第三章 あと一勝!
中村「きょうの相手は、関西航空高校か。まさかここまで来られるなんてな。」
沢田監督「相手チームで気をつける選手は、一年生ながら名門、関西航空高校エースの座をつかみ取った富田清隆と、ミートの天才といわれている坂本啓一が相手だ。」
原田「凄い奴らが相手だな。」
沢田監督「相手のことは気にするな。自分たちの野球をすれば結果は必ずついて来る。」
全員「じゃあ、なんで気をつける選手なんていったんだ!」
沢田監督「(細かい事を覚えているな)まあ気にするな。落ち着いて試合に集中しろ。」
全員「はい。」

沢田監督「今日の先発も中村だ。小田切、リリーフの用意はしておけよ。」
小田切「・・・・・はい。」

小田切 彬
一年生ながら、145キロのストレートを持ち、また、60キロの
スローボールとのコンビネーションで三振の山を築く天才投手。別名、無口君。

沢田監督「そろそろプレーボールだから、早くベンチに入れ。」
全員「はい。」

花柳第一

関西航空

山口

坂本

平岡

矢吹

桑原

中田

中村

荻野

原田

春田

名波

山崎

松尾

重宗

木村

松永

奈良


全員「よろしくお願いします。」
中村「よろしく。」
坂本「・・・あ、よ、よろしく。」
中村「(何だこいつ?コレで本当にミートの天才なのか?)」

アナ「今日は元千葉ロッテマリーンズで、バントの上手さなら誰にも負けず、小兵ながらチーム一ガッツがあった新谷雅美さんに来てもらいました。」
新谷「宜しくお願いします。」

一回の表 花柳一の攻撃
富田「抑えてやる!甲子園に行くのは俺たちだ!」

ズバーーン!
山口「は、速い。コレが本当に一年生の球なのか?」

山口、平岡はかすることもできず、三振。

桑原「このボールを回の浅いうちに打つことは不可能だろう。粘って粘って疲れさせてやる。」

富田「いくぞ!」

ズバ――ン!ズバ――ン!
桑原「くそっ!あっという間に追い込まれた。だがよく見ると
打てないほどの速さじゃあないな。」
富田「いくぜ!」
桑原「甘い。もらったー」

ギュルルル カクン
桑原「なに!Vスライダー!」
ブルウウウン
ストライ―ク!バッターアウト!

桑原「すまない、みんな。」
全員「気にすることないよ。まだ一回だし大丈夫大丈夫。」

一回の裏
中村「死ぬ気で抑える。今まで一緒に頑張ってくれたみんなに恩返しするには甲子園に出場するしかない!」
坂本「宜しくおねがいします。」

中村「何だこいつは。さっきまでとは感じが全然違う。」
坂本「こい、中村君。」
中村「いくぜ!」

ギュルルルル ズバーン

坂本「速いな。だが打てる。」
中村「もう一丁!」

ギュルルルル 
坂本「打てる。」

カキ―――――ン!

アナ「打ったー!坂本君、レフト前ヒット。」
新谷「今のボールはいいコースでしたが坂本君にはあのコースは甘いですね。」

アナ「今、入ってきた情報によりますと坂本君は、通算打率7割8分5厘だそうです。」

新谷「打率7割ですか?凄いですね。」
中村「あのボールを打たれたか。まあしかたないか。」
松尾「中村、あの作戦で行くぞ。」
中村「OK!」
中村「いくぜ!」
坂本「おっ、クイックがなってない。もらったー」

ギュルルル パシッ
松尾「やはり走ってきたか。計算どおりだな。」

シュイ―――――ン パシッ
坂本「なにー!」

新谷「今のプレーは、あらかじめバッテリーで考えていたのでしょう。いいプレーですね。」

関西航空ベンチ
坂本「すまない。」
全員「気にするなよ。」
富田「俺が全員、抑えてあげますから気にしないで下さい。」
坂本「ああ。あっ、矢吹、ちょっとこっちこい。」
矢吹「なんですか?」
坂本「あのピッチャーの球は速いが、打つ方法はある。」
矢吹「なんですか?」
坂本「・・・・・・・・、わかったか?」
矢吹「はい!」
中村「次のバッターは、バントが得意な矢吹か。まあ誰であろうと関係ないがな。」
矢吹「お願いします!」
中村「いくぞっ!!」

カキーーーーーーーーーーン!!

アナ「矢吹君、打ったー!ボールはぐんぐん伸びますが、左に切れてファールです。」
新谷「中村君の速球をあそこまで飛ばせるとは、侮れませんね。ただバントが上手いだけではなく、きちんとひきつけてから、レフトへ持っていける、パワーもありますね。

ズバーン!!!!ズバーン!!!


アナ「三振。いい当たりを打たれはしましたが今日の中村君は絶好調です。好打者矢吹君を三振。」
中村「よし!!」

アナ「次打者は、高校通算45本塁打の中田君です。ミートはそれほど上手くありませんが、持ち前のパワーで本塁打を量産しています。」
中村「凄いバッターだな。まあ今日の俺は絶好調だし、何とかなるだろう。」
坂本「タイムお願いします。中田、ちょっとこっちこい。」
中田「うん?」
坂本「いいか、さっき言ったとりやれ!」
中田「ああ」
中村「いくぜ!!!!」
中田「速いな、だが、中村の球なら」

カキィーーーーーーーーーーーーーン

アナ「中田君が打った打球は、ライトの遥かにオーバーしています。これはいったー。文句なしのホームランです。」
新谷「(中村君はもっと自分の弱点を知るべきだな、弱点を知れば何とかなるわけじゃないけど。それを乗り越えてこそ一流選手への道は開かれる)」

その後、中村は、ヒットや、フォアボールなどで、7点取られ、なおも、一死満塁。
沢田監督「限界か。」

アナ「花柳第一高校、ここでピッチャー交代。ピッチャーは、一年生の小田切君。」
新谷「どんなピッチャーなのでしょうかね。今まで一度も実戦で投げてなかったようですよ。」

アナ「次のバッターは一番の坂本君です。さっきは、中村君から目の覚めるような当たりを打っていました。」
小田切「・・・・・・・」
坂本「なんだこいつの威圧感は。」
小田切「・・・・・・・」

ズバ――――――――ン

アナ「145キロのストレート!速いです、小田切の球は。速さだけなら中村にも勝っています。」
新谷「コレが一年生ですか?」
坂本「速いな。だが、これくらいの投手なら、余裕で打てるぜ。」
小田切「・・・・・・・」

ホワワーーーーーーーン

アナ「遅い!なんと言う遅さだ。坂本君、タイミングが合いません。」
坂本「うわっと!」

コツン

アナ「坂本君の打った打球は、投手の前に転がっています。」
小田切「・・・・・・・」

アナ「小田切君、ダッシュも速い。余裕で一塁アウトです。」

その後、小田切は、打たせて取るピッチングで、5,6,7回を無失点に抑えた。
沢田「とにかくこの回、絶対に、5点は取れ。それが出来なきゃ負けだと思え」
全員「はい!」
中村「ごめん、皆。俺が抑える事ができなかったから。」
全員「気にするなよ。中村。あとは俺たちに任せろ!」
中村「ありがとう皆。あ、次は俺の打席だ。急がなくちゃ。」
沢田「中村、いいチームメートを持ったな。これで安心して・・・」

一方、グラウンドでは・・・
坂本「言いか皆、七点勝っているからって油断するなよ。」
全員「おう!!!」
坂本「それと富田、」
富田「なんすか?」
坂本「いいか、中村にはど真ん中ストレートを投げろ。」
富田「(えっ、まあ先輩に逆らったらベンチだもんな)分かりました。
中村「こい!」
富田「行くぜ!」

カキーーーン!
中村「甘すぎるぜ?

バシィーー
中村「なにーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!
坂本「普通の打者の球だったら、俺の頭を超えて言っただろうがやはり奴には無理か。」

アナ「中村君、今のは運が悪かったですね。」
新谷「(いや、今のは運が悪いとかそうゆうのではないな。坂本君は富田君にわざとど真ん中に投げさせてセンターに打たせていたんだ。)」
松尾「おかしいな、普通の打者ならあの球はホームランなのに。」
富田「よっしゃ!!」

その後、富田は原田、名波を三振に切って取った。


アナ「残すは8回と9回のみ。追加点を入れる事ができるか関西航空。この回から花柳第一高校のサードには一年生の谷田君が入っています。」

谷田「よっしゃーー!初出場だ。」

アナ「この回のトップバッターはピッチャーの富田君。」
富田「このピッチャー、いいな。けど今のうちに打たなくっちゃな。この回でとらえないと後々、大変なことになるからな。」
小田切「・・・・・・・・・」

ズバシーーーーーーーーーン!!

アナ「富田君、あっという間に三振。」

富田「本当にいいな。」

ズバーーーン! ズバーーーン!

アナ「続く木村君、奈良君は連続三振。ここで天候が悪くなってきました。」

その後、雨が降り始めた。試合については、いま、審判団が話をしている。
花柳第一高校全員「頼む。続けてくれ。続けてくれれば何かが起こる。」
関西航空全員「頼む、止まないでくれ。」
富田「先輩たち、お言葉ですが、ここまでリードしているのですから途中で終わるよりは最後まで続けた方がいいのではないでしょうか?」
関空全員「それもそうだな。よし、この試合勝って甲子園へ弾みをつけよう。」

アナ「ただいま、審判団の話し合いが終わりました。止みそうに無い為、この試合は七回まですでに成立している為、この試合、関西航空の勝ちです。
新谷(普)「予想外の展開になりましたね。まあ、この試合は、もうはっきりしているのでもういいのではないでしょうか。」

かくして花柳第一高校は、敗北した。
次回、敗北の後に