングし打球はバックスクリーンへ!?」
武藤「…………最後は瞬殺でしたか!?」

斎藤「………………」

霞「マウンド上の斎藤君、いまだに信じられないのか呆然としています!」
武藤「無理もありませんよ。初球から140キロと限界を超えたストレートをヒットならまだしもホームランですよ!? 私が打たれたならショックで二度と野球出来なくなるかも知れませんよ!? それほどまでに衝撃的な一打ですよ!?」
霞「斎藤君、大丈夫でしょうか?」
武藤「秋でも似た様な事がありましたけど、あの時はバッターとしてのショックでしたからね。ピッチャーとしてのショックとは違いますから心配ですね!」

広瀬「さすがは石崎、この場面でサヨナラホームランだぜ!」
石崎「まあな」
広瀬「何だよノリが悪いな?」
石崎「斎藤の事を考えるとな」
広瀬「ボウッとしてるな?」
石崎「今日最高の球をサヨナラホームランにされちまったからな。ピッチャーならショックを受けるのが当然さ!」
広瀬「確かにな」
石崎「あいつはここで終わる奴じゃない。必ずこのショックから立ち直って凄い投手になる!」
広瀬「俺としてはここで終わって欲しいのが本音だな。結局あいつからヒット打てなかったし、あれ以上になるとな」
石崎「本当に正直な奴だなしかし俺としてはライバルのあいつにはもっと凄い奴になってもらわんと困る!」
広瀬「さいですか」

斎藤「す、すみません。偉そうな事言って結果がこれじゃ……」
相良主将「気にするな。今日のお前のピッチングを誰が責められるんだ?」
真田「そう言う事、今日の石崎が凄すぎたんだよ!」
斎藤「それは言い訳にしかならない。あの場面、敬遠をせずに勝負しに行ったんだ絶対打たれちゃダメな場面で俺は……」

突然大きな声を出すがしだいに涙声になって来た斎藤を見て全員何も言えなくなってしまう。
全員「………………斎藤」
中西監督「打たれずに凄い投手になった奴はいないと言うぞ!」
斎藤「…………か、監督?」
中西監督「今日のお前の様な場面はピッチャーやってたらいつか誰もが辿る道だ!」
斎藤「だけど敬遠すれば勝てたかも知れなかったのに?」
中西監督「何故、俺が敬遠させなかったか分かるか?」
斎藤「それは…………分かりません。俺の事を信じてくれてたからと言いたいですが?」
中西監督「それも間違ってはいないな。だがな俺はあの場面では抑えても打たれてもお前の成長に繋がると思ったから投げさせたんだよ!」
斎藤「俺の成長?」
中西監督「並の投手ならあの場面でサヨナラ食らえばショックで壊れるかも知れない。だけどお前ならきっとそれをかてにして成長する。そう思ったんだよ!」
斎藤「…………正直、俺には自信がありません」
真田&吉田「………………斎藤」
斎藤「だけどこのまま終わりたくはありません!」
中西監督「ああ!」

真田「斎藤、本当に大丈夫かな?」
相良主将「同じ経験をしてる監督が隣にいれば大丈夫さ!」
吉田「監督も同じ経験?」
相良主将「ああ。だから大丈夫さ!」

夏と同じく春の甲子園でも苦い経験をした斎藤、だが20個の奪三振と言う新記録を作った斎藤を誰も責められはしないだろう。こうして赤竜高校は春の甲子園ではベスト8で去る事となった。