第47章 最後の夏(5)〜ぶつかり合い〜(前編)

−1996年 8月−
赤竜高校は2回戦も柚の力で勝ち上がった。そして今日の対戦相手は紅蓮高校だがその前の試合の雪影高校と黒龍高校の試合を見ていた。
真田「両校に勝っているけど、どっちが強いんだろうね?」
吉田「6−4で雪影高校がやや有利って言われているけど、6−4程度じゃ結果は分からないしな?」
斎藤主将「雪影高校の先発はエースの後藤だな」
真田「黒龍高校の先発はエースの沢田君だね」
吉田「って事は下の世代の対決か、他にも御堂とか小椋もいるしなんか盛り上がりそうだな」
真田「柚ちゃんもいるしね」
吉田「そうでした」
真田「うむ。ところで斎藤はどっちが勝つと思う?」
斎藤主将「雪影高校かな。滝沢は今年の本命の1人だし沢田が何処まで通用するかだな」
真田「ふむふむ。それと1つ気になるんだけど、1年ながらスタメンに入っている赤園君ってどんな選手?」
吉田「確かシニアでかなり活躍してた選手だな。確実なアベレージタイプで盗塁や守備も上手いって聞いたな」
真田「つまり僕の様なスーパープレイヤーだね!」
斎藤主将「…………しかし1年で凄い奴が増えるとやはり夏は違うな」
吉田「そうだな。黒龍高校は2年が中心と年下も目立って来ているし世代交代って奴かな」
斎藤主将「滝沢がどう戦うのか面白い試合になりそうだな!」
真田「うむうむ。同じベイスターズになったらたっぷりと先輩風吹かして使ってやろう!」
斎藤主将&吉田「……………………」
真田「とにかくプレーボール!」

雪影高校
白銀監督「今日の相手は知っての通り国体で優勝するなど大阪の名門校だ。特に2年が中心のメンバーと言われて勢いがあるのできっちりと抑えて行けよ!」
後藤「うっす!」
朝山「1回戦は後藤、2回戦は市川なんで3回戦は俺じゃないんだ!」
白銀監督「後藤の志願登板だからだ」
朝山「後藤君、君さ。俺が大人しいと思っていい気になってない!」
後藤「そんなつもりはありません」
白銀監督「同世代だしぜひ投げ合いたいと言う話だ。俺もその気持ちは分かるからな。朝山には気の毒だがそう言う訳だ!」
朝山「まあ良いですよ。けど次は投げさせてもらいますよ!」
白銀監督「ああ。次は嫌でも投げてもらうからな!」
赤園「まあどんな相手でもこのスーパールーキーコジ君が打ち砕いてやりますよ!」
滝沢主将「毎回切欠はお前だが止めを刺すのは俺だな!」
赤園「ふっ、先輩に見せ場を譲るとはなんて謙虚なコジ君だろう!」
大沢「まあ将来のクリーンナップだし期待してるよ」
赤園「無論です。曜君と戦うまでは負ける訳には行きませんからね!」
滝沢主将「無明は対戦したいピッチャーがいないんであんまり興味はないんだけどな」
新井「失点も少ないが豊富な守備の人材や得点力で勝って来てるからな」
赤園「大丈夫です。曜君と言うエースがいるんで向こうもパワーアップしています!」
大沢「それ大丈夫って言わないし」
滝沢主将「それに実力的には紫集院は3番手だろう」
赤園「大丈夫! すぐに追い抜きますから!」
大沢「天野さんて言う絶対的なエースはいなくなったけどそんなに簡単には行かないと思うけどな」

黒龍高校
鬼頭監督「相手は名門の雪影高校だ。打線には定評があるが気を付けるのは滝沢のみで良いだろう」
沢田「パワーヒッターと言えるのは滝沢さんくらいですからね」
鬼頭監督「うむ。4番を何処まで抑えられるかがポイントになって来るな!」
熊井「絶対無失点で切り抜けよう!」
鬼丸主将「で得点は?(相変わらずすげえ迫力!?)」
鬼頭監督「向こうの先発は後藤らしいからな。カウントを稼ぐ変化球か失投を確実に打つかだな。ポテンシャルは高そうだが無失点に抑えられるタイプとも思えんし問題ないだろう」
内山「やっぱり慎とクマの役割が重要ですね」
鬼頭監督「そう言う事だな」
熊井「滝沢さんか、風祭さんのせいか評価は低い気がするけど、昨年指名された嘉神さん達に負けてない怪物だからな」
鬼頭監督「広角に打ち分けるタイプで高須や相良に近いな。恐らく1年目で20本以上は打つだろう」
沢田「そう言うレベルか、久々に面白い試合になりそうですね」
鬼頭監督「バッターとしては春に負けた赤竜高校の誰よりも凄いだろうな」
熊井「だよな。本当にあの人を抑えるのがポイントになりそうだな」
鬼頭監督「それとチャンスにも強いからランナーもできるだけためないようにしろ!」
沢田「了解!」

−甲子園大会3回戦 阪神甲子園球場−
3年 新井 一馬
後攻 先攻
雪影高校 黒龍高校
投手力 機動力 投手力 機動力
打撃力 守備力 VS 打撃力 守備力
意外性 経験値 意外性 経験値
総合力 総合力
金村 尚弘 3年
1年 赤園 虎次郎 早見 智宏 3年
3年 小泉 良雄 内山 春彦 2年
3年 滝沢 裕司 熊井 輝夫 2年
3年 山田 孝志 鬼丸 一文 3年
3年 寺島 章 沢田 慎 2年
2年 金村 裕哉 友澤 照惟 3年
2年 大沢 勤 栢山 孝明 3年
2年 後藤 剛 根津 徳朗 3年

放送席
霞「いよいよ3回戦です。今日の試合は雪影高校VS黒龍高校と名門対決とレベルが高そうです!」
武藤「注目はやはり両校の先発ですね。後藤君と沢田君、どちらも2年とは思えないピッチャーですから面白い投げ合いになりそうですよ!」
柴田「来年も豊作って事ですね」
霞「うむうむ。2試合目では柚ちゃんも活躍しましたしこの世代も凄いですね」
武藤「ええ。質より量と言われている来年ですがどの選手もポテンシャルは負けていませんよ!」
柴田「なるほど、雪影高校にも金村君や大沢君もいるし2年生に注目すると面白いかも知れませんね」
霞「それでは試合の始まりです!」
柴田「………………」
武藤「……柴田さんの紹介は?」
霞「すみません。忘れていました。今日のゲストは盗塁王も獲得した柴田純一さんです!」
柴田「どうぞよろしく!」
武藤「軽いなー」

1回表 雪0−0黒 名門同士の戦いが始まった!
後藤「ふん!」

ズバ―――ン!
金村尚「やっぱり速いな!?」

霞「速い初回から145キロを記録しました。金村君は手が出ず三振!」
武藤「春にも観ましたが球速は既にプロレベルですね」
柴田「レベル高いな。これが今の高校野球か」

大沢(うん。球威も十分だし志願登板するだけあって調子は良い!)
後藤「続いて抑えて行く!」

ガキッ!
早見「重っ!?」

霞「球威に負けたか平凡なショートゴロに終わります!」
武藤「速いですがノビではなく球威で勝負するタイプだしミートが上手いバッターなら当てるくらいはできそうですね」
柴田「と言っても球威はありそうだし非力なバッターじゃ外野まで飛びそうもありませんね」

内山「噂通り速いなこう言うタイプとの対戦は燃えるぜ!」
後藤「同い年には負けん!」

カキ―――ン!
内山「行け―――!!」
後藤「行くな―――!?」

霞「入った。失投を見逃さずレフトスタンドに叩き込んだ! 好調な後藤君でしたがここで1点を取られてしまいます!」
武藤「不思議とこの手のピッチャーって一発を打たれる事が多いんですよね」
柴田「コントロールに難有りか、まあこの手のピッチャーってコントロール悪いのも多いし不思議ってほどでもありませんけどね」
武藤「そうですね。けど、初回で点が入ったか沢田君は崩すのが難しそうだしどんな展開になるのか?」
柴田「しかし流してスタンドに入れると技術もありそうだし内山君が後藤君、攻略のカギになるかも知れませんね」
霞「と言うかもう打ってますけどね。ちなみに内山君は勝負強く決勝点も多いしこの1点で勝敗が決まる可能性も高いかも知れません」
柴田「ほほう。3番らしいと言えば3番らしいですね」

大沢「そりゃ失投を投げれば打たれるわな」
後藤「くそっ!」

ズバ―――ン!
熊井「低めギリギリ!?」

霞「最後はインコース低め熊井君は手が出ず見逃し三振!」
武藤「146キロか、あれは手が出んな」
柴田「ミートの上手いバッターでも合わせるのは難しいですね。けど、カウント稼ぐボールは手が出ないでもなかったし変化球に弱いんですかね?」
霞「とにかく1回で好調振りを見せますが内山君の一発を食らい1失点と言う結果に終わります!」

後藤「くそっ!」
大沢「落ち着けって失投を見逃さず打った相手が良かったってだけだよ。力を出し切れば次から抑えられるよ」
後藤「分かってる」
大沢「キャプテンもいるし1点くらいすぐに返せるよ」
後藤「だな」

内山「どうだ貴重な1点を取ってやったぜ!」
沢田「ああ。後は俺が抑えて行けば問題ないな!」
熊井「うん。そうだね」

1回裏 雪0−1黒 好調な後藤だが失投を打たれ1点を失った
沢田(シュッ!)

ガキッ!
新井「可愛げのない2年だな。こう変化球ばかりじゃ狙い球が難しい」

霞「シュートを打ち上げた。キャッチャーの熊井君がキャッチして1アウトです!」
武藤「やっぱりレベルが高いな。3年になればプロで活躍している天野に匹敵する様になるかも」
柴田「これで2年か、今からでもプロに通用しそうだな」

赤園「今までの相手とはレベルが違うな」
新井「これが甲子園に来るピッチャーのボールだな。球速もあるがスライダーとシュートの使い方が巧みだ。まずは目を慣らした方が良い!」
赤園「後藤先輩の球速、朝山先輩のシュート、市川先輩のスライダー、ちゃんと特訓しましたから問題ないですよ!」
新井「球速以外はあっちの方がレベルが高いんだけどな。それに手元で変化するし…………」
赤園「打つぞ〜♪」
新井「って聞いてねえ!?」
赤園「どうぞよろしく!」
熊井「ああ(さてと次は1年か、こいつも甲子園で打っているし油断はできないな)」
沢田(と言っても二線級の投手から打ってるだけだ。力を出し切れば十分に抑えられる!)
熊井(本当に大丈夫か?)
沢田(春にはスタミナ切れと無様な姿を見せたからな。あれから成長した姿をここで見せてやる!)

ククッ!
赤園「これが高校生のスライダーなのか!?」

霞「最後はアウトコースボール球のスライダーを振らされて三振!」
武藤「今のとんでもないキレでしたね。こうやって見ると既に敗退した谷口君クラスのボールを持っていますね!」
柴田「コントロールも良いですし、なんと言うか簡単に崩せないイメージがありますね」

カキ―――ン! パシッ!
小泉「正面かよ!?」
沢田「ま、こんなところか」

霞「最後はヒットかと思われましたが沢田君が反射的に捕って3アウトチェンジ!」
武藤「いきなりヒット性の当たりか、さすがに打線が凄いって言われるだけあって初回からとらえて来ましたね」
柴田「けど、沢田君の調子も良いし簡単には得点できそうもないですね」
霞「とにかくピッチャーだけでなくバッターも調子の良さを見せた初回でした!」
武藤「ですね。これは投手戦になるのか乱打戦になるのか読めませんね?」
柴田「うーん、調子良いし投手戦になるんじゃないですかね」

内山「これなら今日も完封だな!」
熊井「バカ言うな。次からはあの滝沢さんだぞ。油断していると一気に大量点を奪われかねないんだぞ!」
沢田「ま、これで準備は整った訳だ!」
熊井「まあね」
沢田「ま、その前に追加点を取らないとな!」
熊井「だね。期待してるよ」
沢田「当然!」

滝沢主将「やっかいそうなピッチャーだな」
赤園「ふっ、次の打席ではガンガン打ちますよ!」
新井「三振したのにその自信はどっから来るんだよ?」
赤園「なんのバッターは3回に1回打てば上出来なのです!」
滝沢主将「この前向き思考は見習わないとな!」
小泉「まったくだ!」

2回表 雪0−1黒 初回は両校調子の良さを見せて黒龍高校が1点を先制し終わった!
大沢(次は鬼丸さんか、目立ってはないけどこの人がチームで一番良いバッターと言えるし慎重には無理か、とにかく全力で来い!)
後藤(言われるまでもない!)

ガキッ!
鬼丸主将「当てられなくはないけどなんて重さだ!?」

霞「145キロのストレートに当てますがライトフライに倒れます!」
武藤「完全に球威に押されてますね。本当に痛そうだな」
柴田「この後藤君からホームランと1回は運が良かったですね」

沢田(低めのボールをいくら振っても外野フライだな。狙うなら高めかカウント稼ぎの変化球を狙う!)
後藤(次も抑える!)

ククッ!
沢田(あまい!)

カキ―――ン!
赤園「残念でした!」

パシッ!
沢田「なるほど、打撃だけでなく守備も買われてのスタメンか」

霞「惜しくも三遊間は抜けない。赤園君がここでファインプレーを見せました!」
武藤「良い守備反応してるな。しかし沢田君も綺麗に合わせて来るな」
柴田「なんかバッティングのお手本見たいな打ち方でしたね。投げるだけでなく打つのも得意そうです!」

後藤「ふんっ!」

ズバ―――ン!
友澤「この速さはちょっときついな」

霞「最後は145キロのストレートで空振り三振!」
武藤「やっぱりそうそうは打てませんね」
柴田「後半勝負って言いたいところだけどスタミナもありそうだしどうなりますかね?」

大沢「この調子で行こう!」
後藤「当然だ!」
赤園「この調子で行けば勝てますね!」
朝山「いや、1点差で負けてるし」
赤園「1点程度なら楽勝っす!」
朝山「調子に乗ってエラーするなよ」
赤園「大丈夫です! 調子に乗って失敗するのはナンパくらいですから!」
朝山「威張って言うなよ!」

沢田「さすがに向こうもやるな」
内山「ふっ、俺がもう1点取ってやるしガンガン行け!」
熊井「そんな調子良く行くかな?」
沢田「ま、今は打つ事より守る事だな。この1点を守って行こう!」
熊井「だな!」

2回裏 雪0−1黒 好調の後藤から打つ事もできず黒龍打線は三者凡退に終わった!
滝沢主将(外のシュートか、もらった!)

カキ―――ン!
沢田「なっ!?」

霞「アウトコースのシュートをレフトスタンドに運んだ!」
武藤「珍しくボール球を積極的に振って来たかと思ったらスタンドに運ぶなんてとんでもないですね!?」
柴田「ボールに逆らわずに流してスタンドに運ぶなんて技術も凄いと言うか昨年の相良みたいなバッターですね」

熊井「あんなボールをスタンドまで運ぶなんて化物だ!?」
滝沢主将(良いピッチャーだが今日の調子なら問題ない!)
沢田「…………外したボールをあそこまで飛ばせるのか」

ククッ!
山田「スライダーか」

霞「滝沢君に打たれた物の続く山田君にはアウトコースのスライダーを振らせて空振り三振に抑えます!」
武藤「コース良し変化良しと滝沢君に投げたボールと変わりませんけど」
柴田「今日の沢田君はコントロールも良いしやっぱり打った滝沢君が凄かったって事ですね」

沢田「………………」

ズバ―――ン!
寺島「速い!?」

霞「143キロ! ストレートも速く寺島君は見逃し三振に終わります!」
武藤「やっぱり大したレベルですね」
柴田「確かにピッチャー陣はプロレベルですね。バッターはまだまだアマチュアって感じだけど」
武藤「おいおい」

沢田「………………」

ククッ!
金村「ダメか」

霞「滝沢君の後は三者三振と沢田君は見事なピッチングを見せます!」
武藤「しかし1対1と試合は振り出しに戻りましたね」
柴田「これで2年ってのが凄いですね。来年のドラフトも今から楽しみですよ!」

沢田「………………」
熊井「大丈夫か?」
沢田「三者三振に抑えて大丈夫も何もないだろう」
熊井「まあな(けど無口になって不機嫌って感じなんだけどな)」
沢田「……4番は本当に要注意だな」
熊井「ああ(調子が良いとは言え本当に大丈夫なのか?)」

赤園「このコジ君のお膳立てのおかげで同点となりました!」
朝山「お前は何もしてないだろう」
赤園「それは言わないお約束です」
朝山「ボケボケだなー」
滝沢主将「とにかく相手投手はかなりのレベルだしこれ以上の失点はまずいぞ」
後藤「任せて下さい!」
滝沢主将「ああ!」

3回も試合は動かず点差は変わらず4回へと進む。

観客席
真田「さすがは甲子園だね。年下とは思えないくらいレベルが高いや」
吉田「2人共、春に対戦したけど、あの時より成長してるな」
斎藤主将「しかし打った内山と滝沢はさすがだな」
吉田「失投を見逃さず打った内山もさすがだけど、やっぱりあのボールをスタンドに運んだ滝沢が凄かったよな!?」
真田「だね。斎藤の言った通り滝沢対沢田君が試合のカギになりそうだね」
斎藤主将「沢田は尻上がりに調子良くなるタイプだしこれからの展開が面白そうだな」
吉田「とにかくこれから4回だしこれからどうなるか見せてもらおうか」
真田「ふっふっふ、楽しくなって来たね!」

4回表 雪1−1黒 滝沢の一振りで一気に同点となる
後藤「ふん!」

ガキッ!
内山「重っ!?」

霞「1回でいきなりホームランを打った内山君でしたがライトフライに倒れます!」
武藤「あのストレートを引っ張ったのはさすがですけど、やっぱり伸びませんね」
柴田「145キロですからね。しかし簡単に当てられるところからも内山君のバットコントロールの上手さを見せられましたね」

内山「1回で打ったボールとは全然違ったぜ!?」
熊井「そりゃ失投と生きたボールだからな。全然違って当たり前だし!」
内山「とにかく俺の敵は打ってくれ」
熊井「……おう!」
沢田「ちなみに討つではなく打つがポイントだな!」
内山「その通り!」
熊井「まあ字は見えなくても理解できちまったけど」
大沢(次のバッターはやっかいな強打者だ。前の打席と同じく低めに集めて抑えよう!)
後藤(ああ!)

ズバ―――ン!
熊井「………………」

霞「147キロのストレートを空振り三振! 最後は高めのボール球を振らされました!」
武藤「2年生で147キロか、来年は150キロ行くかも知れませんね」
柴田「うむうむ。やはり大した物だ!」

後藤「ふん!」

カキ―――ン! パシッ!
鬼丸主将「正面か」

霞「最後はファースト正面のライナー!」
武藤「145キロを芯でとらえられるだけ凄いんですけどね」
柴田「しかし速い打球なのに簡単に捕ると滝沢君は守備も上手そうですね」
霞「実際打つだけでなく守備の評価も高いですからね」
武藤「そうですね。守備で見せるところはあまり見ませんけど、捕球も上手いしバント処理も悪くないとプロレベルの守備を持っていると思いますよ!」
柴田「打って良し守って良しか、さすがに風祭君と比べられるだけあって欠点のない良い選手だな」

大沢「良い調子だしこのまま行こう!」
後藤「当然!」
赤園「次は僕からだしガンガン振って行こうか!」
朝山「分かってると思うが振るだけでなく当てろよ」
赤園「当然です!」

沢田「ふう、やはり簡単には攻略できないか」
熊井「全然当たらなかった」
鬼丸主将「そりゃボール球ばかり振ってたらな」
内山「選球眼がもう少し良ければな」
沢田「こう言う試合展開じゃクマの一発が試合を決めそうだし次を期待しようか」
内山「確かに俺もキャプテンもパワーヒッターってほどじゃないし後藤からだとクマくらいしか期待できないかもな」
熊井「ホームラン打った奴のセリフじゃないし」
内山「連打も難しそうだしやっぱりクマに期待だな」
沢田「リードの方も頼むぞ!」
熊井「了解!」
鬼丸主将(本当に大丈夫なのか?)

4回裏 雪1−1黒 三者凡退と後藤も調子良く抑えて来ている!
赤園「同じ手は通用しない!」

ガキッ!
沢田「ま、こんなとこだろう」

霞「スライダーに合わせますが結果はライトフライ!」
武藤「合わせた赤園君も凄いですけど、打ち取るのが上手い沢田君には勝てませんでしたね」
柴田「あのスライダーとシュートのコンビネーションはさすがですね」

赤園「わずかに芯を外したか!?」
小泉「と言うより強振ではなくミートに徹していたらヒットになっただろうに」
赤園「強振で行けると思ってたんですけどね…………想像以上に手元で変化するんで注意して下さいね!」
小泉「ああ!」

カキ―――ン! パシッ!
霞「こちらもスライダーに合わせたがファーストライナーに終わります!」
武藤「右打者は外のスライダーで完全に抑えられていますね」
柴田「合わせられるだけ大した物だと思いますけどね。次は左打者で4番の滝沢君だしシュートでまた来るかな?」

滝沢主将(今日は振れてるし2打席連続狙って見るか!)
熊井(問題はこの人だな)
沢田(ボールでもストライクでも全力投球で行く!)
熊井(ボール球を振って来るとは思わなかったからな)
沢田(ボールにするせいかあまく投げてたんだろうな。今度はボールでも全力で投げる!)

ククッ!
滝沢主将「っと!」

霞「ボールでも積極的に振ろうとしますがなんとかバットを止めます!」
武藤「うーん、しかしスイングはコールされましたね」
柴田「まだ1ストライクですけどね」

沢田(2球目はインコースのスライダーだ!)
熊井(ストレート外して様子見た方が良いと思うが)
沢田(いや、逃げたところで勝てる気はしない。こう言うタイプはガンガン攻めて行くに限る!)
熊井(確かに逃げて打たれたからな。分かった!インコースで勝負だ!)

ククッ!
滝沢主将(読んでいたのに空振りか、最初のホームランで火をつけたらしいな。しかしまだアウトにはなっていない。次は打つ!)

霞「インコースのスライダーでしたが空振り2ストライクです!」
武藤「一気に追い込みましたね」
柴田「しかしまだ滝沢君の打席は終わっていません」

滝沢主将(来た! このストレートを待っていたんだ!)

カキ―――ン!
沢田「なっ!?」
金村「よっと!」

パシッ!
滝沢主将「届かなかったか」

霞「行ったかと思いましたがバックスクリーンまでは届かず結果はセンターフライ!」
武藤「さすがに甲子園は広いですね。しかし芯でとらえた様にも見えたんですが?」
柴田「144キロって出てたしノビて芯を外したんじゃないですかね。結果は三者凡退とやっぱり沢田君も凄いですね!」
霞「4回は両投手、3人で終わらせると見事なピッチングを見せました!」
武藤「本当に凄いですね。このまま経験積めば何処まで成長するのやら!?」
柴田「これで未来のプロ野球も安泰だな!」

熊井「滝沢さんを抑えるとはさすがはうちのエースだな!」
沢田「俺の実力からして当然だ!」
内山「とにかく1点取れば勝てそうだな」
熊井「その1点が難しそうだけどな」
沢田「確かに後藤は凄いが失投もあるし残り5回あれば打てなくもないだろう」
熊井&内山「それもそうだな!!」
沢田(相変わらず単純な奴らだ。おだてて打って来れれば本当に良いんだどな。ま、頼りになるかも知れない奴らだし多分打ってくれるだろう!)

赤園「また打てなかった」
滝沢主将「ま、あんなピッチングされたらな。だが少なくとも当てる事はできた。次で打てば良い!」
赤園「それもそうですね!」
朝山「切り替え早っ!?」
後藤「とにかく1点だ! 1点あれば勝てる!」
大沢「力み過ぎて調子崩すなよ!」

4回でも試合は動かず投手戦が続き7回へ進む。

観客席
真田「6回を終わって1対1と完全に投手戦だね」
吉田「特に沢田は無四球1安打と絶好調だな。こうなると打った滝沢はやっぱり凄かったんだな!」
斎藤主将「ああ。けど尻上がりに調子良くなっているし雪影の方が不利かな」
真田「あれ? 雪影高校が勝つって思ってるんじゃなかったっけ?」
斎藤主将「沢田が想像以上に成長してたからな」
吉田「確かに春でも良いピッチャーって思ってたけど、滝沢を抑えられるとは思っていなかったしな」
真田「何せ吉田でも打てたくらいだからね」
吉田「悪かったな!」
斎藤主将「後藤もランナー出した後は凄いボールを投げ込んでるし本当に読めないな」
真田「隙のない沢田君と隙はありそうだけどホームは踏ませない後藤君か、斎藤の言う通り確かに黒龍高校の方が有利っぽいね」
吉田「けど、雪影高校には滝沢と言うプロレベルの強打者がいるし滝沢が決めそうな気もするな」
真田「確かに読みにくいね…………さてと、どっちが勝つかな?」

7回表 雪1−1黒 投手戦が続き1対1のまま7回へ入った
大沢(今日は当たってないと言っても4番だ。慎重に行こう…………は無理かな)
後藤(力と力の勝負だ! コースは関係なく最高のボールで三振を奪う!)
大沢(分かった。全力で来い!)
後藤(シュッ!)
熊井「みんなの為にもここで打つ―――!」

カキ―――ン!
後藤「まさか!? 俺の全力投球だ……入るわけが…………」

霞「―――入った。またしてもホームランで黒龍高校が1点勝ち越します!」
武藤「146キロのストレートを…………パワーは段違いですね!?」
柴田「しかし2人共、球威がない訳じゃないのに一発の多い試合ですね」
武藤「まったくですね」

大沢「落ち着け! まだ試合が終わった訳じゃない!」
後藤「落ち着いているさ。落ち着いて全力で投げ込みたいくらいだ!」
大沢(全然落ち着いてねえよ。ま、この方が良い結果が出る可能性も高いしいっか!)

熊井「わっははは、見たか!」
沢田「良くやった。これで勝てる!」
内山「ホームラン一発で勝ち越しとなーんからしくない野球だけど、今日の慎ならこれで勝利は決まったな!」
沢田「ああ。確実に勝つ為に後1点は欲しいが今日の後藤の調子じゃ難しそうだな」

後藤(シュッ!)

ズバ―――ン!
鬼丸主将「手が出ない!?」

霞「145キロのストレート! 鬼丸君は手が出ず見逃し三振!」
武藤「ヒット打たれると弱くなるイメージがありますがホームラン打たれると強くなるイメージがありますね」
柴田「ほほう」
霞「春は四死球が多いイメージとピンチに強いイメージがありましたね」
武藤「うーん、ヒット打たれても強いかな?」

後藤(シュッ!)
沢田「インコース!」

カキ―――ン!
赤園「抜かせません!」

パシッ!
沢田「ちっ!」

霞「無理矢理引っ張って三遊間を抜けるかと思いましたが赤園君が良いところを守っていました!」
武藤「今日はバッティングで活躍できていませんが守備では良いプレーを見せてますね!」
柴田「ショートと言えば名選手と決まっていますからね。ぜひマリーンズに来て欲しい物です!」
武藤(そう言えば柴田さんもショートだっけ…………現役の頃には走られた事もあったな!?)

大沢「助かったな」
後藤(残り1人!)

ズバ―――ン!
友澤「球数は多いのに全然球威が落ちないか…………スタミナは沢田より上だな」

霞「最後はボール球145キロのストレートを振らされて三振!」
武藤「失投と言う失投がなかったのに1失点か、やっぱり黒龍高校も名門なんだな」
柴田「名門にしては大味な感じですけどね」
武藤「確かに」
霞「とにかくこれで黒龍高校が1点勝ち越し! 試合はこのまま終わるのでしょうか?」
武藤「後2回……いや雪影高校は後3回ありますからね。まだ分かりませんよ」
柴田「それに1点差だし面白くなって来たね!」

後藤「くそっ! 力と力で負けるなんて!?」
大沢「確かにあのボールをあそこまで飛ばすとは思わなかったな」
滝沢主将「上には上がいるって事だな。高くはなかったが低くもないコースだったし今より成長するにはコントロールを上げるか更に球速を上げるかだな」
後藤「投げ込みだ!」
滝沢主将「まあ帰ってからにしてくれよ」
大沢「まだ試合中だぞ!」
後藤「分かってるよ」

沢田「良くやった。これで後は守って終わりだ!」
熊井「ようやく仕事ができたな!」
内山「これで勝てる!」
沢田「ああ!(そしてこの裏で恐らく勝敗が決まる。何がなんでも抑えて見せる!)」

7回裏 雪1−2黒 4番の一振りで再び黒龍高校が1点リードする!
赤園(スライダーじゃない!?)

ガキッ!
沢田「…………ちっ!」

霞「芯は外したがシュートになんとか当てて打球はセンター前に行きます!」
武藤「完全に打ち取ったと思った当たりでしたが飛んだ場所が良かったですね。しかしもしかしたらこの打球が試合を決めるかも?」
柴田「そうかも知れませんね。ま、滝沢君しだいですか」

熊井「ごめん」
沢田「不運だ。仕方ない。次に集中しよう!」
熊井「ああ」

ズバ―――ン!
小泉「………………」

霞「巧打者の小泉君でしたが見逃し三振とあっさり終わります!」
武藤「ここまで結構タイミングは合っていたのに1球も振らずに終わりましたね?」
柴田「1アウト1塁で滝沢君か、良い場面ですね!」
武藤(あっ! ひょっとして併殺を避ける為に振らなかったのか!)

滝沢主将「あっさりと見逃したな」
小泉「俺じゃ繋げる事はできても決める事はできないからな」
滝沢主将「繋げられる方がまだプレッシャーが少なかったけどな」
小泉「ふっ、後は頼んだぜ!」
滝沢主将「ああ!」
熊井(1アウト1塁で滝沢さんか、特にピンチって訳でもないけど嫌な場面だよな。しかもランナーはラッキーヒットで出ているしなーんか怖いんだよな)
沢田(逆に言うならこの場面で抑えればまず俺達の勝利だ!)
熊井(そうか!なら最高のボールで抑えてやろう!)
沢田(ああ! ここで決めてやる!)

ククッ!
滝沢主将「カーブか!」

カキ―――ン!
沢田「………………」

霞「行ったかと思いましたがわずかに外れてファール! これで2ストライク2ボールとなりました!」
武藤「決めるかと思いましたがファールですか」
柴田「しかし凄いパワーですね」

熊井(ファールと分かっててもあの飛距離はちょっと怖いな。しかし近くで見ると結構筋肉付いてるしやっぱりパワーも凄そうだな!)
沢田(いまさらだな。とにかくこれで追い込んだ。決め球はこいつで行く!)
熊井(次で勝負するのか?)
沢田(いや1球外して2−3で勝負する!)

ククッ!
滝沢主将「インコースのスライダーか、危なく誘いに乗るところだった」

霞「打つかと思いましたがバットを止めてフルカウントとなりました!」
武藤「この場面で抜群のコントロールを見せますね。見逃した滝沢君もさすがですしどっちが勝つんでしょうか?」
柴田「これで2−3ですか、決め球はなんで来るんでしょうね?」

熊井(あのコースを見逃す滝沢さんもさすがだな)
沢田(選球眼もあるからな)
熊井(それで決め球はどうする?)
沢田(インコースのボールからストライクに入るシュートで行く!)
熊井(続けてインコースか、悪くないな!)
滝沢主将(ふう、決め球は読めないな。さてどうするか?)

沢田(シュッ!)

ククッ!
熊井(良いコース! 並のバッターなら怖気づいて踏み込めないコース!)
滝沢主将(ここから変化する!)

カキ―――ン!
沢田「読まれたっ!?」
熊井「そんなバカなっ!?」

霞「ライトスタンド一直線! 完全に読んでいたかの様な一振りで逆転しました!」
武藤「ヒット3本で3失点か、沢田君を責められないな」
柴田「しかしどうしてシュートと分かったんですかね?」
武藤「ただの当てずっぽうかな」
柴田「もしくは癖でもあるんですかね?」
霞「そう言えば今日の2ホーマーは両方シュートを打っていますね」
武藤「じゃあ癖かな」
柴田「少なくともここからじゃ分かりそうもないですね」
霞「赤園君が返りそして今、滝沢君もホームインします!」

赤園「先輩に良いところを譲るなんてさすがは先輩想いの僕だな!」
滝沢主将「確かに逆転できたのはお前のおかげだな。良く打ったな!」
赤園「ははは、シュートの癖は見抜いてましたからね!」
滝沢主将「ふーん」
赤園「信じてないですね」
滝沢主将「いいや。癖を知っていても事前に俺達に話さない過酷な条件で試合させる先輩想いの後輩だと思ってな」
赤園「すみませんって事はキャプテンも癖は知らないんですね?」
滝沢主将「そんな物は知らないさ。シュートと予測できたのはインコースだったからだ。インコースならシュートかストレートって思ってたからな。あいつの自信のあるボールは変化球、それでシュートに決めたんだ!」
赤園「投げてすぐそこまで考えてたんですか」
滝沢主将「ちなみにボール球だったら俺は三振だったな。ストライクに投げて来たから打てた訳だけど」
赤園「凄いですね」
滝沢主将「ああ。勝負に来たあのバッテリーは若いが大したもんだ。あの度胸があればまだまだ伸びるだろうな!」
赤園(キャプテンの方が凄いんだけどな)

熊井「癖でもあるんだろうか?」
沢田「そんな物があればもっとヒットを打たれている!」
熊井「だとしたら?」
沢田「予測していた球種が偶然当たったか、瞬時にシュートに対応して打ったか」
熊井「後者だとしたらどうしようもないな」
沢田「……そうだな」
鬼丸主将「だがまだ1点差だ。仮に点を取られても俺達が取り返せば良い!」
熊井「そうですねっていたんですか!?」
鬼丸主将「みんないるよ!」
熊井「すみません。ショックで気付きませんでした」
根津「まったく、打たれたピッチャーよりキャッチャーが落ち込んでどうするんだ」
友澤「いやピッチャーとキャッチャーは一心同体だから落ち込むのも無理ないさ」
沢田「……こんな奴と一心同体なんてごめんですけどね!」
熊井「そりゃないだろう!」
全員「あっはははっ!」
内山「ま、打たれても勝敗が決まる訳じゃないし気にするなって事だろう!」
鬼丸主将「内山の言う通りまだ試合は終わっていない。最後まで諦めず頑張ろう!」
沢田「はい!」

ククッ! ククッ!
山田「なんで打たれた後にあんなボール投げられるんだよ!?」
寺島「同感!」

霞「後続を連続三振に仕留めるとやはり沢田君は凄いです! しかし雪影高校は逆転に成功し試合はこのまま終わるのでしょうか?」
武藤「この場面で打つ滝沢君も凄いですが沢田君のピッチングも凄いと今年はメンタル面で強い選手も多いですね!?」
柴田「まったく大したレベルですよ。まあ一発勝負の高校野球では昔からプロよりメンタル面で優れていると言う意見も多かったですけどね」
武藤「確かに高校の方が凄かったって言われている選手も多いですからね」
柴田「高校からプロ入りしなかった凄い選手ってのもいましたからね」

意気消沈モードから一転して火の点いた黒龍高校、沢田は後続を抑え1点差のまま試合は9回に向かう。

9回表 雪3−2黒 点差は変わらずついに9回に入る
後藤「ふん!」

ズバ―――ン!
早見「9回になってもまだ球威が落ちないのかよ!?」

霞「衰えると言う事を知らないのか144キロのストレートで三振を奪います!」
武藤「河島君、石崎君、後藤君と速球派はどの世代にもいますね」
柴田「ちょっとコントロールに難があるけど良い素材だよな。ぐっふふふ」
武藤「怖いですよ」

早見「悪い」
内山「ま、精一杯やった結果ですから仕方ないですよ。それにしても後藤、打たれてからまた絶好調ですね」
早見「まったくだ」
内山「ま、俺が打って同点じゃなかった塁に出て後は熊井達に任せましょう!」
早見「ああ。後は頼む!」
内山(みんなの為にもここで終わってたまるか!)
後藤(こいつにはホームランを打たれてむかついたしボコボコにしてやる!)

カキ―――ン!
後藤「しまった!?」
内山(おっし抜ける!)

タッ! パシッ!
滝沢主将「ふう」
内山「嘘だろう!?」

霞「ファーストの頭を越えるかと思いましたが滝沢君がジャンピングキャッチ!」
武藤「そう言えば最終回でこんな守備も多いですよね。そう言う意味じゃ守備で勝負強い選手も多いんですよね」
柴田「打って良し守って良しと最高ですね。この滝沢君もまず指名は間違いないですね」

大沢(確かにピッチャーは気持ちも大事だけどみんなの事も考えろよ)
後藤(悪い)
大沢(分かれば良いんだよ。それじゃ最後のバッターだ。最高のストレートで今度こそ勝利しようぜ!)
後藤(そうだ。ここで負けたら俺だけでなくみんなの夏が終わる俺だけでなくみんなの為にも抑えないと!)
内山「すまん」
熊井「まだだ! 俺の一発で同点にすればチャンスは必ず来る!」
後藤「うらっ!」

カキ―――ン!
熊井「くっ!?」
寺島「オーライ!」

パシッ!
霞「最後はセンターフライと後藤君の球威が勝って試合終了!」
武藤「なんか最後まで力と力の戦いって感じでしたね」
柴田「確かに全員野球と言うより個人の能力に注目する様な試合でしたね」
霞「特に沢田君は無四球3安打と敗戦投手とは思えないピッチングでした!」
武藤「確かに滝沢君1人に負けたって印象でしたね」
柴田「後藤君は四死球やヒットも沢田君より多かったですがそれでも勝利投手ですからね」
霞「うーん、野球はやっぱり団体プレーって事ですかね」
武藤「まあ1人がミスをしても他の選手がミスをおぎなう事ができるのが野球ですからね」
柴田「いや良い試合でしたよ。次の試合も楽しく観させてもらいますよ!」

沢田「俺達の夏もこれで終わりか」
熊井&内山「すまん」
鬼丸主将「お前らにはまだ来年があるさ。来年も頑張ってくれよ!」
沢田「そうですね。お疲れ様でした!」
鬼丸主将「ああ!」
内山「それじゃ帰りましょうか」
鬼丸主将「切り替えが早いなー」
熊井「ま、過ぎた事を気にしても仕方ないですからね」
沢田「…………夏もこれで終わりか」

滝沢主将「これで3回戦も勝利したな」
赤園「いやー無明実業との戦いも見えて来ましたな」
朝山「ま、ベスト8だし次で戦う可能性もゼロじゃないけど」
新井「無明実業が敗退する可能性もあるけどな」
赤園「まさかっ!?」
滝沢主将「春の優勝校で今回も本命と言われているが夏のレベルも高いからな」
赤園「そんなはずはない!」
朝山「根拠は?」
赤園「曜君は打たれない!」
朝山「その子だけが投げる訳じゃないし他のピッチャーが投げて打たれたら」
赤園「その可能性もあったか!?」
朝山「気付いてなかったのか!?」

観客席
真田「やっぱり強いね」
吉田「やっぱり滝沢が決めたな」
斎藤主将「ああ。俺達も負けてられないな!」
真田「相手は同じく2年の東山君ですが問題なく打てそうだし楽勝かな!」
斎藤主将「確かに前に戦った谷口と比べて劣るが左に強いらしいしお前とは相性が悪いんじゃないか」
真田「大丈夫! 速度も変化もコントロールも谷口より下だから」
吉田(そう言って打てた事があったかな?)
真田「何か言いたそうだね?」
吉田「別に」
斎藤主将「まあ負ければ終わりだし気を引き締めて行こう!」
真田「だね!」吉田「だな!」