−2000年 10月−
秋の大会はあっさりと終わり柴田達は夏に向かって頑張っていた。そしてケガした天野はと言うと?

天野(やはり夏までは難しいか?)

鏡「ん? 守じゃないか? 妙なとこで会うな?」

天野「ん? なんで
病院にお前がいるんだ?」

鏡「ケガをしているからだよ。それよりお前だよ。なんで斉天の近くの病院にいるんだよ?」

天野「紹介されたからだよ。ここの医者が良いってな」

鏡「ひょっとすると俺と同じ担当医か?」

天野「ああ。その人だな。と言うかおかしいと思っていたんだよ。お前がスタメン獲ってなかった理由はケガか?」

鏡「まあな。せっかくの甲子園だし代打で1打席くらいは許してくれたんだけどな」

天野「お前、決勝でスタメンだったじゃないか!?」

鏡「お前との対決だし無理言って痛み止めもらって出たんだよ。まあ無理した分、秋の出場はできなかったわけだが」

天野「つまり俺はケガ人にホームラン打たれたわけだ」

鏡「お前がケガしたのは知ってたけど、こんな形で再会するとはな」

天野「まあ甲子園もだが縁があるって事だろう

まあこんな縁はどうかと思うが?」

鏡「ケガの縁とか…………ないわな」

天野「プロに行くならなおさらにな」

鏡「はははっ」

天野「まあ話は変わるが斉天も甲子園逃したんだっけ?」

鏡「ああ。俺も観客席から観ながら大西さんがいればと何度も思ったよ」

天野「まあ観てるだけってのはきついよな」

鏡「そうだな。それでお前のケガは? 夏には間に合うのか?」

天野「正直、まったく分からんって話だったよ。特に肩が酷いんだが肘も酷使しているからって3ヶ月間投球禁止って言われたんだぜ!」

鏡「練習の虫のお前には拷問だな。まあ俺の方は軽い運動と言うかリハビリがメインだな」

天野「そう言えば俺は身体を酷使し過ぎたせいで限界を超えて壊れちまったんだがお前はどうして?」

鏡「ふっ、男には戦わなきゃならない理由もあるのさ」

天野「はあ? 先輩とケンカでもしたのか?」

鏡「相手はでっかくてな…………さすがの俺も大型トラックには勝てなかったぜ!」

天野「交通事故ならそう言えよ! なんで無駄に格好つけてんだよ!」

鏡「おいおいここは病院だぞ! 静かにしろよ!」

天野「っ!?」

鏡「まあマジで言うとな。一週間くらい意識がなくてマジで死ぬとこだったらしい」

天野「そんなにやばかったのかよ。つうかそんな目にあったら連絡くらいしろよ!」

鏡「まあ大騒ぎだったのは周りで俺の方はと言うと寝坊して気まずい感じだったな」

天野「どう反応したらいいんだよ?」

鏡「はははっ、最初は身体動かすのもきつくてよ。リハビリも大変なんだが俺と同じように頑張っている人を見てたら逆にやる気が出ちまってな。リハビリし過ぎて先生からも怒られた」

天野「何事もやり過ぎはダメって事か」

鏡「だな。まあリハビリに励むのは悪くないんだが俺の場合は加減を知らんのかってめっちゃ怒られちまったわけだが」

天野(俺も気を付けよう。あの先生を怒らせるのは危険な気もするしな)
こうして天野と鏡は束の間に出会ってお互いのケガの事を知るのだった。

柴田「むう〜」

大岡監督「どうした?」

柴田「いや天野のケガの具合はどうかなとか練習ばっかりで試合したいなとか」

大岡監督「ふむ。練習試合は組んでるんだが天野のケガの事を知ってから強豪は乗り気じゃないみたいだな」

山本「やっぱり俺達の評価って天野一強って感じなんですね」

大岡監督「少なくとも秋に1回戦負けした理由はそう思われてるな」

岩田「つまり天野だけってわけじゃない事を世間に知らせるためには天野なしで天狼に勝たなきゃならないわけか」

高橋「秋にもバッターは結構打てたと思うけど」

山本「キャプテンなんかは荒井さんからホームラン打ってたな」

岩田「お前もヒット打ってただろう?」

山本「と言ってもタイミングの合わないラッキーなヒットだったしな」

柴田「俺もホームラン打ったぞ!」

岩田「最後は打ち上げちまったけどな」

柴田「それを言うなよ!」


山本&高橋「………………………………」

岩田「ま、夏は天野がいなくても俺がなんとかしてやるよ!」

柴田「たしかに、天野がいなくても無明実業は健在だって他校にも教えてやらないとな!」

山本「ポジティブだなー」

高橋「と言っても夏まで練習ばっかりか」

柴田「大丈夫、監督が言ってたけど試合もやるんだってさ」

岩田「練習試合か」

山本「いや、それより天野がいないんだから部員が10人とこっちの方がまずいんじゃ」

岩田「俺が全部投げるから問題ない!」

柴田「そんでもって俺がホームラン打つから問題なし!」

山本「こいつらに言ってもダメか」

柴田「いや、冗談だよ」

岩田「まあちゃんとした話をするならだ。俺達は夏の覇者だ! 春になったら実力ある新入生も来るだろう!」

高橋「結構考えてたね」

山本「うむ。意外だ」

千歳「それでみんな頑張ってるんだ」

柴田「天野がいなくなって(練習で口出ししているんだが)返ってみんなが頑張るようになったのは皮肉かな?」

ディー「zzz」

柴田「しかしこいつはまた散歩の途中で寝るし」

千歳「いいじゃん。その間に僕と話をしようよ!(ディーが気を利かせてくれたしこのチャンスを生かさないとね!)」

ディー「zzz」
当然、ディーにそんな気はないのだが千歳は自分の良いように考える。

柴田「いつもの事だけどな」

千歳「そう言えば来月はドラフトだっけ? 無明実業の人は指名されるかな?」

柴田「そうだったな! キャプテンは指名されるとして他の人はどうなんだろうな。いや〜練習以外でも楽しみはあったか〜♪」

千歳「そこは普通、練習ばっかりで楽しみがないって言うところだけどね」

柴田「なんで練習楽しいじゃん♪」

千歳「そう言うところに秀君はついて行けないんだろうね」

柴田「
自分をおかしい人みたいに言うなよ!」

千歳「うーん?」

柴田「真顔で悩むなよ!」
結局、千歳はチャンスを生かせず柴田との関係は変わらないままだった。

天野「それじゃ投げて見ろ!」

岩田「おう!」
ズバ―――ン!

山本「速っ!?」

高橋「148キロ!」

天野「良いボールだ! これなら夏までに150キロは行くな!」

岩田「いや目指すは160キロだぜ!」

天野「なら12キロ速くする練習をしないとな!」

岩田「投げるだけじゃダメって事だな」

天野「当然だが重要なのは練習だけでなく休養も取ると言う事だな」

岩田「ん? 休んで速くなるのか?」

天野「今は成長期だから休んでも勝手に体が強くなるそうだ。俺も怒らせると怖そうな医者に練習し過ぎだって散々言われたからな」

山本「適度な練習に適度な休み、そして科学的な練習が重要か」

天野「ああ。うちは根性論な家で実際その無茶な根性論で奇跡を体現したのが親父達だからな」

高橋「まあ根性も大事だけど、それでケガするのはね」

天野「悪かった。反省してるよ。今度から相談する」

柴田「うむうむ。天野も成長しているようで何よりだ!」

天野「お前、練習はどうしたんだ?」

柴田「いやー1人は寂しくてな

どうせならお前達も一緒に走ろうぜ!」

岩田「悪いが投げるのが忙しい!」

山本「俺も(かすりもしないけど)バッターボックスに立たないといけないし」

高橋「僕もスピードガンとビデオで忙しくてごめんね」

柴田「俺は1人で走ってろって事かい」

天野「河内さんとどっちが速いか競争は面白いって言ってなかったか?」

柴田「最近の河内さんってバッティング練習ばっかりしてるんだもん」

天野「もんって……それにお前、練習が楽しいっていつも言ってなかったか?」

柴田「違うんだよ! 練習は楽しいが正確ではなくみんなと練習するのが楽しいんだよ!」

山本「力説ご苦労さん」

柴田「うむ」

天野「なるほどな。まあ後でバッティング見てやるから今は走って来い!」

柴田「うむ。約束だからな!」

天野「さてとビデオは撮れたな」

高橋「うん。言われた通り撮ったよ」

天野「なら後は理想のフォームに仕上げて一気に完成させるぞ!」

岩田「よく分からんが上手くなるためにはどんな練習でもやるぞ!」

山本(さっき俺が言った事を岩田は聞いてなかったのか?)

天野「岩田は今日は投げずに走ってろ。陽太は守備練習で柴田と秀二は」

柴田「バッティング練習だ!」

天野「そう言う事だ!」

山本(セリフをさえぎられたのにあっさりと……こう言うところが似た者同士なのかね?)
こうして柴田達は天野の個別指導で力を付けて行くのだがそれを知るのはまだまだ先となるのだった。そしてドラフトの行方はどうなるのか?