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とりあえず柚が目覚めたのは病院の中、最初は困惑していたが記憶を思い戻し自分の状況を把握する。
柚「（そうか、結局私は倒れたんだ。やっぱり意地だけじゃプロには勝てなかったのか）ん？」
風祭「Ｚｚｚ」そこでは柚の兄の風祭が手を握ったまま眠っていた。
柚「そうか、ずっといてくれたんだ。しかしいつまでも乙女の手を握ってるな。このバカ兄貴！」と言い放ち柚が風祭を殴ろうとしたが柚は思い直した様にやめる。
柚「ふう、看病させて殴る訳にも行かないか」起きたのは深夜とまた微妙だがとりあえずこのまま風祭が起きるのを待とうとする。
風祭「うーん、そうかいつの間にか寝てて」柚「ようやく起きたか？」
風祭「って起きてたのかよ！」柚（コクッ！）風祭「起きてたんなら俺も起こせっての何で妹に寝顔を見られなきゃならんのだか？」柚「起こそうと思ったけど、あんまり気持ち良さそうに寝てたから勘弁してやった」風祭「寝顔をもろに見られた訳ね。それよりお前、状況が分かってないだろう？」柚「それくらい分かってる。私は試合の途中で倒れて病院に運ばれた。起きたら何故かバカ兄貴が私の手を握っていた」風祭「ああ、でも倒れてからお前、まる３日近く寝てたんだぜそれに手を握ったのはお前の方だ。寝る前は握ってなかったんだからな」柚「３日も？」風祭「ああ、父さんや母さんも倒れた日に心配して来てくれたんだけど、２人共働いているからな。俺が言い聞かして何とか帰ってもらったと言っても仕事終わって夜にこっち来るけどな。ったく近いとは言えあれじゃあまり眠れんだろうに」柚「そう…………心配かけたんだ」風祭「まあ気にするな。立場が変わればお前だって同じ様に飛んで行くだろう」柚「そうだけど」風祭「それより聞く事はもうないのかよ？」柚「あっ！ ３日間寝てたと言ったけど、トイレとかは？」風祭「そんなもんは看護婦さんや母さんに任せたに決まってんだろう。確かにそれも大事な事だけどもうないのかよ！」柚「？」風祭「お前はいったい何の為に倒れるまで頑張ったんだ？」柚「公式戦に出場する為？」風祭「とりあえずこの３日間、全国に凄まじい反響があったぞ！」柚「どう言う事？」風祭「プロ相手にぶっ倒れたとは言え最後まで諦めない不屈の根性を見せたんだ。あの試合、観客はいなかったとは言えテレビでも十分過ぎるほど熱くなった人がいたらしい。視聴率も記録ってほどではないが凄かったらしいってそれはどうでもいいか、とにかくお前見たいな野球少女でもこのまま行けば公式戦に出れるかも知れない」柚「……それは良かった」風祭「やっぱりな。それじゃ出場資格を手に入れても出場する気は全然ないな」柚（コクッ！）柚のあっさりなセリフもだが風祭も熱くならずたんたんと話している。元々こう言う展開になると予測していた風祭はさらに言葉を続ける。
風祭「まあ勝ったら出場できる約束だったもんな。負けて出場するのはプライドがジャマしてできないよな」柚「バカ兄貴も同じなはず！」風祭「確かにな。けど、お前の場合は出場するべきなんだ！」柚「？」風祭「お前は敗戦投手とは言えヒーローになっちまった。お前に憧れて高校でも女性選手が増えて行くだろう。お前が出場しなきゃどうなるかな？」柚「私には関係ない。私は自分の為にやっただけ！」風祭「ま、お前の言い分は正しいな。だけど野球選手ってのは良いプレーを見せてみんなに夢を観させてやるんだ」柚「私はプロじゃない！」風祭「まあ最後まで聞けプライドを捨てろとは言わない。ただ、お前が試合に出場するだけでどれだけの野球少女が勇気付けられるかお前なら分かるだろう」柚「分かる……良く分かる。ごめん。即断はできそうもない。ちょっと考えさせて」風祭「まだ女子も出場できると決まった訳じゃないしな。時間はあるしゆっくり考えろ」柚（でもバカ兄貴の話からまず間違いなく公式戦に出れるようになるとバカ兄貴は確信してる。試合に出れなくても練習は続けるつもりだけど私はどうするべきなんだろうか？）風祭「そうそう。どうせしばらくは運動禁止で暇だろうからこれでも読んどけ」そう言って風祭は柚に手紙を渡す。
柚「なにこれ？」風祭「手紙」柚「見れば分かる。何の手紙だと聞いている？」風祭「誰かさんへのファンレター、ラブレターもあったがそっちは俺の独断で処分した」柚「私への手紙を勝手に読んで処分するのはどうかと思うけど、それはいい。ファンレターってひょっとして？」風祭「お前の考えてる通り野球を頑張ってる少女達、まあ男性からもラブじゃないのもあったから入ってるけど」柚「そう」口調は素っ気ないが手紙の中身を気にしてかジ〜っと手紙を見つめている。
風祭「ふう、仕方ない。俺はちょっと売店行って来るけど何か欲しいもんはあるか？」柚「ＣＤプレーヤー……ゲーム機……ゲームソフト……ビデオデッキ……」風祭「もういい。とりあえず昼まで時間を潰して来る。看護婦さんに頼んで昼までは誰も入らない様にするから」柚「とっとと行け！」
風祭「はいはい（しかし手紙に負けるとはへこむな）」風祭が出た後、柚はゆっくりと手紙を読んで行く。手紙を読み終えた後は……
柚（私と同じ様に頑張っている子達に夢を見させた。諦めたら終わり諦めなきゃ続けられるかも知れない。いずれはプロにも……バカ兄貴に踊らされた。いやこれは自分で決めた事か、とにかく腹は決めた。後は……）
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真田「それでは柚ちゃんの退院＋公式戦出場資格おめでとうパーティの開始でい！」全員「おう！」と言う訳であの後ぶっ倒れるまで投げ続けた根性が認められ女子でも公式戦に出場できるようになった。
柚「………………」
斎藤主将「何か複雑そうだな？」柚「うん。これで未来の女の子達も出場できるのは良い事だと思うけど」斎藤主将「結局、自分は抑えれた訳でもないし勝った訳でもないか」柚「うん。それに完投もできなかった」
吉田「まあ、無理もないよ。ピッチャーとして生まれて初めての先発でプロ相手に完投なんて無茶だ。元々無茶な条件だったんだ」
中西監督「上の連中もまさか１年生の女の子がこんな条件を受けるとは思ってなかったってのが本音だろうからな。ハハハ、このまま行けば次のキャプテンは風祭かもな」真田「初の女性選手に女性キャプテンか、来年の秋は凄くなりそうですな」柚「ふう」斎藤主将「それで出場するつもりはあるのか？」斎藤も風祭ほどではないにしろ柚の性格は把握しているので心情は理解していた。
柚「ある」斎藤主将「そうか、それならいい」柚「うん」
月砂「はい。料理追加よ！」
結依「こっちもじゃ！」全員「おおう。美味そう♪」斎藤主将「そう言えば風祭は来ないのか？」柚「休んだ分、実戦の勘が狂うのが嫌だからって言ってたから今頃、野球部で練習してるんじゃないかと思う」
斎藤主将「人の事言えないけど、あいつも練習の虫なんだな」柚「練習は嘘を付かないから、それに頑張れば頑張るほど結果が出るのが嬉しいからやめたくてもやめれないとも言っていた」斎藤主将「まるで敗北を知らない奴のセリフだな？」柚「チームの勝敗はともかく、個人での勝負は負けたと思った事はないんじゃないかな」斎藤主将「なるほど、全国制覇する為にはその怪物を倒さなきゃならないのか」柚「私も頑張る。あのバカ兄貴を抑えるのが私の夢だから」斎藤主将「そうだな。お互いに目指してる物は同じらしいし一緒に頑張ろうな！」柚「うん！」あの試合で得た物は多いらしく今日は柚も珍しく口数が多く斎藤達と良く話して寝付いたらしい。
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全員「しかしすげえな」柚様〜頑張って〜♪ 頑張れ〜柚さん〜♪
グラウンドでは凄まじいほど応援の人達がいっぱいな日で野球部は過ごして行く。
柚「あいつらうざい！」斎藤主将「気持ちは分からんでもないが、まだ関東大会もあるんだから暴力行為はやめてくれ！」
真田「しかし男性より女性のファンの方が多いね。ほとんどは芸能人目当てみたいでうざったいけど」吉田「小さい子もいるけどな」柚「だから追い返せない」相川「しかしこのままだと練習にも問題が出て来るんじゃないですか」中西監督「そっちは手を打って置いた」斎藤主将「本当に大丈夫なんですか？」中西監督「多分なしかしこう言う二次災害を生むとは思わなかったな？」福西「そうですね。テレビの効果って凄いんですね。相良さんも人気がありましたけど、それを圧倒的に上回ってますよ！」中西監督「まあこう言う熱ってのは多分冷めやすいもんだ。それにもうすぐ日本シリーズで出なきゃならんし帰って来る頃には少しは冷めてる事を期待しよう」柚「うざいのはとっとと消えて欲しい」全員「まあまあ落ち着いて」柚（はあ、夢を与えるってのも大変）子供達の夢を壊さない為にも必死で頑張る柚だったが慣れない行為は当たり前だが疲れるらしい。
中西監督「シリーズ中は練習量が少なくなるがここまで猛練習で来てるしちょうど良いと思おう。ただしただの観戦ではなく参考になりそうなプレーは物にする様に」全員「まあ、遊び半分で行く訳じゃないですもんね」斎藤主将「柚や俺はピッチャーを観ると良いな。野手のみんなは自分と似たタイプを観ると良いんじゃないか」真田「僕は久住さんだね。あの人、今年の盗塁王だし」吉田「普通、２年連続首位打者のバッティングを参考にしないか？」真田「なるほど、それは相川君に任せる！」
相川「僕は日暮さんを参考にするつもりです。あの非力さで３割打った技術はぜひ吸収したいですから」福西「あの人も５年連続で３割と凄いよな」吉田「全くだ。俺は轟さんだな。チャンスに強いあのバッティングはぜひ吸収したい」
篠原「俺もですね。打点王を獲ったあのバッティングの秘訣をぜひ知りたい」
木下「それじゃ俺は青木さんだな。チーム最多の３１本の爆発力を吸収するぞ」真田「それで斎藤達は？」斎藤主将「やっぱりチケットくれた奥森さんを観るかな？」柚「と言うよりみんなブルーウェーブばっかりスワローズがいない」全員「あっ！？」真田「いや、スワローズを忘れてたね。けど、あっちってピッチャーが凄いじゃん」斎藤主将「そうだな。生でシリーズのライアンさんが観れるしライアンさんに集中するか」柚「私は生井投手、球種が１つじゃ心もとないし」真田「いや、ピッチャー組はスワローズの応援か」斎藤主将「いや、別に応援する訳じゃないぞ」真田「大丈夫、奥森さんって良い人だから理由を話せば別に怒らないって」斎藤主将「だから応援はしないっての」こうして赤竜高校は関東大会を目指して頑張って行く。
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霞「いよいよ日本シリーズも始まります。まあ世間では高校野球の女子選手参加とかでアマチュア関連に感心が多いんですが、とにかくプロの日本一を決める試合も始まります！」
武藤「プロも久住ＶＳライアンで盛り上がってますよ！」霞「そうですね。ライアン選手は日本初の１６０キロを記録と話題性、人気とスワローズ陣では独り占めしてますね」武藤「久住もですよ。３割３０本３０盗塁と今年は長打力も見せましたからね。あれほど秀でた選手ってのは私が現役時代の頃にも見た事はないですね」霞「うんうん。やはり凄い人だったんですね。ま、それはともかくいよいよ日本シリーズも始まりますのでプロ選手もアマチュアに負けないくらい頑張って下さい」
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月砂「日本シリーズって最初は神戸だっけ？」斎藤主将「うん。奥森さんからもうチケット送られて来たしね」真田「チケットと言えば監督の分頼むの忘れてたんだよね？」斎藤主将「うっ！？」真田「まあ良いけどね」吉田「だったら言うなよ。しかし神戸か遠いな」真田「まあまあ、新幹線ならすぐだよ。ゲームもたくさん持っていかないとね」吉田「修学旅行気分だな」真田「電車の中じゃトレーニングしても迷惑になるだろうからね。携帯ゲームとかカードとか色々持って行こうと、そうそうコンビニにカード麻雀とか売ってたけど麻雀打てる人いる？」斎藤主将「麻雀と言うかゲームってあんまり知らないし？」吉田「俺も麻雀の役とか点数の付け方は知らんな。相良さん達は知ってるみたいだけどな」真田「実は僕も良く知らないんだよね。ま、一応持って行くか」柚「遊び気分」結依「まあ、あれくらいが丁度良いのかも知れないの」月砂「そうね。あの試合の前は和君でもプレッシャーを感じてたみたいだし」柚「全然気付かなかった」月砂「ま、気付かない様にしてたからね。ああ見えてもあの子も結構大人なのよ」結依「とにかく啓示には怒られるじゃろうが試合も終わったし気分転換して来い」柚（コクッ！）こうして柚の公式戦参加も決まり試合も終わった。柚の心中はまだ複雑だが時は進み斎藤達は日本シリーズを観戦と旅立つ！