第35章 春の終わり(1)〜譲らない死闘〜

−1996年 3月−
斎藤も甲子園大会4回出場と怪物へと成長して行きそして1回戦最後の試合が始まる。
真田「真打は最後に登場ってね」
吉田「しかも相手は夏の大会で活躍した御堂のいる明鏡大附属か」
真田「活躍と言ってもベスト8には残れなかったけどね」
吉田「笑顔で言ったら相手の人が怒ると思うぞ」
真田「ふむ。雪影高校相手に1点差で負けたんだっけ?」
吉田「ああ。滝沢の2ランで2対1で逃げ切ったって話だ」
斎藤主将「バッティングの良い雪影高校相手に接戦だからな。守備力や投手力が高いんだろうな」
吉田「そうらしい。御堂もだがキャッチャーでキャプテンの福元や4番の釘宮も要注意だな」
斎藤主将「ん?」
吉田「どうした?」
斎藤主将「いや何でもない」
真田「ゲームだとそう言うセリフが出る時は何かあるけどね」
吉田「いやゲームじゃないし?」
真田「試合のゲームと」
吉田「オチ読めたからいいし」
真田「冷たいなところで結局なんなの?」
斎藤主将「いや、知り合いと同じ名字だったから少し気になっただけだから」
真田「ふむ。それは微妙だね。吉田、フルネームで」
吉田「えっと、さっき言ってたのは御堂貴人、福元丸太、釘宮昇だったかな?」
斎藤主将「釘宮昇って聞き覚えがあるな」
真田「へえ知り合いなの」
斎藤主将「…………思い出した。昔近所に住んでて一緒に野球やってた奴だと思う?」
吉田「何故に疑問形?」
斎藤主将「いや、同性同名の別人かなと思って」
吉田「なるほど」
真田「ちっちっち! あまいねお二人さん、斎藤は『何でもない』とフラグをたてた。こう言う場合は当たりと決まってるもんだよ!」
吉田「だからゲームじゃないっての」
真田「ちぇっ、まあ確かめたいなら本人に直接確認すれば良い話だしね」
斎藤主将「……そうだな」
真田「何か気乗りしない感じだね」
斎藤主将「ガキの頃の話だしな。向こうも覚えてるか分からないし」
真田「元カノと会う感じかな?」
吉田「全然違うと思うぞ」
真田「気まずいと言う感覚では一緒だと思いますが?」
斎藤主将「まっ、ガキの頃のノリで会えるかどうかは分からんけどグラウンドでは嫌でも顔を会わせる事だしあんまり意識しない事にするよ」
真田「思いっ切り意識してるね」
吉田「だな」

−甲子園大会1回戦 阪神甲子園球場−
2年 真田 和希
後攻 先攻
赤竜高校 明鏡大附属高校
投手力 機動力 投手力 機動力
打撃力 守備力 VS 打撃力 守備力
意外性 経験値 意外性 経験値
総合力 総合力
湯口 宝刀 2年
1年 相川 正人 諸井 勘太 2年
2年 吉田 毅 御堂 貴人 1年
2年 斎藤 一 釘宮 昇 1年
1年 木下 義雄 安西 木霊 2年
1年 篠原 直道 鳴海 燦 2年
1年 福西 克明 住吉 桂 2年
1年 山口 昇平 福元 丸太 2年
1年 根本 昌弘 西藤 修司 1年

放送席
霞「ついに春の甲子園1回戦もこれで終わりとなります。やっぱりここでの注目は赤竜高校の斎藤君と明鏡大附属の御堂君との投げ合いです!」
武藤「そうですね。2人共140キロのボールを投げる上にバランスが良いですから面白い投げ合いになりそうですね」
霞「そして今回のゲストには草薙龍魔( くさなぎたつま )さんに来てもらいました」
草薙「うっす」
武藤「またしても雲の上の選手がゲストか」
草薙「まあ、暇で面白そうだったから無理言って来たんだが」
武藤「草薙さんほどの方がですか?」
草薙「今の高校レベルは高いって言われてるからな」
武藤「確かに、この試合も140キロ同士の投げ合いですからね」
霞「そして残念ながら注目の風祭さんはスタメンではありません。中西監督の話だと2回戦で登板予定だそうです」
武藤「勝てればですけどね」
草薙「まあどんな試合になるのか見せてもらいましょうか」

1回表 赤0−0明 1回戦の先発はやはりエースの斎藤!
斎藤主将(明鏡大附属とは練習試合の経験もないし初対戦になるな)
湯口(斎藤のボールはかなりノビるらしいからまずは当てて行かないとな)

ズバ―――ン!
霞「やはり立ち上がりは抜群で1番の湯口君を三球三振に抑えます!」
武藤「まだ1人ですけどね」
草薙「初球から140キロか、噂通り速いですね」

諸井「どうだった?」
湯口「分からん?」
諸井「へ?」
湯口「何か気が付いたらボールがミットに入ってた。かなり早めにスイングしないと当たらないな」
諸井「ふーん(よく分からん説明だな?)」

斎藤主将「ぬぉっ!」

ククッ!
諸井(凄いカーブだ。ただでさえ速いのにこんなカーブ混ぜられたらなかなか打てないぞ)

霞「続く諸井君もカーブを空振り三振で2アウト!」
武藤「気のせいか秋からまた成長してる様ですね」
草薙「なるほど、コントロールも良さそうだし噂されるだけはありますね」

御堂(確かに崩すのは難しそうだな)
吉田(こいつが噂の御堂貴人かバッターとしてもなかなかと言われてるけど、まあ、初対決だしストレート3つで問題ないだろう)
斎藤主将(ああ!)

ズバ―――ン!
御堂「当てるのも難しいか」

霞「3番の御堂君も三振と今日も立ち上がりの良い斎藤君でした!」
武藤「そうですね。初回を三者三振でストレートも140キロ出てますからね。これはなかなか打ち崩せないでしょうね」
草薙「なるほど、これが斎藤君ですか」

真田「今日もボールが走ってるしこれなら完封かな」
吉田「自分が抑えてる見たいに言うなよ。それよりお前からだろう。打てる自信あるのか?」
真田「ふっ、僕は佐伯を打った男だよ。1年ピッチャーなんかボコボコに打ってやるさ!」
斎藤主将&吉田(これは凡打フラグかな?)

1回裏 赤0−0明 相手の先発は失点の少ない御堂!
御堂(まずは俊足の真田さんからか)

ズバ―――ン!
真田「…………はあ」

霞「こちらも最初のバッターに140キロと調子は良さそうです。そして真田君は見逃し三振に終わりました!」
武藤「夏の大会でも見たんですが更に成長した感じを見せますね」
草薙「変化球もコントロールも悪くなさそうだしこれは投手戦になるかもな」

相川「コントロールはかなり良い見たいですね」
真田「うん。凄い嫌なコースにばっかり投げて来るよ」

御堂「次は相川君か、ミートはかなり上手いって話だけど」

スト―――ン!
相川「フォークか、想像以上に落ちるな」

霞「最後はフォークを空振り三振!」
武藤「斎藤君に負けずとバランスの良いピッチャーですね。この世代のピッチャーとしてはTOPクラスでしょうね」
草薙「次の世代もレベルの高さでは負けてはないと言う事か」

ガキッ!
吉田「Hスライダーか、やっぱりレベルが高いな」

霞「吉田君はセカンドゴロに倒れ3アウトチェンジ!」
武藤「球種もありますね。これは本当に投手戦になるかも」
草薙「両ピッチャー1回を3人で抑えてるしこのまま行けば面白くなりそうだな」

福元主将「相変わらず立ち上がりから調子は良いな」
御堂「まだ1回ですけどね」
福元主将「次は4番の斎藤からだからな。あいつはバッターとしても要注意だ」
御堂「はい」

2回表 赤0−0明 両ピッチャー共に1回は3人と好調をアピール!
釘宮(ハジメさんか、こんな舞台で再会するとはな。まっ、向こうはエースで今の俺は4番だ。敵同士でしかない!)
斎藤主将(やっぱり昇だな。と今は懐かしさより抑える事を考えないと!)

ズバ―――ン!
釘宮(なるほど、速いだけでなく恐ろしくノビてるな。しかし合わせられないほどでもない!)

霞「まずは見逃し1ストライク!」
武藤「いつもなら初球ストライクは振るんですが珍しく見て来ましたね」
草薙「初回を三者三振で抑えてますからね。警戒するのも分からなくはないですが」

斎藤主将(シュッ)

ガキッ!
釘宮「ちっ!(想像以上の変化だ。次はもっと変化を見極めてから打つ!)」

霞「2球目カーブを打ち上げセンターフライで1アウト!」
武藤「しかしバットコントロールはさすがですね。あのカーブを当てるとは」
草薙「あの当たりでセンターまでとはパワーもありますね」

吉田「それにしても1回でカーブをとらえるとは、さすがは4番ってところか」
斎藤主将(やっぱりバッティングセンスは抜群だな。後2打席慎重に行かないとな)

ズバ―――ン!
安西(これは1打席じゃ打てないな。変化球狙った方がヒットになる確率は高いか)

霞「続く安西君は140キロのストレートを空振り三振!」
武藤「やっぱりそうそうは打てませんね」
草薙「と言うより当たらんな。1打席目は全員凡退しそうな雰囲気だ」

斎藤主将(シュッ!)

スト―――ン!
鳴海「最後はフォークかよ!?」

霞「最後はフォークを空振り三振、これで5奪三振と相変わらず立ち上がりは抜群です」
武藤「球速だけ見れば御堂君の方が上なんですけどね。計り知れないピッチャーです」
草薙「まあストレートってのは慣れる以外に打つ方法はないって感じですからね」

吉田「この調子で行けば無失点で終わりそうだな」
斎藤主将「まだ2回だ。それに御堂も調子が良いんだ」
吉田「まあな。コントロールも良いし変化球混ぜられたらなかなか打てないな」
斎藤主将(きっちり狙い球しぼった方が良さそうだな)

2回裏 赤0−0明 斎藤は既に5奪三振!
御堂「4番の斎藤さんからか」

カキ―――ン!
福元主将「嘘だろう」

斎藤主将(やっぱり今日は調子が良い!)

霞「左中間真っ二つ! 斎藤君は2塁へ!」
武藤「たった1球でしかもあの外の低めと抜群のコースを…………今日の斎藤君は本当に調子が良さそうですね」
草薙「頭ではなく感性で打つタイプですね。バッターとしても大成しそうですね」
武藤「たった1球でそこまでの評価ですか!?」
草薙「まあ勘もあるがな。ちなみに俺の勘は良く当たる」
霞「三冠王が言うと説得力がありますね」
武藤「ですね」

御堂(ノーアウトランナー2塁か、ここでの1点は仕方ないなと言いたいけど)
福元主将(ああ、今日は先に1点を取った方に流れが行きそうだからな。ここでの警戒は送りバントだが、この5番はさほど器用なタイプじゃないしバントはないだろうが一応警戒はするぞ!)
御堂(バントしにくいコースや球種ですか)

ズバ―――ン!
木下「ちくしょう!」

霞「最後はインコース低めのボール球を空振り三振!」
武藤「せめて進塁打を打って欲しい場面でしたね。引退した嵯峨君に似て不器用な5番バッターって感じですね」
草薙「せめて当てて欲しかったですね。まあ、1年であのコースに速度じゃ打てなくても無理はないんですが」
霞「しかし御堂君も同じ1年、将来の4番になるかは分かりませんが木下君も負けないところを見せて欲しかったですね」
武藤「ちっと厳しい評価ですが確かにそうですね」

御堂(シュッ!)

ガキッ!
篠原「想像以上にキレるな」

霞「フォークを引っ掛けてセカンドゴロに倒れますが斎藤君は3塁と結果的には送りバントと同じになりましたね!」
武藤「そうですね」
草薙「このチャンスを生かせるかだな」

御堂(シュッ!)

スト―――ン!
福西「打てん」

霞「結果は空振りの三振! ランナーは3塁残塁で終わりました!」
武藤「斎藤君が出たら後ろの相良君が打つ印象があったせいかやはり打線は夏より落ちてる感じがしますね」
草薙「何はともあれこの回も得点はなしだな。こん均衡がいつまで続くのか?」

福元主将「ノーアウトでランナーが出てどうなるかと思ったが何とか無失点で抑えたな」
御堂「ええ、あのコースを一振りでとらえられて驚きましたが何とか抑えられましたね」
福元主将「意外でもないかいつも通り落ち着いてるな」
御堂「ええ、打たれてもホームまで返さなきゃ得点は入りませんから」
福元主将「図太いな」

3回表 赤0−0明 ヒットを打たれたがホームには返さないと御堂も好調!
斎藤主将(シュッ!)

ズバ―――ン!
住吉「マジで当てるのがむずいな」

霞「住吉君も142キロのストレートを空振り三振!」
武藤「相変わらず追い込んでからのボールは一級品ですね」
草薙「これで6奪三振か、本当に奪三振率が高いな」
霞「1打席目はだいたいこんな感じですね」
武藤「そうですね。私の高校時代とあまり変わらない球速なのに何でこんなに違うのか」
霞「と言う人は置いといて下位打線ですが、次はキャプテンの福元君です!」

斎藤主将(シュッ!)

ズバ―――ン!
福元主将「やっぱりバッティングは苦手だな」

霞「ストレート3つで三球三振!」
草薙「かすりもしないな」
霞「まあ元々守備やリードに定評があるキャプテンですからね」
武藤「この分じゃ9番の西藤君も」

ガキッ!
西藤「打ちにくいな」

霞「西藤君は打ち上げキャッチャーフライ!」
草薙「キャプテンよりバッティングセンスはありそうだけどな」
武藤「ですね」
霞「まだ1年で細かいプレーが苦手などの理由により9番を打たせるがセンスは悪くないと前に赤城監督が言ってましたね」
草薙「ま、1年で名門のレギュラーなんだ。センスはあって当然だな」
武藤「ですね。しかし斎藤君のボールに当てたのは1年だけとは次の世代もセンスある選手が多そうだな」

吉田「相変わらず安心して見てられるな」
斎藤主将「ま、1巡目だからな。次からは2巡目だ。注意して行くぞ!」
吉田「おう!」

3回裏 赤0−0明 斎藤は3回も三者凡退と抑える
御堂(シュッ!)

ズバ―――ン!
山口「速いしキレるし手が出ないな」

霞「まずは山口君を三振に仕留めます!」
武藤「速さもですがああコース付かれたら手が出ませんね」
草薙「兄と同じくセンスはかなりの物ですね。これは来年のドラフトにかかるのもまず間違いないかな」

御堂(シュッ!)

ククッ!
根本「これがスラーブか」

霞「最後はスラーブを空振り三振!」
武藤「思いっ切りボール球を振ってますね」
草薙「そして次は1番の真田君ですか」

真田「ふっふっふ、2巡目の僕は要注意だよ」
福元主将(一応プロも注目している選手だ。警戒はしとくか)
御堂(はい!)

ガキッ!
真田「佐伯との特訓の成果は出ないか」

霞「143キロのストレートを打ち上げサードフライで3アウトチェンジです!」
武藤「やはりそうそうは打てませんね」
草薙「ここまで無四球ヒット1本か、このまま行けば1点取った方に流れが行きそうだな」

御堂(次は僕の打席も来るな。僕が出れば(ちらっ!))
釘宮(コクッ!)
御堂(うん。釘宮が必ず打ってくれる!)

4回表 赤0−0明 3回を終わって無失点と両投手共に安定感ある投球を見せる
斎藤主将(4回で1番からか、何か仕掛けてくるかもな)
湯口(球数増やしても完投が当たり前のピッチャーのせいか効果薄な気もするけど、とりあえず粘って粘っての出塁だ!)

ガキッ!
霞「最後はカーブを打ち損じてファーストゴロに倒れます!」
武藤「打つではなく当てる感じで来ましたね」
草薙「と言う事は次の2番もかな」

湯口「情けねえ。たった5球でアウトかよ。つう訳で後は頼む」
諸井「まあ変化球混ぜられたらなかなか難しいよな」

斎藤主将(シュッ!)

ズバ―――ン!
諸井「ギリギリ入ったか」

霞「2−2まで粘りましたが最後は入って見逃しの三振!」
武藤「さすがは名門の1、2番良く粘れますね」
草薙「まあ見て行くのは悪くないと思いますが、見て行くだけでは残念ながら勝てませんね」
武藤「そりゃそうだ」

斎藤主将(シュッ!)

ガキッ!
御堂「くそっ、合わせるのが精一杯だ!」

霞「続く御堂君はライトフライで3アウトチェンジ!」
武藤「この回もノーヒットか、そう言えば斎藤君ってまだノーヒットノーランとかはないですね」
霞「ええ、地方大会じゃノーヒットでコールド勝ちなどで成立はしてませんから」
草薙「例えば今日の試合でノーヒットノーランなどすれば劇的な瞬間を生で見れる訳ですか」
霞「まあこの調子が続けばそうなる可能性もありますね」

斎藤主将「良し! この回も3人で抑えた!」
吉田「完全試合でも狙ってるのか?」
斎藤主将「いや、俺は勝ちたいだけだよ。記録ってのは勝ってから付いて来るもんさ!」
真田「ププッ〜♪ 『記録ってのは勝ってから付いて来るもんさ』だってさ〜♪ あっははは♪」
吉田「いつの間に? つうかピッチャーのモチベーションを落とす様な事言うなよ」
真田「あっははは、ごめんごめん」
斎藤主将「まあ、いつもの事だし」
真田「と言う訳でそろそろ1点でげすな。期待していますぞキャプテン殿!」
吉田「って斎藤任せかよ!」
真田「ここまでピッチャーとしてもバッターとしても数字出してるのは斎藤だけだし」
吉田「1回戦で1打席しか来てないんだから当然だっての!」
斎藤主将「やれやれ」

4回裏 赤0−0明 斎藤は現在パーフェクト!
御堂(シュッ!)

ズバ―――ン!
相川「………………」

霞「惜しくも外れてフォアボール!」
武藤「相変わらずやなバッターだな」
草薙「選球眼とバットコントロールは一級品ですね」
霞「ちなみに足もそこそこ速く守備も上手いです」
草薙「1年でこれなら来年のドラフトにかかってもおかしくないな」

御堂(シュッ!)
相川「っ!?」

霞「セーフ! しかし見事な牽制でした!」
武藤「そう言えばクイックや牽制も上手いって聞きましたね」
草薙「これでリードは小さくなったな」

相川(走るつもりはなかったけど、これじゃ師匠クラスじゃないと走れそうもないな)
福元主将(これでランナーは黙った。次はバッターを黙らせるぞ!)
御堂(シュッ!)

ズバ―――ン!
吉田「嘘っ今の入ってんの!?」

霞「インコース低めギリギリ144キロのストレートが決まって見逃しの三振!」
武藤「外を攻めて来たと思ったら最後は内角にズバリと入りましたね」
草薙「あの速さで内外ギリギリ狙われたら高校生じゃまず手が出ませんね」

吉田「すまん」
斎藤主将「回を増す事にコントロールが良くなってるし仕方ないさ」
福元主将(問題はこいつだ。前回は一振りで芯に当てたからな。ストレートより変化球中心で行くか)
御堂(はい!)

ガキッ!
霞「期待の斎藤君でしたが打ち上げてサードフライに倒れます!」
武藤「1打席目では打てたんですけどね」
草薙「と言ってもフォークの下を叩いてるんだ。キレがあったらレフトスタンドに届いたかも知れん」
武藤「想像以上に落差がないから助かったって事か」
草薙「ピッチャーに取っては屈辱だろうな。特に実力あるピッチャーほどプライドは高いしな」

斎藤主将「と言う訳で後はよろしく」
木下「うぃっす!(と言っても自信はないんだよな。とりあえず自分で言うのもむなしいがマグレ当たりを期待しよう!)」
御堂(ランナーは問題ない。このバッターで終わらせるぞ!)

カキ―――ン!
木下「当たった!?」

霞「追い込められてからHスライダーをとらえたがこれはライトの定位置でアウトです!」
武藤「不運でしたね」
草薙「元々野球の守備位置の定位置は打球が行きやすい場所だからな。芯でとらえるとアウトになりやすいと言えなくもない」
霞「なるほど、しかしこの回も無失点とまだ投手戦が続きそうです!」
武藤「このまま行けば経験値の差で斎藤君が有利かな」
草薙「ヒットも打たれてないしそうかもな。しかしこう言う場合は思わぬ一発を食らう場合もあるしな」
霞「まだまだ分かりません。試合は5回に続きます!」

御堂「ふう」
福元主将「いや抜けるかと思ったな」
御堂「ええ、笑顔で言うセリフでもないと思いますが」
福元主将「うむ。こうなったら何処まで抑えられるか斎藤との根比べだ」
御堂「ええ(相変わらず良く分からない人だな?)」

木下「それで結果はこれかい!」
篠原「とっとと切り替えるんだな」
木下「へいへい」

5回表 赤0−0明 御堂は四球で出塁を許した物の後続は凡退に抑える
斎藤主将(シュッ!)

ガキッ!
釘宮(当てるのがやっとか少しずつ芯でとらえられる様にしないと!)

霞「初球142キロのストレートを当てますが後ろへのファール!」
武藤「さすがに4番なだけあって2打席目で当ててきますね」
草薙「当てるだけではダメですよ。4番なら打たないと!」

斎藤主将(まだタイミングは合ってない。今の内に片付ける!)

カキ―――ン!
相川(タッ! パシッ!)

霞「一二塁間を抜けると思いましたがここで相川君がジャンピングキャッチ! 結果はアウトです!」
武藤「粘り強いバッティングで忘れがちだけど相川君は守備の人だって中西監督が言ってましたね」
霞「ええ、バッティングより守備の方がセンスあるって言ってましたね」
草薙「ふむ。逸材の予感だな」

安西「あのセカンド守備も上手いんだな」
釘宮「ええ(だがタイミングは合って来た。3打席目には決着をつける!)」

吉田「今の打球は驚いたぜ」
斎藤主将「昔からセンスある奴だと思ったけど本当に成長したな」

ズバ―――ン!
安西「くそっ!?」

霞「続く安西君には自己最速143キロのストレートで空振り三振に抑えます!」
武藤「肩ができて来たかな。このまま行けばますます打ちにくくなるぞ」
草薙「コースも悪くないと変化球のキレも良いですしこれはますます面白くなった来たかな」

斎藤主将(シュッ!)

ガキッ!
鳴海「ダメだ。こんなカーブ混ぜられたら当てるのも難しい」

霞「鳴海君もカーブを打ち上げショートフライに倒れて3アウトチェンジ!」
武藤「この回も3人…………本当に、いやまだ分からんな」
草薙「この分じゃ6回も難なく抑えそうですね。ポイントは7回からかな」

吉田「ここまで来たら完全試合狙っちまえ!」
斎藤主将「いやまだ5回だしそれより得点頼む」
吉田「次は篠原からだし大丈夫」
斎藤主将「連打で打てるピッチャーとも思えないがあいらの未知数に期待するか」

5回裏 赤0−0明 斎藤はまたもや三者凡退に抑える
御堂(シュッ!)

ガキッ!
篠原「ちっ!(しかし速度や変化にも慣れて来た。少なくとも当てるだけなら問題なさそうだ)」

霞「まずは篠原君をファーストゴロに抑えます!」
武藤「しかし144キロのストレートに当てて来ましたね」
草薙「センスは悪くないな」

御堂(篠原君にも当てられたか)

ガキッ!
福西「そうそうは打てないよな」

霞「福西君もストレートを打ちましたが結果はピッチャーゴロ!」
武藤「気のせいか1年生達も秋より成長してるような」
草薙「そりゃ練習してるんだから成長もするだろうよ」
武藤「いや成長速度が普通じゃないような?」
草薙「それだけ猛練習したんだろう」
武藤「ですね」

御堂(なるほど、こりゃ油断は禁物だな!)

ククッ!
山口(この外へ逃げるスライダーが苦手なんだよな)

霞「最後は135キロのHスライダーを空振り三振!」
武藤「やっぱりレベルが高いな」
草薙「確かにドラフトにかかる頃にはどんなふうに化けてるか楽しみですね」

福元主将「下位打線は大した事はないと思ってたんだが考え直さなきゃならないな」
御堂「ええ」

6回表 赤0−0明 現在無失点イニングが続く
斎藤主将(シュッ!)

ズバ―――ン!
住吉「あいつら良くこんなボールを当てられるな」

霞「143キロのストレートで決めて三球三振に抑えます!」
武藤「気のせいかコントロールも良くなってるようなこんな調子じゃ本当に記録が出るかも知れませんね」
草薙「うむ。これはますます面白くなって来たな」
霞「まあ、テンポ良く投げる2人ですから試合時間は短そうで喜ばれてますが」
武藤「それはこっちの都合だし」

斎藤主将(シュッ!)

ズバ―――ン!
福元主将「1打席目よりずっと打ちにくいぞ!?」

霞「続く福元君も143キロのストレートを見逃しの三振!」
武藤「あんな低めギリギリ手が出ないですよ」
草薙「確かにこの調子じゃクリーンナップくらいしか打てそうもないな」

斎藤主将(シュッ!)

ガキッ!
相川「………………」西藤「………………」

霞「落ちた! セカンド後方へのラッキーなヒット!」
武藤「………………マジ?」
草薙「ふむ」
霞「斎藤君からの初安打はなんと9番で1年生の西藤君でした!」
武藤「これで記録はなくなった訳か、まあ、こう言う記録ってたいがい伏兵にやられる事が多いですからね」

吉田(マジかよ。と斎藤は?)
斎藤主将(シュッ!)

ガキッ!
湯口「くそっ、ボール球だったか」

霞「続く湯口君はフォークを引っ掛けてサードゴロに倒れて3アウトチェンジ!」
武藤「相変わらず打たれ強いですね」
草薙「これでピッチャーだけでなくバッターも目覚めると面白くなって行くんだが」

吉田(打たせて取ったか、そうだな。こう言う奴だった。俺の心配なんかいらないな)
斎藤主将(残り3回で決着がつけば良いんだが?)

6回裏 赤0−0明 ヒットを打たれて記録はなくなったが斎藤はこの回も無失点に抑える
御堂(シュッ!)

スト―――ン!
根本「良いコース付いて来るな」

霞「最後はフォークを空振り三振!」
武藤「球速も変化もまだまだ衰えないな」
草薙「スタミナもなかなかって事だな」

真田(これで3打席目か、そろそろ合宿や特訓の成果を見せないとね!)
御堂(真田さんか、ここまで難なく抑えられてるけど)

カキ―――ン!
真田(おう! 我ながら上手く打ったぞ。これなら……)

住吉「うりゃっ!」

タッ! パシッ!
真田「おいおい!?」

霞「アウト! 右中間を抜けるかと言う当たりでしたが住吉君がファインプレーを見せます!」
武藤「スラーブを完全にとらえたのに不運ですね」
草薙「やっかいなランナーを出さずにすんだ好守備は見事でしたね」

御堂「ふう」
福元主将(いきなり合わせて来たな。さすがはプロも注目している選手って事か)

真田「くそっ! あれだ! ゲーセンでハイスコア出した瞬間に別の奴に僕のスコアを更新され! 屈辱だ―――!」
相川「ドンマイです!」
真田「ううっ、敵は頼む!」
相川「何とか頑張って見ます」
福元主将(次は相川か、前の打席じゃ粘られてのフォアボールと球数を増やされるやっかいなバッターだな)
御堂(ええ、コース付いてもファールされる技術は驚異ですね)
福元主将(人事見たいに言うなよ。リードするこっちは大変なんだからな)
御堂(分かってますよ。とりあえず追い込んでからフォークを振らせましょう)
福元主将(その振らせるのが難しいんだよな)

カキ―――ン!

相川「っと!」

霞「追い込まれてから何とかフォークを打った。センター前ヒット!」
武藤「3球勝負で来て意外だったんでしょうが何とか高めのフォークに合わせましたね」
草薙「お見事」

福元主将(参ったな)
御堂(ムダ球放らずにすんだと思って割り切って吉田さんを抑えましょう!)
福元主将(ああってこれじゃどっちがキャプテンか分からないな)

吉田(前と同じでランナー1塁だけど、今回は2アウトからだから思いっきり振れば良し!)
福元主将(見た感じ前より落ち着いてるな。警戒して行こう!)
御堂(はい!)

ガキッ!
吉田「ダメだったか」

霞「ファールの良い当たりが続きましたが最後はライトフライに終わりました!」
武藤「これは本当に投手戦ですね」
草薙「いまさらだな。ま、先に1点取った方に流れが行きそうだな」
霞「と言う訳で試合もついに7回に突入です」
武藤「ひょっとすると延長にも行くかも?」

7回表 赤0−0明 現在無失点イニングが続く
霞「試合も7回に突入ですが斎藤君、いきなり調子を崩したか2番の諸井君を歩かせて続く御堂君には送りバントをさせられて1アウトランナー2塁のピンチです!」
武藤「まったくストライクに入らない訳じゃないし調子を崩した訳じゃないと思いますよ。しかし草薙さんが言ったように7回がポイントになったかな」
草薙「まあ、どう抑えるか、どう打つか、楽しみですね」

御堂「それじゃ頼むね」
釘宮「ああ!」
吉田「おいおい大丈夫か?」
斎藤主将「まだ点を取られた訳じゃない。ここから昇と安西を抑えるだけだ!」
吉田「ああ、そうだな」
斎藤主将(それじゃ決着をつけるか!)
釘宮(打つ!)

カキ―――ン!
霞「初球インコース低め143キロのストレートをとらえましたがわずかに右に切れてファール!」
武藤「良い当たりでしたね」
草薙「ここで欲しいのはヒットだからな。理想と言えば理想のバッティングか」

吉田(大丈夫かな?)
斎藤主将(次は!)

ズバ―――ン!
釘宮(ピクッ!)

霞「またインコースのストレートでしたが見逃しわずかに外れてこれで1−1です!」
武藤「緊張しますね」
草薙「おいおい。解説が緊張してどうするんだ?」
霞「しかし武藤さんの気持ちは分からなくもないです」

吉田(昔の知り合いらしいけど村雨の時とは違うな)
斎藤主将(ストレートらは対応して来てるか)

ククッ!
釘宮(ちっ!)

霞「今度はボール球のスライダーを空振りして2ストライクと斎藤君が追い込みました!」
武藤「今度はアウトコースでしたね。しかしスライダーのレベルも夏に比べて上がりましたね」
草薙「次は外して来るだろうから勝負は5球目だろうな」
武藤「それはどうでしょう?」
草薙「?」

斎藤主将(こいつで決める!)

ガキッ!
釘宮(しまった!?)

霞「最後はインコースから大きく曲がるカーブを打ち上げた!」
武藤「2−1で勝負は予想したけど、釘宮君は外角に外して来ると予想したせいか裏を掻かれましたね」
草薙「ふむ。良く見てるだけあってさすがだな」
武藤「まあ1年の頃から観てますからね」
霞「まるでストーカーですね」
武藤「変な事言わない。つうか君も観てるでしょうが!」
霞「えっと私は年上趣味ですから」
武藤「こっちも返答に困るので頬を赤く染めて言わないで下さい」
草薙「ふむ」
武藤(今、呆れたように納得されたな)

斎藤主将(シュッ!)

ガキッ!
安西「何かザコキャラになった気分だ」

霞「2アウトランナー2塁のチャンスでしたが安西君もフォークを引っかけて3アウトチェンジ!」
武藤「やっぱりなかなか打てませんね」
草薙「流れが変わるかと思ったがホームには返らずか、裏に期待だな」

斎藤主将「裏で決める!」
吉田(凄え迫力だ。こりゃ裏で試合の行方が決まるかもな)

7回裏 赤0−0明 斎藤は四球でピンチになるが見事に無失点に抑える
斎藤主将「たあっ―――!」

カキ―――ン!
御堂「あのコースを!?」

霞「1−2から放たれたフォークでしたが真芯でとらえた。しかしスタンドまでは届かないっと斎藤君2塁も蹴った!」
武藤「マジでライトは強肩の住吉君ですよ」
草薙「しかし斎藤君もかなりの俊足ですね」

住吉「ぬぉっ!」

ビュ―――ン! パシッ!
霞「―――判定はきわどいですがセーフです! これでノーアウトランナー3塁!」
武藤「草薙さんの言う通り本当にポイントになりそうですね」
草薙「初めてサードベースまで行ったか、しかしホームに返られなきゃ意味はない。どうなるか?」

福元主将(リードには自信があったんだがな。あの斎藤だけは苦手意識が付いて来た。何であの配球でアウトコースのフォークを打てるんだよ)
御堂(普通ピッチャーに苦手意識が付くんだけどな。と落ち込んでないでピンチなんですから)
福元主将(そうだったな。ここでの1点は仕方ないと言いたいが牽制で斎藤を刺せないか)
御堂(向こうがスクイズのサインでも出していればと言いたいところですが、斎藤さんのリードを見る限りこっちを警戒してますから無理でしょうね)
福元主将(やっぱダメかい。けど斎藤のリードは小さいしスクイズはなさそうだな)
御堂(ええ)
福元主将(それじゃ木下は三振に仕留めるか)

ククッ!
木下「ダメだ。どうもタイミングが合わない」

霞「最後は外へ逃げるスラーブを空振り三振!」
武藤「良いところなしですね。まあヒットを打ってるは相川君と斎藤君だけだし仕方ないかな」
霞「しかし次はチャンスに強い篠原君です」
草薙「スクイズの可能性もありますね」
霞「確かに篠原君は小技も上手いですが」
武藤「つうか斎藤君が出て篠原君がスクイズって関東大会でもありましたね」
霞「そうでしたっけ?」
武藤「ええ、1点勝負の時は木下君の空振り三振の後にスクイズなんで虚を突くって感じで成功してましたね」
草薙「なるほどな。そう言う意図で6番バッターにしたのかもな」

御堂(ランナーのリードが変わってる。スクイズの気配が濃厚ですねってどうしたんですか?)
福元主将(いや、相変わらず凄い感覚だなと思ってな。ところで牽制で刺せないか?)
御堂(元々あまりリードしてなかったですしさっきより半歩程度ホームに近付いてる感じですから無理ですね)
福元主将(そうか、ランナー足速いしな。それと初球スクイズあると思うか?)
御堂(ないとは言い切れませんね)
篠原「………………」
福元主将(見事なまでにポーカーフェイスだな)
御堂(表情からは読めませんよ。ただスクイズの場合ベンチからもそう言う気配がするんですが今回はしないんですよね)
福元主将(へ? じゃあ何でランナーのリードが変わってるんだ?)
御堂(プラフって可能性もあるんですが、とりあえず初球フォークで様子を見ます!)
福元主将(ランナー3塁だぞ!?)
御堂(コントロールには自信がありますしキャプテンのキャッチングも信頼していますから)
福元主将(そう言われたら断れんじゃないか!)

スト―――ン!
篠原(サッ!)
福元主将「おっと!」
斎藤主将「やばっ、戻らないと!」

霞「初球ワンバウンドのフォークと危うく後逸するかと思いましたが良く捕りましたキャプテンの福元君!」
武藤「慌てて斎藤君も戻りましたが、しかし1点を争う場面でフォークから入るとは凄い度胸ですね」
草薙「しかしバッターの篠原君は驚く様子はないと彼もなかなかのギャンブラーですね」
武藤「確かにこう言う場面はギャンブルに通じる物がありますが」
草薙「賭けてる物は金銭ではなくお互いの矜持(きょうじ)とこう言うのがスポーツの醍醐味ですかね」

福元主将(バントの構えをしたな)
御堂(ええ、もう1球外して行きます)
福元主将(慎重に行くのも分かるが、いっその事内野に任せた方が処理できるんじゃないか?)
御堂(いえ。ファーストの釘宮だけ不安要素があります)
福元主将(そう言えばバント処理は苦手だったな。とするとフォークを2球続けるのも危険だしストレートを外すか)
御堂(ええ。インコース低めに外します)
福元主将(暴投しないように祈っとこう)
篠原(ちっ! インコースか、しかし打てなくもない!)

ガキッ!
全員「何っ!?」

霞「バスターに切り替えた。そしてボテボテの当たりだがそこにはバントで前に出てきたせいか誰もいない」
武藤「届きそうで届かない感じですね」
草薙「近いのはショートの西藤君ですね」

西藤(パシッ! シュッ!)
斎藤主将(タッタッタッ!)

霞「―――きわどいが判定はセーフ! そして記録はヒットだ!」
武藤「内野安打って事ですかね?」
草薙「文句があるなら記録員に言え」
武藤「いえ、文句はないですけど」

福西「ナイスランです!」
斎藤主将「いや、篠原の相手の裏を掻くバッティングのおかげだよ」
福西「そうっすね」

福元主将「すまん」
御堂「いえ、今のは仕方ないですよ」
福元主将「思ってた以上に堪えてないのな?」
御堂「……そうでもないですよ」
福元主将「悪い。今のは無神経だったな。それで結局バスターのサインでも出てたのか?」
御堂「いえ、最初からサインなんてなかったんですよ」
福元主将「どう言う事だ?」
御堂「つまり斎藤さんと篠原君に最初から任せられていただけ、こっちの状況に応じてあの2人が作戦を立てると」
福元主将「サインもなしにかよ!?」
御堂「信じられない事にね」
福元主将「信じられねえ!?」
御堂「気持ちは分かります。俺も野球はチームプレーって改めて奥深さを知った気がします」
福元主将「しかしこの1点は重いな」
御堂「ええ、ですが1点は1点です。1点差ならまだ追いつけます!」
福元主将「そうだな」

ガキッ!
福西「今日の俺は格好悪いな」

霞「福西君はショートゴロで6−4−3のダブルプレーで一気にチェンジだ!」
武藤「力み過ぎですね。しかしこれでようやく1点が入りましたね」
草薙「次の回を斎藤君がどう抑えるかで勝敗は決まりそうだな」

福元主将「1点差だ。下位打線は打てそうもないが西藤はタイミングが合ってるしまだ分からないな」
御堂「はい!(僕の打席が来るとすれば9回かな)」

8回表 赤1−0明 ついに赤竜高校が1点を先制した!
斎藤主将「残り6人!」
鳴海「ぬぉっ!」

ガキッ!
根本「くっ!」

霞「ショボイ当たりだが三遊間を抜けた。打った鳴海君は1塁ストップ!」
武藤「いきなり先頭打者を出しましたね」
草薙「うーむ」

コツンッ!
住吉「よっし!」

霞「続く住吉君き送りバント成功で1アウトランナー2塁となりました!」
武藤「前回と同じですね」
草薙「しかしマウンドの斎藤君は落ち着いてますね」

福元主将「ピンチだってのに落ち着いてるな」
斎藤主将「次はキャプテンの福元か」

ズバ―――ン!
福元主将「せめて当てるくらいはしたかったんだが」

霞「続く福元君は141キロのストレートを空振り三振!」
武藤「相変わらず得点圏にランナー出しても凄いピッチングを見せますね」
草薙「しかし次は今日ヒットを打っている西藤君ですね」
武藤「まだ1回戦で打数も少ないからそうとも言い切れないけど大舞台に強いタイプなんでしょうかね?」
霞「とにかく、1年生レギュラーの西藤君はこのチャンスを生かせるか?」

西藤(とにかくまずは当てて行こう)
斎藤主将(さっきは外へ逃げるスライダーを打たれたからな。思ってたよりストライクゾーンは広いらしい。外がダメなら内で勝負だ!)

ガキッ!
山口「届け!」

パシッ!
西藤「やっぱダメか」

霞「サードの頭を抜けるかと思いましたが山口君が必死に追いつき何とかキャッチしました!」
武藤「ふう、しかし足の遅いサードなら抜けて同点にされてましたね」
草薙「面白い9番バッターだな。今後の成長によっては化けるかも知れないぞ」
霞「とにかくピンチになりましたが前回同様ランナーを返さず無失点に抑えます!」
武藤「しかし、後1回とは言え気は抜けないですね」
草薙「その前に裏で追加点って可能性もあるがな」

吉田「心臓が止まるかと思った」
斎藤主将「サヨナラじゃあるまいしオーバーだぞ」
吉田「だってさ。ああ言うポテンで追いつかれたらかなりきついじゃん」
斎藤主将「分からなくもないが、延長になるとこっちが有利だし気にする事もないぞ」
吉田「そうか? 向こうの方が選手層が厚いと思うけど?」
斎藤主将「いや明鏡は御堂に頼ってるところがあるから御堂が降板すればこっちが有利になる」
吉田「確かに向こうの2年にそんな良いピッチャーはいないしな。延長になると俺達の方が有利か」
斎藤主将「そう言う事だ」

8回裏 赤1−0明 斎藤は再びランナーを出すがさすがのピッチングで無失点に抑える
御堂(1点差ならまだ届く。とりあえずこれ以上は失点しないようにこの回も無失点に抑えないと!)
山口(外見とは裏腹に凄い気迫を感じるなしかしこっちも負ける訳には行かない!)
御堂(シュッ!)

ズバ―――ン!
山口「手が出ない!?」

霞「最後はアウトコース144キロのストレートを見逃しの三振!」
武藤「8回で自己最速ってスタミナも十分にありますね」
草薙「やっぱり下位打線じゃ手が出ないな」

御堂(シュッ!)

スト―――ン!
根本「8回なのにフォークのキレも凄いし」

霞「下位打線とは言え8回を2者連続三振に抑えます!」
武藤「凄いですね」
草薙「確かに凄いが(燃える前のロウソクみたいで少し心配だな)」

御堂(シュッ!)

ガキッ!
真田「やっぱりセーフティ狙えば良かった!!」

霞「続く真田君は打ち上げセカンドフライで3アウトチェンジ!」
武藤「フォーム崩して打ってるところからも分かりますが完全にカモにされてますね」
草薙「とにかく1点差で9回か、面白くなって来たな」

明鏡大附属高校 ベンチ
赤城監督「貴様らも分かっているだろうがあっちのエースは憎たらしい奴だ!」
全員「相変わらずあっさりと本音を言うな」
赤城監督「球速、スタミナ、コントロール、変化球と高いバランスで備わっていて打たれたところで調子を崩すタイプじゃない」
御堂「典型的に欠点のないタイプですからね」
赤城監督「そうだな。才能に溢れてると言うむかつく奴だ!」
全員「……………………」
赤城監督「とにかくだ。ヒットを打ってるとは言え全てラッキーなヒットだ。こっちで唯一タイミングが合ってるのは4番の釘宮と見た!」
釘宮「………………」
福元主将「確かに2打席目ではタイミングが合ってましたが3打席目ではしてやられましたよ?」
釘宮「悪かったですね!」
福元主将「すまん」
赤城監督「とにかく、まずは誰か出なければ釘宮にまわらん。つまり何でも良いからまずは出ろ!」
全員「出塁するのも難しいんですが?」
赤城監督「とにかく、1、2、3番はひたすらカットして四死球で出ろ!」
湯口&諸井「カットか」
釘宮「頼みます。何とか出て下さい。次の打席で必ず打ちますから!」
福元主将「お前ら! 後輩にそこまで言われたら仕方ないだろう。先輩の意地を見せてやれよ!」
湯口&諸井「分かった!!」
釘宮「御堂も自分で決めるなんて思わず繋げる気持ちで打席に入れ!」
御堂「うん! 釘宮もね!」
釘宮「ふっ、俺はチームの4番だからそいつは聞けないな」
全員「あっははは」

赤竜高校 ベンチ
中西監督「お前らに言うのは1つだけだ。死ぬ気で守れ!」
全員「おう!」
真田「斎藤も死ぬ気で投げろよ!」
斎藤主将「ああ!」

9回表 赤1−0明 いよいよ試合も9回に突入!
霞「どうやらタイムも終了したようです。両校のチームメイトの表情を見る限り良いタイムだったみたいですね」
武藤「ですね。明鏡大附属も1点差で上位打線ですからね。まだ分かりませんよ」
草薙「そして赤竜高校は斎藤君しだいですかね」

斎藤主将「残り3人!」
湯口(とにかく粘って行くぞ!)

ガキッ!
霞「1番の湯口君、粘りましたが10球目のスライダーを打ち上げ1アウト!」
武藤「結果はファーストフライですか」
草薙「どうも出塁狙いのバッティングだな。それでも2−2までだから斎藤君からのフォアボールは難しそうですね」

湯口「すまんが後は頼む」
諸井「ああ!」

斎藤主将(シュッ!)

ズバ―――ン!
諸井「何っ!?」

霞「続いて9球目143キロのストレートを空振り三振!」
武藤「この回だけで19球目なのに自己最速とは斎藤君の本当に恐ろしいところはこのスタミナと精神力かも知れませんね」
草薙「そして後1人まで追い詰められたか」

諸井「すまん」
御堂「いえ、まだ終わっていませんから!」

斎藤主将(シュッ!)

ズバ―――ン! ポロッ!
霞「最後は142キロのストレートで空振り三振ってボールが後ろに逸れた!」

吉田「しまった!?」
御堂「っと走らないと!」

タッ! シュッ! パシッ!
霞「セーフ! 2ストライクから振り逃げで出塁し2アウトランナー1塁で4番の釘宮君にまわります!」
武藤「パスボールで4番の釘宮君ですか」
草薙「ホームランなら逆転、ヒットだとタイムリーはきついか」

吉田「すまん」
斎藤主将「過ぎた事を責めても仕方ないさ。とりあえず今は昇をどう抑えるかだな」
吉田「ああ、3打席目見たいに慎重に行こうそれとランナーが走ったら必ず刺す!」
斎藤主将「ああ!」
釘宮(ここで決める!)

ズバ―――ン!
霞「まずはアウトコース143キロのストレートを空振り1ストライク!」
武藤「いきなり魅せますね」
草薙「釘宮君も長打狙いのスイングですね」

斎藤主将(次は前の打席で抑えたカーブで行く!)

ククッ!
釘宮「こいつを待っていたんだ!」

カキ―――ン!
斎藤主将「何っ!?」吉田「嘘だろう!?」

霞「インコースから大きく曲がるカーブですが芯でとらえた!」
武藤「これはバックスクリーンまで届くか?」
草薙「いや、届かんな…………しかし」

真田「ダメだ。追いつけない!」
御堂「思ってたより深い。これならホームまで行ける!」

霞「センターの真田君が捕って相川君が中継でホームへ送球判定はきわどいぞ!」

相川(シュッ!)
御堂(タッタッタ!)
吉田(パシッ!)

ドンッ!
霞「ホームはクロスプレーだ!」
武藤「同点かそれともアウトか?」
草薙「………………」

吉田(サッ!)
御堂「終わったのか」

霞「ボールは落としていない! アウトだ! 試合終了!」
武藤「振り逃げでランナー出した時はどうなるかと思いましたが結果的に吉田君のブロックで勝利しましたね」
草薙「完封した斎藤君、打った篠原君、吉田君も良くも悪くも目立ってましたね」
武藤「まあ」
霞「と言う訳で1回戦最後の試合は1対0で赤竜高校が逃げ切り勝利しました! それでは2回戦でお会いしましょう!」
武藤「軽いノリだな」
霞「試合時間は短かったんですが、まあ、こっちの都合ですね」
武藤「何かやだな」
霞「嫌だと思ってもこれでおしまい。さようなら」
草薙(最後は2人のトークで締めるのもお約束か)

明鏡大附属高校
御堂「すみません」
全員「ん?」
赤城監督「お前が謝る必要はない。むしろ無失点に抑えられた打線に問題ありだ!」
全員(グサッ!?)
福元主将「とにかくだ。こう言う事言うのも何だが春で負けても夏はあるし今度は勝とう!」
全員「そう言う事だ」
釘宮「………………」
福元主将「釘宮も最後はヒット打ったし大した物じゃん」
釘宮「ええ」
西藤「試合に負けて勝負は勝ったって感じですね」
福元主将「そうそう。リベンジは夏だな」
赤城監督「夏までにはバッティングレベルを上げる必要があるなお前ら夏は打って打って打ちまくれ!!!」
全員「うっす!」
釘宮(結局4の1か、ハジメさん夏にまた会いましょう)

赤竜高校
吉田「で良かったのか?」
斎藤主将「ん? ああ、構わないよ。話なら打席でしたから」
吉田「ふーん、お互いの成長を見せ合うのが会話か」
斎藤主将「そう言う事だ」
真田「そんな事よりも今年も無事に1回戦突破! いや〜吉田がポカした時にはどうなるかと思ったけど無事に終わって良かった」
吉田「悪かったな。ちゃんと反省してるっての」
相川「まあまあ、過ぎた事を言っても仕方ありませんよ。それに本塁を死守したブロックは凄かったですよ」
吉田「ううっ、相川は良い奴だな」
斎藤主将「篠原もナイスなバッティングだったぞ」
篠原「自分にできる事をしただけですよ」
木下「ふっ、どうせ俺は何もできなかったですよーだ」
福西「落ち着けよ」
木下「どうせ俺は2回戦ベンチですよーだ」
斎藤主将「悪いな。けど展開によっては俺と交代する事もあるし代打で出る事もあるだろうから」
木下「代打か、打つだけで守備しなくて良いから俺に合ってるかも♪」
福西「それで良いのかよ」
木下「おう!」
真田「本人が良いって言ってるんだから良いんじゃないの」
吉田「何か真田軍団が増えて行ってるな」
斎藤主将「真田軍団って」
真田「ちなみに僕は真田軍団ではなく真田忍軍を希望です〜♪」
吉田「幸村かよ」
真田「一応忍びだった時代もあるらしいけどね。元々僕の(うち)は武家だったらしいよ」
斎藤主将「ちなみに幸村はゲームや小説などで見る事は多いが生きていた頃の史料では幸村の名前はないので正しくは信繁らしいぞ」
真田「へえ、ちなみに真田の名は江戸時代かららしいけど、関連があるかどうかは知りません」
吉田「いや、多分ないだろう」
真田「そうかもね」
相川「とにかく、1回戦突破ですね」

今年の春も赤竜高校は何とか1回戦を突破した。斎藤は見事に完封したが次の登板は柚、プロ相手に投げたとは言え初登板が甲子園でどんなピッチングになるのか?