第58章 ペナントレース開幕(後編)

−1997年 4月 下旬−
斎藤はプロでも普通に通用しておりここまでは順調に勝ち星を挙げて来ている。
斎藤「ここまで3勝と文句なしだな」
球星「うむ! 我が弟子ながらなかなかの活躍だな!」
斎藤「勝手に弟子にしないで下さいよ!」
球星「しかし速球で三振を奪って行く姿を観るとワシの若い頃を思い出すのー」
斎藤「(球星さんって若く亡くなってたよな。それとも死んだ後でも歳を取るんだろうか?)そう言えば色々あって聞くの忘れてたんですけど、球星さんっていつから俺に憑いてたんですか?」
球星「話すと長くなるが俺が草野球で活躍した頃に近所の少年が興味深そうな目でこっちを観ていたんだ。俺は直感したね。こいつは物になるとそれで幸いとあっさり乗り移ったのは良かったんだが」
斎藤(いや、良くないから!)
球星「しかし意思疎通がどうも上手く行かなくてな。今はこうして会話できているが昔は全然できなくてな」
斎藤「…………ってそうだよ。どうして会話できるようになったのか聞くの忘れてた!?」
球星「そう言えば話してなかったか? 切欠はあの変な姉さんじゃな。まあ歳の方は正直俺にも良く分からんが?」
斎藤「変な姉さん?年齢不明の姉さんって結依さんか!?」
球星「あれで少しずつ認識が変わって行った。恐らくだが少しずつ視えるようになって来てるんじゃないか?」
斎藤「視えるってまさかっ!?」
球星「うむ。幽霊とか怪異とか呼ばれる物が視えるようになって来ているんじゃないか」
斎藤「そう言えばすぐにじゃなく4ヶ月くらいして認識できるようになったんだっけ?」
球星「ゆっくり馴染むようにしてくれたんだろう。いきなり視えるようになったら怖いからな」
斎藤「(いや結果は変わってないから! 既に呪われてる気もするけど)呪われたりはしませんよね?」
球星「大丈夫だろう。その手の物は危険なところにいるから近づかなきゃなんの問題もないと思うぞ」
斎藤「(なるほど、分かりやすいな)ちなみに危険なところってのは?」
球星「その手の噂があるところだ。例えるなら古井戸とか廃院とかその手の物が出ると言う噂が多いだろう」
斎藤「なるほど」
球星「まあ危険があれば教えてやるからいつも通りに過ごしてろ。場合に寄ってはあの変な姉さんに頼めば良いだろう」
斎藤「そうですね」

阪神タイガース
山岡監督「今日の相手は横浜ベイスターズだ。注意するのはやはり相良だな」
天道「現在のホームランキングですからね」
藤原「打率も4割近く打っているしスタメンの中でも一番やっかいなバッターですからね」
井上「今日は俺がスタメンなんですね」
山岡監督「外国人選手の調子が悪いからな。ここで活躍して行けば今日からスタメン続けさせてやるぞ!」
石崎「足の速い選手も多そうだしランナー出すとうるさそうですね」
山内「及川と服部はな。3番の村雨に関しては未知数だからそっちは任せよう」
石崎「任せるって言っても村雨の事は良く知らないんですよね?」
山内「そう言えばお前らの同期でも甲子園に出れなかった選手か?」
石崎「代打で活躍しているのを観てるとミートの上手い勝負強いバッターって感じですね」
山内「そこそこパワーもありそうだし警戒は必要か」

横浜ベイスターズ
山崎監督「相手は連敗中のタイガースだが石崎が投げるとなれば別だ」
相良「現在負けなしの3連勝ですからね」
村雨「甲子園でも投げてたけど相手を寄せ付けないピッチングはプロでも健在ですからね」
及川「つうか相手のホームが甲子園だけどな」
村雨「分かってますよ。高校時代から凄かったっぽいって話をしてるんですよ!」
高岡「今日は俺が投げるから問題ない! 竜でも石でもぶっ飛ばしてやる!」
真島「高岡さんだと不安もありますが今日の投手陣では一番ですからなんとかなるでしょう……たぶん」
全員「……………………」
及川「ま、一応エースだもんな!」
高岡「俺に任せとけ!」

−1997年公式戦 阪神甲子園球場−
鎖是 修
後攻 先攻
VS
及川 慧
咲良 空 服部 雄太
天道 出流 村雨 剣
ブライアン 相良 京一
小野 正宗 ジャクソン
藤原 翔 真島 晴喜
井上 和人 小山 力
山内 努 望月 藤吉
石崎 和久 高岡 賢次

放送席
倉田「今日の先発は石崎選手と高岡選手となりました。エース対決とは言い切れませんがどちらもチームの中では重要な選手と注目の対決になりそうです!」
水原「まあ石崎はルーキーだし高岡も6年で60勝していますがまだ無冠ですからね」
倉田「注目は4番にもあります。シーズン始まったばかりですが、どちらも好調で4月の月間MVP候補の有力者って感じですね」
水原「他にも好調な選手がいますから言い切れはしませんけど、可能性はありますね」
倉田「そして一番の注目はルーキーながら3番を勝ち取った村雨選手でもありますね」
水原「代打で成績出してスタメン獲得してついに3番を奪ったと規定打席には到達していませんが高打率を残しているし当然と言えば当然ですね」
倉田「遅れながら今日の解説は水原さんです!」
水原「どうも!」
倉田「それでは良い試合を期待しましょう!」

1回表 阪神0−0横浜 現在4番同士が絶好調なチーム対決となった試合が始まる!
石崎「たたき潰す!」

ズバ―――ン!
及川「前に戦ったときより速くなっているような?」

倉田「150キロのストレートを見逃し三振と初回からとんでもないボールが出ましたね!」
水原「石崎の場合調子悪くても145キロは出ますからね」

石崎(ここでフォークか)

スト―――ン!
服部「こいつはすげえな。樋川と良い勝負だぜ!?」

倉田「相変わらず凄いフォークですね……失礼しました。結果は空振り三振で2アウトです!」
水原「落差が凄まじいですね。キレと言うより変化の大きさが魅力なフォークボールですね!」

石崎「村雨か……これが初対戦って事になるのか、考えて見ればどいつもこいつも抑えて来たけど風祭は別だったな。そして村雨は風祭クラスと言われるほどの選手と……プロになっても退屈だけはしなさそうだな」

カキ―――ン!
村雨「とんでもなく重いな。今まで対戦した相手の中でも最強かも!?」

倉田「152キロのストレートを打った! 打球はセンター前に抜けて2アウトランナー1塁となりました!」
水原「綺麗に合わせて芯に当ててセンター前を狙うとバッティングのお手本みたいな打ち方ですね!」

石崎「左対左なのに苦もなく打って来やがったな!」

カキ―――ン! 
相良「スタンドまでは届かないか」

倉田「これは大きいがライトスタンドまでは届きません! しかしライトの頭を越えて打球は深いところまで落ちます! 打った相良選手は三塁まで走りました! 横浜ベイスターズが1点先制します!」
水原「相良の三塁打ですか、こうやって観ると相良は足も速いですね!(やっぱり草薙に似ているな)」

石崎「ふんっ!」

ズバ―――ン!
ジャクソン「良いボールだ!」

倉田「154キロのストレートを空振り三振と、石崎選手、奪ったアウトはすべて三振と失点しましたが良いピッチングを見せましたね!」
水原「いつも通り力のある投球でしたね。これは打った打者を誉めるしかないですね」

石崎「左打者に強いつもりだったが村雨の奴は別格なのか?」
山内「初対戦だからな。そう早く結論を出すことはないだろう」

村雨「1点先制しましたね!」
相良「石崎は立ち上がりが悪いからエンジンかかる前にたたくのが攻略のコツだな!」
及川(今日の石崎は立ち上がり良かったように見えたけどな?)

1回裏 阪神0−1横浜 調子の良い石崎だったがいきなり失点すると3連敗もあるかと言う不安な立ち上がりとなった!
高岡「今日の俺をあまくみるんじゃねえ!」

ガキッ!
鎖是「こうやって打って見ると球速と球質は石崎と良く似ているな」

倉田「148キロのストレートに当てますがサードゴロに終わり1アウトです!」
水原「難しいコースに手が出ましたか、慎重な鎖是にしては珍しく積極的に手を出しましたね」

高岡「打たせてたまるか!」

ククッ!
咲良「キレてるな!?」

倉田「143キロのヘルシュートを空振り三振と一気に2アウトです!」
水原「速くキレるシュートですからそりゃなかなか打てませんよ」

天道「このシュートを打つ!」

カキ―――ン!
高岡「なぬっ!?」

倉田「レフトスタンドに入った! 得意のヘルシュートでしたが完全にとらえられて同点となります!」
水原「失投と言うわけではありませんし打った天道を誉めるしかないですね!」

高岡「くそっ!」

ズバ―――ン!
ブライアン「クッ!?」

倉田「最後は151キロのストレートを空振り三振で3アウトチェンジです!」
水原「単純に速いですからね。そうそう初回からは打てませんよ……普通はね」
倉田「1回を終わって1対1の同点と両投手の立ち上がりはいまいちだったらしいです」
水原「いまいちって言っても三振奪ってますし球速も良いですからまだまだこれからだと思いますよ!」

真島「良いボールでもスタンドまで運ばれると今年の天道さんも手強そうですね」
高岡「俺だって今年は調子が良いぜ!」
真島「今年こそは投手部門のタイトルをと言うわけですか」
高岡「そうだよ! いつまで経っても獲れなくて悪かったな!」
真島「そこまでは言ってませんよ(思いはしましたけどね)」

天道「今日は良い感じだな。打線も爆発して勝てれば文句なしなんだが」
咲良「まあ回を重ねれば高岡さんも調子落とすんじゃないですか?」
鎖是「いや高岡は立ち上がりが悪いし回を重ねる前にたたくのが攻略のコツだな」

3回表 阪神1−1横浜 2回も変わらず同点のまま進む
石崎「うらっ!」

ズバ―――ン!
及川「こいつはきついな」

倉田「156キロのストレートを見逃し三振! 今日は2打数2三振と三振の少ない及川選手にしては珍しいですね?」
水原「それだけ石崎のボールが凄いんでしょうね。奪三振に関しては石崎以上の怪物がいますからタイトル獲るのは難しいかも知れませんがそれでも200近くは三振を奪うかも知れませんよ!」

石崎「うらっ!」

ガキッ!
服部「球威が尋常じゃないな!?」

倉田「155キロのストレートを打ち上げセンターフライに終わり2アウトです!」
水原「やはり速さに慣れないと打てそうもありませんね」

石崎「うらっ!」

ガキッ!
村雨「普通のシュートでも球速がやっかいだなー」

倉田「村雨選手はシュートを打ち上げてサードフライに終わり3アウトチェンジです!」
水原「ようやく三者凡退に抑えられたと石崎の肩も温まって来ましたね」

石崎「うらっ!」
山内「もう終わったからな!」
石崎「……いつの間に?」
山内「ただのアホなのか……それとも集中力が凄いのか」

相良「やっぱり合わせるのが難しいか」
村雨「ですね。150キロを超えてるし話に聞いたライアンさんと変わらないって感じのボールなんじゃないですか?」
相良「たしかにタイプは似ているな。将来性を考えると石崎はライアンさん以上になるかもな」
村雨「それでこそ俺のライバルです!」

3回裏 阪神1−1横浜 調子を上げたのか石崎は今日初めてベイスターズ打線を三者凡退に抑える!
高岡「たたき潰してやるぜ!」

ズバ―――ン!
山内「これはきついな!?」

倉田「150キロのストレートを空振り三振で1アウトです!」
水原「高岡もなかなか良いボールを投げますね」

石崎「俺を舐めるな!」

カキ―――ン!
高岡「何っ!?」

倉田「ストレートを思いっきり引っ張った! 打球は右中間を抜けて打った石崎選手はセカンドで止まります!」
水原「140キロ前半と完全に抜いたボールでしたね。まあ格下相手に油断する高岡らしいピッチングではありますけど」

鎖是(送りバントじゃないのか?)

ズバ―――ン!
高岡「………………」

倉田「ランナーを警戒したかここはフォアボールでランナーを出します。これで1アウトランナー1、2塁となりました!」
水原「ピンチに強いのが高岡の持ち味なんですが、そう言う意味じゃ今日の高岡はちょっとおかしいですね?」

咲良(この場面なら普通にヒットで良い! 力を抜いて打つぞ!)

カキ―――ン!
高岡「俺のヘルシュートがっ!?」

倉田「決め球を綺麗に打たれましたがランナーは返れずこれで1アウト満塁となりました!」
水原「外野が前進守備していたのが功を奏しましたね。これは真島の判断なんでしょうが2年目なのに小憎らしいくらい仕事をこなす奴ですよ!」

真島(落ち着いて下さい。この際1点くらいはやっても良いですからバッターを確実に打ち取る気持ちで投げて下さい!)
高岡(おう! 任せとけ!)

カキ―――ン!
天道「おっし!」

倉田「また打った! ランナーは2人返ってこれで1アウトランナー2、3塁となりました!」
水原「失投ではなく完全にコースに決まったボールでしたがこれは打った天道を誉めるしかありませんね!」

高岡「負けてたまるか!」

ガキッ!
ブライアン「犠牲フライかよ」

倉田「続くブライアン選手はライトフライに終わりましたがサードランナーは返ってこれで2アウトランナー3塁となりました!」
水原「これで4対1と3点差になりましたね」

高岡「ぬぉ―――!」

ガキッ!
小野「………………」

倉田「続く小野選手はヘルシュートを引っかけて3アウトチェンジです!」
水原「ようやく試合が動いたって感じですね」
倉田「試合は3回を終わって4対1と阪神タイガースがリードしています!」
水原「高岡の調子が悪いと言うよりは阪神打線、特に天道の調子が良いって感じですね!」

高岡「またやっちまった!?」
真島「良いボールだったんですけどね」
高岡「どんなに良いボールでも打たれたら意味がねえよ!」
真島「たしかに」
高岡「いやそこはなぐさめるところじゃねえ?」
真島「高岡さんは調子に乗るとダメなところもありますからたまに落ち込むのも良いと思いますよ!」
高岡「ったく最近の若い奴は年上を敬うと言う事を知らんのか」
真島(やれやれ)

小野「崩れるかと思ったが良いボールを投げて来たな」
ブライアン「俺のときも良いボールだったな。天道の調子がよほど良かったんだろう!」
天道「たしかに調子は良いですけどね。突破口を開いた石崎のバッティングにも注目ですよ!」
ブライアン「……と言ってもあの高岡は格下には舐めてかかるところがあるからな。ピッチャーにあまいボールを投げるのなんて日常茶飯事だったか? だしな」
天道「(日本語上手くなったな)それもそうですね」

9回表 阪神8−2横浜 タイガース打線は高岡から更に得点し試合は9回を迎えた!
倉田「試合はいよいよ9回に入ります。8失点した高岡選手ですがまだ登板中と妙な展開になっておりますが6点差は絶望的ですね」
水原「そうですね。今日の石崎の調子からして試合は決まりでしょう」

石崎「一気に終わらせるぜ!」

ズバ―――ン!
望月「くそっ! 手が出ん!?」

倉田「152キロのストレートを空振り三振と石崎選手の球速は9回でも衰えませんね!」
水原「新人とは思えないほどスタミナはありますからね。これで回復力もありますから規定投球回数達成は問題なさそうですね」
倉田「ここでようやく代打を出します。高岡選手に代わって玖珂選手が打席に向かいます!」
水原「玖珂ですか……甲子園で石崎とも戦った事があるからの代打ですかね?」

石崎「誰が相手でも打たさん!」

ガキッ!
玖珂「相変わらず重い球だ」

倉田「150キロのストレートを打ちましたが結果はピッチャーゴロに終わり2アウトです!」
水原「1打席でそうそう打てるボールじゃありませんからね」

石崎「こいつで終わりだ!」

スト―――ン!
及川「負けたぜ」

倉田「最後はフォークを空振り三振! 試合終了! 8対2で阪神タイガースが勝利しました! 連敗脱出です!」
水原「横浜ファンには悪いですが阪神打線の爆発した良い試合でしたね。この調子で今年こそ優勝して欲しい物ですよ!」
倉田「今日のヒーローですが完投勝利の石崎選手と勝ち越し点を取った天道選手の2人のようですね」
水原「まあ石崎には悪いですが個人的には天道でしょうね。今日はあの一打で勝ったって感じです!」

阪神タイガース
山岡監督「これで4勝、斎藤に一歩リードってところか」
石崎「このまま新人王と最多勝を獲りますよ!」
守屋「石崎君が活躍するのは良いけど出番がないのは寂しいな」
城戸「先発完投型だからな。昨年より俺達の出番はなくなるかもな」
咲良「ピッチャーのみんなは色々あるみたいだね」
山内「ええ。まあ石崎も全試合完投と言うわけじゃないんで出番はあると思いますけど、昨年より出番が少なくなるのは間違いないと思いますよ」
咲良「なるほどね」
天道「樋川と対戦できなかったのは残念だがまあ悪くない活躍だったな」
鎖是「俺達はあんなのと対決はしたくないがな」
井上「2年連続のセーブ王か、とんでもないんだろうな!?」

横浜ベイスターズ
山岡監督「負けたか、仕方ない。出直しだな」
高岡「すみません」
樋川「まったくこれじゃ3年連続のタイトルも危ういじゃないか」
及川「いやいやまだ始まったばかりですよ」
小山「痛いと言うなら木崎の離脱だろう。2ケタ勝てるピッチャーが1人いなくなったからな」
服部「まあケガじゃ仕方ありませんからね」
村雨「ケガか」
相良「一流選手でもケガに泣かされた人は多いからな。お前もこれから頑張って行くならケガには注意しとけよ!」
村雨「は〜い!」
相良(大丈夫かよ?)

横浜ベイスターズ
阪神タイガース × 13
勝利
石崎和久 4勝0敗0セーブ
セーブ
敗戦
高岡賢次 2勝2敗0セーブ
本塁打 相良京一8号
天道出流4号
今日のヒーロー 天道出流 3回裏の勝ち越し打!
石崎和久 2失点完投勝利&現在最多勝!

オリックスブルーウェーブ
中尾監督「今日の相手はライオンズだ。相手の先発は今年で引退予定の椎名らしい」
久住「椎名さんも引退か、監督も寂しいでしょう」
中尾監督「いやあいつがタイトル獲る前の年に俺は引退したからな。特に何もないな」
久住「そうっすか(しかし細かい事をよく覚えているな。この頭の良さが名捕手の条件なのかな?)」
新井「ライオンズなら大沼もいるな」
風祭「いやあいつは二軍だから」
青木「ちなみに常葉も二軍と優勝経験が多いだけあってライオンズは選手層が厚いな」
日暮「いやいやその優勝を止めて現在連覇中のうちのセリフじゃないし」
青木「それもそうですね」
中尾監督「と言うか常葉は一軍だ。今日はスタメンだぞ!」
青木「知らなかった」
中尾監督「うちは河島だ。轟、リードを頼むぞ!」
轟「任せて下さい!」
河島「俺には一言もなしか」
中尾監督「エースが何を言ってんだか」
河島「お任せ下さい。エース河島は今年もやってやりますよ!」
中尾監督「ああ。とっとと勝って優勝決めてくれ!」
河島「お任せ下さい!」

西武ライオンズ
中村監督「さてと今日の相手はブルーウェーブで先発は2勝2敗といまいちな河島だな」
柳生「いまいちって言っても乗ってるときは手が付けられませんからやっかいですよ」
中村監督「うむ。今日の先発は椎名だがベテランの味を教えてやれ!」
椎名「まあ今年で引退決めましたしね。不甲斐ないピッチングはしませんよ!」
東雲「それよりも打線ですね。1番から足の速い選手が続くのが怖いですよ」
備前「たしかに俺の肩と椎名さんのクイックじゃ刺すのは難しいが、だったらランナーとして出さなきゃ良い話だ!」
東雲「そりゃそうですけど」
浪川「つまり椎名さんのコントロールなら四死球の心配はないか」
備前「それとランナー出されて崩れる人じゃありませんからね」
岡崎「なるほど」
常葉「それより俺がスタメンなんですけど?」
中村監督「どうもレフトが決まらなくてな。下で素質のありそうな奴を上げてくれって言ったらお前が指名されたと言うわけだ」
常葉「なるほど」
中村監督「二軍じゃ文句ない成績だったしこっちでも頼むぞ!」
常葉「頑張ります!」
草薙「今年も熾烈な4番争いか」

−1997年公式戦 グリーンスタジアム神戸−
風祭 大吾
後攻 先攻
VS
東雲 暴
日暮 雅敏 備前 吉安
久住 鴉 草薙 刃
青木 悟 柳生 雷蔵
轟 賢太郎 浪川 哲哉
乃木 大和 岡崎 芳樹 DH
DH 高野 稔 鳥海 新之助
鳴海 和司 常葉 命
木村 交 双見 禅次
河島 京太 椎名 隆晴

放送席
倉田「今日はオリックスブルーウェーブVS西武ライオンズの試合をお伝えします。今日の解説は鉄人と呼ばれた前田修平さんです!」
前田「まあケガには縁がありませんでしたが打撃の三部門のタイトル獲得もできませんでしたからね」
倉田「ですがプロ野球歴30年と言うのは歴史的な偉業ですよ」
前田「まあそうですがそれより椎名もついに引退ですがまだやれそうなのに残念ですね」
倉田「昨年も11勝と先発の柱の1人として活躍しましたからね。しかし本人曰く……」

椎名「引退を決めた理由ですか?」
倉田「はい。今でもチームの主力として活躍できているわけでしょう。それで引退するのは何故なんですか?」
椎名「そうですね。一番は既に自身の後釜達が出てきていると言う事、もう一つは自身の力の限界を感じている事ですね」
倉田「後釜と言うのは御影選手達の事ですね。それで限界と言うのは?」
椎名「近年じゃめっきりタイトルに縁がなくなったのが理由ですね。若いときは届いたのに今は届かない。衰えも自覚しますよ」
倉田「……ですけど」
椎名「もう200勝も達成しましたしね。思い残すこともないですよ。今年日本一になって胸を張って引退しますよ!」
倉田「そうですか、では今年も頑張ってください!」
椎名「ええ!」

倉田「……との事です!」
前田「さっぱりとしてますね。まあ周りはやれると思っても本人の火が消えたら続く物でもないですからね。私が言っても説得力はないかも知れませんがやめれるときにやめた方が良いのかも知れませんね」
倉田「椎名選手がエースになった年から常勝チームと呼ばれるようになりましたからね。椎名選手はチームの顔と言えるわけですしファンもですがチームメイトも寂しがるでしょうね」
前田「ま、そうですね。そう言えば久住が覚醒してからもブルーウェーブは優勝続きでしたか?」
倉田「MVPを3年連続ですからチームと言うより球界の顔って感じですけどね。そうそう久住選手が覚醒した年は2位でその後は連覇していますね」
前田「そうか、3連覇じゃなかったんですね?」
倉田「おっと、選手の解説をする時間もなくなりプレーボールです!」

1回表 オリックス0−0西武 今年ではなく今月好調の河島が先発として投げる試合が始まった!
河島「うらっ!」

カキ―――ン!
東雲「ふう、相変わらずとんでもないボールだな」

倉田「155キロのストレートをライト前に打って東雲選手が出塁します!」
前田「良くもまああんな速いボールを引っ張れますね!?」

轟(シュッ!)

ビュ―――ン!
東雲「まあ河島相手ならな」

倉田「あっさりと盗塁を決めてノーアウトランナー2塁となりました!」
前田「相変わらず河島のクイックは見てて泣きたくなるほどひどいですね」

河島「うりゃっ!」

ガキッ!
備前「最低限の仕事にはなったか」

倉田「備前選手はファーストゴロに終わりましたがセカンドランナーの東雲選手はサードへ向かうと進塁打になりました!」
前田「ランナーサードですか(そう言えば河島ってランナーがサードに行ったらとんでもないボールを投げるよな?)」

河島「充電開始!一気に解放だ!」

ズバ―――ン!
草薙「こんなボール打てるわけないだろう!?」
東雲「ラッキー!」河島「………………」

倉田「158キロのストレートでしたが完全な暴投でサードランナーの東雲選手がホームへ返ります!」
前田「バカだバカだと思いましたが断言できます。あいつは真正のバカです!」
倉田「………………」
前田(とんでもないボールってこう言う意味じゃないだろうに!?)

轟「おーい。大丈夫か?」
河島「ふっ、大丈夫ですよ……たぶん」
轟「全然大丈夫じゃなさそうだな。ダメなら交代するか?」
河島「いやまだ俺、先発なのに1アウトも取ってないんですけど?」
轟「備前さんから取っただろう」
河島「そう言えばそうか」
轟「お前の場合持ち前の負けん気が力のもとだからな。やる気がでないならとっとと帰れ!」
河島「そこまで言う事ないでしょう。分かりましたよ。やりますよ。やれば良いんでしょう!」
轟「ああ。頼むぞ!」
河島「舐めるなよ!」

ズバ―――ン!
草薙「とんでもなく浮き上がって来るな!?」

倉田「なんか調子良くなりましたね。草薙選手は157キロのストレートを空振り三振に終わります!」
前田「まあランナーいなくなってワインドアップだから投げやすいんでしょうね」

河島「うぉ―――!」

ズバ―――ン!
柳生「さすがに絶好調の河島から打つのは難しいか」

倉田「158キロのストレートを空振り三振で3アウトチェンジです! 1失点しましたが球速を見る限りは調子良さそうですね?」
前田「あいつは波乱万丈なマウンドで通っていますから断言はできませんが良いんじゃないでしょうか?」

河島「くそっ! いきなり失点した!?」
轟「自分のミスだし自業自得だな。まあそれは置いといて良く崩れなかったな」
河島「エースですから!」
轟「(相変わらず立ち直りが早いな)まあこの調子で頼むぞ!」

東雲「まあ1ヒットで1点なら上出来かな」
草薙「三振したんで偉そうには言えませんけど、今日の河島の調子からして幸先が良いんじゃないですか」
柳生「まあ椎名さんなら大崩れはしないから後2点取れば問題ないんじゃないか?」
備前「まあそんなとこだろう」

1回裏 オリックス0−1西武 河島の自爆癖が出て西武ライオンズが1点先制した!
椎名「嫌なバッターが続くな」

ガキッ!
風祭「結構ノビているな」

倉田「145キロのストレートを引っかけてセカンドゴロに終わり1アウトです!」
前田「全盛期に比べると落ちますが良いボールですね!(やっぱり引退は惜しいな)」

椎名「個人的にはこいつが一番苦手だな」

ガキッ!
日暮「あちゃー」

倉田「SFFを引っかけてピッチャーゴロに終わると日暮選手は開幕から不調が続いていますね」
前田「2割台の打率ですがまだ始まったばかりですしこれからですよ」

椎名「こいつでどうだ!」

ガキッ!
久住「打てないボールでもないんだけどな」

倉田「146キロのストレートを打ち上げて3アウトチェンジです!」
前田「ピッチャーフライですか、タイミングは合っていたように思えましたが、椎名のストレートがそれだけノビているって事ですかね」
倉田「河島選手は奪三振男と有名ですが、この椎名選手は防御率の良さが有名ですよね」
前田「まあ防御率と言っても全盛期は2点台が当たり前でしたが昨年は3点台とやっぱり落ちてるし大崩れしないのが椎名の一番の武器でしょう。そう言う意味じゃ今日の先発は対照的ですね」

備前「良いスタートですね」
椎名「ああ。やっかいなランナー出さずにホッとしているところだよ」
備前「椎名さんには最低でも6回まで投げてもらう予定なのでこの先もお願いしますよ」
椎名「ああ。分かってるよ!」

風祭「ストレートは結構ノビていますね」
久住「まあな。打てないボールでもないんだがストレートは慣れないと、どうにもならないからな」
青木「芯でとらえるのはかなり難しそうですね」
日暮「ま、次には打てるでしょう♪」
久住「相変わらずポジティブな奴と今年も始まった感じがするな」
青木「久住さんって4月には毎年同じ事を言いますね」
久住「そう思うんだから仕方ねえだろう!」
日暮「ははっ、たしかにいつもこんな感じだよね」
風祭(まあポジティブなのは良い事だよな?)

3回表 オリックス0−1西武 椎名は文句のないピッチングで抑え続ける!
河島「ぬぉ―――!」

ズバ―――ン!
常葉「相変わらずのボールですね」

倉田「最後は入ったか見逃しの三振で1アウトです!」
前田「156キロと速いですね。そう言えばこの2人って同じ高校の先輩後輩じゃなかったですか?」
倉田「そう言えばそうですね。初スタメンの相手が高校の先輩と言うのも何かの縁って事なんでしょうか?」
前田「さあ?」

河島「むぉ―――!」

ガキッ!
双見「俺もプロ野球やって長いけどここまで重いボールってのはさすがに経験ないんじゃないか!?」

倉田「158キロのストレートに当てましたが結果はピッチャーゴロに終わり2アウトです!」
前田「今日の河島の調子からして打つのは難しそうですね」

河島「うぉ―――!」

ガキッ!
東雲「やれやれ」

倉田「東雲選手はカーブを打ち損じて3アウトチェンジです!」
前田「この回も三者凡退ですか、やっぱり調子は良いんでしょうね」

河島「絶好調だぜ!」
轟「分かったから落ち着け(しかし東雲に投げたカーブはコースが怖かったな)」

備前「どうした打てないボールでもなかっただろう?」
東雲「いやー完全にストレートと思っていたのにカーブでタイミングを外されました」
備前(轟のリードなんだろうが大胆な奴だな)

3回裏 オリックス0−1西武 河島はやはり絶好調なのか相手を寄せ付けないピッチングを続ける!
椎名「ここまでは完全だが」

ズバ―――ン!
高野「届けっ!」

倉田「バットは届かず高野選手は空振りの三振に終わり1アウトです!」
前田「この高野もライオンズからトレードされて来た選手と相手チームに縁がありますね」

椎名「次も抑えてと」

ガキッ!
鳴海「やっかいなコースに投げて来るよな」

倉田「高速スライダーに当てましたが結果はセンターフライに終わり2アウトです!」
前田「このスライダーも椎名の決め球の1つですからね。やはり崩すのが難しい相手ですね」

木村「ふっ!」

カキ―――ン!
椎名「2アウトでランナーが出たか」

倉田「綺麗に打った! 打球は三遊間を抜けて2アウトランナー1塁となりました!」
前田「この木村は目立たないけど良い選手ですよね」

椎名「ランナーがいるとは言え2アウトならマシな方か」

カキ―――ン!
風祭「同じボールは通用しない!」

倉田「147キロのストレートでしたが綺麗に打ちました! これで2アウトランナー1、2塁となります!」
前田「椎名のMAXのボールを打つと今年の久住との首位打者勝負の筆頭はこの風祭かも知れませんね」

椎名「日暮に長打警戒は必要ないが」

ズバ―――ン!
日暮「そう言えば昨年は出塁率のタイトル獲ったし今年も狙って見るかなー」

倉田「最後は外れてフォアボール! 2アウトですが満塁に追い込まれました!」
前田「小さいとストライクが入らないと言いますが、椎名ほどのコントロールでも難しいんですかね?」

椎名「粘られてリズムが狂ったか、次は苦手な久住なんだが、満塁でカウント悪くするのもな」

カキ―――ン!
久住「文句なし!」

倉田「140キロで変化した高速スライダーでしたが完全にとらえて打球は右中間を抜けて打った久住選手は三塁まで走ります!」
前田「ランナー一掃のタイムリースリーベースと、まあさすがは久住ってとこですか(足の速さに勝負強さに高打率維持に抜群の守備力とここまでの選手は球史でも少ないからな)」

椎名「この手の嫌な予感は良く当たるよな」

ズバ―――ン!
青木「畳みかけたかったのにさすがは椎名さんだな」

倉田「144キロのストレートを空振り三振! 青木選手はチャンスに続きませんでしたがブルーウェーブ、3点取って逆転しました!」
前田「調子を整えて後続を三振に取る椎名もさすがですが、勝負強い久住もさすがですね」
倉田「3回を終わって試合は3対1このまま終わるのでしょうか?」
前田「さてどうでしょうね?」

椎名「2点差か、正直今日の河島からはきついな」
備前「そうですか? たしかに河島のポテンシャルは凄いですが、いきなり悪くなる奴ですから展開次第じゃ分からないと思いますが?」
椎名「今日はとことん良い河島だろう。こう言うときの勘は良く当たるんだ」
備前「そうでしたね」

久住「一気に3打点と満塁に強くなった気がするな」
日暮「これがゲームなら満塁男の特殊能力でも付くのかな」
青木「つまり俺はチャンス×が付くわけですね」
風祭(プロの人でも結構あのゲームやってるんだな)

9回表 オリックス3−1西武 1回の自滅と言うか自爆以来付け入る隙は与えないピッチングを続ける河島!
倉田「3回以降目立った展開はなく試合は3対1のまま続き当然のようにマウンドにいるの河島選手です!」
前田「絶好調の河島の完投ペースな展開で来ましたからね。さすがにこれは決まりですかね?」

河島「この俺の前に敵はなし!」

ズバ―――ン!
岡崎「150球越えても全然スタミナが落ちないって化け物かよ!?」

倉田「155キロのストレートを空振り三振と完全に河島選手のリズムで試合が動いていますね」
前田「まあいきなりリズムが狂ってフォアボール連発もあってランナーも出るんですが、打つのだけは無理なんですよね」

河島「誰にも打たさん!」

ガキッ!
鳥海「調子が良くてもこいつのボールは打てない!?」

倉田「好調の鳥海選手も打てずピッチャーゴロに終わり2アウトです!」
前田「しかし河島の守備は観てて怖いですね」

河島「こいつで決めてやる!」

ズバ―――ン!
常葉「敵にまわすとこんなに恐ろしい人だったとは」

倉田「最後は後輩にも容赦なしの159キロのストレートで抑えて試合終了です!」
前田「ラストボールが自己最速って本当に化け物だな。まあどう見てもヒーローは河島と久住な試合でしたね」
倉田「結局3回の攻撃で決まりましたね」
前田「ええ。椎名も良く投げたんですがね」
倉田「7回3失点ですからまあ悪くはない方ですが」
前田「なんか微妙ですけど、まあ頑張ったと思いますよ」

オリックスブルーウェーブ
久住「今日もヒーローと今月のMVP候補だな」
日暮「うーん、選ばれるとしたら久住君より風祭君じゃないかな」
久住「どうせあいつより打率は下ですよ」
青木「と言うか久住さんも2位なんでまだまだチャンスはありますよ」
久住「だよな!」
日暮「けど久住君が打てたのって3回のときだけで後は完全に椎名さん達に抑えられてたしね」
久住「くそっ! 言い返す言葉がねえ!」
河島「俺もMVPに選ばれないかな」
風祭「ピッチャーは浅野(ロッテ)さんが一番の候補だと言われていますが投球回数で河島さんが選ばれる事もあるんじゃないですか?」
轟「防御率じゃ勝てそうもないが月間の勝数なら上を行く可能性もあるか」
河島「おっし! この調子で行くぜ!」
中尾監督(うちの動力源はこの河島かな。こいつが調子良ければ優勝も難しくないんだろうが……)

西武ライオンズ
椎名「まあ勝てないときは勝てないからな」
常葉「4打数ノーヒット」
柳生「4タコなんて良くある話さ。明日に打てば評価は取り戻せるはずだ!」
中村監督「いや他の選手も試したいから明日は代打で頑張ってくれ!」
常葉「………………」
草薙「まあ明日も頑張ろうな!」
常葉「うっす!」
浪川「明日は何処とやるんだっけ?」
東雲「ファイターズですよ」
浪川「ファイターズか、あんまりやる気が出る相手じゃないな」

西武ライオンズ
オリックスブルーウェーブ ×
勝利
河島京太 3勝2敗0セーブ
セーブ
敗戦
椎名隆晴 2勝1敗0セーブ
本塁打
今日のヒーロー 久住鴉 3回裏の逆転打!
河島京太 1失点完投勝利!

インフィニティスポーツ
倉田「4月も終わって圧倒的にスワローズがトップでしたが今は調子を落としている感じですね」
野村「やはり一番の注目はルーキーで4番の滝沢ですね。昨年の高須(広島)に負けない活躍をしていますよ」
倉田「投手陣でも昨年のタイトルホルダーの藤堂選手や新星の本郷選手などが出て来ましたね」
野村「そうですね」
倉田「パリーグは混戦しています。ファイターズだけが負けまくっているって感じなので頑張って欲しいところですね」
野村「負けまくっているって」
倉田「そして今月の月間MVPですがこんな感じです!」

4月の月間MVP
野手部門 投手部門
相良 京一  石崎 和久 
風祭 大吾 河島 京太

野村「成績は表示されないんですね?」
倉田「面倒なので……ちなみに相良選手は11本で現在ホームランキングです。石崎選手は5勝1敗で現在の最多勝です。風祭選手は現在の首位打者で河島選手は無冠ですが4勝2敗で何故か選ばれました!」
野村「何故かって……まあともかく大まかに説明はするんですね」
倉田「石崎選手と風祭選手はルーキーなので現在の新人王候補の筆頭とも言えるんじゃないでしょうか」
野村「他にも活躍しているルーキーは多いですから断言はできませんけどね」

巨人寮 斎藤の部屋
球星「お前の名はないな」
斎藤「これでも奪三振はトップなんですけどね。まあ今からタイトル争いと言うのも早いからなー」
球星「ちなみにあの石崎と言うのは凄いのか」
斎藤「そりゃセリーグの新人王候補ですから凄いですよ。甲子園でも155キロって記録を出してますし」
球星「甲子園か……ちなみに斎藤は石崎と戦ったことはあるのか?」
斎藤「たしか3回くらい投げ合って2回勝ったと思います」
球星「なるほどのー、ん? 誰か来るぞ?」
伴「おっす!」
斎藤「ノックくらいして下さいよ」
伴「気にするな!」
斎藤「(ダメだ。この人、他人の話聞かないタイプだ!?)それでなんの用ですか?」
伴「例の賭けの話だよ」
斎藤「賭け?」
伴「キャンプのときに開幕投手が誰か賭けただろう」
斎藤「ああ! そう言えばありましたね(すっかり忘れてたな)」
伴「で?」
斎藤「それじゃ保留で」
伴「一番詰まらん答えで来たな」
斎藤「すみません。すっかり賭けのこと忘れてたんですよ」
伴「まあルーキーで頑張っているし無理もないか、じゃあシーズン中に何か決めとけよ!」
斎藤「はい」
球星「行ったな。ところで本当に何もないのか?」
斎藤「いきなり言われても困るんですよ。まあ忘れていた俺が悪いんですけどねそうだ。球星さんは何かないですか?」
球星「ん? ワシがもらってもいいのか?」
斎藤「ええ!(思いつくことが本当にないからな)」
球星「無欲な奴だな……それじゃ……」
斎藤「はあ? まあそれで良いなら構いませんけど(だけどこれって賭けの願いになってないから意味ないし)」

こうして4月も終わった。斎藤の評価は石崎より下だがそれでも4勝無敗と文句なしの成績とプロで通用している。斎藤はこのペースでシーズンを終えられるのだろうか?