第49章 最後の夏(7)〜天賦の才の対決〜(後編)

−1996年 8月−
全国でも片手の指で数えるほどの好投手の投げ合いもいよいよ始まる。
直人「さて、どちらと戦う事になるか?ま、両校共に勝っているしどちらでも良いか」
風祭主将「………………」
水島「相手はどちらも大会屈指のピッチャーか、俺としては斎藤さんの方がタイミングが合いそうなんで勝ち上がって欲しいですね」
直人「いやいや斎藤のボールは当てる事が難しいし俺はごめんだな」
水島「それじゃ石崎さんですか?」
直人「いやいや石崎はボールに当たっても外野まで飛ばないから絶対嫌って感じだし」
水島「ようするに2人共とんでもないんですね」
直人「そう言う事」
坂本「それでキャプテンはどちらに勝って欲しいんですか?」
風祭主将「そうだな。やはり強い相手と戦いたいな」
坂本「つまり勝者ならどちらでも良いと」
風祭主将「ま、そう言う事だな(あれからどれだけ成長したか改めて見せてもらおうか)」

赤竜高校
中西監督「春と同じカードとなったか、春と同じように根比べかな」
真田「さすがにあれをもう一度はきついな」
矢吹「やっぱり凄いんだろうな」
小田切「甲子園最速記録にノーヒットノーランのおまけ付きだからな」
矢吹「石崎さんか、春に延長戦で勝ったのは知っているけど、どんな物なんだろうか?」
斎藤主将「すぐに分かるさ。それに今日勝てば全国制覇はすぐそこだ。何が何でも勝つぞ―――!」
全員「おう!!!」
真田「しかしこれで石崎達とも最後の試合となるのか」
吉田「あいつらも最後の夏だからな気合いが入ってるだろうなところで村田さっきから何を怒っているんだ?」
村田「今までパワーじゃ誰にも負けた事がないんです。大会ナンバーワンの強打者が広瀬さんだなんて!」
吉田「確かにお前も広瀬と同等かそれ以上のパワーがあるよ。ただ広瀬は高校通算79本塁打も打っているからな」
村田「負けた俺はまだ10本程度だ」
中西監督「これから追い着き追い越せば良いだろう!」
真田「ここで勝てば決勝なんだ。転生高校に勝って自分の方が上だって事を教えてやれば良いさ!」
村田「そうかそうですよねおっしゃ―――どっちが上か勝って決めてやる!」
工藤「(単純だな)そもそも試合の勝敗と個人の勝敗がイコールって訳じゃないだろうに」
真田「そんなことはないよ。ああ言っておけば試合じゃガンガン打つだろうしとにかくこの試合で広瀬よりも打てば勝ちなんじゃないかな?」
工藤「疑問形で言っているせいか説得力はありませんけど、本人がそう思っているならこっちが気にする事もないですね(チラッ!)」
村田「広瀬さん、俺はあなたを超えて見せる!」
吉田「(チラッ!)まあな」
真田「そうそうプラス思考で行っちゃおう♪」

転生高校
石崎主将「面白そうな奴がお前の名前を読んでいるな」
広瀬「超えるって言われてもな?」
石崎主将「お前よりも凄いバッターになってやるって事だろう」
広瀬「なるほど! 生意気な小僧だが俺を目標にするとはなかなか見どころがありそうだな!」
石崎主将「つうか1年のわりに俺より大きいし小僧とは言えないな。お前くらいはあるぞ!」
広瀬「まあなしかし体格だけでは俺の経験値には勝てん!」
石崎主将(何かこいつってレベルに上限のあるキャラって感じだよな。いや、どっちかと言うと最初に仲間になってゲームの半ばくらいで仲間から外れるタイプかな?)
広瀬「物凄く失礼な事言われている気がしているがお前こそ大丈夫なんだろうな?」
石崎主将「ふん! 春の借りは忘れない。斎藤、風祭と一気にぶっ潰してやるぜ!」
浅野監督「やる気があるのは良い事だな」
八代「そうですね」

−甲子園大会準決勝戦 阪神甲子園球場−
3年 真田 和希
後攻 先攻
赤竜高校 転生高校
投手力 機動力 投手力 機動力
打撃力 守備力 VS 打撃力 守備力
意外性 経験値 意外性 経験値
総合力 総合力
中川 啓助 2年
2年 相川 正人 川崎 徹 2年
3年 吉田 毅 八代 正秀 3年
3年 斎藤 一 広瀬 幸一 3年
1年 村田 修一 石崎 和久 3年
2年 篠原 直道 山本 和也 3年
2年 木下 義雄 川西 京介 2年
1年 矢吹 隼人 山本 研一 2年
2年 福西 克明 庄田 和也 2年

放送席
霞「それでは続いての準決勝、現在の高校ナンバーワンピッチャーはどちらかと言うタイトルでお送りさせてもらいます!」
武藤「さっきも凄かったけどこっちの盛り上がりはさっき以上ですね」
福井「まあどちらもドラフト1位指名は確実と言われているし恐ろしいほど失点の少ないピッチャーだからな」
霞「ですが意外にも両校共にここ3年間で甲子園の優勝はなかったりします」
武藤「まあ世代最高選手と言われても甲子園出ずにプロ入りした選手も大勢いますからね」
福井「大勢かは分からないがいる事はいるな」
霞「球速は2ケタ近く違いますがコントロールなどを加えた総合では互角と言った感じでしょうか」
武藤「石崎君は剛球投手って感じなんですけど、斎藤君は評価が難しいですね。コントロールも良いですが奪三振は石崎君以上とストレートのノビが異常ですから」
福井「ふむ。どれほどの物か見せてもらおうか」

1回表 赤0−0転 斎藤と石崎の最後の投げ合いもいよいよ始まる!
斎藤主将(シュッ!)

ズバ―――ン!
中川「相変わらずとんでもないボールを投げるな!?」

霞「初回から145キロを記録と飛ばしていますね!」
武藤「2人共底なしのスタミナを持っていますからね」
福井「バットにはかすりもせず空振り三振と確かにノビている感じがしますね」

斎藤主将(シュッ!)

ズバ―――ン!
川崎「当てる事すらできないのか」

霞「最後は144キロのストレートに手が出ず見逃しの三振に終わります!」
武藤「1打席目じゃこんなもんですかね」
福井「次はドラフト候補と言われている八代君ですがどうなりますかね」

斎藤主将(シュッ!)

ズバ―――ン!
八代「春よりも速いか?」

霞「最後は145キロのストレートを空振り三振とこの回を三者三球三振におまけに全てストレートと飛ばしていますね!」
武藤「確かに離れ業ではありますね」
福井「確かに表示されている球速以上にとんでもないストレート見たいですね」

斎藤主将「おっし! この調子で行くぞ!」
真田「今日の斎藤は凄まじいね!?」
吉田「春の頃よりも成長しているからな。とんでもなくなるはずさ!」
真田「斎藤とはプロでも同じチームが良いですなー」
吉田「だな」

1回裏 赤0−0転 斎藤は三者三振と相変わらずの立ち上がりの良さを見せる!
石崎主将「斎藤―――お前との投げ合いは毎回楽しみだな!」

ズバ―――ン!
真田「だあ―――こんなの打てないっての―――!?」

霞「こっちも負けずと初回から154キロを記録しました。当然ながら真田君は手が出ず三振に終わっています!」
武藤「自己最速出されたらさすがに打てませんよね…………しかしいきなりとは…………ノーヒットノーランした試合より調子は上なんじゃ!?」
福井「なるほど、昨年の河島と同じく剛球投手ですか、これならドラフトで争奪戦になりそうですね」

石崎主将「邪魔だ!」

ズバ―――ン!
相川「さすがにここまで速いと合わせるのも難しいな」

霞「巧打者の相川君もかすりもせず空振り三振に終わりました!」
武藤「さすがの相川君も150キロじゃ当てられませんかね」
福井「春の時もとんでもない投手戦になったって話だからな」

石崎主将「初回はこれで終わりだな!」

ズバ―――ン!
吉田「1回でこんなボールを投げるのか!?」

霞「最後も154キロとやはり高校ナンバーワンピッチャーは石崎君ですかね」
武藤「まあレベルの違いが分かりやすいって感じですが」
福井「球速に関しては歴代でもトップなのは間違いないだろうな」
武藤「まあ150キロ投げる投手なんて稀ですからね。それも甲子園最速を出してるし」
霞「とにかく1回は全て三振で終わりました」
福井「奪三振の記録も出るかも知れませんし―――確かに凄い投げ合いになりそうです!」

石崎主将「ま、斎藤以外はこんなもんだろう」
広瀬「春の時もあいつに打たれて終わったからな」
石崎主将「今度は俺が打って終わらせてやるさ!」
八代「今回も1点で終わりそうだしくれぐれも気を付けてな」
石崎主将「言われるまでもない!」

2回表 赤0−0転 石崎も負けずと三者三振のピッチングを見せる!
斎藤主将(シュッ!)

ズバ―――ン!
広瀬「手が出ない!?」

霞「4番の広瀬君もかすりもせず三球三振に終わります!」
武藤「まあ三振かホームランのどっちかって言う選手ですからね」
福井「体格通り豪快なタイプって感じですか」

斎藤主将(シュッ!)
石崎主将「ふん!」

カキ―――ン!
真田(タッタッタ! パシッ!)

霞「センター後方への当たりでしたが真田君が追い着いて2アウトです!」
武藤「いきなりヒット性の当たりでしたね。調子良い時はバッティングも良いし今日も絶好調って感じですね」
福井「長打力も高くミートも悪くないか、パッと見た感じ神代に似ているかな?」
霞「確かに石崎君はこう言う舞台では結構打っていますけど、成績その物は大した事ないですね。打率も2割後半くらいだしバッターとしても斎藤君の方がずっと成績が上ですね」
武藤「へえ。石崎君は意外にも打っていないんですね」
福井「斎藤君か、バッターとして欲しい球団も多そうですね」
武藤「まあバッティングセンスは風祭君に匹敵するかもと言われますからね」

石崎主将「うちの外野手なら間違いなく抜けてたのにさすがは真田だな」
斎藤主将「1打席目でこの当たりか、やはりバッターとしても石崎が要か」

カキ―――ン! パシッ!
矢吹「あまいぜ!」
山本和「結構良い守備するな」

霞「三遊間は抜けず矢吹君の素晴らしいプレーで3アウトチェンジ!」
武藤「相変わらず良い守備ですね」
福井「この舞台でも実力が発揮しているし精神的にも強そうですね」
霞「連続奪三振はなくなりましたがこの回も三者凡退とやはり斎藤君は絶好調ですね」
武藤「防御率も良いですし勝率も悪くないですからね」
福井「斎藤君はさすがですね。次は石崎君ですか」

斎藤主将「ヒット性の当たりが2本か相手も春から実力を付けているな」
吉田「そりゃ最後の夏だしな」
真田「勝てば決勝だしね!」
斎藤主将「ふう、春と同じく飛ばして行けるだけ行くか!」
吉田「まあ次の事を考えていて勝てる相手じゃないしな」
真田「だね」

2回裏 赤0−0転 斎藤はこの回も三者凡退と絶好調振りを見せる!
石崎主将「食らえ!」

ガキッ!
斎藤主将「相変わらず凄い球威だな」

霞「151キロのストレートに当てましたが斎藤君はピッチャーフライに終わります!」
武藤「1打席で当てるとはさすがですね。何気に斎藤君って三振数も少ないんですよね」
福井「確かに良いセンスをしているな。眼も良さそうだしバッター転向しても大成しそうだ!」

石崎主将「1打席で当てやがった。やっぱりあいつとは戦いがいがあるぜ!」
斎藤主将「芯でとらえてもこれか、うちでスタンドに運べるのは村田くらいだな」

ズバ―――ン!
村田「なっ―――!?」

霞「完全に振り遅れての三振で2アウトとなりました!」
武藤「1年生にこれを打てってのはきつい注文ですね」
福井「確かにこの速さはとんでもないですね」

斎藤主将「疲れの出る後半がカギになりそうだな」
石崎主将(邪魔だ!)

ガキッ!
篠原「芯に当てても振り切らなきゃダメか」

霞「最後は打ち上げてショートフライとこの回も三者凡退に抑えます!」
武藤「球数は違いますけど、ここまで無四球ノーヒットに4奪三振と同じところは実力伯仲って感じですね」
福井「どちらも素晴らしいピッチャーですね(俺だったらどっちを獲るかな?)」

石崎主将「ま、こんなもんだな!」
広瀬「調子に乗ってポカするなよ」
石崎主将「大丈夫、誰かさんとは違うから!」
広瀬「………………」
石崎主将「一応、自覚はあったんだな」

3回表 赤0−0転 斎藤、石崎共に譲らないピッチングが続く!
斎藤主将(シュッ!)

ズバ―――ン!
川西「相変わらず違和感ありありなボールだな?」

霞「下位打線にも手加減なしの145キロのストレートで空振り三振に抑えます!」
武藤「145キロですか、やっぱりレベルは高いですよね」
福井「こうやって観るとオーソドックスなタイプですね。まあプロでもオーソドックスって言えますしアマチュアとは思えないくらいレベルは高いんですけど」

斎藤主将(シュッ!)

ズバ―――ン!
山本研「こんなの打てるか!?」

霞「再び145キロと決め球は速いですね!」
武藤「変化球はカウント稼ぐくらいで決め球は全部ストレートですね」
福井「コントロールもかなり良い見たいだし総合的に見れば高校トップなんじゃないですか」

斎藤主将(シュッ!)

ズバ―――ン!
庄田「あっさりと終わっちゃったか」

霞「最後は142キロのストレートを見逃し三振!」
武藤「なんかあっさりと終わりましたね」
福井「3回で三振が7個とやはり奪三振は多いですね」

吉田「下位打線は問題ないな」
斎藤主将「まだ3回だからな。それよりもどうやって点を取るかだな」
吉田「確かに」
真田「ま、150キロと言っても失投もあるだろうし狙って行けば打てるだろうしね」
吉田「失投と言っても速度も球威も凄まじいからな」
真田「だから当たってもヒットになる確率は低いかな」
吉田「事実を笑顔で言うなよな」

3回裏 赤0−0転 斎藤は打者9人とここまでパーフェクトに抑える!
石崎主将「負けるか!」

ガキッ!
木下「なんて重さだ!?」

霞「152キロのストレートを当てますが完全に球威に押されたかショートフライに終わります!」
武藤「当てたのは大した物ですけど、完全に力負けって感じですね」
福井「芯に当たればもっと飛距離が出ていただろうし7番ながらパワーはありそうですね」

石崎主将「終われ―――!」

スト―――ン!
矢吹「フォーク!?」

霞「最後は140キロのフォークを空振り三振!」
武藤「あの速度にこの変化じゃ振ってしまいますよね」
福井「凄い速度と落差ですね。あの変化量でこの速度はプロでもいないんじゃと個人的には思いますけど」
霞「つまりプロ入りすれば先発は確定と」
武藤「まあスタミナもあるし先発でしょうけどね」
霞「言い方が悪かったですね。いきなり先発の柱と言うよりチームのエースになると」
福井「ポテンシャルは計り知れないって感じですし確かに1年目からエースクラスの活躍をしそうですね」
武藤「まあ石崎君に関しては私も否定できませんね」

石崎主将「ぬぉ―――!」

ズバ―――ン!
福西「スピードオーバーです!?」

霞「最後は154キロを計測し石崎君もここまで完全に抑えております!」
武藤「9番バッターにも容赦なしと鬼ですね」
福井「恵まれた体格だし確かに威圧感もありそうですね」

石崎主将「ここまで互角か」
広瀬「やっぱり地味に長い試合になりそうだな」
石崎主将「地味とは失礼な!」
広瀬「ま、このままだと長期戦になりそうだし今度こそ勝とうな!」
石崎主将「当然だ! この世代は俺が中心だからな! 最後の夏は俺がもらう!」
広瀬「頼っている手前言いにくいけど俺達の事も忘れんなよ!」
全員「………………………………」
石崎主将「…………無論だ!」
広瀬(返事は良いけど間が引っかかるな)

観客席
水島「やっぱり投手戦ですね」
直人「球数も少ないし奪三振も多いとここまで斎藤が勝っているって感じかな」
坂本「個人の勝ち負けとチームの勝敗は…………いや勝ち投手と負け投手になるし優れたピッチャーが勝敗を決めるか」
風祭主将「高校トップの投げ合いだからな。どちらが勝つか俺にも分からん」
水島「総合的には赤竜高校が上ですね。うちほど層は厚くありませんがベンチにも良い選手は多いし高校野球ではトップクラスでしょうね」
坂本「確かに良いチームだけど総合的に見ればうちの方が遥かに上だろうな」
直人「まあベンチ含めて1年が6人だし層が厚いとは言えないな」
水島「あまり出ていませんし即戦力って事はないか」
坂本「面白そうではあったがまだ発展途上って感じだったな」
直人「来年からはやっかいになりそうだが俺達は引退しているしな」
風祭主将「さてとどちらが勝ち上がるかな?」

打線は沈黙したまま進み両投手は6回まで完全に抑えて7回へ進んだ。

7回表 赤0−0転 完全に投手戦となり7回に入った!
斎藤主将(シュッ!)

ズバ―――ン!
中川「ダメか」

霞「試合もいよいよ7回へ入りましたが打線は相変わらず沈黙したまま中川君も三振に終わりました!」
武藤「本当に春と同じ展開ですね」
福井「これで14奪三振ですか」

川崎「そこだ―――!」

カキ―――ン!
相川「っと!」

パシッ!
霞「一二塁間を抜けるかと思いましたが相川君が追い着いて2アウトです!」
武藤「川崎君はタイミングが合って来ましたね」
福井「確かに並みのセカンドなら抜けてましたね…………相川君でしたか良い守備しますね」

川崎「不運だったけど、当てるだけならなんとかなりそうだ!」
八代「春よりもレベルが上がっているが春ほど調子良くはないのかな?」
斎藤主将(少しボールが浮いたかもう少し慎重に行くか!)

ガキッ!
八代「スライダーも春よりも上だな」

霞「スライダーを打ち上げて八代君はライトフライとこの回も3人で終わりました!」
武藤「本当に春と同じですね。今度こそ記録が出るかな」
福井「石崎君がやれば歴史上の大記録になると面白そうですけどね」
霞「2試合連続と言うより甲子園でノーヒットノーラン2回なんてピッチャーいませんからね」
武藤「春は延長に入って記録消えちゃうと2人共不運なところはありますし今回もそんなパターンかな」
福井「個人的には記録を見せて欲しいですけどね」

真田「今度こそパーフェクトだね!」
斎藤主将「されないようにしないとな」
真田「それはとっとと点を取ってくれと言う催促でしょうか?」
斎藤主将「もちろん!」
真田「良い笑顔ですなー!?」
吉田「ツッコミをいれられなかった!」
中西監督「…………余裕があるな。まあリラックスしているのは良い事なんだが」

7回裏 赤0−0転 斎藤は7回も3人と完璧なピッチングを見せる!
石崎主将「こっちもエンジン全開だ―――!」

ズバ―――ン!
真田「速過ぎて付いて行けないのもショックだ―――!?」

霞「最後は154キロのストレートを空振り三振!」
武藤「高めのボール球ですけどこの速さじゃ振ってしまいますよね」
福井「見て行くのも手ですが今日の石崎君はコントロールも良いですし難しいですね」

石崎主将「打てる物なら打って見ろ―――!」

スト―――ン!
相川「完敗です」

霞「143キロで落とした。さすがの相川君もここは三振で終わりました!」
武藤「あれはプロでも打つのは難しいでしょうね」
福井「見た感じ望月(ロッテ)投手に似ていますね」

石崎主将「ぬぉ―――!」
吉田「さすがに3打席目だしそろそろ打つ!」

カキ―――ン!
石崎主将「何っ!?」
八代「オーライ!」

パシッ!
吉田「くそっ!芯でとらえてもヒットにならないとはな」

霞「152キロのストレートを打ちましたが球威に押されたかライトフライに終わります!」
武藤「芯に当てるとはさすがはドラフト候補ですね」
福井「バッティングセンスはありそうですね(なかなか面白そうとうちのスカウトが誉める訳だな)」

石崎主将「さすがに良いセンスしてる奴が多いな」
広瀬「あいつらも3年間頑張っているしな」
石崎主将「ますます楽しくなって来たな!」
広瀬「お前らしいけどそろそろ1点が欲しいところだな」
石崎主将「一発打って来い!」
広瀬「俺からだっけ?」
石崎主将「本当に頼りにならんな」
広瀬「ちょっとした度忘れです!」
石崎主将「ふーん」
広瀬「本当なんです!」
石崎主将「分かったからとっとと行って来い!」
広瀬「うっす!」
石崎主将(こんな事じゃ点が入るのはいつになるやら?)

8回表 赤0−0転 石崎も負けず3人とこの回も完全に抑える!
広瀬「来い!」
吉田「力入ってるな」
斎藤主将(ボール球を振らせれば問題ない!)

グイ―――ン!
広瀬「ここだ―――!」

カキ―――ン!
斎藤主将「おいっ!」

霞「144キロのストレートを完全にとらえた―――打球は完全に場外ですね!」
武藤「そこでテンション落とさないで下さいよ。しかしヒットを打ったのが広瀬君で結果がホームランとはね」
福井「それにしても低めのボール球だったのに良くとらえましたね」
霞「当たり損ねがヒットになるのはありますが会心の当たりって何気に珍らしいですよね?」
武藤「同意するのどうかと思いますがそうですね」
福井「これで一気に転生高校が有利になりましたね」

広瀬「見たか飾りの4番じゃねえぞ!(うんうん。振れば当たるもんだ!)」
石崎主将「結構傷付いてたのか(もう少し言葉に気を付けよう)追加点もらうぜ!」
斎藤主将(気を取り直して行く!)

ズバ―――ン!
石崎主将「ここでこの球速かよ!?」

霞「全然堪えてないようで146キロのストレートで決めます!」
武藤「本当に打たれ強いですね」
福井「プロ入りしたら最多勝や防御率も獲りそうですね」

斎藤主将(シュッ!)

ククッ!
山本和「カーブを振らせられるとは!」

霞「山本君もカーブを空振り三振し2アウトとなりました!」
武藤「変化球もレベルが高いですよね」
福井「カーブもかなり変化するし変化球投手としてもレベルが高いし上位指名と言うか1位指名されてもおかしくはありませんね」

斎藤主将(シュッ!)

ガキッ!
川西「ボール球を振らされた!?」

霞「何とか当てましたが結果はファーストゴロで3アウトチェンジです。しかし広瀬君のホームランでついに転生高校が1点を入れました。それと高校通算80本塁打を記録しました!」
武藤「80本も打っているとは意外ですね!?」
福井「大した記録ですけどもう少し本数を減らして打率を上げてくれた方が監督としては嬉しいと思いますけどね。まあ偉大な記録ではありますしおめでとうですね!」
霞「またしても記録が出るとこのまま転生高校が勝つのか? 最後までご覧下さい!」
武藤「盛り上がってるな」
福井「1点差ですし残り2回ならまだチャンスはあると思いますけどね」

斎藤主将「とにかく1点だ! 取り戻すぞ!」
吉田「ああ!と言っても俺はもう終わっちまったけどな」
斎藤主将「まあ延長に入る可能性もあるし気を引き締めて行こうな!」
吉田「おう!」
真田「まあ斎藤からだしすぐに同点だよね!」
斎藤主将「あまりプレッシャーをかけないで欲しいんだが」
真田「とにかくまずは同点だね!」
吉田「聞いてないな」

8回裏 赤0−1転 広瀬の一振りで転生高校がリードとなった。赤竜高校はこのまま終わるのか?
石崎主将(こいつで終わりだ!)

グイ―――ン!
斎藤主将「速いが打つ―――!」

カキ―――ン!
石崎主将「パーフェクトが―――!?」

霞「自己最速更新の155キロと言うか甲子園では新記録ですね。それを右中間の深いところに打ち斎藤君は三塁まで走りました!」
武藤「自己最速更新のボールをヒットと有り得ないって感じですね!?」
福井「石崎君の凄さと言うより斎藤君の凄さを見せ付けられたって感じですね」

斎藤主将「おっし!」
石崎主将「まだ無失点だ。後続は何としても抑えてやる!」
村田「広瀬さんが打ったんだ。俺も負けないぞ!」

カキ―――ン!
石崎主将「俺のフォークを打ちやがった!?」

霞「村田君も続きフォークを完全にとらえて場外と広瀬君に負けない長打力を見せます!」
武藤「体格通り恐ろしいパワーヒッターですね!?」
福井「それにしても一気に追い抜くとは底知れない力を持っていますね!?」
霞「それも自己最速更新のストレートと恐ろしいほどの落差のフォークを打つと凄いですね!」
武藤「まあ呆れるしかないかな」
福井「斎藤君と石崎君、どちらもとんでもないし争奪戦になりそうですね」

石崎主将「ぬぉ―――!」

ズバ―――ン!
篠原「くっ!?」

霞「打たれた物の最後は154キロのストレートで空振り三振に抑えます!」
武藤「石崎君もタフですよね」
福井「サウスポーで甲子園最速か―――ドラフトの目玉になるのは間違いないですね!」

石崎主将「ぬぉ―――!」

スト―――ン!
木下「げっ!?」

霞「見逃せばボールでしたがフォークを空振り三振し2アウトとなりました!」
武藤「140キロで落ちる時点で普通打てませんよね」
福井「打った村田君がそれだけ凄かったって事ですね」

石崎主将「ぬぉ―――!」

ズバ―――ン!
矢吹「こんな速い球を打つのはきついぞ!?」

霞「出た―――最後は155キロのストレートで決めました!」
武藤「1年生にとんでもないボールを投げますね」
福井「これで9回か、8回は両投手鬼門でしたが9回はどうなりますかね?」

石崎主将「ちくしょう―――!」
広瀬「落ち着けよ!」
石崎主将「くそっ―――あんな小僧に打たれるとは!?」
広瀬「俺に憧れる奴だからな。打たれても仕方ない!」
石崎主将「(ギロッ!)無茶苦茶腹が立つのは何でだろうな!」
広瀬「すみません」
石崎主将「どっちにしろ後はあいつらを信じるだけか!」

9回表 赤2−1転 村田の一振りで一気に逆転に成功した赤竜高校、試合はこれで決まったか?
斎藤主将「決勝まで残り3人―――最後まで全力で行く!」

ズバ―――ン!
山本研「こうコントロールが良いと四死球も望めないか!?」

霞「145キロのストレートを見逃し三振!」
武藤「これだけ速くノビがあると手が出ませんよね」
福井「ここまでノーヒットの下位打線じゃさすがに手が出ないか」

斎藤主将「後2人―――意地でも抑えてやる!」

ズバ―――ン!
庄田「無理でした」

霞「福井さんの言った通り手が出ない見たいですね。庄田君も見逃し三振に終わっています!」
武藤「代打を出さない見たいですね?」
福井「斎藤君のストレートは独特で慣れなきゃ当てるのも難しいですからね。その辺を考えると代打を出すより3打席目の選手達に希望を託すしかないでしょうね」

中川「まだだ!」
斎藤主将「これで終わりだ!」

ガキッ!
中川「届かなかったか」

パシッ!
斎藤主将「俺達の勝利だ!」

霞「打ち上げてピッチャーフライ! 今、斎藤君がキャッチし試合終了です!」
武藤「番狂わせはなしか、春夏同じカードの決勝戦とはやはり赤竜高校は強いですね!?」
福井「中立の立場ですがやはり母校が勝つのは嬉しいですね。できる事なら中西監督の夢を叶えて欲しいですね!」
霞「夢ですか?」
武藤(何か中立って感じじゃないな。決勝の解説はどうなるんだろう?)
福井「中西監督は自分の高校を日本一にすると言う夢があったんですが一度も果たせてないんですよ」
霞「プロ選手は出ていますが甲子園で優勝したのは中西監督が高校時代の頃でしたっけ?」
武藤(おうっ!?意外と言ったら失礼かも知れないけど知識はあるんだな!?)
福井「ええ。散々お世話になりましたし個人的には応援したいんですよ」
霞「ふっふっふ、これで決勝のゲストは決まりましたね!」
武藤「ひょっとして福井さんにもう一度解説してもらうんですか?」
霞「はい! しかしそれだけじゃ面白味がありませんね!」
武藤「?」
福井「できる事なら決勝での赤竜高校の活躍を観たいですが監督としての立場もありますからね」
霞「ふっふっふ、ならばこれを聞いたらどうでしょう!」
武藤「何を話してるんだ?」
福井「………………引き受けます!」
武藤「何を話したんですか?」
霞「ふっふっふ、秘密です! まあ隠すほどの事ではないですが武藤さんには悪口言われた気がするんで内緒って事にしときます!」
武藤「超能力者かい!」
霞「ただの女の勘です!」
武藤「むう〜!まあ明日になれば分かるから良いですけど」
福井「決勝か、楽しみだな!」

石崎主将「また負けちまったか」
斎藤主将「けど良いピッチングだった」
石崎主将「負けた試合がベストピッチングなんて最悪だな。まあ悔しくもあるし悔やみもするが負けは負けだ。今度こそ優勝しろよ!」
斎藤主将「ああ!」
石崎主将(これで終わりかよ!? まあプロで借りは返すけど終わりって寂しいぜ!?)
広瀬「村田! 決勝でも打って勝利しろよ!」
村田「う、うっす!」
真田「何はともあれこれで決勝進出ですか無茶苦茶疲れる試合でしたな〜」
吉田「まったくだ」
八代「負けたか」
浅野監督「石崎なら1回くらい優勝すると思ったがあまかったかな」
中西監督「いや、あれだけのピッチャーでも優勝できないほど凄い選手が多いってだけですよ」
浅野監督「そうですねって中西さん―――!?」
中西監督「凄いリアクションですね!?」
浅野監督「こんな若輩者に敬語などはぜひ命令口調で話して下さい!」
八代「うちの監督、時々変になるんですがあんまり気にしないで下さい」
中西監督「難しい注文だが分かったそれにしても恵まれた環境でもないのに甲子園まで来るなんてよほど指導が上手なんだな」
浅野監督「いえ。ただ運が良いだけです。多分!」
中西監督「それはそれで凄いが」
八代「えっと、うちは放任主義で自主的に練習してばっかですね。もちろん監督も手伝ってくれますけど」
浅野監督(コクッコクッ!)
中西監督「信頼されてるんですね」
浅野監督「いえ。おもちゃにされてるだけです!」
中西監督「………………」
八代「監督! 引かれてますよ!」
浅野監督「だって雲の上人過ぎて何を話したら良いか分からないし?」
八代「やれやれ」
中西監督「なるほど、何となく浅野君のやり方が分かったよ!」
浅野監督「そうですか?」
中西監督「どうりで強いはずだ。それではまたここでお会いしましょう!」
浅野監督「はい!」
八代(まあチームメイト見たいな監督だから伸び伸びやれて練習も試合も楽しかったな!)

観客席
水島「赤竜高校が勝っちゃいましたね」
直人「8回で2点取って勝つとはな」
坂本「クリーンナップを打つだけはあったな」
水島「村田か、やっぱり無名でも凄いバッターがいるもんですね」
直人「それ君の言えるセリフじゃないと思うけどね」
坂本「キャプテンの感想は?」
風祭主将「春でも思ったがやはり強いな」
直人「まあね」
水島「投打共に強く。追い込められてからは驚異的な強さを見せてますね」
坂本「まあ1点差で勝ち上がるところとか経験値の差が出たって感じだったな」
直人「っと言っても石崎も失投はなかったし」
風祭主将「つまりここぞと言う時には限界以上の力を発揮するチームって事だ!」
直人「マンガ見たいだな」
水島「現実の話をマンガで書いてる事もあるし有り得ない話でもないですよ」
直人「そう言う発想もあるか」
坂本「ま、相手は赤竜高校、斎藤さんさえ攻略すれば勝てるでしょう!」
直人「投手力は向こうが上って言いたいのね」
坂本「ええ。こっちも良いピッチャーが多いですけど、突出したピッチャーがいるとも言えませんからね」
風祭主将「絶対的なエースの不在か」
坂本「ま、その分、守備のスペシャリストが多いですから1、2点争いになるでしょうね!」
風祭主将「そうだな」
水島「斎藤さんの攻略がカギですか、それじゃ兄妹対決は見れないんですね」
風祭主将「柚には悪いが俺の宿敵は斎藤だけだ!」
直人「ふーん(ついに斎藤を宿敵としたか)」

こうして斎藤と石崎の戦いも終わり斎藤は春と同じく風祭の元までたどり着いた。斎藤と風祭の最後の試合もいよいよ始まる!