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香住「やっぱり敵わなかったな」
御影「良い試合だったよ。そっちの打線は凄まじかったけど、先発が不足していたな。守部さんと叶さんだけじゃ俺達には勝てなかったな!」
香住「いや、僕のリードがもう少し良ければ」
御影「良かったからこそ。7戦まで行ったんだろう。まあ確かに失点は多かったけどな」
香住「それとシリーズMVPも惜しかったね」
御影「ま、あれだけ打てばバッターが選ばれるだろう。ルーキーの浪川とはちょっと意外だったが」
御影「新人王か、俺も獲ったがお前の世代にはライバルが多いからな」
香住「ブルーウェーブの日暮君にホークスの御堂君か、どっちも凄い活躍をしているからね」
御影「こればっかりは記者投票で決まるからな。まあ明後日には発表されるだろう」
柳生「俺の存在も忘れられたら困るぜ!」
御影「そうですね。ただ御堂とはね」
御影「そう言えば丸井さんも新人王を獲っていますね」
御影「なんつうか今年も終わったって感じだな」
御影「まだ2年目だし気にする事もねえよ。それにしてもここまで来るのは長かったな」
香住「そうだね。なんだかんだ言って夢だったプロ野球選手になれたしあの時は夢にも思わなかったね」
御影「ああ。これもあの時のガキンチョのおかげか」
香住「うん。彼がプロ入りするまで先輩として格好良いところを見せないとね」
御影「そうだな。あのガキンチョは何処で何をやっているのやら?」 御影「ぬぉ―――!」ズバ―――ン! 香住「うん。良いボールだよ!」今では信じられないだろうが昔の御影と香住は選手としては一流どころか三流と言われるくらい落ちこぼれだった。努力は認められていたが試合で活躍する事もなく彼らは中学3年の頃も全然活躍できなかった。では変わった切欠はなんなのかそれはある少年との出会いだった。 香住「君、迷子?」 御影「残念ながら一般的には子供の方が迷子って言われるんだよ」 香住「まあまあお兄さん達が一緒に探してあげるよ」 御影「気にするな。帰りのついでだ。ガキが遠慮するな」そこにあった物は「悪いが先に帰る。お前は地図に書かれている知人の家に向かえ!」と書かれたメモが缶ジュースと一緒に置いてあった。 御影「それにしても適当な両親だな!」 御影「そうか、両親の悪口言って悪かったな」 香住「あのさ。ここに書かれている家って灯夜の家じゃない」 香住「うん。やっぱり間違いないよ。僕の家は隣だしここ灯夜の家だよ」 御影「まあな。仕方ない。しばらく家に住め」こうして御影家は変わった居候も増えた妙な生活が始まった。 御影「ああ。達もって事は京太もやっているのか?」 香住「レギュラーなんだ」 御影「ふーん、俺はピッチャーで祐真はキャッチャーだ。こっちは残念ながら補欠だけどな」 御影「意外?」 御影「ふーん」 御影「実際補欠だからな」 香住「まあまあ僕はキャッチャーだし京太君のボールも捕って見たいな」 御影(そう言えば俺にもこんな時期があったな。中学に上がってからはレベルの違いに愕然としたっけ)御影は河島に昔の自分を重ねて見ていた。せめて河島には自分の様になって欲しくないと思いながら就寝に付くのだった。 ズバ―――ン! あのメンバーに聞かれたら全員に突っ込まれそうだが河島は気にせず自画自賛する。 御影「ああ。コントロールはダメそうだが本当に凄いボールだった!」 御影「……なあ京太、そのフォームを教えてくれ!」 御影「頼む!」 御影「しかしボールの威力は凄かった!」 御影「オッケー!」御影は初めて自分が目標にするピッチャーを見た。年下だったがそのピッチャーは御影の憧れとなった。 御影(こうか!)ズバ―――ン! 御影「(待てよ)祐真、落とすぞ!」スト―――ン! トルネードで投げたフォークも落差は凄まじく香住も後逸する。コントロールに問題があるが確かにボールの威力は上がっているらしい。 御影「やっぱり変化球の威力も上がった。このフォームなら俺は誰をも超えるボールを投げられる!」 |
香住「あれから僕も灯夜のボールに慣れたせいかキャッチングを買われてプロ入りもできたけど」
御影「ああ。切欠はガキンチョだったな。それにフォームチェンジだけで全てが上手く行った訳じゃないけど、切欠と言えばやはりあれだったからな」
香住「そうだね。やっぱりクイックは最悪だったし四死球で自滅した試合もあったからね」
御影「ああ。けど最高のボールを投げられる様になったんだ。それで十分さ!」
香住「ちなみにあの子はシニアで大活躍している見たいだよ」
御影「そうなのか?」
香住「うん。怪物勢揃いの世代らしく彼が入るとしたら4年後のドラフトだね」
御影「つうかあのガキンチョなら今からでも通用するんじゃね?」
御影「ははっ、いずれは球速で抜かれそうだな。まったく大したガキンチョだな」
香住「彼が入るまでに僕らもチームで主力にならないとね」
御影「俺はもうなっているけどな」
御影「今年はこの日が一番の楽しみだったぜ。お前と投げ合える日をな!」
御影「じゃあそのエースの座を奪われない為に今日の試合でも勝つかな!」
御影「ルーキーのくせに良い度胸じゃないかプロのエースって物を教えてやるよ!」