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遥「今年から指導者として頑張るんだからお手本になる様に頑張らないとね!」
遥「えへへ」
遥「荒れていた時期に比べて良い顔する様になったなって」
遥「私達の前ではね。でも1人の時は」
遥「そうだよ。それに旦那さんがいっぱい稼いでくれてるからね。数年は大丈夫だよ!」
遥「涼や私の為にもね」
遥「肝心の涼は寝てるけどね」
遥「それじゃ頑張ってね」 瀬戸「ふっ!」ガキッ! 1軍入りしての香取は凄まじく毎年タイトル争いにも加わっていたが9年目の1993年だけは違っていた。 神代「香取さんらしくないプレーが多いですね」 神代「そうですか? 俺には無理してケガに耐えているしか見えないですが」 神代「それで具合は?」 神代「分かっています。俺だって1年目は順調とは言えなかった。だからこそ必死で練習してレギュラーの座を奪った。ですが」 神代「そんな事はないです。俺達はチームです。話せばきっと!」 神代「それはっ!?」冷たい織田の言葉だったが神代は何も言い返せなかった。選手として頑張ってるのに選手として諦めろなどと言うのは現役の自分にもどれだけ傷付く言葉か良く理解できていた。いや、野球しかない神代に取っては死刑宣告に近い物があるのかも知れない。 神代「(また何もしてあげられないのか)…………この事を知ってるのは?」 神代「香取さんの奥さんはなんて?」 神代「そうですか、今年も息子さんの為にって頑張ってたのに」 神代「しかし監督も知らないんですか」 神代「そうですね(俺には壊れると知ってて見ているくらいしかできないのか!)」 神代「はい!(織田さんもなんだかんだ言って香取さんを心配してるんだな。やっぱり俺達はチームだ。けど織田さんの言う通り簡単に人に話して良い事じゃないし香取さんに何かしてあげられないかな?)」こうして香取を心配する神代だったが結末は変わる事無く悲劇は起きた。 翌日、香取は紅月からヒットを打ったがファーストベースを抜けた瞬間、足が止まり意識をなくすのだった。遠山も申し訳なくアウトを取ると心配して香取に話しかけるが当然返事はなく香取は病院に連れて行かれるのだった。 病院に運ばれてから香取はひざの手術を行われた。まだ麻酔が効いているらしく香取の意識はハッキリしないらしい。 遥「病院よ!」そこにいたの香取の妻の遥だった。眼が赤くなっているのを見て香取は自分の状況を理解して行った。 遥「当然よ。私達は家族なんだから!」秘密とはひざのケガの事である。香取も秘密を持ち続ける事に罪悪感を感じていたらしく申し訳なさそうに謝罪する。 遥「知ってたわよ!」当然ながら香取は驚く。そして遥はさらにたたみ込むかの様に話を続ける。 遥「ついでに言うならチームメイトの織田さんも心配して私に相談しに来たよ。それにこの病院はあなたの主治医のいる病院よ!」 遥「まあ一言私に相談してくれても良かったと思うけどね。けど私が同じ立場なら」 遥「それと…………」遥は大事な話をしようとするがなかなか話せないのか口を閉ざしてしまう。 遥「良い事もあるわよ。たくさんの人があなたのお見舞いに来てくれたよ。監督さんやチームメイト、友人、両親とね!」 遥「まずあなたのひざだけど、手術は成功して日常生活には問題ないって…………ただ」当然、香取の声には力がなくその声色には絶望がありありと浮かんでいた。 遥「………………」 遥「…………うん。監督さんは凄くショックを受けてたかな」 遥「それ少し違うと思う」 遥「監督さんはあなたが倒れたのは自分のせいだと思ってる。それは1人の選手ではなく1人の人間としてあなたを想っているからだと思う」 遥「それで今後の事をあなたと話し合いたいと言っていたわ」香取は表面場、普通の顔を装っているが心の中はかなり荒れていた。 遥「頑張ろう!」うなずく物の香取の声に力はなかった。その後、数々のお見舞いも来るが香取は必死にリハビリを続けていた。 遥から織田も自分のケガの事を知っていると聞いたが織田が病院に顔を出したのはこれが最初である。 正直、寡黙で無愛想な織田は香取も苦手としておりそんな人がこんなに心配してくれてる事は素直に嬉しく思うのだった。 織田の指摘で香取も知らず内に涙を流していたのに気付く。 香取にしろ織田にしろ泣いていた理由は分からなかった。ただ悲しいから流れていたと言う訳ではなさそうだった。 野村監督は今後香取をバッティングコーチとして頑張ってもらう様に頼み込んでいたのだった。香取は性格的には織田と同様問題はあるが2人共チームメイトの信頼は厚いとコーチ業を勧められたのだった。 一匹狼とは香取が入団した頃に呼ばれていた名前である。その名の通り香取には協調性がなくチームの雰囲気を悪くしていた。実力もまだ1軍クラスではないと言う事もあるが4年間2軍にいた大半の理由はそれだった。 思いも浮かばない切り返し方に困惑してか香取は言い返すことができなかった。 織田は寡黙で無愛想だがその力は誰もが認めており教えを請う者もいた。その織田は香取に指導者としての才能があると思い柄でもないがおせっかいを焼いた。自身もそろそろ引退が近く他人事とは思えないと言う理由もあった。 遥「何しているの?」入れ違いに戻って来た遥がたたずんでいた香取を心配そうに見ていた。 遥「うーん? さとりにでも会ったの?」 遥「うん。あなたの人生なんだからあなたの好きにすれば良いと思う!」 遥「いまさら何言ってるんだか」それから香取は合っているかどうか確かめる為にもまずやって見ようと決意し一度断った事への謝罪とこれからの感謝を監督に伝える事になった。 野村監督「ベテラン勢が衰えているせいか打率も下降した。それでも今年は3位だったしお前がジャイアンツを強くして来年こそ優勝だ!」 |
遥「どうしたの?」
遥「今までの人生と比べると短い時間だけど、あなたには誰より長く感じたんでしょうね」
遥「ええ。けど一生付いていくから!」
橘「俺はこの2年で慣れましたよ。妹尾さんが昨年悪かったせいか今年からエースって言われてますし一番出世したのは伴さんですかね」
橘「っと織田さん、お疲れ様でした。インタビューは良いんですか?」
橘「それに?」
神代「いえ。それは織田さんのおかげですよ。伴さん達もそう言ってますから」
遥「日本一おめでとう!」
遥「さあ? でも日本一になって嬉しい見たいだし良いんじゃないの!」
遥「それで今年1年間どうだったの?」
遥「あなたから直接聞きたいのよ!」
遥「ふむふむ。それで?」
遥「ふむふむ。それで?」
遥「ふむふむ。それで?」
