第45章 最後の夏(3)〜新たなる世代対決〜

−1996年 8月−
赤竜高校は今年も甲子園に出場し1回戦の相手は天才小林率いる轟天農業高校、しかし赤竜高校の先発は何故か1年の小田切となっている。
小田切「俺が今日の先発ですか?」
中西監督「うむ」
矢吹「キャプテン、病気ですか?」
斎藤主将「だったら部屋で寝てるよ」
矢吹「それもそうっすね」
中西監督「強敵相手にはここまで斎藤ばっかり投げてるしお前達の調子も見て行きたいからな。そう言う訳で1回戦でお前達の力を見る事にした!」
吉田「確かに相手は格下と言われていますが相手のエースは評価が高いですよ」
真田「小林君か、名前見た時は女の子かと思ったよ」
相川「まあ、外見は見ての通り男の子で彼のピッチングは勇ましいですよ」
篠原「そう言えばお前も引越しでうちに来たんだったな」
相川「ええ。そう言う意味じゃ千里君と同じですね。向こうにいた時から先輩後輩の仲でしたし良く知ってますよ」
中西監督「地方の試合を観たが1年とは思えない完成度だったな。ストレートが速くノビが良いのとバランスが整っているところと良いうちの斎藤に似てるな」
相川「そうですね。現段階じゃキャプテンほどじゃありませんがバランスは整ってますしストレートのノビが良く奪三振も多いです」
真田「聞いてると無茶苦茶やっかいな投手っぽいね」
吉田「地味にチームのエースに似たタイプって攻略できそうでできない難しいイメージがあるからな」
中西監督「地方大会では最速145キロを記録と怪物だ。右投手で打者としてもやっかいだ」
真田「エースで4番か、そこもうちの斎藤と同じかい!」
中西監督「いや、4番は2年の箕輪だ」
真田「と言うと誰かが熱心に指導してた子だね」
吉田「仕方ないだろう。まさか来年に会う事になるとは思わなかったんだから!」
斎藤主将「まあな。真田が冗談半分で言った来年の甲子園で会おうって言葉も現実になるし未来ってのは何が起こるか分からないな!?」
真田「さすがは僕、未来予知までできるとはもうプロに行くしかないね!」
斎藤主将&吉田(なんの関係が?)
中西監督「いきなりエースの小林がTOPバッターとかなりの変則オーダーだから気を抜くなよ」
真田「ピッチャーがTOPバッターってあんまり聞かない打線ですね」
中西監督「バッターとしても要注意だと言っただろう。特に小林がランナーにいる時はクリーンナップが爆発しているとかなりの重量打線だ!」
吉田「情報でも層の薄さが致命的だがそのポテンシャルは計り知れないって言われて総合でC評価でしたからね」
中西監督「守備が悪いがまずは小林のボールに慣れる事だ」
相川「意義なしですね。とにかく速くノビるボールはやっかいですから目を慣れさせましょう」
中西監督「そう言う意味では普段から斎藤のボールを捕っている吉田がカギになる試合かも知れんな!」
吉田「必ず打って見ます!」
真田「吉田だけに良い格好をさせないよ!」

村上監督「と言う訳で相手は名門の赤竜高校だ!」
内海主将「しかし1回戦で当たるとはな」
小林「俺達が入る前に世話になったんでしたよね」
箕輪「ああ。今回はどれだけ成長したかを教えられる試合となるな!」
橋本「勝って恩返しってのも変ですが勝って恩返ししましょう!」
関根「まあ言いたい事はなんとなく分かるけどな」
森山「とにかく久々の甲子園だし1回戦くらい勝ちたいね!」
箕輪「勝ちたいねではなく何がなんでも勝つんです!」
全員「……………………」
小林「お世話になったからこそ全力で戦わなきゃ失礼って物ですからね」
全員「なるほど!」

−甲子園大会1回戦 阪神甲子園球場−
3年 真田 和希
後攻 先攻
赤竜高校 轟天農業高校
投手力 機動力 投手力 機動力
打撃力 守備力 VS 打撃力 守備力
意外性 経験値 意外性 経験値
総合力 総合力
小林 千里 1年
2年 相川 正人 森山 恭平 3年
3年 吉田 毅 内海 断 3年
3年 斎藤 一 箕輪 春人 2年
1年 村田 修一 橋本 彗星 1年
2年 篠原 直道 関根 明義 1年
1年 矢吹 隼人 小関 光陽 2年
2年 福西 克明 平塚 彰信 3年
1年 小田切 竜 岡島 晴見 3年

放送席
霞「今年もいよいよ始まった甲子園1回戦ですが番狂わせはなく1回戦は実力校が勝ち上がっております。そして1回戦ではもっとも注目されている名門の赤竜高校VS轟天農業高校の試合をお伝えします!」
武藤「赤竜高校の先発は意外と言ったら失礼ですが1年生の小田切君ですね」
木村「まあ相手は無名だし秋の事を考えて経験値を積ませたいってところですかね」
霞「と遅れましたが解説には木村佐助さんに来てもらっております!」
木村「残念ながら母校の斉天大附属は出場していませんが頑張って解説させてもらいます!」
武藤「と言うより解説陣の母校が一緒で出場していないってのも変ですよね?」
霞「他にも候補はいたんですけどね。木村さんがぜひにと言われたんで木村さんを誘わせてもらいました!」
武藤「やっぱり地方大会の時に出れなかったからですか?」
木村「ああ! 久々に大島の顔も見たかったんだけどな」
霞「ちなみに木村さんは斉天大附属高校の監督の大島久さんとは同期で親友同士と言う話ですが?」
木村「親友は言い過ぎかな。あいつとは腐れ縁なだけですよ。ま、プロで会う事がなかったのが心残りって感じもしますが、高校野球では名将って言われてますし進路は間違ってなかったのかな」
武藤「木村さんも高校時代から3番として活躍してましたからね」
木村「指名するかもって言われて指名されなかった時は腹が立ったけどな」
武藤「木村さんも小柄でしたからね」
木村「ああ。それで必死に大学野球で活躍して2位で指名されたな」
霞「手元の資料によれば1年目から3割を打って新人王を獲得し3年目には首位打者のタイトルも獲得していますね」
木村「まあそれ以降はケガに悩まされて活躍もできなかったしプロの目も間違ってなかったと言えば間違ってなかったですけどね」
霞「やっぱり体格のハンデとかあるんですか?」
木村「そりゃありますよ。私の場合はフル出場と持続力が続かなかったところですね。短期の試合ならともかくシーズンとなると連戦連戦で本当にきつかったですよ!」
武藤「ピッチャーでもきついですからね。レギュラーはもっときついでしょうね」
木村「2000本安打を達成できなかったのが心残りと言えば心残りですかね」
霞「しかし通算打率も3割ですし誇って良いと思いますけどね」
木村「と言っても打数は到達していないしやっぱり選手寿命は短かったですね」
武藤「まあ大学からですからね」
木村「と言うわけでやっぱり私は同じ球団だった松田さんを尊敬していますね」
武藤「同じ高校、大学出身で同じ球団だからな」
木村「私と体格は変わりませんでしたが松田さんはケガに強かったですからね」
武藤「ですね。今じゃ結構不利な体格でも大活躍している選手もいますからね」
木村「昔の選手と違って効率の良い練習でケガにも強くなってるんですかね?」
霞「と話もここまでです。いよいよ試合が始まります。注目はやはり轟天農業のエース、小林君の実力でしょう!」

1回表 赤0−0轟 赤竜高校の先発は斎藤でなく1年の小田切、そしていきなり向かい合うのはエースの小林!
吉田(バッターとしての力は未知数だ。とにかく全力で投げて来い!)
小田切(コクッ!)

ガキッ!
霞「初球から積極的に振りますが結果はセカンドフライと球威に押されて終わりました!」
武藤「138キロと小田切君も速い球を投げますね!」
木村「まだ1球なのでなんとも言えませんが1年生でベンチ入りしているだけはありそうですね」

小林「球の速さもですが球威もやっかいですね」
森山「1年なのに僕より速い球を投げるんだもんな」
小林「森山さんの場合は変化球を狙った方がヒットになる可能性が高いと思いますよ」
森山「まあ、ストレートよりかは球威は落ちるからね」

小田切(シュッ!)

ズバ―――ン!
森山「さすがに地方大会とはレベルが違うなー!?」

霞「ラストは140キロのストレートを空振り三振と小田切君も小林君に負けていませんね」
武藤「今年の1年生もレベルが高いですね!?」
木村「さすがに名門と呼ばれるだけあってレベルが高いですね!」

小田切(シュッ!)

ガキッ!
内海主将「結構重いな」

霞「最後はカットボールを引っかけて3アウトチェンジです!」
武藤「意外に変化してるな」
木村「コントロールは安定していませんが、まあ甲子園初登板の初回でこれなら上出来ですね!」

真田「さすがは未来の赤竜のエース! ナイスピッチングだったよ!」
小田切「どうも」
吉田「相変わらずクールだな。まあ緊張していないみたいだしこの調子で行こうな!」
矢吹「あまいですね。こう見えてもこいつは熱血野郎ですよ!」
真田&吉田「?」
小田切「それはお前だ!」
矢吹「まあ否定はしないけど」
真田「けどあの押して行くピッチングスタイルは熱血っぽい物を感じさせるね」
小田切「逃げて打たれるくらいなら向かって打たれた方がマシとは思いますけどね」
矢吹(本音じゃどっちも嫌で絶対抑えてやるって感じだけどな)
斎藤主将「とにかく吉田が言ってた様にこの調子で行こうな!」
小田切「はい!」

1回裏 赤0−0轟 小田切は三者凡退と初回を調子良く抑える!
小林(シュッ!)

ズバ―――ン!
真田「速っ!?」

霞「最後は144キロのストレートを見逃し三振とその実力は世代でも1、2を争うと言われているだけはありますね!」
武藤「確かに神童君と並び称されているだけはありますね」
木村「コントロールも悪くなさそうですし確かに末恐ろしい物を感じさせますね」

真田「弟子( キミ )の言う通り本当にやっかいなピッチャーだったよ」
相川「まあそのうち慣れますよ」
小林(相川さんか、この人から三振を奪うのは難しいが変化球には強いしストレート中心で行きましょう!)
内海主将(ああ、しかしボール球を振らせるのも難しそうだな)
小林(ええ。小細工は逆効果な結果になれそうですし押して行きましょう!)
内海主将(分かった!)

ズバ―――ン!
相川「昔より球速が上がっている分振り遅れるか」

霞「巧打者の相川君ですがストレートに振り遅れて空振り三振に終わります!」
武藤「145キロって1年生で斎藤君と同等の速さですか!?」
木村「ちなみに大会最速って何キロなんですか?」
霞「昨年の夏と今年の春で出た153キロですね。ちなみに記録を作った河島君はブルーウェーブで投げて既に10勝をマークしております。そして石崎君は既に投げていて1回戦に勝利しております!」
木村「153キロですか、今の若者は凄いですね!?」

小林(シュッ!)

ガキッ!
吉田「げっ、フォークかよっ!?」

霞「続く吉田君はピッチャーゴロと小林君も負けずと三者凡退に抑えます!」
武藤「三者三振とは行きませんでしたがさすがのピッチングですね」
木村「まだ1回ですがどちらも1年生とは思えないレベルですね。次の回も楽しみですよ!」

小林「さすがにレベルが違いますね」
内海主将「だな。どの選手もレベルが高そうだし2打席3打席と続くと怖いな」
小林「ええ。とにかく全力で投げ込んで行きます。幸いと言うか2回戦までは休めますから」
内海主将「人数ギリギリだからな。地方大会ならまだ休ませてやれたんだが」
小林「ええ。今日の相手は今まで戦った相手とは比べ物になりませんからね」

両投手立ち上がりは好調で以降も無失点に抑えて行く。

4回表 赤0−0轟 両投手好投を続け3回まで無失点に抑える!

カキ―――ン!
小田切「………………」

霞「ここまでノーヒットに抑えていた。小田切君でしたがここで小林君に打たれました!」
武藤「高めに浮きましたしスタンドまで行くと思いましたが届きませんでしたね」
木村「球威に押されている感じですね。小田切君の一番の長所はボールの重さかも知れませんね」
武藤「風祭さんにしろ工藤君にしろ球が軽いし斎藤君が引退する頃にはこの小田切君の役目は重要になるかも知れませんね」
霞「とにかく小林君の長打でノーアウト2塁のピンチを迎えました!」

吉田(このチームは足や小技は使って来ない。とにかく全力で投げて来い!)
小田切(コクッ!)

ガキッ!
森山「あっ!?」

霞「森山君はストレートを打ち上げてショートフライに倒れます!」
武藤「1アウトランナー2塁で3番の内海君ですか、確かチャンスに強かったし敬遠も1つの手ですかね?」
木村「地方大会のデータ見ると4、5、6番は本数と打点も多いし歩かせるとかえって怖いと思うが?」

小田切(シュッ!)

カキ―――ン! パシッ!
相川「ふう」

霞「セカンドを抜けるかと相川君が追いつき2アウトランナー2塁となりました!」
武藤「良い当たりだったんですが相川君の好守に阻まれましたね」
木村「130キロ後半と結構速いのに易々合わせて来るところはさすがですね」

箕輪「ぬぉ―――!」

カキ―――ン!!!
小田切「なっ!?」

霞「入った。ここで打ったのは轟天農業の4番、箕輪君だ。打球はレフトスタンドに入り轟天農業高校が2点を先制しました!」
武藤「これは意外ですね。まさか赤竜を食っちまうんじゃ」
木村「どちらも全国レベルなんだからそうなってもおかしくはないだろう」
武藤「そう言われたらそうですって感じなんですけど、赤竜高校は夏春準優勝とレベルが高いですからね」

吉田(ほっ、どうやら監督は続投を希望らしい一度打たれたくらいでへこたれるんじゃないぞ!)
小田切(分かっています!)
吉田(それとここから強打者が続くし出来れば低めに投げてくれ)
小田切(コクッ!)

カキ―――ン! パシッ!
斎藤主将「ふう」
橋本「くそっ! やっぱり真芯でとらえないと飛距離は出ないか!」

霞「良い当たりですが思っていたよりは飛距離が出ずレフトフライで3アウトチェンジです!」
武藤「しかしここで轟天農業が2点を先制か」
木村「まあ赤竜高校も次から2打席目になるし面白くなって来ましたね」

吉田「後続はなんとか抑えたな。このままエンジン全開で行こうぜ!」
小田切「はい…………しかしあの一発には驚きました!?」
真田「これも誰かの打撃指導のせいだね!」
吉田「悪かったな。それにセンスある奴に教えるのって楽しいんだよ!」
矢吹「そう言えば俺や村田にも楽しそうに教えてくれましたね」
吉田「いやー将来そう言うコーチ業も良いなと思っている年頃でして」
真田「…………発想がおっさんくさい?」
吉田「10代の人間におっさんはないだろう!」
真田「てへっ♪」
斎藤主将(先制されたのに余裕があるな。まあプレッシャーに押し潰されるよりはマシか)

橋本「すまん」
小林「まだ4回でランナーいなかったし良いさ」
内海主将「2点は取れたんだ。このまま守って行こう!」
橋本「はい!(と言ってもうちは守備がお世辞にも良いとは言えないからな)」

4回裏 赤0−2轟 箕輪の一発により轟天農業が一気に2点を先制する!
小林(シュッ!)

ズバ―――ン!
真田「本当にタイミングが合わないよ!?」

霞「最後は144キロのストレートで空振り三振と見事なピッチングを見せます!」
武藤「やっぱりレベルが高いですね」
木村「現役の頃の垣内さんとか思い出しますね。と言ってもあの人は立ち上がりが悪かったし当てはまらないかな」
武藤「まあノビでは負けてないし奪三振も多いし似たところもありますね」

小林(シュッ!)

ガキッ!
相川「なんとかセーフか」

霞「ボテボテの当たりでしたが打球はショートの深いところに飛び相川君は内野安打で出塁します!」
武藤「こうやって見ると轟天農業って鈍足の選手や守備の下手な選手が多そうですよね」
木村「爆発力はあるが安定感はないってところか」
霞「部員も9人ギリギリですし確かにそう言う評価も多いですね」

内海主将(小林はクイックも上手いし走って来たら刺せるはずだ。バッターに集中しよう!)
小林(コクッ!)

カキ―――ン!
橋本「オーライ!」

パシッ!
吉田「届かないか」

霞「センターの深いところでしたが橋本君が追いついて2アウトです!」
武藤「センターの橋本君は打撃守備共に落ち着いて見られますね」
木村「確かに橋本君は目立ちませんがチームでも重宝する選手ですね」
霞「ちなみに打率と打点ではチームトップと目立ってないのが不思議なくらいです」
武藤「それは確かに不思議ですね?」

斎藤主将「もらった!」

カキ―――ン!
小林「綺麗に打つな!?」

霞「142キロのストレートでしたが打ち返しセンター前に抜けてこれで2アウトランナー1、2塁!」
武藤「相変わらずバッティングセンスがありますね」
木村「まあ4番だしセンスなきゃ打たせられないだろう」
武藤「それはそうなんですけどね」

小林(シュッ!)

ズバ―――ン!
村田「くそっ!」

霞「ピンチを迎えましたが最後はMAX145キロのストレートで三振を奪うと無失点に抑えました!」
武藤「なんと言うかスター性を感じさせる見事なピッチングでしたね」
木村「さすがにエースだけあってピンチには強い見たいですね」

橋本「ちょっと怖かったけど、なんとか無失点に抑えられたな」
内海主将「結果は空振り三振だが、とんでもないスイングだったな!?」
小林「体格から言ってパワーヒッターって感じですけどね」
内海主将「うちの関根も1年とは思えないパワーがあるけど、他にもいるもんだな!?」
関根「全国大会ですから凄い1年も出て来ますよ」
箕輪「とにかくこの調子で抑えて行くぞ!」
全員「おう!」

村田「すみません!」
斎藤主将「まだ4回だ。次の打席で打てば良い」
真田「なんかタイミングが合わないんだよね?」
吉田「うちのエースと同じタイプだからな。そりゃ打ちにくいだろう」
真田「それもそうだね」
斎藤主将「誉められてるんだろうか?」
篠原「まあまたチャンスは来ますよ」
斎藤主将「だな」

5回も両投手は無失点に抑えて試合は6回へ進む。

6回表 赤0−2轟 両投手好投を続け3回まで無失点に抑える!
小田切(さすがに少し疲れて来たな)

ガキッ!
岡島「まだ重いな!?」

霞「岡島君はセカンドゴロに倒れて1アウトです!」
武藤「球速が130キロ前半と落ちてますが球威は健在の様ですね」
木村「スタミナが落ちていると言っても下位打線じゃ打てそうもないですけどね」

小林「ここだ!」

カキ―――ン!
矢吹「むんっ!」

パシッ!
霞「三遊間を抜けるかと思いましたがここで矢吹君がファインプレイを見せます!」
武藤「今の打球に良く追いつきましたね」
木村「1年ながらレギュラーなのはダテじゃないって事ですね」
霞「ちなみに矢吹君は地方大会でも3割台の打率を誇っております」
木村「それで7番ってのが恐ろしいですね」
武藤「まあ赤竜打線は全国でもTOPクラスの打線ですからね。スタメンなら巧打者に入るんでしょうね」

矢吹「後ろは任せろ!」
小田切(ふう、頼りになる奴だ…………スタミナ的にもこの回で降板だろうし後1人全力で行く!)

ズバ―――ン!
森山「なっ!?」

霞「最後は136キロのストレートを見逃し三振!」
武藤「速いだけあって重そうですね」
木村「しかし次の回からクリーンナップだしこの調子で行けますかね?」

小田切「やはり次から交代ですか?」
中西監督「ちょうどお前の打席だから代打を出すつもりだ。それに少し疲れも見えて来たしな」
矢吹「確かに球速も落ちて来たけど、まだ持つと思うけどな?」
篠原「だとしても2点差つけられてるしここで攻撃に切り替えたいってとこだろう!」
小田切「まあ打たれましたし仕方ないですね」
中西監督「6回を2失点とこの舞台でなかなかのピッチングだったぞ。胸を張ってマウンドを降りろ!」
小田切(コクッ!)

中西監督は世辞なく誉めたつもりだが同世代の小林に比べて明らかに劣っていると自覚した小田切は不満ながらも渋々とマウンドを離れる。
矢吹「あれは納得した顔じゃないな」
真田「負けん気が強くて良いじゃん。斎藤も初めての甲子園じゃ7回1失点で降板だったし負けてないと思うけどな」
吉田「まあ斎藤の場合はケガで欠場したんだけどな。今日の轟天農業は初めて対戦した雪影高校に勝るとも劣らぬ強さだしやっぱり小田切は良いピッチングだったよな」
真田「珍しく四死球もゼロだったし調子が良かったのは間違いないね」
篠原「多分、相手のエースと比べてるんだろう」
矢吹「それはありそうですね」
篠原「ま、切り替えて次は攻撃だな」
矢吹「うっす!」
小田切(後はみんなに任せるだけか)

内海主将「疲れが見えて来たかな?」
箕輪「ええ。続投するなら見て行くのも手ですね」
橋本(次で3打席目だし慣れて来たから代えないで欲しいんだけどな)
小林「キャプテン達が出たらお前らも打ってくれよ」
関根「そうそう打てるとも思えないが、まあその時は打って見せるよ!」
橋本「ああ!」

6回裏 赤0−2轟 小田切は6回を2失点と初舞台ながら見事なピッチングを見せた!
霞「小田切君からの打席でしたがここで仕掛けて来ました。ピンチヒッターの山口君です!」
武藤「ここで小田切君を代えましたか」
木村「レフトに1人、控えに2人と投手も豊富だし良い采配だと思いますよ」

小林(シュッ!)

ズバ―――ン!
山口「………………」

霞「代打は失敗か、あっさりと三球三振で1アウトです!」
武藤「パワーはあるんですがミートは下手ですからね」
木村「一発に期待したんでしょうか?」

小林(シュッ!)

コツンッ! パシッ!
霞「サード前のセーフティバント狙いですが勢い良く関根君がキャッチしファーストに送球します!」
武藤「良い出足ですね。真田君の足でも難しいかな?」
木村「ふむ」

関根「ふんっ!」

ビュ―――ン!
真田「やばいかもっ!?」

霞「きわどいですが判定はギリギリセーフで1アウトランナー1塁となります!」
武藤「凄い足でしたが関根君も凄い肩ですね。真田君、また速くなったのかな!?」
木村「攻撃、守備共にハイレベルですね」
武藤「と言うか轟天って強肩の選手が多いですね。投手に転向したら大成する選手もいるんじゃ?」

真田「またピンチですか!?」
小林「クイックしても刺せないとはとんでもない足だな!?」

霞「きわどいですが盗塁も成功しました。そして相川君は粘ってフォアボールで1アウトランナー1、2塁と再びチャンスを迎えました!」
武藤「地味ですがこの1、2番は本当にチャンスメーカーですね」
木村「そして次はクリーンナップか、面白くなって来ましたね!」

小林(しかし良く打つと言うか小技の上手いチームだな。次は小技がない分、みんな打撃力が高いからな。気を引き締めていくぞ!)

ガキッ!
吉田「しまった!?」

霞「ここの決め球はなんとスライダー、吉田君は高く打ち上げてセンターフライに倒れます!」
武藤「2アウトランナー1、2塁で斎藤君ですか」
木村「ダブルプレーにならなかっただけマシですね」

斎藤主将(打つ! 小田切の好投は無駄にできないここで決めてやる!)
内海主将(なんか目の色が変わった!? ここは慎重に行くぞ!)
小林(はい!)

カキ―――ン!!!
全員「なぁ―――!?」全員「行け―――!!」

霞「入った―――145キロのストレートをレフトスタンドに叩き込んだ。これで3対2と逆転しました!」
武藤「勝負強さは最後の夏でも関係なしですか、プロになってからの成長を考えると末恐ろしさを感じさせますよ」
木村「バッターとしても凄いと聞いてましたが、ここで逆転3ランを打つとは噂に偽りなしですね」

小林(シュッ!)

ズバ―――ン!
村田「くそっ! 3打席でかすりもしないとは!?」

霞「村田君は相性が悪いのか145キロのストレートに手が出ず空振り三振!」
武藤「まあ1年とは思えない球速とノビですからね」
木村「怪物ですね。3年後にはどんな成長しているんでしょうか?」

小林「………………」
内海主将「気にするなと言っても無理だろうが、まだ試合は終わってないし頑張ろう!」
小林「はい!」
橋本「しかし絶好調のあいつから3打数2安打とは…………さすがは斎藤さんだな!?」
関根「小林と同等かそれ以上の奴と戦った事があるんだろう。まだ試合は終わってないし俺達も活躍しようぜ!」
橋本「おう!」

真田「会心の一撃で一気に逆転ですよ!」
斎藤主将「球速があった分、飛距離が出たからな」
吉田「なんで斎藤は簡単に打てるんだよ?」
斎藤主将「バカ言え! そうそう打てるピッチャーじゃないぞ! とにかくこの点差を守って行くぞ!」
村田「それで代わりのピッチャーは誰なんすか?」
中西監督「当初の予定通り工藤で行く!」
村田「工藤が悪いとは言いませんが1点取るのもやっかいな相手なのに」
中西監督「と言う事だ。残り3回無失点で抑えられるか?」
工藤「抑えて見せます!」
斎藤主将「良し! 次のピッチャーは工藤だ! 俺達も援護するぞ!」
全員「おう!」

7回表 赤3−2轟 斎藤の活躍で逆転に成功しマウンドに向かうのは1年の工藤!
霞「先ほど小田切君に代わって代打で出場していた山口君はサードのポジションに代わりにサードにいた福西君がベンチに戻り1年生の工藤君がマウンドに向かいます!」
木村「1年生ですか、それでどんなピッチャーなんですか?」
武藤「地方大会で観ましたが技巧派タイプでしたね。1年生ながらなかなかのコントロールですよ」
木村「先ほどの小田切君とは対極的なタイプだし慣れないとかなり大変そうですね」
霞「そして轟天農業はクリーンナップからの攻撃と注目どころです!」
木村「楽しみですね」

吉田「慎重にコース狙って来い!」
工藤「はい!」

福西「ってなやり取りを多分しているんでしょうが大丈夫なんでしょうかね?」
中西監督「代えた事を怒っているのか?」
福西「いえいえ。守備固めする監督の気持ちも分かります。ですが代えられるのは悲しいんですよ!」
中西監督「と言ってもな。山口の方が守備が上手いし小林からは連打も厳しそうだし山口の一発に期待したいところだ」
福西「どうせ俺は打撃も守備も下手ですよ!」
中西監督「いや、スタメンレベルには十分達していると思うぞ。まあ斎藤達のレベルが高過ぎて地味に見えるけどな」
福西「うわーん!?」
小田切(工藤、後は頼む!)

カキ―――ン!
工藤&吉田「っ!?」
山口「行かせん!」

パシッ!
内海主将「バッティングだけかと思ったけど、守備も上手い!?」

霞「サード抜けるかと思いましたが山口君がキャッチし1アウトです!」
武藤「抜けてたら2ベース、いや内海君の足ではシングルでしょうか、しかし良く捕りましたよ」
木村「代わったところに打球が行くと言いますけど本当に来ましたね。しかし武藤君の言う通り良い守備でしたね」

箕輪「ダメじゃないですか、狙うならファーストですよ」
内海主将「すまんすまん。流し打ちには慣れてないんだよ。それとお前の場合は無理に流さず普通に打った方が良いと思うぞ!」
箕輪「そうですね。見たところコントロールに気を付けるだけだし当てるだけなら十分ですね」
内海主将「悪いが後は頼むな」
箕輪「はい!」

吉田(問題は箕輪だな。小林や橋本よりマシそうだけど、相性はかなり悪そうだ。それにミートゾーンも広いからな。とにかく低め中心で行こうか!)
工藤(コクッ!)
箕輪「うっら―――!」

カキ―――ン!
工藤&吉田「っ!?」

霞「飛距離は文句なしだがレフト線を大きく切れてファールだ!」
武藤「しかし凄い飛距離ですね。2年生の中でもかなり上のパワーヒッターになるのかも」
木村「大会で一番の強打者って言ったら誰になるんですか?」
霞「それは高校本塁打記録保持者の転生高校の広瀬君でしょうね」
武藤「そうなんですか? 名雲君や高須君より打っているのか」
霞「ええ。甲子園通算でも現在15本と高須君の記録を抜くかも知れませんけどね」
武藤「7本で並んで8本で抜く訳か9本なら1大会最多と通算本塁打で一気に抜くな。しかし厳しいと思いますけどね」
霞「ええ。しかし夢があって良いじゃないですか!」
武藤「それは確かに」
木村「まあ今は箕輪君ですね」
武藤「(自分から話題を変えたのに?)まあ、そうですね」

吉田(低めでもあの飛距離か、どうするかな?)
工藤「………………」

スト―――ン!
箕輪「まあ良しとするか」

霞「最後はフォークを見逃しフォアボール!」
武藤「うーん、あのファールからストライクが入らなくなったか、しかしコントロールに定評のある工藤君が四球を出してコントロールの悪い小田切君が無四球とは変な試合になりましたね」
木村「それで次はチャンスに強い橋本君でしたか」
武藤「得点圏でないと言っても怖いバッターですが、今日は当たっていませんね」

吉田(とりあえずコース付いてヒットなら仕方ないと割り切るしかないか)
工藤(ストレートと変化球でなんとかコース付いて見せます!)
吉田(えっ?)
工藤(シュッ!)

スト―――ン!
橋本「くっ!?」

ガキッ!
霞「ボール球のフォークになんとか当てたが打ち上げサードフライで2アウト!」
武藤「上手い投球術ですね。橋本君の調子が悪いのもありますが工藤君のピッチングもお見事でしたね!」
木村「確かに経験を積めば良いピッチャーになりそうですね」

吉田(お見事、次の関根も同じ調子で頼むぞ!)
工藤(はい!)
関根「見事に抑えられたな」
橋本「面目ない。しかし前のピッチャーとかなりタイプが違うから合わせるのがやっかいだぞ」
関根「確かにな…………俺の好きなサウスポーじゃないが、なんとか合わせて見るか!」

工藤(シュッ!)

ガキッ!
関根「確かにタイミングを合わすのが難しいな」
霞「関根君も打ち上げてセンターフライに終わりランナーは1塁残塁でした!」
武藤「タイミングが合っていませんね。しかしあんな打ち損じがセンターフライとは関根君も凄いパワーでしたね!?」
木村「パワーだけなら村田君と並ぶほどかも知れませんね」

真田「ナイスピッチング!」
吉田「立ち上がりが怖かったがその後は見事なコントロールだったな!」
工藤「はい。ファーストに打たせないよう必死に投げましたから!」
村田「相変わらずむかつく奴だな!」
工藤「お互い様だ!」
真田「相変わらず仲が良いのか悪いのか分からないね?」
吉田「まあケンカするほど仲が良いって奴じゃないのか?」
斎藤主将「疑問形で言ってもなとにかくこの調子で行くぞ!」
全員「おう!」

7回裏 赤3−2轟 代わった工藤も調子良く抑えて赤竜高校がリードを維持する!
小林(シュッ!)

ガキッ!
篠原「ちっ!」

霞「なんとか当てましたがボテボテのファーストゴロで1アウト!」
武藤「3点取られたとは言え140キロオーバーのボールがドンドン決まっていますから普通は打てませんよ!」
木村「速さもですが手元でかなりノビるらしいですからそっちがやっかいなんでしょうね」

矢吹「うらっ!」

カキ―――ン!
平塚「あれ?」

ポロッ!
矢吹「くそっ、エラーで出塁かよ! ようやく慣れて来た様な気がしたし打てると思ったんだけどな」

霞「ショート真正面の当たりでしたが平塚君が落として矢吹君がエラーで出塁しました!」
武藤「ここに来て守備の悪さが出ましたね」
木村「焦るほどの打球でも状況でもなかったのにな」

平塚「よりによってこんな大舞台でやっちまった!?」
内海主将「落ち着け! とにかくエラーをいちいち気にするな!」
箕輪「そうですよ。試合はまだ終わっていません。今日活躍できなくても勝って行けば勝って行けば活躍だってできます!」
森山「そうそう。僕達に取っては最初で最後の大会だし楽しんで行こうよ!」
平塚「だな。次は打つぞ!」

小林(シュッ!)

ズバ―――ン!
山口「2打席目もダメか」

霞「山口君は完全にタイミングが合わず空振り三振に終わります!」
武藤「また145キロか、決め球は特に凄いですね。奪三振って何個でしたっけ?」
木村「今ので14個目だな」
武藤「ここで初めて投げるとは思ないピッチングですが記録には届きそうもないですね」
霞「やはり夏は良いですね。どんどん隠れた名選手が出て来ますよ!」
武藤「春にも出る時は出ますけどね」

小林(シュッ!)

ズバ―――ン!
工藤(打席に立つと更に凄まじいな!?)

霞「やはり最後は145キロを記録と工藤君も見逃し三振に終わって3アウトチェンジです!」
武藤「初打席で小林君相手は難しいでしょうね」
木村「代打で出た山口君も2打席連続で三振ですからね」

小林「残り2回か、抑える前にまずは同点にしないとな」
橋本「ふがいない俺を許してくれ」
小林「落ち込んでる暇があったら打つ算段でも考えてくれ」
橋本(グサッ!)
関根「ランナー返すのは俺達の仕事だからな。勝負どころは9回かな!」
小林「まあ8回でお前達にまわったら逆転してるだろうからな」
橋本「次は打ちます!」
関根「表情とセリフがあっていないな」

8回表 赤3−2轟 ランナーを出すが小林は動じないピッチングを見せて無失点に抑える!
工藤(シュッ!)

スト―――ン!
小関「控えとは言えさすがは名門だな。結構落ちるぞ!?」

霞「最後はボール球のフォークを空振り三振し1アウトです!」
武藤「高校生にしてはレベルの高い方ですかね」
木村「と言うよりキレが良いんだろう。1年生にしてはレベルが高い方だと思うぞ」

平塚「ぬぉ―――!」
吉田(すげえ気合いだな。ま、力んでるならボール球を振らせれば良いか)
工藤(シュッ!)

ガキッ!
村田「あっ!?」

ポロッ!
工藤「………………」

霞「なんでもないファーストゴロだが後ろに逸らした。相川君が今捕るがファーストは間に合わずエラーで平塚君が出塁する!」
武藤「エラーの借りをエラーで返すとは珍しいですね!?」
木村「と言うよりどうやったらあんななんでもない当たりをトンネルにできるんだ!?」
霞「そう言えば木村さんは村田君の守備を観るのは初めてでしたね。彼は毎試合1回以上はエラーすると言われているのでエラーキングとも呼ばれています!」
武藤「当然の様に嘘の呼称を作らないで下さい。まあ地方の決勝戦を例外としてエラーは良くしていますよ。エラーキングってのは白銀さんの作り話ですけど」
木村「ふーん、しかし今日は当たってないし代えても良いと思うが?」
武藤「まだ1点差ですからね。バッティングの良い村田君は代えたくなかったんでしょうね…………多分」

村田「悪い」
工藤(くそっ! 慣れたつもりだったが、僅差の試合じゃ怖いな!)
吉田(落ち着け! 幸いランナーの足は遅い。次のバッターでゲッツーを取るぞ!)
工藤(そうだ。落ち着いて抑えればなんとかなるはずだ!)

コツンッ!
岡島「ほっ、このコースなら上手く行ったな」
村田「うぉ―――!」

パシッ! シュッ!

先ほどのエラーを気にしてか村田が凄まじいダッシュを見せてセカンドへと送球する。

ビュ―――ン!
矢吹「だぁ―――!?」

しかしボールはショートの頭を大きく越えてレフトに行く。
斎藤主将「まったく、ここまで盛り上げなくても良いだろうにっと行け―――!」

ビュ―――ン!
平塚「うげっ!?」

しかし斎藤の足が速く送球も確実だった為か平塚はサードに間に合わず刺せられると村田の悪手を斎藤が帳消しする活躍を見せる。
霞「小技はないと思っていましたがここでは正攻法の送りバントで来ました。しかし村田君が悪送球しランナーの平塚君がサードにも走りましたが斎藤君の好返球でアウトと結果的にはバント失敗となるんでしょうか?」
武藤「そうですね。今日の試合は守備にしろ走塁にしろミスが目立ちますね。高校生らしいと言えばらしいんですが」
木村「ま、これで2アウト1塁ですね」

工藤「助かった」
村田「すまん」
斎藤主将「やる気があるのは結構だけど、ボールはちゃんと握って投げような」
村田「はい!」
吉田「危うく得点圏で小林にまわるところだったな」
斎藤主将「仮に出ても歩かせる事もできるけどな。工藤には不本意だと思うが」
工藤「…………それが勝つ為なら従うだけです」
斎藤主将「間があったな。作戦が気に入らないってならお前はまだまだ上手くなるよ。それでこそ未来のエースだ!」
真田「そんな事言ったら好投した小田切君が気を悪くするよ!」
斎藤主将「良いんだよ。同じチームで切磋琢磨できるなんて羨ましいじゃないか」
真田「ほほう。つまり両方にエースとささやきライバル心を刺激させててのひらで操るとは貴方もなかなかの策士ですな〜♪」
斎藤主将「ちょっと違うがまあ2人で刺激しあって成長して欲しいな! とそれより次は小林だ。打たれても良いから堂々と勝負してやれ!」
吉田「大丈夫かよ」
斎藤主将「ランナーたまる方が怖いしな」
吉田「確かに」

平塚「せっかくのチャンスを潰しちまったぜ」
森山「また落ち込んでるの…………多分、小林がなんとかしてくれるよ」
平塚「ふっ、後輩に格好良いところを見せたかったぜ」

小林(勝負は9回だが、ここで俺が決める!)
吉田(バッターとしてもやっかいと本当に斎藤みたいだな。しかしその斎藤が工藤に任せたんだ。期待に応えて見せろ!)
工藤(必ず抑える!)
小林(強振で行くぞ!)

カキ―――ン!!
全員「ギャ―――!?」全員「行け―――!!」
真田「届け!」

パシッ!
全員「ほっ」全員「そんなー」

霞「会心の当たりと思われましたがやはり甲子園は広いのか打球は失速しセンターの真田君がキャッチし3アウトチェンジです!」
武藤「多分、逆風もありましたね。でなければ球威の軽い工藤君のボールが小林君のパワーに勝てる訳はないと思いますよ」
木村「バッターの小林君もまだ1年でこの場面だし力んだ結果100%とらえる事はできなかったんじゃないですかね」
霞「どちらかか、もしくは両方の結果が出たんですかね。まあ初対戦の1年生同士じゃらしいと言えばらしいかも知れない結果でしたね」
武藤「そうですね。どっちも発展途上みたいだし」
木村「来年、再来年の成長を見るのも楽しみだな」

小田切「ナイスピッチング!」
工藤「最後は運が良かっただけ」
矢吹「なんの運も実力のうちだ。それに真っ向から勝負して抑えたんだ。きっと監督もキャプテンも評価してくれるさ」
小田切「俺も個人的には気に入らんが、ま、勝負事には運も大事な要素ではあるな」
工藤「まあな」
村田「さすがは赤竜の次期エース達だ。良くぞ抑えてくれた!」
矢吹「しかし悪送球するとは珍しいな。毎回トンネルは見てるけど」
村田「すまん。練習は一生懸命しているんだけど」
工藤「当然だ。だからこそ許してやってるんだからな」
村田「ぐう!? 今日だけは何も言い返せん!?」
矢吹(今日『も』の間違いだろう)

真田「なんと言うか未来の赤竜野球部も大丈夫そうだね」
吉田「おいおい。引退するにはまだ早いぞ」
斎藤主将「良いチームメイトに恵まれてるみたいだしあいつらは問題なさそうだな」
真田「さてさて斎藤は次のキャプテンを誰にするのやら?」
吉田「だから早いって」
斎藤主将「ま、その時をお楽しみにってところか(実際、俺も楽しみなんだけどな。あいつらがどんな選択をするのか)」

8回裏 赤3−2轟 運が良いのか悪いのか赤竜高校はエラーが続くがこの回も無失点と工藤が好投を見せる!
小林(リベンジ!)

ズバ―――ン!
真田「おのれ〜!」

霞「期待の真田君からでしたがバント失敗で三球三振に終わります!」
武藤「追加点の欲しい場面ですがこの回も調子が良いですね」
木村「スタミナやコントロールもあるし現在ルーキーで活躍している天野選手みたいですね」
武藤「コントロールは天野ほどじゃありませんが、確かに速くノビるボールとか似ている要素もありますね」

小林(問題はこの人か、どうも相性が悪い)
内海主将(3打数1安打1四球だからな。それに前の回では空振りを奪うのが無茶苦茶難しかったし厳しいコース狙って行くしか手はないかな)
小林(そうですね。変化球に強いからストレート中心になるでしょうから―――決め球を変化球にするか!)
相川(多分、ストレート中心、問題はコースか)

ガキッ!
岡島「ダメだ!?」

霞「セカンドの後方に落ちた! 追い込んでからはカーブと意外でしたがなんとか合わせて結果はポテンヒット!」
武藤「1年の頃から見ていましたが本当に相川君は上手いですね」
木村「しぶといバッティングをしますね。ポジションも同じだしタイガースの鎖是を思い浮かべますね」

吉田「俺もいい加減打たないとな!」

ククッ!
霞「結局外れて最後はボールでフォアボール!」
武藤「また得点圏で斎藤君ですか」
木村「流れが赤竜高校に来てるかな」

内海主将「大丈夫か、スタミナがなくなったとかじゃないよな!」
小林「少しは疲れが出ましたがまだスタミナには余裕があります。どうも変化球のコントロールが上手く行かないので」
内海主将「そうか、なら大丈夫だな。次は斎藤さんだけど、今のお前ならきっと抑えられるさ!」
小林「はい!」
斎藤主将「勝負か、悪いが一気に決めさせてもらうぞ!」

カキ―――ン!
内海主将「また!?」

霞「145キロのストレートでしたがジャストミート! 打球は右中間を抜けてランナーの相川君はホームへ返る!」
武藤「最速のボールを良くも簡単に!?」
木村「速い球やノビる球に強いんですかね?」

箕輪「ホームは仕方ないがサードには行かせん!」

ビュ―――ン!
吉田「げっ!?」

霞「送球が少し逸れたが関根君が捕って今、吉田君にタッチし2アウトです。しかし相川君はホームに返って赤竜高校が1点を追加します!」
武藤「やっぱりライトの箕輪君の肩は凄いですね」
木村「うーん、確かに強肩でしたが途中で減速したんですかね。でないともっときわどい判定だったと思うんですけど?」

小林「2点差か、もう打たさない!」

スト―――ン!
村田「フォークだとっ!?」

霞「2アウトランナー1塁でしたが最後はフォークを空振り三振し3アウトチェンジ!」
武藤「今日の村田君は本当に良くないですね。それとも小林君とは相性が悪いんですかね」
木村「それは分からないですけど小林君の調子の良さと実力は確かですね」

橋本「今日のお前から4打数3安打4打点か、斎藤さんってのは本当に凄いんだな!?」
小林「まったくだ。ここまで屈辱的に打たれたのは水島以来だ」
橋本「まあな。ミートの上手さはどっちもどっちだからな。けどあいつに勝つ為には」
小林「ああ。無明実業に行ったあいつとも対戦したいからな」
関根「ならなおさら負けられないな!」
小林「ああ。後は頼む!」
関根「ああ!」
内海主将「この点差はきついな」
箕輪「終わってませんよ。それに内海さんや俺にもまわるんだし頑張りましょうよ!」
森山「そうそうここまで来たんだ。明るく楽しくそして勝とう!」
全員「おう!」

9回表 赤4−2轟 斎藤の活躍でさらに1点を追加する!
中西監督「それじゃこの回で終わりだ。1点取られたら風祭に代える。交代が嫌なら絶対にホームを踏ますなよ!」
工藤「分かりました!」
柚「ふう、今日の当番はなしか」
真田「ファンの人間は残念に思うだろうね」
吉田「まあな。けどここまで来たんだ。最後まで工藤に投げさせてやりたいじゃないか」
相川「無失点ですしここは続投でしょうね」
斎藤主将「それじゃ俺達も頑張って守ろうか!」
全員「おう!」

霞「試合もいよいよ9回です。2点差とここで終わるのか、轟天農業高校の反撃に期待しましょう!」
武藤「工藤君が続投ですか、最後くらいは斎藤君か風祭さんかと思ったんですけど」
木村「ここまで無失点だしここまで来たら最後まで投げさせてやりたいと俺も思うけどな」

森山(ああ言った物の自信はないんだよな。とにかくここは原点に戻って当てよう!)

ガキッ!
工藤「良し!」

霞「森山君はピッチャーゴロに倒れて1アウトです!」
武藤「タイミングが少しずれましたかね」
木村「うーん、ミートは上手そうですけど、技術的にはまだ未熟って感じですね」

森山「それじゃ後は頼むな」
内海主将「本当にいつも通りだなとにかく出て後は頼もしい後輩達に任せるよ!」
工藤「誰が相手でも抑えて見せる!」

カキ―――ン!
内海主将「やった!」

霞「低めのカーブでしたが綺麗にセンター前に打ち1アウトランナー1塁となりました!」
武藤「これで4、5、6番と強打者が続く訳ですね」
木村「箕輪君は今日ホームランを打ってるし怖いですね」
霞「ここでホームランが出れば同点となりますが工藤君は抑えられますでしょうか!」

工藤「ランナーを出したがホームは踏まさん!」

ガキッ!
箕輪「しまった。ボール球を振っちまった!?」

霞「ボール球のフォークボールでしたが打ち上げてこれは高く上がってピッチャーフライで2アウト!」
武藤「あっさりとは言えませんが、後1人まで来ましたね」
木村「流れは完全に赤竜高校ですね」

橋本「行けえ!」

カキ―――ン!
矢吹「抜かせるか!」

パシッ!
橋本「何っ!?」

霞「コールはアウトだ! 試合終了! 赤竜高校がリードを守ったまま勝利しました!」
武藤「結構、僅差でしたが結局は評判通り赤竜高校の勝利でしたね」
木村「走塁や守備は荒いところも目立ちましたがピッチングは荒削りでも才能ありそうだったりと未来性を感じさせる試合でしたね」
武藤「確かに小林君の存在のせいか今日は1年生が目立った感じですね」
木村「とにかくなかなか面白い試合でしたね。次の試合にも期待しましょうか」
霞「はい!」

真田「やあやあみなさん」
内海主将「真田さん」
斎藤主将「まあ、話しかけるのも悪いと思ったんだが、知り合った以上、経過が気になってな」
森山「それなら奇跡奇跡の連続で廃部どころか甲子園まで来れましたよ!」
吉田「正直、秋の出来事を思い出すといまだに信じられないけどな」
箕輪「そうですね。けど頑張れば夢は叶うんだと分かりました」
吉田「そうだな」
相川「こうやって見ると千里君が轟天に入ったのも運命的に感じるね」
小林「そうかも知れませんね。俺は引っ越して来て良かったと思っています!」
相川「それは何より彗星君も一緒に付いて来るとは君達は本当に仲が良いんだね」
橋本「変な言い方はやめて下さいよ」
小林「そうですよ。こいつは楓に付いて来ただけですよ」
相川「へえ」
橋本「納得するな! つうかそのネタはいい加減やめろ!」
関根「負けたとは思えないくらいテンションが高いな」
村田「本当にな」
内海主将「敗退して去るのは悔しいですけど、後は頑張って下さい」
斎藤主将「ああ。お前らの分まで頑張るよ!」
小林「期待していますよ!」
箕輪「優勝して下さい!」
矢吹「今まで戦っていた相手と思えないくらいフレンドリーだな」
小田切「そうだな。けどこう言うのも悪くない」
矢吹「確かに」

こうして赤竜高校は1回戦を突破した。新たなる世代を感じさせる内容に斎藤は満足し心の中でさらに成長を誓うのだった!