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−１９９５年 ３月−
春の決勝も再び無明実業ＶＳ斉天大附属となった。斎藤達は練習を休んでテレビ観戦となった。
中西監督「今日は前もって言ってた様にテレビ観戦だ！」
相良主将「しかし凄いスクリーンですね。こんな巨大な物何処から用意したんですか？」中西監督「話の分かる校長でな。テレビ観戦の話したら用意してくれた！」
真田「うちは校則緩くて良いよね。校長の権限があれば何も怖くないや！」吉田「物凄く野球好きな爺さんだからな。つうかあの校長っていくつなん？」中西監督「確か今年で８２歳だったかな」斎藤「あれで８２ですか、元気な人ですね！？」中西監督「まあな。俺も学生時代から色々とお世話になってるからな」
玖珂「それより早く観ましょう！」
嵯峨「そうだそうだ！」中西監督「ああ！」
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大岡監督「さてと、夏に続いてまたしても決勝で会ってしまった！」
宗介「俺達が１年の頃からですからこれで４連続ですね！？」
名雲主将「先代の平井さんも決勝で当たった訳ですから何連続なんですか？」大岡監督「覚えていない！」全員「……………………」大岡監督「とまあ、そんな感じで毎年決勝では斉天と優勝を争ってる訳だ！」
直人「しかし俺達も凄いよな。これで勝てば練習試合含めて無敗記録がまた続く！」
風祭「名雲さんや宗介さんと言う人がいるからな」
直人「いやいや、俺達だって頑張ってるだろう！」風祭「確かにな。しかし控えにだってスタメンにひけを取らない選手がいっぱいいると選手層の厚さのおかげだろうな！」直人「風祭は真面目だな。けどそれなら斉天も一緒か」風祭「ああ。実際選手層の厚い２校が夏、春と決勝に進出してる訳だからな」直人「なるほどね。やはり最後には数が勝つのか」風祭「いや、転生の様に選手層が薄くてもスタメンに秀でた選手が多いチームも準決勝まで来れたんだ」直人「つまりフタを開けて見なければ分からないと」風祭「…………」直人「どうしてそこで黙るのかな？」
大岡監督「話を聞いてないし」宗介「まあまあ」
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大島監督「いよいよ、決勝だ！」
全員「……………………」
大島監督「何で無言なんだよ？」
全員「だって？ あれ？」
嘉神主将＆高須＆佐伯「………………………………」大島監督「どうしたんだあいつら？」佐々木「さあ、今日はずっとあの調子ですから」大島監督「大丈夫なのか？」佐々木「問題ないと思います。と言うより今日のあいつらは爆発しそうですね！」
大島監督「何とうちのエースとクリーンナップが爆発しそうとは今日の試合は勝ったも当然だな！ 佐々木も爆発しろよ！」佐々木「頑張ります！」大島監督「よっし！ 夏の借りは返すぞ！」
全員「おう！」
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霞「いよいよ春の甲子園も決勝戦に突入です！」
武藤「思えば長かったですね。１回戦や２回戦では延長戦が多かったですし」
真神「へえ。私は準決勝から呼ばれたせいか長い感じはしませんけどね」武藤「それはまあそうでしょうね」霞「夏では無明実業が勝利しましたが春ではどうなるのか？」
武藤「分かりませんね。両校共に同じくらいの力量と観えますがわずかに無明が上の様な気もしかし斉天も勢いのある選手が出て来たし、やはり予想は難しいですね」真神「それだけ両校の力が均衡してるって事ですね。こう言う場合は選手層の厚さが物を言うんですが」霞「つまり無明実業がやや有利と言ったところでしょうか？」武藤「かも知れませんね」真神「まっフタを開けて見れば分かります。見せてもらおうじゃないですか、どっちが日本の頂点に立つ力を持っているのか！」霞「はい。それでは春の決勝戦の始まりです！」
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宗介「さてと夏からどう変わったのか」ズバ―――ン！
霞「佐藤君を１４５キロのストレートで空振り三振！」武藤「球が走ってますね」真神「確かにストレートはノビてるし調子は良さそうですね」佐藤「変化球は分からんがストレートは無茶苦茶ノビてるぞ！？」鈴木「らしいな」ズバ―――ン！
霞「鈴木君もストレートで三球三振に抑えます！」武藤「ストレートばっかりですね？」真神「次からクリーンナップだから温存してんだろう」武藤「まっそんなところですかね」鈴木「想像以上にノビてるぞ！？」嘉神主将「らしいな。まっあいつとは長い付き合いだ。大体言いたい事は分かるよ」鈴木「そうか」宗介（最後はスライダーで決める！）ククッ！
嘉神主将「変化球もキレてんな。こりゃとらえるのは一苦労だぞ！」霞「最後はスライダーで初回は三者三振に抑えます！」武藤「相変わらず立ち上がりが良いですね。斉天はとらえるのに苦労しますよ！」真神「佐伯君の調子次第じゃ投手戦になるかも知れませんね」大島監督「三者三振か」嘉神主将「面目ない」大島監督「嬉しそうに言われてもな」嘉神主将「いやはや、あんな凄い変化球を見たら打ちたくなりますから」大島監督「そう言うセリフが出るところはさすがだな」嘉神主将「いやはや、これからの野球界を背負って立つ嘉神様ですから！」高須（この大口から今日はかなり調子が良いな）大岡監督「さすがは天野、斉天の打線をまったくと言って寄せ付けんな！」宗介「と言ってもまだ初回ですから」大岡監督「結構結構、その調子で頑張れよ！」宗介「はい！」風祭（今日の天野さんから大量点は取れないと思うが、斉天の打線は火が出るととんでもないからな）
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佐伯「１番から４番は夏と一緒か」風祭「佐伯か、夏には途中降板したが春にはどれだけ成長したかな」ククッ！
霞「三振！ 風祭君、今大会では初の三振です！」武藤「初回から変化球がとんでもなくキレてますね！？」真神「ええ。今日の佐伯君から大量得点は望めないかも知れませんね。スタミナが持てばの話ですが」風祭「気をつけろ。変化球がとんでもなくキレてる！」直人「分かってる！」佐伯「打たせん！」ズバ―――ン！
直人「ストレートも走ってるな。これはてこずるぞ！？」霞「１４３キロのストレートで見逃しの三振！ 自己最速を出しました！？」武藤「球速も出てますね。今日の佐伯君は文句なく絶好調かと思われます！」真神「今のところはですけどね。正直、準決勝を観た感じこのまま行くとは思えないんですよね」ガキッ！
霞「三者三振とは行きませんでしたが天野君もピッチャーゴロに抑え三者凡退とします！」武藤「夏は初回から失点したところから考えるとずい分成長した感じがしますね！」真神「夏のキャッチャーは引退した３年生ですよね？」霞「はい。１位で指名された八坂君です！」真神「あのゴールデンルーキーですか、なら武藤の言う通り成長したのは間違いなさそうですね！」武藤「ええ！」大岡監督「三者凡退とは珍しいな？」風祭「夏よりキレも変化も上ですね。それにコントロールもやっかいです！」直人「そうそうコース付かれるから打ちにくいんだよな！？」宗介「まあ、まだ初回ですからね。２順すれば打てると思いますよ！」大岡監督「なるほどな」大島監督「ナイスピッチング！」佐伯「はい！」十川「いやあ、コンビ組んで一番良い球だったな！」嘉神主将「心配するだけムダだったか」高須「らしいな」嘉神主将「まったく大した後輩だよ！」佐伯（今日は思ったところにボールが行くな。この調子を維持するぞ！）
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高須（初球を狙う！）カキ―――ン！
霞「いったー！ 投手戦になるかと思った矢先にいきなりのホームラン！」武藤「いきなりの初球１４７キロのストレートをドンピシャですか！？」真神「コースは難しいと言うほどでもなかったですが、あのアウトコースにスピードの乗ったストレートをスタンドまで運べるバッティングはプロレベルに到達していると思われますね！」武藤「確かにプロなら打てる打者はいるでしょうか、本当に現在の高校レベルは高いですね！？」宗介「コースは悪くなかったよな？」名雲主将「悪くはなかった。だが良くもなかったな」
宗介「だな。しかしそれならせいぜいヒットにしてくれたら良いのに」名雲主将「クサるな。まっ考えて見ればあいつは夏に負けてる訳だからな。今日のテンションは最高潮に達していてもおかしくない」宗介「げっ！？ タダでさえとんでもないのに『あの境地』に入られちゃ抑える自信はないぞ！？」名雲主将「入ってると言えば入ってる感じもしたが、まだ完全な状態と言う感じじゃないな」宗介「どうすれば良い？」名雲主将「正直、見当が付かんな。入った場合のあいつに打てない投手はいないと言うのを間近で見て来たからな」宗介「ああ。あれ見てお前とあいつは絶対敵に回したくはないなと思ったからな」名雲主将「しかし入った場合は凄まじいと言う反面、力を完全にコントロールは出来ないと思う」宗介「どう言う事だ？」名雲主将「入った時は無我になるが、ストライクやボールの判別が付かん来た球にのみ集中する」宗介「待て待て、あいつやお前が入った時はちゃんと判別出来ていたぞ！」名雲主将「すまん。言い方が悪かった様だ。ストライクとボール半個分くらいなら」宗介「なるほど、凄まじい力だがファールを打たせる事は出来ると言う事か？」名雲主将「だがコントロールは絶妙だし、ファールで追い込んでもその後が問題だ？」宗介「結局、歩かすくらいしかないって事か」名雲主将「今のところはな。取られた点は俺達で取り返す。あいつの抑える方法はあいつと戦いながら作る！」宗介「ふむ。とりあえずその時になってからか」名雲主将「ああ」佐藤＆鈴木＆嘉神主将「お帰りなさい」高須「それでこいつらはどうしたんですか？」大島監督「『格の違いを見せやがって』だそうだ」高須「そうですか」嘉神主将「つうかいきなりホームランってひょっとして『あれ』になってるのか？」高須「いや、調子が良いだけだ。それにあれは１打席くらいしか来ないんじゃないか？」嘉神主将「けどあの兆候が出る前も良いプレー魅せるだろう！」高須「確かにそう言う意味では来てるのかも知れないな」佐伯「その兆候って何ですか？」嘉神主将「何だっけな？ 元々人は１００％の力を発揮する事は出来ないからどうやらこうやらって話だったな」全員「意味が分からん？」大島監督「俺が説明してやるよ。今、嘉神が言った様に元々人間は１００％の力を発揮出来ないように脳が制御してる！」佐々木「聞いた事があります。１００％の力を発揮できないのは発揮すると人の身体が壊れるから」大島監督「そうだ。だが人は窮地に陥ると脳のストッパーが外れて１００％の力を発揮する事がある」佐々木「『火事場の馬鹿力』なんかが例になってますね」大島監督「うむ。ナイス助手役だ！」佐々木「どうも」大島監督「とまあ、人間は極限の状態の時に信じられない力を発揮する。そこの高須は野球でも今まで何回かやってるんだ！」高須「たまに集中力が高まって行く場合があるんだ。その日は物凄く好調でボールが止まって見える！」佐伯「昔の偉いプロ野球選手が残した言葉ですね」大島監督「うむ。それで俺はこの高須を必死に説得して斉天に特待生として招いた訳だ！」嘉神主将「ちなみに名雲も同じ境地に入る事があるらしい。あいつの場合も似た様な事を言ってたな」高須「多分、同じ感覚なんだろうな。話してて俺と同じだなと思ったし」佐伯「俺にはまだ良く分からないんですがどう言う感覚なんですか？」高須「そうだな言葉にすると難しいんだが、さっき言った様にボールが止まって見えてスイングの速度が普段と比べてケタ違いでな。よーく見て振ってスタンドまで瞬時に届くと言ったところかな」佐伯「こんな事聞くのも変なんですが抑えるすべはあるんでしょうか？」高須「ないな！ あの境地に入るとそう言う事も考えなくなりただボールだけに集中する！」佐伯「！？ 無我ですか？」高須「そう言う事だ！」全員「難しいな？」大島監督「うむ。高須は集中力が高まった日に集中力が極限に達して発動するらしい！」高須「と言っても極限まで達した事は２度しかないからな。野球に関しては１度だけだ。これから先一生ないかも知れないとも言われたしな」佐伯「考えて見ればそうですよね。危険だから出せない様にしてるんですから」高須「そう言う事だな。まあ今日は調子が良いのは事実だ。次の打席も期待してくれ！」佐伯「はい！」ズバ―――ン！
十川「やっかいなところに！？」霞「三振！ ホームラン打たれた物の後続は三者凡退に抑えます！」武藤「後続は３人でと間違いなく調子が良いですね」真神「次は無明の４番ですか、エースだけでなく４番にも注目する試合になるかも知れないですかね？」大島監督「うーむ。いつの間にか三者凡退か」佐々木「と言うかなんで気付かないんですか？」佐伯（―――まっ何はともあれ貴重な１点が入ったんだ。守るぞ！）名雲主将「さすがだな。この球なら今日は問題なしだ！」宗介「だと良いがな」
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カキ―――ン！
名雲主将「よっし！」霞「打った瞬間ガッツポーズと名雲君、そのガッツポーズ通り打球はライトスタンド一直線と一瞬にして無明実業が同点に追いつきます！」武藤「凄いですね―――コースも変化も抜群だったんですけど！？」真神「確かにあのアウトローのシュートを巻き込んでスタンドに叩き込むのはプロでも至難の技ですね！」宗介「呆れた奴だな。あの球をヒットならまだしもスタンドまで叩き込むなんて」名雲主将「俺も今日は調子が良いからな！」佐伯（切り替えるぞ。次も長打力の高い片瀬さんだ！）ククッ！
片瀬「こんな球をどうやったらスタンドまで運べるんだよ！？」霞「片瀬君は三振とやはり変化球がキレますね！」武藤「打者の手前でああキレてたら打ちにくいですよ！」真神「ですね！」ガキッ！
芝原「手元でかなり変化してるな」霞「ミートに定評のある芝原君でしたが平凡なファーストフライ！」武藤「うーん、やっぱり１打席で佐伯君をとらえるのは難しそうですね」真神「確かに名門と言えここまで調子の良い佐伯君をとらえるのは苦労しそうですね」ガキッ！
谷沢「げっ！？ フォーク！」霞「フォークを打ち上げて３アウトチェンジ！」武藤「やりますなー」真神「うむ！」直人「名雲さん意外はすぐに終わったね」風祭「仕方ないさ。ああコース付かれたら簡単には打てない」佐伯「何か天野さんと同じだな？」嘉神主将「と言うより４番同士の戦いって感じだな。２人共似た様なところがあるからな」佐伯「つまり名雲さんは特に注意ですか」嘉神主将「うむ。考えてるより大幅に注意ってとこだな！」佐伯「と言うよりさっきの球よりもっと良い球ってかなり無理っぽいんだけどな？」嘉神主将「そこは戸川に任せて」十川「無理です！」嘉神主将「って諦めるの早いな！？」佐伯「十川さんも良いリードするんですけどね」十川「先代のキャプテンには遠く及ばんけどね」嘉神主将「ふむ。確かに八坂さんと比べれば見劣りするが同年代の中だと」十川「敵チームの４番に先代のキャプテンを上回る人がいます！」嘉神主将「フォロー失敗か」佐伯「………………」
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宗介（またアウトローか、今日の名雲はずい分と慎重だな）ズバ―――ン！
名倉「これがストライクかよ！？」霞「最後はアウトコースにストレートと名倉君を三振にとります！」武藤「今日の天野君はコントロールも素晴らしいですね！」真神「確かに今日の天野君は針の穴を通す様なコントロールを見せますね！」ガキッ！
佐伯「くっ！？」霞「ミートに定評のある佐伯君でしたがここは打ち上げ２アウト！」武藤「見送ればボールでしたけど追い込まれるとあのコースは振ってしまいますね！」真神「あのスライダーにバットが当たるだけ大したもんですよ！」カキ―――ン！ パシッ！
佐藤「何と俺の会心の当たりが！？」霞「三遊間を抜けると思いましたが風祭君のファインプレーで３アウトチェンジ！」武藤「相変わらずヒットをアウトにするプレーは凄いですね！」真神「今のはプロでも捕るのは難しいですね。信じられませんが風祭君は高校１年ながらプロクラスの打球勘を身に着けてますね！」宗介「危なかった。風祭じゃなければ完全に抜けてたな」名雲主将（と言うより風祭のところに飛ぶ様にリードしてるからな）直人「相変わらず魅せるな。さすがの俺もお前の打球勘は完全にコピーできんわ！？」風祭「そんな事はないさ。お前は俺よりセンスがあるからな。今に守備も良くなるよ！」直人「それが信じられないんだよな。プロも脱帽するほどと言われてるお前と比べて俺がなんて！？」風祭（やれやれ、知らぬは本人ばかりかはまだ続くのか）佐藤「見たか、何て小憎たらしい１年坊なんだ！」高須「嘉神を見た時に天才と言う物が分かった気がしたが、あの風祭はお前より更に上だな」嘉神主将「足に関しては劣ってるのは認めるが他は負けてないぞ！」高須「ふむ。しかしピッチャーとしてはあの手のタイプはかなり嫌なんじゃないか！」佐伯「そうですね。足があるから出したくはないしミートが凄まじく良いんで三振奪うのも難しいと凄くやっかいなバッターですよ。俺も長い事ピッチャーやってますけど、ここまでの苦手意識は滝沢と並んでトップクラスですね！？」嘉神主将「確かに小憎たらしい１年坊かもな」
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佐伯（最後はこれだ！）ズバ―――ン！
尼崎「しまった！？」霞「最後は１４３キロのストレートが低めに決まります！」武藤「変化球と言う予想を反してストレートで三振ですか」真神「良いリードですね。完全に打者の思考を読んだ上で決めました！」ガキッ！
縣「タイミングが合わんなー」霞「縣君はシンカーを引っ掛けてセカンドゴロに倒れます！」武藤「悪い球ではないですが打てない球でもありませんね」真神「しかしそれは上位打線ならでしょう。下位打線であれを打つのはは無理ですよ」武藤「確かに、名門と言えど高校生、全員がプロと互角と言う訳ではないですからね」カキ―――ン！ パシッ！
風祭「嘘っ！？」霞「今度はサードの高須君がファインプレーを魅せました！」武藤「あれは捕らなければスタンドに入っていたかも知れませんね」真神「反射神経が優れていますね。反応して捕ったと言う感じでした！」宗介「何つうか同じ回だったな？」名雲主将「細かいところは違うがな。確かに表と裏、両方共に同じ感覚で進んで行くな」宗介「実力伯仲、言葉の通り進んで行くなー」高須「我ながら良く捕れたな？」佐伯「助かった。下手すればスタンドだったかも知れなかった」
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霞「試合を振り返ってみましょう。現在、１対１の同点、両校共に４番のホームランで１点と実力伯仲の試合模様となっています！」武藤「確かに同じレベルの戦いですね。球数や奪三振はどうなってるんでしょうか？」霞「天野君はここまで４８球のペース、佐伯君は４２球のペースです。天野君はここまで６奪三振、佐伯君は４奪三振です！」武藤「本当に互角っぽいですね！？」真神「総合的には天野君が勝ってますが今日の佐伯君はそれに負けない活躍とコンディションは天野君より良いみたいですね！」宗介「問題は嘉神と高須だな！」ガキッ！
鈴木「力んじまった！？」霞「鈴木君はピッチャーフライ！」武藤「ちょっと力が入りましたね」真神「２番だしもう少しボールを観ても良かったんですがね」嘉神主将「ふっふっふ、高須だけに良いところを見させないぜ！」宗介「叩き潰す！」ズバ―――ン！
嘉神主将「この速度は！？」霞「自己最速更新の１４８キロのストレートで嘉神君を空振り三振に抑えます！」武藤「やっぱり凄いですね。スピードもそうですがノビも！」真神「確かに初速と終速の差が普通のストレートに比べて短いですね！」嘉神主将「ふっふっふ、ようやく分かったぞ」高須「何がだ？」嘉神主将「天野のストレートと斎藤のストレートは良く似てるって事だよ！」高須「今頃気付いたのかよ！？」嘉神主将「ひょっとしてとっくに気付いてたの？」高須「ああ。初めて対戦した時から」嘉神主将「それならそうともっと早くに言ってくれれば良いのに？」高須「いや、お前も気付いてると思ってたから」嘉神主将「何か斎藤には苦手意識があるんだよな？」高須「天野や斎藤のストレートは時々失投、正確には違うんだがストレートの威力が弱まった球が来るんだよ。それを狙えば苦手意識がなくなるんじゃないか」嘉神主将「何でもっと早くに言ってくれなかったんだ？」高須「気付いてると思ったから（何かこいつ、年々頭が退化してる様な？）」嘉神主将「今度からその球を狙うは！」高須「お、おう」カキ―――ン！
宗介「くそっ！ 力みすぎた！？」霞「………………」武藤＆真神「あの実況は？」霞「し、失礼しました。あまりに見事なホームランなので見惚れてしまいました。しかしこの球場で場外とは！？」武藤「確かに凄い飛距離ですね。現役でもここまでの長打力は数えるくらいですよ！」真神「確かにプロ入りしたら永久欠番を解いても構わないって感じの選手ですね！」武藤（そこまで！？ やはりこの世代は真神さんが認めるほどの怪物がいるんだな！！）嘉神主将「ワッハッハッハ、１人舞台ですなー！！」高須「泣きながら笑うと怖いんだが！？」嘉神主将「ワッハッハッハ、気にしないで下さい！！」高須「はあ」全員「………………」ガキッ！
直人「ぬぉ―――！」 パシッ！佐々木「あれを捕るか！？」霞「センター前に落ちるかと思われた当たりでしたが天野君の必死の走りで捕ります！」武藤「何と言うか将来性の高そうな子ですね！」真神「だな！」大島監督「２打席連続本塁打とはスカウトにアピールしまくりだな！」高須「そう言うつもりはないんですが、場外まで打てたのは失投でしたから」大島監督「うむうむ。佐伯も良い先輩を持ったな！」佐伯「確かに良い先輩ですけど、どうしたんですか？」大島監督「いや、ホームランしか出てないから采配のしようがなくて暇だから」全員「そう言う理由かい！」宗介「さっきの失投は悔やむな！」名雲主将「よりにもよって４番でだからな」大岡監督「最低でも後１打席はある。その時に借りを返せば良いだろう！」宗介「確かにそうなんですけど（当たるか外れるか分からんけど、どうも嫌な感じがするなー）」大岡監督「？ まあ、とにかく弟のお前が兄を楽にさせてやれ！」直人「は、はい」
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佐伯（天野か、同じ歳だけど、いや正確にはまだ１つ下だったかな？）十川（良く誕生日まで覚えてるな！？）直人「打つぞー！」佐伯（打たさん！）ククッ！
直人「………………」霞「クリティカルシュートを空振り三振し１アウト！」武藤「最初に危険球があったせいか恐怖心でインコースに踏み込めませんでしたね」真神「しかしあそこは踏み込んで打って欲しいですね！」武藤「まあ、硬球ってのは石と同じ様な物ですから当たりどころが悪ければ死ぬ可能性もある訳ですから仕方ないですよ」真神「ふむ。父親の方はインコースに食い込んで来るシュートをスタンドに運ぶ天才だったんだがな？」武藤「まっ子が親に似るとは限りませんから」佐伯「次は宗介さんか」宗介（俺には外に逃げるシュートになるから踏み込みながら左に流すか）佐伯（最後はこいつだ！）ガキッ！
宗介「サードの頭を越えられなかったか」霞「最後はクリティカルシュートを打ち上げて２アウト！」武藤「予想より変化が大きかったと言う感じですね」真神「父親はシュート打ちの天才だったんですけどね？」武藤「まっ子が親に似るとは限りませんからねって同じ言葉を言わせないで下さいよ！」霞「微妙に最後が違いますね」武藤「そんな事はどうでも良いわい！」カキ―――ン！
霞「レフトスタンドにギリギリ入りましたね。と言うか観てなかったんで解説をお願いします！」武藤「私も観れなかったんで真神さん」真神「さっきの天野君と同じくアウトコースのシュートに何とか当てて追い風があったのが幸いしたかスタンドに届いてしまったんですよね。マウンドの佐伯君はさすがに落ち込んでいますよ！」佐伯「………………」霞「本当ですね」武藤「納得いかない内容の試合と言うのもありますからね」真神「ピッチャーとしては打ち取ったと思ったのがホームランだからな。落ち込むだろう！」宗介「俺とはパワーのケタ違い差を見せてくれるな！」名雲主将「まあな。正直フォームを崩された時点で俺の負けなんだがな」宗介「俺としては貴重な同点弾でホッとした面もあるが」直人「ぼそっ（正直にありがとうって言えば良いのに）」宗介「直人は帰ってから俺の特訓に付き合いたいと」
直人「言ってねえ！？」宗介「確かに聞いたぞ。ぼそっ（嫌ならあれとかこれとかバラすかも知れんな）」直人「確かに言いました！？」風祭「口は災いの元かな？」ズバ―――ン！
芝原「ちっ！？」霞「１人歩かせた物の芝原君は三振と良いピッチングを見せます！」武藤「確かにストレートも回を重ねる事に威力を増してますね！」真神「今日の佐伯君は精神も強そうですね！」大岡監督「名雲のおかげで同点に追いついたな！」名雲主将「納得は言ってませんがね」大岡監督「相変わらず自分に厳しい奴だな」宗介「まっ同点にしてくれれば何でもいいや。ん？」直人「何も言ってません！」宗介「そうか」大島監督「しかし片瀬にストライクが入らなくてひやひやしたが良く抑えたな」佐伯「決勝で無様なところは見せたくないですから！」大島監督「よしよしそれでこそ斉天のエースだ！」佐伯「もう１点もやりません！」嘉神主将（この試合で佐伯が化けるかも知れんな！）
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宗介「渡辺か、長打は高いがミートは下手だからな。抑えるのは難しくない！」スト―――ン！
渡辺「何てフォークを投げやがるんだ！？」霞「フォークを空振り三振！」武藤「落差もそうですが手元でのキレも段違いですね」真神「確かにここまで四死球０、ヒット２本で抑えてるだけはありますね」ガキッ！
十川「当てるのがやっとですなー」霞「続く十川君はカーブを打ち損なって２アウト！」武藤「キレもですがどの変化球も変化が大きいですね」真神「確かにあれでは芯に当てるのも一苦労ですね」カキ―――ン！ パシッ！
片瀬「真っ直ぐ来たな」霞「ファーストの片瀬君が難なく捕って３アウトチェンジ！」武藤「芯には当たったんですけど、平凡なライナーでしたね」真神「当てただけ大した物ですよ」名倉「うーん、当てるのがやっとだな」宗介「何とか３人で抑えられたな」
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佐伯「谷沢さんと本当に長打力の高い選手が多いな」ガキッ！
谷沢「また打ち上げちまった！？」霞「フォークを打ち上げて１アウト！」武藤「変化球のキレは回を重ねる事に良くなってる気がしますね？」真神「確かにそう見えますね」ズバ―――ン！
尼崎「打てるか！？」霞「アウトローを見逃し三振！」武藤「１４０キロであの低めは打てませんね」真神「４番の名雲君なら打てるかも知れませんけどね」佐伯（決める！）ククッ！
縣「分かってても打てん！？」霞「やはり最後はクリティカルシュートで決めます！」武藤「やはり今日の佐伯君の変化球はキレてますね！」真神「確かに２点取られたのが不思議なくらいですね！」宗介（こりゃ俺と佐伯の出来で試合が決まりそうだな！）佐伯「よっし３人で抑えた！」
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宗介「佐伯かミートが上手いからな。一応注意していくか」佐伯「スライダーが来た！」ガキッ！
霞「当たりはいまいちだが打球は三遊間を抜けるか？」風祭（パシッ！ シュッ！）佐伯「もう少しだったのに！？」霞「風祭君の肩が勝った！ 間一髪アウト！」武藤「風祭君のプレーを観るとメジャーリーガーを思いますね！」真神「確かに、風祭君は生まれついての物なのか努力による物なのかリストと筋力がかなり高いですね！」霞「えっと？」真神「基本的に日本人選手は外国人選手に比べると筋力やバネが劣りますからね。風祭君のさっきのプレーもプロでもバウンド送球が普通なんですが」霞「ノーバウンドでしたね！」真神「とまあ、風祭君は筋力やバネは鍛えたのか生まれつきなのか日本人離れしていますよ！」霞「なるほど！」ズバ―――ン！
佐藤「うぎゃ―――！？」霞「インハイギリギリのストレートを見逃し三振！」武藤「踏み込もうとした分、恐怖心が倍増されたと言った感じですね」真神「しかし当ててファールにすれば良いのに」武藤「あの速さでそれは無理かと」佐藤「むっちゃ怖かったですよ！？」鈴木「そりゃあれだけ仰け反って三振だもんな」佐藤「コントロールが良いからああ言う事はないと思っただけに恐怖心も倍増されたし！？」鈴木「百戦錬磨の名雲のリードだからな。お前の外狙いくらい気付くだろう」佐藤「くっ！？ そうだった名雲の存在を忘れてた！？」鈴木「わ、忘れてたのかよ！？」ガキッ！
片瀬（パシッ！）霞「高く上がったファーストフライで３アウトチェンジ！」武藤「本当に高く打ち上がりましたね！？」真神「俺はむしろ何故あれだけ上がって全然風の影響もなく落ちたかの方が引っかかるが！？」嘉神主将「落とせば１点追加だったのにな？」鈴木「何故あれだけ高く上げて風に影響されないんだ！？」嘉神主将「さあな」宗介「何はともあれ３人で抑えたぞ」名雲主将「まあな（あのフライは見てて怖かったな）」
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佐伯「風祭からか」風祭「今日は名雲さんが当たってるしまずは塁に出ないとな」ククッ！
霞「期待の風祭君でしたがクリティカルシュートを空振り三振！」武藤「風祭君が３打席連続ノーヒットってのも珍しいですね？」真神「通算７割と言う怪物だからな。その怪物を３打席連続で抑えている佐伯君もまた怪物ですね！」直人「待っている球が来て三振なんて珍しいな？」風祭「初回に比べてキレがまた上がったらしい」直人「げっ！？ マジかよ！！」佐伯（シュッ！）ズバ―――ン！
直人「本当だ。ストレートも走ってるし今日は名雲さん頼みだな」霞「変化球だけでなくストレートも１４１キロと良い調子です佐伯君！」武藤「確かに今日の佐伯君はプロ並の力を見せますね。この投球じゃあ主軸以外は打てそうもありませんね」真神「コントロールも良いですからね。ここまで２失点なのが不思議なくらいです」ククッ！
宗介「この外に逃げてくシュートは本当に打ちにくいな」霞「この回、１番からの好打順でしたが三者三振と見事に抑えます！」武藤「うーん、準決勝戦が嘘の様なピッチングですね」真神「まったくだ」名雲主将「―――俺の出番はなしか」佐伯「この回は我ながら会心のピッチングだったな！」
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宗介「嘉神からか、今日の高須の前にはランナーを出したくないな！」嘉神主将「このまま行くと本当に高須と名雲の打ち合いになりそうだな。だとすると４番の前にランナーを出す事で勝敗が見えそうだな。ここはヒット狙いだ！」カキ―――ン！
霞「初球打ち！ 打球はライト前に落ちます！」武藤「ボール球なのに思い切って振って行きましたね？」真神「４番の前に何としてもランナーを出したかったと言ったところですかね。しかし１４５キロのストレートを難なくヒットにするバッティングセンスは凄いですね！」高須「………………」宗介「凄く集中している感じだな。威圧感がハンパじゃねえや！？」カキ―――ン！
高須「おっし！」霞「打球は再び場外へ！？ ………………これで斉天大附属が２点リードです！」武藤「コースが甘いとは言え１４８キロのストレートを良くもまああそこまで！？」真神「バットコントロールも天下一品ですね。これで長打力がずば抜けてるんじゃ高校生レベルで抑えるのは至難の業ですね！？」宗介「化け物め！？」名雲主将「落ち着け。まだ２点リードされただけだ」宗介「まだって今日の佐伯から後２点取れるのかよ！？」名雲主将「この後、俺が２発打てば同点だ！」宗介「はあ、あっさり言ってくれるな。分かった。お前がそう言うなら俺も！」ズバ―――ン！
佐々木「打たれて崩れると思った矢先にこんな球か！？」ククッ！
渡辺「スライダーか！？」スト―――ン！
十川「この速度で落とされて打てるか！？」霞「後続は三者三振とやはり今日の天野君も調子が良いです！」武藤「と言うか何でこんなピッチングで４失点なんだ！？」真神「仕方がない。ピッチャー以上に４番バッターの調子が良すぎる。逆に言えば調子が良いから４失点に抑えているとも言える」武藤「なるほど」大島監督「さすがにこの２点は重いと思った矢先に三者三振か、さすがだな。天野は！」高須「そうですね」嘉神主将「さすがは俺の弟子だな！」高須「いつから弟子になったんだよ？」嘉神主将「あいつが生まれた時からだ！」高須「はあ」宗介「そんじゃ、頼むは！」名雲主将「おう！」大岡監督「頼もしい奴らだ！」
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カキ―――ン！
十川「一つ聞きたいんだが何であのシュートを場外まで打てるんだ！？」名雲主将「簡単に言えばリードが読みやすかったのが一つ、もう一つは今日の俺の調子は良すぎる。敬遠でもされない限り打てない感じがしないんだよ！」十川（分かってたつもりだったけど、認識があまかったな。俺の想像を遥かに超えるバケモンだ！）霞「両校４番の３打席本塁打で４対３と１点差になっています！」武藤「何かとんでもない試合展開ですね。今更ですが」真神「うむ。野球と言う競技が出来た時は野手は本塁打のみを狙い。投手は三振のみを狙ったと言うが」霞「正しく原初の野球と言ったところでしょうか？」真神「正確には違うかも知れませんが、何と言うか今日は４番とエースの対決ですね！」武藤「試合の勝敗は両投手、両４番の精神力がどれだけ続くかで決まりそうですね」真神「そうだな」佐伯「打たれてもせいぜいヒットって言う外のコースをスタンドまで運ばれるのか」
十川（すまん）佐伯（大丈夫です。まだ１点勝ってます。後続をきっちりと抑えましょう！）十川（ああ！）ズバ―――ン！
片瀬「何でホームラン打たれたばっかりなのにこんなに良いんだよ！？」霞「最後は真ん中高目のボール球を振らせました！」武藤「何と言うか佐伯君は精神的に強くなりましたね？」真神「信じられん！？ 短期間でここまで変われる者なのか？」佐伯（次はこれだ！）ズバ―――ン！
芝原「ストレートだとっ！？」霞「続く芝原君にもアウトコース高めのボール球を振らせて２アウト！」武藤「名雲君にも同じ球を投げてたんですが、彼にはスタンドまで運ばれて他の打者は打ち取ってると、やはり名雲君は別格ですね！」真神（確かに名雲は別格と言う言葉が相応しいな）スト―――ン！
谷沢（クソッ！ 嫌なとこばかり投げて来やがる！？）霞「最後はフォークを見逃し三振とこれで…………えっと？」武藤「そう言えばさっきの回も三者三振でしたね」霞「はい。ですがこの回の先頭の名雲君に打たれたので現在は３連続奪三振です！」武藤「こうやって観ると連続奪三振ってのも難しいもんだな」真神「そう言えば連続奪三振の記録っていくつ何ですか？」霞「ちょっと待って下さい」武藤「夏は元カープの福井さん、春はマリーンズの浅野の９連続奪三振が記録ですよ。前に話したでしょう！」霞「そう言えばそうでしたね」真神「ふむ。残り２回かタイ記録なら狙えるかも知れんな」武藤「１点差ですから、延長に行く事も想定すると狙えるかも知れませんね」真神「そうだな。連続奪三振を狙うとしたらあの４番の怪物２人をどう抑えるのが課題だな」武藤「ですね」大岡監督「２ランとソロの差が出たな」宗介「もう１打席、名雲に回りますから」大岡監督「当然だが高須には要注意だ。場合によっては歩かせる事も頭に入れとけ」宗介「敬遠の嫌いな監督の指示なら嫌々従いますけどね」直人（やっぱり嫌々なんだな。まあ敬遠が嫌いじゃない投手はいないか？）風祭「………………」名雲主将「どうした？」風祭「俺がランナーとして出てたらソロばかりになってなかったなと思いまして」名雲主将「次がある。次の打席で打てば良いだけだろ。ソロじゃなく２ランなら逆転だ！」風祭「ですね。何でこんな簡単な事にも気付けなかったんだろう？」名雲主将「同世代の投手にここまで抑えられるのは初めてって事でお前も少し混乱してるんだろう」風祭「…………そうなのかも知れません」名雲主将「俺としては少しホッとしたな」風祭「え？」名雲主将「同世代に同等の相手が居ると言うのは良い事だからだよ。お前自身の成長にも繋がる！」風祭「はい！」大島監督「この１点は仕方ないな。勝つ為にもこの貴重な１点を守って行けよ！」全員「はい！」
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宗介（力で押し切る！）ズバ―――ン！
名倉「手が出ん！？」霞「速い！ １４８キロのストレートで空振り三振！」武藤「コースはあまかったですが、あの速さとノビのストレートはまず打てませんね！」真神「さっきまでの慎重なコントロールではなく。力強いストレートでグイグイと押すスタイルにチェンジした感じですね！」ズバ―――ン！
佐伯「ダメだ。俺程度の打者じゃ歯が立たない！？」霞「巧打者、佐伯君も三球三振とまったく手が出ません！」武藤「今のも１４７キロと球が走ってますね！」真神「ノビもハンパじゃないですね。完全に振り遅れてからバットを振っています！」ククッ！
佐藤「こんな変化の大きいカーブを打てるかっての！？」霞「最後はカーブで三振と変化球もキレています！」武藤「確かに手元でかなりキレていますね」真神「８回も三者三振で、これで６連続三振ですか」佐伯「思いっきり投球スタイルを変えて来ましたね」嘉神主将「ガムシャラに勝ちに来たんだろう。ここからは集中力がどれだけ続くかで勝敗が決まりそうだな」佐伯「ですね」名雲主将「６連続奪三振と調子は文句なしだな」宗介「スタミナの事を考えると、これからは球数を出来るだけ減らさないといけないからな」名雲主将「まあな。しかしクリーンナップには慎重に行くぞ」宗介「了解」
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佐伯「………………」
 滝沢「夏にまた会おうぜ。その時はきっと自信を持てる様になってる筈だ！」佐伯「何で断言できるんだ？」滝沢「甲子園優勝！ お前が日本の頂点の投手になるからだよ！」佐伯「飛躍し過ぎだ！？」滝沢「次は決勝戦だぜ。決勝で勝てば甲子園優勝だろ！」佐伯「確かにそうだけど」滝沢「優勝しろよ！」佐伯「あ、ああ」 |
ふいに佐伯の脳裏に走ったのは準決勝の滝沢の言葉だった。
佐伯「後２回で日本一だ。絶対勝つ！」ズバ―――ン！
尼崎「８回でこの球速か！？」霞「最後はアウトコース高めの１４０キロのストレートで空振り三振！」武藤「８回だってのにいまだに球速が落ちませんね」真神「むしろ球威は増してる感じが？」佐伯（次はこいつだ！）ククッ！
縣「ダメだ。手が出ん！？」霞「縣君にはクリティカルシュート３つで三振！」武藤「あの速度であの変化じゃ並みの打者には打てませんね！」真神「しかし次は並ではない風祭君ですね。と言っても今日は３打数ノーヒットですが」風祭「このまま負けてたまるか！」佐伯「こっちも負けん！」カキ―――ン！
佐伯「う、嘘だろう？」霞「追い込んだ後のクリティカルシュートをバックスクリーンへ叩き込む同点ホームラン！」武藤「この場面であの難しい球をホームランですか、やっぱりとんでもない打者ですね！？」真神「無明としては貴重な同点ホームランですが、佐伯君には重い一発ですね！」十川「すまん。今日はタイミングが合っていないからってつい。やっぱり風祭にはもう少し慎重に行くべきだった」佐伯「気にしないで下さい。リードに頷いたのは俺だし、それにあの球は決して悪くなかったし」十川「ああ。ヒットでなくスタンドまで運ぶあいつが凄すぎた」嘉神主将「ふむ。続投出来そうだな」佐伯「はい！」大島監督「何と言うか一回り大きくなったな。佐伯は」高須「そうですね」佐々木「来年も安泰そうですね。うちは」大島監督「うむ！」直人「この場面で同点弾とは恐れ入ったよ」風祭「まあな」名雲主将「まったく俺に繋ぐんじゃなく自分で同点にするとはな。つくづく頼りになる後輩だな」宗介「まったくだ」大岡監督「よしよしこれで名雲が決めてくれそうだな」カキ―――ン！
嘉神主将（パシッ！）霞「芯でとらえましたが思ってたよりノビませんでした」武藤「しかし佐伯君の球はいまだに落ちていませんね」真神「何があったのかは分かりませんがこの精神力の強さは本物の様ですね！」直人「結局レフトフライかよ」風祭「気にすんな。次で打てば打てば良いさ！」直人「次ってそうか、同点だから延長って可能性もあるのか」佐伯「それじゃ、もう１点お願いします！」高須「おう！」嘉神主将「やっぱり最後に頼られるのは俺じゃないのか？」佐伯「いえ、点は多ければ多いほど良いのでキャプテンも頑張ってください！」嘉神主将「おう！ お前も延長１８回まで死ぬ気で頑張れ！」佐伯「すみません。さすがに１８回を完投は無理です！？」高須「延長１８回まで投げて元気なのは河島くらいだよ」
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霞「試合はいよいよ９回と言いたいですが、先ほどの同点で試合は延長に入る可能性もあります！」武藤「それにしても無明は４ホーマーで４点ですか」真神「そう言えば奪三振の話をしていましたがホームラン記録ってのはいくつ何ですか？」霞「ちょっと待って下さい………………３打席連続本塁打と言うのはタイ記録ですね。今更ですが」武藤「本当に今更ですね」霞「ちなみに１試合４本と言うのも凄いですが、これは記録ではないですね」武藤「上には上がいるもんですね」霞「ええ。まず３打席連続本塁打ですが、歴代には名雲神威さん、天野成治さん、現役では神代一歩さんといますね！」武藤「有名人ばっかりですね」霞「はい。そして１試合最多本塁打ですが、一昨年の夏の斉天の１試合８本塁打ですね。決勝での記録で無明が食らっています！」武藤「確か、４者連続本塁打が決まった夏ですね。天野君が５本塁打食らって代わった定岡君も３本塁打と斉天の打線が爆発してそのまま大差で斉天が優勝したと言う伝説の」真神「打線と言うのは一度火がついたら止められないからな」霞「それでは試合を振り返って、現在、試合は９回表、４対４の同点です。マウンド上の天野君はここまで球数１３８、被安打４、被本塁打３、失点４、四死球０、奪三振１５と言うピッチングです！」武藤「被本塁打があれですが、良いピッチングだと思います！」真神「確かに４番の調子が良すぎるだけで天野君のピッチングは良いと私も思います！」宗介「３人で終わらせたいな。やはり難関はクリーンナップだな！」ズバ―――ン！
鈴木「やっぱり無理か」霞「１４５キロのストレートを空振り三振！」武藤「球数的に限界と思われますが、いまだに球の勢いは落ちませんね。天野君は夏に比べてスタミナも上がりましたね！」真神「このままの調子でクリーンナップを抑えられるかで試合の勝敗が決まりそうですね」宗介「問題はここからだ。こいつら相手にはコースだけじゃ通用しないからな。今日最高の球を投げるしかない！」嘉神主将（当たってる高須の前に無理する必要もないと思うがここは思い切って長打を狙って見るか！）カキ―――ン！
霞「これは大きい当たりっ！？」
直人「ぬぅっ！」パシッ！
嘉神主将「やるなあ。あのセンター！？」霞「ここで天野君のファインプレーが出ます！ ホームランの当たりをアウトにしました！」武藤「直人君は守備面では言う事なしですね」真神「やはり守備では父親をしのぐ才能を持ってそうですね！」嘉神主将「つう訳で後は頼む（やっぱり単打狙いにするべきだったか）」高須「おう！」霞「ここで天野君ＶＳ高須君、今日４度目の対決ですね！」武藤「今日は３打席連続ホームランと、高須君が完全に天野君に勝っていますけどね」真神「と言うか天野君は高須君に対して少し力み過ぎな感じもしますね」宗介「ここまで３打数３ホーマー、ここで止める！」高須「ここで決めて夏の借りは返す！」ククッ！
０−１ インコース危険なカーブを避けて１ボール！
名雲主将（これで恐怖心も芽生えるだろう）高須（ぶつけるつもりで投げて来やがったな。名雲のリードは慎重に見えて大胆、次に来るのはアウトコースでなく。インコース、ボール球でも叩く！）宗介（次はインコースのストレートか！）カキ―――ン！！！
霞「インコース危険な球だが迷う事なくフルスイング！ 打球はレフトスタンド一直線！」武藤「あの危険なインコースから一転してまたもやインコースの球をスタンドですか！？」真神「なかなか勇気がないと打てませんね！」
全員「ここで決めるとはさすがは４番！」高須「おう！」名雲主将「これでも抑えられないのか、お手上げだな。抑えるすべがない！？」宗介「個人の勝敗に関しては負けを認めるが試合の勝敗は譲らん！」ズバ―――ン！
佐々木「ここでこの速さか！？」霞「追い込んだ後、１４７キロのストレートで決めます！」武藤「決め球は凄い速さとノビですね！？」真神「試合の勝敗は諦めないと言う闘志あるピッチングですね！」霞「しかしこの回、待望の１点で勝ち越します。それと４打席連続本塁打は甲子園新記録です！」武藤「そう言えば新記録なんですね。１点勝ち越しの印象が大きくて忘れていました！？」真神「確かに記録より勝利の方が大事ですからね。しかしこれで勝てば勝利と共に新記録と高須君には一生の思い出になるかも知れませんね！」武藤「そう言えば真神さんも優勝と記録には縁がありましたね」真神「ええ。だから何となく今の高須君の気持ちは分かりますね」大島監督「あの場面で良く打った。それでこそ４番だ！」高須「はい！」嘉神主将「どうせ俺は打てませんでしたよ！？」大島監督「いや、お前の当たりも良かったぞ。相手の守備が上回っただけで」嘉神主将「結果はアウトですけどね」大島監督「まあ、勝ち越したんだ。全国制覇まで後一歩だ！」嘉神主将「分かっています。俺もキャプテンです。最後まで気は抜きません！」佐々木「後一歩で日本一！」鈴木「ああ！」佐藤「おう！」大岡監督「この１点はちと重いな」名雲主将「打たれた責任は俺が取ります！」宗介「お前だけの責任じゃないだろう！」名雲主将「そうだが、あの場面で完全にリード読まれたからな！？」大岡監督「幼馴染ってのは相性が極端に良い場合と悪い場合があるからな」宗介「そうですね。それは何となく分かります」風祭「宗介さんの打席からです！」宗介「分かってる。俺が出れば名雲がサヨナラにしてくれる。何とか出塁しないと！」直人「名雲さん、片瀬さん、芝原さんって長打力の高い人が続くからな。確かに兄貴は出塁する事だけを考えた方が良いな」
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霞「試合もいよいよ９回裏、斉天が土壇場で勝ち越しました！」武藤「高須君の４打席連続本塁打で勝ち越し成功、おまけに記録更新とこのまま勝てば本当に一生の思い出になりそうですね！」真神「このまま勝てればですけどね。佐伯君の調子や名雲君の調子を観ると正直どうなるのか私にも分かりません！」霞「佐伯君ですが、ここまで球数１４０、被安打４、被本塁打４、失点４、四死球１、奪三振１６と言うピッチングです！」武藤「１４０球なのに球の勢いが落ちていないと言う事は佐伯君も夏に比べてスタミナが上がっていますね！」真神「１６奪三振ってのも凄いですね。奪三振率は天野君以上でしょうか？」佐伯「クリーンナップからか、何とか３人で抑えないと！」宗介（四死球でもヒットでも良い。何とか塁に出ないと！）ククッ！
霞「際どいが見逃しフォアボール！」武藤「何とか出塁に成功しましたね！」真神「粘り強いバッティングですね！」宗介「よし！」佐伯「切り替えよう。次だ！」霞「一転してホームランが出ればサヨナラの場面になれました。ここで迎えるのは今日、３打数３本塁打と絶好調の名雲君！」武藤「ここで打てば高須君とのタイ記録とおまけにサヨナラで日本一と名雲君の方が良い場面ですね！？」真神「本当に、さすがに決勝だけあって最後まで盛り上がりを見せますね！」名雲主将（狙うは一発のみ！）佐伯（何としても抑えないと、みんなの為もあるけど、何より俺自身の為に！）カキ―――ン！！！
霞「飛距離は十分か！？」嘉神主将「スタンドには行かさん！」パシッ！
霞「飛距離は十分でしたが嘉神君のファインプレーでスタンドへの球をアウトにしました！」宗介「まずい！？」嘉神主将「うらっ！」ビュ―――ン！！！
霞「ランナーの天野君、急いでファーストに戻るが間に合わずこれで一気に２アウト！」武藤「この場面であそこまで飛ばした名雲君も凄いですが嘉神君が上回ってましたね！？」真神「しかし、２アウトですか、さすがに勝敗は見えましたね！」佐伯「………………」ククッ！
片瀬「…………ダメか」霞「最後はやはりクリティカルシュートで空振り三振！」武藤「最後は佐伯君が名雲君にリベンジできましたか」真神「うーん、ピッチャーとしてはあそこまで飛ばされたからリベンジできたとは言えない様な」霞「試合は５対４で斉天大附属の勝利です。夏の借りを返しました！」大島監督「良くやった。お前ら！」全員「日本一だ！」佐藤「１年の頃はスタンド応援組だった俺達がついにレギュラーで日本一になったぜ！」鈴木「若干２名ほど裏切り者もいるがな！」嘉神主将＆高須「……………………」佐々木「悪気はないと思うから気にすんなよ」嘉神主将＆高須「分かってる」高須「………………」嘉神主将「どうした？」高須「これで２勝２敗、最後の夏で決着が付くと思ってな」嘉神主将「そうか、俺達が１年の夏で勝ってから決勝で春、夏と連敗してリベンジ出来たんだよな」高須「ああ。色んな意味で次が最後だ！」嘉神主将「ああ！」大岡監督「うーむ。最後は負けたか」名雲主将「すみません」大岡監督「今日のお前や天野を責められる奴はいねえよ。それに他の奴らもノーヒットだからって落ち込むくらいなら夏の事を考えろよ。お前達にはまだ夏の大会って最後の舞台があるんだから」全員「はい！」宗介「泣いても笑っても次が最後か」名雲主将「今日は夏の借りを返されたし次は俺達が今日の借りを返さないとな！」宗介「ああ！」風祭「俺も次は佐伯から打ちたいな」直人「お前はまだ良いよ。ホームラン打ったし俺なんかノーヒットだぞ！？」風祭「まあ、監督の言う通り夏があるんだ。その時に打てば良いよ」直人「と言ってもインコースのあのシュートは無茶苦茶打ちにくい」風祭「親父さんはインコースのシュート打ちの天才だったって聞いてるけど？」直人「子が親に似るとは限らないんだよ！」風祭「……まあな」佐伯「……俺が日本一の頂点に立ったか……変わった感じは……こんなに早くする訳がないよな？」
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中西監督「―――斉天大附属が日本一か、夏の大会では昨年以上に斉天大附属が要注意だな！」全員「日本一のチームが同じ地区か」
吉田「そう言えばうちの地区も特別扱いはなくなると聞きましたが？」中西監督「うむ。他校と同じでうちの県も夏の大会は１校のみになるらしい。しかしそれは来年の夏からと言う話だ」全員「良かった。あの怪物が居たら勝てる自信がないからな」中西監督「お前ら負け癖が付いてないか？」
相良主将「確かに」全員「そんな事ないですよ」中西監督「なら良いが、良く聞けうちは日本一になるだけのポテンシャルは秘めた高校だ！ 勝てない理由をあげるならそれはお前達の精神的なあまさだ。夏までは特に精神力を鍛える方向で行く！」相良主将「妥当ですね」
真田「精神力を鍛えるって滝にでも打たれるんですか？」中西監督「そんな事はしないよ。練習試合を多く入れて後は個人指導かな」
斎藤「望むところだな！」中西監督「練習量も昨年とは比べ物にならんからな！全員「うげーっ！？」こうして春の大会では斉天大附属高校が日本一となった。斎藤、いや赤竜高校は例年にも増して頑張り夏の大会に臨むのだった。