第4章 球史に残った悪夢

−1992年 12月−
御堂は見事にタイトルを獲得とチームの主力として活躍している。知名度も上がり全国区となりエースとして期待されている。
御堂「モーガンさんも行くんですか?」
モーガン「ああ。最後は絶不調だったし年齢的に限界と言うのも理解したしな」
御堂「でも成績は悪くなかったし打点王も狙えるくらいだったし」
モーガン「今生の別れって訳じゃないしそんな顔するなよ。一度帰国するが来年にはこっちに住む予定だ。また会えるさ!」
御堂「と言っても近衛さん達は移籍するしモーガンさんも引退するし何人も去って行くのはきついですよ」
モーガン「引退や移籍はプロなら良くある事だろう。お前だっていつか自分の力を試しに行くかも知れないじゃないか?」
御堂「僕はずっとダイエーにいるつもりです!」
モーガン「そうか、それじゃ日本一になったらどうするんだ?」
御堂「えっと」

そう言われて優勝は頭にあったがその後と言うのは考えた事がなかった事に気付いた御堂は言葉に詰まった。
モーガン「お前は既にエースと呼ばれるだけあってセンスあるピッチャーだ。しかしピークはまだ先だろうしこの国が狭く感じる時が来るかも知れん!」
御堂「はあ?」
モーガン「もしかしたらの話だ。そう難しく考えるな。とにかくこれでお別れだ。来年は優勝しろよな!」
御堂「はい! モーガンさんもお元気で!」
モーガン「ああ!」

こうして三冠王も獲得した伝説の外国人モーガンも引退して行った。
海藤「しかし通算打率5位ってのも凄いよな」
大友「ああ。俺も4番として期待されているし3割30本は打つつもりだ!」
海藤「三冠王も獲った人だしやっぱり引退は痛いよな」
大友「ああ。だからこそ俺達が頑張らなければならない!」
海藤「そうだよなって大友さん!?」
御堂「気付くのが遅いですよ!」
大友「ふふっ、悪くないチームだな。ダイエー初優勝と言うのも悪くないかも知れん!」
海藤「よろしくお願いします!」
大友「ああ。近衛さんから少し話を聞いてるしまずはチームの雰囲気を変えてやらないとな!」
御堂&海藤「おおう!?」
大友「ふっ、お前らにも協力してもらうぞ!」
御堂「はい!(凄いカリスマだ。これならチームも一気に変わって行くかも!)」
海藤「うっす!(良い雰囲気だぜ。これなら今年はAクラスは行けるかもな!)」

チームの改革と言うべきか近衛が移籍して意気消沈したチームメイトも大友のカリスマのおかげか自然と付いて行く事となる。
鳥海「何か良い雰囲気だな。しかし望月が日本最速の158キロを記録とあいつもすげえよな」

そして御堂に取ってはこれから先も忘れられそうもない試合も始まるのだった。

−1993年公式戦 藤井寺球場−
小栗 誠一
後攻 先攻
VS
鳥海 新之助
坂本 祐樹 野上 憲弘
DH トーレス 海藤 知也
籾山 圭太 大友 勇輝
ヒューズ マルティネス
飯田 友哉 下山 隆祐 DH
畑山 充 高原 竦
道山 正則 高杉 充
鷹見 太一 加茂 史虎
白銀 丸馬 御堂 誠人

放送席
類「6月に入り暑くなって来ましたがみなさんお元気でしょうか…………ここからどう言うふうに話しましょうか?」
前田「暑中見舞いみたいな出方じゃなくて普通に話せば良いと思います」
類「では今日の試合はエース同士の投げ合いと楽しそうです。白銀選手は最多勝と相変わらず今シーズンもエースとしての実力を見せております。御堂選手は3年目のジンクスかと言われていますが勝ち星が付かないだけであって防御率は相変わらず良いと安定感を見せてますね。解説は前田修平さんと南海時代に活躍した選手ですがホークスのイメージは相変わらずありませんね」
前田「悪かったですね。しかし今年のダイエーはなかなか勝てないと調子が悪いですね」
類「逆に西武は順調ですけどね。4番の大友さんは今年も好調と移籍1年目ですが既にチームの柱と言った感じですね!」
前田「打率以外は最高レベルって怪物ですからね。盗塁数が減って来てるのが気になりますが」
類「籾山選手も昨年に比べて調子が良いのでエースと4番に注目して観ると面白いかも知れませんね」
前田「昨年は本塁打は凄かったですが打率や打点の低さで評価は下がりましたからね。今年は打率、本塁打、打点と絶好調ですね」

2回表 近鉄0−0ダイエー 両投手は初回を無難に抑えて2回へ
大友「このシュートを叩き込む!」

カキ―――ン!
白銀「…………おいおい」

類「インサイドのシュートでしたが無理矢理引っ張って打球はレフトスタンドに入ると怪物ですね」
前田「力任せな打撃ですがパワーの高さで一流の成績を出していますからね。しかし決め球のシュートを狙ったとは言え良く打ちましたよ!?」

白銀「御堂相手に大差はまずいな!」

ズバ―――ン!
マルティネス「速すぎっ!?」

ガキッ!
下山「打ち上げちまった」

スト―――ン!
高原「フォークかよ!?」

類「マルティネス選手から三振を奪ったら後続も難なく抑えるとやっぱり凄いですね」
前田「昨年の最多勝投手ですからね」

海藤「さすがは大友さんだ。これなら今日は勝てるぞ!」
御堂「うん!」
鳥海「まだまだ援護するぜ!」
御堂「お願いします!」
大友(連勝すればもっと良い雰囲気になるだろうしこのまま点を追加して行く!)

3回裏 近鉄0−1ダイエー 大友の一振りで現在はダイエーがリードしている
御堂(シュッ!)

ズバ―――ン!
鷹見「コントロールが良いのか悪いのか分からないな?」

類「最後は見逃し三振と御堂選手はまだノーヒットに抑えています」
前田「まだ3回ですけどね。しかし早い回での四死球2個と言うのは御堂にしては珍しいですね?」
類「四死球は少ないピッチャーですから確かに珍しいですね。しかし球速は出ているし調子が悪いとも思えませんが?」
前田「変化球の制球がちょっと気になりますがね」

小栗「よっと!」

カキ―――ン!
野上「届かないか!」

類「セカンドの頭を越えた。1アウトから俊足のランナーが出ます!」
前田「次はやっぱり送りバント見たいですね」」

坂本(次で決める!)

コツンッ! パシッ!
御堂「ファースト!」

シュッ! パシッ!
類「あっさりと送りバントを決めてこれで2アウト2塁となりました!」
前田「地味ですが良い仕事をしますよね。しかし今年の成績なら打たせても良いしランナーを走らせても面白かったと思うんですが」

御堂(シュッ!)

ククッ!
トーレス「届く!」

カキ―――ン!
御堂「えっ!?」

類「ボール球でしたが振り切ってライトスタンドに運ぶ逆転2ランホームラン!」
前田「技術よりも力押しですか、しかし両チーム共に4番は勝負強いですね! まあだからこそ4番なんでしょうが」
類「ホームランで勝ち越しと思ったらホームランで逆転とエース同士の投げ合いですが今日は乱打戦の流れになるかも知れません」
前田「打たれたヒットは少ないし断言はできませんが可能性はあるかも知れませんね」

御堂「くそっ!」

ククッ!
籾山「やっかいなコースに!?」

類「最後はスライダーを空振り三振とずい分と難しいコースに決めて来ましたね」
前田「あんな低く端に決められたら打てませんよ」
類「チェンジですが近鉄が逆転し2対1となりました」
前田「良い試合ですね」

籾山「くそっ!?」
坂本「逆転したんだ。気にせず次で打てば良い!」
白銀「その必要はない! 2点あれば十分だ!」
籾山「そうかよ」
坂本「とにかく油断せず行こうな」

5回表 近鉄2−1ダイエー トーレスの一振りで逆転のまま5回に入った
鳥海「うらっ!」

カキ―――ン!
白銀「あれを打つか」

類「難しいコースでしたが綺麗に打ってノーアウトランナー1塁となります!」
前田「150キロの直球なのに簡単とは言えませんが合わせて来ましたね」

白銀(坂本さんから盗塁は難しいだろうしバッターに集中するか!)

ガキッ! ポロッ!
畑山「げっ!?」

類「痛烈と言うほどでもないゴロでしたがサードの畑山が後逸してランナーは得点圏に進みピンチを迎えます!」
前田「普通に守ってたら併殺間違いないだけに今の失策は痛いですね」

白銀(次は海藤か、全力出せば難なく抑えられる奴なんだが)

カキ―――ン!
海藤「当たった!?」

類「左中間を抜けました。ランナー一掃のタイムリー2ベースと再び逆転です!」
前田「思っていたよりフォークが落ちないと調子が良さそうで悪いですね?」

白銀(またか、調子が悪い訳じゃないのに妙だな?)

カキ―――ン!
大友「良し!」

類「センターの頭を越えた。再び1点追加と今年の絶好調振りが信じられないくらい調子が悪いですね」
前田「今のボールも146キロですから調子が悪いってほどじゃないんですがね。2点差だしまだ分かりませんよ!」

今日の福岡ダイエーホークスの打線は絶好調でこれ以降も得点を追加して行く。

9回裏 近鉄2−8ダイエー 御堂も降板はせず後3人で完投勝利となる
御堂「後3人で終わらせる!」

カキ―――ン!
海藤「とか言いながらいきなり打たれてるし?」
御堂「すみません」
海藤「まあ6点差だし問題ない。とにかくバッターに集中して行こう!」

類「後3人でしたがヒューズ選手が綺麗に打ってノーアウト2塁です!」
前田「この回で同点にするなら1アウトも無駄にできませんし走る事はなく送りバントもないでしょうね」

飯田「このくらいなら打てるぜ!」

カキ―――ン!
御堂「むうっ!」
海藤(さすがに球数も多いしコントロールもあまくなって来てるな。仮にここで3ラン打たれても3点差だしここはバッターに集中だ!)

類「飯田選手も続きノーアウトランナー1、3塁で次は長打力の高い畑山選手です」
前田「と言っても今日は当たってませんからね」

畑山「もらった!」

カキ―――ン!
御堂&海藤「しまった!?」

類「高めの棒球を完全にとらえて打球はレフトスタンドに叩き込むと一気に3点差になりました!」
前田「このままサヨナラとか……いや……まさかな」
類「当然ですが堀内監督が出て来ます。交代でしょうか?」
前田「うーん、どうでしょうかね?」

堀内監督「疲れてるみたいだし交代するか?」
御堂「いえ。まだ行けます!」
堀内監督「ふむ(大丈夫なのか?)」
海藤(大丈夫ですよ。川崎さんには悪いですが御堂はうちのエースですから完投に問題ないはずです!)
堀内監督「次のバッターを抑えられなければ交代だ!」
御堂「分かりました!」

類「交代ではなく続投のようですね。まあ御堂選手は完投の多いピッチャーと監督の信頼が厚いですからね」
前田「新人時代からエースとして活躍してますからね。それにこの点差ですし続投も分からなくはないですが……まあ次の打者次第で交代でしょうね」

道山「続投か、コントロールも落ちて来てるし打ち頃だし続くぜ!」

ガキッ!
類「カーブを引っかけてセカンドゴロとあっさりと抑えられましたね」
前田「今のカーブはキレてると堀内監督のおかげですかね。この調子が続くなら次の打者も問題ないでしょう」

道山「ちくしょう!」
海藤(良いぞ。この調子で行こうな!)
御堂(はい!)

ガキッ!
鷹見「まだ変化が大きいな!?」

類「鷹見選手もシュートを打ち上げてアウトとなりこれで試合も決まりましたかね?」
前田「3点差で1番だからまだと言いたいところですが2アウトじゃさすがにね」

籾山「6点差が3点差になったんだ。俺まで回してサヨナラだ!」
小栗「確かに最後のバッターになるのはごめんだしヒット打って来るさ!」
御堂(これで終わりだ!)

ガキッ!
小栗「打ち上げちまった!?」
鳥海「オーライ!」
籾山(落とせ! 落とせ!)

ポロッ!
鳥海「げっ!?」

類「小栗選手は打ち上げてライトの鳥海が追い着いてキャッチしてじゃなく……」
前田「……この場面で躓いて転びましたね」
類「凄まじい悪運と言うべきかエラーで出塁します!」
前田「この場面で転ぶか普通って感じですね。まあ鳥海はあれでエラーもありますし意外と言うべきでもないでしょうが」

鳥海「くそっ! いきなり足が動かなくなったし呪いか!?」
大友「さすがにその言い訳はどうかと思うが?」
鳥海「本当に足が動かなくなったんですよ!」
大友「いきなり筋肉を動かして痛めたとかとは違うんだよな」
鳥海「痛くはないですよ。どちらかと言えばケガに縁はありませんし交代の必要もないです!」
籾山(俺の念が通じた!? いや俺は落とせと言ったのであって転べとは言ってないし関係ないか次もどんな形で良いから続け!)
海藤(不運だったけど打たれた訳じゃないし次を抑えような!)
御堂(コクッ!)

ガキッ! バシッ!
マルティネス「嘘!?」

類「ファーストベースに当たるイレギュラーでまたランナーが得点圏となりました!」
前田「有り得ないってくらい風向きが変わってますね。ここでホームランが出れば同点ですが……まさかね」

御堂(シュッ!)

ボコッ!
トーレス「痛っ!?」

類「気が動転したかコントロールも乱れてデッドボールと本当に信じられない展開ですね」
前田「素で言われると変な気もしますがここで4番と…………いやいやまさか」

海藤「お、落ち着け、ま、まだ3点差だ。き、きっと何とかなる、はずだ!」
御堂「海藤さんが落ち着いて下さいよ!」
海藤「ああ。それで大丈夫だよな!」
御堂「満塁ですからワインドアップで投げられるしランナーも気にする必要はありませんから返ってバッターに集中できます!」
海藤「頼んます! 最高のボールで打ち取って下さい!」
御堂「はい!」
籾山「来た来た! 俺がここで終わらせてやる!」
御堂(力んでるしボール球でカウントを稼ぐか、満塁で不安もあるけど何とかして見せる!)
籾山「速いが今日の俺なら打てる―――!」

カキ―――ン!!!
御堂「………………」海藤(ガクッ!)

類「もしかしたらと思いましたが146キロのストレートを完全にとらえた―――打球は場外と籾山選手が完全に決めました!」
前田「…………6点差からサヨナラって確か記録じゃ!?」
類「オープン戦では7点差逆転サヨナラがあった気もしますが公式戦では5点差サヨナラだったと思うので新記録だと思います!」
前田「そうですか……しかし本当に逆転するとはある意味ノーヒットノーランよりも凄いですね!?」
類「最後はエラーにイレギュラーにデッドボールからサヨナラホームランですからね。奇跡的と言うか呪い的と言うかとにかくとんでもない試合でしたね」
前田「年に1回くらい変な試合もありますが今日のは何十年に一度ってくらい変な試合でしたね。運と言う要素もありましたが近鉄打線の恐ろしい力もあったと今年の近鉄は凄そうです!」
類「とりあえず今日の試合は9対8で近鉄が勝利しました。勝利投手目前だった御堂選手は敗戦投手と残念な結果に終わりましたが次を期待しましょう!」
前田「勝った近鉄は全員が笑顔で負けたダイエーは負けた事が信じられないのか沈黙したままですね。それとヒーローは当然の籾山ですか」

全員「〜〜〜♪」全員「………………」

こうして御堂に取っていやダイエーに取っての悪夢の試合は終わるのだった。

福岡ダイエーホークス選手寮
御堂「あれから調子も落としたな」
海藤「切り替えて行こうな。後半戦の前に次はオールスターだしそっちで頑張れよ……俺は呼ばれてないけどな」
御堂「すみません」
海藤「良いんだ良いんだ。俺はテレビの前でビール飲んで観てるから」
御堂「(どう突っ込めば良いのやら?)とにかく後半戦は頑張りましょうね」
海藤「ああ。しかし今年もみんな調子が悪いし最下位かな」
御堂「(頑張ろうと言ったのにそれかい!?)まあこれから調子を上げて行けば良いですよ!」
海藤「そうだな。一番落ち込んでる御堂がそう言うんだ。俺達も頑張らないとな!」

オールスター明けには全員が調子を取り戻して行くが結果は最下位と御堂達に取って屈辱のシーズンとなった。しかし御堂は無冠ながらエースとしての活躍を認められると高い評価をもらって年俸もUPするとチームに取って重要な選手となって行くのだった。