第25章 打倒!アマチュア最速の怪物!!

−1995年 8月 上旬−
とりあえず決勝で負けたとは言え接戦し赤竜高校は甲子園でも順調に勝ち上がっている。
真田「いや〜今年は好調ですな〜♪」
吉田「うむ。夏は良いですな〜♪」
斎藤「吉田まで?」
中西監督「好調で嬉しいのは分かるがあんまり騒ぐな!」
斎藤「気のせいか俺まで一緒にされてません?」
中西監督「うん? お前も好調で浮かれてるんじゃないのか?」
斎藤「いえ、無失点イニングスが継続しているとかそんな事はあんまり」
相良主将「確かに好投好打好守とここまで絶好調で来てますね」
中西監督「うむ。あんまり強いところと当たらなかった感もあるがそこは大した物だ。しかし今日は別だぞ!」
斎藤「あの河島さんのいる流球高校ですからね」
吉田「MAX153キロは石崎より強力だからな。それに控えもとんでもない変化球投手が居るし」
中西監督「と言う訳でダークホースの流球高校との試合だ。気を引き締めて行け!」
全員「はい!」

−甲子園大会3回戦 阪神甲子園球場−
2年 真田 和希
後攻 先攻
赤竜高校 流球高校
投手力 機動力 投手力 機動力
打撃力 守備力 VS 打撃力 守備力
意外性 経験値 意外性 経験値
総合力 総合力
霧島 進 1年
1年 相川 正人 森原 伸也 3年
2年 斎藤 一 丸目 奏 2年
3年 相良 京一 河島 京太 3年
3年 玖珂 良雄 常葉 命 2年
3年 嵯峨 蓬 末次 一郎 3年
2年 吉田 毅 菊井 将太 3年
3年 安達 正孝 白江 眞 3年
3年 伊沢 樹 橋本 守道 1年

児玉監督「つう訳で相手はもう名門と言っても問題のない赤竜高校だ!」
河島主将「注意するのは相良か」
谷口「他にも玖珂さん、斎藤、相川とやっかいなのもいますが?」
河島主将「相良以外は眼中にないわー!」
谷口「そうですか」
霧島「相変わらず対照的なお二人さんだな」
橋本「うむ。リードするこっちはなかなか大変だ」
常葉「こうやって見るとうちもかなり変わってる人が多いな」
丸目「うむ」
児玉監督「と言う訳で気を引き締めて行こうか!」
全員(やばっ!? 全然聞いてなかった)

放送席
霞「と言う訳でいよいよベスト16の対決です。その1戦目は赤竜高校VS流球高校との試合となりました!」
武藤「ここまで安定した実力で勝ち上がって来ている赤竜高校と危なげない試合をしながら勝ち上がって来ている流球高校ですね」
天野「ハッキリ言うなー」
霞「と遅れながら解説にはお馴染みの武藤小太郎さんと伝説の名選手では毎回上位ランキングに入る元近鉄バファローズの天野成治( あまのせいじ )さんでお送りさせてもらいます。言い忘れましたが私こと白銀霞も居ますのでご注意を!」
武藤(何の注意なんだか?)
天野「ひそひそ(一応話は聞いてたが毎回こうなのか?)」
武藤「ひそひそ(まあ、いつもこんな感じですね。いずれ慣れますよ)」
天野(慣れるのも怖いんだが)
霞「と試合が始まるようです!」

1回表 赤0−0流 斎藤VS河島の投げ合い
斎藤(流球は足の速い選手が多いからな。四死球に注意しないと!)
吉田(うむ。特にこの1、2番は速いらしくて俺じゃ刺せそうもないから頑張ってくれ!)
斎藤(いつもの事ながらむかつくがまあ許してやろう!)
吉田(あ、ありが、とうございます)

霧島(俺より身長が低いがさすがは先輩、気のせいか威圧感も凄いや!?)

ズバ―――ン!
霧島(うげっ!?)

霞「初回から140キロと今日も絶好調なストレートで1番の霧島君を三球三振に抑えます!」
武藤「やっぱり立ち上がりは良い感じですね」
天野「赤竜高校か―――甲子園(  ここ  )で福井の奴と対戦して何年経ったのやら」

ククッ!
森原「クソッ! カーブもやっかいだぜ!?」

霞「続く森原君も三球三振!」
武藤「気のせいか地方大会よりキレてる様な?」
天野「話には聞いてましたけど、バランスは良さそうですね。河島君しだいで投手戦になるかも」

ガキッ!
丸目「打ち上げちまった」

霞「続く丸目君はセカンドフライに倒れます」
武藤「139キロですか―――やっぱりノビてる分打ちにくそうですね」
天野「そう言えば斎藤君のウリは伸びるストレートでしたっけ」
武藤「ええ。ポテンシャルなら甲子園でも一番かも知れませんね」
天野「なるほど、2年にしてもうドラフト候補か」
武藤「今年だけでなく来年のドラフトも楽しみですね」

吉田「やっぱり丸目って奴は1年の頃から3番打ってるだけあって良い振りしてるな」
斎藤「ああ」

1回裏 赤0−0流 斎藤は三者凡退と相変わらず立ち上がりは良し!
河島主将「うらっ!」

ズバ―――ン!
真田「(ガクガク)怖かったよ〜!?」

霞「こちらは相変わらず立ち上がりが悪くストレートのフォアボールでランナーを出します!」
武藤「いつもの事ですが―――しかし初回から152キロですか!?」
天野「しかしここから観てもとんでもなく重そうなボールに見えますね!?(気のせいか音まで聞こえそうだ!?)」

ランナーの真田は軽く三塁まで走り赤竜高校はノーアウト3塁のチャンスを迎える。
橋本「河島さんのクイックと俺の肩じゃ真田さんは到底刺せないな!?」

ズバ―――ン!
相川(これは速さの次元が違うな!?)

霞「1ストライクと入りましたがやはりボール4個でランナーを出します!」
武藤「しかし153キロは甲子園最速ですね」
天野「うーむ。あの速さは捨てがたいがあのコントロールはちょっとな」

河島主将「うっら―――!」

ズバ―――ン!×2
斎藤「何で俺の時は2球連続ストライクに入るんだ!?(っとそれよりこの速さでとんでもなくノビて来るな。こりゃストレートだけなら石崎より打ちにくいぞ!)」

ズバ―――ン!!!
霞「チャンスでしたが斎藤君は三球三振に倒れます!」
武藤「ここで三球三振ですか―――相変わらず良く分からんピッチャーですね?」
天野「いや、得点圏にランナーがいる時はコントロールが良くなるタイプだって聞いた事がある」
武藤「なるほど、言われてみればそうかも」

河島主将「相良か」
相良主将「河島と対戦するのも何年振りだったかな?」

ガキッ!

1−0 初球真ん中ストレートを後ろにファールする。
河島主将「ちっ、初球から当てて来やがった!」
相良主将「くっ、想像以上に重い!」
橋本(さすがに2人共凄い迫力だ!?)

ズバ―――ン!

2−0 低目から高目に浮き上がって来るストレートを空振りし2ストライクと追い込まれる。
相良主将「分かっているつもりだったが想像以上にノビて来るな!?」
河島主将「うっら―――!!!」

ズバ―――ン!!!
相良主将「うっそだろう!?」

霞「最後もストレートで二者連続三振に抑えます!」
武藤「153キロ!? 何度見ても凄いですね!」
天野「ここから観てもスピードガン以上の速さを感じますね。パリーグに来ればマリーンズの望月と並ぶ速球派になるかも知れませんね!」

河島主将「うっら―――!!!」

ズバ―――ン!!!
玖珂「ぬっ!?」

霞「最後も152キロのストレートで三振に仕留めます!」
武藤「打線に定評のある赤竜のクリーンナップを三者三振ですか―――想像以上に凄いですね!?」
天野「これは本当に投手戦ですかね?」

橋本「痛っ、これはきついな」
丸目「大丈夫か?」
橋本「え、ええ。速球派のピッチャーと組むのは慣れてるつもりでしたけど」
丸目「あの人は全国でも随一と言うほどの球威の持ち主だからな。1年のお前には酷かも知れんが頑張れ!」
橋本「はい!」

初回と同様に斎藤は安定振りを見せ河島も四死球を出すがホームには返さず無失点に抑えて行く。

6回表 赤0−0流 斎藤は現在ノーヒットに抑えている!
霞「6回表、流球高校は斎藤君からヒットを打てません!」
武藤「とまあ、斎藤君は好調で相手チームをノーヒットに抑えてますね」
天野「しかしミートの上手い選手が多い流球高校から11奪三振てのは凄いですね」

斎藤(最後はインハイで三振を奪う!)

ズバ―――ン!
橋本「ダメだ。かすりもしない!?」

霞「最後はインコース高めの140キロのストレートで三振を奪います!」
武藤「全然タイミングが合っていませんね。橋本君はバッティングがそれほど得意でもないみたいですね」
天野「何か小椋さんに似てますね」
霞「小椋さん?」
武藤「小椋3兄弟の次男ですね。パリーグのエースとも言われた小椋真介( おぐらしんすけ )さん!」
天野「ええ。どちらかと言えば河島君みたいにムラ気質なんですが斎藤君見たいにノビるストレートとカーブで奪三振を多く奪ってましたね!」
霞「ほうほう」

スト―――ン!
霧島「フォークかよ!?」

霞「といつの間にか続く霧島君も三振!」
武藤「うーむ。変化球のレベルも上がってますかね?」
天野「球種も豊富な分、タイミングが取り辛そうですね」

斎藤(シュッ!)

ズバ―――ン!
森原「ダメだ。タイミングが合わん!?」

霞「続く森原君も三振とこれで…………えっと?」
武藤「6連続三振ですよ」
霞「6連続三振です!」
天野(毎回こうなのかな?)

児玉監督「またしてもノーヒットか」
河島主将「まあまあ、俺が無失点に抑えていれば永久に負けませんよ!」
全員(信用できねえ)
河島主将「いや〜そんなに期待されるとますますやる気がでますよ!」
児玉監督「ぼそっ(空回りして自滅しなきゃ良いんだが)」
全員「ぼそっ(まったく)」

6回裏 赤0−0流 河島も四死球は出しているが150キロ以上を計測中と絶好調!
斎藤「この人とはどうも相性が悪いな」
河島主将「誰にも打たせん!」

ズバ―――ン!
斎藤「げっ!?」

霞「最後は高めのボール球を空振り三振と河島君もこれで13奪三振!」
武藤「そう言えば河島君も奪三振が多かったんですよね。四死球が多くて気付かなかったな」
天野「こうやって観ると2ストライクに追い込んでからはストライクに行きますね!」
武藤「え? そうなんですか?」
天野「ああ。観れば分かる!」

相良主将「お前がボール球を振らされるとは珍しいな?」
斎藤「球威のあるタイプでコントロールが悪いってのは想像以上にやっかいですよ!?」
相良主将「泣き言も珍しい?」
斎藤「むっ! とりあえずバッターとしては相性が悪そうです。と言う訳で頼みます!」
相良主将「ああ」
河島主将「止められる物なら止めて見やがれ!」
相良主将「良いだろう!」

カキ―――ン!!!
河島主将「ぬぉ―――!?」

霞「初球打ち! 大きな当たりだがスタンドまでは届かず2ベースヒットです!」
武藤「しかし151キロのストレートを良くヒットにできますね?」
天野「相良君でしたっけ、彼、私が高校生の時より凄いですね。来年は彼が新人王獲るんじゃないですか?」
武藤「天野さん以上!? そこまでですか?」
天野「ええ。私が高校生の頃はスピードガンなんて物はなかったですが高校生の頃の私は河島君のボールをあそこまでは飛ばせないでしょうね」
武藤「つまりセンスだけ取れば相良君の方が上と!?」

ズバ―――ン!!!
河島主将「ぬぉ―――!?」

霞「おっと河島君がパスボール! ランナーの相良君は3塁に行きます!」
武藤「うわっ、また調子が狂ったかな?」
天野「しかしここまでムラ気質なピッチャーも珍しいですね。センスだけなら宗介よりも上だと思うんだがな?」

河島主将「橋本! そのくらいジャンプして捕れえ!」
橋本「無茶言わないで下さいよ。はるか頭上のボールなんて捕れませんよ!?っとそれよりもっとリラックスして投げて下さい!」
河島主将「おのれー!」
橋本「ダメだ。全然聞いてくれない!?」

ガキッ!
玖珂「まずい!?」

ドテッ!
河島主将「っ!?」

霞「平凡なピッチャーゴロかと思いきや河島君がいきなり転んだ!」
武藤「何かスパイクのヒモを踏ん付けた見たいですね」
天野「お気の毒に―――まあ、ランナーがホームに返れなかっただけまだマシな方か」

児玉監督「この大バカが、タイムだ、ピッチャー交代だ!」
河島主将「お怒りはごもっともですがもう一度我輩にチャンスを!」
全員(我輩?)
橋本「ちょっと待って下さい。確かにランナーが3塁であんなドジ踏む河島さんにも問題はありますがこの場面を抑えるのは―――あっ、交代に賛成します!」
河島主将「そんなーキャプテンなのにー最後の夏なのに!?」
児玉監督「勘違いするな。別にずっとこのままじゃない。ランナーが3塁にいる場面でお前が信用できないだけだ!」
河島主将(グサッ!)
児玉監督「お前はファーストだ。と言う訳で菊井は悪いが」
菊井「河島と交代と言うのがむかつきますがここを抑えられるのは谷口だけですし仕方ありませんね」
河島主将「つうか何で君達が僕をキャプテンにしたのに?」
3年生「いや、最悪廃部になりそうだし誰もやりたくなかっただけだし(まあ、こいつが率先して動いたおかげでまた甲子園に来れたから感謝はしてるけど、言うと調子に乗るしなー)」
児玉監督「と言う訳で頼むぞ!」
谷口「はい!」

霞「それではピッチャーは2年生の谷口君に代わりました。先ほど河島君のエラーで玖珂君が1塁に出塁し1アウト1、3塁のピンチをどう抑えられるか」
武藤「つうかここでの1点はもう覚悟した方が良いですね」
天野「そうですね。先ほどの河島君は1点にこだわった為にエラーした感じでしたし」

谷口(1点も渡さない。それと1塁方向には打たせない様にしとこう!)
河島主将「打たせて行こう!」
谷口(…………もう立ち直ったのか? っとバッターに集中しないと!)

ククッ!
嵯峨「こっちに行ったりあっちに行ったりで打てるか!?」

霞「いきなり嵯峨君をスライダー、シュート、カーブで三球三振に抑えます!」
武藤「いきなり全部の球種を見せて来ましたね。1点もやらない方向で来ましたか」
天野「谷口君ですか変化球は一級品ですね。それに河島君のストレートに慣れている赤竜では打つのは難しそうですね!」

吉田「天狼との練習試合を思い出すな。しかし打ちにくさはあの時以上か―――このチャンス何としても!」
谷口(わざわざ変化球に目を慣らされるのもバカバカしい3球勝負だ!)

ククッ!
吉田「げっ、シュートかよ!?」

霞「最後はインコースのシュートを空振り三振!」
武藤「無失点ですませたか大した物ですね」
天野「良い控えピッチャーがいるとは聞きましたがここまでとは思いませんでしたね」

相良主将「やはりヒットでは届かんか」
玖珂「やれやれ、またやっかいなのが増えたな」

7回表 赤0−0流 交代した谷口が好投し投手戦が続く!
霞「いよいよ試合も7回ですが投手戦が続いております!」
武藤「このまま延長になると河島君と谷口君がいる流球高校が有利ですかね?」
天野「ですね。しかしバッティングは赤竜高校の方が上ですし斎藤君のスタミナ辺りが勝負のカギになりますか」

吉田(何だかんだ言ってノーヒットに抑えてるから言わないけど今日は球が走っていてもボールが多いのが気になるな)
斎藤(クリーンナップからかまずは先頭の丸目を抑えないと!)
丸目(さすがに3打席目だしそろそろ打たないとな。全球ストレート狙いだ!)

カキ―――ン! パシッ!
斎藤&吉田「危ねえ!?」

霞「2球目のストレートを打って1、2塁間を抜けるかと思いましたがここで相川君のファインプレイが出ました!」
武藤「やっぱり守備は上手いですね。打球勘が良いですよ!」
天野「ポジションは違いますが直人に似てますね。小技じゃ直人より上ですかね」

相川「ほっ、何とか入ってくれたか」
丸目「抜けると思ったんだがな」
河島主将「うっら―――!」

ブ―――ン!
霞「期待の河島君?でしたがここは空振り三振に倒れます!」
武藤「力み過ぎですね」
天野「あれじゃ当たっても内野ゴロだな」

常葉「キャプテンってどうしたんですか?」
河島主将「いやー色んな人に好き勝手言われてる感じがして」
常葉(あのスイングじゃそう言われても仕方ないかな)

斎藤(この常葉はやっかいだな。滝沢と同じ様にコースを狙って打ち取るか!)

ガキッ!
常葉「ライトフライか」

霞「期待の常葉君でしたが追い込まれてからボール球に手を出して3アウトチェンジとなりました!」
武藤「追い込まれると変化の大きいカーブについ手が出てしまうんですよね」
天野「そうですかね。私は追い込まれるとむしろ落ち着くんですが」
武藤「すみません。私は天野さんほど大物ではないので」
天野「別に泣かんでも?」

7回裏 赤0−0流 7回も3人と斎藤は絶好調でノーヒットノーラン中!
谷口(下位打線か、スタミナは気にしなくても良いし全力で行くか!)

ククッ!
安達「ダメだ。反応できん!?」

霞「先頭の安達君をスライダーで三振と変化球は本当に凄いです!」
武藤「コントロールもですよ。昨年の夏とは比べ物にならない成長をした様な?」
天野「ま、高校生は伸びる時は伸びるって感じですから」
武藤「身長みたいな物か…………ん? 何か違う気も?」

ズバ―――ン!
伊沢「へ?」

霞「伊沢君にはストレートで見逃し三振にします!」
武藤「ストレートは137キロか―――高校生にしては速球派ですけど、近年の怪物を観てると見劣りしますね」
天野「しかしMAXで140キロを計測したと言いますから変化球投手としては大した物ですよ!」

ククッ!
真田「右行ったり左行ったりこんなの打てるか―――!?」

霞「と言う訳で真田君もボール球のカーブを空振り三振!」
武藤「これで5連続奪三振か―――河島君の後で打ちにくそうとは言え凄いですね!」
天野「確かにこのリレーはやっかいそうですね」

中西監督「斎藤がノーヒットに抑えてるとは言えまずいな」
吉田「ですね」
玖珂「次の打席じゃミートの上手い相川ですから大丈夫ですよ!」
中西監督「しかし相川とは言え1打席じゃ打つのは難しいだろう?」
玖珂「次は斎藤、相良です!」
中西監督「なるほど、可能性はあるか」

8回表 赤0−0流 谷口も負けずと5連続奪三振とアピールする!
霞「惜しくも入らずこの回、先頭の末次君を歩かせます!」
武藤「気のせいか球放れが早くなった様な?」
天野「次のバッターで分かりますよ」

斎藤(おかしいな!)
吉田(1点勝負の前にここまで来たらノーヒットノーランさせてやりたいんだがな)
谷口(バッティングは自信がないんだが)

カキ―――ン!
斎藤&吉田「なっ!?」

霞「ここで谷口君がライト前にヒットを打ちます。ランナーは1、2塁となりました!」
武藤「128キロ―――今のは失投ですね。これでノーヒットノーランはなくなりましたか」
天野「ですね。しかしこの場面でノーヒットノーランを引きずってたら打たれますよ!」

吉田「斎藤、落ち着けここで引きずったらって?」
斎藤(ふう、記録を意識したらこれか俺もまだまだだな。次は白江さんかパワーがあるから低めに集めてボール球を振らせるか!)
吉田「斎藤?」
斎藤「後続は叩き潰すぞ!」
吉田「え? あ、ああ」

ズバ―――ン!
白江「ぐう、入ってるのか!?」

霞「最後はアウトコース低めのストレートを見逃し三振!」
武藤「140キロって何でいきなり変わるんだ!?」
天野「気のせいではないですね。コントロールも良くなってますね。ピンチで逆に落ち着いたんでしょうか?」

吉田(危ねえ。最後は高めを振らすんじゃなかったのかよ!?)
斎藤(すまんすまん。急にコース変えちまった!)
吉田(ランナーいるんだぞ。危うく後逸するところだった)

ガキッ!
橋本「ううっ!?」

霞「送りバント失敗! しかし末次君と谷口君は戻っています!」
武藤「想像以上にノビて来た為に失敗しちゃいましたね」
天野「本当にいきなり変わりましたね!?」

斎藤(とどめ!)

ズバ―――ン!
霧島「………………」

霞「最後は142キロのストレートで空振り三振!」
武藤「ここで自己最速か!?」
天野「と、とりあえずポテンシャルは計り知れないって事は分かりました」

児玉監督「無死1、2塁で無得点…………」
橋本「すみません」霧島「申し訳ないです」
谷口「140キロを連発でコースも付いてたしあれは打てなくても仕方ないですよ」
児玉監督「まあな。しかし打たないと勝てないんだ」
河島主将「大丈夫ですよ。状況によっては俺がいますから!」
全員(だから不安なんだよ)

真田「ふっははは、さすがは斎藤、これで僕達の勝ちは決まったね!」
中西監督「喜んでるところ悪いが延長になると赤竜高校(  こっち  )が不利だ」
真田「ほへ?」
吉田「あっちは谷口と河島さんがいるからな。山中さんは今日絶不調っぽいし」
山中「すまん!」
吉田「い、いえ。別に責めてる訳じゃ」
真田「あっ、吉田が先輩を泣かした!」
嵯峨「おのれえ。運動部に取って先輩は神に等しいと言うのに!」
3年生(さすがにそれはどうかと思うが?)
玖珂「とりあえず死ね!」
嵯峨「へ?(ボカッドスッグカッ!)うっぎゃ―――!?」
相良主将「アッパーにキックに最後はサマーソルトか」
中西監督「お前らテレビの前だぞ。しかも全国中継!」
全員「まずいぞ。このままじゃ乱闘で負けになってしまう!?」
斎藤「味方同士でも乱闘と言うのかな?」
相川「ツッコムところはそこなんですか?」
橋本「その前に早くボックスに立って下さい。このままじゃ試合が進みません」
相川「視線が痛いと言うか誰もいないし!?」
全員「頑張れ相川!」
相川「みんな酷いや―――キャプテンや監督もちゃっかりと戻ってるし」

8回裏 赤0−0流 ついにノーヒットではなくなったがそれでも斎藤は好調!
霞「何か長くて審判さん方は怒ってますが観客席では大喝采!」
武藤「最近のファンは変わってますね?」
天野「この回は1年生ルーキーの相川君からですね。変化球には強いバッターと言われてますから興味深い対戦となりそうです!」
武藤「マジメですね」
天野「仕事ですから」

谷口(初球はボールからストライクになるカーブからか)
相川(ストレートはないな。変化球―――どれで来るか?)

カキ―――ン! バンッ!
谷口(ガクッ!?)

霞「カーブを芯でとらえてピッチャーを強襲!」

相川「あっ!?」
斎藤「パニクってる場合か、走れ!」
谷口「うっ!(シュッ!)」
相川「あっ!?」

霞「うずくまりながらもファーストへボールを投げてアウトにします!」
武藤「良い根性してますね。しかしもう投げれそうもないですね」
霞「ええ。当たったところは左腕の様ですね。ひょっとすると折れてるかも知れないとの事です。当然ながらピッチャー交代で河島君がマウンドに行きます」
天野「流球高校に取っては痛いアクシデントですね」

谷口「ぐっ、まだ投げれます!」
児玉監督「これで投げられる訳ないだろう。ケガして悔しいのは分かるがお前はまだ2年だ次の大会がある!」
谷口「しかし!」
児玉監督「言ってもムダかも知れんが医務室でゆっくり休め良いな!」

谷口は渋々頷いてマウンドを去る。
谷口「…………はい」
相川「あっ!?」
中西監督「あれは事故だ。そう気にするな」
相川「わ、分かってるんですけど……」
中西監督「………………」

河島主将「絶対打たさん!」

ガキッ!
斎藤「芯で当てても手が痺れる!?」

霞「152キロのストレートでキャッチャーフライに抑えます!」
武藤「当てれるだけ大した物ですよ。しかし河島君が復活しましたか、谷口君の欠場で赤竜が有利と見ましたがまだ分かりませんね!」
天野「ここぞと言う時はやっぱり凄い力を出しますね!」

河島主将(これで終わりだ!)

グイ―――ン!!!
相良主将(真芯でとらえて腕が折れてでも振り抜く!)

河島と相良の最後の対決、結果は河島が想像したミットの音でなくバットに当たった快音が会場中に響き渡る!

カキ―――ン!!!
河島主将「そ、そんな!?」

霞「入った! 追い込まれてからの一振りで勝ち越しです!」
武藤「前の打席と同様150キロを打ちますか―――しかし最速153キロのストレートをバックスクリーンに叩き込むとは!?」
天野「恐ろしいほどのポテンシャル、本物の怪物ですね!」

河島主将「まだだ!」

ズバ―――ン!!!
玖珂「ちっ!?」

霞「さすがの玖珂君も最速153キロに触れる事はできません!」
武藤「ここで1点が入りましたか―――さすがに決まりましたかね」
天野「ですね」

河島主将「くそっ! ちくしょう!」
児玉監督「落ち着かんか!」
河島主将「すみません」
児玉監督「まずは良くあの場面を1点で抑えた!」
河島主将「そんな!?」
児玉監督「あれはお前の渾身のボールだった。打った相手を誉めるしかない。だがあそこでクサらずに良く投げた!」
河島主将「けど」
児玉監督「1点差なら1チャンスだ。1回あれば最低でも同点にはできる。お前の一振りで同点でなく逆転して来い!」
河島主将「は、はい! お前ら谷口の分まで頑張るぞ!」
全員「お、おう!」

中西監督「こっちも負けられん。ようやく1点が入ったんだ。死んでも守り抜け!」
全員「はい!」
相川「………………」
福西「引きずる気持ちは分からなくもないけど、野球やってればこう言う事故はどうしてもあるんだよ!」
相川「ああ。分かってはいるんだ、けど」
福西「言っとくけど交代はしないし監督にもさせないからな。ベンチの『俺』から見てケガもしてないのに途中で抜けるなんてむかつく事この上ないからな!」
相川「ああ。そうだな(後1回、死ぬ気で守り抜かないと!)」

9回表 赤1−0流 ようやく1点を手に入れた赤竜高校、このまま勝利するのか?
斎藤「ここで終わらせる!」

ズバ―――ン!
森原「うっ!?」

霞「140キロのストレートがズバリと決まり見逃しの三振!」
武藤「やっぱり打つのは難しそうですね」
天野「しかし次は3番の丸目君ですし期待できるかも知れません」

斎藤「次は丸目か」

ガキッ!
丸目「ホッ、何とか繋がったか」

霞「ショート後方の頭を抜けてヒットになります!」
武藤「何とかヒットにはなりましたけど」
天野「しかし完全に斎藤君のペースって感じですね!」

カキ―――ン!!
斎藤&吉田「!?」
河島主将「ちっ!」

霞「弾丸ライナーでスタンドに入りますがファールです!」
武藤「初球からとんでもない当たりですね!?」
天野「一瞬で試合が引っくり返ったかと思った!?」

斎藤(今のボール悪かったか?)
吉田(コース、スピード共に抜群だったけど)
斎藤(だよな。だとすると変化球で打ち気を逸らすか)

ククッ!
霞「2球目はスライダーを空振りし2ストラクイクとなります!」
武藤「変化球には合ってませんね。次も変化球で外して来るでしょうか?」
天野「そうですね。私だったら変化球待ちで勝負に来ると予測しますが!」

河島主将(恐らくは3球勝負―――カーブで来るはずだ!)
斎藤(3球勝負だ。これで行くぞ!)
吉田(ちょっと待て外さずにかよ。まあ、斎藤がそう言うなら信じるしかないか!)

グイ―――ン!
河島主将「ちっ! ストレートか!」

カキ―――ン!
斎藤「むっ! それでも当てるか!」
相川「行かすか!」

タッ! パシッ!
丸目「なっ!?」

シュッ! パシッ!
玖珂「………………」

霞「まさかのダブルプレー! 試合終了! 1対0で赤竜高校が逃げ切りました!」
武藤「最後は河島君らしくない上手いバッティングを見せましたが裏目になりましたか」
天野「しかし1点で抑えた河島君を責める事はできませんね!」
霞&武藤「ですね!!」

全員「やっほー!」
中西監督「嬉しいのは分かるが相手の事も少しは考えてやれ」
相川「すみません。ちょっと行って来ます!(タッタッタッ!)」
真田「大丈夫かな?」
吉田「勝利後なのに珍しく普通だな」
真田「心配なんだよ」
吉田「そんな世界が滅びてもボケてると思ってた真田がシリアスになるなんて!?」
斎藤「いや、そこまで驚かなくても!?」
福西「つうか世界が滅びたらボケも何もない様な?」
斎藤「つうか福西は心配してないんだな?」
福西「ま、多分大丈夫でしょう。谷口さんってクールに見えるし」
斎藤「ケガしても投げ様としてたしどっちかと言えば内面は熱く見えたが」
福西「ま、どんな結果になっても僕がいますからあいつなら大丈夫ですよ!」
吉田「凄い信頼感と言えば良いんだろうか?」
斎藤「自分で言ってるからな?」

病院
相川(おろおろ)
谷口「そこでウロウロしてるのは相川か何をやってるんだってケガが気になってに決まってるか」
相川「は、はい。そのこの度はすみませんでした!」
谷口「そうだな。お前のおかげで俺は降板チームは敗北と散々だったな」
相川「………………」
谷口「くっくっく」
相川「?」
谷口「すまんすまん。ちょっとからかい過ぎたな」
相川「?」
谷口「意外に察しの悪い奴だな」
相川「えっと?」
谷口「だからからかっただけだって」
相川「い、意外ですね」
谷口「らしいな。どうも俺マジメに見えるらしいからとりあえずヒビが入っただけだから安心しろって」
相川「ヒビが入ってたら十分大ケガだと思うんですが」
谷口「かもな。ま、利き腕じゃないし次の大会には間に合う程度だから気にしないさ。慰謝料もいらんぞ!」
相川「しかし!」
谷口「意外と頑固だな。それなら全国制覇しろ!」
相川「全国制覇?」
谷口「意味が分からんか簡単に言えば甲子園で最後まで勝ち上がれ」
相川「意味は分かります! それにしても何で全国制覇なんですか?」
谷口「いや、何となく自信がないなら今年じゃなくても来年でも再来年でも良いぞ!」
相川「つまり僕が高校生の間に一度でも全国制覇すれば許してくれると」
谷口「ん? ああ。そうだな(最初から特に気にしてないんだがこう言うタイプはこうでも言わないと引き下がらんからな)」
相川「分かりました!」
谷口「(こう素直なのもつまらんな)それと全国制覇した時に感想文も書いて提出する事!」
相川「か、感想文もですか!? 分かりました。頑張ります!」
谷口「おう。頑張れよ!」

ドラスポ
霞「と流球高校も頑張りましたが1点届かずに甲子園を去る事になりました。しかし好投した河島君や無念ながらもケガで降板した谷口君もスカウトには猛アピールした感じです!」
武藤「まあ、確かに2人共高校生離れした力を見せましたけど、そう言えば明鏡大附属の1年生投手はどうなったんですか?」
霞「御堂君ですね。残念ながらも2対1で雪影高校に敗北しましたね。もう1人の1年生投手の沢田君も天狼学園に敗北しました」
武藤「明鏡大附属と黒龍高校は敗北ですか、ところでベスト8に残ったのは?」
霞「残念ながら放送時間もそろそろ」
武藤「まだありますっての?」
霞「正直言うのが面倒なんですよね」
武藤「とてもアナウンサーの言葉とは思えませんね」
霞「とりあえず高校野球は歴史上最高の暑さを見せてる感じです。実際気温も高いんですよね。大変ですよ!」
武藤(クーラーが効いてるんだけどな)
霞「ちなみにプロ野球は変わらずにスワローズとブルーウェーブが首位ですね。メジャーではお兄さんが頑張っています!」
武藤「それだけですか?」
霞「ええ。まあ、明日は赤竜高校と天狼高校との試合です。注目の一戦となります!」

宿舎
中西監督「と言う訳で明日は天狼との試合だ。練習試合で負けた借りを返せ!」
相良主将「ですね」
真田「しかし創部1年目で良くベスト8(  ここ  )まで来れるもんだね?」
吉田「まったくだ。やっぱり有望選手が多いからな」
斎藤「堺と会えるな」

福西「それで感想文書く練習してんのか」
相川「まあな」
福西「あっははは、それ変じゃん?」
相川「分かってるけどそう言われたんだから仕方ないだろう」
福西「つうか感想文書く練習ってのも変だし?」
相川「理数は得意だけど、こう言うのは苦手なんだよ。しかも謝罪をかねてるんだからマジメにやらないと!」
福西「はあ、おかしかった。しかし谷口さんって意外と面白い人だな」
相川「面白いと言うか意外って感じだな」
福西「今度は僕も一緒に連れてってね!」
相川「ま、構わないけど」

中西監督「それであいつらは何を騒いどるんだ?」
全員「さあ?」

こうして赤竜高校は準々決勝まで勝ち上がった。とは言え部員は相変わらずマイペースだった。2年目の夏、斎藤と風祭との会合はあるのか?