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中西監督「さてといよいよ準決勝戦だ。相手は力を付けて来た風雲高校だ」
真田「村雨君の居るところだね」
斎藤「ああ」
吉田「甲子園のキップが手に入る準決勝で対戦とはな」
斎藤「こっちも負ける訳には行かない」
中西監督「基本的に2年生が中心の部員の少ないチームだ。しかしチームプレーが良く守備の上手い選手が多いので楽観は出来ない」
相良主将「それで相手の先発は?」
中西監督「確か伊藤だったな。キレるHスライダーが注意だな。総合的に見てそれほどでもない投手と言うイメージだったからな」
斎藤「打線はどうなんですか?」
中西監督「打線もそれほどでもなかったな。村雨や山根、足では戸倉が要注意かな。ツメをしくじらなければどうとでもなりそうな打線だな」
相川「評価は低いですね」
中西監督「まあな。まとまりは良いんだが打線にしろ投手にしろ一枚足りない感じがする。さっきも言った様にツメをしくじらなければ問題ないと思う」
吉田「それでも準決勝まで勝ち上がって来てますから油断はできませんね」
中西監督「そうだな。基本的に先発をノックアウトすれば代わりはいないから」
相良主将「出来るだけ球数を多く投げさせるですね」
中西監督「と言う事だ!」
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霞「試合もいよいよ準決勝戦、勝った高校は甲子園へのキップが手に入ります」
武藤「それもですが、どちらが斉天と戦えるかでも盛り上がるんじゃないですか」
霞「赤竜高校は夏、秋の決勝で斉天大附属に敗退しております。風雲高校も秋の準決勝戦で敗退しております。そして昨年の夏では両校は1回戦で当たって赤竜高校が勝利しています」
霞「そう言うのって決勝で言った方が盛り上がりませんか」
霞「今、適当な相手に交渉中らしいです」
霞「そんな事は置いといて7−3で赤竜が勝つと噂されている準決勝戦が始まります!」
霞「番狂わせはあるんでしょうかね?」
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斎藤(1番は俊足巧打の戸倉さんか)
吉田(昨年の夏は大した事はなかったが秋から急激に成長したんだったな)
斎藤(ああ。真田と同じタイプだからな塁に出すと面倒そうだ!)
霞「平凡なサードゴロになるかと思いましたが間一髪セーフ! 記録は内野安打です!」
武藤「うーむ。嵯峨君の守備が下手でもありますが、それより戸倉君のあの足は凄いですね」
斎藤(十中八九走って来るだろうな。問題はいつ走るかだな?)
斎藤(さすがに初球はないだろうが一応ストレートでストライクを取りに行くぞ!)
吉田(分かった!)
斎藤(シュッ!)
霞「初球から走った!」
霞「判定はセーフです!」
武藤「どっちとも取れそうな盗塁でしたが判定はセーフですか」
霞「続く石田君はバント失敗で2アウト! しかし次の打者は全国区のバッターとも言われている村雨君です!
武藤「守備勘が良く守備だけならあの風祭君よりも上と言われていますね。そして打撃も勝負強く風雲高校の中では歴代最高の打者とも言われています」
村雨「やはり初球ストレートか
霞「頭上を抜けるかと思われた打球でしたがジャンピングキャッチしそのまま空中で体勢を変えて二塁に投げて飛び出していた戸倉君は帰塁できずチェンジです!」
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霞「打球は右中間真っ二つ! 打った真田君は三塁に到達しました!」
武藤「打ったのはスラーブですね。初めて見る変化球を良く打てましたね」
霞「おっと初球からスクイズだ!」
相川(タッ!)
霞「出遅れたが懸命にファーストに送球します。しかし相川君の足が一足速くセーフで赤竜高校が1点先制します!」
武藤「風雲高校は守備に定評がありましたがらしくないプレーが出ましたね」
村雨「中学では4番を打っていたけどね」
村雨(パシッ! シュッ!)
霞「これは1、2塁間を抜けるかと思われましたが村雨君が2塁よりに守っていた為に併殺となりました!」
霞「武藤さんの疑問も分かりますが、これが天才と言われる村雨君の守備勘です!」
相良主将「今のは仕方ないだろう。そう言えば夏も打ちまくった時にあいつの好守備でチェンジにされたな」
相良主将「ふっ、1回にダブルプレーにしたとは思えんな」
霞「初球から振って打球はスタンドを越えて場外へって!? この球場で場外ですか―――!?」
霞「さすがは今年のドラフト候補ですね」
相良主将「言うほど簡単じゃなかったさ。良い高速スライダーを投げて来たけどな。もう一度芯でとらえられるかと言われれば自信はないな」
霞「5番の玖珂君を歩かせましたが続く嵯峨君は三振と何とか2失点に抑えます!」
霞「高校通算打率2割で得点圏打率は1割と確かに活躍はしていませんが1点の欲しい試合では結構打ってるらしいです」
武藤「へえ。三振してるところしか観ていない感じなんですけどね」
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霞「試合も2回に入りました。先頭の山根君はかすりもせず三球三振です。こうして見ると斎藤君はムダ球を放らないタイプですね」
武藤「ええ。1順目はいつもこんな感じだと思います。バランスの取れたところは無明実業のエースの天野君に似ているかも知れませんね」
霞「最後はインハイ高めのボール球を振らせます!」
霞「―――入りました。フルスイングの吉岡君、三振かと思われましたが追い込まれてからライトスタンドに叩き込みました!」
相川(パシッ! シュッ!)
霞「続く中村君は普通のセカンドゴロで3アウトチェンジです!」
武藤「吉岡君に打たれた後でしたが、続く中村君を簡単に打ち取る当たりはさすがですね」
霞「しかしこの回、風雲高校が1点を返しました!」
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霞「まずはHスライダーで吉田君を三振に抑えます!」
武藤「やっぱり外に逃げてくあのスライダーは振ってしまいますね。次の安達君は左ですから内角に来るスライダーをどう打つのか楽しみですね」
霞「楽しみとか言う前にかすりもせず結果は三振です!」
霞「続く伊沢君も三振と三者三振に抑えます!」
武藤「やはりあの手元でキレるHスライダーはプロ並みですね!」
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斎藤「良し!」
霞「最後はカーブで三振に抑えます!」
霞「続く伊藤君はスライダーを打ち上げ2アウト!」
武藤「スライダーは平凡ですね。まあ、球種が増えた分、狙い球をしぼりにくそうですが」
斎藤(この人は塁に出さない!)
霞「最後はアウトローギリギリのストレートで見逃しの三振!」
武藤「140キロであのコースは手が出ませんね。初回での借りを返す見事なピッチングです!」
吉田「ナイスピッチング!」
斎藤「ああ。肩も温まって来たしこの調子を維持するぞ!」
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霞「2打席連続ヒット! 打った真田君は二塁へ!」
武藤「珍しくと言うか初めて真田君の流し打ちを見ましたね。今日は本当に調子が良さそうです!」
霞「ファーストの頭を越えるかと思いきや村雨君は相川君が打つと共に後ろへダッシュし捕りました。しかし盗塁を決めて3塁に居る真田君はタッチアップ!」
霞「際どいですが判定はアウト!」
霞「思わず審判に意見した様ですが判定は当然覆りません。これで一気に2アウトとなりました!」
武藤「高校野球では審判は絶対ですからね。しかし真田君は好走塁を見せましたからその気持ちも分からなくはありませんよ!」
霞「しかし村雨君の好返球も見事でしたね」
武藤「そうですね。真田君の足と村雨君の守備は村雨君の方がやや分があった様ですね」
霞「その村雨君ですがテレビカメラに向かってVサインをしています!
真田「殺っちゃって良いから!」
真田「村雨君に天誅を!」
真田「なるほど(それじゃデッドボールも避けられるのか)」
真田「良し百万歩譲って次の村雨君の打席では三球三振に仕留めたまえ!」
霞「追い込まれてからアウトコースへ逃げて行くHスライダーを投げますが打ち返しバックスクリーンに運びます!」
真田「村雨君はダメージ0みたいだけど」
村雨「さすがに飛距離は敵わんな
相良主将「良し!」
霞「初球ボール球でしたが迷わずストレートを打ちライトポール直撃のソロホームランとなりました!」
相良主将「ボール球とは言え力のないストレートだったからな。お前の一発がよっぼど堪えたんだろう」
霞「村雨君がジャンピングキャッチし3アウトチェンジ!」
霞「それは分かりませんが、とにかくこれで3アウトチェンジです。この回に赤竜高校が2点追加しました!」
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霞「まずは先頭の石田君を三振に抑えます!」
武藤「フォークも昨年より上ですね!」
霞「そして次のバッターは巧打者村雨君です。1打席目はダブルプレーに倒れましたがこの打席ではどうなるのか?」
武藤「結果はあれでしたが1打席目も芯に当てていましたし風雲高校では一番やっかいなバッターですね」
村雨(全球ストレート狙いで行くかな?)
斎藤(良し!)
霞「まずは初球真ん中にカーブが決まります!」
村雨(うーん、分かってたけど速度差がやっかいだな。次もストレートなら打てる自信はあるんだけど、ここは慎重にボールだろうな)
霞「2球目はインハイのストレートを真後ろにファールします!」
武藤「単純ですが変化球の後のストレートは速く見えてとらえにくいんですが真後ろにファールするとはさすがですね!」
斎藤(シュッ!)
霞「最後はアウトコースのストレートで空振り三振! 球速は142キロを記録しました!」
武藤「やっぱり良い投手ですね。同世代では最高のピッチャーと言われる石崎君よりも総合力では斎藤君の方が上かも知れませんね」
村雨「やっぱり追い込んでから来るボールは凄いな。今度はそれも踏まえて打たないとな」
霞「続く山根君もカーブで空振り三振とこれで4連続三振!」
武藤「エンジン全開って感じですね。これはもう点が入らないかな?」
吉田「これなら9回の前にコールドで終わるかな?」
斎藤「そう言うセリフは打ってからにしてくれ」
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霞「珍しく嵯峨君がショート後方にヒットを打ちます!」
吉田「嵯峨さんが出たか、俺も続くぞ!」
霞「ここで吉田君の2ランホームラン! 赤竜高校はこれで4ホーマーと打線が爆発します!」
武藤「準決勝だから接戦になると思っていたんですが赤竜が圧倒してますね」
霞「吉田君にホームランを打たれた物の後続の安達君と伊沢君は打ち取りこれで2アウト!」
武藤「ガムシャラに抑えている感じですね。もうスタミナは限界に近いかと」
霞「安達君と伊沢君を抑えた物の真田君にはデッドボールと武藤さんの言う通り限界が近そうです」
武藤「風雲高校は選手層が薄いですからね。伊藤君に代わる投手が居ないんでしょうか?」
相川(もう伊藤さんは限界だし粘らずにあまい球が来たら積極的に打って行こう!)
霞「流し打ちで打った相川君は一塁ストップ! 真田君は三塁まで走ります!」
霞「やはりと言うべきでしょうか、ここでピッチャー交代です。代わったのは同じく2年の長谷川君ですね」
斎藤「どんなピッチャーなんですか?」
中西監督「分からん」
中西監督「したがあんなピッチャーは知らん。多分、先発よりレベルは低いだろうからあまい球が来たら初球からガンガン振って行け!」
霞「2アウト1、3塁と言うピンチで迎え打つのは巧打者と言うか強打者斎藤君です!」
霞「知りません」
霞「長谷川君は公式戦には初出場っぽいんでないんじゃないですか?」
斎藤(カーブか、まあまあ変化するな)
霞「とお喋りしている間に1球、カーブでしょうか? を投げて1ストライク!」
霞「凄まじい当たりが突き刺さりましたがファールです!」
霞「ですね。しかし野球は身長ではありませんが兄の自論です!」
霞「昔は小さかったんです。良く身長の事でケンカして帰って来ました!」
霞「最初からあんな感じだったと思いますけど」
斎藤(ストレートは130キロも出てないな。もっと待って振らないとな!)
霞「右中間真っ二つ真田君はテレビカメラに向かってピースで返りました。続く相川君も返り打った斎藤君も三塁に到達!」
霞「これでこの回は4点目、そして次の打者は相良君ですが―――敬遠の様ですね!」
武藤「そうですね。2アウトだと満塁の方が守りやすいですし次の玖珂君も敬遠ですかね!」
霞「武藤さんの言う通り玖珂君も敬遠ですね。迎える打者はこの回の先頭打者嵯峨君です!」
霞「ええ。試合が5回まで終わって10点差以上ならコールドですね!」
中西監督「嵯峨は満塁では13打数ノーヒットか」
中西監督「自信あるのか?」
中西監督「じゃあ代打な!」
中西監督「俺としては1等じゃなくても3等でも5等でも良いんだが」
中西監督「別にホームランじゃなくてもヒットで点が入る打ち損ないでも相手がエラーすれば1点入るしやはりここは勝負師としたら代打だな!」

中西監督「うーむ。目が悪くなったかな。スコアボードに8と言う数字が?」
相川「か、監督」
霞「1、2塁間を抜けるかと思いましたが村雨君が横っ飛びでアウトにします!」
武藤「守備もですが、まだまだ諦めていないって言うああ言うプレーは良いですね!」
霞「ですね! しかしこの回に赤竜高校が8点を追加しました!」
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霞「試合も5回表、12対1と言う大差でこの回、10点差以上ならコールドが成立します!」
武藤「つまり最低でも2得点しなきゃ終わりと言う事ですね」
霞「そして先頭打者の5番、小見山君が打席に向かいます!」
村雨「と思ってアドバイスです! ミートに集中、来たボールを全身の力を集中させて振り抜く!」
斎藤(長打力も高いしミートも上手い打者だな。アウトかインか)
霞「初球は真ん中のストレートを空振りし1ストライク!」
武藤「ノビのある速いストレートと言うのは分かってても打てないものですからね!」
斎藤&吉田「!?」
霞「これは自打球ですね。足に当たって痛そうです!」
武藤「しかしタイミングは合ってましたね!」
相川(タッ! パシッ!)
霞「センターに抜けるかと思いましたがここで相川君のファインプレーが出ます!」
武藤「赤竜高校って昔から二遊間は守備の上手い選手が多かったんですが今年も見たいですね。バッティングセンスに守備センス、どちらも1年とは思えませんよ!」
斎藤「サンキュー!」
相川「いえいえ。それより後続に注意した方が良いですよ。さっきの円陣で雰囲気が変わってますから」
斎藤「分かってる!」
霞「これで1アウトとなりました。次のバッターは今日ホームランを打ってる吉岡君!」
武藤「長打力は山根君に匹敵すると言う話です!」
斎藤(さっき見たいに簡単にストライクを投げるとスタンドに運ばれる危険性がある。ここは慎重に行くぞ!)
霞「珍しいですね。初球から積極的に振って行く吉岡君ですが初球を見ました?」
武藤「緊張してる感じではないですね。ここはコールドを消す為にもまずは塁に出る事を考えてるんでしょうか?」
霞「うーん、斎藤君には珍しくストレートのフォアボールでランナーが出ます!」
武藤「1打席目のホームランを引きずってるんですかね? 斎藤君らしくないのが引っかかりますけど」
村雨「幼馴染のわたくしめが説明しますと斎藤の勘ですね。吉岡と対決するより歩かせた方が良い。何より塁に出たところでこの大差、1点取られたところでどうって事ない
霞「うーん、平凡なサードゴロだったんですが併殺にするのにあせったんでしょうか、嵯峨君が暴投します。しかし俊足の真田君が捕りランナーは1、2塁!」
霞「続く後藤君は空振りの三振! これで後1人!」
武藤「次はピッチャーの長谷川君ですが、代打ですかね」
霞「その様です。ここで長谷川君に代わってピンチヒッター河村君です!」
斎藤(監督の話じゃ足の速い打者だったな)
霞「初球から振って来た。三遊間を抜けるか?」
霞「捕った! 三遊間を抜けるかと思われましたがここで安達君のファインプレーが出ました!」
武藤「ゲームセットですか
霞「ちなみに先ほどのコールドですが、準決勝と決勝はコールドはありませんので9回まで行きます!」
霞「と言う訳で5回裏に突入です!」
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霞「しかし試合もいよいよ9回裏、斎藤君が2アウトまで追い込んでラストバッターとなるか村雨君!」
斎藤(これで終わりだ!)
村雨「残念、負けましたな」
霞「最後はピッチャーフライ、今、斎藤君がキャッチし試合終了! 終わって見れば16対3と赤竜高校が大差で勝利しました!」
霞「そしてもう1つの準決勝ですが今年も斉天大附属が勝つんでしょうね」
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月砂「そう。剣君は残念だったわね」
斎藤「ふーん、けどお前のところ選手層が薄すぎだろう」
吉田「すまん。俺にはもう止められんと言う訳で帰るわ!」
結依「そう言えばハジメと会ってもうじき1年じゃな!」
柚「………………」
結依「興味なさそうじゃな」
柚「観ているだけはつまらないから」
結依「それも季節と共に変わるじゃろう」
柚「だと良いけど」