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中西監督「知っての通り今日の相手は流球高校だ。河島が引退したとは言え谷口はドラフト候補だ。十分注意する様に」
相川「谷口さんか」
斎藤主将「まあ確かに変化球に強い相川の活躍で試合の結果が決まるかも知れないな」
吉田「篠原を3番にしても面白いかもな」
中西監督「残念ながらオーダーは基本のままだな。それと今日の先発は風祭だ!」
柚「向こうは球種も多彩だし欠点もない…………私よりもずっと格上」
斎藤主将「だからこそ勝ったら自分の方が上って事だろう」
吉田「励みにはなるって事だな」
柚(コクッ!)
谷口主将「春にも観ましたが才能はありそうですが驚異ってほどじゃないって印象でしたね」
谷口主将「昨年は1対0と接戦だったし今年も1点争いになりますかね」
谷口主将「それじゃ俺は抑えるから得点の方は頼むぞ!」
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霞「甲子園大会2回戦、赤竜高校VS流球高校の試合をお伝えします。解説はお馴染みの武藤さんとゲストにはなんと斉天大附属の大島久監督に来てもらいました!」
大島「1回戦では木村だったおかげか、話が回って来て楽しそうなんでOKさせてもらいましたよ」
大島「毎回出場して解説している暇もないしな。こう言う経験は今しかできないさ」
霞「それでは監督として対戦のある赤竜高校はどう思われますか?」
大島「夏も春も準優勝と当然ですが強いですよ。特にここ数年でうちと同等の力を手に入れてますから私から言えば驚異的なチームですね!」
霞「それでは流球高校は?」
大島「メンバーも結構代わってますけど、総合力は高く機動力もあるとピッチャーからするとやっかいなチームですね」
霞「つまり先発がどれだけ抑えられるかがポイントになると?」
大島「まあ、そんな感じです。武藤からはなんかないのか?」
武藤「そうですね。やっぱり大島さんと同じくピッチャーがどれだけ抑えられるかがポイントになると思います。そう言う意味じゃ斎藤君を温存している赤竜高校が少し有利かな」
霞「それでは試合の始まりです!」
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吉田(盗塁は少ないが足は真田クラスだ。セーフティバントも上手いしバントしにくいコースへ投げて行こう!)
柚(コクッ!)
霞「新変化球のライジングナックルは相変わらず凄い変化ですね。ちなみに速水君バント失敗の三振です!」
大島「さすがと言うべきか初めて見る変化球だろうし1年にはきついだろうな」
柚(シュッ!)
霞「やはりライジングナックルを1打席でとらえるのは難しいのか霧島君も空振り三振で2アウトです!」
武藤「まあ霧島君は機動力は凄いですけど打撃は平凡ですからね」
大島「問題は次の3番からか、ここからをどう抑えるかで試合が決まるかな?」
柚(シュッ!)
霞「丸目君はキャッチャーフライと三者三振とは行きませんでしたが三者凡退に抑えます!」
武藤「立ち上がりからコントロールも良いし今日は絶好調ですね!」
大島「春よりもさらにレベルが上がっていると大した物だな。しかし丸目君も1打席で当てましたしそうそうは抑えられないか、ま、裏の谷口君のピッチングが楽しみですね」
霞「まだまだ試合は始まったばかりと言う事ですね」
柚(コクッ!)
斎藤主将「後はスタミナが何処まで持つかだな」
斎藤主将「まあ不安要素はあっても実力は高いんだ。お前がちゃんとリードしていれば問題ないだろう」
斎藤主将「それがキャッチャーだよ」
吉田「だな」
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谷口主将(この1、2番はうちよりもやっかいだから塁に出さないようにするぞ!)
谷口主将(リードはお前に任せる。自信を持ってリードしろ!)
霞「最後はアウトコースのシュートを見逃し三振!」
武藤「変化球だけと思われがちですが谷口君のコントロールは高校でも随一かも知れませんね」
大島「そして橋本のリード力も高校野球でも随一って言えるでしょうね」
霞「意外に評価が高いですね?」
武藤「実際、失点はあっても自責点は少ない谷口君とコンビですからこのコンビから点を取るのはかなり難しいですよ」
霞「実際、谷口君の防御率は高校通算1点台と非常に安定感がありますからね」
大島「マリーンズに行った浅野もこんな感じだったし将来は防御率のタイトルを獲るかもな」
武藤「確かにここまでの安定感を持っているのは斉天の佐伯君と赤竜の斎藤君くらいですかね」
相川(谷口さん、約束通り全国制覇して見せます!)
谷口主将(相川か、お前との対戦楽しみにしていたぞ!)
霞「ライト前ヒット! 得意のカーブを珍しく引っ張ります。これで1アウトランナー1塁です!」
武藤「ランナーが出ましたね。けど橋本君は強肩で送球も上手いですから走るのは難しいかな?」
大島「次はクリーンナップだしここは無理するところじゃないだろう」
相川(ここは無理せず吉田さん達を信じよう!)
谷口主将(向こうも意外性があると夏よりも成長しているな。その事を頭に入れてリードして行け!)
吉田(谷口か、特に苦手と言う訳でもないが得意でもないと、どうにも分からない相手だ。とにかく後ろには斎藤もいるしここはミート中心で行こう!)
谷口主将(OK!)
霞「スライダーを引っかけてセカンド正面のゴロとダブルプレーで3アウトチェンジです!」
大島「結果論ですがこうなるのなら走らせた方が面白かったですね」
霞「いまさらですね」
霞「そうですね。初回が終わりましたが両チーム無得点と、両投手、立ち上がりから調子の良さを見せます!」
谷口主将「いきなりヒットとはさすがは相川だな」
谷口主将「確かに赤竜高校を完封したピッチャーなんて聞いた事もないしな」
谷口主将「ふむ。つまり俺の役割は大変って事だな」
斎藤主将「そりゃ相手だって今日の為に頑張って来ている訳だからな」
相川「僕もヒットを打ちましたけど、あらかじめ予測していないと打てないボールばっかり投げて来ましたよ」
斎藤主将「当初の予定通り正攻法で問題ないだろう。俺はこのチームなら全国制覇できると確信している!」
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柚(シュッ!)
霞「最後もストライクが入らずフォアボールで出塁します!」
大島「ナックルの長所と短所は一緒で何処に行くか分からないと言うところですが、風祭さんのボールはそれを正確に現してますね!」
霞「うん。さすがは柚さんですね!」
柚(シュッ!)
霞「おっとパスボールだ。吉田君は後逸してランナーはセカンドへ進みます!」
大島「橋本君ほどじゃないですが吉田君もキャッチングが上手いですから。彼の存在も大きいですよ」
霞「となると吉田君が引退する来年も大変ですね」
霞「うーん、嘘のつけない人達ですね。ちなみに試合の方は末次君も歩かせるとノーアウトでピンチに入ってしまいました」
柚(まだ点を取られた訳じゃない。とにかく1人1人抑えて行く!)
吉田(そうだな。幸い下位打線だしここから抑えて行こう!)
柚(コクッ!)
霞「最後は135キロのストレートを見逃し三振と完全に予想外だった感じですね!」
武藤「ですね。それにストレートも速くノビると十分な武器だった事も頭に入れないといけませんね」
大島「ミートの上手い選手は少ないし確かにストレートを混ぜても面白いかもな」
霞「しかし1アウト1、2塁とピンチは続きます!」
柚(シュッ!)
霞「ストレートを混ぜて来たせいかボール球を振らされて空振り三振です!」
大島「初対戦のバッターにはいつもこんな感じだな。2打席目には奪三振率も少なくなって行くのもお決まりだがな」
霞「球数が多いのも気になりますね」
大島「そっちもお決まりですね。元々完投タイプじゃないし新球もコントロールは完璧とは言えないですしね」
谷口主将(やれやれバッティングは得意じゃないんだが、点が欲しければ自分の力で取れと言う事かな?)
柚(ここで終わらせる!)
谷口主将(とにかく当てなきゃ話にならん!)
相川「………………」
霞「ライジングナックルになんとか当てますがセカンド正面のゴロで3アウトチェンジです!」
武藤「打率は平凡ですが当てるのは上手いですね」
大島「確かに当てるのは上手そうですね。しかし無得点に終わったか」
霞「そうです。やっぱり柚ちゃんは凄いです!」
吉田「ふう、なんとか無失点に抑えられたな」
柚「この調子で行く!」
斎藤主将「奪三振も4個とボールもキレてるしコントロールが安定して行けばまず打たれないだろう!」
柚(コクッ!)
谷口主将(ふむ。狙った訳ではないが、あいつとはよくよく縁があるらしいな。変化球打ちの相川か、将来プロで競う相手になるかもな)
谷口主将「ああ。まあバッティングは専門外だしお前らに頼むよ」
谷口主将「おいおい。プロに入ってもお前に捕ってもらう予定なんだからそんな弱気じゃ困るぞ」
谷口主将「ジャイアンツかライオンズに行きたいんだが指名してくれると良いんだがな」
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谷口主将(問題はこいつだ。相川もやっかいだが斎藤は一発もあるからな。バッターとしては風祭に匹敵するやっかいな奴だ!)
斎藤主将(前は4番の一発で勝てた。けど相良さんはいない。今度は俺が決めなきゃならない!)
霞「期待の斎藤君でしたがアウトコースのスライダーを打ち上げライトフライに倒れます!」
武藤「まあ、斎藤君でも1打席で谷口君から打つのは難しいでしょうね」
大島「総合的な変化球のレベルはうちの佐伯以上と言えるかも知れないし当然と言えば当然か」
霞「じゃあ1打席でヒット打った相川君は大した物なんですね」
武藤「そう言う事ですね」
大島「センスは良いな。2年の今ならうちでもレギュラー獲れるだろうな」
斎藤主将「まあ相良さんなんかを見てると本塁打数は敵わないな」
斎藤主将「そうか、けど投げる楽しさは捨てられそうもないしバッター転向は有り得ないな」
谷口主将(シュッ!)
霞「届かない。当たりは悪いですが力でセカンドの頭を越えてヒットを打ちます!」
大島「あれでミートも上手いからな。結構油断はできないぞ」
谷口主将(やれやれ、またヒットと、良く打つな。次も新顔か)
谷口主将(了解!)
霞「ストレートを見逃し1ストライクです!」
大島「篠原か、秋に比べて遥かに上手くなっているし3年になればどれほど化けるのか末恐ろしい奴だな」
谷口主将(ふむ。バントは止めたか)
谷口主将(了解!)
霞「141キロのストレートに当てますがセンターフライと2アウトになります!」
武藤「タイミングは良かったんですがね。飛んだ場所が悪かったですね」
大島「しかしあのセンターも足が速いな」
霞「流球高校は機動力の野球を使う事で有名ですが、赤竜高校相手じゃあまり走って来ませんね」
武藤「全員が全員、足が速いって訳じゃないですからね」
大島「まあな。しかし真田クラスの足も3人いると出塁すれば一気にチャンスが増えそうでもあるな」
谷口主将(また新顔と続くな)
谷口主将(なるほど!)
霞「矢吹君はシュートを空振り三振!」
大島「見どころはありそうだがまだ1年と経験値の低さが見られるな」
大島「言い方は悪いがザコを相手にしたところで自慢にはならん。全国レベルのピッチャーから3割以上打ってこそ本物と言える!」
霞「そう言う事ですね」
谷口主将「この回もヒット打たれたな」
谷口主将「良い返事だな。けど守備より得点だな。なんとか2点は取って欲しいんだが」
谷口主将「あっちもそれくらい考えてストレートを混ぜてると思うが」
谷口主将「俺もストライクだと思ったボールを当てたがボールだったとやっかいなボールだったな」
谷口主将「役割分担で良いんじゃないか」
谷口主将「自分で考えて決めろ!」
谷口主将「そうだな。速水、期待しているぞ!」
工藤「しかし谷口さんか総合力じゃキャプテンより上かも知れないな」
工藤「そんな事より攻略法はあるんですか?」
斎藤主将「そんな物はないさ。球数を稼ごうにもあそこまでの完成度だと打たされて終わるだけだしそれに柚も球数が多いしその間に回復されそうだし」
斎藤主将「普通に打って勝つ! 無策の策ってところか!」
工藤「正攻法、当たって砕けろって事ですか、まあキャプテンらしいですね」
斎藤主将「1打席で合わせられると思っていたがちょっと調子に乗り過ぎたと思ってる。とりあえずコントロールと変化球は佐伯と同等かそれ以上だな。まずはボールに慣れる為にも当てて行く。少しずつ合わせて行く事だけを考えろ!」
真田「キャッチャーのリードもかなりやっかいだよ。少なくとも読んで打つのは難しいしやっぱり慣れるしかないのかな」
相川「2回でヒット2本打ってますしこのままで良いと思いますよ!」
斎藤主将「柚もなんとか2失点以内に抑えてくれ。谷口から取れる点はせいぜい3点だ!」
柚(コクッ!)
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霞「いよいよ7回ですと言っても投手戦が続くとバッターはだらしないですね」
大島「同感だがバッターもヒット打っているがホームを踏めないだけだしな。どっちもレベルが高いと思うぞ」
霞「そうですね。しかし7回、そろそろ試合が動き出すかも知れません」
大島「でここは1番からと打順も良さそうだしな」
吉田(1年のくせに自信満々と、どうやらスタミナが落ちて来てるの気付かれてるみたいだな)
柚(構わない。あの時とは違う!)
柚(間に合う!)
霞「速水君、ピッチャー前に転がしてなんとかセーフとセーフティバントを成功させます!」
大島「あれでサードの福西はバント処理が上手いからな。狙うなら村田のいるファースト方向それが最善だな」
吉田「やらせるかよ!」
吉田「やっぱり間に合わないか」
霞「警戒されている中、盗塁を楽々決めてノーアウトランナー2塁のピンチです!」
武藤「速水君は出塁率とヒットは多いですが実は盗塁数はそれほどでもないんですよね」
大島「簡単に成功させたのは風祭さんの大きなモーションのおかげですね。あれは河島選手や御影選手のフォームと同じで共通して走られやすいと言うのが特徴ですね。特にランナー背負った場面ではセットポジションでも大きく動作するフォームだからプロでもあまりおすすめしていないんですよね」
大島「まあな。ボールの威力が上がるってのが魅力でもあるんですが、あのフォームで投げるなら強靭な足腰を持っていないといけないとかスタミナの問題もあるんで誰も真似しないんですよね」
大島「多分、ピッチングコーチが良い顔しないってのが大きな理由かもな。実際はどうなのか分からんが」
柚(シュッ!)
霞「ライジングナックルを空振り三振! ちなみに奪三振もこれで10個目です!」
大島「普通のモーションでもセットポジションだと球威が落ちるが、トルネードだともっと落ちるからな。彼女の場合はコントロールも良いしあの2人とは全然別だと思った方が良いかもな」
武藤「そうですね」
吉田(丸目か、1年から3番打っているだけあってセンスは良いけど、どっちかと言えば5番や6番タイプの守備の選手だな。真っ向勝負で十分!)
柚(コクッ!)
霞「ファーストへのライナー、守備の危ない村田君でしたがキャッチし2アウトです!」
大島「いまさらだろう。俺も個人的には嫌いなバッターではないが来年以降は守備を重視しそうだしテストに落とさせてもらっただけとやはり良い物は持っていると思うぞ」
霞「そう言えば村田君は斉天のテストに落ちたんでしたっけ?」
大島「ああ。嘉神達の紹介でもあるし合格させてやりたかったんだけどな」
大島「ああ。どう言う知り合いかは分からんがあいつらに憧れて入部したいって言ってたな。結果は残念ながら不合格だった訳だが」
霞「なんか落としたわりに残念そうですね」
大島「個人的に強打者は好きなんでね。それに佐伯引退後のピッチャーは打たせて捕るタイプばかりだし仕方なく落としたってとこかな。それに人事の全権を俺が握っている訳でもありませんから」
霞「名門の監督も大変ですね」
大島「まったくですよ」
柚(ここまでヒットは打たれてないけど、フォアボール2個とプレッシャーに負けていた。ここで抑えて流れをこっちに持って行く!)
霞「これは凄い当たりですが右に切れてファールです!」
大島「1年からクリーンナップ打っているし当然と言えば当然だけどな」
霞「ちなみに常葉君は谷口君に続いて評価も高いドラフト候補です!」
柚(今のファールでこちらが先に追い込んだ。ボールは後1つ投げられるけど、コントロールはまだ完璧じゃないし勝負する!)
霞「なんかマウンドと打席で向かい合って格好良いですね」
大島「ふむ。カウントは2−2か、次で勝負する可能性もあるが」
柚(シュッ!)
霞「ライジングナックルを高く上げてセンター定位置のフライに終わります」
大島「セットポジションだから想像より変化せず打ち損じたってところじゃないのか」
霞「とにかく7回も柚ちゃんは無失点に抑えます!」
大島「まったくだ。元々完投タイプじゃないし6回持てば上出来と思っていたんだがな」
斎藤主将「走られてもリズム崩さないところはさすがだな」
柚「ホームベースを踏まさなければ問題ない」
村田「後は打って勝つだけですか誰からでしたっけ?」
吉田「斎藤からだな。3打席目だしそろそろ頼むぜ!」
斎藤主将「ああ!」
谷口主将「次は守備だ。いつまでも悩んでないでとっとと守備位置に行け!」
谷口主将(今、変化が連続で起こった様な? 変化が二重に続くなんてある物なのか? 見間違いじゃないとしたら正に魔球だなっ!?)
谷口主将「ああ。守って行こうな!(今は抑える事だけを考えよう!)」
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斎藤主将(ここでホームラン打ったら格好良いんだろうが、後ろは頼りになる奴らがいるしまずはヒットだな!)
谷口主将(相変わらず良い威圧感だな。だからこそこっちも本気で抑えたくなるとこいつとはプロに行ってもバッターとして対決して見たかったな!)
霞「エースと4番が向かい合っております。なんか格好良いですね…………ん? さっきも言った様な?」
武藤「確かに言いましたけど、この2人はドラフト候補ですしそう言うのも分かりますよ」
大島「勝負どころでの斎藤は怖いし確かに良い場面とも言えなくはないか」
斎藤主将「良し!」
谷口主将「ったくあっさりと打ちやがった」
霞「打球は右中間に斎藤君はセカンドストップです!」
大島「佐伯が完全に抑えたとは言えシュートには強そうなタイプだからな」
霞「とにかくノーアウトランナー2塁と表と同じく赤竜高校もチャンスを迎えました」
大島「まあ後ろは頼りになる後輩らしいしな」
村田「今度こそ長打を打つぞ!」
谷口主将「ふむ」
霞「凄い当たりですが大きく切れてファール!」
大島「うちに入っても守備面の不安がなければ4番を打ってただろうし当然と言えば当然だがな」
村田(くそっ! 速く振り過ぎた。もっと見て振らないとダメだ!)
谷口主将(ファールはファールだ。このままカウントを稼いで三振に仕留める!)
けど、バットに当てられなくもない。ここでキャプテンを返す!)
霞「今度は当たり損ねのファール!」
大島「その前にボール球を連続で振るところはまずいと思うがな」
霞「そう言えば振ったボールは両方共にボールでしたね」
大島「1球目はストレート、2球目はスライダーだったな。どちらも良いコースへ投げていた。村田君は自分で決めようと必死ですね。もちろんその姿勢は間違ってはいませんが後ろには篠原君もいるしもっと信じても良いと思いますけどね」
谷口主将(ふむ。これならもう1球ボール球で終わりそうだな!)
谷口主将(ふっ、最初にそれでヒット打たれたからな。大きく外すさ!)
霞「最後はストレート! 結局ボール球3つで三球三振となりました!」
大島「まあ状況によって変わるし4番なら決める場面とも言えるしな」
霞「残念ながら村田君は5番ですね」
谷口主将(これで1アウトか、それで次は?)
谷口主将(妥当だな。そんな顔するな。次の矢吹を併殺に取って終わらせような!)
谷口主将(こんなに読まれやすいのに名捕手とは意外な物だな?)
霞「なんと篠原君は敬遠し次の矢吹君で勝負を選択します!」
大島「既にドラフト候補と言われている篠原より1年の矢吹の方が楽だと思っているならここで決着はつくかも知れませんね」
谷口主将(ふむ。しかし得点圏では結構打ってたし警戒はした方が良いんじゃないか?)
谷口主将(チラッ!)
霞「これは最悪、サードの白江君が華麗にさばいてダブルプレーに終わります!」
大島「いや、最初から白江君の方に打たせたんでしょうね。谷口君は打ち取る技術もありますから」
霞「そう言えば谷口君がインタビューに答えた時に言ってましたね」
大島「ふーん、決め球はなくただ打ち取って行くだけのピッチャーね」
霞「はい。彼と話した時、変わったピッチャーと言うか人間性を持っていると思いましたね。勝敗にこだわっているようですがそれはチームか個人か良く分かりませんでした?」
大島「確かにな。とにかく赤竜高校もこれでチェンジと崩せないな」
谷口主将「一気にアウト2つとはさすがだな」
谷口主将「投手としては助かります」
谷口主将「恐悦至極!」
谷口主将「心外だな。本気で感謝してるのに」
谷口主将「無失点に抑えれば勝てると言う事ですか」
谷口主将「ふう、今日も大量点は期待できないか」
谷口主将「まあ、いつもの事と言えなくもないか」
真田「だね。ヒットを打つ事すら難しいのに連打はまず無理そうだし一発狙いの方が良いんじゃないかな?」
斎藤主将「だが大振りして当てるのは俺でも難しいしまずはコツコツやって行くのが大事だと思うけどな」
吉田「ならここは斎藤の意見に従うか」
吉田「ノーヒットのお前よりヒット打ってる斎藤の意見の方が大事だからな」
真田「うむ!」
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柚(疲労はあるけど、さっきは完成に近い変化になった。もう少しで本当に完成する。今日は疲れてるけど最後まで投げ切って見せる!)
霞「ライジングナックル、当たる様になって来ましたが末次君も打ち上げて1アウトです!」
大島「確かに意外なほど投げ続けているな。スタミナも上がって来たって事か」
柚(シュッ!)
霞「ライジングナックルですが120キロを記録しました! 当然ながら相沢君は空振り三振!」
霞「それに変化は大きかったですが今回は見た事もない変化でしたね」
谷口主将(見間違いじゃなかったか、くっくっく、これでますます面白くなって来たな!)
柚(どうした?)
吉田(いや、後ろに逸らさない様頑張るからもう1球今のボールを!)
柚(コクッ!)
霞「今度はライジングナックルと言うよりエアナックルでしたね。とにかく白江君も打ち上げて三者凡退に終わります!」
柚「とにかく後1回で終わる……と思う」
柚「打たれて降板した時に一応1勝した」
柚「今日勝てばその事も良い思い出に変わるから謝る必要はない!」
谷口主将「この回は3人で終わったか」
谷口主将「確かに打ちにくそうだがキャッチャーが捕っているんだ。なら打てるボールって事だ!」
谷口主将(と言っても延長になるとスタミナも持ちそうもないし9回で切欠を作らないとな!)
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谷口主将「なっ!?」
霞「打った! 右中間を抜けた。福西君はギリギリセカンドセーフ!」
大島「球速も出てたしコースも良かったと打てるとは思えなかったけどな。まあ福西は結構意外なところで打つからな。しかし見事なストレート打ちだったな」
柚(なんとか進塁打は打たないと!)
霞「そして続くバッターは打数は少ないですけど、地方大会では4割と打っている柚ちゃんです!」
大島「昨年も凄かったが確かに今年も負けていないな。もっともこの打線をいまだに沈黙させている谷口もさすがと言うべきか」
谷口主将(打たれた物は仕方ない。次を抑えて行くぞ!)
谷口主将(積極的に振って行くタイプと言う事か)
谷口主将(ふむ。まあリードはお前に任せる。それと送りバントはありそうか?)
谷口主将(しかし次からバントの名手が続くが…………いや、任せると判断したんだったな。良し構えろ!)
柚(やっぱり当てるのが精一杯か、けど最低限の仕事はできた!)
霞「ファースト正面のゴロ! しかしサードには投げられず相沢君はそのままファーストベースを踏みます!」
大島「これで1アウト3塁か、次はバントの上手い真田だしスクイズが決まるかな」
真田「悪いが相川君、僕がここで決めさせてもらうね!」
相川「もちろんです。試合に勝つのが何よりですから!」
谷口主将(結果的には送りバントと変わらなかったか)
谷口主将(問題は何球目で来るかか?)
谷口主将(それはまたずい分と積極的だな)
谷口主将(守備を信頼する訳か、確かにその方が失点は少なそうだな!)
真田「そう来ると読んでたよ!」
谷口主将「………………」
霞「打った真田君はサードまで走りますと素晴らしい脚力を見せます!」
大島「まあな。多分、スクイズをさせようと思ってあまく投げたボールを狙い打たれたんだろう」
相川「はい!」
谷口主将(分かるか?)
谷口主将「……丸目」
谷口主将「と言う事はヒッティングの可能性もある訳か」
谷口主将「どう言う意味だ?」
谷口主将「別にそれほど知ってる訳じゃないが……しかし良く見ているな」
谷口主将「ふむ。じゃあ指示は俺から出させてもらうぞ!」
谷口主将「バント警戒は当然として一応ホームスチールも警戒して行こう!」
谷口主将「ファースト以外は全員足も速いし信頼はしている」
谷口主将「ま、バッティングで活躍してくれないんだからこう言う時くらい活躍してもらわないとな」
谷口主将「外野も前進するからな。常葉もドジ踏むなよ!」
谷口主将「昨年の打球は偶然だがな」
谷口主将「だな。とにかく1点に抑えるぞ!」
霞「長いタイムも終わりました。状況は先程も言った通り赤竜高校が待望の1点を取り1アウトランナー3塁とチャンスは続いております!」
武藤「残り1回で2点差になったらまず敗北は確定と言えるでしょうね」
大島「つまり赤竜高校としたらもう1点取ってダメ押しにするか、流球高校としたらなんとか1失点に抑えたいと試合の勝敗が決まるかも知れない場面ですね」
霞「なるほど、それでは谷口君VS相川君、注目の対決です!」
谷口主将(最初はボールからストライクになるカーブだ!)
谷口主将(1年前にお前がリードした配球だろう!)
谷口主将(あの時は打ち取ったんだ。お前のリードは間違ってなかった。なら最初はこのボールで行く!)
霞「初球はボールからストライクになるカーブでした。相川君はバットを振ろうとするも止めて見逃し1ストライクです!」
武藤「良いコースですね。あれじゃスクイズも難しいですよ」
大島「確かにここしかないってコースに投げて来ましたね」
真田「うーん、僕のハッタリも効かなかったか」
真田「さてね」
真田(警戒してくれるならむしろ都合が良いけど、相川君は谷口君から打てるかな?)
相川(あの時と同じボールか、僕を本気で抑えに来てるな)
谷口主将(あの頃と同じなら今日も勝つのは俺だ!)
相川(そうだ。ずっとあの時の続きをしたかったんだ!)
霞「2球目はシュートをカットしてファール!」
大島「打席を見た感じスクイズはなさそうと思うが、2ストライクから送りバントをする奴でもあるからな」
霞「何はともあれこれで谷口君が相川君を追い込みました。果たして次のボールは?」
大島「普通ならな」
相川(シュートか、なら最後はスライダーかな? 谷口さんなら何球目に投げるんだろう?)
谷口主将(決め球はこいつだ!)
霞「なんと3球勝負で最後は143キロを記録と決め球はストレートでした!」
大島「確かにな。だが逆に言えば自分のバッティングをさせてくれない相手が谷口と相性が最悪なのかもな」
谷口主将(今回も俺の勝ちだな。ちょっと不満の残る終わり方だったが)
相川(この配球は今日も何回か見たのに……結局何もできなかったのか)
吉田(なんか失礼な事を考えてる気がするが、ここは打つ!)
谷口主将(さてと続くバッターもやっかいと、リードはお前に任せるぞ!)
霞「三遊間を抜けるかと思いましたがショートの末次君がファインプレーを見せてこの回は1失点で終わりました!」
大島「まったくだ。しかし打った真田も評価するべきだが逆転の切欠を作った福西も誉めるべきだな」
霞「ですね。とにかくこれで待望の1点を手に入れた柚ちゃんですが完封できるでしょうか!」
大島「最初から思っていたが彼女は風祭のファンなのか?」
霞「違います! 私はファンではありません!」
霞「私はファンではなく大ファンです!!!」
霞「こほん、失礼しました。とにかく待望の1点を取りました。このまま試合は終わるのでしょうか?」
大島「まあ風祭は安定感がないから安心はできないが今日の内容なら問題ないと思うけどな」
霞「とにかくいよいよ9回です!」
谷口主将「それじゃ2点頼むな」
谷口主将「そうだったな。ふむ。あの変化球はぜひ打席で見て見たかったしツイてるな」
谷口主将「相手の球威は軽いし問題ないだろう」
谷口主将「ん? 俺はここでも打ってるぞ!」
谷口主将「つまり俺達の責任は重大って事だな」
谷口主将「それじゃ行って来る!」
柚(後3人で完封勝利! やって見せる!)
相川「………………」
真田「残念ながら今回は相川君の負けだね」
相川「分かっています」
しかし今は柚ちゃんの事だよ。彼女は今まで勝ったと思った事は一度もないだろうね。今日の内容なら本当の意味で彼女の大切な1勝となるはずだよ!」
相川「もちろんです! 試合の勝敗は譲りません!」
真田「うむうむ。それでこそ僕の弟子だ!」
吉田「斎藤がムチなら真田はアメだからな。あいつは後輩の面倒見が良く気の利く奴だからお前も結構慕っているだろう」
村田「もちろんです!」
村田「まあ、中学の頃に散々味わっている俺達でも高校に入ると無茶苦茶きつくなりましたからね」
工藤「しかしキャプテンが約束してくれた全国制覇と言う目標があるから俺達は頑張れる!」
斎藤主将「そうか、良し! 後は俺が約束を守るだけだな。必ず勝って頂点に立とう!」
中西監督(やれやれ監督の出番はまったくなしだな)
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柚(後3人、でも私だけでなくみんなの為にも抑えて見せる!)
谷口主将(完封勝利を目前にして舞い上がるかと思ったがそんな事もない様だな。崩すのはなかなか難しそうだな!)
柚(球種はライジングナックルのみ!)
吉田(OK! 後ろには逸らさず最低でも前に落とす様にするから遠慮なく投げて来い!)
柚(コクッ!)
谷口主将(なんか速いせいかナックルと言うよりサンダーって変化だな。まあ当たっても毒も痛くもなさそうだし怯えず当てて行くしかないか!)
霞「初球は空振り1ストライク!」
大島「勝利を意識してなけなしの力を出してるだけかもな」
柚(シュッ!)
谷口主将(ふう、かすりもしないか、しかし凄いボールだ。こう言う魔球に憧れていた時期もあったな。しかしバットに当たらないボールはない!)
霞「2球目もライジングナックルを空振り2ストライク!」
大島「まあな。しかしピッチャーとしては見た事もないボールを打って見たいって気持ちもあるんじゃないか?」
柚(シュッ!)
谷口主将(ようやく当たったが)
霞「なんとか当てましたが結果はピッチャーゴロと1アウトです!」
大島「いや、代打を出すようだぞ」
霞「ええ。ピンチヒッターは蜂巣君です。地方大会では代打でそれなりに打ってはいます!」
吉田(確か2年だったな。ここでも代打で出てタイムリーを打っているし勝負強いタイプらしい。まあランナーもいないし気にする事はないか)
柚(誰が相手でも関係ない。全力で投げるだけ!)
吉田(そうだったな。俺も全力で捕るだけだ!)
霞「これは意外な結果! バットではなくミットに当てて打撃妨害でファーストへ出塁します!」
大島「谷口の打席から吉田は前に出て捕る事に集中している狙ってミットに当てる事も難しくないと狙ったのなら大した奴だな」
大島「しかし初球から打席の後ろに立って振るのは良くある事なのか?」
霞「うーん、前の打席では同じ感じでしたね」
大島「ふむ。なら偶然かな?」
柚(大丈夫、次を抑えて行けば問題ない!)
吉田(そうだな。とにかくもうあんな手には引っかからないから良いボールを頼むぜ!)
柚(シュッ!)
霞「センター前に落ちた。これで1アウトランナー1、2塁!」
大島「あのままジャンピングキャッチして確実に捕れるなら良いが、もしミスしたら1点取られたかも知れないし良い判断だったと思うぞ」
霞「ですね。そしてここでまたしても代打と勝負をかけて来ます!」
大島「ふーん、ここでそう言うタイプを出して来るか、流球もなかなか良い人材が多そうだな」
吉田(今のボールならヒットは仕方ないな。次を抑えよう!)
柚(さすがに握力がなくなって来た。けど、まだ投げられる!)
霞「生きたボールがまた来たって感じで守屋君は手が出ず空振り三振!」
大島「不死鳥? それはともかく良いボールを投げますね。そしてここで3番ですか面白くなって来ましたね!」
柚(これで終わる。力を出し切って抑えて見せる!)
相川「…………これで終わりか」
霞「完全にとらえたと思いましたが相川君がキャッチし試合終了です!」
大島「疑問形で言われてもな。しかし結局は真田君の打席の1球に泣いたって事ですかね」
大島「そのわりには表情は満足そうだがな」
霞「そうですか? ポーカーフェイスで私には分かりませんね」
霞「とにかく試合終了! 1対0と素晴らしいピッチングを見せた柚ちゃんは本当に素晴らしかったです!」
大島「しかし良い投げ合いだったな。あの2人のピッチャーは当分忘れそうもないな」
柚「勝った!」
谷口主将「ああ。俺達の敗北だ。完封勝利おめでとう!」
柚「あ、ありがとう」
谷口主将「相川も最後の守備は見事だった!」
相川「勝利の為ですから…………それと谷口さん、今日は完敗でした」
谷口主将「ヒットも打ってるし試合にも勝った。完敗はこっちの方と言いたいが残念ながらお前に負けた気はしなかったな」
相川「ですね。成長した姿を見せられなかったのが残念です」
谷口主将「お前も成長してたさ。残念ながら俺の方がもっと成長してただけだ!」
谷口主将「そうか?」
相川「いえ。確かに僕の負けです」
谷口主将「そう言う事だな。ま、確かに試合で負けたのは事実だが…………約束果たせよ!」
相川「はい。もちろんです!」
谷口主将「またグラウンドで会えるのを楽しみにしてる! じゃあな!」
真田「自分と性格が違うから惹かれ合う。人間なんてそんな物だよ」
斎藤主将「真田がいて静かなはずはないからな」
柚「あ、ありがとう」
柚(コクッ!)
斎藤主将「ああ!」