第4章 甲子園目指して

−2000年 7月−
いよいよ柴田達の公式戦も始まるがその前にレギュラーが決まるのだった。
柴田「今日、ついにレギュラーも決まる。果たして俺達のうち何人がスタメンを勝ち取るのだろうか?」
山本「まあ全員ベンチ入りは可能なんだけどな」
高橋(スタメンは難しいかな?)岩田(エースは?)天野(まあ、なんとかなるだろう)
大岡監督「では発表!」

レギュラー発表
天野 守 野口 鉄雄 西岡 望 豊田 誠 野村 栄治 酒井 正次 河内 徹 山口 忠 柴田 竜

岩田「負けた」
高橋「まあ仕方ないよ」
山本「そうだな」
柴田「ふっ!」
天野「似合わないぞ?」
柴田「悪かったな。それより1回戦の相手は何処なんですか?」
大岡監督「うーん、海原高校(うなばらこうこう)だ」
先輩達「はあ」
高橋「海原ってそんなに強いの?」
山本「打撃力は全国レベルと言われている強豪だよ。確か昨年の夏は1回戦で負けた相手だったかな?」
岩田「それで先輩達は落ち込んでるのか?」
天野「相手のエース菅野さんは全国でも指折りの速球派だからな。先輩達が落ち込むのも仕方ないかもな」
野村主将「昨年に完封負けしたしな」
山口「1年相手に完全に抑えられると屈辱な敗戦でしたからね」
高橋「へえ、1年の頃からエースって天野君にそっくりだね」
野村主将「天野なら菅野を越えるほどに成長するかもな」
大岡監督「ちなみに4番は1年の武田だ!」
酒井「武田ですか?」
柴田「確かタケトラだっけ?」
山本「ああ。トラちゃんとも言われてたな」
高橋「有名なの?」
柴田「確か長打力は全国でもかなりの物だって言われてた」
天野「その代わり確実性はないけどな。うちでは岩田に近いタイプだな」
高橋「ふーん、豪快なタイプなんだね」
岩田「ま、俺はピッチャーだけどな」
大岡監督「特に注意するのは今言った2人だな。基本的に打線が良いからピッチャーとキャッチャーの責任は重大だな!」

−地方大会1回戦 地方球場−
1年 柴田 竜
後攻 先攻
無明実業高校 海原高校
投手力 機動力 投手力 機動力
打撃力 守備力 VS 打撃力 守備力
意外性 経験値 意外性 経験値
総合力 総合力
一枝 耕太 2年
2年 河内 徹 塚本 冬彦 2年
1年 天野 守 三田 輝夫 3年
3年 野村 栄治 武田 虎男 1年
2年 山口 忠 菅野 聡 2年
3年 西岡 望 続木 遼太郎 3年
2年 野口 鉄雄 川上 将太 3年
2年 酒井 正次 中野 武之 3年
3年 豊田 誠 正田 英和 3年

剣崎監督「相手は評判の高い天野のいる無明実業だ」
菅野「俺と同じサウスポーで速いストレートを投げるでしたか」
剣崎監督「145キロのストレートにコントロールも抜群に良いと言う話だな。まあ兄の高校生の頃と同じくらいの能力と言いたいところだがセンスは兄以上とも言われてるな」
武田「そう言えば宗介さんも左でしたね」
菅野「さすがに150キロは出さないだろうし宗介さんの劣化バージョンと考えれば良いだけなんじゃないか?」
剣崎監督「まあ間違ってはないんだが、どっちにしろ高校生とは思えないピッチャーなので油断はしないようにな!」

放送席
霞「20世紀も終わりですが何故かこちらへ移籍した私事、(わたくしこと  )白銀霞が(しろがねかすみ  )夏の大会をお送りさせていただきます!」
武藤「同じく移籍して来た? 武藤小太郎( むとうこたろう )です」
霞「今はオリックスブルーウェーブと言うチームで活躍した武藤さんが解説となっております。200勝を達成した大投手なのでみなさんには説明する必要もないですかね?」
武藤「大投手ってのは誉め過ぎですよ。まあプロ入りした後輩達にも尊敬されていますが照れますね〜♪」
霞「それでは両校ですが無明実業は同じ地区の天狼学園が強くなり過ぎたせいか全然評判を聞かなくなって来ましたね」
武藤「スルーですか」
霞「いえ、今質問しているんですけど?」
武藤「誉めてから落とされてもないけど、とにかくきついな……ふう、そうですね。無明実業は全国でも聞かなくなりましたがそれでもプロ選手は出ているとやっぱり良い選手がいるんじゃないでしょうか?」
霞「そう言えばプロでも活躍している天野選手達の弟君が先発でしたね。後は1年生の柴田君でしたか?」
武藤「柴田君は良く知りませんけど、天野君はシニアでも有名でしたし良く知ってますよ。個人的に菅野君との投げ合いが楽しみですね!」
霞「やはり地方で140キロ同士の投げ合いは珍しいですからね」
武藤「近年怪物が多いですが甲子園ならまだしも地方ではやっぱり珍しいでしょうよ!」
霞「では白熱の1回戦をお伝えします!」

1回表 無明実業0−0海原高校 天野の初登板の相手は県内でも指折りの強打を誇る海原高校だが抑える事はできるのだろうか?
天野「相手は強打のチームか……ま、いつも通り投げるだけだが」

ズバ―――ン!
一枝「うなっ!?」

霞「いきなり145キロで三球三振と速いですね!」
武藤「1年生でこれですからね。将来性を考えると本当に恐ろしいですね!?」

天野「ふむ」

ズバ―――ン!
塚本「菅野よりも速くないか?」

霞「146キロのストレートで三振とストレートでグイグイ押して行きます!」
武藤「球速も凄いですがコントロールも素晴らしいですね!」

天野(こいつで終わりだ!)

ズバ―――ン!
三田主将「本当に1年かっ!?」

霞「最後もストレートで決めました! 1回をストレートだけで三者三振と文句ないピッチングでした!」
武藤「名門相手に十分通用してますが、まだ始まったばかりですしこのまま行けるとは断言できませんが良いピッチングでしたね!」

天野「あっさりと抑えられましたけど、こんなもんですか?」
野口「海原高校は打撃力が高いと言われているがアベレージヒッターは少ないから三振は結構奪えるんだ!」
天野「打率の高いバッターも多いって聞いてたんですけど」
野口「それも事実だが振りまわすタイプがほとんどだ。タイミングを外せば怖くはないんだが一度火がつくと一気に大量失点だな」
天野「注意するのは4番と5番らしいですけど」
野口「武田は噂程度でしか知らないが菅野は振りまわすタイプだしタイミングが合わないうちは問題ないな」

武田「あれが天野守か」
三田主将「ノビだけなら菅野よりも上だな」
一枝「コントロールもですよ」
塚本「末恐ろしい1年だ」

1回裏 無明実業0−0海原高校 天野は三者三振と文句のない立ち上がりを見せる!
菅野「噂通りだな。さてと次は俺の番か!」

カキ―――ン!
柴田「えっ?」
菅野「なっ!?」

霞「入った―――! 144キロのストレートをレフトスタンドに叩き込みました!」
武藤「投手戦になるだろうと思ったら初球で点を入れましたね!?」

柴田「…………えっとベースを回るか」
河内「お前、凄いな」
柴田「いえ。ただ来た球打っただけなんですがスタンドに入るなんて自分でも驚きです」
河内(確かにバッティングはセンスと言うけど、あいつ初めて見る菅野の球を……)

菅野「さすがに初球でスタンドに運ばれたのは初めてだな」
正田「出合い頭だろう」
菅野「そうですね。ここから抑えます!(確かにタイミングは偶然かも知れないがスタンドまで運んだ力は本物だよな……恐怖の1番バッターってとこか!)」

ズバ―――ン!
河内「あいつ、なんでこれを打てるんだよ!?」

霞「145キロのストレートを空振り三振とやっぱり速いですね!」
武藤「菅野君の魅力は球威の重さと左腕ってところですね。2年生エースの左腕では明鏡大附属の結城君と並んでトップクラスと言われるだけはありますね!」

天野(菅野さん、俺と同じ左で1年先輩の人か、速度と球威は俺以上だろうな)
菅野(こいつが天野守か、どれほどか確かめさせてもらおう!)

ズバ―――ン!
天野(やはり今までの相手と比べても速いな!)

霞「147キロのストレートを見逃し三振とストレートばっかり投げて来ますね!」
武藤「菅野君はストレート中心で攻めて来ますからね。変化球も速く変化するので結構打ちづらいと最初に1点取ったのはあんがい大きいかも知れませんね!」

菅野(動きはなしか、不気味な物を感じるな!)

ガキッ!
野村主将「くっ、やはり重い!?」

霞「最後は打ち上げ一枝君がキャッチし3アウトチェンジです! やはり菅野君は凄いですが1回に柴田君のホームランが出て既に完封はなくなっていると珍しい展開になっております!」
武藤「被本塁打は滅多にないと言って良いピッチャーですから柴田君が凄かったんだと思いますよ!」

菅野「しかし弱小と言っても打線はなかなかですね」
正田「こちらの方がかなり上さ。だが油断はできんな!」
菅野「ええ!(天野も良いピッチャーだしこれ以上の失点はまずいな!)」
正田(うちの打線なら1点くらいは取れるだろう。俺は俺の仕事で抑えないとな!)

山口「やっぱり打ちにくいですか?」
野村主将「柴田のようにスタンドまで運ぶのは難しいな。けどヒットなら不可能じゃない」
山口「まずは当てる事ですね」
野村主将「ああ! 天野や俺が打って返すのはお前の役目だ!」
山口「はい!」
天野「(ちらっ!)…………ふむ」
柴田「なんだ?」
天野「いや、良く打てた物だと思ってな!」
柴田「パワーヒッター柴田君を舐めるんじゃねえ!」
天野(あんがいこの夏に1年の中で一番有名になるのはこいつかもな!)

2回表 無明実業1−0海原高校 いきなりの一振りで無明実業が1点を先制する!
武田「天野を打ち砕けるのは俺しかいない!」

ククッ!
天野「おしっ!」

霞「意外か、武田君には変化球で攻めて来ました。最後はカーブを空振り三振し1アウトとなります!」
武藤「こうして観ると変化球も結構キレますね!」

武田「なんで俺には変化球ばかり!?」
菅野「そりゃ勝ちに来てんだから当然だろう!」

野口「やはり武田は変化球に弱いな」
天野「パワーはあってもミートはそれほどでもないですからね。まあ出合い頭が怖いですけど」
野口「柴田のおかげで貯金はあるから今のうちに色々して行くからな!」
天野「まあ相手の短所を探すのは良いんですけど、貯金が少ししかない事は忘れないで下さいよ!」
野口「ああ!(次は菅野、どう攻めるか?)」

ガキッ!
菅野「予想以上に変化が大きい。これを打つのはかなり困難だぞ!?」

霞「期待の菅野君でしたがスライダーを打ち上げて2アウトです!」
武藤「ストレートから変化球への対応は予想以上に難しそうですね。海原は強打者が多く巧打者は少ないですしひょっとしたら完封も夢じゃないかも知れませんね!」

天野(シュッ!)

スト―――ン!
続木「この速度でこの落差かよ!?」

霞「最後はフォークを空振り三振とこの回の決め球はすべて変化球でしたね?」
武藤「確かに妙なリードでしたね? ただ、相手打線はストレートに強いと言われてますしストレートで決めるよりこっちの方が安全かも知れませんよ!」

天野「どうですか?」
野口「やはり変化球の方が空振りを誘いやすいな……けど」
天野「マグレでも当たったら長打は確実ですか」
野口「運が悪ければスタンドだな」
天野「リードは野口さんに任せます!」
野口「ああ!」

武田「今度は打つ!」
菅野「それも良いんだが、まずは守備だ。なんかこれ以上の失点は不味そうなんでな」
続木「変化の大きい変化球は打ちにくいし確実にヒットを打てそうなのってキャプテンくらいしかいないんじゃないか?」

海原高校は1点くらいなんとかなるだろうと考えてたせいか後半になっても打てず8回の攻撃を終えた。

8回裏 無明実業1−0海原高校 試合は1回から動かず1対0のまま進んで行く!
菅野「奴の前にランナーは出さん!」

ズバ―――ン!
野口「バッターとしてはとても勝てん!?」

霞「最後は148キロと下位打線にも容赦なしですね!」
武藤「そりゃ負けているんだし手を抜く余裕はないでしょう。しかし球数も結構あるのにスタミナは全然落ちてませんね!」

菅野「ふんっ!」

ガキッ!
酒井「全然球威が落ちてないじゃないか!?」

霞「酒井君は149キロのストレートを打ち上げるが前には飛ばずキャッチャーの正田君がキャッチし2アウトです!」
武藤「8回でMAXですかやっぱりとんでもないですよね!?」

菅野(四死球も許さん!)

ズバ―――ン!
豊田「くっ!?」

霞「148キロのストレートを見逃し三振と完全に手が出ず三者凡退で終わります!」
武藤「これで甲子園行けないんですからどんだけレベルが高いんだよって感じですよね!?」

菅野「ふう、後は攻撃だけだな。いやいや同点か逆転した後に抑えるんだから……その前に俺にも打席がまわって来るからやっぱり攻撃を考えないとな!」
正田「既に表の事を考えているな。後はあいつら次第か俺までまわってくれば逆転はしてるだろうし出番はないか……」

柴田「ちっ! まわって来なかったか!」
野口&酒井&豊田「すまん」
柴田「いえ、別にみなさんを責めてるわけじゃありませんから!?」

9回表 無明実業1−0海原高校 菅野も調子良く抑え1回以降変わらず投手戦のまま9回へ入った!
天野「後3人、きっちりと抑える!」

ガキッ!
三田主将「嘘だろう。俺達が1回戦で負けるのか!?」

霞「145キロのストレートを打ち上げピッチャーフライで1アウトとなります!」
武藤「本当に完封しそうですね。しかし海原高校が地方大会で完封負けなんてここ数年はなかったんじゃないですか?」

天野「後2人!」

ズバ―――ン!
武田「…………4打数4三振かよ!?」

霞「最後も145キロのストレートを空振り三振し2アウトともう後がありません!」
武藤「これはさすがに決まりましたかね」

天野「ラスト!」

ズバ―――ン!
菅野「…………怪物っ!?」

霞「最後は147キロのストレートを空振り三振と自己最速を更新しました!」
武藤「試合最後のボールが自己最速更新ですか、怪物としか言いようがないですね!?」
霞「試合終了! 海原高校、まさかの1回戦敗退となりました。前評判の高かった天野君は完封勝利と素晴らしいピッチングを見せました!」
武藤「確かに天野君はヒーローと言っても良いでしょうが、1回に先制弾を打った柴田君や最後まで見事なリードをした野口君も素晴らしかったですよ!」
霞「うんうん。ダークホースと言われている無明実業ですがこのまま活躍して再び強豪と呼ばれる日も遠くないと言う事でしょうか?」
武藤「まあ最後に甲子園出たのが4年くらい前ですしまだまだ強豪と呼んでも良いんじゃないかとは思いますけどね」

先輩達「勝った〜♪」
柴田「先輩達、まだ1回戦勝っただけなのにそんなに喜ばなくても?」
天野「ずっと1回戦負けだったし仕方ないさ」
山本「この勝利が大きな一歩になると良いんだけどな」
高橋「と言っても結局僕らは試合に出てないんだけどね」
岩田「うむ!」
山本「そう言われたら何も言えなくなるんだけど」

菅野「俺達が1回戦負けとは」
武田「それに完封負けなんて」

海原高校
無明実業 ×
勝利
天野守
セーブ
敗戦
菅野聡
本塁打 海原高校
無明実業 柴田竜

海原高校は自身らの敗戦を信じられないようだったが数日後に秋に向かって頑張って行くのだった。
柴田「そして無明実業はと言うと」山本「なあ竜?」
柴田「…………録音してんだよ。そんなに俺の邪魔をして楽しいのか!」
山本「………………」
天野「それで?」
山本「俺達、何やってるんだと思ってな?」
高橋「買い物でしょう!」
岩田「店じゃ高いので部室で焼き肉食い放題って監督の大盤振る舞いだろう!」
山本「店じゃ高いのでってところが大盤振る舞いって言葉に矛盾が生じているような?」
天野「焼き肉なんてそう高い物じゃないと思うが?」
柴田「そりゃお前の家が金持ちだからだ!」
高橋「それで監督はお肉の事ばかり考えてたので僕達はタレを買いに来てるのでした!」
山本「なるほど、良く分かりましたじゃなくてだ。俺達はと言うより先輩達は念願の1勝を達成したわけだ。そりゃ喜ぶのが当然なわけだが次の対戦相手は……」
天野「優勝候補の錬生高校だな。特にエースの柳田さんは高校ナンバーワンピッチャーとも言われている!」
山本「そうなんだよ。1回戦が海原で2回戦の相手が錬生なんて祟られてるとしか思えない!」
高橋「断言したね」
柴田「相変わらず後ろ向きな奴だ」
岩田「目標は優勝なんだからいつ当たろうが大差はないのにな」
天野「まあ、そう言う事だ。俺達の目標は甲子園出場ではなく全国制覇だ。目標の為には全勝あるのみだ!」
山本「それはそうだが」
柴田「まあ気にするな。キャプテンいる限りお前の出番はなさそうだし甲子園でも応援してくれれば良いから!」
山本(グサッ!?)
高橋「きついなー」
柴田「ひそひそ(良いんだよ。このままじゃあいつ後ろ向きなまま終わっちまいそうだしここはこのまま終わってたまるかって発破かけないとな!)」
高橋「なるほどね(ちらっ!)」山本「………………」
高橋(柴田君の気持ち伝わってれば良いんだけど?)
岩田「ま、それよりだ。腹も減ったしとっとと帰ろうぜ!」
天野「そうだな。17人分のタレと言ってもみんな結構食いそうだしっていっぱい買ってしまったからな」
岩田「俺に持たせて言うセリフじゃねえな!」

重い物は岩田担当と言う事でタレはすべて岩田が持っている。

無明実業高校 野球部部室
大岡監督「さあ、俺のおごりだ。遠慮なく食え!」
柴田「その焼き肉もらった♪」
山本「それ俺のなのにっ!?」
天野「もう少し静かに食べろ!」
大岡監督「って言うまでもなく遠慮なんてしないか」
野村主将「ははっ、頼もしい後輩達ですよ!(モグモグ!)」
山口「(モグモグ!)そうですね」
大岡監督「ま、先輩も先輩だしな」
高橋「タレはいまいちだけど結構良い肉だよね」
岩田(ガツガツ! ムシャムシャ!)
山本「定吉、無言で食わずに俺に肉まわしてくれよ!」
岩田「…………これやる!」
山本「焦げたタマネギか…………」
柴田「監督から肉もらってきたぞ! ほらっ!(ドサッ!)」
山本&高橋「おおっ!! 肉っ!!」
天野「お前ら肉ばかり食わず野菜も食えよ。俺ばっかり野菜食べてるんだぞ!」
柴田&山本&高橋&岩田「安心しろ。肉も野菜も全部食ってやるから!!!!」
天野「まだ10人前はあるぞ。これ全部食べる気か?」
柴田&山本&高橋&岩田「もちろん♪」

こうして1年振りに1回戦に勝利した無明実業は焼き肉でお祝いとなり2回戦へ向かうのだった。

無明実業高校
大岡監督「今日の相手は錬生高校だ。分かっているとは思うが投手力は全国でもトップクラスだ。特に注意するのはエースで4番の柳田だ!」
野村主将「柳田……俺の世代では最高のピッチャーか……」
全員「考えただけでも勝てる気がしないぜ」
山口「そう言うなよ! せっかく1回戦に勝ったんだ。勝利を再び味わおうぜ!」
全員「……………………」
柴田(こう言うのはなんだけど負け犬根性が染みついてるな)
山口「天野、1年に頼りっきりで情けないが今日も頼むな!」
天野「連投くらい問題ないです。今日も完封と行かせてもらいます!」
全員「……………………」
大岡監督(目の色が変わったか……これで次期キャプテンも決まりかな!)
高橋「僕がスタメンだってさ!」
柴田「良かったな!」
山本&岩田「俺達は出番なしか」
柴田「あー選手層薄いし出れる機会なんていっぱいあるさ!」
天野「そうだ。全国制覇と言う目標にはベンチ入りのお前達の存在も重要だ。みんなで勝って栄光を手に入れる!」
全員「…………天野よ。お前と言う漢はっ!」
天野「こほん、とにかく今日も勝つぞ!(くう〜恥ずかしいセリフ言っちまった!?)」
全員「おう!」
大岡監督(キャプテンは山口、天野と次いで行きそうだな!)

錬生高校
望月「向こう盛り上がっているな」
日浦監督「それだけ自信があるんだろう」
柳田主将「ふん、どれだけ有名だろうと1年程度に負ける物か」
日浦監督「3年と言う年月が1年にも満たない小僧に負けるわけはないと言ったところか」
柳田主将「違いますか?」
日浦監督「いや、良い答えだと思う!(しかしそれで勝てるかな?)」
高杉「天野か」
松下「ふん、名前だけで実力はどんな物だか」
高杉「1回戦を観たが能力はかなり高そうだったな。柳田さんほどとは言わないが望月よりも上だな」
望月「確かに俺はベンチであっちは先発だがそれは選手層の厚さのせいだ!」
松下「それは言えてるな」
高杉「少なくともコントロールはあっちが上だ。失投や四死球での自滅は期待できん!」
日浦監督(しかしキャプテンを筆頭に性格に問題のある奴ばかりだな。実力はあるんで余計に性質( たち )が悪いし)

−地方大会2回戦 地方球場−
1年 柴田 竜
後攻 先攻
無明実業高校 錬生高校
投手力 機動力 投手力 機動力
打撃力 守備力 VS 打撃力 守備力
意外性 経験値 意外性 経験値
総合力 総合力
菅原 純 3年
3年 豊田 誠 水口 栄一 2年
1年 天野 守 高杉 怜太 1年
3年 野村 栄治 柳田 誠二 3年
2年 山口 忠 松下 直也 1年
3年 西岡 望 有村 至 3年
2年 野口 鉄雄 米沢 健一 3年
3年 安田 文夫 平松 孝司 2年
1年 高橋 陽太 浅川 宗八 2年

放送席
霞「2回戦の目玉はやはりこの試合しかないですね!」
武藤「そうですね。打の強豪を打ち破った次の相手は投の強豪と言われている錬生高校ですから無明実業には試練が続きますね!」
霞「打線は海原高校より落ちますが守備は錬生高校の方が上ですね。特に高校ナンバーワンピッチャーと言われている柳田君からどう点を奪うかが注目するところですね!」
武藤「まあ能力は高いですがそれイコール絶対ってわけじゃないですからね。もしそうなら天狼学園相手にも負けるわけがありません」
霞「なるほど、それから無明実業は1回戦とオーダーが違いますが何故でしょうか?」
武藤「1年生の高橋君は知りませんが安田君は守備の名手だったらしいですからできる限り失点を抑える守備固めですかね?」
霞「それと錬生高校は1年生が2人いますが?」
武藤「高杉君は欠点のないタイプで全国でも有名でしたからね。松下君も有名でしたけど、彼の場合はチャンスに弱いと言う欠点があるせいか評価はそんなに高くはありませんでしたね」
霞「それでも名門でレギュラーは凄いですね。しかもクリーンナップを任せられています」
武藤「個人的には6番の有村君の方が上だとは思うんでけどね。まあ成長して今じゃ上になったってとこですかね?」

1回表 無明実業0−0錬生高校 打線はそれほどでもないが天野は無事抑えられるのだろうか?
天野(今日は失点が命取りになりそうだな……ふっ、今日もか、みんなを信じてないわけでもないが俺が抑えて俺達なら優勝できるって事を教えてあげないとな!)

ズバ―――ン!
菅原「ぬっ!」

霞「今日も速い! 145キロのストレートで空振り三振を奪います!」
武藤「豪快な空振りでしたね。普通は足の速い選手が1番なんですが錬生高校の1番は典型的な強打者ですね。1点取れば勝てると言うエースがいる為のオーダーと日浦監督は結構臨機応変な対応をしますね」
霞「錬生高校と言えば数々の名選手を輩出した高校ですが全国には縁がありませんね」
武藤「無明実業が出て来る前は都内では一番有名でしたけどね。今じゃその無明実業も天狼学園に名声で負けると高校野球も財力で決まる感じでプロ野球選手だった私が言うのもなんですが悲しいですね」

天野(次も抑える!)

ズバ―――ン!
水口「この速度でこのコントロールかよ!?」

霞「最後はまたしても145キロと今日も快調ですねっと結果は見逃し三振です!」
武藤「まあ今日はと言うか今日もですが、1点が命取りですからね。飛ばせるうちに飛ばしとくんでしょう!」

天野(高杉か、シニアでも何度か対戦したな。まあランナーがいなければそれほど怖いバッターでもないか)

ガキッ!
高杉「とらえたと思ったんだが」

霞「打ち上げてピッチャーフライに終わりましたがタイミングは合ってたって気もしましたね?」
武藤「通常のストレートならあの速度でも打てたかも知れませんね。ただ、天野君のボールは浮き上がって来ますからそれで芯を外されたんだと思いますよ」

天野「やっぱり注意するのは強打者だけですね」
野口「ランナーがいなければな。そう言う意味じゃあの高杉はランナーが得点圏にいる時は要注意だな」
天野「歩かせるのも厳しいって事ですね」
野口「ああ(大した奴だ。並みの1年ならプレッシャーで潰れてもおかしくはないのに前向きにこの状況を楽しんでいる!)」

柳田主将「どうだ?」
高杉「正直、連打は厳しいですね。あれだけコントロール良いと自滅も期待できません」
柳田主将「大量失点は命取りと言う事か、まあ俺が1点もやらなければ良いだけの話だ!」
高杉「…………そうですね」
柳田主将(ふん! なら俺が完全に抑えてホームランを打てば良いと言うだけの事じゃないか!)
高杉(どうにも良い印象を持てないな。実力はあるんだけど、なんでだろうな?)

1回裏 無明実業0−0錬生高校 天野は無事1回を三者凡退と抑えたが噂の柳田のピッチングが始まる!
柳田主将「1回戦でホームラン打ってたが、俺を菅野ごときと一緒にするなよ!」

ズバ―――ン!
柴田「へっ?」

霞「さすがに速いですね。147キロのストレートを見逃し三振と三球三振で抑えられました!」
武藤「球速もですがノビも抜群に良いですから目が慣れるまでなかなか打てませんよ!」

柳田主将「どうせザコばかりだろう!」

ズバ―――ン!
豊田「うっ!?」

霞「142キロのストレートを見逃し三振と対応できてませんね」
武藤「コントロールも良いですからやはりそうそうは打てませんよ」

柳田主将「天野か……ふん、一番良いバッターなら4番を任されているはずだ。つまり野村程度に勝てない奴と言う事さ!」

ズバ―――ン!
天野「くっ!?」

霞「150キロのストレートを空振り三振と天野君にはライバル意識でもあるんでしょうか、凄いピッチングでした!」
武藤「確かに凄いボールでしたね。妙に意識していると言うか、力が入っていると言うか?」
霞「1回を終わって完全に抑えているとピッチャーの調子は良さそうです!」
武藤「ですね。こうして見ると天野君の完成度も素晴らしいし3年になれば柳田君を越えるピッチャーになりそうですね!」

柳田主将「ふん、しょせんこの程度か」
米沢「まだ1回抑えただけだろう。このまま行くとは限らんぞ!」
柳田主将「俺から打てる奴は限られている。俺が弱小校に負けると思っているのか?」
米沢「…………それは」
柳田主将「お前は黙ってミットを構えてれば良いのさ!」
米沢(確かにこいつから打てる奴は限られている。だけど嫌な予感がするな)

柴田「凄いな。あんなボール見たの初めてだ!?」
天野「遅くとも140キロ、速ければ150キロは出るからそうそうは打てないだろうな(普通はだが、しかし打てる可能性はある!)」
野村主将「つまり1点が命取りと言う事だな。先輩としては情けない話だが今日も天野次第だな。頼むな!」
天野「はい!」
柴田「いや、どれだけ抑えても0点じゃ勝てないし俺も次の打席では打って見せる!」
天野「ああ。期待してる!」
山口(本当に頼もしい後輩達だな。先輩として負けるわけには行かないか!)

4回表 無明実業0−0錬生高校 両投手は3回まで完全に抑えて4回に入る。打者2巡目に入るが天野は無事抑えられるのだろうか?
天野(しかし打線は1回戦の海原高校の方が上だな。注意するのは高杉と柳田さんくらいか、松下、有村さんも良いバッターだけど、怖さはないな)

ズバ―――ン!
菅原「速度はともかくノビは柳田と変わらないんじゃないか!?」

霞「145キロのストレートを空振り三振! 天野君、相変わらず良いボールを投げますね!」
武藤「キャッチャーのリードもなかなか良いですよ。コントロールがあるからリードしがいがあるんじゃないですかね」

天野(あいつの前にランナーを出すわけには行かないな!)

ガキッ!
水口「俺なんか眼中にないって感じだったから絶対打ってやるって気持ちで行ったのにっ!」

霞「これは平凡なサードゴロで2アウトです!」
武藤「あっさりな言い方ですね。しかしスライダーも結構変化すると本当に柳田君クラスの能力を持っているみたいですね!」

天野(最後はこいつだ!)

スト―――ン!
高杉「フォーク!?」

霞「最後はフォークを空振り三振とシニアでも名勝負を広げた2人でしたがここでは天野君が優勢ですね!」
武藤「まあバッターは3回に1回打てば合格ですしピッチャーが有利って言えば有利ですけどね」

天野「ふう、それほど怖い打線じゃないのにやけに疲れるな」
野口「1点勝負と言われている試合だからな。1点取られれば致命傷になりかねんしな」
天野「……1点勝負ですか?」
野口「ん?」
天野「いえ、なんでもないです(そうだ。本当に1点勝負だとしてもこの裏で点を奪って守り続ければ良い!)」

柳田主将「意外に打てない物だな?」
高杉「すみません」
柳田主将「いや、多少過小評価だったようだ。想像よりはやるな。ふん、俺も少しは本気を出すか!」
松下(高杉が2打数無安打かよ。やっぱり凄いんだな!?)

4回裏 無明実業0−0錬生高校 天野は4回もパーフェクトに抑え込むが、無明実業も無得点では勝てないと柳田から点を奪えるのだろうか?
柴田「1打席目ではわけの分からないまま終わったからな。ここはきっちりと見て打つぞ!」
柳田主将「1年ごときに打たれるか!」

ズバ―――ン!
柴田「とんでもなくノビてやがるっ!?」

霞「147キロのストレートを空振り三振!」
武藤「1回戦で菅野君からホームラン打った柴田君で期待はしてたんですがやはりそうそうは打てませんね」

柳田主将「ふん!」

ククッ!
豊田「シュート!?」

霞「タイミングピッタリかと思いましたがシュートを空振り三振して2アウトです!」
武藤「ストレートならタイミングピッタリだったんですけどね……しかしあのコースにあの変化じゃ高校生じゃ手は出ませんよ!」

天野(リードが変わった? いや、やるべきことは変わらない。必ず来るボールを打つ!)

カキ―――ン!
柳田主将「っ!?」

霞「三球勝負にも驚きましたがそのボールをあっさりとスタンドまで運んだ天野君にも驚きましたね?」
武藤「うーん、そうでもないですよ。最後のボールはやけにあまかったですから」
霞「確かに140キロと球速は出ていませんね。コースも真ん中高めとやけに打ちやすそうでしたし」
武藤「ええ。ここはあまいボールを見逃さず打った天野君を誉めるべきですかね?」

野村主将「高校ナンバーワンピッチャーからあっさりと打ったな!?」
天野「確かにポテンシャルではナンバーワンと言っても問題ないんですが、ピッチャーとしてはかなり問題がありますよ!」
野村主将「まあそこのところも有名だからな」
天野「いえ、そうじゃなくてさっき俺は手を抜いたストレートを2球とも空振りして全然タイミングが合ってないと思わせました」
野村主将「そうだったのか!?」
天野「ええ。完全にタイミングが合ってなければ気を抜いてあまいボールを投げる事はありますけど、打たれるわけはないって完全に手を抜いて投げて来ましたからね。ここのところを狙って行けば打てるはずです!」
野村主将「なるほどな。参考になった。俺も打って来る!」
天野(これで自信を持って行けばチームのみんなもレベルアップするはずだ。まあ柳田さんのように過剰になられても困るんだけど)

柳田主将「ちっ!」

カキ―――ン!
野村主将「……入った。俺が柳田から打てた!?」

霞「これも入った! 2者連続のホームラン! 138キロのストレートでやや外とまたあまめでしたけど、柳田君の疲れでしょうか?」
武藤「そうは思えませんが?(そう言えば2人共打ったのは最後のボールだったな。何か弱点でも見つけたんだろうか?)」

柳田主将「くそっ! なんで俺があんな奴にっ!」
山口「なるほどね!」
米沢(ちらっ!)
日浦監督(好きにさせろ!)
米沢(……俺達の夏が……こんな終わり方なのかよ!?)

カキ―――ン!
柳田主将「まただとっ!?」

霞「今度は初球から行った! レフトオーバーの長打の当たりです。打った山口君はセカンドで止まります!」
武藤「あの2人のホームランは良く分かりませんでしたけど、打たれてリズムを崩した柳田君から山口君はあまいボールを初球からきっちりと打ちましたね」

西岡「この程度なら打てる!」

カキ―――ン!
野口「ふっ」

カキ―――ン!
安田「すまん」

ガキッ!
柳田主将「……ようやく終わったか……」

霞「おっと高い!? 安田君はピッチャーゴロかと思いましたがここで柳田君が暴投しランナーはみんな返ります!」
武藤「言いたくないですがこれはひどいですね。ワンマンプレーの最悪さが出まくってますよ!(下手すればドラフトでも避けられるかもな)」

柳田主将「そんなバカなっ!? 何故だっ!?」
米沢(ちらっ!)
日浦監督(こくっ!)
米沢「悪いが交代だ!」
柳田主将「なんだとっ!?」
米沢「当然だろう。何点取られたと思ってるんだ?」
柳田主将「………………」
米沢「お前だけのせいじゃねえよ!」
柳田主将「………………」

霞「まさかの大量失点に驚く球場内ですが、さらに驚きと言うべきかここでピッチャー交代のようです!」
武藤「まあ無理もないですよ。しかし高校ナンバーワンピッチャーの夏がこんな結果に終わるとは」
霞「まだ終わっていませんよ! 試合は続きます! 出て来たのは二番手ですがまだ1年と言う望月君です。ちなみにプロにも望月の性はいますが別に関係はないようです!」
武藤「それ言う意味あるんですか?」
霞「盛り上がればなんでも良いんです!」
武藤(盛り上がると言うか盛り下がるんじゃないか? まあ球場はそんな事に関係なく名門無明実業の復活に盛り上がってるけど)

望月「このまま終わってたまるか!」

ズバ―――ン!
高橋「速っ!?」

霞「144キロのストレートを空振り三振と噂に偽りなしのストレートでした!」
武藤「速い球に慣れて来たし打てるかもと思いましたがやはりそうそうは打てないみたいですね」
霞「これで3アウトチェンジとなりましたが、いやーまさかの柳田君の降板と今日の試合は凄いですね!」
武藤「ええ。負けるとしても天野君との投げ合いの僅差だと思ってましたから、まさかこんな試合展開とはっ!?」

望月「次はどいつだ!」
米沢「チェンジだよ!」
望月「そうでした」
米沢「次は攻撃だ。1人出ればお前にもまわるし頼むぞ!」
望月「うっす!(くっくっく、エースじゃないけど4番か、燃えるぜ!)」

高橋「ごめん」
柴田「気にするな。次で打てば良いって」
高橋「うん」
山本「そうそう。竜だって今日はノーヒットだしな」
柴田「くそっ! こんなに打てなかったのは初めてだっ!?」
山本「いやいや、前にも何度かあっただろう?」
天野「ま、十分点を取れたとは言え増えて困る事はないし次に頼むよ!」
柴田「打つぞ! 打つぞ! 打つぞ!」
山本「すまん。俺が悪かった」
高橋「まあ頑張って行こう!」
岩田(良い雰囲気だな。しかし打てなくて悔しいか、それはレギュラーだから言えるセリフかもな)

9回表 無明実業7−0錬生高校 試合は無明実業リードのまま天野は素晴らしいピッチングを続けて9回に入った!
霞「いよいよ試合も9回に入りました。天野君がこのまま抑えて試合は終わるのでしょうか?」
武藤「もう勝敗は変わらないと思いますが、このまま天野君が完封できるかどうかは気になりますね?」

高杉「このまま終わるわけには行かない!」
天野「この点差ならもう勝敗は変わらないだろうけど、今日も完封で終わらせる!」

カキ―――ン!
柴田「うぉ―――!」

タッタッタッ! パシッ!
高杉「さすがに1番を打ってるだけはあるか!?」

霞「ライト前ヒットかと思いましたが柴田君が飛びついてキャッチし1アウトです!」
武藤「結果的には良かったですが、この点差でやるプレーではないですね。足の速さはともかく守備での判断力はダメですね」

望月「うらっ!」

ズバ―――ン!
天野「力はありそうだがこの程度ならまだまだ俺の敵じゃない!」

霞「145キロのストレートを空振り三振! しかし天野君も結構スタミナがありますね!」
武藤「そうですね。疲れもなくはないでしょうが追い込んだ後のボールの威力は変わってないですね!」

天野「これで終わりだ!」

ズバ―――ン!
松下「むうっ!?」

霞「147キロのストレートを空振り三振! そう言えば1回戦も最後は同じようなストレートでしたね?」
武藤「ええ。しかし1回戦、2回戦と強豪に当たったのに完封勝ちとは凄いですね!?」
霞「再び名門と呼ばれる日も遠くないと言う事ですね」
武藤「まあ少し前まで名門でしたからね。いきなり強くなったわけでもないんだと思いますけど」
霞「とにかく試合終了でまさかの大差で無明実業高校が2回戦を勝ち上がりました!」
武藤「あの柳田君があんな結果に終わるとは思いませんでしたね!?」

先輩達「…………勝った。念願の2回戦突破だ―――!」
高橋「テンション高いねー」
山本「強豪相手と続いててプレッシャーも半端なかったのに勝ち続けてテンション高くなってるんじゃないかな?」
岩田「しかし天野はさすがだな」
柴田「強豪相手に完封続けたからな」
天野「そう言うお前も2試合連続でホームラン打ってるしこれからも頼りにしてるぜ!」
柴田「おう!」

日浦監督「2回戦負けか」
全員「……………………」
日浦監督「ま、力が足りなければ敗戦も仕方ないな」
柳田主将「………………」
日浦監督「キャプテンから言う事はあるか?」
柳田主将「俺の力が足りなかったから負けたんだ。だから俺が悪い」
全員「……………………」
日浦監督「ま、力も大事だがそんな考え方じゃプロでは通用しないと思うがな?」
柳田主将「それはどう言う意味ですか?」
日浦監督「それはお前達で考えるんだな」
柳田主将「?」
米沢「………………」
望月「くそっ! 負けた!」
松下「ま、負けは負けだ。次に勝つ為に帰ろう!」
高杉「ああ!」
日浦監督(こいつらも心配だが、ま、悪い手本を学んで繰り返さないくらいの頭はあるだろう)

2回戦も勝ち上がった事から今年の無明実業は強いと言う事も世間も認め無明実業は勝ち続け決勝まで勝ち上がるのだった。

錬生高校
無明実業 ×
勝利
天野守
セーブ
敗戦
柳田誠二
本塁打 錬生高校
無明実業 天野守 野村栄治 柴田竜

公園
柴田「練習設備も一気に増えたな!」
千歳「良かったね」
ディー「………………」
柴田「こいつは寝てばっかりだな」
千歳「いつも通りだけどね」
柴田「まあな」
千歳「それにしても甲子園まで後1つか、正直、こんなに早くここまで来れるとは思わなかったな」
柴田「まだ途中だよ。俺達の目標は全国制覇だ。甲子園出場はついででしかない!」
千歳「言い切ったね!?」
柴田「当然だ。俺は全国制覇してプロに行く男だからなと言いたいところだがここまで来れたのは天野の力が大きいな」
千歳「ずっと無失点で来てるんだよね」
柴田「ああ。3回戦からは岩田や木村さんも投げてたから負担は少なくなって来ているけど、相手はあの天狼だからな」
千歳「珍しく弱気だね?」
柴田「違う! ただ俺はこんなペースで天野が潰れないかほんの少し心配になっただけだ!」
千歳「……ごめんね」
柴田「そんなマジにあやまる事もねえよ!」
ディー「ワンワン!」
千歳「そうだね。おなかも空いたしおうちに帰ろう!」
柴田「だな。とっとと帰ってメシだ!」
千歳「竜君、勝って絶対甲子園に行こうね!」
柴田「ああ!」

こうして無明実業も勝利して行き弱小と呼ばれなくなったが名門とはいまだ呼ばれない。天狼学園との決勝戦に無事勝って再び名門と呼ばれるようになるのだろうか?