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優子「はい。これ!」 守屋「これってバットとグラブ!?」 優子「夏輝君がリトルリーグに入ったって聞いてね。秀人もしたいんじゃないかと思ってね」 守屋「あ、ありがとう!」 と言った具合で野球を始める切欠になったのは母から買ってもらった野球道具でしたね。 芹沢「そっか、リトルに入らないのか」 守屋「すみません」 芹沢「家庭の事情じゃ仕方ないさ。ま、こうやってキャッチボールするのも良いし草野球の親父軍団に混じって試合に出りゃ良いさ。あっ、その時は俺も誘えよ!」 母の苦労を考えてリトルリーグには入りませんでしたが芹沢先輩、今は巨人の投手とこの人も出世していますね。とにかく芹沢先輩や友人など多く集まり結構楽しくやっていました。 守屋(シュッ!) ズバ―――ン! 芹沢「球は遅いけど、制球力は大したもんだな」 守屋「先輩には敵いませんけどね」 芹沢「当たり前だ。既に変化球で俺の上を行ってんだ。これ以上、差が出たら泣いちまうぞ!」 守屋「いや、投げるのが楽しくて!」 芹沢先輩も投手と言う事で自分もやって見ようかなと思ったらどんどん上手くなりその頃から投手になっていたんてすよね。 芹沢「ただ、体格のできていない俺達じゃすぐに身体を壊しやすいし変化球はあまり投げ込むな」 守屋「はい。芹沢先輩の言うように球数は制限しています!」 芹沢「それで良い。まあ来年からお前も中学だし野球部があるから頑張れ!」 守屋「先輩もシニアで頑張っているし僕も成果出します!」 |
守屋「ふう」 ズバ―――ン! 芹沢「ふーん、ちょっと見ないうちに球速が上がったか」 守屋「えへへ、分かりました!」 芹沢「と言っても遅い事に変わりないが」 守屋「酷い!?」 芹沢「それでだが」 守屋「またシニアの話ですか?」 芹沢「ああ。球速は90キロそこそこだけど、制球力と変化球は大したもんだし話してテストくらいはしてもらっても良いんじゃないか」 守屋「うーん、やっぱり駄目ですよ」 芹沢「ふう、お前の家って片親だけだし生活も大変だしな。だけど野球で飯を食って行くつもりなら今から頑張って特待生狙いってのも手だと思うが」 守屋「…………そこまでの才能があればですけどね」 芹沢「まあリスクがあり過ぎるよな。俺自身も本気で野球で飯を食って行ける自信はないしな」 守屋「まあ普通に進学して高卒で就職が無難ですね」 芹沢「はあ……俺は来年から他県に行く事になったし今年でお前ともお別れだと思うとやっぱり寂しくなるな」 守屋「無双高校じゃないんですか?」 芹沢「惜しいが無明実業だ。野球部からぜひ来て欲しいと言われた」 守屋「無明実業って言えば何人もプロ入り選手を出している名門中の名門じゃないですか!?」 芹沢「ああ。俺も3年後じゃなく4年後かはプロかもな!」 守屋「プロか…………雲の上過ぎて想像もつかない!?」 芹沢「おいおい本気にするなよレギュラー獲るのも奇跡的な難しさだろうな」 守屋「そうですね。しかし無明実業か」 |
守屋(シュッ!) ククッ! 先輩「おいおい。全然キレてないぞ?」 守屋「すみません(あれ、おかしいな?)」 先輩「そう言えば軟式だったし硬球扱うのも初めてなんだっけ?」 守屋「あっ!?」 先輩「まあうちは強豪で1年でのレギュラーは難しいだろうしゆっくり実力を付けて行けば良いさ!」 守屋「はい!」 最初のうちは高校野球だし勝手が違うんだろうなと思いながらやってました。当然ながら1年でレギュラーは獲れませんでした。 一ノ瀬監督「駄目だな。球の遅さもだがリリースが分かりやすいしこれじゃ投げる前から球種を教えているような物だ!」 守屋「すみません」 一ノ瀬監督「(硬球に合わないのか、初めての人間は怖がる物だがそれはほとんど守備か打席だしどう言う事だ?)とにかく問題を改善しなければレギュラーは無理だ!」 守屋「……はい」 一ノ瀬監督(制球力も落ちてるし変化球もキレないとケガでもないし原因はいったいなんなんだ?) 2年からはとにかく球速を上げると同時にリリースを上手くすると頑張ったんですがリリースが上手くなったら制球力が落ちると問題は減らず僕も監督も半ば諦めるようになっていましたね。 一ノ瀬監督「以上がレギュラーだ!」 それからも問題は解決せず3年間ベンチ入りもできず僕の高校野球は終わりましたね。 守屋「………………」 一ノ瀬監督「それと守屋、ちょっと話がある」 守屋「は、はい」 正直、監督に話があるって言われた時はいったいどんな事を言われるかと凄く怖かったですね。 一ノ瀬監督「それでお前はこれからどうする?」 守屋「いや、どうするって言われても?」 一ノ瀬監督「野球の事だよ。このまま大学か社会人でも続けるのか、それとも普通に進学か就職をするのか」 守屋「…………就職ですかね」 一ノ瀬監督「やはり野球に未練があるんだな」 守屋「すみません!」 一ノ瀬監督「いきなりどうした?」 守屋「監督から誘ってもらったのに結局何もできませんでしたから!」 一ノ瀬監督「確かにお前は俺の想像通りの選手ではなかったな」 守屋「申し訳ありません」 一ノ瀬監督「きっとお前は俺の想像以上の選手だったんだろう」 守屋「えっ!?」 一ノ瀬監督「結局、お前の成長を妨げている原因がなんなのかは俺には分からなかった。野球部の監督としては何とも情けない事だ」 守屋「いえ。監督が情けない事なんて」 一ノ瀬監督「最初の質問に戻るがお前はこれからどうする? いや、どうしたい?」 守屋「野球辞めたくないです……このまま辞めたらきっと後悔します……だけど」 一ノ瀬監督「母親の事だな」 守屋「はい」 一ノ瀬監督「分かった。これからは毎日朝練だ。俺も付き合うつもりだが毎日は無理だな。それと野球部の休みの日は予定を空けとけよ!」 守屋「えっと」 一ノ瀬監督「こいつが毎日の練習メニューだ!」 と言う訳で部も引退するのに何故か監督の特訓メニューをする事になったんですよね。 一ノ瀬監督(俺の想像通りの選手ではなかった。ならば俺の想像以下の選手か、あれだけの投手だったんだそんな訳はない。ならば俺の想像以上の選手に決まっている!) 守屋「母さん、ごめんなさい!」 昔から母にわがままは言わないようにした僕がひょっとしたら初めてではなかったかも知れませんがその時は本気で母にぶつかろうと思いました。 優子「いきなりどうしたの?」 守屋「野球を続けたいんだ。これから迷惑もかけると思うけど許して下さい!」 優子「何かと思えばそんな事か」 守屋「そんな事ってこれでも決心して説得に来たのに」 優子「そうね。ごめんなさい。だけど子供が親にわがまま言うのは当然の事よ。それに何を心配してるのか知らないけど、こう見えても母さん若いんだから大丈夫よ!」 守屋「確かに外見は若いけど」 優子「ありがとう。それで大学野球にするのそれとも社会人野球のどっちにするの?」 守屋「もちろん社会人野球だよ!」 優子「そう……それで行くところは決まってるの?」 守屋「それはまだだけど……今は監督のメニューもあるし」 優子「そう。監督さんがあなたを諦めさせなかったのね」 守屋「べ、別に監督に言われただけでなく自分で考えた上の結果ですよ!」 優子「分かってるわよ」 |
守屋(シュッ!) ククッ! 一ノ瀬監督「悪くないな」 守屋「本当ですか」 一ノ瀬監督「レギュラーは無理だがこれならベンチ入りは問題ないだろう。しかし特別な事をやっていないのに改善して行ってるのは何故だ?」 守屋「さあ?」 一ノ瀬監督「本当に何もないのか?」 守屋「そう言われてもあえて言うなら楽しいって事ですかね!」 一ノ瀬監督「楽しいだと?」 守屋「小さな頃から野球は楽しかったですし……もちろん高校でも楽しかったです!」 一ノ瀬監督「本当か?」 守屋「うっ、正直、期待には応えられないしつらいって思った事もありました」 一ノ瀬監督(つまりメンタル面に問題があったのか、慣れない環境で実力が出せなかったとそう言えば楽しそうに投げていたのは最初の頃だけだったな。そう言えばチームを強くする事だけを考えて楽しんだ事なんて……いや、こいつに教えている今は楽しいかな!) 守屋「監督?」 一ノ瀬監督「いや、楽しくか良い事だな!」 守屋「はい!」 この後も少しずつ問題点を解決して行きいまさらながらも監督の期待に応えて行きましたね。 優子「雲雀物産って知ってる?」 守屋「いや」 優子「ちょっと遠い場所にあるんだけど、そこの監督さんがあなたをスカウトしたいんだって」 守屋「へえ………………ええっ!?」 優子「凄いリアクションね」 守屋「本当に僕を!?」 優子「こっそり練習しているところを見てあれでレギュラーになれなかったのかと不思議がってたわよって嬉しくないの?」 守屋「いや、何か上手く行き過ぎて怖いような」 優子「ちなみにそこの監督さんは昔からの友人よ」 守屋「それじゃ?」 優子「でも話は向こうから来たのよ。自分の人生は自分で決めなさい!」 守屋「うん!」 |
結城「ふん!」 カキ―――ン! 守屋「飛ばすな!?」 宮本監督「まあ体格が体格だからなそろそろ個人授業に行こうか」 守屋「個人授業?」 宮本監督「間違えた。個人指導だった!と言う訳で君は今日からサイドスローだ!」 守屋「いきなりフォームチェンジですか?」 宮本監督「宮本家は代々サイドスローの家系だ。黙って従いたまえ!」 守屋「僕は守屋家なんですけど」 宮本監督「大丈夫! サイドスローの本家から言えば君は球持ちが悪い!」 守屋「球持ちは分かりませんがリリースは良くなっているって言われましたよ」 宮本監督「あれでリリースが上手いって本当に下手だったんだね」 守屋「正直なほどに胸が痛い!?」 宮本監督「ま、とにかく行って見よう!」 正直、半信半疑でしたが監督の言う通りやって行きました。 守屋(シュッ!) ククッ! 結城「これは打ちにくい!?」 守屋「本当ですか!?」 結城「右打者には球が見え辛いとあのスライダーは脅威だな」 宮本監督「しかしスライダーとシュートだけじゃ心もとないしシンカーを教えてやろう!」 守屋「えっと?」 結城「現役の頃の監督の決め球だ。教えてもらえ!」 守屋「それじゃお願いします!」 宮本監督「この俺に任せなさい!」 この後に監督に教わったシンカーが決め球になると監督を尊敬する切欠になりましたね。 守屋(行くぞ!) ククッ! 白鳥「くっ!?」 守屋(ふん!) ククッ! 天王寺「何っ!?」 全国大会でも佐藤コンツェルンの選手達にも何とか通用するなど活躍しプロのスカウトも注目してくれるようになりました。 天王寺「もらった!」 カキ―――ン! 守屋「しまった!?」 プロでもあったんですがたまに浮く球があってその時も天王寺さんの一振りで逆転されて負けちゃったんですよね。 |